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特開2023-123968誘電体組成物、積層セラミック電子部品、および積層セラミック電子部品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123968
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】誘電体組成物、積層セラミック電子部品、および積層セラミック電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/12 20060101AFI20230830BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20230830BHJP
   C04B 35/49 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
H01G4/12 270
H01G4/30 515
H01G4/30 517
H01G4/30 201L
H01G4/30 311Z
C04B35/49
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027484
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】田村 佳奈
(72)【発明者】
【氏名】森田 浩一郎
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC09
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E001AF06
5E001AH09
5E001AJ02
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG11
5E082GG28
5E082JJ03
5E082JJ12
5E082JJ23
5E082MM24
5E082PP06
(57)【要約】
【課題】 高寿命と優れた容量温度特性とを両立することができる誘電体組成物、積層セラミック電子部品、および積層セラミック電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】 誘電体組成物は、チタン酸ジルコン酸バリウムを主成分とし、ジルコニウムをチタンおよびジルコニウムに対して4at%以上30at%以下含み、チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比が1以上1.1以下である母材と、前記チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対しユーロピウムを2at%以上4at%以下含む副成分と、を有する。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン酸ジルコン酸バリウムを主成分とし、ジルコニウムをチタンおよびジルコニウムに対して4at%以上30at%以下含み、チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比が1以上1.1以下である母材と、
前記チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対しユーロピウムを2at%以上4at%以下含む副成分と、を有する誘電体組成物。
【請求項2】
前記母材は、前記チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンおよびジルコニウムに対してジルコニウムを14at%以上含む、請求項1に記載の誘電体組成物。
【請求項3】
前記母材は、前記チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンおよびジルコニウムに対してジルコニウムを20at%以下含む、請求項1または請求項2に記載の誘電体組成物。
【請求項4】
前記母材と前記副成分とを含む誘電体結晶は、コアシェル構造を有し、
前記誘電体結晶の平均粒径は、200nm以上400nm以下である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の誘電体組成物。
【請求項5】
前記副成分は、2価のユーロピウムと3価のユーロピウムとを含み、前記2価のユーロピウムおよび前記3価のユーロピウムの合計に対して前記2価のユーロピウムの比率は、21%以上である、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の誘電体組成物。
【請求項6】
前記副成分は、2価のユーロピウムと3価のユーロピウムとを含み、前記2価のユーロピウムおよび前記3価のユーロピウムの合計に対して前記2価のユーロピウムの比率は、80%以下である、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の誘電体組成物。
【請求項7】
チタン酸ジルコン酸バリウムを主成分とし、ジルコニウムをチタンおよびジルコニウムに対して4at%以上30at%以下含み、チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比が1以上1.1以下である母材と、前記チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対しユーロピウムを2at%以上4at%以下含む副成分と、を有する複数の誘電体層と、
前記複数の誘電体層を介して積層され、交互に対向する複数の内部電極層と、
積層された前記複数の誘電体層および前記複数の内部電極層の側面に設けられ、前記複数の内部電極層と電気的に接続される外部電極と、を有する積層セラミック電子部品。
【請求項8】
前記母材は、前記チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンおよびジルコニウムに対してジルコニウムを14at%以上含む、請求項7に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項9】
前記母材は、前記チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンおよびジルコニウムに対してジルコニウムを20at%以下含む、請求項7または請求項8に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項10】
前記複数の誘電体層は、コアシェル構造を有する誘電体結晶を含み、
前記誘電体結晶の平均粒径は、200nm以上400nm以下である請求項7から請求項9のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項11】
前記副成分は、2価のユーロピウムと3価のユーロピウムとを含み、前記2価のユーロピウムおよび前記3価のユーロピウムの合計に対して前記2価のユーロピウムの比率は、21%以上である、請求項7から請求項10のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項12】
前記副成分は、2価のユーロピウムと3価のユーロピウムとを含み、前記2価のユーロピウムおよび前記3価のユーロピウムの合計に対して前記2価のユーロピウムの比率は、80%以下である、請求項7から請求項11のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項13】
X7T特性を満たす、請求項7から請求項12のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項14】
チタン酸ジルコン酸バリウムを主成分とし、ジルコニウムをチタンおよびジルコニウムに対して4at%以上30at%以下含み、チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比が1以上1.1以下である母材と、前記チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対しユーロピウムを2at%以上4at%以下含む副成分とを混合してセラミックグリーンシートを形成する工程と、
前記セラミックグリーンシート上に内部電極パターンを形成する工程と、
前記内部電極パターンが形成された前記セラミックグリーンシートを積層して積層体を得る工程と、
前記積層体を焼成し、複数の誘電体層および複数の内部電極を形成する工程と、を含む積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項15】
前記積層体を焼成する際に、6000℃/h以上の昇温速度で焼成する、請求項14に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体組成物、積層セラミック電子部品、および積層セラミック電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話を代表とする高周波通信用システムにおいて、ノイズを除去するために、積層セラミックコンデンサが用いられている。また、車載電子制御装置など人の生命に関わる電子回路(高信頼性用途)においても、積層セラミックコンデンサが使用されている。積層セラミックコンデンサには、高い信頼性が求められているため、信頼性を向上させる技術が開示されている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-265265号広報
