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特開2023-124078締結具の力学的状態の無線診断のための装置及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124078
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】締結具の力学的状態の無線診断のための装置及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/00 20060101AFI20230830BHJP
   G06K 19/07 20060101ALI20230830BHJP
   F16B 31/02 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
G01L5/00 103E
G06K19/07 170
G06K19/07 090
G06K19/07 230
F16B31/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027652
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000144485
【氏名又は名称】株式会社サンノハシ
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西郷 史隆
【テーマコード(参考)】
2F051
【Fターム(参考)】
2F051AA06
2F051AB06
2F051BA08
(57)【要約】
【課題】 メートルオーダの通信距離で締結具の無線診断が行えるようにする。
【解決手段】 締結ボルト31のヘッド32とナット33の少なくとも一方の側に座金装置1が組み込まれる。座金装置1は、コンデンサを内蔵した座金部3と、無線ICタグ部5を有する。無線ICタグ部5は、座金装置1のコンデンサの容量値に応じた測定データを、外部の無線ICタグリーダに無線送信する。その無線送信の距離は例えば数メートル、場合によると10メートル以上である。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
締結具の力学的状態の無線診断のための装置において、
前記締結具の力学的状態に応じて変形する変形部と、
外部の診断システムから無線給電を受けて動作して、前記診断システムと無線通信する無線ICタグ部と
を備え、
前記変形部は電子的要素を内蔵し、前記変形部の変形に伴い前記電子的要素の電子的特性値が変化するようになっており、
前記無線ICタグ部は、前記電子的要素と電気的に接続され、前記電子的要素の前記電子的特性値に応じた測定データを生成し、前記測定データを前記診断システムへ無線送信するように構成された、
装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記変形部が、前記締結部の座金として機能する座金部であり、
前記電子的要素がコンデンサである、
装置。
【請求項3】
請求項2記載の装置において、
前記コンデンサが、2枚以上の導電層と、前記導電層の相互間にサンドイッチされた1枚以上の誘電層を有し、
前記導電層と前記誘電層が、前記座金部の厚み方向に積層された、
装置。
【請求項4】
請求項3記載の装置において、
前記コンデンサが、前記座金部より薄い平座金の形状をもつ、
装置。
【請求項5】
請求項3記載の装置において、
前記コンデンサが、前記座金部より薄い皿座金の形状をもつ、
装置。
【請求項6】
請求項1記載の装置において、
前記変形部が平座金状であり、前記無線ICタグ部が平板状であり、
前記変形部と前記無線ICタグ部が互いに平面的に配置されて結合され、それにより、前記装置が1枚の平板形状に形成された、
装置。
【請求項7】
請求項1記載の装置において、
前記変形部と前記無線ICタグ部とを繋ぐ可撓性のブリッジ部をさらに備える、
装置。
【請求項8】
請求項1記載の装置において、
前記無線ICタグ部の外面に光学的に読み取り可能なマーカを有し、
前記マーカに、前記測定データを保存する場所に関するデータが記録された、
装置。
