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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124004
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】ヒートシールド
(51)【国際特許分類】
   H01J 1/26 20060101AFI20230830BHJP
   F03H 1/00 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
H01J1/26
F03H1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027529
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(71)【出願人】
【識別番号】500302552
【氏名又は名称】株式会社IHIエアロスペース
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 朋晃
(72)【発明者】
【氏名】袖子田 竜也
(72)【発明者】
【氏名】橋場 道太郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 彦
(57)【要約】
【課題】加熱時のカソードの温度分布を評価するための温度計測が可能なヒートシールドを提供する。
【解決手段】ヒートシールド10は、軸方向に延伸するカソード20の外周を囲むと共に軸方向に延伸し、断熱性を有する円筒部11を備え、円筒部11の周面のうち、軸方向においてカソードと重なる領域Rにスリット13Aが形成され、スリット13Aは、カソード20に向けて円筒部11を貫通すると共に所定の方向に延伸している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延伸するカソードの外周を囲むと共に前記軸方向に延伸し、断熱性を有する円筒部を備え、
前記円筒部の周面のうち、前記軸方向において前記カソードと重なる領域にスリットが形成され、
前記スリットは、前記カソードに向けて前記円筒部を貫通すると共に所定の方向に延伸している、
ヒートシールド。
【請求項2】
前記円筒部は、
前記円筒部の径方向に積層され、前記カソードの前記外周の囲む複数の金属板
を含む
請求項1に記載のヒートシールド。
【請求項3】
各前記金属板はその厚さ方向に突出する複数の突部を有する
請求項2に記載のヒートシールド。
【請求項4】
前記円筒部は、
前記径方向に間隔を置いて設けられると共にその間に前記複数の金属板を収容する一対の収容板と、
前記一対の収容板の縁部に沿って間隔を置いて設けられ、前記一対の収容板を連結する複数の連結片と
を含む
請求項3に記載のヒートシールド。
【請求項5】
前記スリットは前記円筒部の前記軸方向に延伸している
請求項1~4のうちの何れか一項に記載のヒートシールド。
【請求項6】
前記スリットは前記円筒部の周方向に延伸している
請求項1~4のうちの何れか一項に記載のヒートシールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カソードの温度分布を評価するために使用されるヒートシールドに関する。
【背景技術】
【0002】
宇宙機に搭載される静電加速型推進器は電気推進器の一種であり、プラズマ中のイオンを電気的に排出することで推力を得ている。静電加速型推進器は、電子衝突によって供給ガスの高温プラズマを発生すると共に、当該プラズマ中のイオンを電界によって加速させることによって推力を得ている。また、静電加速型推進器の帯電を抑制するため、放出されたイオンビームは電子ビームによって中和される。電子源には一般的に大電流が得られるホローカソードが使用されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-016795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のホローカソードには、高密度且つ大電流の電子放出が求められる。また、動作中の安定性も求められる。このため、カソードの材料として仕事関数が低く、構造的に安定な六ホウ化ランタン(LaB6)等の化合物が使用されることが多い。しかしながら、一般的に電子放出率は温度に敏感であるため、所望の電流量及び電流密度を得るためには、加熱時のカソードの温度分布を計測し、その結果からカソード及びヒータの各性能を評価する必要がある。
【0005】
本開示は上述の事情を鑑みて成されたものであり、加熱時のカソードの温度分布を評価するための温度計測が可能なヒートシールドの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るヒートシールドは、軸方向に延伸するカソードの外周を囲むと共に前記軸方向に延伸し、断熱性を有する円筒部を備え、前記円筒部の周面のうち、前記軸方向において前記カソードと重なる領域にスリットが形成され、前記スリットは、前記カソードに向けて前記円筒部を貫通すると共に所定の方向に延伸している。
【0007】