【特許文献2】特開2019-131438号公報
【特許文献3】特開2009-35431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
積層セラミックコンデンサの誘電体に、チタン酸ジルコン酸バリウム(BaTi(1-x)Zr)を用いることが考えられる。チタン酸ジルコン酸バリウムは、BaTiOのTi4+をZr4+で置換した材料であり、高い耐還元性を有し、酸素欠陥の生成を抑制し、絶縁抵抗の悪化を抑える働きを有する。しかしながら、チタン酸ジルコン酸バリウムは、粒成長しやすい性質を有している。過度に粒成長が生じると、容量温度特性が悪化し、高温負荷寿命も悪化するため、チタン酸ジルコン酸バリウムを高信頼性用途に利用することは難しい。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、高寿命と優れた容量温度特性とを両立することができる誘電体組成物、積層セラミック電子部品、および積層セラミック電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る誘電体組成物は、チタン酸ジルコン酸バリウムを主成分とし、ジルコニウムをチタンおよびジルコニウムに対して4at%以上30at%以下含み、チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比が1以上1.1以下である母材と、前記チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対しユーロピウムを2at%以上4at%以下含む副成分と、を有する。
【0007】
上記誘電体組成物において、前記母材は、前記チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンおよびジルコニウムに対してジルコニウムを14at%以上含んでいてもよい。
【0008】
上記誘電体組成物において、前記母材は、前記チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンおよびジルコニウムに対してジルコニウムを20at%以下含んでいてもよい。
【0009】
上記誘電体組成物において、前記母材と前記副成分とを含む誘電体結晶は、コアシェル構造を有し、前記誘電体結晶の平均粒径は、200nm以上400nm以下であってもよい。
【0010】
上記誘電体組成物において、前記副成分は、2価のユーロピウムと3価のユーロピウムとを含み、前記2価のユーロピウムおよび前記3価のユーロピウムの合計に対して前記2価のユーロピウムの比率は、21%以上であってもよい。
【0011】
上記誘電体組成物において、前記副成分は、2価のユーロピウムと3価のユーロピウムとを含み、前記2価のユーロピウムおよび前記3価のユーロピウムの合計に対して前記2価のユーロピウムの比率は、80%以下であってもよい。
【0012】
本発明に係る積層セラミック電子部品は、チタン酸ジルコン酸バリウムを主成分とし、ジルコニウムをチタンおよびジルコニウムに対して4at%以上30at%以下含み、チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比が1以上1.1以下である母材と、前記チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対しユーロピウムを2at%以上4at%以下含む副成分と、を有する複数の誘電体層と、前記複数の誘電体層を介して積層され、交互に対向する複数の内部電極層と、積層された前記複数の誘電体層および前記複数の内部電極層の側面に設けられ、前記複数の内部電極層と電気的に接続される外部電極と、を有する。
【0013】
上記積層セラミック電子部品において、前記母材は、前記チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンおよびジルコニウムに対してジルコニウムを14at%以上含んでいてもよい。
【0014】
上記積層セラミック電子部品において、前記母材は、前記チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンおよびジルコニウムに対してジルコニウムを20at%以下含んでいてもよい。
【0015】
上記積層セラミック電子部品において、前記複数の誘電体層は、コアシェル構造を有する誘電体結晶を含み、前記誘電体結晶の平均粒径は、200nm以上400nm以下であってもよい。
【0016】
上記積層セラミック電子部品において、前記副成分は、2価のユーロピウムと3価のユーロピウムとを含み、前記2価のユーロピウムおよび前記3価のユーロピウムの合計に対して前記2価のユーロピウムの比率は、21%以上であってもよい。
【0017】
上記積層セラミック電子部品において、前記副成分は、2価のユーロピウムと3価のユーロピウムとを含み、前記2価のユーロピウムおよび前記3価のユーロピウムの合計に対して前記2価のユーロピウムの比率は、80%以下であってもよい。
【0018】
上記積層セラミック電子部品は、X7T特性を満たしてもよい。
【0019】
本発明に係る積層セラミック電子部品の製造方法は、チタン酸ジルコン酸バリウムを主成分とし、ジルコニウムをチタンおよびジルコニウムに対して4at%以上30at%以下含み、チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比が1以上1.1以下である母材と、前記チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対しユーロピウムを2at%以上4at%以下含む副成分とを混合してセラミックグリーンシートを形成する工程と、前記セラミックグリーンシート上に内部電極パターンを形成する工程と、前記内部電極パターンが形成された前記セラミックグリーンシートを積層して積層体を得る工程と、前記積層体を焼成し、複数の誘電体層および複数の内部電極を形成する工程と、を含む。
【0020】
上記積層セラミック電子部品の製造方法において、前記積層体を焼成する際に、6000℃/h以上の昇温速度で焼成してもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、高寿命と優れた容量温度特性とを両立することができる誘電体組成物、積層セラミック電子部品、および積層セラミック電子部品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】積層セラミックコンデンサの部分断面斜視図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3図1のB-B線断面図である。
図4】(a)はコアシェル粒子を例示する図であり、(b)は誘電体層の模式的な断面図である。
図5】積層セラミックコンデンサの製造方法のフローを例示する図である。
図6】実施例1についての容量領域の誘電体層と内部電極層の積層断面のSEM像の模式図である。
図7】容量領域の誘電体層におけるTEM像の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
【0024】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100の部分断面斜視図である。図2は、図1のA-A線断面図である。図3は、図1のB-B線断面図である。図1図3で例示するように、積層セラミックコンデンサ100は、略直方体形状を有する積層チップ10と、積層チップ10のいずれかの対向する2端面に設けられた外部電極20a,20bとを備える。なお、積層チップ10の当該2端面以外の4面のうち、積層方向の上面および下面以外の2面を側面と称する。外部電極20a,20bは、積層チップ10の積層方向の上面、下面および2側面に延在している。ただし、外部電極20a,20bは、互いに離間している。
【0025】
積層チップ10は、誘電体として機能するセラミック材料を含む誘電体層11と、卑金属材料を含む内部電極層12とが、交互に積層された構成を有する。各内部電極層12の端縁は、積層チップ10の外部電極20aが設けられた端面と、外部電極20bが設けられた端面とに、交互に露出している。それにより、各内部電極層12は、外部電極20aと外部電極20bとに、交互に導通している。その結果、積層セラミックコンデンサ100は、複数の誘電体層11が内部電極層12を介して積層された構成を有する。また、誘電体層11と内部電極層12との積層体において、積層方向の最外層には内部電極層12が配置され、当該積層体の上面および下面は、カバー層13によって覆われている。カバー層13は、セラミック材料を主成分とする。例えば、カバー層13は、誘電体層11と組成が同じであっても、異なっていても構わない。なお、内部電極層12が異なる2つの面に露出して、異なる外部電極に導通していれば、図1から図3の構成に限られない。
