(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123892
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】熱伝導部材
(51)【国際特許分類】
F28D 15/04 20060101AFI20230830BHJP
F28D 15/02 20060101ALI20230830BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20230830BHJP
H01L 23/427 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
F28D15/04 A
F28D15/02 104C
F28D15/04 G
F28D15/04 C
H05K7/20 Q
H01L23/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088007
(22)【出願日】2021-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2020189871
(32)【優先日】2020-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503190785
【氏名又は名称】尼得科超▲しゅう▼科技股▲ふん▼有限公司
【住所又は居所原語表記】No.184-3,Zhongxing N.St.,Sanchong Dist.,New Taipei City 24158,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】花野 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】小関 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】西川 和宏
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA03
5E322AA11
5E322AB06
5E322DB01
5E322EA10
5E322FA01
5E322FA04
5F136CC12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】平板状ヒートパイプの熱輸送効率を向上させることができる熱伝導部材を提供することを目的とする。
【解決手段】内部空間103を有する筐体10と、第1ウィック構造体31と、第2ウィック構造体32と、作動媒体20と、を有する。筐体10は、第1金属板11と、第1金属板11に対向して配置される第2金属板12と、内部空間103に配置された柱部13と、を有する。作動媒体20と、第1ウィック構造体31と、第2ウィック構造体32と、は、内部空間103に配置される。第1ウィック構造体31は、第1金属板11側に配置される。第2ウィック構造体32は、第2金属板12側に配置される。第2ウィック構造体32は、第1ウィック構造体31と対向する対向面に開口するとともに厚み方向に延びる複数の開口部34を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を有する筐体と
第1ウィック構造体と、
第2ウィック構造体と、
作動媒体と、を有し、
前記筐体は、
第1金属板と、
前記第1金属板に対向して配置される第2金属板と、
前記内部空間に配置された柱部と、を有し、
前記作動媒体と、前記第1ウィック構造体と、前記第2ウィック構造体と、は、前記内部空間に配置され、
前記第1ウィック構造体は、前記第1金属板側に配置され、
前記第2ウィック構造体は、前記第2金属板側に配置され、
前記第2ウィック構造体は、前記第1ウィック構造体と対向する対向面に開口するとともに厚み方向に延びる複数の開口部を有する熱伝導部材。
【請求項2】
前記開口部の少なくとも1つは、前記第2ウィック構造体を厚み方向に貫通する貫通孔である請求項1に記載の熱伝導部材。
【請求項3】
前記開口部の少なくとも1つは、前記第2ウィック構造体の厚み方向において前記第2金属板側の端部に底部を有する凹部である請求項1又は請求項2に記載の熱伝導部材。
【請求項4】
前記開口部は、前記第2ウィック構造体の厚み方向と直交する面で切断した断面形状が円形である請求項1から請求項3のいずれかに記載の熱伝導部材。
【請求項5】
前記開口部は、前記第2ウィック構造体の前記対向面に向かうにつれて厚み方向と直交する面で切断した断面断面積が大きくなる請求項1から請求項4のいずれかに記載の熱伝導部材。
【請求項6】
前記開口部は、前記第2ウィック構造体を厚み方向から見たとき、前記第2ウィック構造体の厚み方向と直交する平面内に分散して配置される請求項1から請求項5のいずれかに記載の熱伝導部材。
【請求項7】
前記第2ウィック構造体の厚み方向に直交する一方向に隣り合う前記開口部は、同じ間隔で配置される請求項6に記載の熱伝導部材。
【請求項8】
前記第2ウィック構造体は周囲の領域よりも前記開口部の密度が高い領域を有し、
前記第2ウィック構造体の厚み方向において、前記密度が高い領域の少なくとも一部は、前記発熱体と重なる請求項7に記載の熱伝導部材。
【請求項9】
前記第1ウィック構造体は、多孔質の焼結体である、請求項1から請求項8のいずれかに記載の熱伝導部材。
【請求項10】
