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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124046
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】容器詰飲料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/00 20060101AFI20230830BHJP
   C12C 12/00 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
A23L2/00 W
A23L2/00 S
C12C12/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027597
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】311007202
【氏名又は名称】アサヒビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100193493
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 健史
(72)【発明者】
【氏名】中島 宏章
(72)【発明者】
【氏名】伊東 泰洋
【テーマコード(参考)】
4B117
4B128
【Fターム(参考)】
4B117LC08
4B117LE10
4B117LP17
4B117LP19
4B128CP15
(57)【要約】
【課題】開栓後に速やかに発泡する容器詰飲料を提供すること。
【解決手段】容器詰飲料の製造方法は、容器に、飲用液を充填する工程と、前記充填する工程の後に、前記容器を、30~60℃の環境に5~660秒間曝すことにより、加温する工程とを備える。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に、飲用液を充填する工程と、
前記充填する工程の後に、前記容器を、30~60℃の環境に5~660秒間曝すことにより、加温する工程と、
を備える、容器詰飲料の製造方法。
【請求項2】
前記飲用液が、ビール様発泡性飲料である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記容器の内面には、発泡性を向上させる凹凸構造が設けられている、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記容器は、金属製である、請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記加温する工程は、前記容器を30~60℃の液体と接触させることにより、前記容器を加温する工程を含む、請求項1~4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記充填する工程における前記飲用液の温度が、0~10℃である、請求項1~5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記容器詰飲料のカバー時間が、10秒以下である、請求項1~6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記容器が、フルオープンエンドタイプである、請求項1~7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
容器に、飲用液を充填する工程と、
前記充填する工程の後に、前記容器を、カバー時間が10秒以下になるような条件で加温する工程と、
を備える、容器詰飲料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器詰飲料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
容器詰飲料として、高い発泡性を有していることが求められるものがある。例えば、特許文献1(特開2021-080014号公報)には、充填性を損なうことなく発泡性を向上させることを課題とした発明として、胴部の内面に、所定のサイズのカルデラ状構造を、所定の密度で設けた発泡性飲料用缶が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-080014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、容器詰飲料の発泡性を更に高めたいと考えている。具体的には、開栓後、速やかに発泡する容器詰飲料を提供したいと考えている。そこで、本発明の課題は、開栓後に速やかに発泡する容器詰飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、特定の工程を採用することによって、上記課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明は、以下の手段により、実現できる。
[1]容器に、飲用液を充填する工程と、前記充填する工程の後に、前記容器を、30~60℃の環境に5~660秒間曝すことにより、加温する工程と、を備える、容器詰飲料の製造方法。
[2]前記飲用液が、ビール様発泡性飲料である、[1]に記載の製造方法。
[3]前記容器の内面には、発泡性を向上させる凹凸構造が設けられている、[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4]前記容器は、金属製である、[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]前記加温する工程は、前記容器を30~60℃の液体と接触させることにより、前記容器を加温する工程を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]前記充填する工程における前記飲用液の温度が、0~10℃である、[1]~[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7]前記容器詰飲料のカバー時間が、10秒以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8]前記容器が、フルオープンエンドタイプである、[1]~[7]のいずれかに記載の製造方法。
[9]容器に、飲用液を充填する工程と、前記充填する工程の後に、前記容器を、カバー時間が10秒以下になるような条件で加温する工程と、を備える、容器詰飲料の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、開栓後に速やかに発泡する容器詰飲料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の一実施形態について説明する。
【0008】
本実施形態に係る容器詰飲料の製造方法は、容器に飲用液を充填する工程と、充填する工程の後に、容器を所定条件にて加温する工程とを備える。本発明者らの知見によれば、飲用液を容器に充填した後の加温条件が、容器詰飲料の発泡性に影響を与える。そこで、特定の条件で加温することにより、開栓後に速やかに発泡する容器詰飲料を得ることができる。
