(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124008
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】洗い場床パネル
(51)【国際特許分類】
E03C 1/20 20060101AFI20230830BHJP
【FI】
E03C1/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027534
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】501362906
【氏名又は名称】積水ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】中川 翔二朗
(72)【発明者】
【氏名】藤浪 壮丞
【テーマコード(参考)】
2D061
【Fターム(参考)】
2D061CA02
2D061CB10
2D061CC05
2D061CC11
(57)【要約】
【課題】排水口近傍の水はけ性及び清掃性を向上させ、かつ、耐薬品性及び耐久性を有する洗い場床パネルを提供する。
【解決手段】本発明の洗い場床パネル3は、浴室の洗い場に設置される洗い場床パネルであって、排水口30aに通じる開口部が設けられ、開口部に向かう排水勾配が設けられた床本体10と、開口部に配置される排水口部材30と、開口部と対応する貫通孔23が設けられ、床本体10を覆う表層シート20と、を備え、排水口部材30及び表層シート20が接合されており、排水口部材30のガラス転移温度(Tg)が表層シート20のガラス転移温度(Tg)より高い材料にて構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室の洗い場に設置される洗い場床パネルであって、
排水口に通じる開口部が設けられ、前記開口部に向かう排水勾配が設けられた床本体と、
前記開口部に配置される排水口部材と、
前記開口部と対応する貫通孔が設けられ、前記床本体を覆う表層シートと、を備え、
前記排水口部材及び前記表層シートが接合されており、
前記排水口部材のガラス転移温度(Tg)が前記表層シートのガラス転移温度(Tg)より高い材料にて構成されている、洗い場床パネル。
【請求項2】
前記排水口部材は、前記表層シートの前記貫通孔の断面に接する突起を有し、前記突起が前記貫通孔の断面と接合されている、請求項1に記載の洗い場床パネル。
【請求項3】
前記表層シートは、表面に複数の凸部を有し、前記排水口部材及び前記表層シートの接合箇所における前記凸部の高さが、前記排水口部材及び前記表層シートの接合箇所以外の前記凸部の高さより低い、請求項1又は2に記載の洗い場床パネル。
【請求項4】
前記排水口部材及び前記表層シートの接合箇所における前記表層シートに設けられた排水勾配が、前記排水口部材及び前記表層シートの接合箇所以外の前記表層シートに設けられた排水勾配より大きい、請求項1~3のいずれか1項に記載の洗い場床パネル。
【請求項5】
前記接合が溶着である、請求項1~4のいずれか1項に記載の洗い場床パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗い場の床構造に関し、特に、洗い場床パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
浴室用の洗い場は、リフォームのしやすさや、クッション性などの快適さを付与するために床本体と表層シートに分割して構成されることがある(例えば、特許文献1参照)。表層シートと床本体が別な構成であると、例えば、表層シートが傷んだり劣化したりしたときや模様替えのためにリフォーム可能であり利便性が高まる。また、洗い場本体の意匠性は表層シートによって決まるため、複数の色柄を取り揃える際でも、床本体は共通化させることができるため生産性も高い。
【0003】
表層シートは、塩化ビニルなどの材料を用いてシート状に成形するのが一般的である。そのため、表層シートを排水口部材などと組み合わせて使う場合には、組立時の作業効率や、組み合わせたあとの残留応力抑制のために絞り加工などで形状を成形する必要がある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