【0026】
積層セラミックコンデンサ100のサイズは、例えば、長さ0.25mm、幅0.125mm、高さ0.125mmであり、または長さ0.4mm、幅0.2mm、高さ0.2mm、または長さ0.6mm、幅0.3mm、高さ0.3mmであり、または長さ1.0mm、幅0.5mm、高さ0.5mmであり、または長さ3.2mm、幅1.6mm、高さ1.6mmであり、または長さ4.5mm、幅3.2mm、高さ2.5mmであるが、これらのサイズに限定されるものではない。
【0027】
内部電極層12は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、スズ(Sn)等の卑金属を主成分とする。内部電極層12として、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)などの貴金属やこれらを含む合金を用いてもよい。内部電極層12の厚みは、例えば、0.1μm以上3μm以下であり、0.1μm以上1μm以下であり、0.1μm以上0.5μm以下である。
【0028】
誘電体層11は、誘電体組成物であって、例えば、一般式ABOで表されるペロブスカイト構造を有するセラミック材料を主成分とする母材を含む。なお、当該ペロブスカイト構造は、化学量論組成から外れたABO3-αを含む。本実施形態では、当該セラミック材料として、チタン酸ジルコン酸バリウム(BaTi(1-x)Zr)を用いる。例えば、誘電体層11において、チタン酸ジルコン酸バリウムは、90at%以上含まれている。また、誘電体層11は、ユーロピウムを含む副成分を含む。副成分の詳細は後述する。誘電体層11の厚みは、例えば、0.2μm以上10μm以下であり、0.2μm以上5μm以下であり、0.2μm以上2μm以下である。
【0029】
図2で例示するように、外部電極20aに接続された内部電極層12と外部電極20bに接続された内部電極層12とが対向する領域は、積層セラミックコンデンサ100において電気容量を生じる領域である。そこで、当該電気容量を生じる領域を、容量領域14と称する。すなわち、容量領域14は、異なる外部電極に接続された隣接する内部電極層12同士が対向する領域である。
【0030】
外部電極20aに接続された内部電極層12同士が、外部電極20bに接続された内部電極層12を介さずに対向する領域を、エンドマージン15と称する。また、外部電極20bに接続された内部電極層12同士が、外部電極20aに接続された内部電極層12を介さずに対向する領域も、エンドマージン15である。すなわち、エンドマージン15は、同じ外部電極に接続された内部電極層12が異なる外部電極に接続された内部電極層12を介さずに対向する領域である。エンドマージン15は、電気容量を生じない領域である。
【0031】
図3で例示するように、積層チップ10において、積層チップ10の2側面から内部電極層12に至るまでの領域をサイドマージン16と称する。すなわち、サイドマージン16は、上記積層構造において積層された複数の内部電極層12が2側面側に延びた端部を覆うように設けられた領域である。サイドマージン16も、電気容量を生じない領域である。
【0032】
ここで、チタン酸ジルコン酸バリウム(BaTi(1-x)Zr)は高い耐還元性を有し、酸素欠陥の生成を抑制し、絶縁抵抗の悪化を抑える働きを有する。しかしながら、チタン酸ジルコン酸バリウムは、粒成長しやすい性質を有している。過度に粒成長が生じると、容量温度特性が悪化し、高温負荷寿命も悪化するため、チタン酸ジルコン酸バリウムを高信頼性用途に利用することは難しい。そこで、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100は、高寿命と優れた容量温度特性とを両立することができる構成を有している。
【0033】
チタン酸ジルコン酸バリウムは、チタン酸バリウムにジルコニウムがドープされた形態を有しているため、一般式ABOで表されるペロブスカイト構造のチタン酸バリウムの結晶の格子定数が拡大し、寿命の要であるホルミウム(Ho)、ジスプロシウム(Dy)、イットリウム(Y)等の希土類元素がBaサイト(Aサイト)よりもTiサイト(Bサイト)に多く固溶してアクセプタ過剰となってしまうため、寿命改善効果が限定的となる。
【0034】
そこで、本発明者らは、チタン酸ジルコン酸バリウムのBaサイトに置換固溶しやすいイオン半径が大きな希土類元素を検討した結果、ユーロピウム(Eu)を添加することで、ホルミウム、ジスプロシウム、イットリウム等の希土類元素と比較して、1桁程度寿命が向上することを見出した。ユーロピウム添加で寿命が向上する理由は完全に解明されていないが、ユーロピウムは2価と3価で安定であり、2価と3価に揺動し、2価では安定な希土類元素イオン中で最大のイオン半径を持つため、選択的にBaサイトに置換固溶するためと考えられる。なお、ユーロピウム以外の希土類元素は、3価で安定であり、2価では不安定となっている。
【0035】
表1は、各希土類元素の6配位のイオン半径を示す。表1の出典は、「R.D.Shannon,Acta Crystallogr.,A32,751(1976)」である。
【表1】
【0036】
容量領域14の誘電体層11において、誘電体層11の主成分であるチタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対するユーロピウム量(チタンを100at%とした場合のユーロピウム量(at%))が少ないと、十分な高寿命が得られないおそれがある。そこで、本実施形態においては、チタンに対するユーロピウム量に下限を設ける。具体的には、容量領域14の誘電体層11において、チタンに対するユーロピウム量を2at%以上とする。チタンに対するユーロピウム量は、2at%以上であることが好ましく、3at%以上であることがより好ましい。
【0037】
一方、容量領域14の誘電体層11において、誘電体層11の主成分であるチタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対するユーロピウム量が多いと、誘電体層11が半導体化し、高寿命が得られないおそれがある。そこで、本実施形態においては、チタンに対するユーロピウム量に上限を設ける。具体的には、容量領域14の誘電体層11において、チタンに対するユーロピウム量を4at%以下とする。チタンに対するユーロピウム量は、4at%以下であることが好ましく、3at%以下であることがより好ましい。
【0038】
次に、(BaTi(1-x)Zr)のxが小さいと、十分な耐還元性が得られず、酸素欠陥が多く生成するおそれがある。そこで、本実施形態においては、xに下限を設ける。具体的には、xを0.04以上とする。言い換えると、チタン酸ジルコン酸バリウムにおいて、ジルコニウムをチタンおよびジルコニウムに対して4at%以上とする。チタン酸ジルコン酸バリウムにおいて、ジルコニウムをチタンおよびジルコニウムに対して9at%以上とすることが好ましく、14at%以上とすることがより好ましい。
【0039】
一方、xが大きいと、チタン酸ジルコン酸バリウムの拡散が進み、粒成長制御が困難となるおそれがある。そこで、本実施形態においては、xに上限を設ける。具体的には、xを0.30以下とする。言い換えると、チタン酸ジルコン酸バリウムにおいて、ジルコニウムをチタンおよびジルコニウムに対して30at%以下とする。チタン酸ジルコン酸バリウムにおいて、ジルコニウムをチタンおよびジルコニウムに対して30at%以下とすることが好ましく、20at%以下とすることがより好ましい。
【0040】
次に、チタン酸ジルコン酸バリウムにおいて、Ba/(Ti+Zr)(チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比)が大きいと、チタン酸ジルコン酸バリウムの拡散が抑制され、焼結が困難となるおそれがある。そこで、本実施形態においては、チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比に上限を設ける。具体的には、チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比を1.1以下とする。チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比は、1.1以下であることが好ましく、1.08以下であることがより好ましい。
【0041】
一方、チタン酸ジルコン酸バリウムにおいて、チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比が小さいと、チタン酸ジルコン酸バリウムの拡散が進み、粒成長制御が困難となるおそれがある。そこで、本実施形態においては、チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比に下限を設ける。具体的には、チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比を1.0以上とする。チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比は、1.0以上であることが好ましく、1.03以上であることがより好ましい。
【0042】
