IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友金属鉱山シポレックス株式会社の特許一覧 ▶ ケイミュー株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-壁構造 図1
  • 特開-壁構造 図2
  • 特開-壁構造 図3
  • 特開-壁構造 図4
  • 特開-壁構造 図5
  • 特開-壁構造 図6
  • 特開-壁構造 図7
  • 特開-壁構造 図8
  • 特開-壁構造 図9
  • 特開-壁構造 図10
  • 特開-壁構造 図11
  • 特開-壁構造 図12
  • 特開-壁構造 図13
  • 特開-壁構造 図14
  • 特開-壁構造 図15
  • 特開-壁構造 図16
  • 特開-壁構造 図17
  • 特開-壁構造 図18
  • 特開-壁構造 図19
  • 特開-壁構造 図20
  • 特開-壁構造 図21
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012389
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】壁構造
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20230118BHJP
   E04F 13/14 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
E04F13/08 Z
E04F13/14 102E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021116010
(22)【出願日】2021-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】399117730
【氏名又は名称】住友金属鉱山シポレックス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大須賀 正実
(72)【発明者】
【氏名】西井 大起
(72)【発明者】
【氏名】枝國 雄太
(72)【発明者】
【氏名】常俊 淳次
(72)【発明者】
【氏名】小林 寛明
(72)【発明者】
【氏名】小林 沙瑶
【テーマコード(参考)】
2E110
【Fターム(参考)】
2E110AA24
2E110AB04
2E110AB22
2E110BD23
2E110CA08
2E110CA13
2E110CA21
2E110DA10
2E110DB23
2E110DC02
2E110GB01W
2E110GB23W
(57)【要約】
【課題】複数のパネルのロッキングが、複数の化粧面材及び胴縁で妨げられ難い壁構造を提供する。
【解決手段】複数の表面略長方形の仕上げ材取り付け用のパネル2が、長辺21同士及び短辺22同士を隣接させて上下左右方向に配置されている。また表面略長方形の複数の化粧面材3が複数のパネル2の表面側に胴縁4を介して取り付けられている。複数のパネル2は、構造躯体5にロッキング可能に取り付けられている。複数の化粧面材3及び胴縁4は、複数のパネル2のロッキングを妨げ難いように取り付けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の表面略長方形の仕上げ材取り付け用のパネルが、長辺同士及び短辺同士を隣接させて上下左右方向に配置され、表面略長方形の複数の化粧面材が前記複数のパネルの表面側に胴縁を介して取り付けられている壁構造であって、前記複数のパネルは、構造躯体にロッキング可能に取り付けられており、前記複数の化粧面材及び前記胴縁は、前記複数のパネルのロッキングを妨げ難いように取り付けられている、壁構造。
【請求項2】
前記各パネルは、前記構造躯体にロッキング可能に縦長に取り付けられており、前記胴縁は、上下方向に長い縦胴縁であり、前記各縦胴縁は、上下方向にアダプターを介して略一直線上に位置するように、前記パネル毎に取り付けられており、前記アダプターは、前記パネルのロッキングに対し、前記縦胴縁の動きを緩和できる機構を有してなり、前記化粧面材は、前記縦胴縁に横長に取り付けている、請求項1に記載の壁構造。
【請求項3】
前記複数の縦胴縁の長さは、前記各パネルの前記長辺の長さ以下であり、前記複数の縦胴縁は、上下に隣接する前記複数のパネルの前記短辺を跨らないように、前記パネル毎に取り付けられている、請求項2に記載の壁構造。
【請求項4】
前記複数の縦胴縁の少なくとも1つは、少なくとも上部または下部のいずれかが、上下に隣接する前記パネルの前記短辺を跨ぐように、前記パネル毎に取り付けられている、請求項2に記載の壁構造。
【請求項5】
前記各縦胴縁の長さは、前記各パネルの前記長辺の長さ以下であり、前記複数の縦胴縁は、上下に隣接する前記複数のパネルの前記短辺を跨らないように、前記パネル毎に取り付けられており、前記複数の縦胴縁の少なくとも1つは、少なくとも上部又は下部のいずれかが、上下に隣接する前記複数のパネルの前記短辺を跨ぐように、延長胴縁が設置されている、請求項2に記載の壁構造。
【請求項6】
前記アダプターは、コ型の金属片であり、底面の外側に防水テープが張られており、かつアダプター固定ボルトを緊結する穴が前記底面に、前記胴縁を固定する穴が側面に、それぞれ設けられており、前記パネルに、前記アダプター固定ボルトを介して固定されており、前記胴縁は、前記アダプターの前記側面の前記穴にボルトを介して固定され、前記パネルのロッキングの動きに対し、前記アダプターが前記アダプター固定ボルトを中心に回転することで動きが緩和される機能を有しており、前記アダプターの前記側面の前記穴はルーズ形状とし、上下の動きに対し緩和させる機能を有してなる、請求項2乃至5に記載の壁構造。
【請求項7】
前記縦胴縁には、前記縦胴縁に対する回転機構と前記化粧面材におけるスライド機構をもった留具を介して前記化粧面材が取り付けられ、前記留具は、前記化粧面材の実部を挟み込むための爪が設けられており、前記留具に設けられた穴にビス又はねじを介して、回転できるように1本で固定されており、前記化粧面材は、前記爪により前記実部が挟み込まれて取り付けられることで前記パネルのロッキングにあわせて横方向にスライドする機構を有してなる、請求項2乃至6のいずれか1項に記載の壁構造。
