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特開2023-123905非水二次電池の製造方法、非水二次電池の検査装置、及び、非水二次電池の検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123905
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】非水二次電池の製造方法、非水二次電池の検査装置、及び、非水二次電池の検査方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20230830BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20230830BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/0566
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027376
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107249
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 恭久
(72)【発明者】
【氏名】高橋 祐貴
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029CJ16
5H029CJ28
5H029CJ30
5H029HJ07
5H029HJ18
5H029HJ19
(57)【要約】
【課題】非水二次電池における負極活物質の実効的な比表面積が適正範囲内か否かを判定可能とした非水二次電池の製造方法、非水二次電池の検査装置、及び、非水二次電池の検査方法を提供する。
【解決手段】正極板と、負極活物質を含む負極合剤層を備える負極板と、電解液と、を備えるリチウムイオン二次電池10を充電する充電工程と、負極活物質における重量あたりの実効的な比表面積が適正な大きさか否かを判定する判定工程と、を含み、判定工程は、充電工程におけるリチウムイオン二次電池10の充電電気量Q及び電圧Vを所定時間ごとに取得し、充電電気量Qに対する電圧Vの値を示すQ-V曲線において、傾きの減少量が最大となる充電電気量Qの特定値を算出し、特定値が予め設定された適正範囲内である場合に比表面積が適正な大きさであると判定し、特定値が適正範囲外である場合に比表面積が適正な大きさではないと判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板と、負極活物質を含む負極合剤層を備える負極板と、電解液と、を用いて非水二次電池を組み立てる組立工程と、
前記非水二次電池を充電する充電工程と、
前記負極活物質における重量あたりの実効的な比表面積が適正な大きさか否かを判定する判定工程と、を含み、
前記判定工程は、
前記充電工程における前記非水二次電池の充電電気量Q及び電圧Vを所定時間ごとに取得し、
前記充電電気量Qに対する前記電圧Vの値を示すQ-V曲線において、傾きの減少量が最大となる前記充電電気量Qの特定値を算出し、
前記特定値が予め設定された適正範囲内である場合に前記比表面積が適正な大きさであると判定し、前記特定値が前記適正範囲外である場合に前記比表面積が適正な大きさではないと判定する
非水二次電池の製造方法。
【請求項2】
前記特定値は、前記充電電気量Qに対して前記Q-V曲線を二階微分したdV/dQの値を示すQ-dV/dQ曲線において、前記Q-dV/dQ曲線にピークが表れる前記充電電気量Qの値として算出される
請求項1に記載の非水二次電池の製造方法。
【請求項3】
前記充電工程で行われる充電は、前記組立工程において組み立てられた前記非水二次電池に対する初回の充電である
請求項1または2に記載の非水二次電池の製造方法。
【請求項4】
前記適正範囲は、予め作製された前記比表面積が異なる複数の非水二次電池の各々において算出された前記特定値から導出される検量線に基づいて設定される
請求項1ないし3のうち何れか一項に記載の非水二次電池の製造方法。
【請求項5】
正極板と、負極活物質を含む負極合剤層を有する負極板と、電解液と、を備える非水二次電池を検査する検査装置であって、
前記非水二次電池を充電する際に、前記非水二次電池の充電電気量Q及び電圧Vを所定時間ごとに取得する取得部と、
前記充電電気量Qに対する前記電圧Vの値を示すQ-V曲線において、傾きの減少量が最大となる前記充電電気量Qの特定値を算出する第1処理と、前記特定値が予め設定された適正範囲内である場合に前記負極活物質における重量あたりの実効的な比表面積が適正な大きさであると判定し、前記特定値が前記適正範囲外である場合に前記比表面積が適正な大きさではないと判定する第2処理と、を実行する制御部と、を備える
非水二次電池の検査装置。
【請求項6】
正極板と、負極活物質を含む負極合剤層を有する負極板と、電解液と、を備える非水二次電池を検査する検査方法であって、
前記非水二次電池を充電する際に、前記非水二次電池の充電電気量Q及び電圧Vを所定時間ごとに取得し、
前記充電電気量Qに対する前記電圧Vの値を示すQ-V曲線において、傾きの減少量が最大となる前記充電電気量Qの特定値を算出し、