洗い場の基本的な性能としては、汚れにくさや、水はけの良さが挙げられる。特に水はけ性能は汚れを速やかに洗い流すためにも重要な要素である。水はけ性を向上させるためには、洗い場表面に溝を設けることが有効であることが従前より知られており、特に排水口近傍での溝形状は水はけ性に大きく影響を与える(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
表層シートは、一般的には長尺の成形品を切断加工することで得られるため、排水口近傍の溝形状は、排水口近傍以外の洗い場の溝形状と同一形状になってしまう。さらに、切断加工により露出した断面は汚れの付着や外観などが問題になる。そこで、表層シートの断面を溝底面まで隠蔽することで汚れの付着と排水性を両立させる方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。しかし、溝底面よりも上部の表層シートの断面は、むき出しになってしまうので、汚れが付着しやすくなる。また、表層シートの断面と排水口部材の係合部に隙間が生じると汚れなどがたまる原因となる。
【0006】
表層シートと排水口部材を接合するにあたっては、水漏れなどに対する耐久性を高めるために、高い接合強度も必要となる。高い接合強度を得るために、熱融着によって排水口部材を溶融させて表層シートと排水部材を接合する構造が提案されている(例えば、特許文献5参照)。しかし、当該構造では、表層シートの溝形状を排水口まで連続させるために表層シートの切断面を排水口部に露出させる必要がある。そのため、露出した断面は別途排水口部の蓋で使用者の視線を遮る方法をとっている。
【0007】
浴室用の洗い場における表層シートは、長尺のシート状成形品から切断加工して得られる。表層シートには、浴室において求められる耐薬品性や耐摩耗性など表層シートの表層に求められる品質と、強度や床本体との接着性など表層シートの内層に求められる品質とがある。そのため、一般的に表層シートの内層に用いられる材料は、表層シートの表層に用いられる材料よりも耐薬品性などの品質が劣り、洗い場を洗体などで使用する際の排水によって劣化を生じやすい。
【0008】
さらに、平坦なシート状に成形された表層シートと、排水口とを接合するにあたっては、水はけ性を考慮した排水勾配を形成させて接合させることが望ましい。しかしながら、表層シートに排水勾配を形成させるには、予め熱加工等によって排水勾配を形成させるか、もしくは、排水勾配を形成された別部材に接合することで強制的に排水勾配を形成する必要がある。前者は工程が増えるため生産性に悪影響が生じ、後者は表層シートを強制的に変形させるために表層シート内部に残留応力が生じるため耐久性に悪影響が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2019-094758号公報
【特許文献2】特許第6828975号公報
【特許文献3】特許第4551126号公報
【特許文献4】特開2019-085768号公報
【特許文献5】特許第5696977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる事情に鑑み、排水口近傍の水はけ性及び清掃性を向上させ、かつ、耐薬品性及び耐久性を有する洗い場床パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1]浴室の洗い場に設置される洗い場床パネルであって、排水口に通じる開口部が設けられ、前記開口部に向かう排水勾配が設けられた床本体と、前記開口部に配置される排水口部材と、前記開口部と対応する貫通孔が設けられ、前記床本体を覆う表層シートと、を備え、前記排水口部材及び前記表層シートが接合されており、前記排水口部材のガラス転移温度(Tg)が前記表層シートのガラス転移温度(Tg)より高い材料にて構成されている、洗い場床パネル。
[2]前記排水口部材は、前記表層シートの前記貫通孔の断面に接する突起を有し、前記突起が前記貫通孔の断面と接合されている、[1]に記載の洗い場床パネル。
[3]前記表層シートは、表面に複数の凸部を有し、前記排水口部材及び前記表層シートの接合箇所における前記凸部の高さが、前記排水口部材及び前記表層シートの接合箇所以外の前記凸部の高さより低い、[1]又は[2]に記載の洗い場床パネル。
