(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123891
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】熱伝導ユニットおよび冷却装置
(51)【国際特許分類】
F28D 15/02 20060101AFI20230830BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
F28D15/02 G
H05K7/20 Q
F28D15/02 101H
F28D15/02 L
F28D15/02 102B
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088006
(22)【出願日】2021-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2020166441
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020183303
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503190785
【氏名又は名称】尼得科超▲しゅう▼科技股▲ふん▼有限公司
【住所又は居所原語表記】No.184-3,Zhongxing N.St.,Sanchong Dist.,New Taipei City 24158,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】小関 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】花野 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】高尾 征志
(72)【発明者】
【氏名】楊 仕▲ゆ▼
【テーマコード(参考)】
5E322
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA05
5E322AB01
5E322AB05
5E322AB09
5E322DA00
5E322DB12
5E322FA01
5E322FA04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】熱伝導部材が熱膨張して反りが発生することを抑制することができる熱伝導ユニットと、その熱伝導ユニットを備えた冷却装置とを提供する。
【解決手段】熱伝導ユニット1は、作動媒体2が収容される内部空間Sを有する熱伝導部材10と、熱伝導部材10を支持する支持部材20と、を備える。熱伝導部材10は、本体領域10Mと、熱伝導部材10の厚み方向から見て本体領域10Mの外周に沿って位置する外周領域10Cと、内部空間Sに配置される柱部と、を有する。支持部材20は、外周領域10Cの少なくとも一部を支持する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動媒体が収容される内部空間を有する熱伝導部材と、
前記熱伝導部材を支持する支持部材と、を備え、
前記熱伝導部材は、
本体領域と、
前記熱伝導部材の厚み方向から見て前記本体領域の外周に沿って位置する外周領域と、
前記内部空間に配置される柱部と、を有し、
前記支持部材は、前記外周領域の少なくとも一部を支持する、熱伝導ユニット。
【請求項2】
前記柱部は、
少なくとも1つの中実な中実柱部を有する請求項1に記載の熱伝導ユニット。
【請求項3】
前記柱部は、
少なくとも1つの多孔質な多孔質柱部を有する請求項1又は2に記載の熱伝導ユニット。
【請求項4】
前記熱伝導部材は、前記厚み方向から見て矩形の外形を有し、
前記外周領域は、前記矩形の長手方向に沿って延びる長手部を有し、
前記支持部材は、前記外周領域の前記長手部を支持する第1支持部を有する、請求項1~3のいずれかに記載の熱伝導ユニット。
【請求項5】
前記外周領域は、前記矩形の短手方向に沿って延びる短手部を有し、
前記支持部材は、前記外周領域の前記短手部を支持する第2支持部を有する、請求項4に記載の熱伝導ユニット。
【請求項6】
前記第1支持部および前記第2支持部は、前記熱伝導部材の前記矩形の外形に沿って交互につながる、請求項5に記載の熱伝導ユニット。
【請求項7】
前記厚み方向から見て、前記支持部材の前記第1支持部の前記短手方向の幅は、前記第2支持部の前記長手方向の幅よりも広い、請求項5又は6に記載の熱伝導ユニット。
【請求項8】
前記熱伝導部材は、前記厚み方向に重なって位置する第1プレートおよび第2プレートを有し、
前記第1プレートおよび前記第2プレートの少なくとも一方は、前記内部空間が形成される凹部を有し、
前記第1プレートは、前記内部空間の外側で前記第2プレートとつながる第1接合部を有し、
前記第2プレートは、前記内部空間の外側で前記第1プレートとつながる第2接合部を有し、
前記外周領域は、前記第1接合部および前記第2接合部を有し、
前記支持部材は、前記第1接合部および前記第2接合部の少なくとも一方を支持する、請求項5または6に記載の熱伝導ユニット。
【請求項9】
前記外周領域は、
前記第1接合部および前記第2接合部の接合領域と、
前記内部空間の閉鎖部を有する閉鎖領域と、を有し、
前記閉鎖領域の前記閉鎖部は、前記外周領域の前記長手部および前記短手部の少なくとも一方に位置し、
前記支持部材は、前記閉鎖部が位置する、前記長手部および前記短手部の少なくとも一方を支持する、請求項8に記載の熱伝導ユニット。
【請求項10】
前記厚み方向から見て、前記支持部材の前記第1支持部の前記短手方向の幅は、前記第2支持部の前記長手方向の幅よりも広く、
前記閉鎖部は、前記外周領域の前記長手部に位置する、請求項9に記載の熱伝導ユニット。
【請求項11】
前記熱伝導部材の厚み方向において、前記第1接合部の厚さと前記第2接合部の厚さとの和は、前記支持部材の厚さよりも小さい、請求項8から10のいずれかに記載の熱伝導ユニット。
【請求項12】
前記第1プレートおよび前記第2プレートの少なくとも一方は、
前記厚み方向と交差して位置する平板部と、
前記厚み方向から見て前記平板部を囲んで位置する壁部と、を有し、
前記第1接合部または前記第2接合部は、前記壁部を介して前記平板部とつながり、
前記支持部材は、前記壁部との間に隙間が介在する位置で、前記第1接合部または前記第2接合部を支持する、請求項8から11のいずれかに記載の熱伝導ユニット。
【請求項13】
前記第1プレートおよび前記第2プレートの少なくとも一方は、
前記厚み方向と交差して位置する平板部と、
前記厚み方向から見て前記平板部を囲んで位置する壁部と、を有し、
前記第1接合部または前記第2接合部は、前記壁部を介して前記平板部とつながり、
前記支持部材は、前記壁部と接触する位置で、前記第1接合部および前記第2接合部の少なくとも一方を支持し、
前記支持部材の前記壁部と対向する面から前記壁部に向かって突出し、前記壁部と接触する凸部を有する、請求項8から11のいずれかに記載の熱伝導ユニット。
【請求項14】
前記支持部材は、前記第1接合部および前記第2接合部の少なくとも一方と対向する対向面から突出し、前記第1接合部および前記第2接合部のうち少なくとも一方の前記対向面と対向する部分と接触する複数の凸部を有する請求項8から請求項13のいずれか記載の熱伝導ユニット。
【請求項15】
前記支持部材の熱伝導率は、前記第1プレートおよび前記第2プレートの熱伝導率よりも低い、請求項8から14のいずれかに記載の熱伝導ユニット。
【請求項16】
前記熱伝導部材と前記支持部材との間に配置され、前記熱伝導部材および前記支持部材のそれぞれと接触するスペーサ部をさらに有し、
前記スペーサ部の熱伝導率は、前記支持部材の熱伝導率よりも小さい請求項15に記載の熱伝導ユニット。
【請求項17】
前記スペーサ部は、前記熱伝導部材および前記支持部材の少なくとも一方と接着される接着層を有する請求項16に記載の熱伝導ユニット。
【請求項18】
前記熱伝導部材の放熱側に位置するフィンをさらに備える、請求項1から17のいずれかに記載の熱伝導ユニット。
【請求項19】
請求項18に記載の熱伝導ユニットと、
冷却媒体の供給口を有し、前記フィンを前記熱伝導部材とは反対側から覆う筐体と、を有する、冷却装置。
【請求項20】
締結部材をさらに備え、
前記支持部材は、第1貫通孔を有し、
前記熱伝導部材の前記外周領域は、第2貫通孔を有し、
前記筐体は、締結穴を有し、
前記第1貫通孔および前記第2貫通孔は、前記厚み方向において前記締結穴と重なって位置し、
前記締結部材は、前記第1貫通孔および前記第2貫通孔を貫通して、前記締結穴に固定される、請求項19に記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導ユニットおよび冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱伝導部材として平板状のベーパーチャンバーが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発熱体を冷却するために、熱伝導部材を発熱体に接触して配置したとき、発熱体が発熱して高温になると、発熱体の熱によって熱伝導部材が膨張し、反りが発生する虞がある。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、熱伝導部材が熱膨張して反りが発生することを抑制することができる熱伝導ユニットと、その熱伝導ユニットを備えた冷却装置とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的な熱伝導ユニットは、作動媒体が収容される内部空間を有する熱伝導部材と、前記熱伝導部材を支持する支持部材と、を備え、前記熱伝導部材は、本体領域と、前記熱伝導部材の厚み方向から見て前記本体領域の外周に沿って位置する外周領域と、前記内部空間に配置される柱部と、を有し、前記支持部材は、前記外周領域の少なくとも一部を支持する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、熱伝導部材が熱膨張して反りが発生することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態の熱伝導ユニットを下方から見たときの斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1の熱伝導ユニットをA-A線を含むZX断面で切断したときの断面図である。
