(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012408
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】壁構造
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20230118BHJP
【FI】
E04F13/08 101T
E04F13/08 101M
E04F13/08 101F
E04F13/08 101Q
E04F13/08 101P
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205293
(22)【出願日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2021116011
(32)【優先日】2021-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年10月27日、カタログ『外観に彩りを。建物に強さを。FIRDOLA フィルドラ』にて公開。 2021年11月1日、 https://www.kmew.co.jp/ https://www.kmew.co.jp/shouhin/firdola/ https://www.kmew.co.jp/shouhin/firdola/images/firdola_tec.pdfにて公開。
(71)【出願人】
【識別番号】399117730
【氏名又は名称】住友金属鉱山シポレックス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大須賀 正実
(72)【発明者】
【氏名】西井 大起
(72)【発明者】
【氏名】枝國 雄太
(72)【発明者】
【氏名】常俊 淳次
(72)【発明者】
【氏名】小林 寛明
(72)【発明者】
【氏名】小林 沙瑶
【テーマコード(参考)】
2E110
【Fターム(参考)】
2E110AA42
2E110AB04
2E110AB22
2E110AB23
2E110AB27
2E110AB28
2E110BA12
2E110BB04
2E110BB22
2E110CA04
2E110CC02
2E110CC03
2E110CC06
2E110CC23
2E110DA03
2E110DA12
2E110DB02
2E110DC01
2E110GA24Y
2E110GA33W
2E110GA33Y
2E110GB02Y
2E110GB02Z
2E110GB23W
2E110GB23Y
(57)【要約】
【課題】胴縁を任意の位置に設けやすく、また、パネルのロッキングが、化粧面材及び胴縁で妨げられ難い壁構造を提供する。
【解決手段】壁構造1は、表面略長方形のパネル2が、長辺21同士及び短辺22同士を隣接させて上下左右方向に配置されている。また表面略長方形の化粧面材3がパネル2の表面側に胴縁4を介して取り付けられている。化粧面材3の取り付け位置において、胴縁4が位置しない箇所に、胴縁4に連結材12を介して連結される補助胴縁11を備えている。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面略長方形のパネルが、長辺同士及び短辺同士を隣接させて上下左右方向に配置され、表面略長方形の化粧面材が前記パネルの表面側に胴縁を介して取り付けられる壁構造であって、前記化粧面材の取り付け位置において、前記胴縁が位置しない箇所に、前記胴縁に連結材を介して連結される補助胴縁を備えている、壁構造。
【請求項2】
ロッキング機構を有する表面略長方形のパネルが、長辺同士及び短辺同士を隣接させて上下方向に配置され、前記パネルの表面に化粧面材と直交する方向に胴縁がアダプターを介して取り付けられ、表面略長方形の化粧面材は、長辺方向を横に前記パネルの表面側の胴縁に、留具を介して積層して取り付けられ、前記複数のパネルのロッキングを妨げにくいように取り付けられている壁構造であり、開口部、出隅部及び入隅部に前記胴縁に連結材を介して、補助胴縁を取り付けて化粧面材を取り付けることにより、胴縁と同じ変形追従性能を有してなる、壁構造。
【請求項3】
