IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電産コパル株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ギヤードモータ 図1
  • 特開-ギヤードモータ 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124010
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】ギヤードモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/08 20060101AFI20230830BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
H02K7/08 Z
H02K7/116
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027538
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】ニデックプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】北澤 俊治
【テーマコード(参考)】
5H607
【Fターム(参考)】
5H607AA05
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB14
5H607CC03
5H607DD03
5H607DD08
5H607DD19
5H607EE33
5H607FF01
5H607GG01
5H607GG08
5H607GG09
5H607JJ06
5H607JJ10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】出力シャフトと、転がり軸受と、減速機ケースと間のシール性を確保しつつ、組立作業性を向上できる構造を有するギヤードモータを提供する。
【解決手段】ギヤードモータ100は、減速機20と、転がり軸受と、出力シャフト50と前記転がり軸受との間を塞ぐ環状のシール部材Sと、を備える。前記転がり軸受は、減速機ケース40の軸方向一方側の内周面に固定された外輪B1と、前記外輪に対して回転する内輪B2とを備える。前記出力シャフトは、第1出力軸51と、前記第1出力軸の外径に比して大きい外径の第2出力軸52とを備える。前記第1出力軸は、前記内輪の内側に通され、軸方向一方側が前記転がり軸受の軸方向一方側の面から突出し、前記第2出力軸は、前記減速機ケースの内部において前記減速機の軸方向一方側に接続され、前記シール部材は、前記第2出力軸の軸方向一方側の面と前記内輪の軸方向他方側の面との間に設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を中心として回転可能なロータを有するモータ本体と、
前記ロータの軸方向一方側に接続された減速機と、
前記モータ本体において前記ロータを内部に収容するモータケースと、
前記モータケースの軸方向一方側に繋がり、前記減速機を内部に収容する減速機ケースと、
前記減速機ケースの軸方向一方側から突出し前記減速機の軸方向一方側に接続された出力シャフトと、
前記減速機ケースの軸方向一方側に設けられ前記出力シャフトを回転可能に支持する転がり軸受と、
前記出力シャフトと前記転がり軸受との間を塞ぐ環状のシール部材と、を備え、
前記転がり軸受は、前記減速機ケースの軸方向一方側の内周面に固定された外輪と、前記外輪の内側に位置し前記外輪に対して回転する内輪とを備え、
前記出力シャフトは、軸方向一方側に設けられた第1出力軸と、軸方向他方側に設けられ前記第1出力軸の外径に比して大きい外径の第2出力軸とを備え、
前記第1出力軸は、前記内輪の内側に通され、軸方向一方側が前記転がり軸受の軸方向一方側の面から突出し、
前記第2出力軸は、前記減速機ケースの内部において前記減速機の軸方向一方側に接続され、
前記シール部材は、前記第2出力軸の軸方向一方側の面と前記内輪の軸方向他方側の面との間に設けられている、
ギヤードモータ。
【請求項2】
前記第2出力軸は、前記第2出力軸の軸方向一方側の面に設けられた環状の第1溝部を備え、
前記シール部材は、前記第1溝部に嵌め込まれている、