【請求項9】
締結具の力学的状態の無線診断のための診断システムにおいて、
前記診断システムは、請求項1記載の装置と組み合わせて用いられ、
前記装置の前記無線ICタグ部に無線給電をし、前記無線ICタグ部から前記測定データを無線受信する無線ICタグリーダと、
前記測定データを用いて前記締結具の診断を行ない、診断結果の保存と表示を行う診断及び表示装置と
を備えた診断システム。
【請求項10】
請求項9記載の診断システムにおいて、
前記装置の外面に表示されたマーカを光学的に読み取り、前記マーカに記録されたマーカデータを得るマーカリーダをさらに備え、
前記診断及び表示装置が、前記締結具の診断、前記診断結果の保存、又は前記診断結果の表示のために、前記マーカデータを利用するように構成された、
診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締結ボルトなどの締結具の力学的状態(例えば、ボルト軸力のような締結力の適否や値など)を、無線で診断するための装置及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来装置が、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1には、そのヘッドの凹部内に収容された電子的センシング部材をもつ締結ボルトと、その電子的センシング部材と無線近接通信を行うモニタ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-142197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
締結具の無線診断で用いられる無線通信の最大距離は、より長いほど有利である。例えば、ドローンを使って、鉄橋やトンネル天井などの高所にある締結具の状態を調べる場合、ドローンの飛行の安定のために、ドローンと締結具との間の距離が、最低で1メートル程度、好ましくは数メートル以上確保できることが望ましい。
【0006】
締結具の一つの典型は、締結ボルトとナットの組合せである。被締結部材の構造や配置により、締結ボルトのヘッドが無線通信しやすい側に来る場合もあれば、逆に、ナットが無線通信しやすい側に来る場合もある。いずれの場合にも、締結具の無線診断ができることが好ましい。
【0007】
本発明の一つの目的は、メートルオーダの通信距離で締結具の無線診断が行えるようにすることにある。
【0008】
本発明の別の目的は、締結ボルトのヘッドとナットのいずれが無線通信しやすい側に位置する場合にも、締結ボルトの無線診断ができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態に従う、締結具の力学的状態の無線診断のための装置は、前記締結具の力学的状態に応じて変形する変形部と、外部の診断システムから無線給電を受けて動作して、前記診断システムと無線通信する無線ICタグ部とを備える。前記変形部は電子的要素を内蔵し、前記変形部の変形に伴い前記電子的要素の電子的特性値が変化するようになっている。前記無線ICタグ部は、前記電子的要素と電気的に接続され、前記電子的要素の前記電子的特性値に応じた測定データを生成し、前記測定データを前記診断システムへ無線送信するように構成される。
【0010】
一実施形態に従えば、前記変形部が、前記締結部の座金として機能する座金部であり、前記電子的要素がコンデンサである。
【0011】
一実施形態に従えば、前記コンデンサが、2枚以上の導電層と、前記導電層の相互間にサンドイッチされた1枚以上の誘電層を有する。前記導電層と前記誘電層が、前記座金部の厚み方向に積層される。導電層には鋼、アルミ、スティールなどの導電体を用い、誘電層にはセラミックス(窒化ケイ素、アルミナ等)などの絶縁体を用いることができ、それぞれ、締結具に組み込まれて使用されるのに耐えられる高い面圧強度(圧縮強度)と靭性をもつ素材が好ましい。
【0012】
一実施形態に従えば、前記コンデンサが、前記座金部より薄い平座金の形状をもつ。
【0013】
一実施形態に従えば、前記コンデンサが、前記座金部より薄い皿座金の形状をもつ。
【0014】