【請求項8】
前記複数のパネルは、ALCパネルからなり、前記複数の化粧面材は、窯業系サイディングからなる、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の壁構造。
【請求項9】
前記胴縁は、溝形鋼からなり、開口側が前記パネル側に向くよう取り付けられている、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の壁構造。
【請求項10】
前記胴縁は、角型鋼管からなり、前記アダプターの前記固定具との干渉を防ぐ逃し孔を設けてなる面が前記パネル側に向くように取り付けられている、請求項2乃至8のいずれか1項に記載の壁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁構造に関する。より詳細には、パネルと胴縁と化粧面材とを備える壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、既存外壁に対して施工容易な外壁施工構造が記載されている。この外壁施工構造は、外壁板保持能力を有する既存壁に対して、金属胴縁を固定してなる金属下地組と、金属下地組に留め付けられた複数の外壁板とから構成されている。なお、既存外壁の横目地部においては、横目地間に胴縁固定用金具を設けており、上下の縦胴縁を接続している。そして、既存壁のコーナー部における金属下地組には、出隅部胴縁を横胴縁や固定具で留め付けてある。
【0003】
このような外壁施工構造は、外壁板や出隅胴縁を留め付けるため、各金属胴縁を既存壁に固定している。
【0004】
また、化粧面材として窯業系、金属系のサイディングが広く用いられており、主に木造住宅が多いが、近年は一般建築にも採用されている。また、建築物の改装として、既存外壁の上に施工する例もある。ただし、既存の技術においては、下地鋼材もしくは下地となる既存の外壁材の地震時に発生する変形に対して、化粧面材及び既存の外壁材の耐震性や変形に対して考慮した免振機構・固定方法が一部では採用されている。
【0005】
ALCパネルや押出成形板に化粧面材などを取り付ける場合、直接接着などで取り付けるのではなく、胴縁などを介して取り付ける事が一般的である。ALCパネルや押出成形板は縦方向に取り付けることが多く、取付け工法はロッキング構法が標準であり、一枚一枚がパネル下部を支点に小回転して変形に対して追従する構法を採用している。そのALCパネル、押出成形板に窯業系、金属系サイディングなどのパネルを取り付ける場合は横壁で取り付けられることが標準であるが、ALCパネル、押出成形板がロッキング構法を採用していることから、胴縁は横に流すことが一般的であった。
【0006】
特許文献2には、パネルのセンターにボルトで胴縁を固定し、横方向に胴縁を流す(横胴縁)ことで、ロッキングの動きを拘束しないように、横胴縁がパネルの動きを拘束しないようすべり材を挿入する構造などで構成されている。
【0007】
また、リフォーム向け構法(例えば、ニチハMARCシステム)では、アンカーでALCパネルにアタッチメントを固定し、アタッチメントに胴縁を縦方向(縦胴縁)にねじで固定し、窯業系サイディングを胴縁に固定している。この場合、胴縁はアンカー、ねじ及びビスでALCパネルに固定している。そのため、ALCパネルの動き(ロッキング)が拘束され易い可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2017-81089号公報
【特許文献2】特開2020-200752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のような外壁施工構造では、壁下地である外壁パネルのロッキング等の動作が、縦胴縁、横胴縁及び化粧面材(タイル壁面)により妨げられず、確実に動作することが望まれている。
【0010】
また、特許文献2のような横方向に胴縁を流す(横胴縁)構造では、サイディングなどのようにその形状の特徴から横積みに取り付けることがほとんどである工法に対応することができず、対応するためにはパネルのロッキング等の動きが拘束され難くしたうえで、胴縁を縦方向に取り付けることができるようにすることが望まれている。また、縦胴縁を採用した工法においても、パネルのロッキングを阻害することなきように設置するのが望まれている。
【0011】
本発明は、上記事由に鑑みてなされており、複数のパネルのロッキングが、複数の化粧面材及び胴縁で妨げられ難い壁構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様に係る壁構造は、複数の表面略長方形の仕上げ材取り付け用のパネルが、長辺同士及び短辺同士を隣接させて上下左右方向に配置され、表面略長方形の複数の化粧面材が前記複数のパネルの表面側に胴縁を介して取り付けられている。前記複数のパネルは、構造躯体にロッキング可能に取り付けられている。前記複数の化粧面材及び前記胴縁は、前記複数のパネルのロッキングを妨げ難いように取り付けられている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数のパネルのロッキングの変形が、複数の化粧面材及び胴縁で妨げられ難い、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1Aは、本実施形態に係る外壁構造のロッキング前の通常の状態を示す正面図である。図1Bは、図1Aに示す状態からロッキングした状態を示す正面図である。
図2図2A図2B図2C及び図2Dは、本実施形態に係る外壁構造のパネルの取付け構造の一例を示す一部の斜視図である。
図3図3は、本実施形態に係る外壁構造のパネルの取付け構造の他例を示す斜視図である。
図4図4A及び図4Bは、本実施形態に係る外壁構造の溝形鋼を示す断面図である。図4Cは、本実施形態に係る外壁構造のLアングルを示す正面図である。図4Dは、同上の断面図である。図4Eは、同上の底面図である。
図5図5Aは、本実施形態に係る外壁構造のアダプターの一例を示す正面図である。図5Bは、同上の横断面図である。図5Cは、同上の縦断面図である。図5Dは、本実施形態に係る外壁構造のアダプターの他例を示す正面図である。図5Eは、同上の横断面図である。図5Fは、同上の縦断面図である。