前記特定値が予め設定された適正範囲内である場合に前記負極活物質における重量あたりの実効的な比表面積が適正な大きさであると判定し、前記特定値が前記適正範囲外である場合に前記比表面積が適正な大きさではないと判定する
非水二次電池の検査方法。
【請求項7】
予め作製された前記比表面積が異なる複数の非水二次電池の各々に対して前記特定値を算出して検量線を導出し、
前記検量線に基づいて前記適正範囲を設定する
請求項6に記載の非水二次電池の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水二次電池の製造方法、非水二次電池の検査装置、及び、非水二次電池の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車では、その電源として非水二次電池の一例であるリチウムイオン二次電池が用いられる。リチウムイオン二次電池は、正極板及び負極板を有した電極体を備える。リチウムイオン二次電池の負極板は、銅板のような金属板である負極基材と、負極基材上に形成される負極合剤層とを備える。負極合剤層は、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な材料である負極活物質を含む。負極活物質は、例えば、黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素などの炭素材料が用いられる。
【0003】
負極合剤層における負極活物質の実効的な比表面積(単位重量あたりの表面積)は、リチウムイオン二次電池の寿命特性や放電特性などの種々の性能に影響を及ぼす。例えば、特許文献1には、負極合剤層の実効的な比表面積を所定の範囲に規定することで、良好な放電特性を実現する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-11604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
負極合剤層における負極活物質の実効的な比表面積は、負極合剤層を形成する前の原材料の状態における負極活物質の比表面積や、負極合剤層を形成する際の製造工程に依存する。したがって、負極活物質の実効的な比表面積は、製造条件のばらつきなどによってリチウムイオン二次電池ごとに異なる。そのため、製造現場において、製造されたリチウムイオン二次電池における負極活物質の実効的な比表面積が適正範囲内か否かを判定する手段が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための非水二次電池の製造方法は、正極板と、負極活物質を含む負極合剤層を備える負極板と、電解液と、を用いて非水二次電池を組み立てる組立工程と、前記非水二次電池を充電する充電工程と、前記負極活物質における重量あたりの実効的な比表面積が適正な大きさか否かを判定する判定工程と、を含み、前記判定工程は、前記充電工程における前記非水二次電池の充電電気量Q及び電圧Vを所定時間ごとに取得し、前記充電電気量Qに対する前記電圧Vの値を示すQ-V曲線において、傾きの減少量が最大となる前記充電電気量Qの特定値を算出し、前記特定値が予め設定された適正範囲内である場合に前記比表面積が適正な大きさであると判定し、前記特定値が前記適正範囲外である場合に前記比表面積が適正な大きさではないと判定する。
【0007】
上記製造方法によれば、充電工程における充電初期の第1期間では、充電電気量Qの増加量に対して電圧Vの増加量が大きく、Q-V曲線は急峻な立ち上がりを示す。充電工程が進み充電電気量Qが特定値に達した第2期間では、充電電気量Qの増加量に対する電圧Vの増加量が緩やかになってQ-V曲線の傾きが大きく減少する。したがって、判定工程では、第1期間と第2期間との境界における充電電気量Qの値が特定値として算出される。また、充電工程において、充電電気量Qの一部は、負極合剤層上でのSEI被膜の形成に消費される。負極合剤層上に形成されるSEI被膜の量は、負極活物質の実効的な比表面積との間に正の相関を有する。そのため、充電に際して負極合剤層上でSEI被膜が形成されることで、負極活物質の実効的な比表面積に応じて、第1期間におけるQ-V曲線の立ち上がり、及び特定値が変わる。したがって、充電工程における特定値を算出することで、負極活物質の実効的な比表面積が適正な大きさであるか否かを判定できる。また、充電工程におけるQ-V曲線から負極活物質の実効的な比表面積の大きさの判定を行うことで、非水二次電池の製造工程において全数の非水二次電池に対する判定が可能となる。
【0008】
上記製造方法において、前記特定値は、前記充電電気量Qに対して前記Q-V曲線を二階微分したdV/dQの値を示すQ-dV/dQ曲線において、前記Q-dV/dQ曲線にピークが表れる前記充電電気量Qの値として算出されることが好ましい。上記製造方法によれば、特定値の算出において、Q-dV/dQ曲線を用いることで、負極活物質の実効的な比表面積が適正な大きさであるか否かを容易に判定できる。
【0009】
上記製造方法において、前記充電工程で行われる充電は、前記組立工程において組み立てられた前記非水二次電池に対する初回の充電であることが好ましい。上記製造方法によれば、非水二次電池に対する初回の充電時に判定工程を行うことで、充放電を繰り返すことに伴う非水二次電池の変化を含めずに、負極活物質の実効的な比表面積についての判定を行うことができる。したがって、判定の精度を高めることができる。
