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特開2023-124スライドファスナ及びスライドファスナの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000124
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】スライドファスナ及びスライドファスナの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A44B 19/34 20060101AFI20221222BHJP
【FI】
A44B19/34
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100759
(22)【出願日】2021-06-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】598056526
【氏名又は名称】尾世 敏彦
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100204456
【弁理士】
【氏名又は名称】調 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】尾世 敏彦
【テーマコード(参考)】
3B098
【Fターム(参考)】
3B098DC21
3B098EC13
3B098FA13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ファスナテープを持ち替えることなく良好な閉塞動作を行うことが可能なスライドファスナ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】一方のファスナテープ2の一端側に設けられた箱体6にスライダ7を介して他方のファスナテープ3の一端側に設けられた蝶棒8を挿入し、スライダ7を操作者によってファスナテープ2,3の他端側に向けて移動させることにより、各ファスナテープ2,3の互いに対向する縁部にそれぞれ設けられた複数のファスナエレメント4,5を噛合させ、他方のファスナテープ3の一端側近傍には、ファスナテープ3よりも高硬度に形成され、操作時に操作者によって把持される硬化部14が設けられ、硬化部14はスライダ7の移動方向において蝶棒8の長さよりも長く形成され、硬化部14はファスナエレメント5との間に間隙部15を有するスライドファスナ1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方のファスナテープの一端側に設けられた箱体にスライダを介して他方のファスナテープの一端側に設けられた蝶棒を挿入し、前記スライダを操作者によって前記ファスナテープの他端側に向けて移動させることにより、前記各ファスナテープの互いに対向する縁部にそれぞれ設けられた複数のファスナエレメントを噛合させるスライドファスナにおいて、
前記他方のファスナテープの一端側近傍には、該ファスナテープよりも高硬度に形成され、操作時に前記操作者によって把持される硬化部が設けられ、
前記硬化部は前記スライダの移動方向において前記蝶棒の長さよりも長く形成され、
前記硬化部は前記ファスナエレメントとの間に間隙部を有するスライドファスナ。
【請求項2】
請求項1記載のスライドファスナにおいて、
前記硬化部は前記スライダの移動時に前記操作者による移動力が前記スライダに作用する位置と同等またはそれ以上の位置まで設けられていることを特徴とするスライドファスナ。
【請求項3】
請求項1または2記載のスライドファスナにおいて、
前記硬化部は前記操作者に把持位置を教示する目印部を有することを特徴とするスライドファスナ。
【請求項4】
請求項3記載のスライドファスナにおいて、
前記目印部は凹部及び/または突起部であることを特徴とするスライドファスナ。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一つに記載のスライドファスナにおいて、
前記他方のファスナテープは剛性を向上させる補強部を有し、前記硬化部は前記補強部とは別に形成されていることを特徴とするスライドファスナ。
【請求項6】
請求項1ないし4の何れか一つに記載のスライドファスナにおいて、
前記他方のファスナテープは剛性を向上させる補強部を有し、前記硬化部は前記補強部によって形成されていることを特徴とするスライドファスナ。
【請求項7】
請求項1ないし5の何れか一つに記載のスライドファスナの製造方法において、
前記他方のファスナテープに前記補強部が設けられた後、前記補強部上に前記蝶棒及び前記硬化部が設けられることを特徴とするスライドファスナの製造方法。