一実施形態に従えば、前記変形部が平座金状であり、前記無線ICタグ部が平板状であり、前記変形部と前記無線ICタグ部が互いに平面的に配置されて結合され、それにより、前記装置が1枚の平板形状に形成される。
【0015】
一実施形態に従う装置は、前記変形部と前記無線ICタグ部とを繋ぐ可撓性のブリッジ部をさらに備える。
【0016】
一実施形態に従う装置は、前記無線ICタグ部の外面に光学的に読み取り可能なマーカを有する。前記マーカに、前記測定データを保存する場所に関するデータが記録される。
【0017】
一実施形態に従う、締結具の力学的状態の無線診断のための診断システムは、上記した構成の装置と組み合わせて用いられる。この診断システムは、前記装置の前記無線ICタグ部に無線給電し、前記無線ICタグ部から前記測定データを無線受信する無線ICタグリーダと、前記測定データを用いて前記締結具の診断を行ない、診断結果の保存と表示を行う診断及び表示装置とを備える。
【0018】
一実施形態に従う診断システムは、前記装置の外面に表示されたマーカを光学的に読み取り、前記マーカに記録されたマーカデータを得るマーカリーダをさらに備える。そして、前記診断及び表示装置が、前記締結具の診断、前記診断結果の保存、又は前記診断結果の表示のために、前記マーカデータを利用するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施形態に係る締結ボルトの診断のための座金装置の平面図を示す。
図2】同座金装置のA-A断面図を示す。
図3】同座金装置と締結ボルトとナットを用いた締結構造の一例の一部断面図を示す。
図4】同座金装置を用いた締結具診断システムの一例の機能ブロック図を示す。
図5】別の実施形態にかかる座金装置の断面図を示す。
図6】また別の実施形態にかかる座金装置の平面図を示す。
図7】またさらに別の実施形態にかかる座金装置の平面図を示す。
図8図7に示した座金装置を用いた締結具診断システムの一例の機能ブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、一実施形態に係る締結具の診断のための座金装置の平面図を示す。図2は、同座金装置のA-A断面図を示す。
【0021】
図1図2に示すように、座金装置1は、座金部3と無線ICタグ部5を有し、座金部3と無線ICタグ部5は分離しないよう互いに結合されている。座金部3の形状は、例えばドーナツ板形状の平座金状である。無線ICタグ部5の形状は、例えば平板形状であり、その厚みは座金部3と同じかより薄い。座金部3と無線ICタグ部5は互いに平面的に配置されて結合されており、よって、座金装置1は、1枚の平板の形状を持つ。
【0022】
座金部3は、平面視の中央に、締結具のボルトのシャンクを通すための貫通孔7が開いている。座金部3は、例えば同じドーナツ板形状の薄い層11,13,15,17及び19を厚み方向へ積層した構造体を有する。
【0023】
この積層構造体は、その厚みの内部、例えば厚みの中央部に、電子部品としてのコンデンサ9を内蔵する。コンデンサ9は、例えば座金部3より薄い平座金の形状をもち、例えば、ペアの電極板としての2枚以上の導電層(典型的には、アルミニウム、銅、あるいはステンレススティールなどの金属の層)15と17と、これら2枚以上の導電層15と17の相互間にサンドイッチされた1ない以上の誘電層19を有する。コンデンサ9の両側の外面を、2枚の絶縁保護層11と13が覆う。絶縁保護層11と13は、コンデンサ9を締結具や被締結部材から隔離(つまり、直接接触しないように)して、コンデンサ9を保護する。
【0024】
座金部3内のコンデンサ9は、締結具の力学的状態を電気信号に変換するセンサとして機能する。すなわち、座金部3が例えば締結ボルト又はナットの座金として使用された場合、座金部3に加わる圧縮力(締結ボルトの軸力)により座金部3に変形(厚みの縮小、半径の拡大、厚み方向の剪断変形など)が発生し、その変形がコンデンサ9の静電容量の値を変化させる。なので、コンデンサ9の静電容量値を電気的に検出することで、締結具の力学的状態(例えば、締結ボルトの軸力の適否や値)を示す電気信号が得られる。
【0025】