【0010】
上記製造方法において、前記適正範囲は、予め作製された前記比表面積が異なる複数の非水二次電池の各々において算出された前記特定値から導出される検量線に基づいて設定されることが好ましい。上記製造方法によれば、適正範囲の設定において、比表面積が異なる複数の非水二次電池から算出された特定値から導出される検量線を用いることで、実際の負極合剤層の組成や製造工程の影響を加味した適正範囲を設定することができる。したがって、判定の精度を高めることができる。
【0011】
上記課題を解決するための非水二次電池の検査装置は、正極板と、負極活物質を含む負極合剤層を有する負極板と、電解液と、を備える非水二次電池を検査する検査装置であって、前記非水二次電池を充電する際に、前記非水二次電池の充電電気量Q及び電圧Vを所定時間ごとに取得する取得部と、前記充電電気量Qに対する前記電圧Vの値を示すQ-V曲線において、傾きの減少量が最大となる前記充電電気量Qの特定値を算出する第1処理と、前記特定値が予め設定された適正範囲内である場合に前記負極活物質における重量あたりの実効的な比表面積が適正な大きさであると判定し、前記特定値が前記適正範囲外である場合に前記比表面積が適正な大きさではないと判定する第2処理と、を実行する制御部と、を備える。
【0012】
上記課題を解決するための非水二次電池の検査方法は、正極板と、負極活物質を含む負極合剤層を有する負極板と、電解液と、を備える非水二次電池を検査する検査方法であって、前記非水二次電池を充電する際に、前記非水二次電池の充電電気量Q及び電圧Vを所定時間ごとに取得し、前記充電電気量Qに対する前記電圧Vの値を示すQ-V曲線において、傾きの減少量が最大となる前記充電電気量Qの特定値を算出し、前記特定値が予め設定された適正範囲内である場合に前記負極活物質における重量あたりの実効的な比表面積が適正な大きさであると判定し、前記特定値が前記適正範囲外である場合に前記比表面積が適正な大きさではないと判定する。
【0013】
上記非水二次電池の検査方法において、予め作製された前記比表面積が異なる複数の非水二次電池の各々に対して前記特定値を算出して検量線を導出し、前記検量線に基づいて前記適正範囲を設定することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、非水二次電池における負極活物質の実効的な比表面積が適正範囲内か否かを判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、非水二次電池検査システムの構成を示す模式図である。
図2図2は、電極体の一部を展開した図である。
図3図3は、電極体を展開した状態の断面図である。
図4図4は、検査装置の構成を示すブロック図である。
図5図5は、リチウムイオン二次電池の製造方法を示すフローチャートである。
図6図6は、判定工程の処理を示すフローチャートである。
図7図7は、充電工程におけるリチウムイオン二次電池の充電電気量Q、電圧V、及びdV/dQの対応関係を示す図である。
図8図8は、負極活物質の実効的な比表面積が異なる場合のQ-V曲線の挙動を示す図である。
図9図9は、負極活物質の実効的な比表面積と特定値との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について図1図9を参照して説明する。
[非水二次電池検査システム]
図1に示すように、非水二次電池検査システム1は、非水二次電池の製造工程において、非水二次電池に充電を行うとともに、非水二次電池における負極活物質の実効的な比表面積が適正な大きさか否かの判定を行う。非水二次電池検査システム1は、リチウムイオン二次電池10と、充電装置30と、検査装置40とを備える。
【0017】
リチウムイオン二次電池10は、非水二次電池の一例である。充電装置30は、リチウムイオン二次電池10に接続される。リチウムイオン二次電池10は、充電装置30からの電力供給を受けて充電される。検査装置40は、リチウムイオン二次電池10における充電時の充電電気量Q及び電圧Vの挙動に基づいて、リチウムイオン二次電池10の良否判定を行う。
【0018】
[リチウムイオン二次電池]
リチウムイオン二次電池10は、複数のリチウムイオン二次電池10と組み合わされた状態で、樹脂製または金属製のケースに封入されて電池パックを構成するセル電池である。電池パックは、ハイブリッド自動車や電気自動車に用いられる。
【0019】
リチウムイオン二次電池10は、電池ケース11と、蓋体12とを備える。電池ケース11は、上側に開口部を有した直方体形状を有する。蓋体12は、電池ケース11の開口部を封止する。電池ケース11及び蓋体12は、アルミニウム、もしくはアルミニウム合金等の金属で構成される。リチウムイオン二次電池10は、電池ケース11に蓋体12を取り付けることで密閉された電槽が構成される。
【0020】
蓋体12には、2つの外部端子13A,13Bが設けられる。外部端子13A,13Bは、電力の充放電に用いられる。非水二次電池検査システム1において、外部端子13A,13Bは、充電装置30及び検査装置40と電気的に接続される。
【0021】