前記各パネルは、前記躯体構造にロッキング可能に縦長に取り付けられており、前記胴縁は、上下方向に長い縦胴縁であり、前記各縦胴縁は、短辺方向中央および上下方向にアダプターを介して略一直線上に位置するように、前記パネル毎に取り付けられており、アダプターは、パネルのロッキングに対し、前記縦胴縁の動きを緩和できる機構を持っており、前記化粧面材は、前記縦胴縁に横長に積層して取り付けられている、請求項1又は2に記載の壁構造。
【請求項4】
前記連結材は、連結材本体と少なくとも一対のLアングルとを備え、前記連結材本体の一端は、前記補助胴縁に最も近い前記縦胴縁と前記少なくとも一対のLアングルの少なくとも1つで連結されており、前記連結材本体の他端は、前記補助胴縁と前記少なくとも一対のLアングルの他の少なくとも1つで連結されている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の壁構造。
【請求項5】
前記連結材は、連結材本体と一対のT型ジョイントとを備え、前記連結材本体の一端は、前記補助胴縁に最も近い前記縦胴縁と前記一対のT型ジョイントの1つで連結されており、前記連結材本体の他端は、前記補助胴縁と前記一対のT型ジョイントの他の1つで連結されている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の壁構造。
【請求項6】
前記連結材は、壁面の開口部において、化粧面材を取り付けるための補助胴縁を胴縁に固定して下地を形成する、請求項1乃至5いずれか1項に記載の壁構造。
【請求項7】
出隅部において隣接する一対の前記パネルは、一方を勝ち側とし、他方を負け側として弾性体を介して配置されて前記構造躯体に取り付けられ、隣接する一対の前記パネルには、それぞれ、前記縦胴縁が取り付けられるとともに、前記各縦胴縁には前記出隅部の方向に連結材を介して前記補助胴縁が連結されており、前記勝ち側の前記パネルの前記縦胴縁に連結された前記補助胴縁は、前記勝ち側のパネルの小口より外方に突出しており、前記負け側の前記パネルの前記縦胴縁に連結された前記補助胴縁は、前記勝ち側のパネルの小口付近に位置しており、前記勝ち側のパネルの前記補助胴縁に固定された留具に、前記化粧面材の端部が係止され、当該補助胴縁に固定された出隅材留具に、断面略L字型の出隅材の両片が係止され、前記負け側のパネルの前記補助胴縁に固定された留具に、前記化粧面材の端部が係止されている、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の壁構造。
【請求項8】
前記パネルの表面に取り付けられた前記胴縁に前記化粧面材が留具を介して積層して取り付けられ、前記留具の少なくとも一部は長尺物であって、当該長尺物の留具が、前記補助胴縁と、前記連結材を介して前記補助胴縁と連結された前記胴縁とにわたって取り付けられている、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の壁構造。
【請求項9】
前記パネルの表面に取り付けられた前記胴縁に前記化粧面材が留具を介して積層して取り付けられ、前記留具の少なくとも一部は長尺物であって、当該長尺物の留具が、少なくとも前記補助胴縁と、前記連結材を介して前記補助胴縁と連結された前記胴縁と、当該胴縁に対して前記補助胴縁と反対側に隣接する一つの前記胴縁とにわたって取り付けられている、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の壁構造。
【請求項10】
前記複数のパネルは、ALCパネルからなり、前記複数の化粧面材は、窯業系サイディングからなる請求項1乃至9のいずれか1項に記載の壁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁構造に関する。より詳細には、パネルと胴縁と化粧面材とを備える壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コンクリートパネルなどの既存壁に対して施工容易な外壁施工構造が記載されている。この外壁施工構造は、外壁板保持能力を有する既存壁に対して、金属胴縁を固定してなる金属下地組と、金属下地組に留め付けられた複数の外壁板とから構成されている。そして、既存壁のコーナー部における金属下地組には、出隅柱を留め付けてある。出隅柱を金属下地組に留め付けるに当っては、コーナー用留め付け金具を用いる。コーナー用留め付け金具は、基板部の上方にビス穴を穿設した上方当接部を有しており、ビス穴にビスを挿通すると共に、ビスを、既存壁に固定した金属胴縁にねじ込むことにより、コーナー用留め付け金具を金属下地組に固定している。