このような積層セラミックコンデンサ100の容量領域14の誘電体層11において、母材および副成分を含む誘電体結晶の少なくとも一部がコアシェル構造を有すると、容量領域14における誘電体層11が高い誘電率を有し、優れた温度特性を有し、安定な微細構造が共存するようになる。
【0043】
シェルを構成する代表的な添加物として、マグネシウムが挙げられる。しかしながら、マグネシウムは価数が変動しない単純なアクセプタであり、誘電体層11のチタン酸ジルコン酸バリウムに固溶して酸素欠陥を生成するため、信頼性が頭打ちになってしまう。
【0044】
そこで、本実施形態においては、容量領域14の誘電体層11において、母材および副成分を含む誘電体結晶の少なくとも一部が、チタン酸ジルコン酸バリウムを主成分とするコア部とし、ジルコニウムの拡散層をシェル部としたコアシェル構造を有していることが好ましい。なお、シェル部は、チタン酸ジルコン酸バリウムを主成分とする。
【0045】
図4(a)で例示するように、コアシェル粒子30は、略球形状のコア部31と、コア部31を囲むように覆うシェル部32とを備えている。コア部31は、添加化合物が固溶していないかもしくは添加化合物の固溶量が少ない結晶部分である。シェル部32は、添加化合物が固溶しておりかつコア部31の添加化合物濃度よりも高い添加化合物濃度を有している結晶部分である。本実施形態においては、シェル部32におけるジルコニウム濃度が、コア部31におけるジルコニウム濃度よりも高くなっていることが好ましい。
【0046】
図4(b)は、誘電体層11の模式的な断面図である。図4(b)で例示するように、誘電体層11は、主成分セラミックの複数の誘電体結晶17を備えている。これらの誘電体結晶17のうち、少なくとも一部が図4(a)で説明したコアシェル粒子30である。耐還元性が高いジルコニウム濃度の高いシェル部32でコア部31を覆うことにより、高誘電率を維持しつつ安定な構造を持ち、かつ高信頼な材料を得ることができる。
【0047】
シェル部32におけるユーロピウム濃度は、コア部31におけるユーロピウム濃度よりも高くなる傾向にある。
【0048】
誘電体層11において、誘電体結晶17の平均粒径が小さすぎても大きすぎても、容量変化率が大きくなり、積層セラミックコンデンサ100にX7T特性が得られないおそれがある。そこで、本実施形態においては、容量領域14の誘電体層11における誘電体結晶17の平均粒径に下限および上限を設ける。具体的には、容量領域14の誘電体層11における誘電体結晶17の平均粒径を200nm以上、400nm以下とすることが好ましい。容量領域14の誘電体層11における誘電体結晶17の平均粒径は、250nm以上であることが好ましく、300nm以上であることが好ましい。一方、容量領域14の誘電体層11における誘電体結晶17の平均粒径は、375nm以下であることが好ましく、350nm以下であることがより好ましい。平均粒径は、誘電体層11を観察した40000倍の視野のSEM写真を用いて、誘電体層11を構成する粒子のうち100個の定方向径(フェレー径)を測定し、平均値をとるようにして測定することができる。
【0049】
容量領域14の誘電体層11に添加されているユーロピウムのうち、2価のユーロピウム量が少ないと、十分な高寿命が得られないおそれがある。そこで、容量領域14の誘電体層11内のユーロピウムのうち、2価のユーロピウム量に下限を設けることが好ましい。例えば、容量領域14の誘電体層11において、2価のユーロピウムの比率は、ユーロピウム全体(2価のユーロピウムおよび3価のユーロピウムの合計)に対して21%以上であることが好ましく、26%以上であることがより好ましい。
【0050】
2価のユーロピウムの比率を高くするためには、多くの3価のユーロピウムを還元することが求められる。しかしながら、2価のユーロピウムに還元するためのアニール工程において多くの3価のユーロピウムの還元を進める期間に、誘電体層11において粒成長が生じるおそれがある。粒成長が生じると、誘電体層11の寿命が低下するおそれがある。したがって、誘電体層11に粒成長が生じると、粒成長による寿命低下効果が、ユーロピウムの価数の寿命向上効果を相殺するおそれがあり、粒成長によって内部電極層12が構造を保てなくなってショートが生じるおそれがある。そこで、容量領域14の誘電体層11内のユーロピウムのうち、2価のユーロピウム量に上限を設けることが好ましい。例えば、容量領域14の誘電体層11において、2価のユーロピウムは、ユーロピウム全体の80%以下含まれていることが好ましく、70%以下含まれていることがより好ましく、59%以下含まれていることがさらに好ましい。
【0051】
次に、容量領域14の誘電体層11において、ユーロピウム以外の希土類元素の添加量が多すぎると、ユーロピウムによる寿命改善効果が弱まってしまい、十分な寿命が得られないおそれがある。したがって、ユーロピウム以外の希土類元素の添加量に上限を設けることが好ましい。具体的には、容量領域14の誘電体層11において、ユーロピウム以外の希土類元素の原子濃度を、ユーロピウムの原子濃度よりも少なくすることが好ましい。ユーロピウム以外の希土類元素が複数種類である場合には、当該複数種類の希土類元素の合計の原子濃度を、ユーロピウムの原子濃度よりも少なくすることが好ましい。
【0052】
ケイ素は、チタン酸ジルコン酸バリウムの焼結温度を低下させる働きがあり、添加量が小さいと焼結しにくくなるおそれがある。そこで、チタン酸ジルコン酸バリウムにおいて、ケイ素をチタンおよびジルコニウムに対して、1at%以上とすることが好ましい。
【0053】
ケイ素の添加量が大きいとチタン酸ジルコン酸バリウムの粒成長が進み、十分な寿命が得られないおそれがある。そこで、チタン酸ジルコン酸バリウムにおいて、ケイ素をチタンおよびジルコニウムに対して、1.5at%以下とすることが好ましい。
【0054】
マグネシウムは、上記で述べたアクセプタの働きの他に、チタン酸ジルコン酸バリウムの粒成長を抑制する働きがあり、添加量が小さいとチタン酸ジルコン酸バリウムを粒成長させるおそれがある。そこで、チタン酸ジルコン酸バリウムにおいて、マグネシウムをチタンおよびジルコニウムに対して、0.5at%以上とすることが好ましい。
【0055】
マグネシウムの添加量が大きいと粒成長が進み、十分な寿命が得られないおそれがある。そこで、チタン酸ジルコン酸バリウムにおいて、マグネシウムをチタンおよびジルコニウムに対して、1.5at%以下とすることが好ましい。
【0056】
以上のように、本実施形態によれば、容量領域の誘電体層11が、チタン酸ジルコン酸バリウムを主成分とし、ジルコニウムをチタンおよびジルコニウムに対して4at%以上30at%以下含み、チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比が1以上1.1以下である母材と、チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対しユーロピウムを2at%以上4at%以下含む副成分と、を含むことで、高寿命と優れた容量温度特性とを両立することができる。
【0057】
続いて、積層セラミックコンデンサ100の製造方法について説明する。図5は、積層セラミックコンデンサ100の製造方法のフローを例示する図である。
【0058】
(原料粉末作製工程)
まず、誘電体層11を形成するための誘電体材料を用意する。誘電体層11に含まれるAサイト元素およびBサイト元素は、通常はABOの粒子の焼結体の形で誘電体層11に含まれる。チタン酸ジルコン酸バリウムは、各種の材料を反応させて合成することで得ることができる。チタン酸ジルコン酸バリウムの合成方法としては、従来種々の方法が知られており、例えば固相法、ゾル-ゲル法、水熱法等が知られている。本実施形態においては、これらのいずれも採用することができる。
【0059】
得られたセラミック粉末に、目的に応じて所定の添加化合物を添加する。添加化合物としては、目的に応じて所定の添加化合物を添加する。添加化合物としては、マグネシウム、マンガン、バナジウム(V)、クロム(Cr)、ユーロピウムの酸化物、並びに、コバルト(Co)、ニッケル、リチウム(Li)、ホウ素(B)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)およびケイ素(Si)の酸化物もしくはガラスが挙げられる。必要に応じて、ユーロピウム以外の希土類元素(スカンジウム(Sc)、イットリウム、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、Ybおよびルテチウム(Lu))の酸化物を添加してもよい。
【0060】
例えば、セラミック原料粉末に添加化合物を含む化合物を湿式混合し、乾燥および粉砕してセラミック材料を調製する。例えば、上記のようにして得られたセラミック材料について、必要に応じて粉砕処理して粒径を調節し、あるいは分級処理と組み合わせることで粒径を整えてもよい。以上の工程により、誘電体材料が得られる。この誘電体材料においては、チタン酸ジルコン酸バリウムを主成分とし、ジルコニウムをチタンおよびジルコニウムに対して4at%以上30at%以下含み、チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比が1以上1.1以下である母材と、チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対しユーロピウムを2at%以上4at%以下含む副成分とが混合されている。
