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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123922
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】脱ガス用坩堝
(51)【国際特許分類】
   B22D 1/00 20060101AFI20230830BHJP
   F27B 14/10 20060101ALI20230830BHJP
   B22D 45/00 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
B22D1/00 K
F27B14/10
B22D45/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027402
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000244176
【氏名又は名称】明智セラミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090239
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 始
(74)【代理人】
【識別番号】100100859
【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 昌也
(72)【発明者】
【氏名】日高 健太
(72)【発明者】
【氏名】山本 成規
【テーマコード(参考)】
4K046
【Fターム(参考)】
4K046AA07
4K046BA02
4K046CB15
4K046CC05
4K046DA05
(57)【要約】
【課題】ガス吹き工程の効率を上げて非鉄金属製品の品質を向上させることができる耐久性、安全性の高い脱ガス用坩堝を提供する。
【解決手段】坩堝10は、坩堝本体11の周壁部の内面に坩堝本体よりも高い気孔率を備えた気泡発生面12が形成されている。また周壁部の内部に、一端が気泡発生面に連通し、他端が坩堝本体縁部近傍で外部に開口するガス導通路が形成されている。他端から不活性ガスを吹き込んだとき、坩堝内に溜められている金属溶湯100と接している気泡発生面の全体から不活性ガスが噴き出して、金属溶湯内へ気泡が放出される。気泡発生面の気孔率は坩堝本体のそれよりも少なくとも5%以上高く構成しているので、気泡発生面以外からのガスリークを防ぐことができる。坩堝本体と気泡発生面は一体成形されているので、強度を確保し、耐久性を向上させることができる。坩堝自体がガス吹き機能を備えているので、ガス吹き工程の効率が向上する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周壁部と底部からなる有底筒体状の坩堝本体を備えた脱ガス用坩堝であって、
前記坩堝本体の前記周壁部又は前記底部の内面に、若しくは前記周壁部又は前記底部の外面に、前記坩堝本体よりも高い気孔率を備えた多孔質体からなる気泡発生面を形成し、
前記周壁部又は前記底部の内部、若しくは前記周壁部及び前記底部の内部に、一端が前記気泡発生面に連通し、他端が前記周壁部又は前記底部の外部に開口するガス導通路を形成し、
前記ガス導通路の他端から吹き込まれた不活性ガスが、前記気泡発生面に接している金属溶湯内へ気泡となって放出されるようにしたことを特徴とする脱ガス用坩堝。
【請求項2】
前記坩堝本体と前記気泡発生面が、一体成形されていることを特徴とする請求項1に記載の脱ガス用坩堝。
【請求項3】
前記気泡発生面の気孔率が、前記坩堝本体の気孔率よりも少なくとも5%高くなるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の脱ガス用坩堝。
【請求項4】
前記坩堝本体と前記気泡発生面が、黒鉛質であることを特徴とする請求項1に記載の脱ガス用坩堝。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非鉄金属の金属溶湯中に微細な気泡を放出して、当該気泡で金属溶湯に混在している不純ガスを脱気する脱ガス機能を備えた坩堝に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム合金、銅合金又はこれらに類する非鉄金属類を溶かした金属溶湯中には、水素ガスをはじめとして不純物が含まれている。当該不純物をそのままにして鋳物を製造した場合、当該鋳物中に気孔が残存し、鋳物製品の品質が悪化するおそれがある。鋳物中の気孔をなくして製品の品質を向上させるため、非鉄金属の精錬には、金属溶湯中にアルゴンや窒素等の不活性ガスを吹き込んで水素ガスを吸着・吸収するガス吹き工程が設けられている。
当該ガス吹き工程では、従来、不活性ガスを金属溶湯に対して放出可能に構成された撹拌機、ランスパイプ、ポーラスプラグが利用されている。
【0003】
