(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123962
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池及び固形燃料の製造設備
(51)【国際特許分類】
H01M 50/119 20210101AFI20230830BHJP
C10L 5/48 20060101ALI20230830BHJP
B02C 15/06 20060101ALI20230830BHJP
B02C 18/14 20060101ALI20230830BHJP
B09B 3/35 20220101ALI20230830BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20230830BHJP
H01M 50/129 20210101ALI20230830BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20230830BHJP
H01M 50/131 20210101ALI20230830BHJP
H01M 50/128 20210101ALI20230830BHJP
H01M 10/0525 20100101ALI20230830BHJP
H01M 50/122 20210101ALI20230830BHJP
【FI】
H01M50/119
C10L5/48 ZAB
B02C15/06
B02C18/14 A
B09B3/35
H01M10/0566
H01M50/129
H01M50/121
H01M50/131
H01M50/128
H01M10/0525
H01M50/122
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027474
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】519367706
【氏名又は名称】株式会社エコ・マイニング
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】相田 辰
【テーマコード(参考)】
4D004
4D063
4D065
4H015
5H011
5H029
【Fターム(参考)】
4D004AA23
4D004BA03
4D004BA05
4D004CA03
4D004CA04
4D004CA09
4D004CB13
4D004CB15
4D004CB42
4D063EE06
4D063EE07
4D063EE12
4D063GA02
4D063GA10
4D063GC02
4D063GC05
4D063GC14
4D063GC16
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4D065CA16
4D065CB01
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4D065EB02
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4D065ED02
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4D065ED50
4D065EE08
4H015AA02
4H015AA17
4H015AB01
4H015BA01
4H015BA13
4H015BB10
4H015CB01
5H011AA13
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5H011CC06
5H011CC10
5H011CC14
5H029AJ12
5H029AK03
5H029AL07
5H029DJ02
5H029EJ01
5H029EJ12
(57)【要約】
【課題】リチウムイオン電池が混入する廃プラスチックが受け入れ可能な固形燃料の製造設備を提供する。
【解決手段】固形燃料の製造設備30は、搬入路33と、破砕機50と、圧縮・整粒機60とからなる。廃プラスチック31Bに含まれるリチウムイオン電池10は、磁気吸着可能な磁性体を含む。搬入路33に備える磁力選別機40で、廃プラスチック31を、リチウムイオン電池が含まれていない廃プラスチック31Aとリチウムイオン電池が含まれている廃プラスチック31Bとに選別し、リチウムイオン電池が含まれていない廃プラスチック31Aだけを破砕機50へ搬入するようにする。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムを含む正極と、この正極に対応する負極と、前記正極と前記負極とを分けるセパレータと、前記正極、前記負極及び前記セパレータを収納する容器と、この容器に封入される電解液とからなるリチウムイオン電池において、