【0003】
このような外壁施工構造は、外壁板や出隅柱を留め付けるため、各金属胴縁を既存壁に固定している。
【0004】
また、化粧面材として窯業系、金属系のサイディングが広く用いられており、主に木造住宅が多いが、近年は一般建築にも採用されている。また、建築物の改装として、既存外壁の上に施工する例もある。この場合においては、下地鋼材(縦胴縁)に化粧面材を取り付けているが、開口部・出隅部・入隅部にも下地鋼材が必要となる。ただし、既存の技術においては、下地鋼材もしくは下地となる既存の外壁材の地震時に発生する変形に対して、化粧面材及び既存の外壁材の耐震性や変形に対して考慮した下地鋼材の免振機構・固定方法十分であるとは言えない。
【0005】
ALCパネルや押出成形板に化粧面材などを取り付ける場合、直接接着などで取り付けるのではなく、胴縁などを介して取り付ける事が一般的である。ALCパネルや押出成形板は縦方向に取り付けることが多く、取付け工法はロッキング構法が標準であり、一枚一枚がパネル下部を支点に小回転して変形に対して追従する構法を採用している。そのALCパネル、押出成形板に窯業系、金属系サイディングなどのパネルを取り付ける場合は横壁で取り付けられることが標準であるが、ALCパネル、押出成形板がロッキング構法を採用していることから、胴縁は横に流すことが一般的であった。
【0006】
特許文献2には、パネルのセンターにボルトで胴縁を固定し、横方向に胴縁を流す(横胴縁)ことで、ロッキングの動きを拘束しないように、横胴縁がパネルの動きを拘束しないようすべり材を挿入する構造などで構成されている。
【0007】
また、リフォーム向け構法(例えば、ニチハMARCシステム)では、アンカーでALCパネルにアタッチメントを固定し、アタッチメントに胴縁を縦方向(縦胴縁)にねじで固定し、窯業系サイディングを胴縁に固定している。この場合、胴縁はアンカー、ねじ及びビスでALCパネルに固定している。そのため、ALCパネルの動き(ロッキング)が拘束され易い可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005-248533号公報
【特許文献2】特開2020-200752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のような外壁施工構造では、コーナー部や開口部など既設壁の端部においても、既設壁に欠けなどを生じることなく金属胴縁を設けることが望まれている。
【0010】
上記のような外壁板を有する外壁では、壁下地である外壁パネルのロッキング等の動作が、縦胴縁、横胴縁及び化粧面材(外壁板)により妨げられず、確実に動作することが望まれている。
【0011】
また、特許文献2のような横方向に胴縁を流す(横胴縁)構造では、サイディングなどのようにその形状の特徴から横積みに取り付けることがほとんどである工法に対応することができず、対応するためにはパネルのロッキング等の動きが拘束され難くしたうえで、胴縁を縦方向に取り付けることができるようにすることが望まれている。
【0012】
本発明は、上記事由に鑑みてなされており、胴縁を任意の位置に設けやすく、また、複数のパネルのロッキングが、複数の化粧面材及び胴縁で妨げられ難い壁構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様に係る壁構造は、表面略長方形のパネルが、長辺同士及び短辺同士を隣接させて上下左右方向に配置され、表面略長方形の化粧面材が前記パネルの表面側に胴縁を介して取り付けられる壁構造であって、前記化粧面材の取り付け位置において、前記胴縁が位置しない箇所に、前記胴縁に連結材を介して連結される補助胴縁を備えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、化粧面材の取り付けに必要な胴縁を任意の位置に設けやすく、また、複数のパネルのロッキングが、複数の化粧面材及び胴縁で妨げられ難い、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1Aは、本実施形態に係る外壁構造のロッキング前の通常の状態を示す正面図である。