【
図4】
図4は、
図1の熱伝導ユニットをB-B線を含むYZ断面で切断したときの断面図である。
【
図5】
図5は、
図1の熱伝導ユニットをC-C線を含むYZ断面で切断したときの断面図である。
【
図6】
図6は、熱伝導ユニットが有する熱伝導部材の底面図である。
【
図7】
図7は、閉鎖部を形成した後の熱伝導部材の斜視図である。
【
図8】
図8は、熱伝導ユニットが有する支持部材の底面図である。
【
図9】
図9は、熱伝導ユニットの他の構成を示す断面図である。
【
図10】
図10は、熱伝導ユニットのさらに他の構成を示す断面図である。
【
図11】
図11は、熱伝導ユニットのさらに他の構成を示す断面図である。
【
図12】
図12は、熱伝導ユニットのさらに他の構成を示す断面図である。
【
図13】
図13は、閉鎖部の形成前後での熱伝導部材の断面図である。
【
図14】
図14は、熱伝導部材の外周領域付近の構成を拡大して示す断面図である。
【
図15】
図15は、熱伝導部材の外周領域付近の他の構成を拡大して示す断面図である。
【
図16】
図16は、熱伝導部材の外周領域付近のさらに他の構成を拡大して示す断面図である。
【
図17】
図17は、冷却装置の概略の構成を示す断面図である。
【
図20】
図20は、支持部材のさらに他の構成を示す底面図である。
【
図21】
図21は、熱伝導部材の他の構成を示す斜視図である。
【
図22】
図22は、変形例の熱伝導ユニットの分解斜視図である。
【
図23】
図23は、熱伝導ユニットをZX断面で切断した断面図である。
【
図24】
図24は、熱伝導ユニットの他の例をYZ断面で切断した断面図である。
【
図25】
図25は、さらに別の変形例の熱伝導ユニットのYZ断面で切断した断面図である。
【
図27】
図27は、変形例の熱伝導ユニットのZX平面と平行な平面で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図面においては、適宜、3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、鉛直方向(すなわち上下方向)を示し、+Z方向が上側(重力方向の反対側)であり、-Z方向が下側(重力方向)である。Z軸方向は、後述する本実施形態の熱伝導ユニット、熱伝導部材および支持部材の厚み方向でもある。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向を指し、その正逆方向を、それぞれ+X方向および-X方向とする。Y軸方向は、Z軸方向およびX軸方向の両方向と直交する方向を指し、その正逆方向を、それぞれ+Y方向および-Y方向とする。
【0010】
本明細書において、AとBとが「垂直」であるとは、厳密にAとBとが90°の角度で交わることを指すが、90°から所定範囲内の角度(例えば90°±10°の範囲内の角度)で交わる場合も「垂直」の概念に含まれるとし、「垂直」として扱うことができるとする。また、AとBとが「平行」であるとは、厳密にAとBとのなす角度が0°でAとBとが交わらないことを指すが、AとBとのなす角度が所定範囲内の角度(例えば±10°の範囲内の角度)であって、交わっていない場合も「平行」の概念に含まれるとし、「平行」として扱うことができるとする。
【0011】
本明細書において、AとBとが「つながる」とは、AとBとが機械的に「接続」または「連結」されることを意味し、AとBとが電気的に接続されることを意味しない。また、空間を介さずに2部材を接触させて物理的、機械的な方法(例えば後述するホットプレス)等でつなぎ合わせることを、「接合する」と表現する場合もある。
【0012】
本明細書において、2部材の間に形成された孔が、一方の部材が物理的に変形して他の部材と接触することによって閉じることを、ここでは「閉鎖」と呼ぶ。「閉鎖」は、孔等の空間が間に存在している2部材を接触させる点で、間に空間が存在せず、最初から接触している2部材をつなぎ合わせる上記の「接合」とは区別される。
【0013】
〔1.熱伝導ユニットの概要〕
図1は、本実施形態の熱伝導ユニット1を下方から見たときの斜視図である。
図2は、
図1の熱伝導ユニット1の分解斜視図である。
図3は、
図1の熱伝導ユニット1をA-A線を含むZX断面で切断したときの断面図である。
図4は、
図1の熱伝導ユニット1をB-B線を含むYZ断面で切断したときの断面図である。
図5は、
図1の熱伝導ユニット1をC-C線を含むYZ断面で切断したときの断面図である。なお、
図1および
図2では、便宜的に、
図3に示す発熱体Hの図示を省略している。また、
図1では、熱伝導部材10において連通部60aを示しているが、これは連通部60aの説明の便宜のためであり、熱伝導ユニット1として実際に使用される場合は、
図7に示すように、連通部60aの少なくとも一部を押し潰して閉鎖部60を形成した状態で使用される。
【0014】
熱伝導ユニット1は、熱伝導部材10と、支持部材20と、フィン30と、を備える。なお、フィン30の設置を省略して熱伝導ユニット1を構成することも可能である。
【0015】
熱伝導部材10は、発熱体H(
図3参照)と接触して配置され、発熱体Hの熱を輸送して外部に放出する。上記の発熱体Hは、例えばインバータのパワートランジスタである。上記インバータは、例えば車両の車輪を駆動するためのトラクションモータに設けられる。この場合、上記パワートランジスタは、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。つまり、本実施形態の熱伝導ユニット1は、例えばIGBT用途に用いられて、IGBTを冷却する。
【0016】
なお、熱伝導ユニット1は、他の用途に用いられてもよい。例えば、熱伝導ユニット1は、電子機器用途に用いられてもよい。電子機器用途では、熱伝導ユニット1は、スマートフォンまたはノート型パーソナルコンピュータなどの電子機器に搭載されて、電子機器内の電子部品または基板を冷却する。
【0017】
本実施形態では、熱伝導部材10に対して-Z方向側に発熱体Hが接触して位置する。また、熱伝導部材10に対して+Z方向側にフィン30が位置する。この構成では、発熱体Hで発生した熱は、熱伝導部材10により+Z方向側に伝導され、フィン30を介して外部に放出される。したがって、本実施形態では、熱伝導部材10に対して-Z方向側が発熱側であり、+Z方向側が放熱側である。
【0018】
支持部材20は、発熱体Hと異なる位置で熱伝導部材10と接触する。本実施形態では、
図3に示すように、支持部材20は、発熱体Hと異なる位置で、熱伝導部材10を-Z方向側から、つまり、下方から支持する。なお、支持部材20は、熱伝導部材10に対して+Z方向側に取り付けられて、熱伝導部材10を上方から支持してもよい(
図9参照)。また、支持部材20は、熱伝導部材10を上方および下方の両方から支持してもよい(
図10参照)。さらに、支持部材20は、熱伝導部材10を上方および下方から挟み込んで支持してもよい(
図11参照)。すなわち、熱伝導ユニット1は、熱伝導部材10と、熱伝導部材10を支持する支持部材20と、を備える。
【0019】
フィン30は、熱伝導部材10に対して放熱側(+Z方向側)に位置する。フィン30は、例えばスタックドフィン30S(
図3~
図5参照)で構成される。スタックドフィン30Sは、金属製のベース30aと、複数の金属板30bと、を有する。ベース30aは、熱伝導部材10と接触する板状の部材である。金属板30bは、ベース30a上でY方向(またはX方向)に所定間隔で並べて配置される。ベース30aおよび金属板30bを構成する金属としては、例えば、銅、アルミニウム、合金など、熱伝導率の高い材料が用いられる。
【0020】
このように、本実施形態の熱伝導ユニット1は、熱伝導部材10の放熱側に位置するフィン30を備える。この構成では、フィン30を例えば空冷または水冷することにより、熱伝導部材10の放熱効率を向上させることができる。
【0021】
なお、フィン30は、ピンフィンで構成されてもよい。ピンフィンは、金属製のベース上に、複数の円柱状の金属製のピンをX方向およびY方向に所定の間隔で並べて配置することによって構成される。Z方向から見たときに、X方向に1列に並ぶ複数のピンフィンと、上記複数のピンフィンとY方向に隣り合って位置してX方向に並ぶ他の列の複数のピンフィンとは、X方向に半ピッチずれて位置する。フィン30は、他の金属板を介して熱伝導部材10上に位置してもよい。
【0022】
以下、上記した熱伝導部材10および支持部材20の詳細について、
図1~
図5を参照しつつ、さらに他の図面も参照して説明する。
図6は、熱伝導部材10を-Z方向側から見たときの底面図である。
図7は、連通部60aの一部を押し潰して閉鎖部60を形成した後の熱伝導部材10の斜視図である。
【0023】
〔2.熱伝導部材〕
まず、熱伝導部材10を厚み方向から見たときの各領域について説明する。
図6に示すように、熱伝導部材10は、厚み方向の一方側(例えば-Z方向側)から見て、本体領域10Mと、外周領域10Cと、を有する。
【0024】
(本体領域)
本体領域10Mは、発熱体Hで発生した熱を伝導する領域であり、後述する作動媒体2(
図3参照)を収容する領域でもある。外周領域10Cは、-Z方向から見て、本体領域10Mの外周に沿って位置する。すなわち、熱伝導部材10は、本体領域10Mと、熱伝導部材10の厚み方向から見て本体領域10Mの外周に沿って位置する外周領域10Cと、を有する。
【0025】
本実施形態では、-Z方向から見て、熱伝導部材10の外形は矩形である。すなわち、熱伝導部材10は、厚み方向から見て矩形の外形を有する。そして、-Z方向から見たとき、本体領域10Mは矩形状であり、外周領域10Cは枠状である。なお、本実施形態では、便宜的に、-Z方向から見て、熱伝導部材10の矩形の長手方向をX方向とし、短手方向をY方向とする。
【0026】
なお、