【請求項8】
請求項1,2,3,4,6記載のスライドファスナの製造方法において、
前記他方のファスナテープに前記硬化部が設けられた後、前記硬化部上に前記蝶棒が設けられることを特徴とするスライドファスナの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライドファスナ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衣類やバッグ等の製品に用いられているスライドファスナは、それぞれが製品の生地に固定された一対のファスナテープの、互いに対向する縁部にそれぞれ設けられた複数のファスナエレメントを、互いに噛合させたり離間させたりすることによって開閉される。各ファスナテープは、一方のファスナテープの下端に設けられた箱体に対して、スライダを介して他方のファスナテープの下端に設けられた蝶棒を嵌合させ、嵌合後にスライダを上方に引き上げることによって互いに接合され、この状態からスライダを下方に引き下げることによって互いに離間される。
このような箱体や蝶棒をファスナテープに固定する際に、ファスナテープに設けられた補強部に箱体や蝶棒を固定することにより、箱体や蝶棒の形態を安定化させる技術が知られている(例えば「特許文献1」参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-283299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
各ファスナテープを閉塞する場合に、操作者は一方のファスナテープに設けられた箱体に対して他方のファスナテープに設けられた蝶棒を嵌合させるが、このとき操作者は他方の手で他方のファスナテープを掴む必要がある。この他方のファスナテープを掴む場合において、蝶棒の下端近傍はたいへん狭い部分で掴みにくく、操作者はたいていファスナテープの蝶棒よりも上方の部位を掴む。そして操作者は、蝶棒を箱体に嵌合させた状態でスライダを一方の手で上方に向けて移動させるが、この状態、すなわち操作者が他方の手で他方のファスナテープの蝶棒よりも上方の部位を掴んだ状態では、掴む場所によってはスライダの移動時にファスナテープが折れ曲がるように変形し、スライダを上方に移動させることができなかったりファスナテープの生地がスライダに噛み込まれたりするという問題点があった。
この問題点は、蝶棒を箱体に嵌合させた後に他方のファスナテープの位置を持ち替え、蝶棒を箱体に嵌合させるときよりも下方の位置を掴むことにより解決するが、他方のファスナテープの位置を持ち替えることは煩わしい。
本発明は、ファスナテープを持ち替えることなく良好な閉塞動作を行うことが可能なスライドファスナ及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、一方のファスナテープの一端側に設けられた箱体にスライダを介して他方のファスナテープの一端側に設けられた蝶棒を挿入し、前記スライダを操作者によって前記ファスナテープの他端側に向けて移動させることにより、前記各ファスナテープの互いに対向する縁部にそれぞれ設けられた複数のファスナエレメントを噛合させるスライドファスナにおいて、前記他方のファスナテープの一端側近傍には、該ファスナテープよりも高硬度に形成され、操作時に前記操作者によって把持される硬化部が設けられ、前記硬化部は前記スライダの移動方向において前記蝶棒の長さよりも長く形成され、前記硬化部は前記ファスナエレメントとの間に間隙部を有することを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のスライドファスナにおいて、さらに前記硬化部は前記スライダの移動時に前記操作者による移動力が前記スライダに作用する位置と同等またはそれ以上の位置まで設けられていることを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のスライドファスナにおいて、さらに前記硬化部は前記操作者に把持位置を教示する目印部を有することを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項3記載のスライドファスナにおいて、さらに前記目印部は凹部及び/または突起部であることを特徴とする。