前記円筒部は、前記円筒部の前記径方向に積層され、前記カソードの前記外周の囲む複数の金属板を含んでもよい。各前記金属板はその厚さ方向に突出する複数の突部を有してもよい。前記円筒部は、前記径方向に間隔を置いて設けられると共にその間に前記複数の金属板を収容する一対の収容板と、前記一対の収容板の縁部に沿って間隔を置いて設けられ、前記一対の収容板を連結する複数の連結片とを含んでもよい。前記スリットは、前記円筒部の前記軸方向に延伸してもよい。前記スリットは、前記円筒部の周方向に延伸してもよい。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、加熱時のカソードの温度分布を評価するための温度計測が可能なヒートシールドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態に係るヒートシールドの斜視図である。
図2】計測対象であるカソードの一例の断面図である。
図3】ヒータの一例を示す図であり、(a)はヒータの正面図、(b)は(a)においてA方向から見たヒータの側面図、(c)は(a)においてB方向から見たヒータの側面図である。
図4】ヒートシールドの構成図であり、(a)はヒートシールドの側面図、(b)はヒートシールドの正面図、(c)は(b)中のC-C断面図である。
図5】金属板の積層状態を示す断面図である。
図6】ヒートシールドを使用して温度計測を行っている状態を示す図である。
図7】本開示の実施形態に係るスリットの変形例を示す図であり、(a)は変形例に係るスリットを有するヒートシールドの側面図、(b)は(a)中のD-D断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の幾つかの実施形態に係るヒートシールド10について説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。以下、説明の便宜上、ヒートシールド10全体の基準軸としてZ軸を定義し、その延伸方向を軸方向ADと称する。軸方向ADは後述するヒートシールド10の円筒部11及びカソード20の延伸方向(軸方向)でもある。更に、Z軸を基準として周方向CDと径方向RDを定義する。
【0011】
図1は、本実施形態に係るヒートシールド10の斜視図である。説明の便宜上、図1において左斜め前側を「前」、右斜め奥側を「後」と定義する。図1に示すように、カソード20のインサート(エミッタ)21は、支持体22に装着された状態でZ軸上に位置している。ヒータ30は、このカソード20の外周を囲むように設置され、カソード20を加熱する。ヒートシールド10は、これらカソード20とヒータ30の各外周を囲むように、カソード20とヒータ30を覆う。カソード20、ヒータ30、及びヒートシールド10は、例えば、基板(図示せず)又は当該基板上の電流導入端子(図示せず)に支持されている。
【0012】
本実施形態に係るヒートシールド10は、静電加速型推進器及び電磁加速器等のイオンエンジンの電子源に取り付けられるヒートシールドの模擬体である。ヒートシールド10は、当該ヒートシールド10内で発生した輻射熱を遮蔽する。輻射熱の発生源は、カソード20を加熱するヒータ30(図1及び図3参照)、及びヒータ30によって加熱されたカソード20である。ただし、ヒータ30が設けられない場合もある。この場合、カソード20は、その前方に設けられたキーパ電極(図示せず)との間の放電に起因して持続的に発生する高温プラズマによって加熱される。従って、輻射熱の発生源はカソード20及び高温プラズマとなる。
【0013】
本実施形態に係るヒートシールド10は、カソード20の温度分布を評価するための温度計測に使用される。温度計測は、少なくともインサート21が位置するカソード20の部分に対するサーモグラフィ、放射温度計、パイロメータ等の非接触の温度計測器40(図6参照)によって遂行され、その一次元の温度分布を得る。なお、カソード20がヒータ30(図1及び図3参照)によって加熱される場合、取得された温度分布からヒータ30の性能評価を行うことも可能である。
【0014】
まず、評価対象であるカソード20及びヒータ30について説明する。
図2は、カソード20の一例を示す断面図である。図3はヒータ30の一例を示す図であり、(a)はヒータ30の正面図、(b)は(a)においてA方向から見たヒータ30の側面図、(c)は(a)においてB方向から見たヒータ30の側面図である。
【0015】
カソード20は、少なくとも、熱陰極であるインサート(エミッタ)21と、インサート21を支持する支持体22(以下インサート支持体と称する)とを備える。インサート21はZ軸を中心として軸方向ADに延伸する円筒形状を有し、その内部にZ軸を中心軸とする穴が貫通している。即ち、このインサート21は所謂ホローカソードである。インサート21は、六ホウ化ランタン(LaB6)又は酸化バリウム(BaO)等の電子放出材料によって形成されている。
【0016】
インサート21はインサート支持体22の前端22aに装着される。インサート支持体22は、モリブデン等の耐熱性金属(高融点金属)によって形成され、軸方向ADに延伸する管状部材である。インサート支持体22には、軸方向ADに延伸する装着穴23が形成されている。インサート21はこの装着穴23に挿入され、インサート支持体22の前端22a側に位置する。また、インサート支持体22の前端22aには、電子の放出口24を構成するオリフィス25等の部材が取り付けられている。