図6では、閉鎖部60の形成前の連通部60aが-Y方向に突出しているため、熱伝導部材10の外形が矩形であるとは正確には言いにくい。しかし、
図7に示すように、連通部60aを押し潰して閉鎖部60を形成した後、連通部60aの突出した部分に相当する突出部61が後述のように切断されると、熱伝導部材10の外形は-Z方向から見て矩形であると言うことができる。
【0027】
(外周領域)
外周領域10Cは、長手部10Lと、短手部10Sと、を有する。長手部10Lは、X方向に沿って延びる。すなわち、外周領域10Cは、矩形の長手方向に沿って延びる長手部10Lを有する。長手部10Lは、2本の長手部、つまり、第1長手部10L-1および第2長手部10L-2を有する。第1長手部10L-1および第2長手部10L-2は、Y方向に互いに離間した位置で、X方向に沿ってそれぞれ延びる。
【0028】
短手部10Sは、Y方向に沿って延びる。すなわち、外周領域10Cは、矩形の短手方向に沿って延びる短手部10Sを有する。短手部10Sは、2本の短手部、つまり、第1短手部10S-1および第2短手部10S-2を有する。第1短手部10S-1および第2短手部10S-2は、X方向に互いに離間した位置で、Y方向に沿ってそれぞれ延びる。
【0029】
第1長手部10L-1の+X方向側の端部は、第1短手部10S-1の-Y方向側の端部とつながる。第1長手部10L-1の-X方向側の端部は、第2短手部10S-2の-Y方向側の端部とつながる。第2長手部10L-2の+X方向側の端部は、第1短手部10S-1の+Y方向側の端部とつながる。第2長手部10L-2の-X方向側の端部は、第2短手部10S-2の+Y方向側の端部とつながる。これにより、-Z方向側から見て反時計回りに、第1長手部10L-1、第2短手部10S-2、第2長手部10L-2、および第1短手部10S-1が順につながる。その結果、-Z方向から見て枠状の外周領域10Cが形成される。
【0030】
後述するように、支持部材20は、第1貫通孔20a(
図5参照)を有する。外周領域10Cは、第2貫通孔10aを有する。第2貫通孔10aは、外周領域10CをZ方向に貫通する孔である。第2貫通孔10aは、第1貫通孔20aとZ方向において重なって位置する。第2貫通孔10aは、後述する第1プレート4の第1開口部4aと、後述する第2プレート5の第2開口部5aと、をZ方向に重ね合わせて構成される。
【0031】
第1貫通孔20aおよび第2貫通孔10aには、締結部材50(
図5参照)が挿入される。締結部材50は、例えばボルトまたはビスである。第1貫通孔20aおよび第2貫通孔10aへの締結部材50の挿入後に、締結部材50の先端をナットで固定することにより、熱伝導部材10と支持部材20とが締結(共締め)される。なお、ナットを用いず、締結部材50の先端をかしめる等により、熱伝導部材10と支持部材20とが締結されてもよい。なお、
図6では、外周領域10Cに合計16個の第2貫通孔10aが図示されているが、第2貫通孔10aの個数は、任意に設定されればよい。また、外周領域10Cにおける第2貫通孔10aの形成位置も任意に設定されればよい。
【0032】
次に、熱伝導部材10の断面構成について説明する。
図3~
図5に示すように、熱伝導部材10は、作動媒体2と、ウィック構造体3と、第1プレート4と、第2プレート5と、を備える。
【0033】
(作動媒体)
作動媒体2は、熱を輸送するために熱伝導部材10の内部空間Sに収容される。作動媒体2は、例えば水であるが、アルコールなどの他の液体であってもよい。作動媒体2は、支持部材20で熱伝導部材10が支持された後、連通孔60a1(
図13参照)を有する連通部60aを介して内部空間Sに注入される。作動媒体2の内部空間Sへの注入後は、
図7に示すように、押圧部材70によって連通部60aの一部が押し潰される。これにより、連通部60aの連通孔60a1が閉じられて、内部空間Sの閉鎖部60が形成される。
【0034】
なお、
図7では、連通部60aの一部のみを押圧部材70で押し潰して閉鎖部60を形成しているが、連通部60aの全体を押し潰して閉鎖部60を形成してもよい。また、
図7では、閉鎖部60は、外周領域10Cから-Y方向側に突出する突出部61を有しているが、この突出部61は切断されて除去されてもよい。
【0035】
内部空間Sは密閉空間であり、例えば大気圧よりも気圧が低い減圧状態に維持される。内部空間Sが減圧状態であることにより、内部空間Sに収容される作動媒体2が蒸発しやすくなる。熱伝導部材10のZ方向の厚みは、IGBT用途では例えば3mm以上であり、電子機器用途では例えば0.3mm以下である。
【0036】
(ウィック構造体)
図3等に示すウィック構造体3は、熱伝導部材10において作動媒体2の内部空間S内に位置する。ウィック構造体3は、多孔質のウィック構造を有し、毛細管現象によって作動媒体2を輸送する。このようなウィック構造体3は、例えば銅の焼結体で構成される。なお、「焼結」とは、金属の粉末または上記金属を含むペーストを、上記金属の融点よりも低い温度まで加熱して、上記金属の粒子を焼き固める技術を指す。そして、「焼結体」とは、焼結によって得られる物体を指す。ウィック構造体3の厚みは、IGBT用途では例えば1mm以下であり、電子機器用途では例えば0.1mm以下である。ウィック構造体3は、上記した本体領域10Mに位置する。
【0037】
なお、ウィック構造体3は、内部空間S内で、毛細管現象によって作動媒体2を輸送できる構造であればよい。したがって、ウィック構造体3は、上記した多孔質のウィック構造(焼結ウィック)のほか、金属メッシュからなるメッシュウィック、溝構造を有するグルーブウィックであってもよい。
【0038】
(第1プレート)
第1プレート4は、平板状の金属板であり、例えば銅板である。なお、第1プレート4は、銅以外の金属の表面に銅メッキを施して形成されてもよい。銅以外の金属としては、例えばステンレス鋼が考えられる。第1プレート4は、第2プレート5に対して+Z方向側に位置する。すなわち、熱伝導部材10は、厚み方向に重なって位置する第1プレート4および第2プレート5を有する。
【0039】
第1プレート4は、第1平板部4Pと、第1接合部4Cと、を有する。第1平板部4Pは、本体領域10Mに位置し、+Z方向と交差する方向(例えばX方向およびY方向)に延びる。なお、第1平板部4Pは、平板部Pの一例である。第1接合部4Cは、外周領域10Cに位置し、Z方向において第1平板部4Pと同じ位置で、第1平板部4Pとつながる。また、第1接合部4Cは、後述する凹部5Kの外側で、つまり、凹部5K内の内部空間Sの外側で、第2プレート5の後述する第2接合部5CとZ方向につながる。すなわち、第1プレート4は、内部空間Sの外側で第2プレート5とつながる第1接合部4Cを有する。
【0040】
第1接合部4Cには、Z方向に貫通する第1開口部4a(
図5参照)が設けられる。第1接合部4Cにおいて、第1開口部4aは、後述する第2プレート5の第2開口部5aとZ方向において重なって位置する。第1開口部4aと第2開口部5aとで、第2貫通孔10aが形成される。
【0041】
第1プレート4の第1平板部4Pには、-Z方向に延びる柱部13(後述の
図27参照)が一体的に形成される。柱部13は、ピラーとも呼ばれ、第2プレート5の後述する第2平板部5Pと接触して、第1平板部4Pと第2平板部5Pとの距離を一定に保つ。これにより、第1平板部4Pと第2平板部5Pとの間に、Z方向の厚みが一定の内部空間Sが確保される。なお、柱部13は、第1プレート4と別体で形成されてもよい。
【0042】
(第2プレート)
第2プレート5は、第1プレート4と同じ金属材料で構成される。したがって、第1プレート4が銅で構成される場合、第2プレート5も銅で構成される。また、第1プレート4がステンレス鋼の表面に銅メッキを施した金属板で構成される場合、第2プレート5もステンレス鋼の表面に銅メッキを施した金属板で構成される。なお、第2プレート5は、第1プレート4と異なる金属材料で構成されていてもよい。
【0043】
第2プレート5は、第2平板部5Pと、第2壁部5Wと、第2接合部5Cと、を有する。第2平板部5Pは、本体領域10Mに位置し、Z方向と交差する方向(例えばX方向およびY方向)に延びる。なお、第2平板部5Pは、平板部Pの一例である。第2壁部5Wは、本体領域10Mにおいて、+Z方向から見て第2平板部5Pを囲んで位置する。また、第2壁部5Wは、第2平板部5Pと交差する方向(例えば-Z方向)に延びて第2平板部5Pとつながる。なお、第2壁部5Wは、壁部Wの一例である。
【0044】
第2平板部5Pおよび第2壁部5Wにより、-Z方向に凹む形状の凹部5Kが形成される。凹部5K内には、上記の作動媒体2が収容される。したがって、凹部5Kは、作動媒体2の内部空間Sを形成する。なお、凹部5Kは、内部に作動媒体2の内部空間Sを有する凹部Kの一例である。
【0045】
なお、凹部Kは、後述するように、第1プレート4に設けられてもよいし(
図9参照)、第1プレート4および第2プレート5の両方に設けられてもよい(
図10参照)。したがって、本実施形態では、第1プレート4および第2プレート5の少なくとも一方は、内部に作動媒体2の内部空間Sを有する凹部Kを有する。
【0046】
第2接合部5Cは、外周領域10Cに位置するとともに、第2平板部5PとZ方向において異なる位置にある。具体的には、第2接合部5Cは、第2平板部5Pよりも+Z方向側に位置する。そして、第2接合部5Cは、第2壁部5Wを介して第2平板部5Pとつながる。また、第2接合部5Cは、凹部5Kの外側で、つまり、凹部5K内の内部空間Sの外側で、第1プレート4の第1接合部4CとZ方向につながる。すなわち、第2プレート5は、内部空間Sの外側で第1プレート4とつながる第2接合部5Cを有する。
【0047】
上記のように、第1プレート4の第1接合部4C、および第2プレート5の第2接合部5Cは両方とも、熱伝導部材10の外周領域10Cに位置する。すなわち、外周領域10Cは、第1接合部4Cおよび第2接合部5Cを有する。
【0048】