【0061】
(塗工工程)
次に、得られた誘電体材料に、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂等のバインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、可塑剤とを加えて湿式混合する。得られたスラリを使用して、例えばダイコータ法やドクターブレード法により、基材上に例えば厚み0.5μm以上の帯状のセラミックグリーンシートを塗工して乾燥させる。
【0062】
(内部電極形成工程)
次に、セラミックグリーンシートの表面に、有機バインダを含む内部電極形成用の金属導電ペーストをスクリーン印刷、グラビア印刷等により印刷することで、極性の異なる一対の外部電極に交互に引き出される内部電極パターンを配置する。金属導電ペーストには、共材としてセラミック粒子を添加する。セラミック粒子の主成分は、特に限定するものではないが、誘電体層11の主成分セラミックと同じであることが好ましい。例えば、平均粒子径が50nm以下のチタン酸バリウムを均一に分散させてもよい。
【0063】
(圧着工程)
その後、内部電極パターンが印刷されたセラミックグリーンシートを所定の大きさに打ち抜いて、打ち抜かれたセラミックグリーンシートを、基材を剥離した状態で、内部電極層12と誘電体層11とが互い違いになるように、かつ内部電極層12が誘電体層11の長さ方向両端面に端縁が交互に露出して極性の異なる一対の外部電極20a,20bに交互に引き出されるように、所定層数(例えば100~1000層)だけ積層する。積層したセラミックグリーンシートの上下に、カバー層13を形成するためのカバーシートを圧着させ、所定チップ寸法(例えば1.0mm×0.5mm)にカットする。
【0064】
(焼成工程)
このようにして得られたセラミック積層体を、N雰囲気で脱バインダ処理した後に外部電極20a,20bの下地層となる金属ペーストをディップ法で塗布し、酸素分圧が10-12MPa~10-9MPa、1160℃~1280℃の還元雰囲気で、5分~10分の焼成を行なう。
【0065】
なお、昇温速度を10℃/h程度の遅い速度とすると、誘電体材料のチタン酸バリウムにおいて、希土類元素およびジルコニウムの拡散が促進され、全固溶粒子が形成される。この場合、高寿命は得られるが、誘電率が低くなり、焼結安定性および容量温度特性が悪くなる傾向にある。そこで、本実施形態においては、6000℃/h以上、10000℃/h以下の昇温速度とすることで、ジルコニウムの拡散を抑制し、ジルコニウムの濃度勾配の大きいコアシェル構造を形成することが好ましい。
【0066】
また、誘電体材料におけるチタン酸バリウム粉末の粒径、焼成温度、焼成時間などの焼成条件を調整することによって、焼成後に得られる容量領域14の誘電体層11において、誘電体結晶17の平均粒径を調整することができる。
【0067】
(再酸化処理工程)
還元雰囲気で焼成された誘電体層11の部分的に還元された主相であるチタン酸バリウムに酸素を戻すために、内部電極層12を酸化させない程度に、約1000℃でNと水蒸気の混合ガス中、もしくは500℃~700℃の大気中での熱処理が行われることがある。この工程は、再酸化処理工程とよばれる。
【0068】
(めっき処理工程)
その後、外部電極20a,20bの下地層上に、めっき処理により、銅、ニッケル、スズ等の金属コーティングを行う。以上の工程により、積層セラミックコンデンサ100が完成する。
【0069】
本実施形態に係る製造方法によれば、チタン酸ジルコン酸バリウムを主成分とし、ジルコニウムをチタンおよびジルコニウムに対して4at%以上30at%以下含み、チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比が1以上1.1以下である母材と、チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対しユーロピウムを2at%以上4at%以下含む副成分とを混合してセラミックグリーンシートを焼成することで、高寿命と優れた容量温度特性とを両立する積層セラミックコンデンサ100を製造することができる。
【0070】
なお、上記各実施形態は、セラミック電子部品の一例として積層セラミックコンデンサについて説明したが、それに限られない。例えば、上記各実施形態の構成は、バリスタやサーミスタなどの、他の積層セラミック電子部品に適用することもできる。
【実施例0071】
以下、実施形態に係る積層セラミックコンデンサを作製し、特性について調べた。
【0072】
(実施例1)
粒径200nmのチタン酸ジルコン酸バリウム、希土類酸化物、各種の副添加物、および有機溶剤を所定比率となるように秤量し、φ1mmのジルコニアビーズで混合粉砕した。
【0073】
チタン酸ジルコン酸バリウム(BaTi(1-x)Zr)のxを0.30とした。希土類酸化物としてユーロピウムの酸化物を用い、チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対してユーロピウムの添加量を3at%とした。チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対して、ケイ素の添加量を1at%とし、マンガンの添加量を0.65at%とし、マグネシウムの添加量を1.5at%とした。チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比(A/B比)を1.100とした。
【0074】
(実施例2)
実施例2では、チタン酸ジルコン酸バリウム(BaTi(1-x)Zr)のxを0.30とした。希土類酸化物としてユーロピウムの酸化物を用い、チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対してユーロピウムの添加量を2at%とした。チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対して、ケイ素の添加量を1at%とし、マンガンの添加量を0.65at%とし、マグネシウムの添加量を1.5at%とした。チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比(A/B比)を1.090とした。
【0075】
(実施例3)
実施例3では、チタン酸ジルコン酸バリウム(BaTi(1-x)Zr)のxを0.20とした。希土類酸化物としてユーロピウムの酸化物を用い、チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対してユーロピウムの添加量を3at%とした。チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対して、ケイ素の添加量を1.5at%とし、マンガンの添加量を0.65at%とし、マグネシウムの添加量を1at%とした。チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比(A/B比)を1.080とした。
【0076】
(実施例4)
実施例4では、チタン酸ジルコン酸バリウム(BaTi(1-x)Zr)のxを0.20とした。希土類酸化物としてユーロピウムの酸化物を用い、チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対してユーロピウムの添加量を3at%とした。チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対して、ケイ素の添加量を1at%とし、マンガンの添加量を0.65at%とし、マグネシウムの添加量を1at%とした。チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比(A/B比)を1.060とした。
【0077】
(実施例5)
実施例5では、チタン酸ジルコン酸バリウム(BaTi(1-x)Zr)のxを0.20とした。希土類酸化物としてユーロピウムの酸化物を用い、チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対してユーロピウムの添加量を2at%とした。チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対して、ケイ素の添加量を1at%とし、マンガンの添加量を0.65at%とし、マグネシウムの添加量を1at%とした。チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比(A/B比)を1.060とした。
【0078】
(実施例6)
実施例6では、チタン酸ジルコン酸バリウム(BaTi(1-x)Zr)のxを0.14とした。希土類酸化物としてユーロピウムの酸化物を用い、チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対してユーロピウムの添加量を3at%とした。チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対して、ケイ素の添加量を1.5at%とし、マンガンの添加量を0.65at%とし、マグネシウムの添加量を1at%とした。チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比(A/B比)を1.006とした。