図1Bは、
図1Aに示す状態からロッキングした状態を示す正面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る外壁構造のパネルの取付け構造の他例を示す斜視図である。
【
図4】
図4A及び
図4Bは、本実施形態に係る外壁構造の溝形鋼を示す断面図である。
図4Cは、本実施形態に係る外壁構造のLアングルを示す正面図である。
図4Dは、同上の断面図である。
図4Eは、同上の底面図である。
【
図5】
図5Aは、本実施形態に係る外壁構造のアダプターの一例を示す正面図である。
図5Bは、同上の横断面図である。
図5Cは、同上の縦断面図である。
図5Dは、本実施形態に係る外壁構造のアダプターの他例を示す正面図である。
図5Eは、同上の横断面図である。
図5Fは、同上の縦断面図である。
【
図6】
図6Aは、本実施形態に係る外壁構造の化粧面材の取付け構造を示す横断面図である。
図6Bは、本実施形態に係る外壁構造の化粧面材の取付け構造の他例を示す横断面図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る外壁構造のアダプターと胴縁との取付け構造を示す断面図である。
【
図8】
図8Aは、本実施形態に係る外壁構造のアダプターと胴縁との取付け構造を示す通常時の正面図である。
図8Bは、本実施形態に係る外壁構造のパネルのロッキング動作時のパネルに対する縦胴縁及びアダプターの動きを示す概略の正面図である。
図8Cは、本実施形態に係る外壁構造のパネルのロッキング動作時のアダプターに対する縦胴縁の動きを示す概略の側面図である。
【
図9】
図9は、本実施形態に係る外壁構造の化粧面材の取付け構造を示す縦断面図である。
【
図10】
図10A及び
図10Bは、本実施形態に係る外壁構造のパネルのロッキング動作時の留具及び化粧面材の動きの概略を示す正面図である。
【
図11】
図11Aは、本実施形態に係る外壁構造の上下方向に隣接して並ぶ化粧面材の取付け構造を示す縦断面図である。
図11Bは、本実施形態に係る外壁構造の上下方向に隣接して並ぶ化粧面材の取付け構造の他例を示す縦断面図である。
【
図12】
図12Aは、本実施形態に係る外壁構造の左右方向に隣接して並ぶ化粧面材の取付け構造を示す横断面図である。
図12Bは、本実施形態に係る外壁構造の左右方向に隣接して並ぶ化粧面材の取付け構造の他例を示す横断面図である。
【
図13】
図13は、本実施形態に係る外壁構造の出隅部を示す横断面図である。
【
図15】
図15は、本実施形態に係る外壁構造の出隅部の他例を示す横断面図である。
【
図16】
図16は、本実施形態に係る外壁構造の入隅部を示す横断面図である。
【
図18】
図18Aは、本実施形態に係る外壁構造のロッキング前の通常の状態の他例を示す正面図である。
図18Bは、
図18Aに示す状態からロッキングした状態の他例を示す正面図である。
【
図19】
図19Aは、本実施形態に係る外壁構造を示す縦断面図である。
図19Bは、本実施形態に係る外壁構造を示す縦断面図である。
図19Cは、同上の縦胴縁の一例を示す分解斜視図である。
【
図20】
図20Aは、本実施形態に係る外壁構造のT型ジョイントを示す平面図である。
図20Bは、同上の正面図である。
図20Cは、同上の側面図である。
図20Dは、本実施形態に係る外壁構造のT型ジョイントを使用した補助胴縁の取り付け構造を示す正面図である。
【
図21】
図21Aは、本実施形態に係る外壁構造で使用する溝形鋼の胴縁とアダプターの取付け構造を示す横断面図である。
図21Bは、実施形態に係る外壁構造で使用する角型鋼管の胴縁とアダプターの取付け構造を示す横断面図である。
図21Cは、同上の角型鋼管を示す斜視図である。
【
図22】
図22Aは、本実施形態に係る外壁構造のロッキング前の通常の状態の開口部を示す正面図である。
図22Bは、
図22Aに示す状態からロッキングした状態の開口部を示す正面図である。