請求項1に記載のギヤードモータ。
【請求項3】
前記外輪の外周面は、前記減速機ケースの軸方向一方側の前記内周面に圧入されている、
請求項1または2に記載のギヤードモータ。
【請求項4】
前記転がり軸受の軸方向一方側に設けられ、前記第1出力軸に固定された固定部材を備える、
請求項1から3のうちいずれか1項に記載のギヤードモータ。
【請求項5】
前記第1出力軸は、前記固定部材を位置決めして固定する第2溝部を備え、
前記固定部材は、前記第2溝部に嵌め込まれる止め輪である、
請求項4に記載のギヤードモータ。
【請求項6】
前記第1出力軸は、前記固定部材が嵌め込まれている、
請求項4に記載のギヤードモータ。
【請求項7】
前記固定部材の軸方向他方側の面と前記転がり軸受の軸方向一方側の面との間に設けられ、前記固定部材の軸方向他方側の面に接触すると共に、前記内輪の軸方向一方側の面に接触するワッシャを備える、
請求項5又は6に記載のギヤードモータ。
【請求項8】
前記シール部材は、前記内輪を前記固定部材に押し付ける向きに前記内輪に力を加える弾性部材である、
請求項4から7のうちいずれか一項に記載のギヤードモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギヤードモータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、モータにより回転駆動される出力シャフトと、出力シャフトを回転可能に支持する転がり軸受けとの間のシール性を向上させるモータが記載されている。特許文献1に記載されたモータにおいては、出力シャフトに設けられた検出器と、検出器ケースから突出したシャフトを回転可能に支持する軸受けを備えている。このモータにおいては、出力シャフトと、転がり軸受の内輪との間の隙間を塞ぐため、出力シャフト側に設けられた第1溝部に環状の第1シール部材が嵌め込まれている。また、特許文献1に記載されたモータにおいては、転がり軸受の外輪と検出器ケースとの間の隙間を塞ぐため、検出器ケース側に設けられた第2溝部に環状の第2シール部材が嵌め込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5-41367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたモータの出力シャフトは、第1溝部の部分の径が小さくなり、第1溝部の部分において強度が低下する虞があると共に、第2溝部の部分にも第2シール部材を必要とし、組み立て作業に要する工数および時間が増大し、組立作業性が低下する虞がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、出力シャフトと、転がり軸受と、減速機ケースと間のシール性を確保しつつ、組立作業性を向上できる構造を有するギヤードモータを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のギヤードモータの一つの態様は、中心軸を中心として回転可能なロータを有するモータ本体と、前記ロータの軸方向一方側に接続された減速機と、前記モータ本体において前記ロータを内部に収容するモータケースと、前記モータケースの軸方向一方側に繋がり、前記減速機を内部に収容する減速機ケースと、前記減速機ケースの軸方向一方側から突出し前記減速機の軸方向一方側に接続された出力シャフトと、前記減速機ケースの軸方向一方側に設けられ前記出力シャフトを回転可能に支持する転がり軸受と、前記出力シャフトと前記転がり軸受との間を塞ぐ環状のシール部材と、を備える。前記転がり軸受は、前記減速機ケースの軸方向一方側の内周面に固定された外輪と、前記外輪の内側に位置し前記外輪に対して回転する内輪とを備える。前記出力シャフトは、軸方向一方側に設けられた第1出力軸と、軸方向他方側に設けられ前記第1出力軸の外径に比して大きい外径の第2出力軸とを備える。前記第1出力軸は、前記内輪の内側に通され、軸方向一方側が前記転がり軸受の軸方向一方側の面から突出し、前記第2出力軸は、前記減速機ケースの内部において前記減速機の軸方向一方側に接続され、前記シール部材は、前記第2出力軸の軸方向一方側の面と前記内輪の軸方向他方側の面との間に設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、出力シャフトと、転がり軸受と、減速機ケースと間のシール性を確保しつつ、組立作業性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態のギヤードモータの一部を示す部分断面図である。