図6図6Aは、本実施形態に係る外壁構造の化粧面材の取付け構造を示す横断面図である。図6Bは、本実施形態に係る外壁構造の化粧面材の取付け構造の他例を示す横断面図である。
図7図7は、本実施形態に係る外壁構造のアダプターと胴縁との取付け構造を示す断面図である。
図8図8Aは、本実施形態に係る外壁構造のアダプターと胴縁との取付け構造を示す通常時の正面図である。図8Bは、本実施形態に係る外壁構造のパネルのロッキング動作時のパネルに対する縦胴縁及びアダプターの動きを示す概略の正面図である。図8Cは、本実施形態に係る外壁構造のパネルのロッキング動作時のアダプターに対する縦胴縁の動きを示す概略の側面図である。
図9図9は、本実施形態に係る外壁構造の化粧面材の取付け構造を示す縦断面図である。
図10図10A及び図10Bは、本実施形態に係る外壁構造のパネルのロッキング動作時の留具及び化粧面材の動きの概略を示す正面図である。
図11図11Aは、本実施形態に係る外壁構造の上下方向に隣接して並ぶ化粧面材の取付け構造を示す縦断面図である。図11Bは、本実施形態に係る外壁構造の上下方向に隣接して並ぶ化粧面材の取付け構造の他例を示す縦断面図である。
図12図12Aは、本実施形態に係る外壁構造の左右方向に隣接して並ぶ化粧面材の取付け構造を示す横断面図である。図12Bは、本実施形態に係る外壁構造の左右方向に隣接して並ぶ化粧面材の取付け構造の他例を示す横断面図である。
図13図13は、本実施形態に係る外壁構造の出隅部を示す横断面図である。
図14図14は、図13の出隅部における胴縁及び補助胴縁を示す各正面図である。
図15図15は、本実施形態に係る外壁構造の出隅部の他例を示す横断面図である。
図16図16は、本実施形態に係る外壁構造の入隅部を示す横断面図である。
図17図17Aは、本実施形態に係る外壁構造の開口部を示す正面図である。図17Bは、同上の縦断面図である。図17Cは、同上の横断面図である。
図18図18Aは、本実施形態に係る外壁構造のロッキング前の通常の状態の他例を示す正面図である。図18Bは、図18Aに示す状態からロッキングした状態の他例を示す正面図である。
図19図19Aは、本実施形態に係る外壁構造を示す縦断面図である。図19Bは、本実施形態に係る外壁構造を示す縦断面図である。図19Cは、同上の縦胴縁の一例を示す分解斜視図である。
図20図20Aは、本実施形態に係る外壁構造のT型ジョイントを示す平面図である。図20Bは、同上の正面図である。図20Cは、同上の側面図である。図20Dは、本実施形態に係る外壁構造のT型ジョイントを使用した補助胴縁の取り付け構造を示す正面図である。
図21図21Aは、本実施形態に係る外壁構造で使用する溝形鋼の胴縁とアダプターの取付け構造を示す横断面図である。図21Bは、実施形態に係る外壁構造で使用する角型鋼管の胴縁とアダプターの取付け構造を示す横断面図である。図21Cは、同上の角型鋼管を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態1)
本発明の壁構造としては、外壁、内壁、間仕切り壁など様々な壁構造に適用可能であるが、図1A及び図1Bは、本実施形態に係る壁構造として外壁構造1を示している。外壁構造1は、複数のパネル2を備えている。パネル2は、表面略長方形に形成されている。本実施形態では、パネル2は正面視(前方から見た場合)で表面が上下方向に延びる(縦長の)長方形に形成されている。なお、表面略長方形としているが、正方形を排除するものではない。
【0016】
なお、本実施形態では、図中に示す矢印Xの方向が前方であり、矢印Xの反対方向が後方である。外壁構造1の前方は建物の屋外であり、外壁構造1の後方は屋内である。また図中に示す矢印Yの方向は右方向であり、矢印Yの反対方向が左方向である。左右方向は横方向と言う場合がある。また図中に示す矢印Zの方向は上方向であり、矢印Zの反対方向が下方向である。上下方向は縦方向という場合がある。
【0017】
パネル2はALCパネルからなる。ALCパネルは、Autoclaved Lightweight aerated Concrete(高温高圧蒸気養生された軽量気泡コンクリート)で形成された板材である。本実施形態では、パネル2はALCパネルでなくてもよく、押出成形セメント板、金属パネルなどの他の材質で形成された板材であってもよい。
【0018】
複数のパネル2は、上下左右方向に並べて配置されており、この複数のパネル2で仕上げ材取り付け下地が形成されている。上下方向に隣接して並ぶ複数のパネル2は短辺22同士が隣接している。左右方向に隣接して並ぶ複数のパネル2は長辺21同士が隣接している。従って、複数のパネル2が縦張りで施工されている。
【0019】
本実施形態の外壁構造1は、複数の化粧面材3を備えている。化粧面材3は、表面略長方形に形成されている。本実施形態では、化粧面材3は正面視(前方から見た場合)で表面が左右方向に延びる(横長の)長方形に形成されている。
【0020】
化粧面材3は窯業系サイディングからなる。窯業系サイディングは、基材の表面に凹凸を形成したり塗装したりして化粧を施した外壁材である。基材の主原料は,セメント、ケイ酸質原料,繊維質原料,混和材料などである。化粧面材3は壁用の仕上げ材であれば窯業系サイディングでなくてもよく、金属サイディングなどの他の材質で形成された板材であってもよい。
【0021】
複数の化粧面材3は、上下左右方向に並べて配置されており、この複数の化粧面材3で外壁の表面が形成されている。上下方向に隣接して並ぶ複数の化粧面材3は長辺31同士が隣接している。左右方向に隣接して並ぶ複数の化粧面材3は短辺32同士が隣接している。従って、複数の化粧面材3が横張りで施工されている。
【0022】
本実施形態の外壁構造1は、胴縁4を備えている。胴縁4は複数の化粧面材3を複数のパネル2の表面側(前方)に施工するために設けられている。従って、複数の化粧面材3は胴縁4を介して複数のパネル2に取り付けられている。本実施形態では、胴縁4として複数の縦胴縁41を備えている。縦胴縁41は上下方向に延びる形状である。縦胴縁41は溝形鋼44を使用することができる。図4A及び図4Bは、溝形鋼44を示している。溝形鋼44は、基部片46と、一組(一対)の側片42と、を有している。側片42は基部片46の両側端から突出しており、側片42同士は対向している。また溝形鋼44には基部片46と対向する位置に開口45が設けられている。なお、図4Aに示す溝形鋼44と、図4Bに示す溝形鋼44とは、幅寸法が異なっており、使用場所や使用目的に応じて、適宜使い分けることができる。