リチウムイオン二次電池10は、電池ケース11の内部には、電極体20が収容される。電極体20における正極側の端部である正極側集電部20Aは、正極側集電部材14Aを介して正極の外部端子13Aに電気的に接続される。電極体20における負極側の端部である負極側集電部20Bは、負極側集電部材14Bを介して負極の外部端子13Bに電気的に接続される。また、電池ケース11内には、図示しない注液孔から非水電解液が注入される。
【0022】
[電極体]
図2に示すように、電極体20は、長尺の正極板21と負極板24とがセパレータ27を介して積層した積層体を捲回した偏平な捲回体である。正極板21、負極板24、及びセパレータ27は、それぞれの長手方向が互いに一致するように積層される。捲回前の積層体は、正極板21、セパレータ27、負極板24、セパレータ27の順に、厚さ方向に積層される。
【0023】
[正極板]
図3に示すように、正極板21は、正極基材22と、正極合剤層23とを備える。正極基材22は、長尺状に形成された箔状の電極基材である。正極合剤層23は、正極基材22の相対する2つの面の各々に設けられる。正極基材22は、幅方向の一端に、正極合剤層23が形成されずに正極基材22が露出した正極側露出部22Aを備える。
【0024】
正極基材22は、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金から構成される金属箔が用いられる。正極基材22は、正極における集電体として機能する。正極基材22が備える正極側露出部22Aは、捲回体の状態において、向かい合う面が互いに圧接されて正極側集電部20Aを構成する。
【0025】
正極合剤層23は、液状体の正極合剤ペーストの硬化体である。正極合剤ペーストは、正極活物質、正極溶媒、正極導電材、及び正極結着材を含む。正極合剤層23は、正極合剤ペーストが乾燥されて正極溶媒が気化することで形成される。したがって、正極合剤層23は、正極活物質、正極導電材、及び正極結着材を含む。
【0026】
正極活物質は、リチウムイオン二次電池10における電荷担体であるリチウムイオンを吸蔵及び放出可能なリチウム含有複合金属酸化物が用いられる。リチウム含有複合酸化物は、リチウムと、リチウム以外の他の金属元素とを含む酸化物である。リチウム以外の他の金属元素は、例えば、ニッケル、コバルト、マンガン、バナジウム、マグネシウム、モリブデン、ニオブ、チタン、タングステン、アルミニウム、リチウム含有複合酸化物にリン酸鉄として含有される鉄からなる群から選択される少なくとも一種である。
【0027】
例えば、リチウム含有複合酸化物は、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、マンガン酸リチウム(LiMn)である。例えば、リチウム含有複合酸化物は、ニッケル、コバルト及びマンガンを含有する三元系リチウム含有複合酸化物であり、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(LiNiCoMnO)である。例えば、リチウム含有複合酸化物は、リン酸鉄リチウム(LiFePO)である。
【0028】
正極溶媒は、有機溶媒の一例であるNMP(N-メチル-2-ピロリドン)溶液が用いられる。正極導電材としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、カーボンナノチューブやカーボンナノファイバ等の炭素繊維、黒鉛が用いられる。正極結着材は、正極合剤ペーストに含まれる樹脂成分の一例である。正極結着材は、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルアルコール(PVA)、スチレンブタジエンラバー(SBR)等が用いられる。
【0029】
なお、正極板21は、正極側露出部22Aと正極合剤層23との境界に、絶縁層を備えてもよい。絶縁層は、絶縁性を有した無機成分と、結着材として機能する樹脂成分とを含む。無機成分は、粉末状のベーマイト、チタニア、及びアルミナからなる群から選択される少なくとも1つである。樹脂成分は、PVDF、PVA、アクリルからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0030】
[負極板]
負極板24は、負極基材25と、負極合剤層26とを備える。負極基材25は、長尺状に形成された箔状の電極基材である。負極合剤層26は、負極基材25の相対する2つの面の各々に設けられる。負極基材25は、幅方向の一端であって、正極側露出部22Aと反対に位置する端部において、負極合剤層26が形成されずに負極基材25が露出した負極側露出部25Aを備える。
【0031】
負極基材25は、銅または銅を主成分とする合金から構成される金属箔が用いられる。負極基材25は、負極における集電体として機能する。負極側露出部25Aは、捲回体の状態において、向かい合う面が互いに圧接されて負極側集電部20Bを構成する。
【0032】
負極合剤層26は、液状体の負極合剤ペーストの硬化体である。負極合剤ペーストは、負極活物質、負極溶媒、負極分散材、及び負極結着材を含む。負極合剤層26は、負極合剤ペーストが乾燥されて負極溶媒が気化することで形成される。したがって、負極合剤層26は、負極活物質、負極分散材、及び負極結着材を含む。なお、負極合剤層26は、導電材のような添加剤をさらに含んでもよい。
【0033】