撹拌機は、たとえば、特開2018-178205号公報に開示されている。当該撹拌機は、筒体状の筐体の中に中空状の回転軸が挿入された二重筒構造を有している。回転軸の先端には回転羽根が取り付けられている。不活性ガスは、筐体と回転軸の間の隙間を通じて回転羽根まで導通され、回転羽根によって気泡状の不活性ガスが金属溶湯内へ拡散されるように構成されている。
【0004】
ランスパイプは、たとえば、特開2017-002377号公報に開示されている。当該ランスパイプは、基端側から吹き込まれた不活性ガスが先端側から放出される。このとき、放出されたガスは、金属溶湯内で気泡となって上昇する。これによって、金属溶湯を撹拌することができる。
【0005】
ポーラスプラグは、たとえば、特開2010-138479号公報に開示されている。当該ポーラスプラグは、多孔質耐火物からなり、底部にガス導入管が接続可能に構成されている。ポーラスプラグは取鍋の底部に設置される。そして、ポーラスプラグにガス導入管から不活性ガスを吹き込むと、当該不活性ガスは、ポーラスプラグ上端部から気泡となって溶湯へ放出される。これによって溶湯を撹拌することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-178205号公報
【特許文献2】特開2017-002377号公報
【特許文献3】特開2010-138479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の撹拌機、ランスパイプ、ポーラスプラグを用いる場合は、以下のような問題点がある。
撹拌機、ランスパイプ、ポーラスプラグのいずれも気泡の発生源が点で構成されている。これによって、金属溶湯内で気泡発生源付近でのみ撹拌、対流が発生し、発生源と発生源の間に不活性ガスに触れない溶湯が溜まってしまうおそれがある。そのため、不純物を十分に除去することが出来ず、固化したときピンホールが発生するおそれがある。
また、筒体状の撹拌機、ランスパイプは、使用中に熱衝撃又は酸化で折れるおそれがある。これによって、折れた先端部が金属溶湯内へ沈むと共に露出したガス通路から噴き出した不活性ガスの大きな気泡によって、ガス吹き工程の効率が悪化するおそれがある。
これに対して、ポーラスプラグは、溶湯の熱による熱膨張を原因として取鍋とポーラスプラグとの目地が開き、当該目地へ溶湯が流入するおそれがある。このように目地に地金が差し込んだ場合、ポーラスプラグが取鍋から脱落し、溶湯が漏れ出るおそれがある。
【0008】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、ガス吹き工程の効率を上げて非鉄金属製品の品質を向上させることができる耐久性、安全性の高い脱ガス用坩堝を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の脱ガス用坩堝は、周壁部と底部からなる有底筒体状の坩堝本体を備えた脱ガス用坩堝であって、
前記坩堝本体の前記周壁部又は前記底部の内面に、若しくは前記周壁部又は前記底部の外面に、前記坩堝本体よりも高い気孔率を備えた多孔質体からなる気泡発生面を形成し、
前記周壁部又は前記底部の内部、若しくは前記周壁部及び前記底部の内部に、一端が前記気泡発生面に連通し、他端が前記周壁部又は前記底部の外部に開口するガス導通路を形成し、
前記ガス導通路の他端から吹き込まれた不活性ガスが、前記気泡発生面に接している金属溶湯内へ気泡となって放出されるようにしたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の脱ガス用坩堝は、請求項1に記載の発明において、前記坩堝本体と前記気泡発生面が、一体成形されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の脱ガス用坩堝は、請求項1に記載の発明において、前記気泡発生面の気孔率が、前記坩堝本体の気孔率よりも少なくとも5%高くなるように構成したことを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の脱ガス用坩堝は、請求項1に記載の発明において、前記坩堝本体と前記気泡発生面が、黒鉛質であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る脱ガス用坩堝によれば、坩堝本体の周壁部又は底部の内面に、若しくは周壁部又は底部の外面に、坩堝本体が備える所定の気孔率よりも高い気孔率を備えた多孔質体からなる気泡発生面を形成した。そして、周壁部又は底部の内部、若しくは周壁部及び底部の内部に、一端が気泡発生面に連通し、他端が周壁部又は底部の外部に開口するガス導通路を形成した。気泡発生面とガス導通路をこのように構成することによって、ガス導通路へ不活性ガスを吹き込んだとき、気泡発生面に接している金属溶湯内へ気泡が放出される。