第1接合部4Cと第2接合部5Cとは、例えば、ホットプレス、拡散接合、ろう材を用いた接合(ろう付け)などの方法により接合され、これによってZ方向につながる。なお、ホットプレスおよび拡散接合は、いずれも加熱および加圧によって2つの部材を接合する方法であるが、以下の点で互いに区別される。拡散接合では、例えば数時間の加熱および加圧により、2つの部材の接合界面付近の原子または粒子を拡散させて、2つの部材を接合する。これに対して、ホットプレスでは、拡散接合よりも低温および短時間での加熱および加圧により、2つの部材の接合界面付近の一部の原子または粒子のみを拡散させて、2つの部材を接合する。
【0049】
第2プレート5の第2接合部5Cには、Z方向に貫通する第2開口部5a(
図5参照)が設けられる。第2接合部5Cにおいて、第2開口部5aは、支持部材20の第1貫通孔20aとZ方向において重なって位置する。これにより、支持部材20の第1貫通孔20aに挿入される締結部材50が、熱伝導部材10の第2貫通孔10a(第2開口部5a、第1開口部4a)にも挿入される。
【0050】
上記の構成の熱伝導部材10において、発熱体Hが冷却される原理は、以下の通りである。例えば
図3において、発熱体Hの熱により、熱伝導部材10において発熱体Hとの接触部分が加熱されると、熱伝導部材10の内部空間Sに収容された作動媒体2が気化する。気化した蒸気は、熱伝導部材10の内部を発熱体Hから遠ざかる側へ移動する。そして、蒸気は、熱伝導部材10の内部を移動するにつれて放熱によって冷却され、液化する。特に、熱伝導部材10と接触するフィン30を空冷または水冷することにより、放熱が促進され、蒸気の冷却および液化が進む。
【0051】
放熱によって液化した作動媒体2は、熱伝導部材10の凹部5Kの内面またはピラーの側面を伝って、さらには毛細管現象によってウィック構造体3の内部を流れ、発熱体H側に向かって移動する。なお、
図3等では、作動媒体2が気化した蒸気の流れを黒矢印で示し、液体の作動媒体2の流れを白抜き矢印で示す。上記のように作動媒体2が状態変化を伴いながら移動することにより、熱伝導部材10の内部で発熱側から放熱側への熱の輸送が連続的に行われる。このような熱の輸送により、熱伝導部材10と接触する発熱体Hが冷却される。
【0052】
〔3.支持部材〕
次に、支持部材20の詳細について説明する。
図8は、支持部材20を-Z方向側から見たときの底面図である。支持部材20は、熱伝導部材10の外周領域10Cの全体を-Z方向側から支持する。なお、支持部材20は、外周領域10Cの一部のみを支持してもよいが、この例については後述する。したがって、本実施形態では、支持部材20は、熱伝導部材10の外周領域10Cの少なくとも一部を支持する。支持部材20は、例えばステンレス鋼(SUS)で形成されるが、支持部材20の構成材料の詳細については後述する。
【0053】
本実施形態では、熱伝導部材10において、支持部材20で支持される部分が外周領域10Cであるため、
図3で示したように、残りの本体領域10Mに、IGBTなどの発熱体Hを接触させることができる。これにより、発熱体Hで発生する熱を本体領域10Mで放熱側に伝導させて、発熱体Hを冷却することができる。また、熱伝導部材10の外周領域10Cの少なくとも一部が支持部材20によって支持されるため、熱伝導部材10に反りや撓みなどの変形が生じにくくなる。したがって、熱伝導部材10に発熱体Hから高温の熱が付与された場合でも、熱伝導部材10の熱膨張による反り(撓み)を抑制することができる。
【0054】
支持部材20は、第1支持部21と、第2支持部22と、を有する。第1支持部21は、熱伝導部材10の外周領域10Cの長手部10L(
図6参照)を-Z方向から支持する。すなわち、支持部材20は、外周領域10Cの長手部10Lを支持する第1支持部21を有する。
【0055】
第1支持部21が長手部10Lを支持することにより、熱膨張によって生じやすい熱伝導部材10の長手部10Lの反りを、第1支持部21によって抑制することができる。これにより、熱膨張による熱伝導部材10全体の反りを抑制することができる。
【0056】
第2支持部22は、外周領域10Cの短手部10S(
図6参照)を-Z方向から支持する。すなわち、支持部材20は、外周領域10Cの短手部10Sを支持する第2支持部22を有する。
【0057】
第2支持部22が短手部10Sを支持することにより、熱膨張による熱伝導部材10の短手部10Sの反りを、第2支持部22によって抑制することができる。これにより、例えば支持部材20が長手部10Lのみを支持する構成に比べて、熱膨張による熱伝導部材10全体の反りをさらに抑制することができる。
【0058】
このように、支持部材20は、外周領域10Cの一部(例えば長手部10L)を支持する第1支持部21と、外周領域10Cの他の一部(例えば短手部10S)を支持する第2支持部22と、を有する。また、
図8に示すように、第1支持部21はX方向に延び、第2支持部22はY方向に延びる。すなわち、第1支持部21および第2支持部22は、厚み方向に垂直な方向で、かつ、互いに異なる2方向(X方向、Y方向)にそれぞれ延びる。
【0059】
異なる2方向に延びる第1支持部21および第2支持部22によって、熱伝導部材10の外周領域10Cが支持されることにより、熱伝導部材10に反りや撓みなどの変形を生じにくくさせることができる。これにより、上述した熱伝導部材10の熱膨張による反りを抑制する効果を高めることができる。
【0060】
以下、第1支持部21および第2支持部22の詳細について説明する。
【0061】
(第1支持部)
第1支持部21は、第1長手支持部21-1と、第2長手支持部21-2と、を有する。第1長手支持部21-1と第2長手支持部21-2とは、Y方向に互いに離間した位置で、X方向に沿ってそれぞれ延びる。第1長手支持部21-1は、外周領域10Cの第1長手部10L-1を支持する。第2長手支持部21-2は、外周領域10Cの第2長手部10L-2を支持する。
【0062】
第1長手支持部21-1は、第1窪み面20Rと、第2窪み面20Sと、を有する。第1窪み面20Rは、+Y方向に窪んだ凹形状の面であり、円筒状の押圧部材70(
図7参照)の外周面に沿って+Z方向に延びる。支持部材20が第1窪み面20Rを有することにより、熱伝導部材10を支持部材20で支持した状態で、第1窪み面20Rに沿って押圧部材70をZ方向に移動させ、連通部60aを押し潰すことができる。つまり、押圧部材70を支持部材20と干渉させることなくZ方向に移動させて、連通部60aを押し潰すことができる。
【0063】
第2窪み面20Sは、-Z方向に窪んだ凹形状の面であり、熱伝導部材10の連通部60a(
図1、
図7等参照)の外周面に沿って+Y方向に延びる。支持部材20が第2窪み面20Sを有することにより、熱伝導部材10に連通部60aが存在する状態であっても、連通部60aを押し潰すことなく支持部材20を熱伝導部材10の外周領域10Cに接触させて、外周領域10Cを支持することができる。
【0064】
(第2支持部)
第2支持部22は、第1短手支持部22-1と、第2短手支持部22-2と、を有する。第1短手支持部22-1と第2短手支持部22-2とは、X方向に互いに離間した位置で、Y方向に沿ってそれぞれ延びる。第1短手支持部22-1は、外周領域10Cの第1短手部10S-1を支持する。第2短手支持部22-2は、外周領域10Cの第2短手部10S-2を支持する。
【0065】
上記した第1長手支持部21-1の+X方向側の端部は、第1短手支持部22-1の-Y方向側の端部とつながる。第1長手支持部21-1の-X方向側の端部は、第2短手支持部22-2の-Y方向側の端部とつながる。第2長手支持部21-2の+X方向側の端部は、第1短手支持部22-1の+Y方向側の端部とつながる。第2長手支持部21-2の-X方向側の端部は、第2短手支持部22-2の+Y方向側の端部とつながる。これにより、-Z方向側から見て反時計回りに、熱伝導部材10の矩形の外形に沿って、第1長手支持部21-1、第2短手支持部22-2、第2長手支持部21-2、および第1短手支持部22-1が順につながる。すなわち、第1支持部21および第2支持部22は、熱伝導部材10の矩形の外形に沿って交互につながる。その結果、-Z方向から見て枠状の支持部材20が形成される。つまり、支持部材20として、-Z方向から見て中央に矩形の開口20Pを有するフレーム20Fが形成される。
【0066】
第1支持部21および第2支持部22が交互につながることにより、熱伝導部材10の長手部10Lおよび短手部10Sが支持部材20によって一続きに支持される。これにより、熱伝導部材10の熱膨張による反りの抑制効果を高めることができる。また、熱伝導ユニット1全体の機械的強度を確保することも可能となる。さらに、中央に開口20Pを有するフレーム20Fが形成されるため、開口20Pに熱伝導部材10の本体領域10Mを嵌め込むことで、外周領域10Cを支持部材20で支持する熱伝導ユニット1を容易に実現することができる。
【0067】
支持部材20は、第1貫通孔20aを有する。第1貫通孔20aは、支持部材20をZ方向に貫通する孔である。第1貫通孔20aは、支持部材20の第1支持部21に位置するとともに、熱伝導部材10の第2貫通孔10aとZ方向において重なって位置する。第1貫通孔20aおよび第2貫通孔10aの各内径は、締結部材50(
図5参照)の挿入部の径に応じて個別に設定されればよい。したがって、第1貫通孔20aおよび第2貫通孔10aの各内径は、互いに一致してもよいし、不一致であってもよい。
【0068】
(第1支持部の幅と第2支持部の幅との関係)
図8に示すように、厚み方向から見て、第1支持部21の幅WD1は、第2支持部22の幅WD2と異なる。本実施形態では、厚み方向から見て、支持部材20の第1支持部21の幅WD1は、第2支持部22の幅WD2よりも広い。なお、幅WD1および幅WD2の単位は、ともにmm(ミリメートル)である。ここで、「幅」とは、厚み方向であるZ方向に垂直なXY面内で、支持部材20が延びる方向に垂直な方向の長さを指す。したがって、第1支持部21の幅WD1とは、XY面内で第1支持部21が延びるX方向に垂直なY方向(短手方向)における第1支持部21の長さを指す。また、第2支持部22の幅WD2とは、XY面内で第2支持部22が延びるY方向に垂直なX方向(長手方向)における第2支持部22の長さを指す。つまり、厚み方向から見て、第1支持部21の、延びる方向に垂直な方向の幅WD1は、第2支持部22の、延びる方向に垂直な方向の幅WD2と異なる。特に、厚み方向から見て、支持部材20の第1支持部21の(矩形の)短手方向の幅WD1は、第2支持部22の(矩形の)長手方向の幅WD2よりも広い。