前記容器は、強磁性体の薄板を樹脂でサンドイッチした積層体からなることを特徴とするリチウムイオン電池。
【請求項2】
リチウムを含む正極と、この正極に対応する負極と、前記正極と前記負極とを分けるセパレータと、前記正極、前記負極及び前記セパレータを収納する容器と、この容器に満たされる電解液とからなるリチウムイオン電池において、
前記容器は、アルミニウムの薄板を内層樹脂と外層樹脂とでサンドイッチした積層体と、前記外層樹脂に埋設した強磁性体の薄板からなることを特徴とするリチウムイオン電池。
【請求項3】
リチウムを含む正極と、この正極に対応する負極と、前記正極と前記負極とを分けるセパレータと、前記正極、前記負極及び前記セパレータを収納する容器と、この容器に満たされる電解液とからなるリチウムイオン電池において、
前記容器は、アルミニウムの薄板を樹脂でサンドイッチした積層体と、この積層体の外面に貼り付けた強磁性体の薄板からなることを特徴とするリチウムイオン電池。
【請求項4】
リチウムを含む正極と、この正極に対応する負極と、前記正極と前記負極とを分けるセパレータと、前記正極、前記負極及び前記セパレータを収納する容器と、この容器に満たされる電解液とからなるリチウムイオン電池において、
前記容器は、アルミニウムの薄板を内側樹脂と外側樹脂とでサンドイッチし、前記外側樹脂に浅い凹部を設け、この浅い凹部を鉄粉入り樹脂で埋めてなることを特徴とするリチウムイオン電池。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項記載のリチウムイオン電池が混入されている廃プラスチックを受け入れる固形燃料の製造設備であって、
この固形燃料の製造設備は、破砕機と、前記廃プラスチックを前記破砕機へ搬入する搬入路と、前記破砕機で破砕された破砕片を圧縮成形して固形燃料にする圧縮・整粒機とを含み、
前記搬入路に、前記廃プラスチックを、前記リチウムイオン電池を含まない廃プラスチックと前記リチウムイオン電池を含む廃プラスチックとに選別する磁力選別機を備えており、
前記破砕機へ、前記リチウムイオン電池を含まない廃プラスチックだけを搬入するようにしたことを特徴とする固形燃料の製造設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形燃料の製造設備及びこの製造設備に適した構造のリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロプラスチック問題が提起される。すなわち、廃プラスチックが大量に自然界に放棄され、この放棄された廃プラスチックが紫外線などを受けてμサイズに細分化され野鳥や魚の体内に蓄積し、野鳥や魚を死に至しめる。
対策として、廃プラスチックの放棄を止めて、廃プラスチックの有効利用技術が求められる。
【0003】
廃プラスチックの有効利用技術は、各種提案されてきた(例えば、特許文献1)。
特許文献1によれば、破砕機によって廃プラスチックを所定の寸法に破砕する。その後、廃プラスチックに古紙を混合し、所定の形状に圧縮成形する。次いで、圧縮成形したものを切断することで、例えば、直径が約40mmで長さが30~100mm程度の円柱状の再生プラスチック燃料を得る(特許文献1、段落番号0008)。
【0004】
廃プラスチックは、石油並みの発熱量を有するため、石炭焚きボイラで使用するとボイラチューブを傷める。
対して、古紙を適量混合した特許文献1の再生プラスチック燃料は、石炭並みの発熱量を有するため、石炭焚きボイラに好適である。
【0005】
ところが、再生プラスチック燃料の製造に供する破砕機内において、近年、発煙事故が起こるようになってきた。
本発明者らは、発煙の原因を調べた。廃プラスチックに、リチウムイオン電池が混入しており、このリチウムイオン電池が破砕機で破砕される際に、強い外力と衝撃を受けることで、発煙に至ったことを突き止めた。
【0006】
そこで、本発明者らは、リチウムイオン電池の混入の状況を調査した。日産150トン程度の製造ラインにおいて、1ヶ月で50個のリチウムイオン電池の混入が認められ、5回の発煙が認められた。発煙は火災の元となり、火災に至ると製造ラインを停止しなければならない。生産性が低下するため、リチウムイオン電池の混入は容認できない。
【0007】
行政当局から、リチウムイオン電池をごみに混ぜることを禁止する通達が出されている。しかし、リチウムイオン電池はカバーが樹脂であるためか、プラスチック系ごみに混ぜられることがある。