【0023】
本実施形態の外壁構造1は、複数のアダプター6を備えている。胴縁4(縦胴縁41)は、アダプター6によりパネル2に取り付けられている。図5A~C及び図5D~Fは、アダプター6を示している。アダプター6は、例えば、鋼板等で形成される金属製からなる金属片であって、固定片61として機能する底面と、一対の側面からなるガイド片62とを備え、コ型をしている。固定片61は正面視で略矩形状(例えば、長方形)に形成されている。固定片61の略中心線上には固定孔63が前後方向(固定片61の厚み方向)に貫通して設けられている。一対のガイド片62は固定片61の対向する一組の両辺(側辺)から屋外側(前方)に向かって延設されている。各ガイド片62は略矩形状に形成されている。各ガイド片62には連結孔64がそれぞれ穿設されている。各ガイド片62に形成された連結孔(穴)64は対向して設けられている。各連結孔64はガイド片62を左右方向(厚み方向)で貫通している。また各連結孔64は上下方向に沿って延びる長孔に形成されている。また固定孔63と連結孔64とは、上下方向における位置が重ならないように、上下方向で互いの位置がずれている。また固定片61の後面(底面の外側)には、例えば、防水テープ66からなるシート状の防水材66が設けられている。なお、図5A~Cに示すアダプター6と、図5D~Fに示すアダプター6とは、幅寸法(一対のガイド片62の間隔)が異なっており、使用場所や使用目的に応じて、適宜使い分けることができる。例えば、図4Aに示す幅の狭い溝形鋼44に対しては、図5A~Cに示す幅が狭いアダプター6を使用し、図4Bに示す幅の広い溝形鋼44に対しては、図5D~Fに示す幅が広いアダプター6を使用する。なお、胴縁及びアダプターの寸法及び形状についてはこれらに限られるものではなく、例えば、胴縁4(縦胴縁41)は、溝形鋼44以外の角型鋼管、H形鋼などであってもよい。また、本発明における溝形鋼44には、リップ付き形状(所謂C形鋼)を含むものである。アダプター6は、長尺の場合は一つの胴縁4に対し1個でも可能であるが、サイズを小さくして2個以上用いることで軽量化でき、施工がしやすいなど優位である。
【0024】
本実施形態において、複数のパネル2は、構造躯体5にロッキング可能に取り付けられている。構造躯体5は、鉄骨造、鉄筋コンクリート造及び鉄骨鉄筋コンクリート造などの建築物の躯体であり、柱及び梁が含まれる。ロッキング可能とは、構造躯体5が層間変形した場合に、パネル2が1枚毎に微少回転して面内方向に追従して動作することを意味する。
【0025】
複数のパネル2をロッキング可能に施工するにあたっては、公知の構法を使用することができ、例えば、縦壁ロッキング構法が使用可能である。
【0026】
図2A~Dは、縦壁ロッキング構法の概略を示している。複数のパネル2は、構造躯体5に対して、定規アングル51、イナズマプレート52、平プレート53及びウケプレート54を介して取り付けられている。そして、パネル2に取り付けられる平プレート53が、定規アングル51に固定されたウケプレート54に対して微少回転することにより、パネル2がロッキング可能となる。また図3は、他の縦壁ロッキング構法を示している。複数のパネル2は、構造躯体5の係止部59に対して、セットボルト58、スピードボルト56、アングルクリップ57、シングルプレート55を介して取り付けられている。
【0027】
なお、本実施形態では、上記のような実施例以外の縦壁ロッキング構法の金具も使用可能である。
【0028】
上記のような複数のパネル2の表面側には、複数の縦胴縁41が取り付けられる。縦胴縁41は、一枚のパネル2に対して、一つずつ取り付けられる。従って、複数の縦胴縁41は、他の縦胴縁41とは分離されている。このように縦胴縁41は、長さがパネル2の長辺21の長さ以下であり、また縦胴縁41は、上下に隣接する複数のパネル2の短辺22を跨らないように、パネル2毎に取り付けられている。そして、上下方向で隣接する縦胴縁41は、パネル2がロッキングしていない通常の状態では、上下方向に略一直線上に位置している。
【0029】
各縦胴縁41は、上部と下部、また必要に応じその間がアダプター6を介してパネル2の表面に取り付けられている。アダプター6は、パネル2の表面にシート状の防水材66を介して固定片61を当接して固定される。この場合、図6Aに示すように、固定片61の固定孔(穴)63からパネル2に対してボルト、アンカーボルト、スピードボルト、ネジ、釘などの固定具(アダプター固定ボルト)65を挿通して、固定片61をパネル2の表面に固定する。アダプター6はパネル2の左右方向の略中央部に設けられる。これにより、縦胴縁41をパネル2の左右方向の略中央部に配置することで、パネル2がロッキング動作した場合の縦胴縁41の上下方向の移動をできるだけ小さくすることができる。なお、固定具65としてボルトを用いる場合においては、パネル2を製造する際に所定位置に埋込ナットを設けておくことが好ましい。
【0030】
図7に示すように、縦胴縁41は、アダプター6の一対のガイド片62の間に挿入され、連結具(胴縁固定用ボルト)7によりアダプター6に固定される。縦胴縁41の一対の側片42には、それぞれ、取付孔43が穿設されている。各側片42に設けた取付孔43は対向している。取付孔43は、施工現場で加工して形成しても良いし、工場等で予め形成しておいても良い。連結具7は、例えば、ボルトナット等で構成される。そして、連結具7のボルトを連結孔64と取付孔43とに挿通してナットを締め付けることにより、アダプター6に縦胴縁41が取り付けられる。ここで、アダプター6の固定孔63と連結孔64とが中心位置から上下方向に位置ずれしているため、固定具65に対して連結具7が干渉しないように配置しやすい。アダプター6の上下は特に限定されないが、アダプター6が固定時に自重により上下反転し難いよう固定孔63を上下方向の中央部よりも上方にするのが好ましい。このようにして取り付けられる縦胴縁41は、連結孔64が長孔に形成されているため、連結具7が挿通しやすくなるとともに、パネル2がロッキング動作して強い力が加わった際には連結具7が連結孔64内で移動できる。従って、パネル2のロッキング動作時にアダプター6に対して縦胴縁41が位置ずれするように移動可能となり、パネル2のロッキング動作が化粧面材3や縦胴縁41で妨げられにくくなる。なお、連結孔64は長孔だけでなく、連結具7のボルトの胴部の外径よりも大きな孔径を有するように形成しても良い。また縦胴縁41は、溝形鋼44の開口45側がパネル2側(後ろ側)に向くよう取り付けられている。これにより、開口45内に固定具65の頭部が収容されて、縦胴縁41をアダプター6の一対のガイド片62の間に奥までしっかり挿入しても縦胴縁41の取り付けに障害となりくい。