【0009】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4の何れか一つに記載のスライドファスナにおいて、さらに前記他方のファスナテープは剛性を向上させる補強部を有し、前記硬化部は前記補強部とは別に形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし4の何れか一つに記載のスライドファスナにおいて、さらに前記他方のファスナテープは剛性を向上させる補強部を有し、前記硬化部は前記補強部によって形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項7記載の発明は、請求項1ないし5の何れか一つに記載のスライドファスナの製造方法において、さらに前記他方のファスナテープに前記補強部が設けられた後、前記補強部上に前記蝶棒及び前記硬化部が設けられることを特徴とする。
【0012】
請求項8記載の発明は、請求項1,2,3,4,6記載のスライドファスナの製造方法において、さらに前記他方のファスナテープに前記硬化部が設けられた後、前記硬化部上に前記蝶棒が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、操作者がスライダを上方へと移動させる際に、強度が低い他方のファスナテープが露出している部位を硬化部が覆う。これにより、スライダの移動時において他方のファスナテープが変形することが防止され、スライダの移動性が向上して操作者は所定の位置で他方のファスナテープを把持したままの状態でスライダを移動させることができ、他方のファスナテープを持ち替えることなく良好な閉塞動作を行うことが可能なスライドファスナを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施形態に係るスライドファスナの離間状態を示す概略図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係るスライドファスナの準噛合状態を示す概略図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係るスライドファスナの噛合状態を示す概略図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係るスライドファスナを説明する概略図である。
図5】本発明の第3の実施形態に係るスライドファスナを説明する概略図である。
図6】本発明の第4の実施形態に係るスライドファスナを説明する概略図である。
図7】本発明の第5の実施形態に用いられる目印部を第1の実施形態に係るスライドファスナに適用した例を説明する概略図である。
図8】本発明の第5の実施形態に用いられる目印部を第2の実施形態に係るスライドファスナに適用した例を説明する概略図である。
図9】本発明の第5の実施形態に用いられる目印部を第3の実施形態に係るスライドファスナに適用した例を説明する概略図である。
図10】本発明の第5の実施形態に用いられる目印部を第4の実施形態に係るスライドファスナに適用した例を説明する概略図である。
図11】本発明の第6の実施形態に用いられる目印部を第1の実施形態に係るスライドファスナに適用した例を説明する概略図である。
図12】本発明の第6の実施形態に用いられる目印部を第2の実施形態に係るスライドファスナに適用した例を説明する概略図である。
図13】本発明の第6の実施形態の変形例に用いられる目印部を説明する概略図である。
図14】本発明の第6の実施形態の他の変形例に用いられる目印部を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るスライドファスナを示している。同図においてスライドファスナ1は、一方のファスナテープとしてのファスナテープ2と、他方のファスナテープとしてのファスナテープ3と、ファスナテープ2の側縁部に取り付けられた複数のファスナエレメント4と、ファスナテープ3の側縁部に各ファスナエレメント4と対向するように取り付けられた複数のファスナエレメント5とを有している。各ファスナエレメント4,5はそれぞれ所定の間隔を保って配置されており、各ファスナエレメント4の間に各ファスナエレメント5が噛合可能に構成されている。
さらにスライドファスナ1は、ファスナエレメント4の一端側である下端に後述する箱棒を介して取り付けられた箱体6と、箱体6の上方に設けられたスライダ7と、ファスナエレメント5の一端側である下端に取り付けられた蝶棒8とを有している。箱体6は、図3において、ファスナエレメント4の下端に取り付けられた箱棒9に固定されている。
【0016】
箱体6及び箱棒9はファスナテープ2の下端近傍に設けられた補強部10に取り付けられており、蝶棒8はファスナテープ3の下端近傍に設けられた補強部11に取り付けられている。各補強部10,11は同様に構成されており、具体的には、各ファスナテープ2,3の下端部に、各ファスナテープ2,3に対して剛性を与えるための補強用テープを、接着用フィルムを挟んで加熱加圧加工によって溶着することにより形成されている。