前記第2ウィック構造体は、複数の金属線状部材が編み込まれたメッシュ部材である、請求項1から請求項9のいずれかに記載の熱伝導部材。
【請求項11】
前記第2ウィック構造体は、多孔質の焼結体である、請求項1から請求項9のいずれかに記載の熱伝導部材。
【請求項12】
前記柱部は、少なくとも1つの中実な中実柱部を有する請求項1~請求項11のいずれかに記載の熱伝導部材。
【請求項13】
前記柱部は、少なくとも1つの多孔質の多孔質柱部を有する請求項1~請求項12のいずれかに記載の熱伝導部材。
【請求項14】
前記柱部は、少なくとも1つの多孔質の焼結体である多孔質柱部を有し、
前記第1ウィック構造体及び前記第2ウィック構造体は、多孔質の焼結体であり、
前記第1ウィック構造体と、前記第2ウィック構造体と、前記多孔質柱部と、が、一体である、請求項1~請求項8のいずれかに記載の熱伝導部材。
【請求項15】
前記第2ウィック構造体の厚みは、前記第1ウィック構造体の厚みよりも大きい、請求項9から請求項14のいずれかに記載の熱伝導部材。
【請求項16】
前記第1ウィック構造体及び前記第2ウィック構造体の鉛直方向において、前記第1ウィック構造体と前記第2ウィック構造体との隙間の長さと、前記第2ウィック構造体の厚みと、前記第1ウィック構造体の厚みとは、下記式(1)を満たす、請求項15に記載の熱伝導部材。
W3>W2+W1 ・・・(1)
W1:第1ウィック構造体の厚み
W2:第2ウィック構造体の厚み
W3:前記第1ウィック構造体と前記第2ウィック構造体との隙間の長さ
【請求項17】
前記第2ウィック構造体は、前記第1ウィック構造体よりも空隙率が高い、請求項9から請求項16のいずれかに記載の熱伝導部材。
【請求項18】
前記第2ウィック構造体の毛細管力は、前記第1ウィック構造体の毛細管力よりも高い、請求項1から請求項17のいずれかに記載の熱導電部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱伝導部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の平板状のヒートパイプは、底壁部と、上壁部と、底壁部と上壁部とを連結している支柱が設けられる平板状密閉容器を有する。そして、平板状密閉容器の内部には、作動流体が封入されるとともに、支柱を貫通させた多孔質焼結シートが、底壁部の内面及び上壁部の内面に密着して配置されている。
【0003】
平板状密閉容器は、発熱体と接触して配置される。作動流体は、発熱体によって加熱されて多孔質焼結シートから気化する。気化した作動流体は、平板状密閉容器の内部を上壁部側に移動する。上壁部側では、放熱によって作動流体が冷却され、凝縮する。液体の作動流体は、毛細管現象によって多孔質焼結シート中を発熱体側に移動する。これにより、底壁側から上壁側に熱が輸送される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような平板状密閉容器は、気化した作動流体が底板部側の多孔質焼結シートから移動し難く、熱輸送効率が低い問題があった。
【0006】
本開示は、熱輸送効率を向上できる熱伝導部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の例示的な熱伝導部材は、内部空間を有する筐体と、第1ウィック構造体と、第2ウィック構造体と、作動媒体と、を有する。筐体は、第1金属板と、第1金属板に対向して配置される第2金属板と、内部空間に配置された柱部と、を有する。作動媒体と、第1ウィック構造体と、第2ウィック構造体と、は、内部空間に配置される。第1ウィック構造体は、第1金属板側に配置される。第2ウィック構造体は、第2金属板側に配置される。第2ウィック構造体は、第1ウィック構造体と対向する対向面に開口するとともに厚み方向に延びる複数の開口部を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によると、熱輸送効率を向上できる熱伝導部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示にかかる熱伝導部材の斜視図である。
【
図3】
図3は、熱伝導部材の筐体の内部空間の内部を示す概略斜視図である。
【
図4】
図4は、第2ウィック構造体の斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す第2ウィック構造体のYZ平面と平行な面で切断して拡大した拡大断面図である。
【
図6】
図6は、第1変形例の第2ウィック構造体の拡大断面図である。
【
図7】
図7は、第2変形例の第2ウィック構造体の拡大断面図である。
【
図8】
図8は、第3変形例の第2ウィック構造体の平面図である。
【
図9】
図9は、第4変形例の第2ウィック構造体の平面図である。
【
図10】
図10は、第5変形例の第2ウィック構造体の平面図である。
【
図11】
図11は、第2ウィック構造体の他の例の平面図である。
【
図12】
図12は、第2ウィック構造体のさらに他の例の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の例示的な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。熱伝導部材100は、平面視長方形状であり、第1金属板11と第2金属板12とが重力方向に重なる。なお、図面においては、適宜、3次元直交座標系、すなわち、XYZ座標系を用いて示す。XYZ座標系において、Z方向は、鉛直方向(すなわち重力方向)を示す。