[4]前記排水口部材及び前記表層シートの接合箇所における前記表層シートに設けられた排水勾配が、前記排水口部材及び前記表層シートの接合箇所以外の前記表層シートに設けられた排水勾配より大きい、[1]~[3]のいずれかに記載の洗い場床パネル。
[5]前記接合が溶着である、[1]~[4]のいずれかに記載の洗い場床パネル。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、排水口近傍の水はけ性及び清掃性を向上させ、かつ、耐薬品性及び耐久性を有する洗い場床パネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る浴室の洗い場床パネルを示す平面図である。
【
図2】
図2は、
図1のA-A線に沿う、洗い場床パネルの排水口側の端部の断面図である。
【
図3】
図3は、
図2の点線で囲われた排水口の拡大断面図である。
【
図4】
図4(a)は、表層シートと排水口部材とを接合する様子を示す断面図である。
図4(b)は、表層シートと排水口部材とを溶着する前の様子を示す断面図である。
図4(c)は、表層シートと排水口部材とを溶着した後の様子を示す断面図である。
【
図5】
図5(a)は、表層シートと排水口部材とを勾配を付けて接合する様子を示す断面図であり、
図5(b)は、表層シートと排水口部材とを勾配を付けて溶着する前の様子を示す断面図であり、
図5(c)は、表層シートと排水口部材とを勾配を付けて溶着した後の様子を示す断面図である。
【
図6】
図6(a)は、
図5(c)のB-B線に沿う、表層シートの断面図であり、
図6(b)は、
図5(c)のC-C線に沿う、表層シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明に係る実施形態に係る洗い場床パネル3は、
図1に示すように、浴室の洗い場1bに設けられる。洗い場床パネル3は、床本体10と、表層シート20と、排水口部材30とを備える。洗い場床パネル3は、
図1においては平面視で長方形状(四角形状)になっているが特に限定はなく、種々の形状を取りうる。
【0015】
床本体10は、
図2に示すように、床本体部材11と、床本体部材11の上面に設けられた上側補強パネル部材12と、下面に設けられた下側補強パネル部材13とを備える。
床本体部材11は、発泡ポリスチレン(EPS)、発泡ポリプロピレン(EPP)及び発泡ポリエチレン(EPE)等の発泡樹脂によって板状に成形された部材である。
床本体部材11である発泡樹脂の発泡倍率は、好ましくは15倍~30倍であり、より好ましくは18~22倍である。
【0016】
下側補強パネル部材13は、底板部13aと、側板部13bとを有している。下側補強パネル部材13は、鋼板などの金属板をシャーリング、穴開け、折り曲げなどにより成形することによって構成される。
下側補強パネル部材13の厚みは、好ましくは0.5mm~1.2mmであり、より好ましくは0.5mm~0.8mmであるが、必ずしも上記数値範囲に限定されるものではない。
【0017】
下側補強パネル部材13の底板部13aは、
図2に示すように、床本体部材11の下面を覆うように配置される。本実施形態における四角形の底板部13aにおいては、外周4辺の端部からそれぞれ側板部13bが一体に立ち上がっている。側板部13bは、床本体部材11の端面を覆うように配置される。互いに隣接する側板部13b同士は、縁切りスリット(図示省略)によって縁切りされている。
下側補強パネル部材13は、例えば、熱硬化性の接着剤(図示省略)によって、床本体部材11と接着される。
【0018】
浴室の洗い場1bの浴槽側の立ち上り部14は、
図2に示すように、浴槽側面及び上面に樹脂押出成形材からなる立ち上り補強部材15が覆うように配置されている。そして、
図2に示すように、床本体部材11における浴室の洗い場1bの立ち上り部14を除く部分の上面には上側補強パネル部材12が覆うように配置されている。上側補強パネル部材12は、例えば、熱硬化性の接着剤(図示省略)によって、床本体部材11と接着されている。
上側補強パネル部材12は、鋼板などの金属板をシャーリング、穴開けなどにより成形することによって構成される。
上側補強パネル部材12の厚みは、好ましくは0.5mm~1.2mmであり、より好ましくは0.6mm~1.0mmであるが、必ずしも上記数値範囲に限定されるものではない。