なお各補強部10,11としては、接着フィルム付きのタフタを超音波ウェルダや高周波ウェルダ等の適宜の方法によって各ファスナテープ2,3の下端部に溶着させることにより形成する等の、他の構成であってもよい。各ファスナテープ2,3に各補強部10,11を設けることにより、各ファスナテープ2,3に対する箱体6及び箱棒9及び蝶棒8の取付強度が向上し、箱体や蝶棒の形態が安定化して操作性が向上する。
【0017】
スライドファスナ1は、各ファスナエレメント4,5を互いに噛合したり離間したりする操作時において、各ファスナテープ2,3が互いに離間した図1に示す初期状態である離間状態から、先ずスライドファスナ1の操作者によってファスナテープ3の所定の位置が把持される。この所定の位置は、上述したようにファスナテープ3の下端部近傍が掴みにくいことから、蝶棒8及び補強部11よりも上方の位置が相当する。次に、操作者によってスライダ7に設けられた導入部7aを介して蝶棒8を箱体6に挿入させることにより、スライドファスナ1は各ファスナテープ2,3がそれぞれの端部を接合させた図2に示す準噛合状態となる。準噛合状態では、各ファスナエレメント4,5は互いに噛合しておらず、各ファスナテープ2,3は箱体6と蝶棒8との係合により一体化されているのみであり、箱体6から蝶棒8が離脱することにより準噛合状態は簡単に解除される。
【0018】
準噛合状態から、操作者の他方の手によってファスナテープ3の所定の位置が把持され、この状態でスライダ7に取り付けられた引き手7bを操作者の一方の手によって図2において上方へと移動させることにより、スライドファスナ1は各ファスナテープ2,3の各ファスナエレメント4,5が互いに噛合する図3に示す噛合状態となる。そして、スライダ7が操作者によって所定の位置まで移動されると、スライドファスナ1は各ファスナエレメント4,5が完全に噛合された完全噛合状態となる。
スライドファスナ1を離間状態から準噛合状態へと移行させる際に、ファスナテープ3を把持し易くなることから操作者はファスナテープ3の上述した所定の位置を把持しようとする。図1ないし図3において所定の位置を符号12で示す。操作者は、ファスナテープ3の補強部11及び蝶棒8よりも上方に位置する所定の位置12を把持したまま、準噛合状態から噛合状態へと移行しようとする。
【0019】
このとき、上下方向における補強部11の形成長さが短いことから、操作者がスライダ7を移動させるときに、強度が低いファスナテープ3が露出している部位をスライダ7が通過する際にファスナテープ3が折れ曲がるように変形し、スライダ7が左右に移動してスライダ7を移動させにくくなったりスライダ7にファスナテープ3が噛み込んだりすることがあった。
この問題点を解消するには、ファスナテープ3の把持位置を所定の位置12よりも下方の位置へと持ち替え、強度が低いファスナテープ3の部位を把持せず、強度が高い補強部11を把持してファスナテープ3の折れ曲がりを防止してスライダ7の移動性を向上させる必要がある。しかしながら、最初に一度把持したファスナテープ3を所定の位置12から下方へと持ち替えることは煩わしい。
【0020】
上述した、ファスナテープ3の把持位置を持ち替えることなく、スライダ7を容易に移動させることが可能な構成を、本発明の第1の実施形態として以下に説明する。
図1に示すようにファスナテープ3には、ファスナテープ3よりも高硬度に形成された硬化部14が設けられている。本実施形態において硬化部14は、ある程度の強度を有する樹脂板によって形成されている。
ここで、硬化部14はファスナテープ3の片面側にのみ設けられていても両面に亘って設けられていてもよい。硬化部14としては、硬化部14の形成後にファスナテープ3を衣服等の製品の生地に縫製する必要があることから、縫製時に縫製針が貫通可能となるように構成されている。
【0021】
硬化部14は、図1ないし図3に示すように、その下端側は補強部11の下端と同じ位置に、上端側は補強部11の上端よりも上方に位置するように形成されており、スライダ7の移動方向である上下方向において蝶棒8の長さよりも長くなるように形成されている。硬化部14は、本実施形態では蝶棒8との間に僅かな隙間が形成されるように設けられているが、蝶棒8を導入部7aを介して箱体6に挿入させる際に干渉しないのであれば、できる限り蝶棒8に近接させて設けることが強度上望ましい。
【0022】