したがって、プラスチック系ごみへのリチウムイオン電池の混入は、僅かではあるが不可避的に発生する。
【0008】
そこで、ごみにリチウムイオン電池が混入することを前提とした対策が、提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献2は、リチウムイオン電池などの発火性電池を含む粗大ごみの処理装置であり、この処理装置は、破砕手段と、熱検知手段と、消火手段とを含み、破砕手段で粗大ごみを破砕したときに発火したならば、そのことを熱検知手段で検知し、消火手段で消火するというものである。
【0009】
しかし、特許文献2の技術を、特許文献1(再生プラスチック燃料化技術)に適用しようとすると、次に述べる問題が起こる。
第1に、既存のごみの処理装置には備えられていない熱検知手段と、消火手段とを設ける必要があり、これらの手段の分だけごみの処理装置が高価になる。
第2に、廃プラスチックは石油並みの発熱量を有する可燃物であり、発火が周囲の廃プラスチックに移ると火災が大規模になり、強力な消火手段が必要になる。
第3に、火災が前提となるため、ごみの処理装置に耐火性能を付与する必要がある。
結果、再生プラスチック燃料化設備は、高価で大型になる。
【0010】
再生プラスチック燃料化設備の普及を考慮すると、再生プラスチック燃料化設備の低コスト化と小型化が求められる。
そのためには、再生プラスチック燃料化設備(固形燃料の製造設備)に、適した構造の新しいリチウムイオン電池及びこの新しいリチウムイオン電池が受け入れ可能な新しい固形燃料の製造設備が、望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平7-118673号公報
【特許文献2】特開2021-53563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、新しいリチウムイオン電池及びこの新しいリチウムイオン電池が受け入れ可能な新しい固形燃料の製造設備を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に係る発明は、リチウムを含む正極と、この正極に対応する負極と、前記正極と前記負極とを分けるセパレータと、前記正極、前記負極及び前記セパレータを収納する容器と、この容器に封入される電解液とからなるリチウムイオン電池において、
前記容器は、強磁性体の薄板を樹脂でサンドイッチした積層体からなることを特徴とする。
【0014】
請求項2に係る発明は、リチウムを含む正極と、この正極に対応する負極と、前記正極と前記負極とを分けるセパレータと、前記正極、前記負極及び前記セパレータを収納する容器と、この容器に満たされる電解液とからなるリチウムイオン電池において、
前記容器は、アルミニウムの薄板を内層樹脂と外層樹脂とでサンドイッチした積層体と、前記外層樹脂に埋設した強磁性体の薄板からなることを特徴とする。
【0015】
請求項3に係る発明は、リチウムを含む正極と、この正極に対応する負極と、前記正極と前記負極とを分けるセパレータと、前記正極、前記負極及び前記セパレータを収納する容器と、この容器に満たされる電解液とからなるリチウムイオン電池において、
前記容器は、アルミニウムの薄板を樹脂でサンドイッチした積層体と、この積層体の外面に貼り付けた強磁性体の薄板からなることを特徴とする。
【0016】
請求項4に係る発明は、リチウムを含む正極と、この正極に対応する負極と、前記正極と前記負極とを分けるセパレータと、前記正極、前記負極及び前記セパレータを収納する容器と、この容器に満たされる電解液とからなるリチウムイオン電池において、
前記容器は、アルミニウムの薄板を内側樹脂と外側樹脂とでサンドイッチし、前記外側樹脂に浅い凹部を設け、この浅い凹部を鉄粉入り樹脂で埋めてなることを特徴とする。
【0017】
請求項5に係る発明は、請求項1~4のいずれか1項記載のリチウムイオン電池が混入されている廃プラスチックを受け入れる固形燃料の製造設備であって、
この固形燃料の製造設備は、破砕機と、前記廃プラスチックを前記破砕機へ搬入する搬入路と、前記破砕機で破砕された破砕片を圧縮成形して固形燃料にする圧縮・整粒機とを含み、
前記搬入路に、前記廃プラスチックを、前記リチウムイオン電池を含まない廃プラスチックと前記リチウムイオン電池を含む廃プラスチックとに選別する磁力選別機を備えており、
前記破砕機へ、前記リチウムイオン電池を含まない廃プラスチックだけを搬入するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明では、リチウムイン電池は、容器に強磁性体を含んでいる。