座金部3は、座金として機能するのに十分な圧縮強度と靭性をもつ。これは、上記の絶縁保護層11と13、及び誘電層19が、十分な圧縮高度と靭性をもつ材料で作られることにより達成される。そのような材料の例として、ある種のファインセラミックスがある。ファインセラミックスには、ジルコニア系、窒化ケイ素系、炭化ケイ素系、アルミナ系など幾つか種類があるが、その中で、とりわけ、ジルコニア系のファインセラミックスは好ましい。ジルコニア系ファインセラミックは、3000MPa程度の圧縮強度をもつことができ、それは一般の締結ボルトの引張強度である数百MPaより遥かに大きい。また、ジルコニア系ファインセラミックの靭性は、7~8MPa・√m程度であって、これは本目的に使い得る。
【0026】
座金部3の積層構造体の製造には、個別のシートとして用意された層11,13,15,17及び19を重ねて結合する方法が用いられてもよいし、あるいは、セラミックへの金属コーティングのようなコーティング技術、めっき技術、あるいは物質堆積技術などが利用されてもよい。
【0027】
座金装置1の無線ICタグ部5は、例えば、UHF帯またはそれ以上の高周波数の電波で、無線給電と無線通信を行うRFIDタグとして機能する。無線ICタグ部5は、板状又はカード形状の絶縁材料(例えばプラスティックやファインセラミックス)製の保護体21と、保護体21内に収容されたIC部21とアンテナ部23をもつ。
【0028】
IC部21は、アンテナ部23と接続され、また、座金部3のコンデンサ9とリード25により接続される。IC部21は、外部の無線ICタグリーダ41(図4又は図8に示す)から、アンテナ部23を通じて無線給電を受けて動作する。IC部21は、動作すると、コンデンサ9の静電容量に応じた測定データを生成し、その測定データをアンテナ部を通じて外部の無線ICタグリーダ41へ無線送信する。
【0029】
IC部21は、その内部に、IC部21(無線ICタグ部5)の識別データ及びその他の所定データ(例えば、外部のデータベース内の測定データの保存場所のアドレス(URLなど))を記憶している。IC部21は、動作時、上記の識別データ及びその他の所定データも、外部の無線タグリーダへ無線送信する。
【0030】
ところで、座金部3は、締結具の締結力(例えば、締結ボルト軸力)を電気信号に変えるセンサとして、コンデンサ9に代えて又はそれと組み合わせて、締結具の締結力(例えば、締結ボルト軸力)に応じて変化する何らかの物理的特性値(例えば電気抵抗値、リアクタンス値、それらの組合せ、共振周波値など)をもつ部品を採用してもよい。例えば、絶縁層の表面に貼られた抵抗歪ゲージを、コンデンサ9に代えて用いてもよい。
【0031】
図3は、座金装置1を用いた締結構造の一例の一部断面図を示す。
【0032】
図3に示された例では、締結ボルト31とナット33の組合せによって、被締結材35と37が締結されている。座金装置1が、ナット33と一方の被締結材35の間に組み込まれる。あるいは、座金装置1が、締結ボルト31のヘッド32と他方の被締結材37の間に設けられる。ここで、ナット33とボルトヘッド32の両方の側にそれぞれ座金装置1と1が示されているのは、図面での説明の都合にすぎない。実用上は、ナット33とボルトヘッド32うちのいずれか一方の側(例えば、外部の無線ICタグリーダ41との無線通信に都合の良い側)にのみ、座金装置1が設けられてよい。
【0033】
座金装置1は、図3では締結具としての締結ボルト31又はナット33とは別個の部品である。しかし、座金装置1は、締結ボルト31又はナット33に一体化されたもの、つまり、締結ボルト31又はナット3の一部分であってもよい。例えば、図3において、締結ボルト31のヘッド32は、座金として機能するフランジ34を、その一部としてもつが、このフランジ34が座金装置1として構成されていてよい。同様に、ナット33に、座金装置1が一体化されていてもよい。
【0034】
図4は、座金装置1を用いた締結具診断システムの一例の機能ブロック図を示す。
【0035】
図4に示すように、締結具診断システム40は、締結具診断装置39とデータベース47を有する。データベース47は、締結具診断装置39の外部に設けられてもよいし、あるいは、締結具診断装置39に内蔵されてもよい。前者の場合、締結具診断装置39とデータベース47は、例えばインターネットのような通信ネットワーク45を通じて相互に通信可能であってよい。