【0031】
図8A~Cは、パネル2のロッキング動作時の縦胴縁41及びアダプター6の動きの概略を示している。パネル2にアダプター固定用ボルト65で固定されているアダプター6は、パネル2がロッキングした際、アダプター固定用ボルト65を中心にパネル2に対し右回り及び左回りに回転する。また、アダプター6に胴縁固定用ボルト7で固定されている縦胴縁41は、パネル2がロッキングした際、胴縁固定用ボルト7が連結孔64の長孔内をアダプター6に対して上下にスライドする。これにより、縦胴縁41がパネル2のロッキング動作を妨げ難くすることができる。
【0032】
図9図10A及びBは、パネル2のロッキング動作時の留具(留め金具)9及び化粧面材3の動きの概略を示している。複数の化粧面材3は、縦胴縁41の前方に取り付けられる。化粧面材3を取り付けるにあたっては、留具(留め金具)9が使用される。留具9は縦胴縁41の表面(前面)に取り付けられる。留具9は化粧面材3の実部33に引っかかる係止部(爪)92を有し、実部33に留具9を係止した状態で縦胴縁41に取り付けられる。留具9を縦胴縁41に取り付けるにあたっては、パネル2がロッキング動作して強い力が加わった際には縦胴縁41に対して留具9が回転可能にするのが好ましい。これにより、パネル2のロッキング動作時に縦胴縁41に対して留具9が回転しやすくなり、パネル2のロッキング動作が化粧面材3や縦胴縁41で妨げられにくくなる。この場合、留具9は一本のビス、釘、ネジ等の固定具93で縦胴縁41に回転可能に取り付けるのが好ましい。
【0033】
複数の化粧面材3は、縦胴縁41の前方に複数の留具9を介して取り付けられるが、このとき、化粧面材3の実部33は留具9の係止部にスライド可能に係止されるのが好ましい。これにより、パネル2のロッキング動作時に、留具9に対して化粧面材3がスライド移動可能となり、パネル2のロッキング動作が化粧面材3や縦胴縁41で妨げられにくくなる。なお、図11A及びBのように、化粧面材3の実部33は化粧面材3の上端及び下端の長辺21に沿って、化粧面材3の全長にわたって形成されている。また、留具9は図6Aのような短尺物であってもよいが、図6Bのような長尺物であっても良い。長尺物の留具9は、耐風圧が要求される高層階などで使用するのが好ましく、各縦胴縁41に対して一本ずつのビス、釘、ネジ等で回転可能に取り付けるのが好ましい。
【0034】
図12Aに示すように、パネル2の左右方向(短辺方向)の略中央部にアダプター6を介して取り付けられている縦胴縁41の前面において、左右方向に隣接して並ぶ複数の化粧面材3の短辺32同士が隣接している。左右方向に隣接する化粧面材3は、同じ縦胴縁41の前面に左右方向に並べて取り付けられる別々の留具9にそれぞれの短辺32側の端部が係止されて取り付けられる。短辺32の間には弾性体36が設けられている。弾性体36としては、シーリング材などが例示され、これにより、化粧面材3の間の防水性も確保することができる。弾性体36は、化粧面材3がロッキング動作により動いても、伸縮して破損することがないような弾性を有している。弾性体36は、ハット型ジョイナーや片側ハット型ジョイナーなどのバックアップ材35に支持されて、化粧面材3の短辺32の間の目地に配置されている。なお、隣接するパネル2の間には弾性体8が設けられている。弾性体8によりパネル2間の防水性が確保される。
【0035】
図12Bには、補助胴縁11を使用した施工を示している。補助胴縁11は縦胴縁4が位置しない箇所に設けられている。つまり、化粧面材3の短辺32と、この短辺32に最も近い縦胴縁41との左右方向に位置ずれしている箇所であって、この位置に補助胴縁11が設けられている。この場合、縦胴縁41はパネル2の左右方向の略中央部に設けられるが、化粧面材3の割付の関係で、化粧面材3の短辺32側の端部が縦胴縁41の前方に位置しないことがあり、化粧面材3の端部を支持するために補助胴縁11が用いられる。
【0036】
補助胴縁11は縦胴縁41と同様の溝形鋼44が用いられる。補助胴縁11は、連結材12を介して当該補助胴縁11に最も近い縦胴縁41に連結されている。連結材12は、連結材本体121と一対のLアングル122とを備える。連結材本体121は、縦胴縁41と同様の溝形鋼44が用いられる。Lアングル122は、図4C~Eに示すように、断面L型に形成される短尺物である。そして、連結材本体121の一端は、補助胴縁11に最も近い縦胴縁41と一対のLアングル122の1つで連結されている。また連結材本体121の他端は、補助胴縁11と一対のLアングル122の他の1つで連結されている。このようにして補助胴縁11は、最も近い縦胴縁41に片持ち梁のようにして連結されている。補助胴縁11の表面には上記と同様にして留具9が取り付けられており、この留具9に化粧面材3の短辺32側の端部が取り付けられている。
【0037】
図13及び図14には、出隅部10の構造を示している。出隅部10においては、上記と同様の補助胴縁11を使用して出隅部材101が取り付けられている。出隅部10において隣接する一対のパネル2は、一方を勝ち側とし、他方を負け側として弾性体8を介して略直角に配置されている。隣接する一対のパネル2には、それぞれ、縦胴縁41が取り付けられており、各縦胴縁41には出隅部10の先端の方向に向かって突出する連結材12が設けられている。そして、各連結材12にはそれぞれ補助胴縁11が連結されている。また勝ち側のパネル2の縦胴縁41に連結された補助胴縁11は、勝ち側のパネル2の小口23より外方に突出している。また負け側のパネル2の縦胴縁41に連結された補助胴縁11は、勝ち側のパネル2の小口23付近(前方)に位置している。勝ち側のパネル2の補助胴縁11の基部片111に固定された留具9に、化粧面材3の端部34における実部33が係止されている。またこの補助胴縁11の基部片111と一方(外方側)の側片112にそれぞれ固定された出隅材留具91に、断面略L字型の出隅材101の両片102が係止されている。