強磁性体が磁石に吸着されため、適当な磁気選別機構により、リチウムイオン電池が混入している廃プラスチックを破砕前に選別除去することができる。
よって、本発明により、固形燃料の製造設備に、受け入れ可能な新しいリチウムイオン電池が提供される。
【0019】
請求項2に係る発明では、リチウムイン電池の外装樹脂に、強磁性体の薄板が埋設されている。
強磁性体が磁石に吸着されため、適当な磁気選別機構により、リチウムイオン電池が混入している廃プラスチックを破砕前に選別除去することができる。
よって、本発明により、固形燃料の製造設備に、受け入れ可能な新しいリチウムイオン電池が提供される。
【0020】
請求項3に係る発明では、リチウムイン電池は、外面に強磁性体の薄板が貼られている。
強磁性体が磁石に吸着されため、適当な磁気選別機構により、リチウムイオン電池が混入している廃プラスチックを破砕前に選別除去することができる。
よって、本発明により、固形燃料の製造設備に、受け入れ可能な新しいリチウムイオン電池が提供される。
【0021】
請求項4に係る発明では、リチウムイン電池は、外面に鉄粉入り樹脂が設けられている。
鉄粉が磁石に吸着されため、適当な磁気選別機構により、リチウムイオン電池が混入している廃プラスチックを破砕前に選別除去することができる。
よって、本発明により、固形燃料の製造設備に、受け入れ可能な新しいリチウムイオン電池が提供される。
【0022】
なお、請求項3では、外面に強磁性体の薄板が貼られており、段ができるため、外観性が低下する。
この点、請求項4では、外側樹脂の外面と鉄粉入り樹脂の外面とが一致しているので、外観性が良好となる。外側樹脂と鉄粉入り樹脂とを同色にすれば、なお外観性が高まる。
【0023】
請求項5に係る発明では、請求項1~4のいずれか1項記載のリチウムイオン電池が混入されている廃プラスチックを受け入れる固形燃料の製造設備であって、破砕機の前に配置される搬入路に、磁力選別機が備えられている。
搬送路を通る廃プラスチックから磁力選別機によりリチウムイオン電池を含む廃プラスチックが除去される。結果、リチウムイオン電池を含まない廃プラスチックだけが、破砕機へ搬入され、破砕され、圧縮成形されて固形燃料となる。
【0024】
破砕前に、リチウムイオン電池が除去されるため、固形燃料の製造中に発煙などの不具合は起こらない。発煙が起こらないため、製造設備を耐火仕様にする必要はなく、設備コストを下げることができる。発煙が起こらないため、製造ラインを休止する必要がなく、生産性を高めることができる。
よって、本発明により、リチウムイオン電池が受け入れ可能な固形燃料の製造設備が提供される。
【0025】
加えて、本発明によれば、既存の固形燃料の製造設備の搬入路に、磁力選別機を追加するだけで、既存の固形燃料の製造設備(リチウムイオン電池を受け入れることができない固形燃料の製造設備)を、リチウムイオン電池が受け入れ可能な固形燃料の製造設備に、改修することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明に係るリウムイオン電池の原理を説明する断面図である。
【
図3】本発明に係るリウムイオン電池の変更例を説明する断面図である。
【
図5】本発明に係るリウムイオン電池のさらなる変更例を説明する断面図である。
【
図7】本発明に係るリウムイオン電池のさらなる変更例を説明する断面図である。
【
図9】本発明に係る固形燃料の製造設備を説明する基本構成図である。
【
図11】圧縮・整粒機の原理を説明する断面図である。
【
図12】圧縮・整粒機の作用を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例0028】
[リチウムイオン電池]
図1に示すように、リチウムイオン電池10は、リチウムを含む正極11と、この正極11に対応する負極12と、正極11と負極12とを分けるセパレータ13と、正極11、負極12及びセパレータ13を収納する容器20と、この容器20に封入される電解液15とからなる。
【0029】
正極11は、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウムなどのリチウムを含む金属酸化物で構成される。
負極12は、黒鉛系の材料で構成される。
セパレータ13は、微細な穴が無数空いた高分子膜である。微細な穴をリチウムイオンが通過する。
電解液15は、油のような有機溶媒である。
【0030】
リチウムイオン電池10が発煙事故を起こすことは知られている。この発煙のメカニズムは次のように推定することができる。