【0036】
締結具診断装置39は、座金装置1を組み込んだ締結具の力学的状態を診断し、診断結果の表示及び保存を行う装置である。締結具診断装置39は、人間による携帯か、あるいは、自動車やドローンなどに搭載されることで、座金装置1の配置場所の近くまで移動可能である。
【0037】
締結具診断装置39は、無線ICタグリーダ41と診断及び表示装置43を有する。無線ICタグリーダ41は、座金装置1の無線ICタグ部5と無線通信49することにより、無線ICタグ部5に給電し、また、無線ICタグ部5から前述した測定データや識別データやその他のデータを受信する。診断及び表示装置43は、座金装置1から受信した測定データを用いて、座金装置1が関わる締結具の力学的状態(締結ボルトの軸力の適否、あるいは軸力の値など)を診断し、診断結果を表示する。
【0038】
締結具診断装置39の具体的ハードウェアには、専用のハードウェアを採用してもよいし、あるいは、汎用的なハードウェア、例えば、スマートフォンのような汎用の通信及び情報処理装置を採用しても良い。例えばスマートフォンを用いる場合、そのスマートフォンに無線ICタグリーダ41を外付けし、かつ、そのマートフォンに診断及び表示装置43として機能するアプリケーションソフトウェアをインストールするか、診断及び表示装置43として機能するオンラインのクラウドサービスへのアクセス窓口を加えることにより、締結具診断装置39が実現できる。
【0039】
診断及び表示装置43は、また、座金装置1から受信した識別データやその他のデータ(例えば、データベース47内の座金装置1に関するデータ保存場所のURLなど)を用いて、データベース47の上記保存場所にアクセスして、その保存場所に座金装置1の測定データや診断結果を保存したり、その保存場所から、過去の測定データや診断結果の履歴を読みだして、その履歴と最新の診断結果とを表示したり評価したりすることができる。
【0040】
座金装置1の無線ICタグ部5と、締結具診断装置39の無線ICタグリーダ41には、公知のRFID技術を採用することができる。公知のRFID技術によれば、例えばUHF帯電波を用いた場合、座金装置1と締結具診断装置39の間の無線通信49の通信可能距離は1メートルから数メートル、場合によれば10メートル以上になり得る。
【0041】
図5は、別の実施形態にかかる座金装置の断面図を示す。
【0042】
図5に示す座金装置1は、図1図2に示した座金装置1と比較して、次の点で異なる。すなわち、図5に示す座金装置1では、座金部3のコンデンサ9(導電層15、誘電層19及び導電層17の積層構造体)が、この断面視で、座金部3の厚み方向(つまり、締結ボルトの軸方向)に対して傾斜している。要するに、コンデンサ9が皿座金のような形状を有している。座金装置1の締結具に対する配置として、一つには、コンデンサ9の断面形状を山に例えたならば、(皿座金の使用法とは逆に)座金部3の山の裾野にあたる側の面(図3中で上側面)に、締結ボルトのヘッド又はナットが当接する配置が採しえる。あるいは、(皿座金の使用法のように)山の頂上側の面(図3中で上側面)に、締結ボルトのヘッド又はナットが当接する配置も採しえる。
【0043】
締結具を締めると、締結具からの圧縮力で座金部3が厚み方向に剪断変形する。その場合、上記の前者の配置によれば、コンデンサ9の傾斜度がより大きくなるように(コンデンサ9の径が伸びるように)、コンデンサ9が剪断変形する。逆に後者に配置によれば、コンデンサ9の傾斜度がより小さくなるように(コンデンサ9の径が縮むように)、コンデンサ9が剪断変形する。このような剪断変形により、締結具からの圧縮力の変化に対するコンデンサの容量値の変化割合が、より大きくなる(測定感度が増す)ことが期待し得る。
【0044】
図6は、また別の実施形態にかかる座金装置の平面図を示す。
【0045】
図6に示す座金装置1は、図1図2に示した座金装置1と比較して、次の点で異なる。すなわち、図6に示す座金装置1は、座金部3と無線ICタグ部5とを、細長いブリッジ部51が繋いでおり、ブリッジ部51内にリード25が収容されている。ブリッジ部51の幅は、座金部3の直径より狭くてよく、また、無線ICタグ部5の幅よりも狭くてよい。ブリッジ部51は、例えば、湾曲可能な可撓性と柔軟性のある絶縁材料(例えば、プラスティックなど)で作られる。ブリッジ部51の長さは任意に設計されてよい。