【0019】
床本体10の一箇所には、
図1に示した排水口部材30の位置に対応する箇所に開口部(図示省略)が設けられている。開口部は、例えば、洗い場1bの立ち上り部14側であって、浴槽1a側の端部の幅方向(
図1において上下)の中央部に配置される。床本体10は、開口部に向かう排水勾配が設けられている。床本体10において、開口部に向かう排水勾配が設けられていることで、洗い場床パネル3も同様に、開口部(排水口部材30)に向かう排水勾配が設けられている。
床本体10に設けられた排水勾配は、水平面に対して好ましくは0.5度~3度であり、より好ましくは1度~2.5度である。
【0020】
表層シート20は、
図2に示すように、床本体10の上面を覆うように配置される。表層シート20は、防水性を有しており、床本体部材11への浸水を防止する。さらに、表層シート20は、柔軟性を有しており、洗い場床パネル3の温熱感性及びクッション性が確保されている。表層シート20は、例えば、軟質塩化ビニル樹脂(PVC)及びシリコンラバー等によって構成される。
表層シート20の厚みは、好ましくは2mm~4mmであるが、必ずしも上記数値範囲に限定されるものではない。
【0021】
表層シート20は、例えば、両面粘着テープ(図示省略)を介して床本体10と接合される。表層シート20は、浴槽側部(
図2において左側部)においては、立ち上り部14に沿って立ち上がり、立ち上り部14の洗い場側面を覆うように配置されている。
表層シート20は、床本体10の開口部と対応する箇所に、貫通孔23が設けられている。貫通孔23は、床本体10の開口部の上端部に連なっている。
【0022】
排水口部材30は、
図2に示すように、床本体10の開口部に配置される。排水口部材30の中央には、
図2及び
図3に示すように、排水口30aが形成されている。また、排水口部材30の上部には、
図2及び
図3に示すように、上方に突出した突起30bと水平方向に延在する溶着部30cが形成されている。
排水口部材30を構成する材料としては、表層シート20より硬質である材料であることが好ましく、例えば、アクリルニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)及びアクリロニトリルスチレンアクリレート(ASA)等の硬質樹脂が挙げられる。
【0023】
排水口部材30及び表層シート20を接合する手段としては、溶着が挙げられる。排水口部材30及び表層シート20を溶着する方法を以下に示す。
まず、
図4(a)に示すように、排水口部材30の突起30bを、表層シート20の貫通孔23の断面と接するように位置を合わせて設置する。
その後、
図4(b)に示すように、排水口部材30の突起30bと表層シート20の貫通孔23の断面とを加熱および加圧し、溶着加工を施す。その際、排水口部材30のガラス転移温度が表層シート20のガラス転移温度より高い材料であることで、表層シート20が優先的に溶融する。これによって、突起30bと貫通孔23との間に隙間が生じていたとしても、
図4(c)に示すように、貫通孔23が加熱されることによって溶融して流出する表層断面溶融部24によって隙間が埋められ、突起30bと貫通孔23との間に隙間なく溶着される。
【0024】
本発明における排水口部材30及び表層シート20のガラス転移温度(Tg)は、下記方法により測定することができる。
製品としての洗い場床パネル3から排水口部材30及び表層シート20の一部を縦1cm×横1cm×高さ0.1cmのサイズで切り取り、示差走査熱量測定装置(DSC測定装置)にて測定することができる。
【0025】
表層断面溶融部24は、表層シート20と同一材料のため、色合いなどの外観や、耐薬品性などの強度を損なうことなく、突起30bと貫通孔23との間の隙間をなくすことができる。仮に表層断面溶融部24の代わりに接着剤やコーキング剤を用いて隙間を埋めると、はみ出した接着剤により外観を損なったり、耐久性が表層シート20よりも低下したりする恐れがある。
【0026】
表層シート20は、排水口部材30と溶着して接合することによって、排水口部材30及び表層シート20の接合箇所に排水口部排水勾配面22を形成することができる。具体的には、