すなわち、気泡発生面は、坩堝本体よりも気孔率が高く通気抵抗が小さい多孔質体から形成されているので、坩堝本体と比べて通気性が高い。これによって、通気性の良い気泡発生面から不活性ガスが気泡となって放出され、通気性が悪い坩堝本体からガスが漏れ出すことを防止することができる。
このように、金属溶湯に接している気泡発生面で広く不活性ガスを気泡として放出することによって、金属溶湯内へ気泡を大量に放出することができ、当該気泡が湯面へ上昇するとき、金属溶湯を安定的に撹拌、対流させることができ、ガス吹き工程の効率を上げて製品の品質を向上させることができる。
【0014】
また、坩堝内または取鍋内へ溜めた金属溶湯にランスパイプ又は撹拌機を差し込まなくてもガス吹き工程に係る処理を行うことができる。すなわち、ガス吹き工程に係る手順の一つを省略することができるので、金属溶湯が冷める前に素早く当該金属溶湯内へ気泡を放出させることができ、ガス吹き工程の効率を上げて製品の品質を向上させることができる。
【0015】
また好ましくは、坩堝本体と気泡発生面を一体成形した。これによって、坩堝本体に形成した気泡発生面をより強固に一体化させることができる。これによって、気泡発生面から集中的に気泡を発生させる一方で、坩堝本体、特に当該坩堝本体と気泡発生面の境界からガスが漏れ出ることを防止することができる。
そして好ましくは、気泡発生面の気孔率が、坩堝本体の気孔率よりも少なくとも5%高くなるように構成した。これによって、気泡発生面と坩堝本体の通気抵抗の差を大きくすることができ、通気性が悪い坩堝本体からのガスリークを抑制し、通気性の良い気泡発生面から不活性ガスを放出させることができる。
さらに好ましくは、坩堝本体と気泡発生面を黒鉛質で構成するようにした。黒鉛質は、耐熱衝撃性が大きく、また耐食性が強いので、坩堝本体及び気泡発生面の強度、耐久性をより一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施例に係る脱ガス用坩堝の構成の概略を示す縦断面図である。
図2】第2実施例に係る脱ガス用坩堝の構成の概略を示す縦断面図である。
図3】第3実施例に係る脱ガス用坩堝の構成の概略を示す縦断面図である。
図4】第4実施例に係る脱ガス用坩堝の構成の概略を示す縦断面図である。
【実施例0017】
本発明に係る実施例を添付した図面にしたがって説明する。図1は、本実施例に係る脱ガス用坩堝の構成の概略を示す縦断面図である。
【0018】
坩堝10は、周壁部11aと底部11bからなる有底筒体状に形成された坩堝本体11を有している。当該坩堝本体11の内面側を11c、外面側を11dとしたとき、図1に示すように、周壁部11aの内面11cには気泡発生面12が坩堝本体11と一体的に形成されている。
坩堝本体11及び気泡発生面12は、それぞれ所定の気孔率を備えた多孔質体からなり、気泡発生面12の気孔率は、坩堝本体11の気孔率よりも高くなるように構成されている。
ここで、多孔質体とは、組織中に空隙、細かな気孔を多く備えた固体であって、本実施例では当該気孔が、坩堝本体11又は気泡発生面12の内部で互いに連接して通気性を備えているものをいう。そして、気孔率とは、多孔質体の単位当たりの外形容積に対し、当該多孔質体に含まれる気孔部分の総容積の比率をいう。
【0019】
気泡生成面12の気孔率は、22%以上、好ましくは22%~35%である。気孔率が22%以下になると気泡発生面12の通気抵抗が大きくなって通気性が悪化するので、放出される不活性ガスのガス放出量が少なくなる。一方、気孔率が35%を超えると、気泡発生面12の強度が下がり、耐熱衝撃性が悪化するので、気泡発生面12に高温の金属溶湯100が接触したとき、当該気泡発生面12が熱衝撃によって破損するおそれがある。
一方、坩堝本体11の気孔率は、12%以下に抑えられている。特に気泡発生面12の気孔率が、坩堝本体11の気孔率よりも少なくとも5%高く、好ましくは10%以上の大きな差があることが好ましい。気泡発生面12と坩堝本体11の気孔率の差が5%よりも小さくなると、坩堝本体11自体から不活性ガスが噴き出すおそれがあり、気泡発生面12とは異なる想定外の場所から不活性ガスが漏洩するガスリーク問題が生じるおそれがある。
本実施例では、気泡発生面12の気孔率は、おおよそ26%となるように調整され、坩堝本体11の気孔率は、おおよそ7%となるように調整されている。
このように、気泡発生面12の気孔率を坩堝本体11と比べて高くすることによって、通気抵抗が小さい気泡発生面12側の通気性を良くすることができ、通気抵抗が大きい坩堝本体11側の通気性を悪くして、上記のガスリーク問題を防止することができる。
【0020】
坩堝本体11は、黒鉛(C)及びシリコンカーバイド(SiC)を主材とする黒鉛質の材料からなり、当該主材に加えて、シリコン(Si)、アルミナ-シリカ(Al-SiO)、及びその他の材料を、所定の割合で配合し構成されている。これによって、坩堝本体11の耐熱性、耐食性を向上させ、強度を高くすることができる。
なお、本実施例では坩堝本体11が黒鉛質材料からなるものとしたが、これに限定されず、本実施例に係る坩堝10を用いる金属の特性、融点等に合わせて主材となる耐火物を適宜選択し、必要な材料を添加して坩堝本体11を構成するようにしても良い。