【0011】
また、熱伝導部材100をZ方向から見たときの熱伝導部材100の短手方向をX方向、長手方向をY方向とする。つまり、X方向は、熱伝導部材100の短手方向を指し、Z方向と直交する方向である。Y方向は熱伝導部材100の長手方向を指し、Z方向と直交する方向である。ただし、これは、あくまで説明の便宜のために方向を定義したものであり、本開示にかかる熱伝導部材100の製造時及び使用時の向きを限定するものではない。また、本明細書において平行、と表現する場合、数学的に厳密に平行である場合のみを指すものではなく、例えば本開示における効果を奏する程度に平行である場合を含む。
【0012】
また、本明細書において、「焼結」とは、金属の粉末または金属の粉体を含むペーストを、金属の融点よりも低い温度まで加熱して、金属の粒子を焼き固める技術を指す。また、「焼結体」とは、焼結によって得られる物体を指す。
【0013】
<熱伝導部材100>
図1は、本開示の例示的な実施形態に係る熱伝導部材100の斜視図である。
図2は、熱伝導部材100の概略断面図である。
図3は、熱伝導部材100の筐体10の内部空間103の内部を示す概略斜視図である。
【0014】
熱伝導部材100は、被加熱領域101と、放熱領域102とを有する(
図2参照)。被加熱領域101は、例えば、発熱体Htと接して配置され、発熱体Htが発する熱によって加熱される。また、被加熱領域101には、発熱体HtとZ方向に重なる重なり領域105が設けられる。重なり領域105は、発熱体Htから伝達される熱の量が多い。放熱領域102は、被加熱領域101で加熱された後述の作動媒体20が有する熱を外部に放出する。つまり、熱伝導部材100は、発熱体Htからの熱を輸送して、外部に放熱することで、発熱体Htの温度の上昇を抑制する。
【0015】
熱伝導部材100は、筐体10と、作動媒体20と、第1ウィック構造体31と、第2ウィック構造体32と、を有する。また、熱伝導部材100は、多孔質柱部132をさらに有する。
【0016】
そして、筐体10は、内部空間103を有する。作動媒体20と、第1ウィック構造体31と、第2ウィック構造体32と、は内部空間103に収容される。さらに、多孔質柱部132は、内部空間103内に配置される。熱伝導部材100のZ方向の厚みは、例えば5mm以上である。被加熱領域101は、筐体10の一部により形成される。放熱領域102は、筐体10の他の一部により形成される。
【0017】
熱伝導部材100では、作動媒体20として、水を用いるが、これに限定されない。例えば、アルコール化合物、代替フロン、炭化水素化合物、フッ素化炭化水素化合物およびグリコール化合物等を挙げることができる。作動媒体20としては、被加熱領域101で発熱体Htからの熱で蒸発(気化)し、放熱領域102で筐体10に熱を伝達することで凝縮(液化)される物質を広く採用することができる。
【0018】
<熱伝導部材100の動作>
図2において、作動媒体20が気化して生成される蒸気の流れを熱伝導部材100内の黒矢印で示し、液状の作動媒体20の流れを熱伝導部材100内の白抜き矢印で示す。熱伝導部材100では、発熱体Htで発生した熱により、被加熱領域101が加熱される。被加熱領域101の温度が上昇すると、第2ウィック構造体32に含まれた液状の作動媒体20が、気化する。
【0019】
気化した作動媒体20は、内部空間103を放熱領域102側に移動する。このとき、気化した作動媒体20は、第1ウィック構造体31側に移動し、冷却され、凝縮する。
【0020】
第1ウィック構造体31で凝縮した液体の作動媒体20の一部は、滴下して第2ウィック構造体32に吸収される。また、第1ウィック構造体31で液体の作動媒体20の一部は、第1ウィック構造体31中及び多孔質柱部132中を移動して第2ウィック構造体32に吸収される。また、第1ウィック構造体31で液体の作動媒体20の一部は、後述の柱部13の外面に沿って移動して第2ウィック構造体32に吸収される。
【0021】
液体の作動媒体20は、毛細管現象によって第2ウィック構造体32中を被加熱領域101に向かって移動する。このように作動媒体20が状態変化しつつ内部空間103の内部を移動し、被加熱領域101側から放熱領域102側への熱輸送が連続的に行われる。そして、放熱領域102から熱伝導部材100の外部に熱が放出されることで、発熱体Htの熱を外部に放出し、発熱体Htの温度上昇が抑制される。
【0022】
なお、放熱領域102には放熱性を向上させるために、放熱フィンやヒートシンク等の熱交換手段(図示せず)が熱的に接続して配置されてもよい。その場合、熱交換手段に冷却媒体を流してもよい。冷却媒体は、例えば水であってもよいし、油であってもよく、空気でもよい。
【0023】
発熱体Htとして、例えば、パワートランジスタを挙げることができる。パワートランジスタは、車両の車輪を駆動するためのトラクションモータに供給される電流を制御するインバータに含まれる。パワートランジスタとして、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を挙げることができる。この場合、熱伝導部材100は、トラクションモータに搭載される。なお、IGBTの発熱量は、一般的に100W以上である。
【0024】
また、インバータには、IGBT以外にも変圧トランス、チョーク等、動作時に発熱する素子が含まれる場合がある。このような素子を発熱体として、熱伝導部材100を用いることも可能である。
【0025】