またハット型ジョイナー35が勝ち側のパネル2の縦胴縁41に連結された補助胴縁11に固定され、勝ち側のパネル2に取り付けられる化粧面材3と出隅材101の間に位置し、シーリング材(弾性体)36のバックアップ材として機能している。一方、負け側のパネル2の補助胴縁11の基部片111に固定された留具9には、勝ち側のパネル2の小口23の前方にある負け側のパネル2に取り付けられる化粧面材3の端部34が係止されている。また片側ハット型ジョイナー37が負け側のパネル2の縦胴縁41に連結された補助胴縁11に固定され、出隅材101と負け側のパネル2に取り付けられる化粧面材3の間に位置し、シーリング材(弾性体)38のバックアップ材として機能している。本実施例においては、図14に示すように、一枚のパネル2に対し、5個のアダプター6を用いて一本の縦胴縁41が取り付けられている。補助胴縁11は縦胴縁41と略同等の長さを有し、5個の連結材12を用いて縦胴縁41に連結されている。各連結材12は、各アダプター6の上方近傍に位置するよう取り付けられている。これにより、縦胴縁41への負荷が緩和されるものである。
【0038】
図15は、他の出隅部10の構造を示している。この出隅部10においても、隣接する一対のパネル2は、一方を勝ち側とし、他方を負け側として弾性体8を介して略直角に配置されているが、勝ち側のパネル2の縦胴縁41に連結された補助胴縁11は、勝ち側のパネル2の小口23より外方に突出していない。また負け側のパネル2の縦胴縁41に連結された補助胴縁11は、勝ち側のパネル2の小口23付近(前方)に位置している。従って、それぞれの補助胴縁11は、出隅部10の頂点を境に略対称に位置しており、断面略L字型の出隅材101は、一方の片が勝ち側のパネル2の縦胴縁41に連結された補助胴縁11の基部片111に固定された出隅材留具91に係止され、他方の片が負け側のパネルの縦胴縁に連結された補助胴縁11の基部片111に固定された出隅材留具91に係止されている。勝ち側のパネル2の補助胴縁11の基部片111に固定された留具9に、勝ち側のパネル2に取り付けられる化粧面材3の端部34における実部33が係止されている。負け側のパネル2の補助胴縁11の基部片111に固定された留具9に、負け側のパネル2に取り付けられる化粧面材3の端部34における実部33が係止されている。またハット型ジョイナー35が勝ち側及び負け側のパネル2のそれぞれの補助胴縁41に固定されて隣接する化粧面材3と出隅材101の間に位置し、シーリング材36、38のバックアップ材として機能している。
【0039】
図16は入隅部70の構造をしている。入隅部70において隣接する一対のパネル2は、一方を勝ち側とし、他方を負け側として弾性体8を介して略直角に配置されている。また、入隅部70の隣接する一対のパネル2は短辺が一般部のパネル2よりも短いものを使用している。そのため、補助胴縁11は使用せず、一般部と同様にして、アダプター6と縦胴縁41及び留具9を使用して化粧面材3が施工されている。勝ち側の化粧面材3は、その端部を負け側のパネル2近傍に位置させて勝ち側のパネル2の縦胴縁41に固定された留具9に係止され、負け側の化粧面材3は、その端部を勝ち側の化粧面材3近傍に位置させて負け側のパネル2の縦胴縁41に固定された留具9に係止されている。また片側ハット型ジョイナー37が負け側のパネル2の縦胴縁41に固定されて負け側の化粧面材3の小口と勝ち側の化粧面材3の表面の間に位置し、シーリング材38のバックアップ材として機能している。
【0040】
なお、入隅部70は、出隅部10と同様に、補助胴縁11を使用しても良い。すなわち、入隅部70において隣接する一対のパネル2は、一方を勝ち側とし、他方を負け側として弾性体8を介して略直角に配置されている。勝ち側のパネル2の縦胴縁41に連結された補助胴縁11は、負け側のパネル2近傍に位置している。負け側のパネル2の縦胴縁41に連結された補助胴縁11は、勝ち側の化粧面材3に干渉しないよう勝ち側のパネル2から所定寸法隔てて位置している。勝ち側の化粧面材3は、その端部を負け側のパネル2近傍に位置させて勝ち側のパネル2の補助胴縁11に固定された留具9に係止され、負け側の化粧面材3は、その端部を勝ち側の化粧面材3近傍に位置させて負け側のパネル2の補助胴縁11に固定された留具9に係止されている。また片側ハット型ジョイナー37が負け側のパネル2の補助胴縁11に固定されて負け側の化粧面材3の小口と勝ち側の化粧面材3の表面の間に位置し、シーリング材38のバックアップ材として機能している。
【0041】
図17A~Cは、外壁の開口部50における構造を示している。開口部50においては、上記と同様に、補助胴縁11を使用して施工される。補助胴縁11は開口部50の縦寸法より長く形成され、開口部50の上下に突出するよう開口部50の両側方に位置しており、各補助胴縁11は、最も近い縦胴縁41に連結材12を介して連結されている。なお、本実施形態に示した以外の箇所においても、必要に応じて補助胴縁11を使用しても良い。
【0042】
本実施形態の外壁構造1では、図1Aの通常状態(ロッキング前の状態)と図1Bのロッキングした状態との間でパネル2がロッキング動作するが、この際、縦胴縁41、化粧面材3がパネル2のロッキング動作に追随しやすくなる。よって、パネル2のロッキング動作が妨げられにくくなる。
【0043】
(実施形態2)
本実施形態に係る外壁構造1は、縦胴縁41の構成が実施形態1に係る縦胴縁41と相違する。
【0044】
以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
【0045】
実施形態2で説明した構成は、実施形態1で説明した構成と適宜組み合わせて適用可能である。
【0046】
実施形態1では、縦胴縁41の上下方向の寸法がパネル2の上下方向の寸法(長辺21の寸法)よりも短い場合を示した。一方、実施形態2では、上下方向に隣接する縦胴縁41のうち、上側又は下側のいずれか一方の縦胴縁41がパネル2の上下方向の寸法よりも長く形成されている。図18A及びBでは、下側の縦胴縁41がパネル2の上下方向の寸法よりも長く形成されている。従って、下側の縦胴縁41の上部が上下方向に隣接するパネル2の短辺22を跨ぐように、配置されている。この場合、下側の縦胴縁41は、上側のパネル2には固定されておらず、下側のパネル2にのみ固定されている。これにより、縦胴縁41が上下方向に隣接するパネル2の短辺22を跨ぐように配置されていてもパネル2のロッキング動作が妨げられにくくなる。