負極活物質は、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な材料である。負極活物質は、例えば、黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、カーボンナノチューブ等の炭素材料等が用いられる。負極溶媒は、一例として、水である。負極分散材は、一例として、カルボキシメチルセルロース(CMC)を用いることができる。負極結着材は、正極結着材と同様のものを用いることができる。負極結着材は、一例としてSBRである。
【0034】
[セパレータ]
セパレータ27は、正極板21と負極板24との接触を防ぐとともに、正極板21及び負極板24の間で非水電解液を保持する。非水電解液に電極体20を浸漬させると、セパレータ27の端部から中央部に向けて非水電解液が浸透する。
【0035】
セパレータ27は、ポリプロピレン製等の不織布である。セパレータ27としては、例えば、多孔性ポリエチレン膜、多孔性ポリオレフィン膜、多孔性ポリ塩化ビニル膜等の多孔性ポリマー膜、及びイオン導電性ポリマー電解質膜等を用いることができる。
【0036】
[非水電解液]
非水電解液は、非水溶媒に支持塩が含有された組成物である。非水溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等からなる群から選択された一種または二種以上の材料を用いることができる。また、支持塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO、LiCSO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiI等から選択される一種または二種以上のリチウム化合物(リチウム塩)を用いることができる。
【0037】
本実施形態では、非水溶媒としてエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合溶媒を採用している。非水電解液には、添加剤としてのリチウム塩としてのリチウムビスオキサレートボレート(LiBOB)が添加される。例えば、非水電解液におけるLiBOBの濃度が0.001以上0.1以下[mol/L]となるように、非水電解液にLiBOBを添加する。
【0038】
[検査装置]
図4に示すように、検査装置40は、制御部41と、記憶部42と、充電電気量取得部43と、電圧取得部44とを備える。制御部41は、一例として、検査装置40における全体の動作を制御するCPUである。記憶部42は、一例として、データを一時的に記憶するRAMと、HDDやフラッシュメモリのような不揮発性メモリとを備える。充電電気量取得部43は、充電装置30によって充電されている状態のリチウムイオン二次電池10に供給される充電電気量Qを取得する。電圧取得部44は、充電装置30によって充電されている状態のリチウムイオン二次電池10の電圧Vを取得する。
【0039】
制御部41は、所定時間ごとに、充電電気量取得部43に充電電気量Qを取得させるとともに、電圧取得部44に電圧Vを取得させる。充電電気量取得部43及び電圧取得部44は、リチウムイオン二次電池10を充電する際に、充電電気量Q及び電圧Vを所定時間ごとに取得する取得部の一例である。制御部41は、充電電気量取得部43が取得した充電電気量Qと、電圧取得部44が取得した電圧Vとを対応付けて記憶部42に記憶させる。
【0040】
制御部41は、演算部41Aと、判定部41Bとを備える。演算部41Aは、リチウムイオン二次電池10の充電時における充電電気量Qに対する電圧Vの値を示すQ-V曲線を取得する。演算部41Aは、Q-V曲線における傾きの減少量が最大となる充電電気量Qの値である特定値Q1を算出する。
【0041】
判定部41Bは、演算部41Aが算出した特定値Q1に基づいて、負極活物質における重量あたりの実効的な比表面積が適正な大きさか否かを判定することで、リチウムイオン二次電池10の良否判定を行う。判定部41Bは、特定値Q1が適正範囲内である場合に比表面積が適正な大きさであると判定する。判定部41Bは、特定値Q1が適正範囲外である場合に比表面積が適正な大きさではないと判定する。
【0042】
記憶部42は、メモリ部42Aと、データ記憶部42Bと、プログラム記憶部42Cとを備える。メモリ部42Aは、検査装置40のデータやプログラムなどを一時的に記憶する。データ記憶部42Bは、制御部41における各種処理を実行するためのデータを記憶する。プログラム記憶部42Cは、制御部41における各種処理を実行するためのプログラムを記憶する。
【0043】
[リチウムイオン二次電池の製造方法]
図5に示すように、リチウムイオン二次電池10の製造方法は、ステップS1-1~S1-5の工程を含む。ステップS1-1は、正極板21及び負極板24のそれぞれを製造する源泉工程である。正極板21の製造工程は、正極基材22の両面において、幅方向の両端に正極側露出部22Aを構成するように正極合剤ペーストを塗工する。その後、正極合剤ペーストを乾燥させて正極合剤層23を形成する。次いで、正極基材22の両面に形成された正極合剤層23を押圧することで、正極合剤層23の厚みを調整する。その後、正極基材22を幅方向の中央で切断する。以上の工程によって、一度に2条の正極板21が製造される。
【0044】