また硬化部14は、ファスナエレメント5との間に間隙部15が設けられている。強度面を考慮すると、硬化部14をファスナエレメント5にできるだけ近接して設けることが望ましい。しかし、間隙部15を有していないと準噛合状態から噛合状態への移行時にスライダ7が上方へと移動する際に、硬化部14によってファスナエレメント5の移動が大幅に規制されることによりスライダ7の移動性が低減し、スライダ7の操作性が悪化してしまう。間隙部15を有することにより、スライダ7の移動時にファスナエレメント5の移動が許容され、スライダ7の操作性を良好に保つことができる。
【0023】
上述した第1の実施形態によれば、他方のファスナテープであるファスナテープ3の一端側近傍である下端近傍にはファスナテープ3よりも高硬度に形成され操作者によって把持される硬化部14が設けられ、硬化部14は上下方向において蝶棒8よりも長く形成されると共に、ファスナエレメント5との間に間隙部15を有している。
この構成により、準噛合状態から噛合状態へと移行させるべく、操作者が他方の手でファスナテープ3を把持しつつ一方の手で引き手7bを把持してスライダ7を上方へと移動させる際に、強度が低いファスナテープ3が露出している部位をファスナテープ3よりも高硬度の硬化部14が覆う。これにより、スライダ7の移動時においてファスナテープ3が変形することが防止され、スライダ7の移動性が向上して操作者は所定の位置12でファスナテープ3を把持したままの状態でスライダ7を移動させることができ、ファスナテープ3を持ち替えることなく良好な閉塞動作を行うことが可能なスライドファスナ1を提供できる。
【0024】
また第1の実施形態において、硬化部14は図2に示すように、スライダ7の移動時に操作者による移動力がスライダ7に作用する位置である力作用位置13よりも上方の位置まで設けられており、力作用位置13と上下方向においてほぼ同じ位置である硬化部14上の位置に所定の位置12を形成することができる。
この構成により、離間状態から準噛合状態への移行を、操作者は硬化部14上に設けられた所定の位置12を把持して行うことができる。そして、準噛合状態から噛合状態への移行を、操作者は所定の位置12を把持したままの状態で行うことにより、スライダ7の移動時にスライダ7に作用するモーメントを小さくできる。このため、操作者は所定の位置12でファスナテープ3を把持したままの状態でスライダ7を少ない移動力で移動させることができ、ファスナテープ3を持ち替えることなく良好な閉塞動作を行うことが可能なスライドファスナ1を提供できる。
【0025】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る硬化部17を備えたスライドファスナ18を示している。硬化部17は硬化部14と同じ材質で構成されており、硬化部14よりも上端の位置が上方に位置するように、硬化部14よりも上下方向に長く形成されている。スライドファスナ18は、硬化部17を除く他の部位は間隙部15を有する点も含めてスライドファスナ1と同様に構成されている。
この構成により、第1の実施形態と同様の作用効果を奏すると共に、スライダ7の移動時に強度が低いファスナテープ3が露出している部位を覆う範囲が硬化部14よりも大きくなり、スライダ7の直進安定性を向上することができる。
また、スライダ7が大型化する等して力作用位置13が上方に移動した場合であっても硬化部17上に所定の位置12を設定することができ、力作用位置13の移動に対応したスライドファスナ18を提供することができる。
【0026】
図5は、本発明の第3の実施形態に係る硬化部19を備えたスライドファスナ20を示している。硬化部19は補強部11と同じ材質で構成されており、補強部11よりも上端の位置が上方に位置するように、補強部11よりも上下方向に長く、硬化部14と同じ大きさとなるように形成されている。また、スライドファスナ20は補強部11を有しておらず、硬化部19が補強部11を兼用している。スライドファスナ20は、硬化部19を用いる点と補強部11を有していない点を除いて、スライドファスナ1と同様に構成されている。
この構成により、第1の実施形態と同様の作用効果を奏すると共に、硬化部19が補強部11を兼用することから硬化部と補強部とを別々に設ける必要がなくなり、部品点数を低減してコストダウンを図ることができる。
【0027】
図6は、本発明の第4の実施形態に係る硬化部21を備えたスライドファスナ22を示している。硬化部21は硬化部19と同じ材質で構成されており、硬化部19よりも上端の位置が上方に位置するように、硬化部19よりも上下方向に長く、硬化部17と同じ大きさとなるように形成されている。また、スライドファスナ22は補強部11を有しておらず、硬化部21が補強部11を兼用している。スライドファスナ22は、硬化部21を除く他の部位はスライドファスナ20と同様に構成されている。