リチウムイオン電池10が破砕されると、変形して正極11に負極12が接触し、短絡(ショート)する。この短絡により発熱し、油のような電解液15が発煙することがある。
結果、破砕機内において、一定の頻度(10個に1個の割合)で、リチウムイオン電池10から煙が出る。この発煙は火災に繋がる。
【0031】
図2に示すように、容器20は、強磁性体の薄板21を樹脂22でサンドイッチした積層体からなる。
【0032】
[強磁性体]
強磁性体とは、磁石につくほどの強力な磁性を有する物質を指す。物質が金属である場合は、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マルテンサイト系ステンレス、フェライト系ステンレスが挙げられる。
対して、非磁性体としては、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、オーステナイト系ステンレスなどが挙げられる。
【0033】
[樹脂]
従来のリチウムイオン電池における容器は、アルミニウムの薄板を芯材とする。アルミニウムは、強度が大きい割に比重が小さいため、リチウムイオン電池の形状を維持しつつ軽量化に寄与する。ただし、アルミニウムは電解液で腐食される。この腐食を防ぐために、芯材を樹脂で覆う(サンドイッチする)。
樹脂は、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレンが耐食性に富み、好ましい。
【0034】
図2に示す強磁性体の薄板21は、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マルテンサイト系ステンレス、フェライト系ステンレスの何れかの薄い板で差し支えないが、鉄(Fe)、すなわち炭素鋼が最も安価である。ニッケル(Ni)、コバルト(Co)は高価である。マルテンサイト系ステンレス、フェライト系ステンレスはその中間である。よって、薄板21は、炭素鋼の薄い板を推奨する。
【0035】
以上の構成により、
図1に示すリチウムイオン電池10は、永久磁石又は電磁石で、吸着される。
【0036】
リチウムイオン電池10の変更例を、
図3及び
図4に基づいて説明する。
図4に示すように、容器20Bは、アルミニウムの薄板23を内側樹脂22a(英小字は場所を区別する添え字である。)と外側樹脂22bとでサンドイッチした上で、外側樹脂22bに強磁性体の薄板21を埋設してなる。内側樹脂22aと外側樹脂22bは、樹脂(
図2、符号22)と同じ材質である。
【0037】
図3に示すように、リチウムイオン電池10Bは、全体を覆うアルミニウムの薄板23と、局部的に配置した強磁性体の薄板21とを有する。
強磁性体の薄板21は、正極11や負極12に接近させることは好ましくない。そこで、正極11や負極12が突き出ている面(
図3では左面)の反対側の面(
図3では右面)の全部と、正極11や負極12が突き出ている面と交わる2つの面(
図3では上面、下面)の一部とに、断面コ字状に強磁性体の薄板21を配置する。その上、断面がコ字状であれば、3つの面からなり、3つの面の何れかの面が磁気吸着される。
【0038】
その他の構成要素は、
図1と共通であるため、
図1の符号を流用し、説明を省略する。
以上の構成により、
図3に示すリチウムイオン電池10Bは、永久磁石又は電磁石で、吸着される。
【0039】
リチウムイオン電池10のさらなる変更例を、
図5及び
図6に基づいて説明する。
図6に示すように、容器20Cは、アルミニウムの薄板23を樹脂22でサンドイッチした上で、外面に強磁性体の薄板21を貼り付けてなる。
【0040】
図5に示すように、リチウムイオン電池10Cは、全体を覆うアルミニウムの薄板23と、局部的に配置した強磁性体の薄板21とを有する。その他の構成要素は、
図1と共通であるため、
図1の符号を流用し、説明を省略する。
【0041】
以上の構成により、
図5に示すリチウムイオン電池10Cは、永久磁石又は電磁石で、吸着される。
ただし、リチウムイオン電池10Cは、強磁性体の薄板21を貼り付けたため、段ができ、外観性に難がある。この点を解消できるのが、次に述べるリチウムイオン電池10Dである。
【0042】
リチウムイオン電池10のさらなる変更例を、
図7及び
図8に基づいて説明する。
図7に示すように、容器20Dは、アルミニウムの薄板23を内側樹脂22aと外側樹脂22bでサンドイッチする。そのときに、図中、Lで示す領域は、外側樹脂22bの外面に浅い凹部を設けておく。
次に、この浅い凹部に鉄粉入り樹脂22cを埋める。その他の構成要素は、
図1と共通であるため、
図1の符号を流用し、説明を省略する。