図5(a)に示すように、排水口部材30における表層シート20との接合箇所に設けられた溶着部30cによって、上側補強パネル部材12よりも大きな勾配を有する溶着部30cにおける突起30bを、表層シート20の貫通孔23の端部と接するように位置を合わせて設置する。
その後、
図5(b)に示すように、溶着上型50と溶着下型51によって、排水口部材30及び表層シート20の接合箇所を挟んで溶着する。溶着上型勾配面50aは溶着部30cの面と近似形状となるように係合するように形成されているため、溶着上型50と溶着下型51に挟まれながら溶着することで排水口部排水勾配面22の排水勾配α1は、溶着部30cの排水勾配α2に沿って同じ勾配となるように形成される。一方で、床本体10において、開口部に向かう排水勾配が設けられている洗い場中央排水勾配面21は、上側補強パネル部材12に両面粘着テープ等を介して貼り付けられており、洗い場中央排水勾配面21の排水勾配βは、上側補強パネル部材12の排水勾配と略同一となる。
上側補強パネル部材12の排水勾配βよりも溶着部30cの排水勾配α2を大きく形成しておくことで、排水口部排水勾配面22の排水勾配を洗い場中央排水勾配面21の排水勾配を大きくすることができ、排水口部排水勾配面22の水はけ性を向上させることができる。
【0027】
表層シート20は、排水口部材30と溶着して接合することによって、排水口部材30及び表層シート20の接合箇所に排水口部排水勾配面22を形成することで、
図3に示すように、排水口部材30及び表層シート20の接合箇所における表層シート20に設けられた排水勾配α1が、排水口部材30及び表層シート20の接合箇所以外の表層シート20に設けられた排水勾配βより大きくすることができる。排水勾配α1が排水勾配βより大きいことで、排水口近傍における水はけ性を向上させることができる。排水口近傍における水はけ性が向上することで、排水口近傍の掃除性も向上させることができる。
排水勾配α1は、排水勾配βより0.5度~3度大きいことが好ましく、1度~2度大きいことがより好ましい。
【0028】
表層シート20は、
図6(a)に示すように、表面に複数の凸部26を有する構成とすることができる。
表層シート20の表面に複数の凸部26を有する構成とすることで、凸部26の間に形成される隙間による毛細管現象によって洗い場における水はけ性の向上に寄与する。凸部26の間に形成される隙間の距離D1は、好ましくは0.2mm~4mmであり、より好ましくは0.5mm~3mmである。
一方、表層シート20の表面に複数の凸部26の高さH1は、高くなりすぎることで汚れが溜まりやすく、清掃性も悪化する。表層シート20の表面に設けられた凸部26の高さH1は、好ましくは0.3mm~2mmであり、より好ましくは0.5mm~1.5mmである。
【0029】
図6(b)に示すような、排水口部材30及び表層シート20の接合箇所における凸部26の高さH2は、
図6(a)に示すような、排水口部材30及び表層シート20の接合箇所以外の凸部26の高さH1より低いことが好ましい。排水口部材30及び表層シート20の接合箇所における凸部26の高さH2が、排水口部材30及び表層シート20の接合箇所以外の凸部26の高さH1より低いことで、排水による汚れが溜まりやすい排水口部排水勾配面22の清掃が容易になる。
接合箇所における凸部26の高さH2は、接合箇所以外の凸部26の高さH1と比して、0.3mm~2mm低いことが好ましく、0.5mm~1mm低いことがより好ましい。
【0030】
本発明の実施の形態に係る洗い場床パネルによれば、上記の方法にて、排水口部材30及び表層シート20を接合することで、表層シート20の断面を隠蔽することができるため、例え、表層シート20が長尺のシート状成形品から切断加工して得られるものであっても断面の露出を防ぐことができる。表層シート20の断面の露出を防ぐことにより、表層シート20の断面に薬品及び汚れ等の付着を防ぎ、耐薬品性及び耐久性の低下を抑制することができる。
また、排水口部材30及び表層シート20を溶着して接合することで、排水口部材30及び表層シート20の隙間を埋めることができ、耐薬品性及び耐久性を向上させ、かつ、排水口部材30及び表層シート20の接合強度を向上させることができる。
また、表層シート20における排水口部材30との接合箇所の排水勾配及び凸部を適宜設計することにより、排水口近傍の水はけ性及び清掃性を向上させることができる。