<筐体10>
筐体10は、第1金属板11と、第1金属板11に対向して配置される第2金属板12と、を有する。また、筐体10は、柱部13をさらに有する。
【0026】
<第1金属板11及び第2金属板12>
第1金属板11及び第2金属板12は、例えば、銅等の熱伝導性の高い金属又はこれらの合金で形成された板材である。また、銅以外の金属の表面に銅メッキを施して形成されてもよい。銅以外の金属としては、例えば、鉄、アルミニウム、亜鉛、銀、金、マグネシウム、マンガン、及びチタンなどのいずれかの金属、又は、上述の少なくともいずれかの金属を含む合金(真鍮、ジェラルミン、ステンレス鋼など)を挙げることができるが、これに限定されない。例えば、銅よりも弾性係数(例えば、ヤング率)が高い金属を広く採用することができる。
【0027】
第1金属板11及び第2金属板12は、Z方向から見て、Y方向の長手方向の長方形状の板材である。第1金属板11と第2金属板12とは、Z方向に対向する。第1金属板11が、第2金属板12の上面を覆う。なお、本実施形態の第1金属板11及び第2金属板12は、長方形状であるが、この形状に限定されず、例えば、平面視において多角形、円形、楕円形等であってもよい。
【0028】
そして、第2金属板12の外面に発熱体Htが配置される。つまり、第2金属板12の下面側に発熱体Htが配置される。なお、発熱体Htは、第2金属板12と直接接触してもよいし、伝熱グリス等の伝熱体を介して配置されてもよい。発熱体Htからの熱は、第2金属板12に伝達される。
【0029】
第1金属板11は、周縁から下方に延びる第1側壁部111を有する。第2金属板12は、周縁から上方に延びる第2側壁部121を有する。第1側壁部111の下面と第2側壁部121の上面とが接合部14で接合される。なお、第2側壁部121を省いて、第1側壁部111の下面と第2金属板12の上面とを接合してもよい。また、第1側壁部111を省いて、第2側壁部121の上面と第1金属板11の下面とを接合してもよい。
【0030】
第1側壁部111と第2側壁部121との接合方法は、特に限定されないが、例えば、熱と圧力を加えて接合する方法、拡散接合、ろう材を用いた接合、などの接合方法を採用することができる。また、これら以外にも、液体及び気体の作動媒体20の漏れを抑制して密閉可能な接合方法を広く採用することができる。
【0031】
接合部14で、第1金属板11及び第2金属板12を接合することで、内部空間103が形成される。Z方向から見て、接合部14は、内部空間103の周囲に位置する。内部空間103は、第1金属板11及び第2金属板12で囲まれた、密閉空間であり、例えば大気圧よりも気圧が低い減圧状態に維持される。内部空間103が減圧状態であることにより、内部空間103に収容される作動媒体20の沸点が降下し、作動媒体20が蒸発しやすくなる。作動媒体20の状態変化による熱の輸送の詳細については、後述する。
【0032】
なお、接合部14は、封止部を含んでいてもよい。封止部は、例えば、熱伝導部材100の製造過程において、作動媒体20を筐体10内に注入するための注入口を溶接によって封止した箇所である。
【0033】
<柱部13>
図2、
図3に示すように、柱部13は、内部空間103に配置される。柱部13は、少なくとも1つの中実な中実柱部131を有する。また、柱部13は、少なくとも1つの多孔質の多孔質柱部132を有する。
【0034】
中実柱部131は、Z方向に延びる中実な部材である。「中実」な部材とは、いわゆるsolidな物体で構成された部材であることを意味し、中身が密に詰まっており且つ多孔質ではない物体で構成された部材を指す。中実柱部131は、円柱状である。中実柱部131の形状は、これに限定されず、XY面と平行な面で切断した断面が多角形、楕円等であってもよい。中実柱部131は、例えば、XY面内において2次元的に、かつ、規則的に並んで配置される。
【0035】
中実柱部131は、第1金属板11及び第2金属板12とは別部材であり、銅等の熱伝導性の高い金属で形成される。中実柱部131の上端部及び下端部は、第1金属板11の下面及び第2金属板12の上面にそれぞれろう材を用いて接合される。なお、中実柱部131は、ろう材による接合以外に溶接などにより第1金属板11及び第2金属板12と接合されてもよい。また、中実柱部131は、第1金属板11及び第2金属板12の一方と一体であってもよい。このとき、中実柱部131は、第1金属板11又は第2金属板12をエッチング又は切削することにより形成できる。
【0036】
第1金属板11の下面及び第2金属板12の上面は、それぞれ、中実柱部131と接合される。中実柱部131は、第1金属板11及び第2金属板12を支持する。中実柱部131が、第1金属板11及び第2金属板12を支持することにより、第1金属板11と第2金属板12とのZ方向、すなわち、厚み方向の距離が、一定に保たれる。そのため、筐体10のZ方向の厚みが一定に保たれ、さらには、内部空間103の変形が抑制される。
【0037】
多孔質柱部132は、多孔質の柱状である。多孔質柱部132は、多孔質柱部132は、作動媒体20の流路を形成する空隙部(不図示)を有する。多孔質柱部132は、Z方向に延び、例えば、円柱状である。また、多孔質柱部132は、XY面内において2次元的に、かつ、規則的に並んで位置する。
図3に示すとおり、多孔質柱部132は、隣り合う中実柱部131の中間に配置されることが好ましい。
【0038】
<第1ウィック構造体31、第2ウィック構造体32及び多孔質柱部132>