【0021】
気泡発生面12は、図1に示すように、表面12a側を内面11c側に、裏面12b側を周壁部11内部にして坩堝本体11の周壁部11aの内面11c側を指向するように構成されている。
なお、本実施例においては、気泡発生面12は、周方向に沿って周壁部11aの内面11c全体に亘って配置されている。しかし、これに限定されるものでは無く、周方向に沿って、所定範囲で区画された気泡発生面12を所定間隔で複数個設けるようにしても良い。この場合は、気泡発生面12間の周壁部11aが支柱のようになって坩堝本体11の強度を保持することができる。
【0022】
そして、坩堝本体11は、図1に示すように、周壁部11aの内部に、一端が気泡発生面12の裏面12b側と連通し、他端が坩堝本体11の縁部近傍まで伸びるガス導通路15が形成されている。
ガス導通路15の他端は、周壁部11aの外部へ開口するガス導入口16が形成されている。ガス導入口16は、ガスプラグ17が嵌合され、ガス管18が接続されている。
これによって、不活性ガスをガス管18からガス導入口16を介してガス導通路15へ吹き込んだとき、気泡発生面12の裏面12b側へ不活性ガス、たとえば、アルゴンガス(Ar)、窒素ガス(N)、二酸化炭素ガス(CO)を送り込むことができる。
気泡発生面12は、通気抵抗が小さく通気性が良いので、ガス供給源(図示略)からガス管18を経て不活性ガスを供給し、ガス導通路15内の不活性ガスが加圧されたとき、加圧された不活性ガスは、ガス導通路15途中の坩堝本体11からではなく通気性の良い気泡発生面12の裏面12b側から表面12a側へ透過する。このとき、気泡発生面12を構成する多孔質体は組織中に互いに連接している細かな気孔を多く備えているので、不活性ガスの流れが気泡発生面12の内部で各方向へ分散し、拡散する。また、多孔質体からなる気泡発生面12は、その表面12aにおいて気孔の開口端がランダムな方向を指向している。そのため、気泡発生面12内部で様々な方向へ分散、拡散した不活性ガスは、その表面12a全体からもまたランダムな方向へ噴き出すように構成されている。
なお、図1に例示したガス導通路15とガス導入口16の配置に限定されず、たとえば、坩堝10を設置する場所のレイアウトによって、ガスプラグ17を嵌合するガス導入口16を任意の位置に設定することができる。
【0023】
上記の構成を有する坩堝本体11は、以下に示すような製造方法によって製造されることが好ましい。
坩堝本体11は、主に成形、乾燥、焼結の工程を経て製造される。
成形工程は、静水圧成形法、特に冷間静水圧プレス(cold isostatic pressing:以下「CIP成形」という)が好ましい。CIP成形工程では、周壁部11aと底部11bを備えた有底筒体状のゴム型に、粉粒体状に破砕されて水、バインダ等と混練された上記の黒鉛質材料が詰められ、加圧成形処理によって、坩堝本体11が成形される。そして、乾燥工程で坩堝本体11の水分を除去する処理が行われ、焼結工程で坩堝本体11を焼結する処理が行われる。当該焼結工程において、坩堝本体11と気泡発生面12を構成する多孔質体が形成される。なお、CIP成形工程、乾燥工程、及び焼結工程は、周知の技術を使用していることから詳細な説明は省略する。
【0024】
ここで、坩堝本体11の黒鉛質材料は、上記したように、黒鉛(C)及びシリコンカーバイド(SiC)を主材とし、さらに、シリコン(Si)、アルミナ-シリカ(Al-SiO)、及びその他の材料を、所定の割合で配合して構成されている。多孔質体は、粉粒体状の主材に混合される粉末状の焼失材又は溶融材の配合量によって、気孔率を調整することができる。焼失材は、粉粒体状の主材と混じり合い、焼結工程において焼失する素材であって、たとえば、600℃前後で炭化した後、焼失し、気孔を形成するポリプロピレンが好ましい。また、溶融材は、粉粒体状の主材と混じり合い、焼結工程において溶融して主材間に浸透し、または融け出す素材であって、たとえば、樹脂が好ましい。本実施例では、焼失材と溶融材をまとめて気泡形成材という。
【0025】
また好ましくは、坩堝本体11及び気泡発生面12を構成する黒鉛質材料の主材のうち、シリコンカーバイド(SiC)の配合比率を高くしても良い。これによって、坩堝本体11及び気泡発生面12の耐酸化性、耐食性を向上させることができる。
さらに好ましくは、坩堝本体11及び気泡発生面12を構成する黒鉛質材料のうち、黒鉛(C)の配合量を減らして、ボロンカーバイド(BC)を添加しても良い。これによって、坩堝本体11及び気泡発生面12の強度と耐酸化性をさらに向上させることができる。なお、ボロンカーバイド(BC)に限定されるものでは無く、強度と耐酸化性が向上する効果を備えるものであれば、他の低融点酸化防止剤を添加しても良い。
上記のように配合比率を調整し、また添加物を加えることによって、坩堝本体11及び気泡発生面12の耐酸化性、耐食性、強度を向上させることができ、坩堝本体11へ高熱の金属溶湯100を注ぎ込んだとき、酸化して破損すること、特に気泡発生面12が破損することを防止することができる。