この構成により、第1の実施形態と同様の作用効果を奏すると共に、硬化部21が補強部11を兼用することから硬化部と補強部とを別々に設ける必要がなくなり、部品点数を低減してコストダウンを図ることができる。
また、スライダ7の移動時に強度が低いファスナテープ3が露出している部位を覆う範囲が硬化部19よりも大きくなり、スライダ7の直進安定性を向上することができる。さらに、スライダ7が大型化する等して力作用位置13が上方に移動した場合であっても所定の位置12を設定することができ、力作用位置13の移動に対応したスライドファスナ22を提供することができる。
【0028】
第1ないし第4の実施形態で示したスライドファスナ1,18,20,22は、それぞれ他方のファスナテープであるファスナテープ3に硬化部14,17,19,21を有しており、離間状態から準噛合状態及び噛合状態へのスライドファスナ1の操作を、硬化部14,17,19,21上に設けられた所定の位置12を把持して実施可能であることを説明した。
ここで、スライドファスナを操作する操作者は、離間状態から準噛合状態へと移行する際にファスナテープ3の下端部近傍が掴みにくいことから、自然と所定の位置12近傍の位置を把持することとなる。この把持時において、操作者が常に所定の位置12を把持すればその都度同様の操作性が得られることから、スライドファスナの操作性を考慮すると操作者が常に所定の位置12を把持することが好ましい。そこで、操作者に所定の位置12を教示する目印部を備えた構成を以下に説明する。
【0029】
図7は、本発明の第5の実施形態に係る突起部23を備えたスライドファスナ24を示している。スライドファスナ24は、硬化部14上の所定の位置12に相当する部位に目印部としての突起部23を有しており、突起部23を除く他の部位はスライドファスナ1と同様に構成されている。
突起部23は、金属や硬質樹脂等の変形及び摩耗しにくい材質によって形成されており、硬化部14の所定の位置12に対して接着や溶着等の方法によって固着されている。突起部23としては、樹脂板からなる硬化部14を成形する際に硬化部14と一体成形する構成としてもよい。
この構成により、操作者はスライドファスナ24における離間状態から準噛合状態及び噛合状態を介して完全噛合状態に至る一連の動作を、突起部23を目印として最初にファスナテープ3の所定の位置12を把持することにより、ファスナテープ3の把持位置を持ち替えることなくスムーズに行うことができる。これにより、操作者に対してファスナテープ3の把持位置を突起部23が教示することで操作者は常時安定した操作性を得ることができ、より一層操作性を向上することが可能なスライドファスナ24を提供することができる。
また、暗がり等の手元が見えにくい環境であっても、操作者は触覚によってファスナテープ3の把持位置を確認することができ、視覚に頼ることなく上述した作用効果を得ることができる。
【0030】
図8は、硬化部17上の所定の位置12に相当する部位に目印部としての突起部23を有し、突起部23を除く他の部位はスライドファスナ18と同様に構成されたスライドファスナ25を示している。図9は、硬化部19上の所定の位置12に相当する部位に目印部としての突起部23を有し、突起部23を除く他の部位はスライドファスナ20と同様に構成されたスライドファスナ26を示している。図10は、硬化部21上の所定の位置12に相当する部位に目印部としての突起部23を有し、突起部23を除く他の部位はスライドファスナ22と同様に構成されたスライドファスナ27を示している。
各スライドファスナ25,26,27においても、スライドファスナ24と同様の作用効果を得ることができる。なお、各スライドファスナ24,25,26,27において、突起部23はそれぞれ誇張して図示しているが、突起部23の大きさは操作者の触覚により位置が確認可能である大きさであればよい。
【0031】
図11は、本発明の第6の実施形態に係る凹部28を備えたスライドファスナ29を示している。スライドファスナ29は、硬化部14上の所定の位置12に相当する部位に目印部としての凹部28を有しており、凹部28を除く他の部位はスライドファスナ1と同様に構成されている。
凹部28は、操作者の指により把持し易いように上下方向における中央部が最も凹むように形成されており、樹脂板からなる硬化部14を切削加工や研磨加工によって凹ませることによって形成されている。
この構成により、第5の実施形態で示したスライドファスナ24と同様の作用効果を得ることができる。
【0032】
図12は、硬化部17上の所定の位置12に相当する部位に目印部としての凹部28を有し、凹部28を除く他の部位はスライドファスナ18と同様に構成されたスライドファスナ30を示している。