第1ウィック構造体31は、第1金属板11の下面と接触して配置され、内部空間103に臨む。第2ウィック構造体32は、第2金属板12の上面に接触して配置され、内部空間103に臨む。なお、本明細書において、内部空間103に「臨む」とは、内部空間103と「向かい合う」ことを指す。すなわち、第1ウィック構造体31は、第1金属板11側に配置される。第2ウィック構造体32は、第2金属板12側に配置される。
【0039】
第1ウィック構造体31は、多孔質の焼結体である。また、第2ウィック構造体32も、多孔質の焼結体である。第1ウィック構造体31、第2ウィック構造体32を多孔質の焼結体とすることで、作動媒体20が流動する空隙(不図示)が形成されるため、作動媒体20が流動しやすくなる。これにより、熱輸送効率が高くなる。また、多孔質の焼結体とすることで、メッシュで構成する場合に比べて製造が容易である。
【0040】
なお、本実施形態では、第1ウィック構造体31及び第2ウィック構造体32を多孔質の焼結体で構成しているが、少なくとも、第2ウィック構造体32は、複数の金属線状部材が編み込まれたメッシュ部材であってもよい。第2ウィック構造体32をメッシュ材で構成し、第1ウィック構造体31を多孔質の焼結体で構成することにより、第2ウィック構造体32の毛細管力を、第1ウィック構造体31の毛細管力よりも大きく容易に形成することができる。
【0041】
多孔質柱部132は、内部空間103内に配置され、第1ウィック構造体31及び第2ウィック構造体32を連結する。これにより、多孔質柱部132は、第1ウィック構造体31及び第2ウィック構造体32を介して第1金属板11及び第2金属板12を支持する。また、多孔質柱部132は、第1ウィック構造体31及び第2ウィック構造体32を貫通して、第1金属板11及び第2金属板12を直接支持する場合もある。いずれの場合も、多孔質柱部132は、筐体10のZ軸方向の変形を抑制する役割を果たす。
【0042】
多孔質の焼結体で形成された多孔質柱部132は、第1ウィック構造体31から第2ウィック構造体32への作動媒体20の流路として機能する。これにより、液体の作動媒体20を第1ウィック構造体31から第2ウィック構造体32に効率よく移動させることができる。
【0043】
中実柱部131は、多孔質柱部132よりも高剛性である。そして、
図3に示すとおり、第1ウィック構造体31と第2ウィック構造体32との間隙において、中実柱部131が占める割合が、多孔質柱部132が占める割合よりも高い。これにより、第1金属板及び第2金属板の内外圧力差による変形を抑制する効果を高めることができる。
【0044】
第1ウィック構造体31と、第2ウィック構造体32と、多孔質柱部132と、は、一体である。第1ウィック構造体31、第2ウィック構造体32及び多孔質柱部132は、例えば、以下のように形成される。まず、マイクロ銅粒子、銅体及び樹脂を含む金属粉体を接合前の第1金属板11の下面及び第2金属板12の上面に吹き付け塗布する。次に、柱状に成形した金属粉体を挟んで第1金属板11及び第2金属板12を接合する。その後、筐体10を加熱して金属粉体を焼成する。
【0045】
これにより、筐体10の内部空間103に、第1ウィック構造体31と、第2ウィック構造体32と、多孔質柱部132と、を、容易に一体に形成できる。その結果、熱伝導部材100の製造コストを抑制することができる。なお、第1ウィック構造体31、第2ウィック構造体32及び多孔質柱部132を別々に焼成した後に、第1ウィック構造体31、第2ウィック構造体32及び多孔質柱部132を接合してもよい。
【0046】
なお、本明細書において、「塗布」とは、第1金属板11の下面及び第2金属板12の上面に金属粉体を付着させることを指す。金属粉体の塗布方法としては吹き付け以外に、金属粉体を直接塗布してもよい。
【0047】
マイクロ銅粒子は、複数の銅原子が凝集または結合した粒子である。マイクロ銅粒子の粒径は、1μm以上1mm未満である。マイクロ銅粒子は、例えば多孔質である。
【0048】
銅体は、マイクロ銅粒子よりも小さいサブマイクロ銅粒子が焼結により溶融して固まった銅溶融体である。サブマイクロ銅粒子は、複数の銅原子が凝集または結合した粒子である。溶融前のサブマイクロ銅粒子の粒径は、0.1μm以上1μm未満である。
【0049】
樹脂は、マイクロ銅粒子および銅体を構成する銅の融点以下の温度で揮発する揮発性の樹脂である。このような揮発性の樹脂としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロースなどのセルロース樹脂、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などを用いることができる。これらの中では、熱分解性の高いアクリル樹脂を用いることが好ましい。
【0050】
<第2ウィック構造体32>
ここで、第2ウィック構造体32の構造の詳細について図面を参照して説明する。
図4は、第2ウィック構造体32の斜視図である。
図5は、
図4に示す第2ウィック構造体32のYZ平面と平行な面で切断して拡大した拡大断面図である。なお、
図4は、第2ウィック構造体32単体を示しており、柱部13が挿入される柱挿入孔及び多孔質柱部132と接続する部分の図示を省略している。つまり、実際の第2ウィック構造体32は、柱部13が貫通する貫通孔を有する。また、多孔質柱部132が、第2ウィック構造体を貫通する場合、第2ウィック構造体32は、多孔質柱部132が貫通する貫通孔も有する。
【0051】