【
図23】
図23は、本実施形態に係る外壁構造の一般部の変形例を示す横断面図である。
【
図24】
図24は、本実施形態に係る外壁構造の開口部の変形例を示す横断面図である。
【
図25】
図25は、本実施形態に係る外壁構造の出隅部の変形例を示す横断面図である。
【
図26】
図26は、本実施形態に係る外壁構造の入隅部の変形例を示す横断面図である。
【
図27】
図27は、本実施形態に係る外壁構造の入隅部の変形例を示す横断面図である。
【
図28】
図28は、本実施形態に係る外壁構造の張分け部を示す横断面図である。
【
図29】
図29Aは、本実施形態に係る外壁構造の留具の一例を示す斜視図である。
図29Bは、同上の側面図である。
【
図30】
図30は、本実施形態に係る外壁構造の開口部の変形例を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態1)
本発明の壁構造としては、外壁、内壁、間仕切り壁など様々な壁構造に適用可能であるが、
図1A及び
図1Bは、本実施形態に係る壁構造として外壁構造1を示している。外壁構造1は、複数のパネル2を備えている。パネル2は、表面略長方形に形成されている。本実施形態では、パネル2は正面視(前方から見た場合)で表面が上下方向に延びる(縦長の)長方形に形成されている。なお、表面略長方形としているが、正方形を排除するものではない。
【0017】
なお、本実施形態では、図中に示す矢印Xの方向が前方であり、矢印Xの反対方向が後方である。外壁構造1の前方は建物の屋外であり、外壁構造1の後方は屋内である。また図中に示す矢印Yの方向は右方向であり、矢印Yの反対方向が左方向である。左右方向は横方向と言う場合がある。また図中に示す矢印Zの方向は上方向であり、矢印Zの反対方向が下方向である。上下方向は縦方向という場合がある。
【0018】
パネル2はALCパネルからなる。ALCパネルは、Autoclaved Lightweight aerated Concrete(高温高圧蒸気養生された軽量気泡コンクリート)で形成された板材である。
本実施形態では、パネル2はALCパネルでなくてもよく、押出成形セメント板、金属パネルなどの他の材質で形成された板材であってもよい。
【0019】
複数のパネル2は、上下左右方向に並べて配置されており、この複数のパネル2で仕上げ材取り付け下地が形成されている。上下方向に隣接して並ぶ複数のパネル2は短辺22同士が隣接している。左右方向に隣接して並ぶ複数のパネル2は長辺21同士が隣接している。従って、複数のパネル2が縦張りで施工されている。
【0020】
本実施形態の外壁構造1は、複数の化粧面材3を備えている。化粧面材3は、表面略長方形に形成されている。本実施形態では、化粧面材3は正面視(前方から見た場合)で表面が左右方向に延びる(横長の)長方形に形成されている。
【0021】
化粧面材3は窯業系サイディングからなる。窯業系サイディングは、基材の表面に凹凸を形成したり塗装したりして化粧を施した外壁材である。基材の主原料は,セメント、ケイ酸質原料,繊維質原料,混和材料などである。化粧面材3は壁用の仕上げ材であれば窯業系サイディングでなくてもよく、金属サイディングなどの他の材質で形成された板材であってもよい。
【0022】
複数の化粧面材3は、上下左右方向に並べて配置されており、この複数の化粧面材3で外壁の表面が形成されている。上下方向に隣接して並ぶ複数の化粧面材3は長辺31同士が隣接している。左右方向に隣接して並ぶ複数の化粧面材3は短辺32同士が隣接している。従って、複数の化粧面材3が横張りで施工されている。
【0023】
本実施形態の外壁構造1は、胴縁4を備えている。胴縁4は複数の化粧面材3を複数のパネル2の表面側(前方)に施工するために設けられている。従って、複数の化粧面材3は胴縁4を介して複数のパネル2に取り付けられている。本実施形態では、胴縁4として複数の縦胴縁41を備えている。縦胴縁41は上下方向に延びる形状である。縦胴縁41は溝形鋼44を使用することができる。
図4A及び
図4Bは、溝形鋼44を示している。溝形鋼44は、基部片46と、一組(一対)の側片42と、を有している。側片42は基部片46の両側端から突出しており、側片42同士は対向している。また溝形鋼44には基部片46と対向する位置に開口45が設けられている。なお、