この構成により、第5の実施形態で示したスライドファスナ25と同様の作用効果を得ることができる。
上述したスライドファスナ20,22は共に硬化部19,21を有し、硬化部19,21はファスナテープ3に補強用テープやタフタを溶着等によって固定した構成であるため、凹部28を形成するに十分な厚みを有していない場合がある。従って、硬化部19,21が十分な厚みを有していて凹部28の形成が可能であれば、スライドファスナ20,22にも第6の実施形態で示した凹部28を適用することができる。
【0033】
図13は、本発明の第6の実施形態の変形例を示している。この変形例は、例えばスライドファスナ29と比較すると、凹部28に代えて目印部としての凹部31を用いる点においてのみ相違しており、他の構成は同一である。
凹部31は、上下方向における中央部が最も凹むように形成されており、この中央部から上端部に向けて同じ深さで凹むように形成されている。凹部31は凹部28と同様に、硬化部14を切削加工や研磨加工によって凹ませることによって形成されている。
この構成によっても、第6の実施形態と同様の作用効果を得ることができると共に、加工が容易化されコストダウンを図ることができる。
【0034】
図14は、本発明の第6の実施形態の他の変形例を示している。この変形例は、例えばスライドファスナ29と比較すると、凹部28の中央である第2の位置16に突起部23を設け、目印部として凹部28と突起部23とを併用する点においてのみ相違しており、他の構成は同一である。
この構成によっても、第6の実施形態と同様の作用効果を得ることができると共に、経年変化によって凹部28または突起部23の何れか一方が摩耗して機能しなくなったとしても、残りの他方が目印部として機能するので第6の実施形態と同様の作用効果を長期間に亘って得ることができる。
【0035】
次に、上述したスライドファスナ1,18,20,22,24,25,26,27,29,30の製造方法について説明する
スライドファスナ1,18,24,25,29,30は、補強部11と硬化部14,17とを有しているため、その製造方法としてはファスナテープ3上に補強部11を形成した後、補強部11上に蝶棒8が形成され、その後、補強部11上に硬化部14または硬化部17が形成される。
この製造方法により、所定の安全な強度を有すると共に操作性が向上するスライドファスナ1,18,24,25,29,30を製造することができる。また、硬化部14,17が補強部11とは別に形成されているので、硬化部14,17として加工のバリエーションが広がり、様々な形態の硬化部14,17を構成することができる。さらに、生地に縫製されたファスナテープ3に対して後付けで硬化部14,17を取り付けることができ、硬化部14,17として縫製針が貫通する性質を要求されないため、硬化部14,17として強度が高く破損や変形がし難い金属や高強度樹脂等の材質を用いることができる。
【0036】
一方、スライドファスナ20,22,26,27は、硬化部19,21が補強部を兼用する構成であるため、その製造方法としてはファスナテープ3上に硬化部19または硬化部21を形成した後、硬化部19または硬化部21上に蝶棒8が形成される。
この製造方法により、所定の安全な強度を有すると共に操作性が向上するスライドファスナ20,22,26,27を製造することができる。また、硬化部19,21が補強部を兼用しているため、硬化部19,21の他に補強部を形成する必要がなく、コストダウンを図ることができると共に生産性を向上することができる。
【0037】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を例示したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0038】
1,18,20,22,24,25,26,27,29,30 スライドファスナ
2 一方のファスナテープ(ファスナテープ)
3 他方のファスナテープ(ファスナテープ)
4,5 ファスナエレメント
6 箱体
7 スライダ
8 蝶棒
10,11 補強部
13 移動力がスライダに作用する位置(力作用位置)
14,17,19,21 硬化部
15 間隙部
23 目印部(突起部)
28,31 目印部(凹部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2021-09-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