図4、
図5に示すとおり、第2ウィック構造体32は、上面、つまり、第1ウィック構造体31と対向する対向面320に開口する複数個の開口部34を有する。すなわち、第2ウィック構造体32は、第1ウィック構造体31と対向する対向面320に開口するとともに厚み方向に延びる複数の開口部34を有する。
【0052】
第2ウィック構造体32が複数の開口部34を有することで、気化した作動媒体20が第2ウィック構造体32の外部に逃げやすくなる。これにより、発熱体Htにより加熱されて気化した作動媒体20が、第1ウィック構造体31側に流れやすく、凝縮しやすくなる。その結果、熱輸送効率が向上する。
【0053】
図4、
図5に示すとおり、開口部34は、貫通孔341と、凹部342とを有する。貫通孔341は、第2ウィック構造体32をZ方向、つまり、厚み方向に貫通する。すなわち、開口部34の少なくとも1つは、第2ウィック構造体32を厚み方向に貫通する貫通孔341である。貫通孔341の内部は、第2金属板12からの熱により、直接加熱される。これにより、貫通孔341内部の気化した作動媒体20が加熱されて膨張し、その結果、貫通孔341から外部への気化した作動媒体20の流れが形成される。そのため、第2ウィック構造体32内の気化した作動媒体20の第2ウィック構造体32の外部への流れが促進され、熱輸送効率が向上する。
【0054】
凹部342は、Z方向の下部に、底部343を有する。すなわち、開口部34の少なくとも1つは、第2ウィック構造体32の厚み方向において第2金属板12側の端部に底部343を有する凹部である。
【0055】
このように構成することで、第2ウィック構造体32は、凹部342の底部343と第2金属板12との間に流動部344を有する。流動部344の毛細管力によって、底部343の下方を液体の作動媒体20が流動可能となる。
【0056】
これにより、液体の作動媒体20を、発熱体HtとZ方向に対向する領域である重なり領域105に効率よく流すことができる。なお、重なり領域105は、発熱体Htからの熱が伝わりやすい領域である。そのため、液体の作動媒体20を、伝達される熱の量が多い重なり領域105に効率よく流すことができ、熱輸送効率を向上できる。
【0057】
図4に示すように、開口部34は、第2ウィック構造体32の厚み方向と直交する面で切断した断面が円形である。より詳しく説明すると、貫通孔341及び凹部342のXY面と平行な面で切断した断面形状が円形である。このように構成することで、開口部34の開口から逃げる気体の作動媒体20が、円形に拡がる。これにより、気体の作動媒体20が拡がるときの偏りを抑制され、第2ウィック構造体32内の気体の作動媒体20が逃げやすくなり、熱輸送効率を向上できる。
【0058】
図4に示すように、開口部34は、第2ウィック構造体32を厚み方向(Z方向)から見たとき、第2ウィック構造体32の厚み方向と直交する平面内に分散して配置される。つまり、開口部34は、XY面内において正方格子状に2次元的に、分散して配置される。
【0059】
開口部34を2次元的に、分散して配置することで、第2ウィック構造体32の対向面320に多数の開口部34を配置することができ、より多くの第2ウィック構造体32内の気体の作動媒体20を外部に逃がすことができる。これにより、熱輸送効率を高めることができる。
【0060】
また、X方向及びY方向に隣り合う開口部34が、同じの間隔で配置される。より詳しくは、第2ウィック構造体32において、開口部34は、XY面内においてX方向及びY方向にそれぞれ規則的に並んで配置される。これにより、第2ウィック構造体32内の気体の作動媒体20が外部に逃げやすくなり、熱輸送効率を向上できる。
図4に示す第2ウィック構造体32では、開口部34のX方向の間隔とY方向の間隔とが同じであるが、これに限定されず、X方向の間隔と、Y方向の間隔とが異なった矩形格子状に開口部34が配置されていてもよい。すなわち、一方向に隣り合う開口部34が、同じの間隔で配置される。
【0061】
なお、本実施形態にかかる第2ウィック構造体32では、貫通孔341と凹部342が、X方向に交互に、かつ、Y方向に交互に配置されている。このように構成することで、第2ウィック構造体32内の気体の作動媒体20を外部に逃がしつつ、液体の作動媒体20を重なり領域105に送ることが可能である。これにより、熱輸送効率を高めることができる。第2ウィック構造体32は、以上示した構成を有する。
【0062】
また、熱伝導部材100において、第2ウィック構造体32のZ方向の厚みW2(以下、単に厚みW2と称する)は、第1ウィック構造体31のZ方向の厚みW1(以下、単に厚みW1と称する)よりも大きいことが好ましい。
【0063】
このように構成することで、第2ウィック構造体32の液体の作動媒体20の保持量が第1ウィック構造体31の作動媒体20の保持量よりも大きい。また、第2ウィック構造体32の作動媒体20の保持量が、向上することにより、発熱体HtとZ方向に重なる重なり領域105において、第2ウィック構造体32が保持する液体の作動媒体20が完全に気化する、いわゆるドライアウトの発生を抑制できる。
【0064】
さらに、Z方向において、第1ウィック構造体31の厚みW1と、第2ウィック構造体32の厚みW2と、第1ウィック構造体31と第2ウィック構造体32との隙間の長さW3とは、式(1)を満たすことが好ましい。
【0065】
W3>W2+W1 ・・・(1)
【0066】