【0009】
以下に、本実施形態について詳細に説明する。
【0010】
(ステップS1)飲用液の充填
まず、容器を準備し、飲用液を充填する。そして、容器を密封する。好ましくは、飲用液は、低温で充填される。低温で充填することにより、充填時に飲用液が発泡し、溢れることを防ぐことができる。充填時の飲用液の温度は、例えば0~10℃、好ましくは0~5℃である。
【0011】
(ステップS2)容器の加温
続いて、容器を加温する。この際、所望の発泡性が得られるような条件で、加温する。
【0012】
例えば、容器を、30~60℃の環境に5~660秒間曝すことにより、加温する。加温温度は、好ましくは、30~50℃である。このような条件で加温を行えば、十分な発泡性を得ることができる。また、容器の内圧が上昇し、容器が破損するようなこともない。
【0013】
より好ましくは、容器を液体に接触させることにより、容器を加温する。液体としては、例えば、水(湯)が使用される。具体的には、容器を、30~60℃、好ましくは30~50℃の水に、5~660秒間接触させる。これにより、所望の発泡性が得られるように、容器を加温することができる。なお、水は、どのような態様で容器に接触させられてもよい。例えば、シャワーにより、水を容器に接触させてもよい。あるいは、水中に容器を水没させることにより、容器を水に接触させてもよい。
また、充填後から加温開始までの時間は、長すぎないほうが良い。充填後、加温開始までの時間は、例えば5時間以内、好ましくは1時間以内、より好ましくは30分以内、さらに好ましくは15分以内である。
【0014】
あるいは、加温条件は、所望する発泡性が得られるように設定されてもよい。既述のように、加温条件は、発泡性に影響を与える。そこで、加温条件と発泡性との関係をあらかじめ調べておけば、所望する発泡性が得られるように、加温条件を設定することができる。発泡性の指標としては、例えば、カバー時間を用いることができる。カバー時間は、容器詰飲料を開栓してから、開口部が泡により覆われるまでの時間である。カバー時間は、後述する実施例に記載の方法により、測定することができる。
具体的には、予め、加温条件(温度及び時間)と、カバー時間との関係を調べておく。そして、カバー時間が10秒以下になるような加温条件を採用する。これにより、カバー時間が10秒以下になるような容器詰飲料を実現することができる。
【0015】
なお、ステップS1において、低温で飲用液を充填した場合には、通常、その後に容器が結露しやすくなる。これに対して、本ステップにより容器を加温すれば、容器の結露を防ぐこともできる。
【0016】
以上説明した方法により、容器詰飲料が製造される。本実施形態によれば、上述のとおり、容器に飲用液が充填され、密封された後に、所定の条件によって容器が加温される。これにより、開栓後に速やかに発泡する容器詰飲料を得ることができる。
【0017】
(その他)
本実施形態に係る容器詰飲料は、高い発泡性が求められる飲料であればよく、特に限定されない。
【0018】
好ましくは、充填される飲用液は、ビール様発泡性飲料である。「ビール様発泡性飲料」とは、アルコール含有量、麦芽及びホップの使用の有無、発酵の有無に関わらず、ビールと同等、又はそれと似た風味・味覚及びテクスチャーを有し、高い止渇感・ドリンカビリティー(飽きずに何杯も飲み続けられる性質)を有する発泡性飲料を意味する。ビール様発泡性飲料は、アルコール飲料であってもよく、アルコール含量が1v/v%未満であるいわゆるノンアルコール飲料又はローアルコール飲料であってもよい。また、麦芽を原料とする飲料であってもよく、麦芽を原料としない飲料であってもよい。また、発酵工程を経て製造される発酵飲料であってもよく、発酵工程を経ずに製造される非発酵飲料であってもよい。
ビール様発泡性飲料としては、ビール、麦芽を原料とする発泡酒、麦芽を使用しない発泡性アルコール飲料、ローアルコール発泡性飲料、及びノンアルコールビール等が挙げられる。その他、麦芽を原料とし、発酵工程を経て製造された飲料を、アルコール含有蒸留液と混和して得られたリキュール類であってもよい。
より好ましくは、充填される飲用液は、ビールである。
【0019】
容器としては、特に限定されるものではない。
好ましくは、容器は、金属製である。すなわち、容器は、金属製の飲料用缶である。
また、好ましくは、容器は、フルオープンエンドタイプの飲料用缶である。
【0020】
フルオープンエンドとは、上面の30%以上の領域が開口されるタイプの飲料用缶である。この飲料用缶は、上面、胴部及び下面を有している。上面は、缶蓋により閉じられている。そして、缶蓋(上面)の30%以上の領域が、開栓時に開口される。開口される領域は、好ましくは、缶蓋の50%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは缶蓋全体である。
更に、好ましくは、容器の内面に、発泡性を向上させる凹凸構造が設けられていることが好ましい。
【0021】
フルオープンエンドの好ましい一態様では、缶の上面が、円形の缶蓋により閉じられている。そして、缶蓋の全周にわたってスコア(切欠き)加工が施されている。また、缶蓋にはプルタブが設けられている。開栓時には、プルタブを引くことにより、スコアに沿って缶蓋全体が胴部から脱離し、開口する。
但し、缶蓋は、完全には脱離せず、缶蓋の一部が開栓後も胴部に残っている構成が採用されてもよい。
【0022】
フルオープンエンドの飲料用缶は、通常の飲料用缶と比べ、缶胴からの発泡を視覚的に捉えることができる。そのため、ビール様発泡性飲料に利用した場合には、ジョッキに注いだビールを想起することにつながる。加えて、通常の飲料用缶よりも同一角度で口の中に流入する液量が多いことから、泡と液を一度に楽しむことができる。
但し、ビール以外の飲料を充填した場合であっても、発泡に伴い香気成分が揮散するため、内容物の風味を強く感じることができる。
【実施例0023】
以下、本発明をより詳細に説明するため、本発明者らによって行われた実施例について説明する。
【0024】
まず、ビールを準備した。そして準備したビール340mlを、350ml容アルミ缶(フルオープンエンド)に充填した。充填時のビールの温度は、0℃であった。なお、アルミ缶としては、開栓すると実質的に上面全体が開口するよう構成された容器を使用した。一方で、恒温水槽に所定温度の水(お湯)を入れた。そして、水中に、ビールを充填したアルミ缶を所定時間浸した。
所定時間経過後、当該アルミ缶を取り出し、24時間4℃下で静置した。その後、室温で開栓した。そして、開栓後、開口部が泡で覆われるまでの時間を、カバー時間として測定した。
恒温水槽の水の温度と、ビールを水に浸した時間とを変更して、カバー時間を評価した。各試験区についてn=5にて評価を行い、平均値をカバー時間の結果とした。
【0025】
表1に、結果を示す。加温温度とは、恒温水槽に張った水の温度である。加温時間とは、容器を浸した時間である。加温温度が30~60℃であり、加温時間が5~660秒間である試験区3~16に係る飲料においては、カバー時間が10秒以下であり、開栓後速やかに発泡する飲料であった。一方で、加温温度が30℃を下回る試験区1及び2においては、カバー時間が10秒を超えており、試験区3~16に比べると、発泡速度が遅かった。
【0026】
【表1】