【0017】
なお、インサート21はスリーブ26が取り付けられた状態で、装着穴23に挿入される。スリーブ26はカーボンによって形成され、インサート21とインサート支持体22の間に径方向の間隙を形成するように、例えば、カソード20の前端と後端のそれぞれに取り付けられる。これにより、インサート21とインサート支持体22の間の化学反応からインサート21を保護する。
【0018】
ヒータ30は通電によって発熱する発熱体であり、カソード20の外周からカソード20を加熱する。ヒータ30はZ軸を中心とする概ね円筒状に外形を有し、その内径はインサート支持体22の外径よりも大きい。ヒータ30はカーボン等を含有する発熱部材によって構成される。また、インサート21全体を加熱することが可能なように、発熱部材は少なくともインサート21の外周を囲む領域に設けられる。
【0019】
例えば図3に示すように、ヒータ30の発熱部材は、Z軸を中心とする仮想的な円筒面上で軸方向ADに蛇行しつつ(軸方向ADを往復しつつ)、周方向CDに延伸する。また、ヒータ30は、Z軸を中心としてカソード20(インサート21)と同心状に配置される。但し、ヒータ30は、径方向RDから見てヒートシールド10のスリット13A(図1参照)と重なる位置に形成されない。即ち、ヒータ30は、スリット13Aを介したインサート21又はインサート支持体22の光学的温度計測を妨げないように形成されている。
【0020】
なお、インサート21及びインサート支持体22の各形状は図2に示す形状に限られず、例えば他の周知の形状を有してもよい。これは材質についても同様である。例えば、インサート21は上述のホローカソードに限られず、インサートの仕様によっては当該インサートがそのカソード支持体等から露出している場合もある。同様に、図3に示すヒータ30の形状も図3に示す形状に限られず、その材質も上述したタンタル以外の材質であってもよい。例えば、タングステン等の高融点金属(合金)を用いた金属ヒータ、或いはグラファイトを発熱材料として用いたセラミックヒータでもよい。
【0021】
次に本実施形態に係るヒートシールド10について説明する。
図4はヒートシールド10の構成図であり、(a)はヒートシールド10の側面図、(b)はヒートシールド10の正面図、(c)は(b)中のC-C断面図である。図1及び図4に示すように、ヒートシールド10は、円筒部11と、円筒部11を支持する支持部12とを備えている。
【0022】
円筒部11は、少なくともカソード20の外周を囲む中空の円筒部材である。円筒部11は、上述の輻射熱に対する断熱性を有し、これを遮蔽する。図4(a)に示すように、軸方向ADに沿った円筒部11の長さは、インサート21よりも十分に長い。図4(b)及び図4(c)に示すように、円筒部11は略環状の断面を有し、軸方向ADに延伸している。この略環状の断面はZ軸上の点を中心として形成され、径方向RDに所定の長さ(厚さ)を有すると共に周方向CDに延伸している。従って、軸方向ADから見て、カソード20、ヒータ30、及び円筒部11は略同心状に配置される。
【0023】
図4(b)及び図4(c)に示すように、円筒部11は、複数の金属板14と、一対の収容板15、16と、複数の連結片17とを含む。金属板14は径方向RDに積層され、カソード20の外周を囲んでいる。金属板14はタンタル又はモリブデン等の高融点金属によって形成されてもよく、円筒部11内のヒータ30等の熱源からの輻射熱を反射する。 各金属板14はその厚さ方向に突出する複数の突部14aを有してもよい(図5参照)。この場合、互いに隣接する2枚の金属板14は、それぞれに形成された突部14aの位置が相対的にずれるように積層される。これにより、金属板14の間隔が適切に維持され、互いの点接触より円筒部11の断熱性を高めることができる。複数の突部14aは金属板14に対するエンボス加工などのプレス加工によって形成できる。
【0024】
一対の収容板15、16は、Z軸を中心とする同心円上に位置すると共に円筒状に形成される。従って、一対の収容板15、16は円筒部11の外形を規定している。一対の収容板15、16は、径方向RDに間隔を置いて設けられ、その間に複数の金属板14を収容する。即ち、収容板15は最も径方向内方に位置し、収容板16は上述の間隔を置いて最も径方向外方に位置する。金属板14と同じく、各収容板15、16もタンタル又はモリブデン等の高融点金属によって形成され、ヒータ30等の熱源からの輻射熱を反射する。円筒部11としての外形を維持するため、収容板15、16の厚さは金属板14よりも厚い値を有してもよい。
【0025】
収容板15が形成する円筒の直径は、少なくともインサート支持体22の外径よりも大きい値に設定される。更にヒータ30が設けられる場合、この直径はヒータ30の外径よりも大きい値に設定される。収容板16が形成する円筒の直径は、積層された複数の金属板14が、収容板15と収容板16の間に収容可能な値に設定される。
【0026】