図2図2は、一実施形態のギヤードモータの一部を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
各図には、本実施形態のギヤードモータ100の中心軸Jを仮想的に示している。また、各図には、中心軸Jが延びる方向を示すZ軸を示している。以下の説明においては、中心軸Jが延びる方向、つまりZ軸と平行な方向を「軸方向」と呼ぶ。中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼ぶ。中心軸Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。軸方向のうちZ軸の矢印が向く側(+Z側)を「軸方向一方側」と呼ぶ。軸方向のうちZ軸の矢印が向く側と逆側(-Z側)を「軸方向他方側」と呼ぶ。図1および図2において、軸方向は左右方向であり、軸方向一方側は左側であり、軸方向他方側は右側である。
【0010】
図1に示す本実施形態のギヤードモータ100は、屋外で使用されるモータである。図1及び図2に示すように、本実施形態のギヤードモータ100は、モータ本体10と、減速機20と、モータケース30と、減速機ケース40と、出力シャフト50と、を備える。ギヤードモータ100においては、モータ本体10の回転が減速機20によって減速され、出力シャフト50から出力される。
【0011】
本実施形態においてモータ本体10は、インナーロータ型のモータである。モータ本体10は、ロータ11と、ステータ12と、モータケース30を有する。ロータ11は、中心軸Jを中心として回転可能である。ロータ11は、中心軸Jを中心として軸方向に延びる円柱状のシャフト11aと、シャフト11aの外周面に固定された円筒状のマグネット11bと、を有する。シャフト11aは、モータケース30に保持されたベアリング13によって中心軸J回りに回転可能に支持されている。これにより、ロータ11は、中心軸Jを中心として回転可能である。本実施形態においてベアリング13は、滑り軸受である。
【0012】
ステータ12は、ロータ11の径方向外側に位置する。ステータ12は、ロータ11を囲んでいる。ステータ12は、ロータ11を囲むステータコア12aと、ステータコア12aの内周面に取り付けられた複数のコイル12cとを有する。ステータ12のステータコア12aは、モータケース30の内周面に固定されている。
【0013】
減速機20は、ロータ11の軸方向一方側(+Z側)に接続されている。図1に示すように、減速機20は、複数の遊星歯車機構21~24が軸方向に連結されて構成されている。遊星歯車機構21と遊星歯車機構22と遊星歯車機構23と遊星歯車機構24とは、軸方向他方側(-Z側)から軸方向一方側(+Z側)に向かってこの順に連結されている。遊星歯車機構21には、モータ本体10が連結されている。遊星歯車機構24には、出力シャフト50が連結されている。各遊星歯車機構21~24は、太陽ギヤと、太陽ギヤを囲む複数の遊星ギヤと、をそれぞれ有する。
【0014】
遊星歯車機構21は、太陽ギヤ21aと、太陽ギヤ21aの径方向外側に位置する複数の遊星ギヤ21bと、複数の遊星ギヤ21bを回転可能に支持する円板状の支持部21fとを有する。複数の遊星ギヤ21bは、太陽ギヤ21aを囲んで配置されている。太陽ギヤ21aと遊星ギヤ21bとは互いに噛み合っている。太陽ギヤ21aは、軸方向に延びている。太陽ギヤ21aは、ギヤ本体部21cと、連結部21dと、を有する。
【0015】
ギヤ本体部21cは、複数の遊星ギヤ21bの径方向内側に位置し、複数の遊星ギヤ21bと噛み合っている。連結部21dは、ギヤ本体部21cの軸方向他方側(-Z側)に繋がっている。連結部21dは、連結部21dの軸方向他方側の面から軸方向一方側(+Z側)に窪む連結穴21eを有する。連結穴21eには、シャフト11aの軸方向一方側の端部が嵌め合わされて連結されている。連結穴21eとシャフト11aとは、例えば、Dカットにより周方向に互いに引っ掛かり合って連結されている。
【0016】