図4Aに示す溝形鋼44と、
図4Bに示す溝形鋼44とは、幅寸法が異なっており、使用場所や使用目的に応じて、適宜使い分けることができる。
【0024】
本実施形態の外壁構造1は、複数のアダプター6を備えている。胴縁4(縦胴縁41)は、アダプター6によりパネル2に取り付けられている。
図5A~C及び
図5D~Fは、アダプター6を示している。アダプター6は、例えば、鋼板等で形成される金属製からなる金属片であって、固定片61として機能する底面と、一対の側面からなるガイド片62とを備え、コ型をしている。固定片61は正面視で略矩形状(例えば、長方形)に形成されている。固定片61の略中心線上には固定孔63が前後方向(固定片61の厚み方向)に貫通して設けられている。一対のガイド片62は固定片61の対向する一組の両辺(側辺)から屋外側(前方)に向かって延設されている。各ガイド片62は略矩形状に形成されている。各ガイド片62には連結孔64がそれぞれ穿設されている。各ガイド片62に形成された連結孔(穴)64は対向して設けられている。各連結孔64はガイド片62を左右方向(厚み方向)で貫通している。また各連結孔64は上下方向に沿って延びる長孔に形成されている。また固定孔63と連結孔64とは、上下方向における位置が重ならないように、上下方向で互いの位置がずれている。また固定片61の後面(底面の外側)には、例えば、防水テープ66からなるシート状の防水材66が設けられている。なお、
図5A~Cに示すアダプター6と、
図5D~Fに示すアダプター6とは、幅寸法(一対のガイド片62の間隔)が異なっており、使用場所や使用目的に応じて、適宜使い分けることができる。例えば、
図4Aに示す幅の狭い溝形鋼44に対しては、
図5A~Cに示す幅が狭いアダプター6を使用し、
図4Bに示す幅の広い溝形鋼44に対しては、
図5D~Fに示す幅が広いアダプター6を使用する。なお、胴縁及びアダプターの寸法及び形状についてはこれらに限られるものではなく、例えば、胴縁4(縦胴縁41)は、溝形鋼44以外の角型鋼管、H形鋼などであってもよい。また、本発明における溝形鋼44には、リップ付き形状(所謂C形鋼)を含むものである。アダプター6は、長尺の場合は一つの胴縁4に対し1個でも可能であるが、サイズを小さくして2個以上用いることで軽量化でき、施工がしやすいなど優位である。
【0025】
本実施形態において、複数のパネル2は、構造躯体5にロッキング可能に取り付けられている。構造躯体5は、鉄骨造、鉄筋コンクリート造及び鉄骨鉄筋コンクリート造などの建築物の躯体であり、柱及び梁が含まれる。ロッキング可能とは、構造躯体5が層間変形した場合に、パネル2が1枚毎に微少回転して面内方向に追従して動作することを意味する。
【0026】
複数のパネル2をロッキング可能に施工するにあたっては、公知の構法を使用することができ、例えば、縦壁ロッキング構法が使用可能である。
【0027】
図2A~Dは、縦壁ロッキング構法の概略を示している。複数のパネル2は、構造躯体5に対して、定規アングル51、イナズマプレート52、平プレート53及びウケプレート54を介して取り付けられている。そして、パネル2に取り付けられる平プレート53が、定規アングル51に固定されたウケプレート54に対して微少回転することにより、パネル2がロッキング可能となる。また
図3は、他の縦壁ロッキング構法を示している。複数のパネル2は、構造躯体5の係止部59に対して、セットボルト58、スピードボルト56、アングルクリップ57、シングルプレート55を介して取り付けられている。
【0028】
なお、本実施形態では、上記のような実施例以外の縦壁ロッキング構法の金具も使用可能である。
【0029】
上記のような複数のパネル2の表面側には、複数の縦胴縁41が取り付けられる。縦胴縁41は、一枚のパネル2に対して、一つずつ取り付けられる。従って、複数の縦胴縁41は、他の縦胴縁41とは分離されている。このように縦胴縁41は、長さがパネル2の長辺21の長さ以下であり、また縦胴縁41は、上下に隣接する複数のパネル2の短辺22を跨らないように、パネル2毎に取り付けられている。そして、上下方向で隣接する縦胴縁41は、パネル2がロッキングしていない通常の状態では、上下方向に略一直線上に位置している。