【0047】
図19Aに示すように、下側の縦胴縁41は全長にわたって連続的に形成されていてもよいが、図19Bに示すように、パネル2の長辺21の長さ以下の縦胴縁本体411と、縦胴縁本体411に連結される延長用胴縁412とで形成しても良い。この場合、図19Cに示すように、延長用胴縁412の下端に設けた差し込み片413を縦胴縁本体411の上部に差し込み、ネジやボルト等の固定具414で固定することができる。これにより、パネル2の長辺21の長さを超えるように、縦胴縁41が形成される。
【0048】
実施形態1の場合、図1Aのように、上下方向に隣接するパネル2の短辺22間を跨ぐように、化粧面材3が配置されている。しかしながら、化粧面材3の割付等の関係で、図18A、Bに示すように、上下方向に隣接するパネル2の短辺22間の目地と、上下方向に隣接する化粧面材3の長辺31間の目地との位置が、正面視において略一致する場合がある。この場合、図1Aのように、縦胴縁41の長さがパネル2の上下方向の長さ以下であると、留具9を縦胴縁41に取り付けることができず、化粧面材3の長辺31を留具9に係止できないことがある。そこで、実施形態2では、上下方向に隣接するパネル2の短辺22間を跨ぐようにして縦胴縁41の上部を配置するようにしている。この場合、パネル2の短辺22を越境した縦胴縁41の上部の位置に留具9を取り付けることができ、上下方向に隣接するパネル2の短辺22間の目地と、上下方向に隣接する化粧面材3の長辺31間の目地との位置が、正面視において略一致する場合でも、化粧面材3の長辺31を留具9で係止することができ、化粧面材3の施工が損なわれないようにできる。なお、隣接するパネル2の短辺22を跨ぐ縦胴縁41として、パネル2の上下方向の寸法よりも長く形成されている場合について説明したがこれに限るものではなく、パネル2の上下方向の長さ以下であっても、上方又は下方にずらすことにより隣接するパネル2の短辺22を跨ぐようにして良いものである。
【0049】
(変形例)
図20A~Dは、連結材12の変形例を示している。この連結材12は、連結材本体121と一対のT型ジョイント13を備えている。T型ジョイント13は、図20Dに示すように、胴縁4と連結材本体121とが交差する位置において、表面側から被せてボルトナット等により取り付けることが好ましい。T型ジョイント13は、図20A~Cに示すように、T型プレート131と、T型プレート131の三方向の端縁を除く周縁にT型プレート131から奥側に延設される挟持片132とを備えており、腕部133を胴縁4又は補助胴縁11に、脚部134を連結材本体12にそれぞれ表面側から被せ、胴縁4、補助胴縁11及び連結材本体12の取付孔と、T型ジョイント13の挟持片132の貫通孔135にボルトを挿通し、ナットにより取り付けることができる。即ち、T型ジョイント13は、連結材本体121の上方及び下方の両方において、腕部133及び脚部134がボルトナット等の固定具により取り付けられている。なお、図20B及びCは、連結材12の形状、また、連結材12と胴縁4及び補助胴縁11の取り付け状態が分かるよう、裏面方向からの概略図としている。
【0050】
図21B及びCは、胴縁4の変形例を示している。この変形例で使用される胴縁4は、角型鋼管からなり、アダプター6の固定具65との干渉を防ぐ逃し孔48を有している。逃し孔48は胴縁4の四面のうちの1面に設けられている。逃し孔48は、ボルトなどの固定具65の頭部651が収容可能な十分な大きさを有している。また逃し孔48は、固定具65の頭部651が収容される位置に予め穿孔しておくことが好ましい。
【0051】
図21Aのように、上記実施形態1では、溝形鋼の胴縁4を使用しているため、胴縁4の開口45に固定具65の頭部651を挿入し、固定具65の頭部651と胴縁4とが接触しないようにして干渉を防いでいる。一方、本変形例では、逃し孔48を有する面がパネル2側に向くように、胴縁4をアダプター6に取り付ける。これにより、逃し孔48に頭部651が収容され、頭部651と胴縁4とが接触しないようにして干渉を防ぐことができる。
【0052】
(まとめ)
第1の態様に係る壁構造は、複数の表面略長方形の仕上げ材取り付け用のパネル2が、長辺21同士及び短辺22同士を隣接させて上下左右方向に配置されている。また表面略長方形の複数の化粧面材3が複数のパネル2の表面側に胴縁4を介して取り付けられている。複数のパネル2は、構造躯体5にロッキング可能に取り付けられている。複数の化粧面材3及び胴縁4は、複数のパネル2のロッキングを妨げ難いように取り付けられている。
【0053】
第1の態様によれば、複数のパネル2のロッキングが、複数の化粧面材3及び胴縁4で妨げられ難い、という利点がある。
【0054】
第2の態様は、第1の態様の壁構造であって、各パネル2は、構造躯体5にロッキング可能に縦長に取り付けられている。胴縁4は、上下方向に長い縦胴縁41である。各縦胴縁41は、上下方向にアダプター6を介して略一直線上に位置するように、パネル2毎に取り付けられている。アダプター6は、パネル2のロッキングに対し、縦胴縁41の動きを緩和できる機構を有している。化粧面材3は、縦胴縁41に横長に取り付けている。
【0055】
第2の態様によれば、縦胴縁41がパネル2毎で分離されているため、複数のパネル2のロッキングが、縦胴縁41で妨げられ難いとともに、アダプター6を介して縦胴縁41を取り付けているため、縦胴縁41の動きを緩和できるという利点がある。
【0056】
第3の態様は、第2の態様の壁構造であって、複数の縦胴縁41の長さは、各パネル2の長辺21の長さ以下である。複数の縦胴縁41は、上下に隣接する複数のパネル2の短辺22を跨らないように、パネル2毎に取り付けられている。
【0057】
第3の態様によれば、縦胴縁41がパネル2毎で分離されているため、複数のパネル2のロッキングが、縦胴縁41で妨げられ難い、という利点がある。すなわち、化粧面材3は横方向に取り付けられる場合が多く、必然的にその下地となる縦胴縁41は縦方向に取り付けることが必要となるが、パネル2は一般的に縦方向に配されていることが多いことから、縦胴縁41はパネルの向きと平行に取り付け、化粧面材3はそれと垂直に取り付ける。その際、パネル2の動きを拘束しないように縦胴縁41はパネル2の横目地を跨って固定しないように縁を切ることで、複数のパネル2はロッキングしやすくなる。