【0069】
WD1>WD2の関係により、支持部材20の厚みを一定として、第2支持部22よりも高い強度を第1支持部21に持たせることができる。これにより、熱膨張による熱伝導部材10の長手部10Lの反りを第1支持部21によって抑制する効果を高めて、熱伝導部材10全体の反りを抑制する効果を高めることができる。
【0070】
〔4.熱伝導ユニットの他の構成〕
図9は、熱伝導ユニット1の他の構成を示す断面図である。熱伝導部材10の第1プレート4は凹部4Kを有し、第2プレート5は平板で構成されてもよい。以下、この構成について説明する。
【0071】
図9の構成では、第1プレート4は、上述した第1平板部4Pおよび第1接合部4Cに加えて、第1壁部4Wをさらに有する。第1壁部4Wは、本体領域10Mにおいて、+Z方向から見て第1平板部4Pを囲んで位置する。また、第1壁部4Wは、第1平板部4Pと交差する方向(例えば+Z方向)に延びて第2平板部5Pとつながる。なお、第1壁部4Wは、壁部Wの一例である。
【0072】
第1接合部4Cは、外周領域10Cに位置するとともに、第1平板部4PとZ方向において異なる位置にある。具体的には、第1接合部4Cは、第1平板部4Pに対して-Z方向側に位置する。そして、第1接合部4Cは、第1壁部4Wを介して第1平板部4Pとつながる。
【0073】
第1平板部4Pおよび第1壁部4Wにより、+Z方向に凹む形状の凹部4Kが形成される。凹部4K内には、上記の作動媒体2が収容される。したがって、凹部4Kは、作動媒体2の内部空間Sを形成する。なお、凹部4Kは、内部に作動媒体2の内部空間Sを有する凹部Kの一例である。第1プレート4の第1接合部4Cと、第2プレート5の第2接合部5Cとは、凹部4Kの外側でZ方向につながる。つまり、第1接合部4Cと第2接合部5Cとは、凹部4K内の内部空間Sの外側でZ方向につながる。
【0074】
図9の構成では、支持部材20は、第1接合部4Cを+Z方向側から支持してもよい。このような支持部材20の支持は、例えば
図5の構成と同様に、締結部材50を用いて支持部材20と熱伝導部材10とを共締めすることによって行われる。
【0075】
図10は、熱伝導ユニット1のさらに他の構成を示す断面図である。熱伝導部材10は、第1プレート4が上述した凹部4Kを有し、第2プレート5も上述した凹部5Kを有することによって形成されてもよい。
【0076】
図10の構成では、2つの支持部材20によって熱伝導部材10を支持してもよい。つまり、一方の支持部材20により、熱伝導部材10の第1接合部4Cを+Z方向側から支持し、他方の支持部材20により、熱伝導部材10の第2接合部5Cを-Z方向側から支持してもよい。このような2つの支持部材20の支持は、例えば
図5の構成と同様に、締結部材50を用いて2つの支持部材20と熱伝導部材10とを共締めすることによって行われる。
【0077】
図11は、熱伝導ユニット1のさらに他の構成を示す断面図である。
図10と同様の構成を有する熱伝導部材10を用いた構成において、支持部材20は、第1プレート4の第1接合部4Cおよび第2プレート5の第2接合部5Cを上下方向から挟み込む形状で形成されて、熱伝導部材10を支持してもよい。
【0078】
図12は、熱伝導ユニット1のさらに他の構成を示す断面図である。第2プレート5の第2接合部5Cは、第1プレート4の第1壁部4WとZ方向につながってもよい。この場合、第1壁部4Wは第1接合部4Cを兼ねる。そして、第1接合部4Cは、内部空間Sの外側で第2プレート5とZ方向につながる。また、第2接合部5Cは、内部空間Sの外側で第1プレート4とZ方向につながる。
【0079】
図12の構成では、支持部材20は、第2接合部5Cを-Z方向側から支持してもよい。なお、支持部材20による支持は、第1貫通孔20aおよび第2貫通孔10aへの締結部材50の挿入によって行われてもよいし、専用の固定治具(図示せず)を用いて熱伝導部材10と支持部材20とを固定することによって行われてもよい。
【0080】
すなわち、
図3、
図9~
図12に示したように、支持部材20は、第1接合部4Cおよび第2接合部5Cの少なくとも一方を支持する。
【0081】
第1プレート4と第2プレート5とが第1接合部4Cおよび第2接合部5Cでつながり、内部に作動媒体2の内部空間Sを有する熱伝導部材10は、ベーパーチャンバーとも呼ばれる。熱伝導部材10がベーパーチャンバーで構成される場合でも、支持部材20が外周領域10Cの第1接合部4Cおよび第2接合部5Cの少なくとも一方を支持することにより、ベーパーチャンバーの熱膨張による反りを抑制することができる。
【0082】
〔5.熱伝導部材の閉鎖部の詳細について〕
次に、熱伝導部材10が有する閉鎖部60の詳細について説明する。
図13は、閉鎖部60の形成前後での熱伝導部材10の断面図である。
図13の下段に示すように、熱伝導部材10の外周領域10Cは、接合領域CRと、閉鎖領域NRと、を有する。接合領域CRは、第1接合部4Cと第2接合部5Cとが接合される領域である。なお、ここでの接合とは、上述したように、ホットプレス等による接合を指す。
【0083】
一方、閉鎖領域NRは、内部空間S(
図3等参照)の閉鎖部60を有する領域である。すなわち、外周領域10Cは、第1接合部4Cおよび第2接合部5Cの接合領域CRと、内部空間Sの閉鎖部60を有する閉鎖領域NRと、を有する。閉鎖部60は、ホットプレス等による接合ではなく、上述のように、押圧部材70(
図7参照)によって連通部60aを押し潰すことによって形成される。連通部60aは、内部空間Sと連通する連通孔60a1を有する。このため、連通部60aが押し潰されると、内部空間Sと連通する連通孔60a1が閉じる。その結果、内部の内部空間Sを閉鎖する閉鎖部60が形成される。なお、
図13では、外周領域10Cにおいて、閉鎖部60が形成される前の領域、つまり、連通部60aが位置する領域を、閉鎖前領域NR-1として示す。
【0084】
外周領域10Cにおいて、接合領域CRと閉鎖領域NRとは、例えば矩形の長手方向(X方向)に並んで位置する。つまり、外周領域10Cにおいて、接合領域CRと閉鎖領域NRとは異なる位置にある。このような接合領域CRと閉鎖領域NRとの位置関係は、以下のようにして実現される。
【0085】
まず、外周領域10Cにおいて、閉鎖前領域NR-1を除く領域に、第1接合部4Cと第2接合部5Cとをホットプレス等により接合する。そして、熱伝導部材10の外周領域10Cを支持部材20によって支持する。この状態で、連通部60aの連通孔60a1を介して内部空間Sに作動媒体2(
図3等参照)を注入する。その後、押圧部材70(
図7参照)によって閉鎖前領域NR-1の連通部60aを押し潰して閉鎖部60を形成する。これにより、第1接合部4Cと第2接合部5Cとを接合した接合領域CRとは異なる位置に、閉鎖部60を有する閉鎖領域NRが形成される。すなわち、外周領域10Cは、第1接合部4Cおよび第2接合部5Cの接合領域CRとは異なる位置に、内部空間Sの閉鎖部60を有する。言い換えれば、外周領域10Cは、内部空間Sと外部との連通部分(連通部60a)を押し潰して閉鎖した形状の閉鎖部60を有する。
【0086】
本実施形態では、
図7に示すように、上記の閉鎖部60は、外周領域10Cの長手部10Lに位置する。そして、支持部材20は、閉鎖部60が位置する長手部10Lを支持する(
図1、
図8等参照)。すなわち、閉鎖部60は、外周領域10Cにおいて、第1支持部21および第2支持部22のうち、厚み方向から見たときの幅がより広い方(ここでは第1支持部21)によって支持される被支持領域10P上に位置する。なお、被支持領域10Pは、本実施形態では長手部10Lを指す。
【0087】
なお、上記の閉鎖部60は、外周領域10Cの短手部10Sに位置してもよい(
図21照)。この場合、支持部材20は、閉鎖部60が位置する短手部10Sを支持してもよい。また、閉鎖部60は、外周領域10Cの長手部10Lと短手部10Sとの両方に位置してもよい。つまり、熱伝導部材10の外周領域10Cは閉鎖部60を複数有し、各閉鎖部60が外周領域10Cの長手部10Lと短手部10Sとの両方に位置してもよい(
図7と
図21とを組み合わせた構成であってもよい)。この場合、支持部材20は、各閉鎖部60が位置する長手部10Lおよび短手部10Sの両方を支持してもよい。
【0088】
つまり、閉鎖部60は、外周領域10Cの長手部10Lおよび短手部10Sの少なくとも一方に位置する。そして、支持部材20は、閉鎖部60が位置する、長手部10Lおよび短手部10Sの少なくとも一方を支持する。
【0089】
支持部材20は、閉鎖部60が位置する外周領域10C(長手部10Lおよび短手部10Sの少なくとも一方)を支持するため、閉鎖部60が位置する部分における外周領域10Cの強度を確保することができる。これにより、内部空間Sの閉鎖部60を形成する前に、つまり、内部空間Sと連通していた連通孔60a1を閉鎖する前に、その連通孔60a1を介して、内部の内部空間Sに作動媒体2を安定して注入することができる。
【0090】
本実施形態では、支持部材20の第1支持部21および第2支持部22は、上述したように幅が互いに異なる(WD1>WD2)。このため、第1支持部21および第2支持部22に異なる強度を持たせることができる。特に、より幅の広い支持部(例えば第1支持部21)によって支持される被支持領域10Pは、より幅の狭い支持部(例えば第2支持部22)によって支持される外周領域10Cの一部よりも高い強度が確保される。閉鎖部60は、外周領域10Cにおいてより強度の高い被支持領域10P上に位置するため、被支持領域10Pに閉鎖部60を形成する前に、つまり、内部空間Sと連通していた連通孔60a1を閉鎖する前に、その連通孔60a1を介して、内部の内部空間Sに作動媒体2を安定して注入することができるとも言える。
【0091】
特に、
図8で示したように、WD1>WD2である本実施形態では、閉鎖部60は、外周領域10Cの長手部10Lに位置する(
図7参照)。つまり、厚み方向から見て、支持部材20の第1支持部21の(矩形の)短手方向の幅WD1は、第2支持部22の(矩形の)長手方向の幅WD2よりも広く、閉鎖部60は、第1支持部21で支持される外周領域10Cの長手部10Lに位置する。