【0079】
(実施例7)
実施例7では、チタン酸ジルコン酸バリウム(BaTi(1-x)Zr)のxを0.10とした。希土類酸化物としてユーロピウムの酸化物を用い、チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対してユーロピウムの添加量を3at%とした。チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対して、ケイ素の添加量を1.5at%とし、マンガンの添加量を0.65at%とし、マグネシウムの添加量を1at%とした。チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比(A/B比)を1.003とした。
【0080】
(実施例8)
実施例8では、チタン酸ジルコン酸バリウム(BaTi(1-x)Zr)のxを0.10とした。希土類酸化物としてユーロピウムの酸化物を用い、チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対してユーロピウムの添加量を2at%とした。チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対して、ケイ素の添加量を1at%とし、マンガンの添加量を0.65at%とし、マグネシウムの添加量を1at%とした。チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比(A/B比)を1.003とした。
【0081】
(実施例9)
実施例9では、チタン酸ジルコン酸バリウム(BaTi(1-x)Zr)のxを0.09とした。希土類酸化物としてユーロピウムの酸化物を用い、チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対してユーロピウムの添加量を3at%とした。チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対して、ケイ素の添加量を1.5at%とし、マンガンの添加量を0.65at%とし、マグネシウムの添加量を1at%とした。チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比(A/B比)を1.004とした。
【0082】
(実施例10)
実施例10では、チタン酸ジルコン酸バリウム(BaTi(1-x)Zr)のxを0.09とした。希土類酸化物としてユーロピウムの酸化物を用い、チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対してユーロピウムの添加量を2.5at%とした。チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対して、ケイ素の添加量を1.5at%とし、マンガンの添加量を0.65at%とし、マグネシウムの添加量を1at%とした。チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比(A/B比)を1.005とした。
【0083】
(実施例11)
実施例11では、チタン酸ジルコン酸バリウム(BaTi(1-x)Zr)のxを0.09とした。希土類酸化物としてユーロピウムの酸化物を用い、チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対してユーロピウムの添加量を2at%とした。チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対して、ケイ素の添加量を1.5at%とし、マンガンの添加量を0.65at%とし、マグネシウムの添加量を1at%とした。チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比(A/B比)を1.006とした。
【0084】
(実施例12)
実施例12では、チタン酸ジルコン酸バリウム(BaTi(1-x)Zr)のxを0.04とした。希土類酸化物としてユーロピウムの酸化物を用い、チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対してユーロピウムの添加量を3at%とした。チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対して、ケイ素の添加量を1.5at%とし、マンガンの添加量を0.65at%とし、マグネシウムの添加量を1at%とした。チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比(A/B比)を1.004とした。
【0085】
(実施例13)
実施例13では、チタン酸ジルコン酸バリウム(BaTi(1-x)Zr)のxを0.04とした。希土類酸化物としてユーロピウムの酸化物を用い、チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対してユーロピウムの添加量を2.5at%とした。チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対して、ケイ素の添加量を1.5at%とし、マンガンの添加量を0.65at%とし、マグネシウムの添加量を1at%とした。チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比(A/B比)を1.002とした。
【0086】
(実施例14)
実施例14では、チタン酸ジルコン酸バリウム(BaTi(1-x)Zr)のxを0.04とした。希土類酸化物としてユーロピウムの酸化物を用い、チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対してユーロピウムの添加量を2.5at%とした。チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対して、ケイ素の添加量を1.5at%とし、マンガンの添加量を0.65at%とし、マグネシウムの添加量を1at%とした。チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比(A/B比)を1.005とした。
【0087】
(実施例15)
実施例15では、チタン酸ジルコン酸バリウム(BaTi(1-x)Zr)のxを0.04とした。希土類酸化物としてユーロピウムの酸化物を用い、チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対してユーロピウムの添加量を2at%とした。チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対して、ケイ素の添加量を1.5at%とし、マンガンの添加量を0.65at%とし、マグネシウムの添加量を0.75at%とした。チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比(A/B比)を1.006とした。
【0088】
(実施例16)
実施例16では、チタン酸ジルコン酸バリウム(BaTi(1-x)Zr)のxを0.14とした。希土類酸化物としてユーロピウムの酸化物を用い、チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対してユーロピウムの添加量を4at%とした。チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対して、ケイ素の添加量を1.5at%とし、マンガンの添加量を0.65at%とし、マグネシウムの添加量を1at%とした。チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比(A/B比)を1.003とした。
【0089】
(実施例17)
実施例17では、チタン酸ジルコン酸バリウム(BaTi(1-x)Zr)のxを0.14とした。希土類酸化物としてユーロピウムの酸化物を用い、チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対してユーロピウムの添加量を3at%とした。チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対して、ケイ素の添加量を1.5at%とし、マンガンの添加量を0.65at%とし、マグネシウムの添加量を0.75at%とした。チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比(A/B比)を1.004とした。
【0090】
(実施例18)