遊星歯車機構21においてギヤ本体部21cの回転に基づいて、複数の遊星ギヤ21bがギヤ本体部21cに噛み合いながら公転する。複数の遊星ギヤ21bの公転に基づいて、支持部21fが回転する。支持部21fは、複数の遊星ギヤ21bを軸方向他方側(-Z側)の面において回転可能に支持する。支持部21fは、太陽ギヤ21aの回転数に比して低い回転数に減速されて回転する。支持部21fは、遊星歯車機構22に回転動力を伝達する。
【0017】
遊星歯車機構22は、支持部21fの軸方向一方側(+Z側)の面に設けられた太陽ギヤ22aと、太陽ギヤ22aの径方向外側に位置する複数の遊星ギヤ22bと、複数の遊星ギヤ22bを回転可能に支持する円板状の支持部22cとを有する。遊星歯車機構22は、遊星歯車機構21と同様に構成されており、太陽ギヤ22aの回転に基づいて、複数の遊星ギヤ22bが太陽ギヤ22aに噛み合いながら公転する。複数の遊星ギヤ22bの公転に基づいて、支持部22cが回転する。
【0018】
遊星歯車機構23は、支持部22cの軸方向一方側(+Z側)の面に設けられた太陽ギヤ23aと、太陽ギヤ23aの径方向外側に位置する複数の遊星ギヤ23bと、複数の遊星ギヤ23bを回転可能に支持する円板状の支持部23cとを有する。遊星歯車機構23は、遊星歯車機構21,22と同様に構成されており、太陽ギヤ23aの回転に基づいて、複数の遊星ギヤ23bが太陽ギヤ23aに噛み合いながら公転する。複数の遊星ギヤ23bの公転に基づいて、支持部23cが回転する。
【0019】
遊星歯車機構24は、支持部23cの軸方向一方側(+Z側)の面に設けられた太陽ギヤ24aと、太陽ギヤ24aの径方向外側に位置する複数の遊星ギヤ24bとを有する。遊星歯車機構24は、太陽ギヤ24aの回転に基づいて、複数の遊星ギヤ24bが太陽ギヤ24aに噛み合いながら公転する。複数の遊星ギヤ24bは、出力シャフト50の軸方向他方側の面に回転可能に支持されている。複数の遊星ギヤ24bの公転に基づいて、出力シャフト50が回転する。
【0020】
遊星歯車機構21~24は、略同様に構成されており、遊星歯車機構21から遊星歯車機構24に至るまでに段階的に回転数が減速されると共に、段階的に回転トルクが増強され、出力シャフト50にシャフト11aに比して高トルクの回転出力を与える。
【0021】
モータケース30は、ロータ11を回転可能に内部に収容する円筒状のケース本体60と、ケース本体60の軸方向一方側の面に接続された円筒状のケース連結部70とを備える。モータケース30は、ケース連結部70を介して減速機ケース40と連結している。本実施形態においてケース連結部70は、ケース本体60と別体である。ケース連結部70は、ケース本体60の軸方向一方側(+Z側)の端部に固定されている。ケース連結部70は、軸方向両側に開口する円筒状の部材である。ケース連結部70の外径は、ケース本体60の外径よりも小さい。ケース連結部70の軸方向他方側(-Z側)の端部内には、突出筒部63が嵌め合わされている。ケース連結部70の外周面には、雄ねじ部71が設けられている。雄ねじ部71は、ケース連結部70のうち軸方向一方側の端部を除いた部分全体の外周面に設けられている。ケース連結部70の径方向内側には、シャフト11aの軸方向一方側の端部および太陽ギヤ21aの連結部21dが位置する。つまり、ロータ11と減速機20とは、ケース連結部70の内部において互いに連結されている。
【0022】
減速機ケース40は、減速機20を内部に収容している。減速機ケース40は、中心軸Jを囲み、軸方向両側に開口する円筒状である。減速機ケース40は、モータケース30の軸方向一方側(+Z側)に繋がっている。減速機ケース40の軸方向一方側の端部内には、出力シャフト50の軸方向他方側(-Z側)の部分が収容されている。出力シャフト50は、減速機ケース40よりも軸方向一方側に突出している。本実施形態において減速機ケース40の外径は、ケース本体60の外径と同じである。
【0023】
減速機ケース40の軸方向一方側には、出力シャフト50を回転可能に支持する2個の転がり軸受Bが固定されている。2個の転がり軸受Bは、軸方向に沿って隣接している。転がり軸受Bは、例えば、軸方向一方側の面及び軸方向他方側の面がシールされたシールドベアリングである。転がり軸受Bは、例えば、ボールベアリングである。転がり軸受Bは、内輪と外輪とを備えるローラベアリングであってもよい。転がり軸受Bは、1個設けられていてもよいし、2個以上隣接して設けられていてもよい。以下、隣接する2個の転がり軸受Bを適宜、1つの軸受けとみなし、単に「転がり軸受B」と呼ぶ。