【0092】
WD1>WD2である場合、第2支持部22よりも高い強度を第1支持部21に持たせることができる。そして、より強度の高い第1支持部21により、外周領域10Cの長手部10Lが安定して支持される。したがって、反りが生じやすい長手部10Lに閉鎖部60を位置させる構成であっても、閉鎖部60を形成する前に(連通孔60a1の閉鎖前に)、連通孔60a1を介して、内部の内部空間Sに作動媒体2を安定して注入することができる。
【0093】
〔6.第1接合部、第2接合部および支持部材の厚みの関係〕
図14は、熱伝導部材10の外周領域10C付近の構成を拡大して示す断面図である。本実施形態では、熱伝導部材10の厚み方向において、第1接合部4Cの厚さをT1(mm)とし、第2接合部5Cの厚さをT2(mm)とし、支持部材20の厚さをT3(mm)としたとき、
T1+T2<T3
である。つまり、熱伝導部材10の厚み方向において、第1接合部4Cの厚さと第2接合部5Cの厚さとの和は、支持部材20の厚さよりも小さい。例えば、T1=0.5mm、T2=0.5mm、T3=2mmに設定することにより、上記の条件が満足される。
【0094】
上記のT1、T2およびT3の関係では、第1接合部4Cおよび第2接合部5Cのトータルの厚みよりも、支持部材20の厚みが大きい。このため、第1接合部4Cおよび第2接合部5Cのトータルの厚みに対して、熱伝導部材10の反りの抑制に必要な支持部材20の剛性を確保することができる。
【0095】
ここで、第2プレート5全体のZ方向の厚さをTB(mm)としたとき、
図14では、T2+T3=TBとなっているが、T1+T2<T3を満足するのであれば、T2+T3=TBには限定されない。つまり、熱伝導部材10の厚み方向において、第2接合部5Cの厚さと支持部材20の厚さとの和は、第2プレート5全体の厚さと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0096】
図15は、熱伝導部材10の外周領域10C付近の他の構成を拡大して示す断面図である。T1+T2<T3を満足するのであれば、同図に示すように、T2+T3<TBであってもよい。つまり、熱伝導部材10の厚み方向において、第2接合部5Cの厚さと支持部材20の厚さとの和は、第2プレート5全体の厚さよりも小さくてもよい。
【0097】
図16は、熱伝導部材10の外周領域10C付近のさらに他の構成を拡大して示す断面図である。T1+T2<T3を満足するのであれば、同図に示すように、T2+T3>TBであってもよい。つまり、熱伝導部材10の厚み方向において、第2接合部5Cの厚さと支持部材20の厚さとの和は、第2プレート5全体の厚さよりも大きくてもよい。
【0098】
〔7.壁部に対する支持部材の位置について〕
図14で示した構成では、第2プレート5が、第2平板部5Pと、第2壁部5Wと、第2接合部5Cと、を有する。そして、支持部材20が第2接合部5Cを支持する。この構成では、支持部材20は、第2壁部5Wとの間に隙間d(mm)が介在する位置で、第2接合部5Cを支持することが望ましい。なお、隙間dの値は、任意に設定可能である。
【0099】
また、
図9で示した構成では、第1プレート4が、第1平板部4Pと、第1壁部4Wと、第1接合部4Cと、を有する。そして、支持部材20が第1接合部4Cを支持する。この構成では、支持部材20は、第1壁部4Wとの間に隙間dが介在する位置で、第1接合部4Cを支持することが望ましい。
【0100】
さらに、
図10で示した構成では、第1プレート4が、第1平板部4Pと、第1壁部4Wと、第1接合部4Cと、を有する。そして、一方の支持部材20が第1接合部4Cを支持する。また、第2プレート5が、第2平板部5Pと、第2壁部5Wと、第2接合部5Cと、を有する。そして、他方の支持部材20が第2接合部5Cを支持する。この構成では、一方の支持部材20が第1壁部4Wとの間に隙間dが介在する位置で、第1接合部4Cを支持し、他方の支持部材20が、第2壁部5Wとの間に隙間dが介在する位置で、第2接合部5Cを支持することが望ましい。
【0101】
すなわち、本実施形態の熱伝導ユニット1では、第1プレート4および第2プレート5の少なくとも一方は、厚み方向と交差して位置する平板部Pと、厚み方向から見て平板部Pを囲んで位置する壁部Wと、を有する。第1接合部4Cまたは第2接合部5Cは、壁部Wを介して平板部Pとつながる。なお、上記の平板部Pは、第1平板部4Pおよび第2平板部5Pの少なくとも一方を含む。また、上記の壁部Wは、第1壁部4Wおよび第2壁部5Wの少なくとも一方を含む。そして、支持部材20は、壁部Wとの間に隙間dが介在する位置で、第1接合部4Cまたは第2接合部5Cを支持する。
【0102】
壁部Wと支持部材20との間に隙間dが介在することにより、発熱体H(
図3参照)で発生した熱が、熱伝導部材10の壁部Wを介して支持部材20に伝わりにくくなる。したがって、支持部材20の上記熱による温度上昇を抑制することができる。その結果、熱に弱い他の電子部品を支持部材20の周辺にさらに配置するレイアウトを採用することが可能となる。また、壁部Wと支持部材20との間に隙間dが介在すると、支持部材20の開口20P(
図8参照)の内側に熱伝導部材10を嵌め込むことが容易となり、熱伝導ユニット1の組立性も向上する。
【0103】
〔8.支持部材の材料について〕
本実施形態では、支持部材20は、熱伝導部材10の第1プレート4および第2プレート5と同等の熱伝導率を有する材料、または第1プレート4および第2プレート5よりも熱伝導率の低い材料で構成される。例えば、第1プレート4および第2プレート5が銅で構成される場合、支持部材20としては、銅、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼、カーボンなどの材料で構成される。ここで、各金属材料の熱伝導率は、その単位を(W/m・K)として、銅;約403、アルミニウム;236、鉄;83.5、ステンレス鋼(SUS304);16、カーボン;58、である。
【0104】
特に、支持部材20は、第1プレート4および第2プレート5よりも熱伝導率の低い材料で構成されることが望ましい。例えば、第1プレート4および第2プレート5が銅で構成される場合、支持部材20としては、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼、カーボンなどの材料で構成されることが望ましい。
【0105】
このように、支持部材20の熱伝導率は、第1プレート4および第2プレート5の熱伝導率よりも低い。この構成では、発熱体H(
図3参照)で発生した熱が、熱伝導部材10を介して支持部材20に伝わりにくくなる。これにより、熱伝導部材10の内部で、発熱側(発熱体Hとの接触側)と放熱側との間での作動媒体2の移動(循環)を効率よく行って、放熱効率を向上させることが可能となる。
【0106】
特に、支持部材20は、第1プレート4および第2プレート5よりもヤング率の高い材料で構成されることが望ましい。例えば、第1プレート4および第2プレート5が銅で構成される場合、支持部材20としては、ステンレス鋼(SUS304)などの材料で構成されることが望ましい。ちなみに、銅のヤング率は、約130GPaであり、ステンレス鋼のヤング率は、約197GPaである。支持部材20のヤング率が第1プレート4および第2プレート5よりも高い場合、支持部材20は第1プレート4および第2プレート5よりも剛性が高く、変形しにくい。したがって、熱膨張による熱伝導部材10の反りを、支持部材20で抑制する効果を高めることができる。
【0107】
〔9.冷却装置について〕
図17は、冷却装置100の概略の構成を示す断面図である。冷却装置100は、上述した本実施形態の熱伝導ユニット1と、筐体40と、を有する。筐体40は、冷却媒体の供給口40-1および排出口40-2を有する。冷却媒体は、例えば水である。この場合、筐体40は、ウォータージャケットとも呼ばれる。筐体40は、フィン30を熱伝導部材10とは反対側から(例えば+Z方向側から)覆う。すなわち、冷却装置100は、熱伝導ユニット1と、冷却媒体の供給口40-1を有し、フィン30を熱伝導部材10とは反対側から覆う筐体40と、を有する。
【0108】
冷却媒体が供給口40-1を介して筐体40内に導入されると、冷却媒体によってフィン30が冷却される。フィン30を冷却した冷却媒体は、排出口40-2から筐体40の外部に排出される。以降、冷却媒体の筐体40内への投入、および筐体40からの排出が繰り返される。なお、
図17における破線の矢印は、冷却媒体が流れる流路を示す。
【0109】
筐体40を有する冷却装置100の構成では、上記のように、供給口40-1を介して筐体40内に冷却媒体を供給して、筐体40内のフィン30を冷却することができる。これにより、熱伝導部材10の放熱効率を向上させることができる。
【0110】
図18は、
図17とは異なる断面(YZ断面)での冷却装置100の断面図である。なお、熱伝導部材10、支持部材20およびフィン30の構成は、
図5で示した構成と同じとする。上述した筐体40は、締結穴40aを有する。締結穴40aの内面には、ねじ溝が切られている。上記のねじ溝は、締結部材50の外表面のねじと噛み合う。締結穴40aは、-Z方向側が開口し、+Z方向側が閉じた穴であるが、Z方向に貫通する貫通孔であってもよい。また、筐体40において、締結穴40aは、支持部材20の第1貫通孔20aおよび熱伝導部材10の外周領域10Cの第2貫通孔10aとZ方向において重なる位置にある。
【0111】
つまり、
図18で示す冷却装置100は、締結部材50をさらに備える。支持部材20は、第1貫通孔20aを有する。熱伝導部材10の外周領域10Cは、第2貫通孔10aを有する。筐体40は、締結穴40aを有する。そして、第1貫通孔20aおよび第2貫通孔10aは、厚み方向において締結穴40aと重なって位置する。
【0112】
このような構成では、締結部材50を第1貫通孔20aおよび第2貫通孔10aを介して締結穴40aに挿入する。締結部材50を回転させることで、締結部材50の外表面のねじが締結穴40aのねじ溝と噛み合い、締結部材50が固定される。すなわち、締結部材50は、第1貫通孔20aおよび第2貫通孔10aを貫通して、締結穴40aに固定される。