負極板24の製造工程は、負極基材25の両面において、幅方向の両端に負極側露出部25Aを構成するように負極合剤ペーストを塗工する。その後、負極合剤ペーストを乾燥させて負極合剤層26を形成する。次いで、負極基材25の両面に形成された負極合剤層26を押圧することで、負極合剤層26の厚みを調整する。その後、負極基材25を幅方向の中央で切断する。以上の工程によって、一度に2条の負極板24が製造される。
【0045】
負極合剤層26において、負極活物質が負極結着材に覆われることで、充放電反応に寄与する負極活物質の実効的な比表面積が減少する。また、負極合剤層26が押圧される工程において、負極活物質の粒子が割れることで、負極活物質の実効的な比表面積が増加する。したがって、負極活物質の実効的な比表面積は、原材料の状態の負極活物質における比表面積だけでなく、負極合剤層26の組成や負極合剤層26の製造工程にも依存する。
【0046】
ステップS1-2は、リチウムイオン二次電池10を組み立てる組立工程である。組立工程では、初めに電極体20を製造する。具体的に、まず、正極板21と負極板24とをセパレータ27を介して積層した後、捲回し、さらに、偏平に押圧する。その後、正極側露出部22Aを圧接して正極側集電部20Aを形成するとともに、負極側露出部25Aを圧接して負極側集電部20Bを形成する。以上の手順により、電極体20が製造される。
【0047】
次いで、電極体20を電池ケース11内に収容する。このとき、正極側集電部20Aは、正極側集電部材14Aを介して正極の外部端子13Aと電気的に接続される。負極側集電部20Bは、負極側集電部材14Bを介して負極の外部端子13Bと電気的に接続される。電池ケース11の上部は、蓋体12によって塞がれる。そして、加熱処理によって電極体20の水分を除去した後、電池ケース11内に非水電解液が注入される。以上の手順により、リチウムイオン二次電池10が組み立てられる。
【0048】
ステップS1-3は、組立工程によって組み立てられたリチウムイオン二次電池10を、充電装置30によって充電する充電工程である。充電工程で行われる充電は、一例として、組立工程において組み立てられたリチウムイオン二次電池10に対する初回の充電である。充電工程では、リチウムイオン二次電池10の外部端子13A,13Bが充電装置30及び検査装置40と接続される。
【0049】
ステップS1-4は、検査装置40によって、充電工程における充電電気量Q及び電圧Vの挙動に基づいて、負極活物質の実効的な比表面積が適正な大きさか否かを判定する判定工程である。リチウムイオン二次電池10の製造工程では、判定工程において負極活物質の実効的な比表面積の大きさが適正範囲内であると判定されたリチウムイオン二次電池10のみが、後工程であるステップS1-5に進む。
【0050】
ステップS1-5は、充電工程、及び判定工程を経たリチウムイオン二次電池10を高温下で一定期間静置するエージング工程である。エージング工程によって、リチウムイオン二次電池10のなかの金属異物を溶解させるとともにSEI被膜を安定化させる。
【0051】
[判定工程]
以下、図6図7を参照して、判定工程(ステップS1-4)について詳述する。
図6に示すように、判定工程において、検査装置40は、リチウムイオン二次電池10の検査方法の一例であるステップS2-1~S2-6の処理を実行する。ステップS2-1において、検査装置40は、充電工程における充電電気量Qに対する電圧Vの値を示すQ-V曲線を取得する。まず、検査装置40の制御部41は、充電工程において、充電電気量取得部43に充電電気量Qを所定時間ごとに取得させる処理を実行する。同時に、制御部41は、充電工程において、電圧取得部44に電圧Vを所定時間ごとに取得させる処理を実行する。充電電気量取得部43が充電電気量Qを取得するタイミングと、電圧取得部44が電圧Vを取得するタイミングとは同じである。取得された充電電気量Q及び電圧Vは、充電電気量Qと電圧Vとが対応付けられて、データ記憶部42Bに記憶される。演算部41Aは、充電電気量取得部43が取得した充電電気量Qと、電圧取得部44が取得した電圧Vとに基づいてQ-V曲線を導出する。
【0052】
図7に示すように、グラフ100における曲線101は、Q-V曲線の一例である。充電工程における充電初期の第1期間101Aにおいて、充電電気量Qの増加量に対して電圧Vの増加量が大きいため、曲線101は急峻な立ち上がりを示す。充電工程が進み充電電気量Qが特定値Q1に達した第2期間101Bでは、充電電気量Qの増加量に対する電圧Vの増加量が緩やかになってQ-V曲線の傾きが大きく減少する。特定値Q1は、曲線101の傾きの減少量が最大となる充電電気量Qの値である。
【0053】
充電工程において、充電電気量Qの一部は、負極合剤層26上でのSEI被膜の形成に消費される。負極合剤層26上に形成されるSEI被膜の量は、負極活物質の実効的な比表面積との間に正の相関を有する。そのため、充電に際して負極合剤層26上でSEI被膜が形成されることで、負極活物質の実効的な比表面積に応じて、第1期間101Aにおける曲線101の立ち上がり、及び特定値Q1が変わる。したがって、充電工程における特定値Q1を算出することで、負極活物質の実効的な比表面積が適正な大きさであるか否かを判定できる。
【0054】
ステップS2-2において、演算部41Aは、Q-V曲線を二階微分したdV/dQの値を算出する。図7に示すグラフ100における曲線102は、充電電気量Qに対するdV/dQの値を示すQ-dV/dQ曲線である。曲線102は、特定値Q1において、ピーク102Pを有する。
【0055】