請求項1記載の発明は、一方のファスナテープの一端側に設けられた箱体にスライダを介して他方のファスナテープの一端側に設けられた蝶棒を挿入し、前記スライダを操作者によって前記ファスナテープの他端側に向けて移動させることにより、前記各ファスナテープの互いに対向する縁部にそれぞれ設けられた複数のファスナエレメントを噛合させるスライドファスナにおいて、前記他方のファスナテープの一端側近傍には、該ファスナテープよりも高硬度に形成され、操作時に前記操作者によって把持される硬化部が設けられ、前記硬化部は前記スライダの移動方向において前記蝶棒の長さよりも長く形成され、前記硬化部は前記ファスナエレメントとの間に間隙部を有し、前記硬化部は、前記蝶棒よりも上方である所定の位置に、触覚により前記操作者に把持位置を教示する目印部を有することを特徴とする。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のスライドファスナにおいて、さらに前記目印部は凹部及び/または突起部であることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3の何れか一つに記載のスライドファスナにおいて、さらに前記他方のファスナテープは剛性を向上させる補強部を有し、前記硬化部は前記補強部とは別に形成されていることを特徴とする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
請求項5記載の発明は、請求項1ないしの何れか一つに記載のスライドファスナにおいて、さらに前記他方のファスナテープは剛性を向上させる補強部を有し、前記硬化部は前記補強部によって形成されていることを特徴とする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
請求項6記載の発明は、請求項記載のスライドファスナの製造方法において、さらに前記他方のファスナテープに前記補強部が設けられた後、前記補強部上に前記蝶棒及び前記硬化部が設けられることを特徴とする。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
請求項7記載の発明は、請求項記載のスライドファスナの製造方法において、さらに前記他方のファスナテープに前記硬化部が設けられた後、前記硬化部上に前記蝶棒が設けられることを特徴とする。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正8】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方のファスナテープの一端側に設けられた箱体にスライダを介して他方のファスナテープの一端側に設けられた蝶棒を挿入し、前記スライダを操作者によって前記ファスナテープの他端側に向けて移動させることにより、前記各ファスナテープの互いに対向する縁部にそれぞれ設けられた複数のファスナエレメントを噛合させるスライドファスナにおいて、
前記他方のファスナテープの一端側近傍には、該ファスナテープよりも高硬度に形成され、操作時に前記操作者によって把持される硬化部が設けられ、
前記硬化部は前記スライダの移動方向において前記蝶棒の長さよりも長く形成され、
前記硬化部は前記ファスナエレメントとの間に間隙部を有し、
前記硬化部は、前記蝶棒よりも上方である所定の位置に、触覚により前記操作者に把持位置を教示する目印部を有するスライドファスナ。
【請求項2】
請求項1記載のスライドファスナにおいて、
前記硬化部は前記スライダの移動時に前記操作者による移動力が前記スライダに作用する位置と同等またはそれ以上の位置まで設けられていることを特徴とするスライドファスナ。
【請求項3】
請求項1または2記載のスライドファスナにおいて、
前記目印部は凹部及び/または突起部であることを特徴とするスライドファスナ。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一つに記載のスライドファスナにおいて、
前記他方のファスナテープは剛性を向上させる補強部を有し、前記硬化部は前記補強部とは別に形成されていることを特徴とするスライドファスナ。
【請求項5】
請求項1ないしの何れか一つに記載のスライドファスナにおいて、
前記他方のファスナテープは剛性を向上させる補強部を有し、前記硬化部は前記補強部によって形成されていることを特徴とするスライドファスナ。
【請求項6】
請求項記載のスライドファスナの製造方法において、
前記他方のファスナテープに前記補強部が設けられた後、前記補強部上に前記蝶棒及び前記硬化部が設けられることを特徴とするスライドファスナの製造方法
【請求項7】
請求項記載のスライドファスナの製造方法において、
前記他方のファスナテープに前記硬化部が設けられた後、前記硬化部上に前記蝶棒が設けられることを特徴とするスライドファスナの製造方法。