【0046】
締結具が配置される可能性のある場所は多様であり、図1に示したような平面形状の座金装置1を用いることが難しい場所があり得る。例えば、締結具の近傍に無線ICタグ部5を置ける平らなスペースが無い場所がある。そのような場所では、図6に示した。ブリッジ部51をもつ座金装置1を使えば、無線ICタグ部5を、締結具から離れた適当な平らな場所に配置できる。
【0047】
図7は、またさらに別の実施形態にかかる座金装置の平面図を示す。
【0048】
図7に示す座金装置1は、図1図2に示した構成に加えて、無線ICタグ部5の外表面上に、例えば印刷された、光学的に読み取り可能な(典型的には可視的な)マーカ53をもつ。マーカ53は、例えばバーコードやQRコード(登録商標)のような機械読み取り可能なものでよく、さらに、人間が読める文字と組み合わされてもいい。マーカ53には、例えば、この座金装置1の無線ICタグ部5に記憶されたと同じデータ、例えば、座金装置1の識別データ、座金装置1のに割り当てられたデータベース内47のデータ保存場所データ(例えば、URL)などが記述されてよいし、さらに、無線ICタグ部5には記憶されてないが、締結具の診断、点検又は管理に役立つような補助データが記述されてよい。
【0049】
図8は、図7に示した座金装置を用いた締結具診断システムの一例の機能ブロック図を示す。
【0050】
図8に示す締結具診断システム40では、図4に示した構成に加えて、締結具診断装置39がマーカリーダ55を有する。マーカリーダ55は、例えば、望遠撮影機能をもつカメラであり、無線ICタグリーダ41の無線通信49の距離と同程度以上の距離から、締結具とその周辺の映像を撮影したり、締結具の座金装置1のマーカ53の映像を撮影することができる。無線ICタグリーダ41は、撮影したマーカ53の映像から、マーカ53に記録された上記の識別データやデータ保存場所データや補助データを読み取る。マーカリーダ55が撮影した映像やマーカ53から読み取った上記データは、診断及び表示装置43に利用される。診断及び表示装置43は、既に説明した測定データや診断結果や評価結果の扱いに加えて、例えば、マーカリーダ55が撮影した映像を表示したり、データベース74の上記データ記録場所にその撮影映像を保存したり、同記録場所から過去の撮影映像を読みだして表示したりすることができる。
【0051】
図8に示す締結具診断システム40では、締結具診断装置39として、図8に示したものより簡易な構成のもの、例えば、マーカリーダ55と診断及び表示装置43は備えるが、無線ICタグリーダ41は備えないものを、場合に応じて用いてよい。上記の簡易な構成の締結具診断装置39は、座金装置1の無線ICタグ部5とは通信できないが、締結具の映像を撮影したり、マーカ53のデータは読み取れるので、座金部3からの測定データを利用しない締結具の診断、例えば、撮影した映像を利用した締結具の診断などに利用できる。
【0052】
したがって、図7に示した無線ICタグ部5とマーカ53を備えた座金装置1は、座金部3からの測定データを利用した診断だけでなく、その測定データを利用しない診断にも有用である。
【0053】
以上説明した実施形態は、説明のための単なる例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態のみに限定する趣旨ではない。本発明は、上記の実施形態とは違うさまざまな形態で、実施することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 座金装置
3 座金部
5 無線ICタグ部
9 コンデンサ
11、13 保護層
15、17 導電層
19 誘電層
21 IC部
23 アンテナ部
25 リード
27 保護体
39 締結具診断装置
40 締結具診断システム
41 無線ICタグリーダ
43 診断及び表装置
45 通信ネットワーク
47 データベース
49 無線通信
51 ブリッジ部51
53 マーカ
55 マーカリーダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8