【0043】
以上の構成は、射出成形法の一種である二色成形法で容易に製造することができる。
すなわち、一色目で、薄板23を芯にして内側樹脂22aと外側樹脂22bを射出する。金型の一部を凹部の深さだけ移動して浅い凹部を形成する。二色目で、浅い凹部に鉄粉入り樹脂22cを射出する。
【0044】
外側樹脂22bの外面と鉄粉入り樹脂22cの外面を合させることにより、外観性が高まる。また、外側樹脂22bと鉄粉入り樹脂22cの色を合わせることで外観性を一層高めることができる。
なお、外側樹脂22bと鉄粉入り樹脂22cの色を異ならせることは差し支えない。色を異ならせることで、いわゆるツートーンカラーが得られ、意匠性を高めることができる。
【0045】
図8に示すように、鉄粉入り樹脂22cに、微細な鉄粉25が適度に分散している。
以上の構成により、
図7に示すリチウムイオン電池10Dは、永久磁石又は電磁石で、吸着される。
加えて、鉄粉25は、絶縁性に富む内側樹脂22a及び外側樹脂22bで電解液15から隔離されているため、鉄粉25が電気的な障害になる心配はない。
【0046】
[固形燃料の製造設備]
本発明に係る固形燃料の製造設備30は、
図1~
図8で説明したリチウムイオン電池10が混入されている廃プラスチックを、受け入れて固形燃料にする設備である。
【0047】
混入されているリチウムイオン電池10は、ポリ袋に収納されていることが多く、このポリ袋も他の廃プラスチックに埋没していることが多い。
そこで、受け入れた廃プラスチックは、「リチウムイオン電池を含まない廃プラスチック」と「リチウムイオン電池を含む廃プラスチック」とを合わせたものと定義する。
【0048】
後述する磁石プーリ44は、リチウムイオン電池10を単体で磁気吸着する作用を発揮する。しかし、リチウムイオン電池10はポリ袋などの他の廃プラスチックと一緒に磁気吸着される。または、磁石プーリ44とリチウムイオン電池10との間に少なくない量の廃プラスチックが挟まる。
よって、本発明では便宜的に、磁石プーリ44は、「リチウムイオン電池を含む廃プラスチック」を吸着すると記載する。
【0049】
図9に示すように、固形燃料の製造設備30は、廃プラスチック31を破砕機50へ搬入する搬入路33と、古紙38を破砕機50へ搬入する古紙搬入機構39と、この古紙搬入機構39で搬入された古紙38及び搬入路33で搬入された廃プラスチック31Aを混合しつつ破砕する破砕機50と、破砕された破砕片58を圧縮成形する圧縮・整粒機60とを含み、搬入路33に、磁力選別機40を備えている。なお、古紙搬入機構39を省いて、古紙38を廃プラスチック31と共に搬入路33で搬入するようにしてもよい。
【0050】
[搬入路]
搬入路33は、例えば、傾斜コンベア34である。傾斜コンベア34は、下部プーリ35と、上部プーリ36と、こられのプーリ35、36に掛け渡したベルト37とからなる。
傾斜コンベア34は、破砕機50へ廃プラスチック31を搬入する役割を果たす。
搬入路33は、破砕機50より前(一次側、上流側)に配置され、廃プラスチック31を搬入する役割を果たす機構であればよく、傾斜コンベア34に限定されるものではない。
【0051】
[磁力選別機]
磁力選別機40は、例えば、上部プーリ36を兼ねた磁石プーリ41と、磁石プーリ41から下部プーリ35に若干寄った部位にてベルト37の下に設けられるバケット42とからなる。
磁石プーリ41は、回転体であるドラム43と、このドラム43の外周に所定ピッチで埋設された複数個の永久磁石44とからなる。
【0052】
今、仮に、ベルト37にリチウムイオン電池10を含まない廃プラスチック31A(英大字Aはリチウムイオン電池10を含まないことを示す添え字である。)と、リチウムイオン電池10を含む廃プラスチック31B(英大字Bはリチウムイオン電池10を含むことを示す添え字である。)が載っており、これらが上部プーリ36を兼ねた磁石プーリ41に接近したとする。
【0053】
リチウムイオン電池10を含む廃プラスチック31Bは、永久磁石44に引かれたまま、上部プーリ36を約半周する。図中、D部付近に達すると、永久磁石44の引き力が無くなる又は弱まる。引き力が無くなると、リチウムイオン電池10を含む廃プラスチック31Bはバケット42へ落下する。
対して、リチウムイオン電池10を含まない廃プラスチック31Aは、永久磁石44で引かれないため、ベルト42の上端から破砕機50へ落下する。
【0054】
以上により、破砕機50へ至る前に、リチウムイオン電池10を含む廃プラスチック31Bが除外される。
リチウムイオン電池10を含まない廃プラスチック31Aは、次に、破砕され、圧縮成形される。