実施例18では、チタン酸ジルコン酸バリウム(BaTi(1-x)Zr)のxを0.14とした。希土類酸化物としてユーロピウムの酸化物を用い、チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対してユーロピウムの添加量を3at%とした。チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対して、ケイ素の添加量を1.5at%とし、マンガンの添加量を0.65at%とし、マグネシウムの添加量を1at%とした。チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比(A/B比)を1.003とした。
【0091】
(実施例19)
実施例19では、チタン酸ジルコン酸バリウム(BaTi(1-x)Zr)のxを0.14とした。希土類酸化物としてユーロピウムの酸化物を用い、チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対してユーロピウムの添加量を2.5at%とした。チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対して、ケイ素の添加量を1.25at%とし、マンガンの添加量を0.65at%とし、マグネシウムの添加量を1at%とした。チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比(A/B比)を1.003とした。
【0092】
(実施例20)
実施例20では、チタン酸ジルコン酸バリウム(BaTi(1-x)Zr)のxを0.14とした。希土類酸化物としてユーロピウムの酸化物を用い、チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対してユーロピウムの添加量を2.5at%とした。チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対して、ケイ素の添加量を1.5at%とし、マンガンの添加量を0.65at%とし、マグネシウムの添加量を1at%とした。チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比(A/B比)を1.005とした。
【0093】
(実施例21)
実施例21では、チタン酸ジルコン酸バリウム(BaTi(1-x)Zr)のxを0.14とした。希土類酸化物としてユーロピウムの酸化物を用い、チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対してユーロピウムの添加量を2at%とした。チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対して、ケイ素の添加量を1at%とし、マンガンの添加量を0.65at%とし、マグネシウムの添加量を1at%とした。チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比(A/B比)を1.002とした。
【0094】
(実施例22)
実施例22では、チタン酸ジルコン酸バリウム(BaTi(1-x)Zr)のxを0.14とした。希土類酸化物としてユーロピウムの酸化物を用い、チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対してユーロピウムの添加量を2at%とした。チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対して、ケイ素の添加量を1.5at%とし、マンガンの添加量を0.65at%とし、マグネシウムの添加量を1at%とした。チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比(A/B比)を1.006とした。
【0095】
(比較例1)
比較例1では、チタン酸ジルコン酸バリウム(BaTi(1-x)Zr)のxを0.35とした。希土類酸化物としてユーロピウムの酸化物を用い、チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対してユーロピウムの添加量を3at%とした。チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対して、ケイ素の添加量を1at%とし、マンガンの添加量を0.65at%とし、マグネシウムの添加量を1.5at%とした。チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比(A/B比)を1.100とした。
【0096】
(比較例2)
比較例2では、チタン酸ジルコン酸バリウム(BaTi(1-x)Zr)のxを0.02とした。希土類酸化物としてユーロピウムの酸化物を用い、チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対してユーロピウムの添加量を2at%とした。チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対して、ケイ素の添加量を1.5at%とし、マンガンの添加量を0.65at%とし、マグネシウムの添加量を1at%とした。チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比(A/B比)を1.000とした。
【0097】
(比較例3)
比較例3では、チタン酸ジルコン酸バリウム(BaTi(1-x)Zr)のxを0.14とした。希土類酸化物としてジスプロシウム(Dy)の酸化物を用い、チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対してジスプロシウムの添加量を2at%とした。チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対して、ケイ素の添加量を1.5at%とし、マンガンの添加量を0.65at%とし、マグネシウムの添加量を1at%とした。チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比(A/B比)を0.999とした。
【0098】
(比較例4)
比較例4では、チタン酸ジルコン酸バリウム(BaTi(1-x)Zr)のxを0.14とした。希土類酸化物としてジスプロシウムの酸化物を用い、チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対してジスプロシウムの添加量を2at%とした。チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対して、ケイ素の添加量を1.5at%とし、マンガンの添加量を0.65at%とし、マグネシウムの添加量を0at%とした。チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比(A/B比)を1.000とした。
【0099】
(比較例5)
比較例5では、チタン酸ジルコン酸バリウム(BaTi(1-x)Zr)のxを0.14とした。希土類酸化物としてガドリニウム(Gd)の酸化物を用い、チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対してガドリニウムの添加量を2at%とした。チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対して、ケイ素の添加量を1.5at%とし、マンガンの添加量を0.65at%とし、マグネシウムの添加量を1at%とした。チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比(A/B比)を1.001とした。
【0100】
(比較例6)
比較例6では、チタン酸ジルコン酸バリウム(BaTi(1-x)Zr)のxを0.14とした。希土類酸化物としてガドリニウムの酸化物を用い、チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対してガドリニウムの添加量を2at%とした。チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対して、ケイ素の添加量を1.5at%とし、マンガンの添加量を0.65at%とし、マグネシウムの添加量を0at%とした。チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比(A/B比)を1.001とした。
【0101】
(比較例7)
比較例7では、チタン酸ジルコン酸バリウム(BaTi(1-x)Zr)のxを0.14とした。希土類酸化物としてランタン(La)の酸化物を用い、チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対してランタンの添加量を2at%とした。チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対して、ケイ素の添加量を1.5at%とし、マンガンの添加量を0.65at%とし、マグネシウムの添加量を1at%とした。チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比(A/B比)を0.993とした。
【0102】
(比較例8)