【0026】
坩堝本体11は、成形工程において、上記黒鉛質材料の主材に対して、気泡形成材を3%~15%配合して形成した黒鉛質材料がゴム型に詰められ、気泡発生面12に相当する部位には、上記黒鉛質材料の主材に対して、気泡形成材を22%~35%配合して形成した黒鉛質材料が同ゴム型に詰められて一体成形されている。これによって、焼結工程において、上記のように約7%の気孔率を備えた坩堝本体11と約26%の気孔率を備えた気泡発生面12を一体化させることができる。
また、坩堝本体11の成形工程において、当該坩堝本体11の壁内に溶融材、好ましくはプレート状のパラフィンを挟み込み、焼結工程において、当該溶融材が溶け出して坩堝本体11の壁内にスリットが形成されることによって、ガス導通路15が形成される。
このように、一体成形された坩堝本体11と気泡発生面12は、その境界が一体化されて強固に結合していることから、当該境界部の強度を保つことができ、気孔率の異なる気泡発生面12が坩堝本体11から外れ落ちることを防止したり、当該境界部から不活性ガスが噴出、漏洩するガスリークを抑制したりすることができる。
【0027】
上記の構成を有する坩堝10は、次に説明するように使用される。
本実施例に係る坩堝10には、図1に示すように、少なくとも気泡発生面12が覆われる程度に非鉄金属、たとえば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅合金の金属溶湯100が、注ぎ込まれる。
そして、図1に示すように、不活性ガスが、ガス導入口16に接続されたガス管18から吹き込まれる。吹き込まれた不活性ガスにはガス管18に接続されたガス供給源(図示略)の方から所定の圧力が加わっているので、加圧され、気泡発生面12の裏面12b側へ送り込まれた不活性ガスは気泡発生面12の裏面12b側から表面12a側に向かって透過する。このとき、気泡発生面12を構成する多孔質体は組織中に互いに連接している細かな気孔を多く備えているので、不活性ガスの流れが気泡発生面12の内部で各方向へ分散し、拡散する。また、多孔質体からなる気泡発生面12は、その表面12aにおいて気孔の開口端がランダムな方向を指向している。そのため、気泡発生面12内部で様々な方向へ分散、拡散した不活性ガスは、その表面12a全体からランダムな方向へ噴き出してくる。
気泡発生面12の表面12aに噴き出してきた不活性ガスは、気泡発生面12と金属溶湯100が接している面において、当該金属溶湯100の表面張力に抗して気泡となる。ここで、気孔の開口径は大小異なってランダムに形成されているので、気泡発生面12の表面12aには、大小さまざまな径の気泡が発生する。当該気泡は、さらに噴き出してきた不活性ガスを吸収拡大し、所定の浮力を得たとき、金属溶湯100内へ放出される。
細かな気泡として放出された不活性ガスは、金属溶湯100内の水素ガス等の不純物を吸着、吸収して拡大して浮力が大きくなる。水素ガス等の不純物と不活性ガスを含んで拡大した気泡は湯面へ浮上して大気中へ放出される。こうして坩堝10内へ注がれた金属溶湯100内の不純物である水素ガスを除去するガス吹き工程に係る処理を行うことができる。
そのため、当該ガス吹き工程後に坩堝10から鋳型内へ金属溶湯100が注ぎ込まれたとき、完成した鋳物製品では水素ガスを原因としたピンホールの発生を抑えることができ、鋳物製品の品質を向上させることができる。
【0028】
また、本実施例に係る脱ガス用坩堝10によれば、坩堝本体11に気泡発生面12を一体的に形成してガス吹き機能を備えるようにした。
これによって、ガス吹き工程において、従来、一般的に用いられてきたランスパイプ、撹拌機を金属溶湯100へ挿入する手順を一つ省略することができる。そのため、金属溶湯100が冷める前にガス吹き工程へ素早く移行することができる。
さらに、本実施例に係る脱ガス用坩堝10によれば、坩堝本体11は、周壁部11aの内面11cに周方向に沿って環状の気泡発生面12を有している。不活性ガスは気泡発生面12の表面12a全体から噴き出すように構成されているので、先端から少量の不活性ガスが噴出する従来のランスパイプ或いは撹拌機と比べて、短時間で大量に不活性ガスを気泡発生面12へ送り込むことができる。
そして、気泡発生面12は、金属溶湯100と面で接し、坩堝本体11の周方向に沿って、金属溶湯100を取り囲む周壁部11aの内面11cから広く満遍なく均等に気泡を発生させることができる。当該気泡が湯面へ上昇するとき、周壁部11aの内面11c近傍で気泡とともに金属溶湯100もまた上昇するので、坩堝10内で金属溶湯100の対流を発生させることができる。当該対流は、金属溶湯100内へ送り込まれた大量の気泡状不活性ガスを当該金属溶湯100内へ満遍なく行き渡らせることができ、ガス吹き工程に係る処理を短時間で効率よく行うことができる。
【実施例0029】
次に、第2実施例について、添付した図面にしたがって説明する。