【実施例0031】
以下、本発明の実験例に基づいて、本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、本発明における各物性の測定方法、評価方法は以下のとおりである。
【0032】
(Tgの測定方法)
本実施例のサンプルのガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定装置(株式会社日立ハイテクサイエンス社製「DSC7020」)を用いて、下記の条件で示差走査熱量測定を行い求めた。
・測定範囲:20℃~200℃(1回昇温)
・昇降温速度:10℃/min
・雰囲気:窒素フロー50ml/min
・試料容器:アルミパンクリンプ
・サンプル採取:肉厚全体 10.0±0.5mg
【0033】
(断面の接合の有無)
本実施例のサンプルの断面の接合状態は、目視で確認をした。
〇:表層シートの断面の全面と排水口部材との接合あり
△:表層シートの断面の一部と排水口部材との接合あり
×:表層シートの断面と排水口部材との接合なし
【0034】
(接合箇所の凸部の高さ及び接合箇所以外の凸部の高さ測定方法)
表層シートの表面の接合箇所における凸部の高さ及び接合箇所以外の凸部の高さを、表層シートの表面を基準として、電子デプスゲージ(ミツトヨ社製「ABSデジマチックデプスゲージVS-AX」)および表面粗さ計(ミツトヨ社製「サーフテスト 品番SJ-210 0.75MN」)にて測定した。なお、高さは10箇所測定した平均値とする。
測定した接合箇所の凸部の高さ及び接合箇所以外の凸部の高さを比較し、以下の基準にて評価した。
〇:接合箇所の凸部の高さが、接合箇所以外の凸部の高さより低い
△:接合箇所の凸部の高さが、接合箇所以外の凸部の高さと同じ
×:接合箇所の凸部の高さが、接合箇所以外の凸部の高さより高い
【0035】
(接合箇所の排水勾配及び接合箇所以外の排水勾配の測定方法)
表層シートの表面の接合箇所における排水口部排水勾配面の勾配及び接合箇所以外の排水勾配を、水平面を基準として、電子角度計(シンワ測定社製「デジタルアングルメーターII防塵防水」)にて測定した。なお、勾配は3箇所測定した平均値とする。
測定した接合箇所の排水勾配及び接合箇所以外の排水勾配を比較し、以下の基準にて評価した。
〇:接合箇所の排水勾配が、接合箇所以外の排水勾配より大きい
△:接合箇所の排水勾配が、接合箇所以外の排水勾配と同じ
×:接合箇所の排水勾配が、接合箇所以外の排水勾配より小さい
【0036】
(排水口部材及び表層シートの接合方法)
排水口部材及び表層シートの接合方法について、以下の基準にて評価した。
〇:溶着
△:接着
【0037】
(清掃性評価)
JIS A4416に規定される耐汚染性能試験を実施後、色彩計でY値の回復率を測定した結果を表1に示す。評価基準は以下の通りである。
〇:25%以上
×:25%未満
【0038】
(耐薬品性評価)
浴室用洗剤に75℃で6時間浸漬したあと、引張速度0.05mm/分、常温環境下における条件で引張試験を行った結果を表1に示す。評価基準は以下の通りである。
〇:1000kPa以上
△:100kPa以上1000kPa未満
×:100kPa未満
【0039】
(残水性評価)
洗い場に散水した後、60分経過後の、排水口近傍の残水量を測定した結果を表1に示す。評価基準は以下の通りである。
〇:50g/m2以下
×:50g/m2を超える
【0040】
(クッション性評価)
JIS K 6253に規定されるデュロメータ硬度計にて、排水口部の表層シート高度を測定した結果を表1に示す。評価基準は以下の通りである。
〇:A90/S以下
×:A90/Sを超える
【0041】
(総合評価)
各項目に置いて、○:1点、△:0点、×:-1点として合計点数を算出した。合計点数における評価基準は以下の通りである。
◎:9点
〇:6点以上9点未満
△:3点以上6点未満
×:3点未満
【0042】
[実施例1~3、比較例1]
各接合方法で作成した各サンプルについて表1に詳細を示す。
【0043】
【0044】
表1から、本発明の構成にすれば、耐薬品性が高くなることがわかる。また、接合箇所の凸部の高さを接合箇所以外の凸部の高さより低くすることで、清掃性が良くなることがわかる。更に、排水口近傍の排水勾配を大きくすることで、残水性も向上することができる。