連結片17は、一対の収容板15、16の縁部に沿って間隔を置いて設けられ、一対の収容板15、16を連結する。連結片17は、収容板15、16の相対的な位置を維持すると共に、収容板15、16の間から金属板14が脱落することを防止する。連結片17は、例えば、収容板15、16のそれぞれとスポット溶接によって接合している。
【0027】
ヒートシールド10は支持部12を備えている。支持部12は円筒部11の後部に設けられ、円筒部11を支持している。支持部12は、例えばZ軸に直交する円形のフランジである。支持部12には、周方向CDに間隔を置いて形成された複数の穴(図示せず)が形成される。これらの穴にビス等の締結部品が挿通され、ヒートシールド10は基板(図示せず)に固定される。
【0028】
図4(a)に示すように、円筒部11には少なくとも1つのスリット13Aが設けられている。スリット13Aは、円筒部11の周面のうち、軸方向ADにおいてカソード20と重なる領域Rに形成される。また、スリット13Aは、カソード20に向けて円筒部11を貫通し、軸方向ADに延伸している。周方向CDにおけるスリット13Aの長さ(即ち幅)は、スリット13Aを介した上述の温度計測器40による温度計測が可能で、スリット13Aからの輻射熱が過剰に漏れない値に設定される。スリット13Aは、領域Rから支持部12まで延伸していてもよい。スリット13Aの数は、熱の漏洩が支障をきたさない範囲で任意である。但し、スリット13Aが複数設けられる場合、熱膨張による円筒部11の過剰な変形を抑制するため、Z軸に対して対称な位置に設けることが望ましい。
【0029】
なお、熱の漏洩が支障をきたさない限り、円筒部11はセラミックによって形成されてもよい。この場合、収容板15、16、複数の金属板14及び連結片17は不要となる。
【0030】
図6は、ヒートシールド10を使用して温度計測を行っている状態を示す図である。カソード20、ヒータ30、及びヒートシールド10は予め真空槽(図示せず)内に配置されている。また、ヒートシールド10は、スリット13Aが観測窓41に面するように、配置される。温度計測器40は大気中に配置され、計測点はスリット13Aに合わせている。真空槽内の圧力が十分に低下した状態で、ヒータ30に電力を投入し、カソード20を加熱する。温度計測器40はスリット13A及び観測窓41を通過する赤外線又は可視光を測定し、温度を算出する。
【0031】
本実施形態では、スリット13A越しにインサート支持体22が見えている。従って、算出した温度はインサート支持体22の表面温度を示す。温度計測器40がサーモグラフィカメラであれば、スリット13A全体を観察することで、スリット13Aから見えるインサート支持体22の一次元の温度分布が一括に取得できる。温度計測器40がスポット放射温度計であれば、その焦点をスリット13Aの一端付近から他端付近まで、所定の移動距離で段階的に移動させつつ、温度計測を行う。これにより、インサート支持体22の一次元の温度分布、換言すればカソード20の一次元の温度分布が取得できる。
【0032】
インサート支持体22の一次元の温度分布とインサート21の温度分布の差は殆どないと推測できるので、取得した温度分布のうち、インサート21が位置する部分の分布はインサート21の温度分布と見なすことができる。従って、この温度計測から加熱時のインサート21の温度分布を評価することができる。また、インサート21とインサート支持体22を変えずにヒータ30のみを交換した場合、ヒータ30の交換前後の温度分布を比較することによって、ヒータ30の性能を評価することも可能である。また、本実施形態に係るヒートシールド10を用いた温度計測は非接触で行われる。即ち、熱電対を用いた温度計測と異なり、温度センサの接触によって熱が奪われることがない。つまり、熱の流出による測定誤差を抑制できる。
【0033】
図7は、スリット13Aの変形例を示す図であり、(a)は変形例に係るスリット13Bを有するヒートシールドの側面図、(b)は(a)中のD-D断面図である。変形例に係るヒートシールド10では、スリット13Bがカソード20の周方向CDに延伸している。この場合も、ヒータ30はスリット13Bと干渉しない形状を有する。即ち、径方向から見て、ヒータ30はスリット13Bと重ならない。この変形例では、インサート21が位置するカソード20の部分の周方向の温度分布を評価することができる。同様に、ヒータ30の性能も評価できる。
【0034】
なお、円筒部11にスリット13Aとスリット13Bが設けられてもよい。例えば、スリット13AがZ軸を挟んだ両側のうちの一方側に設けられ、スリット13Bはその他方側に設けられる。この場合、一回の加熱で、軸方向と周方向の温度分布を計測することができる。
【0035】
なお、本開示は上述の実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0036】
10…ヒートシールド、11…円筒部、12…支持部、13A、13B…スリット、14…金属板、14a…突部、15…収容板、16…収容板、17…連結片、20…カソード、21…インサート(エミッタ)、22…支持体(インサート支持体)、23…装着穴、24…放出口、25…オリフィス、26…スリーブ、30…ヒータ、40…温度計測器、41…観測窓、AD…軸方向、CD…周方向、RD…径方向、R…領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7