図2は、本実施例に係る脱ガス用坩堝の構成の概略を示す縦断面図である。
【0030】
本実施例に係る坩堝10Aが、第1実施例に係る坩堝10と相違する点は、気泡発生面12の位置である。
坩堝本体11Aは、図2に示すように、底部11bの内面11c側に気泡発生面12が形成されている。気泡発生面12は、坩堝底部11bの内面11c側に露出する表面12aと、当該底部11bの内部に面する裏面12bを有している。
気泡発生面12の裏面12bは、ガス導通路15の一端が連通されている。当該ガス導通路の他端は、坩堝本体11Aの縁部近傍まで伸ばされている。
当該ガス導通路15の他端には、周壁部11aの外部へ開口するガス導入口16が形成されている。当該ガス導入口16は、ガスプラグ17が嵌合され、ガス管18が接続されている。
これによって、不活性ガスをガス管18からガス導入口16を介してガス導通路15へ吹き込んだとき、気泡発生面12の裏面12b側へ不活性ガス、たとえば、アルゴンガス(Ar)、窒素ガス(N)、二酸化炭素ガス(CO)を送り込むことができる。
気泡発生面12は、通気抵抗が小さく通気性が良いので、ガス供給源(図示略)からガス管18を経て不活性ガスを供給し、ガス導通路15内の不活性ガスが加圧されたとき、加圧された不活性ガスは、ガス導通路15途中の坩堝本体11Aからではなく通気性の良い気泡発生面12の裏面12b側から表面12a側へ透過する。
このとき、気泡発生面12を構成する多孔質体は組織中に互いに連接している細かな気孔を多く備えているので、不活性ガスの流れが気泡発生面12の内部で各方向へ分散し、拡散する。また、多孔質体からなる気泡発生面12は、その表面12aにおいて気孔の開口端がランダムな方向を指向している。そのため、気泡発生面12内部で様々な方向へ分散、拡散した不活性ガスは、その表面12a全体からもまたランダムな方向へ噴き出すように構成されている。
なお、図2に例示したガス導通路15とガス導入口16の配置に限定されず、たとえば、坩堝10Aを設置する場所のレイアウトによって、ガスプラグ17を嵌合するガス導入口16を任意の位置に設定することができる。
また、気泡発生面12を坩堝本体11Aの底部11bの内面11c側に形成したが、これに限定されるものではなく、第1実施例に記載した気泡発生面12の位置と合わせて、坩堝本体11Aの周壁部11a及び底面11bの内面11c側に気泡発生面12を形成するようにしても良い。
【0031】
坩堝本体11Aは、第1実施例と同様に、坩堝本体11Aと気泡発生面12が一体成形されている。坩堝本体11Aと気泡発生面12を構成する多孔質体それぞれの気孔率は第1実施例と同様であるから説明を省略する。
そして、第1実施例と同様に、気泡発生面12の気孔率を坩堝本体11Aと比べて高くすることによって、通気抵抗が小さい気泡発生面12側の通気性を良くすることができ、通気抵抗が大きい坩堝本体11A側の通気性を悪くして、ガスリークを防止することができる。
上記の構成を有する坩堝10Aの使用方法の一例については、第1実施例と同様であるから説明を省略する。
【0032】
本実施例に係る脱ガス用坩堝10Aによれば、坩堝本体11Aに気泡発生面12を一体的に形成してガス吹き機能を備えるようにした。
これによって、ガス吹き工程において、従来、一般的に用いられてきたランスパイプ、撹拌機を金属溶湯100へ挿入する手順を一つ省略することができる。そのため、金属溶湯100が冷める前にガス吹き工程へ素早く移行することができる。
さらに、本実施例に係る脱ガス用坩堝10Aによれば、坩堝本体11Aは、底部11bの内面11cに気泡発生面12を有している。不活性ガスは気泡発生面12の表面12a全体から噴き出すように構成されているので、先端から少量の不活性ガスが噴出する従来のランスパイプ或いは撹拌機と比べて、短時間で大量に不活性ガスを気泡発生面12へ送り込むことができる。
そして、気泡発生面12は、面で接する金属溶湯100に対して底部11bの内面11cから広く満遍なく均等に気泡を発生させることができる。当該気泡が湯面へ上昇するとき、気泡とともに金属溶湯100もまた上昇する。大量に送り込まれた気泡状の不活性ガスは坩堝10A内で金属溶湯100の対流を素早く発生させることができる。これによって、不活性ガスの気泡を金属溶湯100内へ満遍なく行き渡らせることができ、ガス吹き工程に係る処理を短時間で効率よく行うことができる。
さらに、第1実施例同様に、ガス吹き工程後に坩堝10から鋳型内へ金属溶湯100が注ぎ込まれたとき、当該金属溶湯100へ吹き込んだ大量の気泡状不活性ガスは、完成した鋳物製品における水素ガスを原因としたピンホールの発生を抑えることができ、鋳物製品の品質を向上させることができる。
【実施例0033】
次に、第3実施例について、添付した図面にしたがって説明する。
図3は、本実施例に係る脱ガス用坩堝の構成の概略を示す縦断面図である。
【0034】
本実施例に係る坩堝10Bが、第1実施例に係る坩堝10又は第2実施例に係る坩堝10Aと相違する点は、気泡発生面12の位置である。