ステップS2-3において、演算部41Aは、曲線102のピーク102Pにおける充電電気量Qの値を、第1期間101Aと第2期間101Bとの境界における充電電気量Qの値である特定値Q1として算出する。ステップS2-3において特定値Q1を算出する処理は、検査装置40において実行される第1処理の一例である。
【0056】
ステップS2-4において、判定部41Bは、ステップS2-3において算出された特定値Q1が、予め設定された適正範囲内か否かを判定する。ステップS2-4において用いられる適正範囲は、記憶部42が備えるデータ記憶部42Bに保存される。ステップS2-4において特定値Q1が適正範囲内か否かを判定する処理は、検査装置40において実行される第2処理の一例である。
【0057】
特定値Q1が適正範囲内である場合、ステップS2-5に進む。ステップS2-5に進んだリチウムイオン二次電池10は、負極活物質の実効的な比表面積が適正な大きさであると判定されて後工程であるエージング工程に進む。
【0058】
特定値Q1が適正範囲外である場合、ステップS2-6に進む。ステップS2-6に進んだリチウムイオン二次電池10は、負極活物質の実効的な比表面積が適正な大きさではないと判定されて製造ラインから除外される。
【0059】
また、以上の処理は、プログラム記憶部42Cにインストールされて記憶された検査プログラムによって実行される。検査プログラムは、ステップS2-1において、充電電気量取得部43に充電電気量Qを所定時間ごとに取得させるとともに、電圧取得部44に電圧Vを所定時間ごとに取得させる。検査プログラムは、演算部41Aに特定値Q1を算出する処理を実行させる。検査プログラムは、判定部41Bに特定値Q1が予め設定された適正範囲内か否かを判定する処理を実行させる。
【0060】
[比表面積と特定値との関係]
以下、図8を参照して、負極活物質の実効的な比表面積と、Q-V曲線の特定値Q1についての関係について説明する。
【0061】
図8に示すように、グラフ200における曲線201は、充電工程における充電電気量Qに対する正極側の開回路電位(OCP)を示す。グラフ200における曲線202は、充電工程における充電電気量Qに対する負極側の開回路電位を示す。グラフ200における曲線203は、充電工程における充電電気量Qに対するリチウムイオン二次電池10の電圧Vを示すQ-V曲線の一例である。電圧Vは、正極側の開回路電位から負極側の開回路電位を引いた値と一致する。すなわち、曲線203は、曲線201と曲線202との差分である。
【0062】
グラフ200において、破線で示す曲線202Aは、曲線202の状態よりも負極活物質の実効的な比表面積が小さい場合の、充電工程における充電電気量Qに対する負極側の開回路電位を示す。グラフ200において、破線で示す曲線203Aは、曲線203の状態よりも負極活物質の実効的な比表面積が小さい場合のQ-V曲線の一例である。
【0063】
負極活物質の実効的な比表面積が相対的に小さくなると、負極合剤層26においてSEI被膜が形成される量が減少する。すると、SEI被膜の形成に消費される充電電気量Qが減少することで、曲線201との対応関係において、曲線202Aの全体が曲線202よりも右側にシフトする。この場合、曲線203Aにおける特定値Q1Aもまた、曲線203における特定値Q1よりも右側にシフトする。
【0064】
グラフ200において、破線で示す曲線202Bは、曲線202の状態よりも負極活物質の実効的な比表面積が大きい場合の、充電工程における充電電気量Qに対する負極側の開回路電位を示す。グラフ200において、破線で示す曲線203Bは、曲線203の状態よりも負極活物質の実効的な比表面積が大きい場合のQ-V曲線の一例である。
【0065】
負極活物質の実効的な比表面積が相対的に大きくなると、負極合剤層26においてSEI被膜が形成される量が増加する。すると、SEI被膜の形成に消費される充電電気量Qが増加することで、曲線201との対応関係において、曲線202Bの全体が曲線202よりも左側にシフトする。この場合、曲線203Bにおける特定値Q1Bもまた、曲線203における特定値Q1よりも左側にシフトする。
【0066】
以上のように、Q-V曲線における特定値Q1は、負極活物質の実効的な比表面積の大きさによってその値を変える。したがって、Q-V曲線における特定値Q1が適正範囲内か否かを判定することで、負極活物質の実効的な比表面積が適正な大きさか否かを評価することができる。
【0067】
[特定値の適正範囲の設定]
以下、図9を参照して、特定値Q1の適正範囲を設定する手順について説明する。なお、特定値Q1の適正範囲の設定は、ステップS1-1~S1-5のリチウムイオン二次電池10の製造工程の前に行われる。
【0068】
まず、原材料の状態での比表面積が異なる複数の水準の負極活物質を用いることで、負極活物質の実効的な比表面積が異なる複数の負極板24を作製する。次いで、各水準の負極板24において、BET法などの測定方法を用いて負極合剤層26に含まれる負極活物質の実効的な比表面積を測定する。そして、負極活物質の実効的な比表面積が異なる複数の負極板24の各々を用いて複数の水準のリチウムイオン二次電池10を組み立てた後、充電を行うとともにステップS1-4と同様に特定値Q1を算出する。なお、例えば、負極板24の製造条件を変えることで、負極活物質の実効的な比表面積が異なる複数の水準の負極板24を作製してもよい。