【0113】
このように、筐体40が、第1貫通孔20aおよび第2貫通孔10aとZ方向において重なった位置に締結穴40aを有する構成では、第1貫通孔20a、第2貫通孔10a、および締結穴40aに締結部材50を挿入して、支持部材20、熱伝導部材10、および筐体40の三者を一体的に締結(共締め)することができる。これにより、上記三者が強固に固定された冷却装置100を実現することができる。
【0114】
なお、支持部材20と熱伝導部材10との固定、および熱伝導部材10と筐体40との固定は、ろう付けによってそれぞれ行われてもよい。この場合でも、支持部材20、熱伝導部材10、筐体40の三者を強固に固定することができる。
【0115】
〔10.支持部材の他の構成〕
図19は、熱伝導ユニット1に適用される支持部材20の他の構成を示す底面図である。支持部材20は、
図8で示したフレーム20Fを2以上に分割した構成(分割フレーム)であってもよい。
図19では、支持部材20が、第1支持部品20T1と、第2支持部品20T2との2部品を有する。第1支持部品20T1は、第1長手支持部21-1と第2短手支持部22-2とをつなぎ合わせたL字形の部品である。第2支持部品20T2は、第2長手支持部21-2と第1短手支持部22-1とをつなぎ合わせたL字形の部品である。
【0116】
第1支持部品20T1および第2支持部品20T2を熱伝導部材10の外形に沿って位置させて、外周領域10Cに接触させる。ただし、第1支持部品20T1と第2支持部品20T2とは互いに非接触で位置させる。これにより、熱伝導部材10の外周領域10Cの全体ではなく、一部が支持部材20によって支持される。このような支持の仕方でも、熱伝導部材10の外周領域10Cが補強されるため、熱伝導部材10に変形が生じにくくなる。したがって、熱伝導部材10の熱膨張による反りを抑制することができる。
【0117】
図20は、支持部材20のさらに他の構成を示す底面図である。支持部材20は、第1長手支持部21-1、第2短手支持部22-2、第2長手支持部21-2、第1短手支持部22-1がそれぞれ離間して配置される構成であってもよい。この構成であっても、熱伝導部材10の外周領域10Cの全体ではなく、一部が支持部材20によって支持される。このため、
図19の構成と同様に、熱伝導部材10の熱膨張による反りを抑制することができる。
【0118】
〔11.その他〕
図21は、熱伝導部材10の他の構成を示す斜視図である。熱伝導部材10の外周領域10Cの短手部10Sが支持部材20によって支持される構成では、閉鎖部60は短手部10Sに位置してもよい。閉鎖部60が位置する短手部10Sが支持部材20によって支持されることにより、短手部10Sが補強される。したがって、この構成であっても、閉鎖部60を形成する前に、つまり、内部空間Sと連通していた連通孔60a1(
図13参照)を閉鎖する前に、その連通孔60a1を介して、内部の内部空間Sに作動媒体2を安定して注入することができる。
【0119】
図22は、変形例の熱伝導ユニット1Aの分解斜視図である。
図22に示すとおり、熱伝導ユニット1Aは、熱伝導部材10と支持部材20との間に配置されるスペーサ部材80をさらに有する。そして、スペーサ部材80は、熱伝導部材10および支持部材20のそれぞれと接触する。
【0120】
スペーサ部材80は、第1スペーサ部81と、第2スペーサ部82とを有する。第1スペーサ部81は、支持部材20の第1支持部21と第2プレート5の第2接合部5Cとの間に配置される。また、第2スペーサ部82は、支持部材20の第2支持部22と第2プレート5の第2接合部5Cとの間に配置される。本実施形態では、スペーサ部材80は、単一の部材として形成されるが、第1スペーサ部81および第2スペーサ部82がそれぞれ異なる部材として形成されてもよい。その場合、第1スペーサ部81と第2スペーサ部82とは、互いに隙間をあけて配置されてもよい。
【0121】
スペーサ部材80は、複数個のスペーサ貫通孔80aを有する。スペーサ部材80において、スペーサ貫通孔80aは、支持部材20の第1貫通孔20aとZ方向において重なって位置する。これにより、支持部材20の第1貫通孔20aおよび熱伝導部材10の第2貫通孔10a(第2開口部5a、第1開口部4a)、に挿入される締結部材50がスペーサ貫通孔80aにも挿入される。上述のように、締結部材50によって、熱伝導部材10と支持部材20とが締結(共締め)されるとき、スペーサ部材80は、熱伝導部材10および支持部材20と接触した状態で締結(共締め)される。
【0122】
そして、第1スペーサ部81および第2スペーサ部82は、支持部材20よりも熱伝導率が小さい材料で形成される。すなわち、スペーサ部材80の熱伝導率は、支持部材20の熱伝導率よりも小さい。
【0123】
このように構成することで、スペーサ部材80の熱抵抗によって、発熱体H(
図3参照)で発生した熱が、熱伝導部材10を介して支持部材20に伝わりにくくなり、支持部材20の熱による変形が抑制される。その結果、支持部材20によって支持される熱伝導部材10の反りや撓みなどの変形が抑制される。
【0124】
図23は、熱伝導ユニット1AをZX断面で切断した断面図である。ここでは、第1スペーサ部81を主に説明するが、第2スペーサ部82も同様の構成を有する。
図23に示すように、第1スペーサ部81は、平板状の基材部83と、基材部83の厚み方向の両面に配置された接着層84、85を有する。接着層84は、第2プレート5と接触し、接着層85は支持部材20と、接触する。
【0125】
第1スペーサ部81は、接着層84によって第2プレート5の第2接合部5Cに接着されるとともに、接着層85によって支持部材20の第1支持部21に接着される。なお、第2スペーサ部82も同様に、接着層によって第2プレート5の第2接合部5Cおよび第2支持部22に接着される。
【0126】
熱伝導部材10と支持部材20とは、締結部材50で締結される。スペーサ部材80が、熱伝導部材10と支持部材20とを接着することで、締結部材50で締結するときに、熱伝導部材10および支持部材20を強固に固定できる。また、接着によって仮止めをおこなうことも可能であり、熱伝導部材10および支持部材20を仮止めした状態で保持が容易になり、作業効率を高めることができる。
【0127】
なお、本変形例のスペーサ部材80は、厚み方向の両面に接着層84および接着層85を有しているが、これに限定されない。例えば、熱伝導部材10側にのみ接着層84を有していてもよいし、支持部材20側にのみ接着層85を有していてもよい。すなわち、スペーサ部材80は、熱伝導部材10および支持部材20の少なくとも一方と接着される接着層84、85を有してもよい。
【0128】
スペーサ部材80として、基材部83を備えた構成を挙げているが、これに限定されず、例えば、熱伝導部材10および支持部材20の一方または両方に接着剤を塗布して、接着層を構成するとともに、スペーサ部材80として利用してもよい。
【0129】
図24は、熱伝導ユニットの他の例をZX断面で切断した断面図である。
図24に示すように、スペーサ部材80は、第2プレート5の第2壁部5Wと支持部材20との間に配置されてもよい。このように配置することで、第2プレート5の第2壁部5Wから支持部材20への熱伝達が抑制される。また、第2壁部5Wの厚み方向への変形も支持部材20によって抑制される。これにより、熱伝導部材10の変形を抑制する効果を高めることが可能である。
【0130】
図25は、さらに別の変形例の熱伝導ユニット1BのYZ断面で切断した断面図である。
図26は、
図25に示す熱伝導ユニット1BのZX断面で切断した断面図である。
図25、
図26に示すとおり、熱伝導ユニット1Bにおいて、支持部材20の第1支持部21および第2支持部22は第2プレート5と接触する凸部23を有する。これ以外の点において、熱伝導ユニット1Bは熱伝導ユニット1と同じ構成を有する。そのため、熱伝導ユニット1Bにおいて、実質上、熱伝導ユニット1と同じ部分には、同じ符号を付すととともに、同じ部分の詳細な説明を省略する。
【0131】
図25、
図26に示すとおり、支持部材20の第1支持部21および第2支持部22は、第2プレート5の第2壁部5Wおよび第2接合部5Cと接触する。そして、支持部材20は、第2プレート5と接触する凸部23を有する。さらに説明すると、凸部23は、第1支持部21および第2支持部22の第2接合部5Cと対向する対向面から突出し、先端が第2接合部5Cと接触する第1凸部23-1を有する。また、凸部23は、第1支持部21および第2支持部22の第2壁部5Wと対向する対向面から突出し、先端が第2壁部5Wと接触する第2凸部23-2を有する。
【0132】
支持部材20は、第1凸部23-1を介して第2接合部5Cと接触する。その結果、支持部材20の第2接合部5Cと対向する面が、第2接合部5Cと全面接触する場合に比べて、支持部材20と第2接合部5Cとの接触面積が小さくなる。これにより、第2接合部5Cから支持部材20に熱が伝わるときの熱抵抗が大きくなり、第2接合部5Cから支持部材20に熱が伝わりにくい。
【0133】
また、支持部材20は、第2凸部23-2を介して第2壁部5Wと接触する。その結果、支持部材20の第2壁部5Wと対向する面が、第2壁部5Wと全面接触する場合に比べて、支持部材20と第2壁部5Wとの接触面積が小さくなる。これにより、第2壁部5Wから支持部材20に熱が伝わるときの熱抵抗が大きくなり、第2壁部5Wから支持部材20に熱が伝わりにくい。
【0134】
以上のとおり、発熱体H(
図3参照)で発生した熱が、熱伝導部材10を介して支持部材20に伝わりにくくなり、支持部材20の熱による変形が抑制される。その結果、支持部材20によって支持される熱伝導部材10の反りや撓みなどの変形が抑制される。
【0135】
また、支持部材20は、第2プレート5の第2接合部5Cおよび第2壁部5Wと接触して支持する構成である。そのため、支持部材20の第2プレート5の第2接合部5Cとの接触面積が小さくなっても、熱伝導部材10の変形を抑制できる。
【0136】
なお、支持部材20が、熱伝導部材10の反りや撓みなどの変形を抑制できる場合、支持部材20は、第2壁部5Wと接触しなくてもよい。この場合、第2凸部23-2を省略してもよい。
【0137】