坩堝本体11Bは、図3に示すように、底部11bの外面11dに気泡発生面12が形成されている。気泡発生面12は、坩堝本体11Bの下方を指向するように、表面12a側を底部11bの外面11dに、裏面12b側を底部11bの内部にして形成されている。
そして、坩堝本体11Bは、周壁部11a及び底部11bの内部に、一端が気泡発生面12の裏面12b側と連通し、他端が坩堝本体11Bの縁部近傍まで伸びるガス導通路15を有している。
ガス導通路15の他端は、周壁部11aの外部に開口したガス導入口16が形成されている。ガス導入口16は、ガスプラグ17が嵌合され、ガス管18が接続されている。
なお、本実施例においては、気泡発生面12は底部11bの外側下面11dの全体に亘って形成されている。しかし、これに限定されるものでは無く、底部11bの外側下面11dの所定位置に所定範囲で区画された気泡発生面12を所定間隔で複数個形成しても良く、また所定範囲で区画された気泡発生面12を所定間隔で複数個設けたりしても良い。
【0035】
坩堝本体11Bは、第1実施例と同様に、坩堝本体11Bと気泡発生面12が一体成形されている。坩堝本体11Bと気泡発生面12を構成する多孔質体それぞれの気孔率は第1実施例と同様であるから説明を省略する。
そして、第1実施例と同様に、気泡発生面12の気孔率を坩堝本体11Bと比べて高くすることによって、通気抵抗が小さい気泡発生面12側の通気性を良くすることができ、通気抵抗が大きい坩堝本体11B側の通気性を悪くして、ガスリークを防止することができる。
【0036】
上記の構成を有する坩堝10Bは、次に説明するように使用される。
本実施例に係る坩堝10Bは、図3に示すように、非鉄金属、たとえば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅合金の金属溶湯100が溜められた取鍋110へ所定の深さまで浸漬される。このとき、金属溶湯100から坩堝本体11Bに対して浮力がかかるので、坩堝本体11B内に所定重量の重りを入れたり、或いはアーム、支柱等で坩堝10Bの内壁側から抑えつけたりして坩堝10Bが金属溶湯100の湯面へ浮き上がらないようにしても良い。これによって、取鍋110の底近傍から湯面間際まで金属溶湯100中の任意の深さで坩堝本体11Bを浸漬させることができる。
そして、第1実施例と同様に、ガス導入口16に接続されたガス管18から、不活性ガスが吹き込まれる。吹き込まれた不活性ガスは、ガス導通路15を通じ、気泡発生面12の裏面12b側から表面12a側へ通じ、気泡発生面12の表面12a全体から噴き出し、当該気泡発生面12が接している金属溶湯100内へ気泡となって放出される。
気泡状に放出された不活性ガスは、第1実施例と同様に、取鍋110内の金属溶湯100に対してガス吹き工程に係る処理を行うことができる。これによって、取鍋110から鋳型内へ注ぎ込まれ、完成した鋳物製品において、水素ガスを原因としたピンホールの発生を抑えることができ、鋳物製品の品質を向上させることができる。
【0037】
本実施例に係る脱ガス用坩堝10Bによれば、坩堝本体11Bの底部11bの外面11dに設けた気泡発生面12の表面12a全体から気泡が発生するようにした。これによって、気泡発生面12が金属溶湯100と広く接して気泡を発生させることができる。そして、取鍋110、又は炉内へ沈めて利用するランスパイプと比べて、取鍋110の底近傍から湯面間際まで任意の位置へ坩堝10Bを沈めてガス吹きを行うことができるので、不活性ガスの気泡を金属溶湯100内に満遍なく行き渡らせることができ、ガス吹き工程に係る処理を短時間で済ませることができる。
【0038】
また、本実施例に係る脱ガス用坩堝10Bによれば、金属溶湯100へ浸漬させる坩堝10Bは、従来、一般的に用いられてきたランスパイプ、撹拌機よりも大きく頑丈であるため、耐久性を向上させることができる。
【実施例0039】
次に、第4実施例について、添付した図面にしたがって説明する。
図4は、本実施例に係る脱ガス用坩堝の構成の概略を示す縦断面図である。
【0040】
本実施例に係る坩堝10Cが、第1実施例に係る坩堝10と相違する点は、気泡発生面12の位置である。
坩堝本体11Cは、図4に示すように、周壁部11aの外面11d側に気泡発生面12が形成されている。気泡発生面12は、周壁部11aの外面11d側に露出する表面12aと、当該周壁部11aの内部に面する裏面12bを有している。
気泡発生面12の裏面12bは、ガス導通路15の一端が連通されている。当該ガス導通路の他端は、坩堝本体11Cの縁部近傍まで伸ばされている。
当該ガス導通路15の他端には、周壁部11aの外部へ開口するガス導入口16が形成されている。当該ガス導入口16は、ガスプラグ17が嵌合され、ガス管18が接続されている。
これによって、不活性ガスをガス管18からガス導入口16を介してガス導通路15へ吹き込んだとき、気泡発生面12の裏面12b側へ不活性ガス、たとえば、アルゴンガス(Ar)、窒素ガス(N)、二酸化炭素ガス(CO)を送り込むことができる。