【0069】
図9に示すように、グラフ300中にプロットされた複数の点Pの各々は、負極活物質の実効的な比表面積が異なる複数のリチウムイオン二次電池10の各々における比表面積と特定値Q1との対応関係を示す。グラフ300中の近似線301は、複数の点Pから導出される近似線であって、特定値Q1の適正範囲を設定するための検量線である。近似線301は、負極活物質の実効的な比表面積が大きくなるほど特定値Q1が小さくなる負の傾きを有する。
【0070】
例えば、負極活物質の実効的な比表面積が過剰に大きくなると、リチウムイオン二次電池10の寿命特性が悪化する。一方、負極活物質の実効的な比表面積が過剰に小さくなると、電極体20上にリチウムが析出し易くなる。そのため、特定値Q1の適正範囲の上限QUは、電極体20上にリチウムが過剰に析出しない程度の比表面積A1と対応する値が設定される。また、特定値Q1の適正範囲の下限QLは、リチウムイオン二次電池10の寿命特性が過剰に悪化しない程度の比表面積A2と対応する値が設定される。以上のような手順によって、特定値Q1の適正範囲が設定される。特定値Q1の適正範囲は、データ記憶部42Bに記憶される。
【0071】
[実施形態の効果]
上記実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)充電工程における特定値Q1が予め設定された適正範囲内か否かを判定することで、負極活物質の実効的な比表面積が適正な大きさであるか否かを判定できる。また、充電工程におけるQ-V曲線から負極活物質の実効的な比表面積の大きさの判定を行うことで、リチウムイオン二次電池10の製造工程において全数のリチウムイオン二次電池10に対する判定が可能となる。
【0072】
(2)特定値Q1の算出において、Q-dV/dQ曲線を用いることで、負極活物質の実効的な比表面積が適正な大きさであるか否かを容易に判定できる。
(3)組立後のリチウムイオン二次電池10に対する初回の充電時に判定工程を行うことで、充放電を繰り返すことに伴うリチウムイオン二次電池10の変化を含めずに、負極活物質の実効的な比表面積についての判定を行うことができる。したがって、判定の精度を高めることができる。
【0073】
(4)適正範囲の設定において、比表面積が異なる複数のリチウムイオン二次電池10から算出された特定値Q1から導出される検量線を用いることで、実際の負極合剤層26の組成や製造工程の影響を加味した適正範囲を設定することができる。したがって、判定の精度を高めることができる。
【0074】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
・負極活物質の実効的な比表面積が異なる複数のリチウムイオン二次電池10の特定値Q1から導出される検量線を用いて特定値Q1の適正範囲を設定する場合を例示した。これに代えて、負極活物質の実効的な比表面積が異なる複数のリチウムイオン二次電池10を実際に作製するのではなく、有限要素解析のようなモデルシミュレーションや数値計算によって特定値Q1の適正範囲を設定してもよい。
【0075】
・初回の充電時ではなく2回目以降の充電時に判定工程を行ってもよい。この場合、特定値Q1の適正範囲の設定のために、同様の充放電サイクルを経た実効的な比表面積が異なる複数のリチウムイオン二次電池10を用いてもよい。2回目以降の充電時に判定工程を行う場合、充放電サイクルを経たリチウムイオン二次電池10に対しても、負極活物質の実効的な比表面積の大きさの判定を行うことができる。
【0076】
・特定値Q1の算出は、Q-dV/dQ曲線を用いた方法に限定されない。例えば、dV/dQの値が、所定の閾値以下となる充電電気量Qの値を、特定値Q1として算出してもよい。この場合の閾値は、第1期間101AにおけるdV/dQの値よりも小さく、かつ、第2期間101BにおけるdV/dQの値よりも大きい。このような方法であっても、負極活物質の実効的な比表面積が適正な大きさであるか否かを判定できる。
【0077】
・非水二次電池検査システム1において、非水二次電池は、リチウムイオン二次電池10に限定されず、正極板21と負極板24と非水電解液とを備える構成であればよい。
・電極体20は、例えば、複数の正極板21及び複数の負極板24を、セパレータ27を介して交互に積層した積層体であってもよい。
【0078】
・リチウムイオン二次電池10は、自動搬送機や荷役用の特殊自動車、電気自動車、ハイブリッド自動車等の他、コンピュータ、その他の電子機器に搭載されるものであってもよく、これ以外のシステムを構成するものであってもよい。例えば、船舶、航空機等の移動体に設けられるものであってもよく、発電所から変電所等を介して二次電池が設置されたビルや家庭等に電力を供給する電力供給システムであってもよい。
【符号の説明】
【0079】
1…非水二次電池検査システム
10…リチウムイオン二次電池
20…電極体
21…正極板
22…正極基材
23…正極合剤層
24…負極板
25…負極基材
26…負極合剤層
27…セパレータ
30…充電装置
40…検査装置
41…制御部
41A…演算部
41B…判定部
42…記憶部
42A…メモリ部
42B…データ記憶部
42C…プログラム記憶部
43…充電電気量取得部
44…電圧取得部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9