なお、支持部材20が第2プレート5側に配置される構成について説明したがこれに限定されない。例えば、
図9に示す熱伝導ユニット1のような、第1接合部4Cを支持する支持部材20に凸部23を形成してもよい。なお、
図9の構成とは異なり、支持部材20が、第1壁部4Wまたは第2壁部5Wと接触する場合、第1凸部23-1は、第1接合部4Cと接触し、第2凸部23-2は、第2壁部5Wと接触する。
【0138】
また、
図10、
図11に示す熱伝導ユニット1のような、第1接合部4Cおよび第2接合部5Cを支持する支持部材20に凸部23を形成してもよい。なお、いずれの構成の場合も、
図10、
図11の構成とは異なり、支持部材20は、第1壁部4Wまたは第2壁部5Wと接触する。この場合、第1凸部23-1は、第1接合部4Cおよび第2接合部5Cと接触し、第2凸部23-2は、第1壁部4Wおよび第2壁部5Wと接触する。
【0139】
すなわち、支持部材20は、壁部4Wまたは5Wと接触する位置で、第1接合部4Cまたは第2接合部5Cを支持し、支持部材20の壁部4Wまたは5Wと対向する面から壁部4Wまたは5Wに向かって突出し、壁部4Wまたは5Wと接触する凸部23-2を有する。
【0140】
また、支持部材20は、第1接合部4Cおよび第2接合部5Cの少なくとも一方と対向する対向面から突出し、第1接合部4Cおよび第2接合部5Cのうち少なくとも一方の対向面と対向する部分と接触する複数の凸部23-1を有する。
【0141】
図27は、変形例の熱伝導ユニット1CのZX平面と平行な平面で切断した断面図である。
図27に示す熱伝導ユニット1Cのウィック構造体3は、第1ウィック部31と、第2ウィック部32とを有する。なお、
図27に示す熱伝導ユニット1Cの内部空間Sには、柱部13が配置される。柱部13は、少なくとも1つの中実な中実柱部131を有する。また、柱部13は、少なくとも1つの多孔質の多孔質柱部132を有する。なお、柱部13は、中実柱部131のみを有してもよく、多孔質柱部132のみを有してもよい。
【0142】
中実柱部131は、内部空間Sに配置され、第1プレート4及び第2プレート5を支持する。本実施形態において、中実柱部131は、第1プレート4と一体であり、中実な部材である。このとき、中実柱部131は、第1プレート4をエッチング又は切削して形成することができる。なお、「中実」な部材は、いわゆるソリッドな部材であることを意味し、中身が密に詰まっており、且つ多孔質でない物体で構成された部材を指す。例えば、「中実」な部材は、内部に空洞が内部材で合ってもよいし、単数又は複数の巨視的な空洞を内部に有する部材であってもよい。
【0143】
中実柱部131は、Z軸方向に延び、中実柱部131の上端部及び下端部は、第2プレート5の上面にろう材を用いて接合される。なお、中実柱部131は、ろう材による接合以外に溶接などにより第2プレート5と接合されてもよい。なお、中実柱部131は、第1プレート4及び第2プレート5と別体であってもよい。
【0144】
中実柱部131は、例えば、上方視において円形の円柱で構成される。中実柱部131は、XY面内において2次元的に、かつ、規則的に並んで位置する。Z軸方向において中実柱部131が、第1プレート4及び第2プレート5を支持することにより、熱伝導部材10のZ軸方向の厚みが一定に保たれる。これにより、熱伝導部材10のZ軸方向の変形によって内部空間Sが、狭くなることを抑制できる。
【0145】
多孔質柱部132は、Z軸方向に延び、例えば、上方視において円形の円柱で構成される。多孔質柱部132は、多孔質の焼結体である。また、多孔質柱部132は、XY面内において2次元的に、かつ、規則的に並んで位置する。多孔質柱部132は、隣り合う中実柱部131の中間に配置されることが好ましい。なお、熱伝導部材10は、少なくとも1つの中実な中実柱部131と、少なくとも1つの多孔質の多孔質柱部132と、を有する。
【0146】
なお、中実柱部131と多孔質柱部132とは、同数であってもよいし、異なる数であってもよい。熱伝導部材10の剛性を高めるため、中実柱部131の数が、多孔質柱部132の数よりも多くてもよい。
【0147】
第1ウィック部31及び第2ウィック部32は、多孔質であり、作動媒体2の流路を形成する空隙部(不図示)を有する。第1ウィック部31は、第1プレート4の内面に配置されて内部空間Sに臨む。第2ウィック部32は、第2プレート5の内面に配置されて内部空間Sに臨む。なお、本明細書において、内部空間Sに「臨む」とは、内部空間Sと「向かい合う」ことを指す。
【0148】
多孔質柱部132は、第1ウィック部31および第2ウィック部32を介して第1プレート4および第2プレート5を支持してもよい。熱伝導ユニット1Cにおいて、第1プレート4の第1平板部4Pおよび第2プレート5の第2平板部5Pとは、中実柱部131および多孔質柱部132にて支持される。上述の通り中実な中実柱部131は、多孔質の多孔質柱部132よりも高剛性である。そして、内部空間Sにおいて、中実柱部131が占める割合を、多孔質柱部132が占める割合よりも多くすることで、第1プレート4の第1平板部4Pと第2プレート5の第2平板部5Pの位置精度が高くなるとともに、内外の圧力差による変形が抑制される。
【0149】
また、第1ウィック部31と、第2ウィック部32と、多孔質柱部132と、は、それぞれ多孔質の焼結体であり、一体である。第1ウィック部31、第2ウィック部32及び多孔質柱部132を多孔質の焼結体とすることにより、メッシュ材よりも容易に製造可能であり、熱伝導ユニット1Cの製造コストを下げることができる。また、多孔質柱部132を有することによって、第1ウィック部31から第2ウィック部32への作動媒体2の流路が増す。
【0150】
第2ウィック部32の厚みW2は、第1ウィック部31の厚みW1よりもZ方向に大きい。発熱体H側に配置される第2ウィック部32は、第1ウィック部31よりも液状の作動媒体2の気化が、促進される。このため、第2ウィック部32の厚みW2を、第1ウィック部31の厚みW1よりもZ方向に大きくすることにより、第2ウィック部32の作動媒体2の保持性を第1ウィック部31の作動媒体2の保持性よりも高くできる。
【0151】
また、第2ウィック部32の作動媒体2の保持性が、向上することにより、発熱体HとZ方向に対向する領域において、第2ウィック部32の保持する液状の作動媒体2が完全に気化する、いわゆるドライアウトの発生を抑制できる。
【0152】
さらに、Z方向において、第1ウィック部31の厚みW1と、第2ウィック部32の厚みW2と、第1ウィック部31と第2ウィック部32との隙間の長さW3とは、以下の式を満たすことが好ましい。
【0153】
W3>W2+W1
【0154】
内部空間Sにおいて、第1ウィック部31と第2ウィック部32とのZ方向の隙間を大きく設けることにより、第1ウィック部31から気化した作動媒体2が、内部空間S内でX方向およびY方向に拡散し易くなる。これにより、第1ウィック部31における作動媒体2の凝縮が促進される。
【0155】
また、第2ウィック部32は、第1ウィック部31よりも空隙率が高い。これにより、第2ウィック部32の毛細管力が、第1ウィック部31の毛細管力よりも大きくなる。
【0156】
ここで、空隙率とは、第1ウィック部31および第2ウィック部32の全体積に対する空間の体積の割合である。空隙率の単位は%である。空隙率は以下の方法によって求められる。例えば、ウィック構造体3の断面写真から、空間の面積を測定し、空間の面積が全体に占める割合を算出することにより、空隙率を求めることができる。第1ウィック部31および第2ウィック部32の断面の観察においては、被写界深度の深い走査型電子顕微鏡を用いることが好ましい。なお、断面の観察の方法は、金属部分と空間とを容易に判別できる方法であればよく、特に限定されない。
【0157】
なお、本実施形態では、第1ウィック部31および第2ウィック部32を多孔質の焼結体で構成しているが、第1ウィック部31および第2ウィック部32の少なくとも一方を複数の金属線状部材が編み込まれたメッシュ部材であってもよい。第2ウィック部32をメッシュ材で構成し、第1ウィック部31を多孔質の焼結体で構成することにより、第2ウィック部32の毛細管力を、第1ウィック部31の毛細管力よりも大きく容易に形成することができる。
【0158】
本実施形態では、熱伝導ユニット1の熱伝導部材10をベーパーチャンバーで構成した例について説明したが、熱伝導部材10はベーパーチャンバーに限定されない。例えば、熱伝導部材10は、銅プレートおよびグラファイトシートなどの1枚の金属板であってもよく、ヒートパイプであってもよい。
【0159】
熱伝導部材10の種類に応じて、フィン30を適宜選択してもよい。特に、本実施形態のように、熱伝導部材10がベーパーチャンバーで構成される場合、フィン30としてはスタックドフィン30Sを用いることが効果的である。また、熱伝導部材10が1枚の銅プレートで構成される場合、フィン30としてはピンフィンを用いることが効果的である。
【0160】
本実施形態では、熱伝導部材10を厚み方向から見たときの形状(外形)が矩形である場合について説明したが、熱伝導部材10の上記形状は矩形には限定されない。例えば、上記形状は正方形であってもよく、その他の多角形であってもよい。
【0161】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。また、上記実施形態やその変形例は適宜任意に組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0162】
本発明の熱伝導ユニットは、例えばIGBTのような、高温で発熱する発熱体の冷却に利用可能である。
【符号の説明】
【0163】
1 熱伝導ユニット
2 作動媒体
4 第1プレート
4C 第1接合部
5 第2プレート
5C 第2接合部
10 熱伝導部材
10a 第2貫通孔
10C 外周領域
10L 長手部
10M 本体領域
10P 被支持領域
10S 短手部
20 支持部材
20a 第1貫通孔
21 第1支持部
22 第2支持部
30 フィン
40 筐体
40a 締結穴
40-1 供給口
50 締結部材
60 閉鎖部
100 冷却装置
K 凹部
P 平板部
S 内部空間
W 壁部
CR 接合領域
NR 閉鎖領域