【0055】
[破砕機]
図10に示すように、破砕機50は、一軸破砕機であって、1本のロータ51と、このロータ51を囲うケーシング52と、このケーシング52の上に取付けられるホッパ53とからなる。
ケーシング52の底にスクリーン54が設けられ、ケーシング52に固定刃55が設けられ、ロータ51に回転刃56が設けられている。
【0056】
ホッパ53に投入された廃プラスチック31Aと古紙38は、固定刃55と回転刃56とでせん断されて、せん断片57となる。せん断片57のうち、スクリーン54を通過し得るものは、スクリーン54を通過して排出される。排出されたものを便宜的に破砕片58と呼び、せん断片57と区別することにする。
【0057】
せん断片57のうち、スクリーン54を通過し得えない大きなものは、ロータ51で回され、多数回固定刃55と回転刃56とでせん断され、徐々に小さくなり、所定の大きさ以下になったらスクリーン54を通過して排出され、破砕片58となる。
【0058】
[圧縮・整粒機]
図11に示すように、圧縮・整粒装置60は、回転ドラム状のダイ61と、このダイ61に内接されるローラ62、62と、ダイ61の外周面に沿って配置したカッター63と、ダイ61を囲うケーシング64とを備える。
【0059】
ケーシング64は、上部に投入ダクト65を備え、下部に排出ダクト66を備えている。
回転ドラム状のダイ61には、内外に貫通するダイ孔67が設けられている。
【0060】
図12は圧縮・整粒装置60の作用説明図であり、便宜上、ダイ61を平坦にした。
図12に示すように、ダイ61の上面(内面)に載った破砕片58は、ローラ62でダイ孔67へ押し込まれる。この押し込みの際に破砕片58中の破砕物68が摩擦熱で粘着性を発揮する。押し込みが維持されると、破砕片58は、ところてんのようにダイ孔67から押し出される。押し出された分は、カッター63で切断される。結果、粒状で且つ円柱形状の固形燃料69が得られる。
【0061】
次に、磁力選別機40の変更例を、
図13に基づいて説明する。
この磁力選別機40は、吊下げ式磁選機と呼ばれ、一対のプーリ46と、これらのプーリ46に掛け渡したベルト47と、このベルト47の内側に配置される電磁石48と、バケット42とからなり、搬入路33の上に且つ直交するように設けられる。
バケット42は搬入路33の側方に置かれ、電磁石48は、搬入路33とバケット42との間に置かれる。
【0062】
搬入路33で、図面裏から表へ、リチウムイオン電池10を含む廃プラスチック31Bが搬送されてくると、電磁石48の磁力で、廃プラスチック31Bはベルト47の下面に密着するように吸い上げられる。廃プラスチック31Bはベルト47に導かれて、バケット42へ向かう。E部付近で吸着作用が無くなる又は弱まる。結果、廃プラスチック31Bはバケット42へ落下する。
【0063】
搬入路33で、図面裏から表へ、リチウムイオン電池10を含まない廃プラスチック31Aが搬送されてきた場合、廃プラスチック31Aは電磁石48に吸着されない。結果、リチウムイオン電池10を含まない廃プラスチック31Aは、搬入路33を図面裏から表へ移動し続ける。
【0064】
以上に説明したように、磁力選別機40は、磁石プーリや吊下げ式磁選機が好適であるが、要は、リチウムイオン電池10を含まない廃プラスチック31Aとリチウムイオン電池10を含む廃プラスチック31Bとを選別できればよく、種類や形式は、実施例に限定されるものではない。
【0065】
また、リチウムイオン電池10は、
図1~
図8に示す構造の他、より複雑な構造の電池であってもよく、要は、リチウムを含む正極と、黒鉛等の負極と、電解液を含んでいる構造体であればよく、実施例に限定されない。
【0066】
さらには、リチウムとは異なる金属を含む正極と、黒鉛等の負極と、電解液を含んでいる電池であって、破砕すると正極と負極とが短絡して電解液が発煙するような発煙の恐れがある電池(発煙性電池と呼ぶ。)に、本発明を適用することは差し支えない。
その場合には、特許請求の範囲及び明細書に記載したリチウムイオン電池は、発煙性電池と読み替る。
10、10B、10C、10D…リチウムイオン電池、11…正極、12…負極、13…セパレータ、15…電解液、20、20B、20C、20D…容器、21…強磁性体の薄板、22…樹脂、22a…内側樹脂、22b…外側樹脂、22c…鉄粉入り樹脂、25…鉄粉、30…固形燃料の製造設備、31…廃プラスチック、31A…リチウムイオン電池を含まない廃プラスチック、31B…リチウムイオン電池を含む廃プラスチック、33…搬入路、40…磁力選別機、50…破砕機、58…破砕片、60…圧縮・整粒機、69…固形燃料。