【0024】
転がり軸受Bは、円筒状の外輪B1と、外輪B1の内周面側に配置された円筒状の内輪B2と、外輪B1と内輪B2との間に設けられた複数の球体B3と、外輪B1と内輪B2との間の軸方向一方側の面及び軸方向他方側の面を塞ぐ蓋部材B4とを備えている。上記構成により、内輪B2は、球体B3を介して外輪B1に対して回転する。外輪B1は、減速機ケース40の軸方向一方側の内周面40aに固定されている。外輪B1の外周面は、減速機ケース40の軸方向一方側の内周面40aに圧入されている。外輪B1の外周面と、減速機ケース40の軸方向一方側の内周面40aとは、隙間が無く密着しており、シール性が担保される。
【0025】
出力シャフト50は、軸方向一方側に設けられた第1出力軸51と、軸方向他方側に設けられ第1出力軸51の外径に比して大きい外径の第2出力軸52とを備えている。第1出力軸51の外径は、内輪B2の内周面の内径に比して若干小さい。第1出力軸51は、内輪B2の内側に通されている。第1出力軸51は、内輪B2の内側に圧入されていない。第1出力軸51は、内輪B2の内側に隙間嵌めされている。第1出力軸51の軸方向一方側は、転がり軸受Bの軸方向一方側の面から突出している。
【0026】
第1出力軸51の軸方向他方側には、第2出力軸52が設けられている。第2出力軸52は、減速機ケース40の内部において減速機20の軸方向一方側に接続されている。第2出力軸52の軸方向他方側の面において遊星歯車機構24の複数の遊星ギヤ24bを回転可能に支持している。第2出力軸52は、遊星歯車機構24の太陽ギヤ24aが回転した際に、複数の遊星ギヤ24bが太陽ギヤ24aの周囲に沿って公転することで連動して回転する。
【0027】
転がり軸受Bの軸方向一方側には、第1出力軸51に固定された固定部材Eが設けられている。第1出力軸51には、固定部材Eを位置決めして固定する第2溝部51aが設けられている。第2溝部51aの深さは、第1出力軸51の強度に影響を及ぼさない大きさである。第2溝部51aの軸方向における幅は、固定部材Eの軸方向の幅に比して若干大きい。固定部材Eは、第2溝部51aに嵌め込まれる止め輪である。固定部材Eは、いわゆるEリングであり、環状体の一部に切欠き部を備え、切欠き部を介して第2溝部51aに嵌め込まれる。固定部材Eは、リング状のスリーブでもよく、第1出力軸51に圧入されてもよい。この場合、第2溝部51aは無くてもよい。
【0028】
固定部材Eの軸方向他方側の面と転がり軸受Bの軸方向一方側の面との間には、円環状のワッシャFが設けられている。ワッシャFは、いわゆるスラストワッシャである。ワッシャFは、固定部材Eの軸方向他方側の面に接触すると共に、転がり軸受Bの内輪B2の軸方向一方側の面に接触している。ワッシャFの材料は、例えば、樹脂または金属である。ワッシャFの中心には、貫通孔FHが設けられている。貫通孔FHの内径は、第1出力軸51の外径に比して若干大きい。ワッシャFの貫通孔FHには、第1出力軸51が通されている。ワッシャFの貫通孔FH内には、第1出力軸51が圧入されてもよく、第1出力軸51との間の気密性を確保してもよい。
【0029】
第2出力軸52の軸方向一方側の面と内輪B2の軸方向他方側の面との間には、環状のシール部材Sが設けられている。シール部材Sは、出力シャフト50と転がり軸受Bとの間を塞いでいる。シール部材Sの材料は、例えば、ゴム等の弾性部材である。本実施形態においてシール部材Sは、Oリングである。第2出力軸52の軸方向一方側の面には、環状の第1溝部52aが設けられている。第1溝部52aは、第2出力軸52の軸方向一方側の面から軸方向他方側に窪んでいる。シール部材Sは、第1溝部52aに嵌め込まれている。シール部材Sは、転がり軸受Bの内輪B2を固定部材Eに押し付ける向きに内輪B2の軸方向他方側の面に力を加えている。これにより、転がり軸受Bの内輪B2における軸方向一方側の面には、シール部材Sに押し付けられる向きにワッシャFから反力が加えられている。
【0030】