【0058】
第4の態様は、第2の態様の壁構造であって、複数の縦胴縁41の少なくとも1つは、少なくとも上部または下部のいずれかが、上下に隣接するパネル2の短辺22を跨ぐように、パネル2毎に取り付けられている。
【0059】
第4の態様によれば、縦胴縁41がパネル2毎に取り付けられて分離されているため、複数のパネル2のロッキングが、縦胴縁41で妨げられ難いとともに、隣接するパネル2間の目地と隣接する化粧面材3の目地の位置が略一致しても化粧面材3を取り付けることができるという利点がある。
【0060】
すなわち、縦胴縁41はパネル2の横目地でいったん縁切れさせる必要があるが、化粧面材3を横に積み上げていった場合に留具(留め金具)9等の取り付け位置がパネル2の横目地と干渉する場合が想定されるが、縦胴縁41を少し跨らせることで化粧面材3が取りつかないといった部分を回避することが可能である。
【0061】
第5の態様は、第2の態様の壁構造であって、各縦胴縁41の長さは、各パネル2の長辺21の長さ以下である。複数の縦胴縁41は、上下に隣接する複数のパネル2の短辺22を跨らないように、パネル2毎に取り付けられている。複数の縦胴縁41の少なくとも1つは、少なくとも上部又は下部のいずれかが、上下に隣接する複数のパネル2の短辺22を跨ぐように、延長用胴縁412が設置されている。
【0062】
第5の態様によれば、パネル2の長辺21の長さを超えるような縦胴縁41が縦胴縁本体411と延長用胴縁412とから容易に形成できる、という利点がある。
【0063】
すなわち、縦胴縁41はパネル2の横目地でいったん縁切れさせる必要があるが、化粧面材3を横に積み上げていった場合に留具(留め金具)9等の取り付け位置がパネル2の横目地と干渉する場合が想定されるが、必要な箇所のみ縦胴縁41を延長用胴縁412で延長させることも可能であり、化粧面材3が取りつかないといった部分を回避することができる。
【0064】
第6の態様は、第2乃至5のいずれか1つの態様の壁構造であって、アダプター6は、コ型の金属片であり、底面61の外側に防水テープ66が張られており、かつアダプター固定ボルト65を緊結する穴63が底面に、胴縁41を固定する穴64が側面62に、それぞれ設けられている。アダプター6は、パネル2に、アダプター固定ボルト65を介して固定されている。胴縁41はアダプター6の側面62の穴64にボルト7を介して固定されている。アダプター6は、パネル2のロッキングの動きに対し、アダプター固定ボルト65を中心に回転することで動きが緩和される機能を有している。アダプター6の側面62の穴64はルーズ形状とし、上下の動きに対し緩和させる機能を有している。
【0065】
第6の態様によれば、複数のパネル2のロッキングが、複数の化粧面材3及び胴縁4で妨げられ難い、という利点がある。
【0066】
すなわち、パネル2がロッキングした際、アダプター6は、アダプター固定ボルト65を中心にパネル2に対し右回り及び左回りに回転し、また、胴縁41は、胴縁固定用ボルト7が穴(連結孔)64のルーズ形状の長孔内をアダプター6に対して上下にスライドすることで、パネル2のロッキング動作を妨げ難くすることができる。
【0067】
第7の態様は、第2乃至6のいずれか1つの態様の壁構造であって、縦胴縁41には、縦胴縁41に対する回転機構と化粧面材3におけるスライド機構をもった留具(留め金具)9を介して化粧面材3が取り付けられている。留具(留め金具)9は、化粧面材3の実部33を挟み込むための爪が設けられており、留具(留め金具)9に設けられた穴にビス又はねじを介して、回転できるように1本で胴縁41に固定されている。化粧面材3は、爪92により実部33が挟み込まれて取り付けられることでパネル2のロッキングにあわせて横方向にスライドする機構を有している。
【0068】
第7の態様によれば、化粧面材3を胴縁41に対してスライドできるように取り付けられる、という利点がある。
【0069】
すなわち、一般的には化粧面材3もパネル2の横目地に跨らないようにすることが耐震上有利と考えられるが、化粧面材3の意匠性を考えるとパネル2の横目地に制約されることなく、連続して積み上げられることが望まれる。そのため、化粧面材3を取り付ける留具(留め金具)9で縦胴縁41に対して化粧面材3をスライドできるように取付けることで、従来縁を切ることが必須となる部分においても連続して積み上げることができ、意匠性に優れた壁面を実現することができる。
【0070】
第8の態様は、第1乃至7の態様のいずれか1つの壁構造であって、複数のパネル2は、ALCパネル2からなり、複数の化粧面材3は、窯業系サイディング3からなる。
【0071】
第8の態様によれば、胴縁4はアダプター6を介してパネル2に容易に取り付けられる建築物の壁において一般的に用いられるALCパネル2や窯業系サイディング3を用いることができる、という利点がある。
【0072】
第9の態様は、第1乃至8の態様のいずれか1つの壁構造であって、胴縁4は、溝形鋼44からなり、開口45側がパネル2側に向くよう取り付けられている。
【0073】
第9の態様によれば、ボルトなどの固定具65の頭部が開口45内に逃げるため、胴縁4をアダプター6の奥までしっかりと挿入でき、また胴縁4の軽量化を図ることができる、という利点がある。
【0074】
第10の態様は、第2乃至8の態様のいずれか1つの壁構造であって、胴縁4は、角型鋼管からなる。アダプター6の固定具63との干渉を防ぐ逃し孔48を設けてなる面がパネル2側に向くように取り付けられている。
【0075】
第10の態様によれば、ボルトなどの固定具65の頭部が逃し孔48内に逃げるため、胴縁4をアダプター6の奥までしっかりと挿入できる、という利点がある。
【符号の説明】
【0076】
1 外壁構造
2 パネル
21 長辺
22 短辺
3 化粧面材
31 長辺
32 短辺
33 実部
4 胴縁
41 縦胴縁
412 延長用胴縁
45 開口
48 逃し孔
5 構造躯体
6 アダプター
63 固定孔(穴)
64 連結孔(穴)
65 固定具(アダプター固定ボルト)
7 連結具(胴縁固定用ボルト)
9 留具
92 爪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21