比較例8では、チタン酸ジルコン酸バリウム(BaTi(1-x)Zr)のxを0.14とした。希土類酸化物としてランタンの酸化物を用い、チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対してランタンの添加量を2at%とした。チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対して、ケイ素の添加量を1.5at%とし、マンガンの添加量を0.65at%とし、マグネシウムの添加量を0at%とした。チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比(A/B比)を0.993とした。
【0103】
(比較例9)
比較例9では、チタン酸ジルコン酸バリウム(BaTi(1-x)Zr)のxを0.14とした。希土類酸化物としてホルミウム(Ho)の酸化物を用い、チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対してホルミウムの添加量を2at%とした。チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対して、ケイ素の添加量を1.5at%とし、マンガンの添加量を0.65at%とし、マグネシウムの添加量を1at%とした。チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比(A/B比)を1.000とした。
【0104】
(比較例10)
比較例10では、チタン酸ジルコン酸バリウム(BaTi(1-x)Zr)のxを0.14とした。希土類酸化物としてホルミウムの酸化物を用い、チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対してホルミウムの添加量を2at%とした。チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対して、ケイ素の添加量を1.5at%とし、マンガンの添加量を0.65at%とし、マグネシウムの添加量を0at%とした。チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比(A/B比)を1.000とした。
【0105】
(比較例11)
比較例11では、チタン酸ジルコン酸バリウム(BaTi(1-x)Zr)のxを0.14とした。希土類酸化物としてユーロピウムの酸化物を用い、チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対してユーロピウムの添加量を1at%とした。チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対して、ケイ素の添加量を1at%とし、マンガンの添加量を0.65at%とし、マグネシウムの添加量を1at%とした。チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比(A/B比)を1.000とした。
【0106】
実施例1~22および比較例1~11のそれぞれについて、バインダを加えて得られたスラリでセラミックグリーンシートを塗工し、ニッケルペーストで内部電極パターンを印刷し、積層し、1005形状にカットすることで、1005形状のセラミック積層体を作製した。セラミック積層体を、1230℃まで昇温速度:6000℃/hで昇温し、高速焼成を行った。焼成後の誘電体層の厚さは、2.0μmであった。平均粒径は、各実施例および比較例に含まれるチタンの量(x)、ケイ素、マグネシウムの添加量、およびA/B比によって調節された。チタンの量、ケイ素の添加量が大きい場合は平均粒径が大きく、マグネシウムの添加量、A/B比が大きい場合は平均粒径が小さくなる傾向がある。
【0107】
(平均粒径)
実施例1~22および比較例1~11のそれぞれについて、容量領域の誘電体層における誘電体結晶の平均粒径を測定した。積層方向に沿った面での断面のSEM像から誘電体結晶の平均粒径を測定した。実施例1の平均粒径は、390nmであった。実施例2の平均粒径は、400nmであった。実施例3の平均粒径は、360nmであった。実施例4の平均粒径は、340nmであった。実施例5の平均粒径は、350nmであった。実施例6の平均粒径は、290nmであった。実施例7の平均粒径は、330nmであった。実施例8の平均粒径は、320nmであった。実施例9の平均粒径は、320nmであった。実施例10の平均粒径は、340nmであった。実施例11の平均粒径は、350nmであった。実施例12の平均粒径は、240nmであった。実施例13の平均粒径は、280nmであった。実施例14の平均粒径は、260nmであった。実施例15の平均粒径は、260nmであった。実施例16の平均粒径は、280nmであった。実施例17の平均粒径は、350nmであった。実施例18の平均粒径は、320nmであった。実施例19の平均粒径は、320nmであった。実施例20の平均粒径は、340nmであった。実施例21の平均粒径は、330nmであった。実施例22の平均粒径は、380nmであった。比較例1の平均粒径は、450nmであった。比較例2の平均粒径は、300nmであった。比較例3の平均粒径は、270nmであった。比較例4の平均粒径は、480nmであった。比較例5の平均粒径は、320nmであった。比較例6の平均粒径は、500nmであった。比較例7の平均粒径は、320nmであった。比較例8の平均粒径は、450nmであった。比較例9の平均粒径は、320nmであった。比較例10の平均粒径は、460nmであった。比較例11の平均粒径は、350nmであった。
【0108】
(特性試験)
比誘電率は、1Vrms、1kHzの条件で測定した。誘電率の温度特性(TCC)は、0.2Vrms、1kHzの条件で、-55℃から125℃までの範囲で測定した。加速寿命は、140℃、50V/μmの高温高電界で10個のサンプルが全数故障するまで試験し、その平均時間を寿命値とした。
【0109】
X7T特性(-55℃~125℃の25℃を基準とする容量変化率が+22%~-33%)を満たす場合には、X7T特性が合格「〇」と判定し、満たさない場合には不合格「×」と判定した。寿命値が4000min以上であれば十分に長い寿命が得られていると判断し、寿命値が10000min以上であれば特に十分長い寿命が得られていると判断した。X7T特性に合格し、寿命値が4000min以上である場合に総合判定を良好「〇」とし、X7T特性に不合格したか、寿命値が4000min未満である場合に、総合判定を不良「×」とし、X7T特性に合格し、寿命値が10000min以上である場合に総合判定を非常に良好「◎」とした。結果を表2に示す。
【0110】
実施例1~15については、総合判定が良好「〇」または非常に良好「◎」と判定された、これは、容量領域の誘電体層が、チタン酸ジルコン酸バリウムを主成分とし、ジルコニウムをチタンおよびジルコニウムに対して4at%以上30at%以下含み、チタンおよびジルコニウムに対するバリウムの原子濃度比が1以上1.1以下である母材と、チタン酸ジルコン酸バリウムのチタンに対しユーロピウムを2at%以上4at%以下含む副成分とを含むからであると考えられる。
【0111】
これに対して、比較例1は、X7T特性を満たさなかった、これは、ジルコニウム量が多く、チタン酸ジルコン酸バリウムの拡散が進み、粒成長制御が難しくなったからであると考えられる。比較例2は、X7T特性を満たしたが、寿命値が短くなった。これは、ジルコニウム量が少なく、酸素欠陥が多く生成したからであると考えられる。
【0112】
なお、xが0.14以上である場合には、寿命値が10000min以上となった。したがって、xが0.14以上であることが好ましいことがわかる。実施例3~15と比較例1との比誘電率の結果から、比誘電率を高く維持するためには、xは0.20以下であることが好ましいことがわかる。
【0113】
実施例16~22の結果から、誘電体結晶の平均粒径が200nm以上400nm以下の範囲にあればX7T特性を満たし、10000min以上の寿命値が得られていることがわかる。
【0114】
比較例3~10の結果から、ユーロピウムの代わりに他の希土類を添加した条件では十分な寿命値が得られなかった。これに対して、実施例21,22の結果から、同じ量のユーロピウムを用いれば、十分な寿命値が得られることがわかる。
【0115】
比較例11では、十分な寿命値が得られなかった。これは、チタンに対するユーロピウム量が少なかったからであると考えられる。
【0116】
なお、図6は、実施例18の容量領域14の誘電体層11の断面のSEM画像の模式図である。図6に示すように、誘電体結晶の平均粒径が200nm以上400nm以下となって、異常粒成長が抑制されたことがわかる。図7は、実施例18の容量領域の誘電体層におけるTEM(Transmission Electron Microscope)像の模式図である。図7のように、焼成後の容量領域の誘電体層において、コア部31と、コア部31を覆うシェル部32とが確認された。
【表2】
【0117】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0118】
10 積層チップ
11 誘電体層
12 内部電極層
13 カバー層
14 容量領域
15 エンドマージン
16 サイドマージン
17 誘電体結晶
20a,20b 外部電極
100 積層セラミックコンデンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7