ギヤードモータ100の組み立ての過程では、減速機ケース40に予め転がり軸受Bを圧入しておき、予めシール部材を嵌めた出力シャフト50を減速機ケース40の軸方向他方側挿入し、転がり軸受Bから第1出力軸51を突出させる。その後、ワッシャFを第1出力軸51の軸方向一方側から挿入し、固定部材Eを第2溝部51aに嵌める。ギヤードモータ100の組み立ての過程では、転がり軸受Bを後に圧入してもよい。この場合、減速機ケース40の軸方向一方側に転がり軸受Bが嵌め込まれていない状態において、減速機ケース40の軸方向一方側から第1出力軸51が突出している。第2出力軸52には、予めシール部材Sが嵌め込まれている。この状態において減速機ケース40の軸方向一方側の開口からシール部材Sが第1溝部52aに嵌め込まれてもよい。その後、減速機ケース40の軸方向一方側の内周面に転がり軸受Bの外輪B1が圧入される。その後、ワッシャFの内側に第1出力軸51が通されて、ワッシャFが配置される。その後、第1出力軸51の第2溝部51aに固定部材Eが固定される。第2溝部51aの位置は、固定部材Eが固定された状態においてシール部材Sを軸方向に圧縮できる位置となっている。固定部材Eが固定された状態において、転がり軸受Bの内輪B2は、軸方向他方側の面側にシール部材Sが密着すると共に、軸方向一方側の面側にワッシャFの軸方向他方側の面が密着する。
【0031】
出力シャフト50の回転時において、転がり軸受Bの内輪B2は、シール部材Sを介した第2出力軸52の軸方向一方側の面と、ワッシャFを介した固定部材Eとにより押圧され、出力シャフト50に連動して回転する。このため、シール部材Sが出力シャフト50の回転に対して摩擦抵抗を生じさせることを抑制できる。
【0032】
上述したようにギヤードモータ100によれば、出力シャフト50において第2出力軸52の軸方向一方側の面と転がり軸受Bの内輪B2の軸方向他方側の面との間がシール部材Sにより塞がれているため、シール性が確保され、第1出力軸51の外周面と内輪B2の内周面との間に水等の異物が侵入したとしても、異物が減速機ケース40の内部に侵入することを抑制することができる。ギヤードモータ100によれば、転がり軸受Bの内輪B2の軸方向一方側の面と固定部材Eの軸方向他方側の面との間には、ワッシャFが設けられているため、第1出力軸51の外周面と内輪B2の内周面との間に水等の異物が侵入することを抑制することができる。
【0033】
ギヤードモータ100によれば、減速機ケース40の軸方向一方側の内周面に対して転がり軸受Bの外輪B1の外周面が圧入されているため、減速機ケース40の軸方向一方側の内周面40aに対して転がり軸受Bの外輪B1の外周面との間のシール性が確保される。ギヤードモータ100によれば、減速機ケース40の軸方向一方側の内周面40aに対して転がり軸受Bの外輪B1の外周面が圧入されているため、シール部材を必要とせず、加工時の工数および組み立て時の工数を低減することで組立作業性を向上することができる。ギヤードモータ100によれば、転がり軸受Bは、シールドベアリングであるため、軸方向一方側の面から減速機ケース40の内部に異物が侵入することを抑制することができる。
【0034】
ギヤードモータ100によれば、シール部材Sを固定するために第1溝部52aが第2出力軸52の軸方向一方側の面に設けられているため、第1出力軸51の強度を低下させることがなく、第1出力軸51の強度を確保することができる。ギヤードモータ100によれば、組み立て時において減速機ケース40の軸方向一方側の開口から第1出力軸51にシール部材Sを通すだけで、シール部材Sを第1溝部52aに嵌め込むことを可能とし、組立作業性を向上することができる。ギヤードモータ100によれば、シール部材Sが1つであるため、組立作業性を向上することができる。
【0035】
本発明が適用されるギヤードモータの用途は、特に限定されない。ギヤードモータは、屋内で使用されるモータであってもよいし、屋外で使用されるモータであってもよい。モータ本体の構造は、特に限定されない。減速機の構造は、特に限定されない。なお、本明細書において説明した各構成および各方法は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0036】
10 モータ本体、11 ロータ、11a シャフト、20 減速機、30 モータケース、40 減速機ケース、40a 内周面、50 出力シャフト、51 第1出力軸、51a 第2溝部、52 第2出力軸、52a 第1溝部、100 ギヤードモータ、B 軸受、B1 外輪、B2 内輪、E 固定部材、F ワッシャ、J 中心軸、S シール部材
図1
図2