気泡発生面12は、通気抵抗が小さく通気性が良いので、ガス供給源(図示略)からガス管18を経て不活性ガスを供給し、ガス導通路15内の不活性ガスが加圧されたとき、加圧された不活性ガスは、ガス導通路15途中の坩堝本体11Cからではなく通気性の良い気泡発生面12の裏面12b側から表面12a側へ透過する。
このとき、気泡発生面12を構成する多孔質体は組織中に互いに連接している細かな気孔を多く備えているので、不活性ガスの流れが気泡発生面12の内部で各方向へ分散し、拡散する。また、多孔質体からなる気泡発生面12は、その表面12aにおいて気孔の開口端がランダムな方向を指向している。そのため、気泡発生面12内部で様々な方向へ分散、拡散した不活性ガスは、その表面12a全体からもまたランダムな方向へ噴き出すように構成されている。
なお、図4に例示したガス導通路15とガス導入口16の配置に限定されず、たとえば、坩堝10Cを設置する場所のレイアウトによって、ガスプラグ17を嵌合するガス導入口16を任意の位置に設定することができる。
また、気泡発生面12を坩堝本体11Cの周壁部11aの外面11d側に形成したが、これに限定されるものではなく、第3実施例に記載した気泡発生面12の位置と合わせて、坩堝本体11Cの周壁部11a及び底面11bの外面11d側に気泡発生面12を形成するようにしても良い。
【0041】
坩堝本体11Cは、第1実施例~第3実施例と同様に、坩堝本体11Cと気泡発生面12が一体成形されている。坩堝本体11Cと気泡発生面12を構成する多孔質体それぞれの気孔率は第1実施例と同様であるから説明を省略する。
そして、第1実施例と同様に、気泡発生面12の気孔率を坩堝本体11Cと比べて高くすることによって、通気抵抗が小さい気泡発生面12側の通気性を良くすることができ、通気抵抗が大きい坩堝本体11C側の通気性を悪くして、ガスリークを防止することができる。
上記の構成を有する坩堝10Cの使用方法の一例については、第1実施例と同様であるから説明を省略する。
【0042】
本実施例に係る脱ガス用坩堝10Cによれば、坩堝本体11Cの周壁部11aの外面11dに設けた気泡発生面12の表面12a全体から気泡が発生するようにした。これによって、気泡状の不活性ガスが発生する気泡発生面12は、金属溶湯100に対して広く接することができる。そして、取鍋110、又は炉内へ沈めて利用するランスパイプと比べて、取鍋110の底近傍から湯面間際まで任意の位置へ坩堝10Cを沈めてガス吹きを行うことができるので、気泡状の不活性ガスを金属溶湯100内に満遍なく行き渡らせることができ、ガス吹き工程に係る処理を短時間で済ませることができる。
そして、当該ガス吹き工程によって、取鍋110内の金属溶湯100へ大量に吹き込まれた気泡状の不活性ガスは、第3実施例と同様に、取鍋110から鋳型内へ注ぎ込まれて完成した鋳物製品において、水素ガスを原因としたピンホールの発生を抑えることができ、鋳物製品の品質を向上させることができる。
【0043】
また、本実施例に係る脱ガス用坩堝10Cによれば、金属溶湯100へ浸漬させる坩堝10Cは、従来、一般的に用いられてきたランスパイプ、撹拌機よりも大きく頑丈であるため、耐久性を向上させることができる。
【0044】
本実施例に係る脱ガス用坩堝によれば、気泡発生面12を一体化した坩堝本体11,11A,11B,11Cは、ガス吹き機能を有している。
このようにガス吹き機能を持たせた坩堝10,10A,10B,10Cを用いることによって、従来のランスパイプ、ポーラスプラグ、脱ガス用撹拌機を使用しなくてもガス吹き工程に係る処理を行うことができる。
また、坩堝本体11,11A,11B,11Cの製造時に、当該坩堝本体11,11A,11B,11Cの使用目的・使用態様に合わせて、坩堝本体上に形成される気泡発生面の位置、大きさ、範囲を自在に設定することができる。
そして、気泡発生面12の表面12a全体から噴き出す不活性ガスが金属溶湯100内で気泡となって上昇することによって、坩堝10,10A内又は坩堝10B,10Cへ浸漬させた取鍋110内の金属溶湯100の対流を促すことができるので、ガス吹き工程の効率を向上させることができる。
さらに、坩堝本体11,11A,11B,11Cと気泡発生面12を一体成形し、気泡発生面12の気孔率を、坩堝本体11,11A,11B,11Cの気孔率よりも少なくとも5%以上高くなるようにした。
これによって、吹き込まれた不活性ガスは、通気抵抗が小さく通気性の良い気泡発生面12を透過するので、通気抵抗が大きく通気性が悪い坩堝本体11,11A,11B,11Cからのガスリークを抑制することができる。
【符号の説明】
【0045】
10,10A,10B,10C…坩堝、
11,11A,11B,11C…坩堝本体、11a…周壁部、11b…底部、11c…内面、11d…外面、
12…気泡発生面、12a…気泡発生面表面、12b…気泡発生面裏面、
15…ガス導通路、16…ガス導入口、17…ガスプラグ、18…ガス管、
100…金属溶湯、110…取鍋。
図1
図2
図3
図4