内部空間103において、第1ウィック構造体31と第2ウィック構造体32とのZ方向の隙間を大きく設けることにより、第2ウィック構造体32から気化した作動媒体20が、内部空間103内でXY面内に拡散し易くなる。これにより、第1ウィック構造体31における作動媒体20の凝縮が促進される。
【0067】
また、第2ウィック構造体32は、第1ウィック構造体31よりも空隙率が高い。これにより、第2ウィック構造体32の毛細管力が、第1ウィック構造体31の毛細管力よりも大きくなる。
【0068】
ここで、第1ウィック構造体31及び第2ウィック構造体32の全体積に対する空間の体積の割合を、空隙率と呼ぶ。空隙率の単位は%である。空隙率は以下の方法によって求められる。例えば、ウィック構造体の断面写真から、空間の面積を測定し、空間の面積が全体に占める割合を算出することにより、空隙率を求めることができる。第1ウィック構造体31及び第2ウィック構造体32の断面の観察においては、被写界深度の深い走査型電子顕微鏡を用いることが好ましい。なお、断面の観察の方法は、金属部分と空間とを容易に判別できる方法であればよく、特に限定されない。
【0069】
第2ウィック構造体32の毛細管力は、第1ウィック構造体31の毛細管力よりも高いため、第2ウィック構造体32を介して液体の作動媒体20を発熱体Htが配置される被加熱領域101により早く移動させることができる。従って、作動媒体20による熱輸送効率が向上する。
【0070】
以上示した構成の熱伝導部材100を用いることで、発熱体Htからの熱を効率よく輸送して、発熱体Htの温度上昇を抑制できる。
【0071】
<第1変形例>
第1変形例の第2ウィック構造体32aについて説明する。
図6は、第1変形例の第2ウィック構造体32aの拡大断面図である。第2ウィック構造体32aは、開口部34(
図5参照)に替えて開口部35を有する点で、第2ウィック構造体32と異なるが、これ以外は同じ構成である。そのため、実質上同じ部分の詳細な説明は省略する。
【0072】
図6に示すように、第2ウィック構造体32aの開口部35は、貫通孔351及び凹部352を有する。なお、第2ウィック構造体32aにおいて、貫通孔351及び凹部352は、
図5に示す貫通孔341及び凹部342と対応する。そして、凹部352は、底部343と対応する底部353を有する。また、底部353の下方には、流動部344と対応する流動部354が形成される。
【0073】
そして、
図6に示すとおり、貫通孔351のYZ平面と平行な面で切断した断面は、Z方向上方に向かうにつれて大きくなる。また、凹部352のYZ平面と平行な面で切断した断面は、Z方向上方に向かうにつれて大きくなる。すなわち、開口部35は、第2ウィック構造体32aの対向面320に向かうにつれて断面積が大きくなる。
【0074】
このように構成することで、気体の作動媒体20は、開口部35の内周面に沿って広がって逃げる。これにより、第2ウィック構造体32a内の気体の作動媒体20が外部に逃げやすくなり、熱輸送効率を向上できる。
【0075】
<第2変形例>
第2変形例の第2ウィック構造体32aについて説明する。
図7は、第2変形例の第2ウィック構造体32bの拡大断面図である。
図7に示す第2ウィック構造体32bは、開口部34(
図5参照)に替えて開口部36を有する点で、第2ウィック構造体32と異なるが、これ以外は同じ構成である。そのため、実質上同じ部分の詳細な説明は省略する。
【0076】
なお、第2ウィック構造体32bにおいて、貫通孔361及び凹部362は、貫通孔341及び凹部342と対応する。そして、凹部362は、底部343(
図5参照)と対応する底部363を下端に有する。また、底部363の下方には、流動部344(
図5参照)と対応する流動部364が形成される。
【0077】
図7に示す、開口部36の貫通孔361及び凹部362の内周面のように、Z方向の上方に向かうにつれて断面が大きくなる割合が大きくなってもよい。このような構成とすることで、気体の作動媒体20をより効率よく逃がすことができる。
【0078】
<第3変形例>
第3変形例の第2ウィック構造体32cについて説明する。
図8は、第3変形例の第2ウィック構造体32cの平面図である。
図8に示す第2ウィック構造体32cは、開口部34のXY平面内における配置が異なるが、これ以外は同じ構成である。そのため、実質上、同じ部分には同じ符号を付すとともに、詳細な説明は省略する。
【0079】
図8に示すとおり、第2ウィック構造体32cの開口部34は、X方向に対して45度傾いたX1方向及びY方向に対して45度傾いたY1方向に、それぞれ、等間隔で並んで正方格子状に配置される。開口部34をこのように配置しても、X方向及びY方向に規則的に並べて配置したときと同じ効果を有する。
【0080】
なお、
図8に示す第2ウィック構造体32cでは、開口部34のX1方向の間隔とY1方向の間隔とが同じであるが、これに限定されず、X1方向の間隔と、Y1方向の間隔とが異なった矩形格子状に開口部34が配置されてもよい。また、X1方向のX方向に対する角度及びY1方向のY方向に対する角度は45度であるが、これに限定されない。また、X1方向とY1方向とは、直交しているが、これに限定されず、X1方向とY1方向との角度が、90度以外の角度の斜方格子状に開口部が配置されてもよい。この場合も、同様の効果を有する。
【0081】
<第4変形例>
第4変形例の第2ウィック構造体32dについて説明する。
図9は、第4変形例の第2ウィック構造体32dの平面図である。
図9に示す第2ウィック構造体32dは、開口部34のXY平面内における配置が異なるが、これ以外は同じ構成である。そのため、実質上、同じ部分には同じ符号を付すとともに、詳細な説明は省略する。
【0082】
図9に示すとおり、第2ウィック構造体32dでは、対向面320に敷き詰められた正三角形Trの頂点の位置に開口部34が配置される。すなわち、開口部34は正三角格子状に配置される。これにより、開口部34は一方向に同じ間隔で並ぶ。開口部34をこのように配置しても、X方向及びY方向に規則的に並べて配置したときと同じ効果を有する。
【0083】
なお、第2ウィック構造体32dでは、対向面320に正三角形Trを敷き詰めたが、これに限定されない。例えば、正六角形であってもよい。またこれら以外にも、規則的に敷き詰めることができる形状を採用することができる。この場合も、同様の効果を有する。
【0084】
<第5変形例>
第5変形例の第2ウィック構造体32eについて説明する。
図10は、第5変形例の第2ウィック構造体32eの平面図である。
図10に示す第2ウィック構造体32eは、開口部34のXY平面内における配置が異なるが、これ以外は同じ構成である。そのため、実質上、同じ部分には同じ符号を付すとともに、詳細な説明は省略する。
【0085】
図10に示すとおり、第2ウィック構造体32eでは、対向面320における開口部34の密度が高い領域321と、周囲の領域322と有する。周囲の領域322における開口部34の密度は、密度が高い領域321における開口部34の密度よりも低い。そして、密度が高い領域321は、重なり領域105と一部がZ方向と重なる。
【0086】
すなわち、第2ウィック構造体32eは周囲の領域322よりも開口部34の密度が高い領域321を有する。そして、第2ウィック構造体32eの厚み方向において、密度が高い領域321の少なくとも一部は、発熱体Htと重なる。
【0087】
第2ウィック構造体32e内の気化された作動媒体20は、重なり領域105では他の部分に比べて高温になる。第2ウィック構造体32eの厚み方向において、重なり領域105、つまり、発熱体Htと重なる密度が高い領域321に、周囲の領域322よりも多数の開口部34を配置することで、第2ウィック構造体32e内の高温の気化された作動媒体20を外部に逃がしやすい。これにより、第2ウィック構造体32eの熱輸送効率を向上できる。
【0088】
なお、第2ウィック構造体32eにおいて、開口部34は、貫通孔341と凹部342とを交互に配置してもよい。また、密度が高い領域321には、凹部342を配置し、周囲の領域322には、貫通孔341だけを配置してもよいし、貫通孔341及び凹部342を配置してもよい。このように構成することで、液体の作動媒体20を重なり領域105に効率よく移動させることができる。また、密度が高い領域321に、貫通孔341だけを配置してもよい。このとき、周囲の領域322は、貫通孔341だけが配置されてもよいし、凹部342だけでもよいし、貫通孔341と凹部342の両方が配置されてもよい。
【0089】
図11は、他の例の第2ウィック構造体32fの平面図である。
図11に示す第2ウィック構造体32fのように、密度が高い領域321にのみ開口部34を並べて配置し、周囲の領域322は、開口部34を配置しない構成であってもよい。このように構成することで、密度が高い領域321では、第2ウィック構造体32f内の高温の気化された作動媒体20を外部に逃がしやすい。
【0090】
図12は、さらに他の例の第2ウィック構造体32gの平面図である。
図12に示す第2ウィック構造体32gのように、密度が高い領域321では、開口部34が径方向及び周方向に規則的、ここでは、径方向に等間隔かつ周方向に等間隔に配置される。そして、周囲の領域322は、開口部34を配置しない構成であってもよい。これにより、熱輸送効率を向上できる。第2ウィック構造体32f内の高温の気化された作動媒体20を外部に逃がしやすい。
【0091】
なお、開口部34を密度が高い領域321にのみ配置する場合、開口部34は、貫通孔341と凹部342を配置してもよいし、貫通孔341だけ又は凹部342だけを配置してもよい。
【0092】
以上、本開示の実施形態を説明した。なお、本開示の範囲は上述の実施形態に限定されない。本開示は、発明の主旨を逸脱しない範囲で上述の実施形態に種々の変更を加えて実施することができる。また、上述の実施形態で説明した事項は、矛盾を生じない範囲で適宜任意に組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
各種発熱体の冷却に利用することができる。
【符号の説明】
【0094】
100 熱伝導部材
101 被加熱領域
102 放熱領域
103 内部空間
105 重なり領域
10 筐体
11 第1金属板
111 第1側壁部
12 第2金属板
121 第2側壁部
13 柱部
131 中実柱部
132 多孔質柱部
14 接合部
20 作動媒体
31 第1ウィック構造体
32 第2ウィック構造体
320 対向面
321 密度が高い領域
322 周囲の領域
34 開口部
35 開口部
36 開口部
Ht 発熱体
32a 第2ウィック構造体
341 貫通孔
342 凹部
343 底部
344 流動部
32b 第2ウィック構造体
351 貫通孔
352 凹部
353 底部
354 流動部
32c 第2ウィック構造体
361 貫通孔
362 凹部
363 底部
364 流動部
32d 第2ウィック構造体
32e 第2ウィック構造体
32f 第2ウィック構造体
32g 第2ウィック構造体