【0030】
各縦胴縁41は、上部と下部、また必要に応じその間がアダプター6を介してパネル2の表面に取り付けられている。アダプター6は、パネル2の表面にシート状の防水材66を介して固定片61を当接して固定される。この場合、
図6Aに示すように、固定片61の固定孔(穴)63からパネル2に対してボルト、アンカーボルト、スピードボルト、ネジ、釘などの固定具(アダプター固定ボルト)65を挿通して、固定片61をパネル2の表面に固定する。アダプター6はパネル2の左右方向の略中央部に設けられる。これにより、縦胴縁41をパネル2の左右方向の略中央部に配置することで、パネル2がロッキング動作した場合の縦胴縁41の上下方向の移動をできるだけ小さくすることができる。なお、固定具65としてボルトを用いる場合においては、パネル2を製造する際に所定位置に埋込ナットを設けておくことが好ましい。
【0031】
図7に示すように、縦胴縁41は、アダプター6の一対のガイド片62の間に挿入され、連結具(胴縁固定用ボルト)7によりアダプター6に固定される。縦胴縁41の一対の側片42には、それぞれ、取付孔43が穿設されている。各側片42に設けた取付孔43は対向している。取付孔43は、施工現場で加工して形成しても良いし、工場等で予め形成しておいても良い。連結具7は、例えば、ボルトナット等で構成される。そして、連結具7のボルトを連結孔64と取付孔43とに挿通してナットを締め付けることにより、アダプター6に縦胴縁41が取り付けられる。ここで、アダプター6の固定孔63と連結孔64とが中心位置から上下方向に位置ずれしているため、固定具65に対して連結具7が干渉しないように配置しやすい。アダプター6の上下は特に限定されないが、アダプター6が固定時に自重により上下反転し難いよう固定孔63を上下方向の中央部よりも上方にするのが好ましい。このようにして取り付けられる縦胴縁41は、連結孔64が長孔に形成されているため、連結具7が挿通しやすくなるとともに、パネル2がロッキング動作して強い力が加わった際には連結具7が連結孔64内で移動できる。従って、パネル2のロッキング動作時にアダプター6に対して縦胴縁41が位置ずれするように移動可能となり、パネル2のロッキング動作が化粧面材3や縦胴縁41で妨げられにくくなる。なお、連結孔64は長孔だけでなく、連結具7のボルトの胴部の外径よりも大きな孔径を有するように形成しても良い。また縦胴縁41は、溝形鋼44の開口45側がパネル2側(後ろ側)に向くよう取り付けられている。これにより、開口45内に固定具65の頭部が収容されて、縦胴縁41をアダプター6の一対のガイド片62の間に奥までしっかり挿入しても縦胴縁41の取り付けに障害となりにくい。
【0032】
図8A~Cは、パネル2のロッキング動作時の縦胴縁41及びアダプター6の動きの概略を示している。パネル2にアダプター固定用ボルト65で固定されているアダプター6は、パネル2がロッキングした際、アダプター固定用ボルト65を中心にパネル2に対し右回り及び左回りに回転する。また、アダプター6に胴縁固定用ボルト7で固定されている縦胴縁41は、パネル2がロッキングした際、胴縁固定用ボルト7が連結孔64の長孔内をアダプター6に対して上下にスライドする。これにより、縦胴縁41がパネル2のロッキング動作を妨げ難くすることができる。
【0033】
図9、
図10A及びBは、パネル2のロッキング動作時の留具(留め金具)9及び化粧面材3の動きの概略を示している。複数の化粧面材3は、縦胴縁41の前方に取り付けられる。化粧面材3を取り付けるにあたっては、留具(留め金具)9が使用される。留具9は縦胴縁41の表面(前面)に取り付けられる。留具9は化粧面材3の実部33に引っかかる係止部(爪)92を有し、実部33に留具9を係止した状態で縦胴縁41に取り付けられる。留具9を縦胴縁41に取り付けるにあたっては、パネル2がロッキング動作して強い力が加わった際には縦胴縁41に対して留具9が回転可能にするのが好ましい。これにより、パネル2のロッキング動作時に縦胴縁41に対して留具9が回転しやすくなり、パネル2のロッキング動作が化粧面材3や縦胴縁41で妨げられにくくなる。この場合、留具9は一本のビス、釘、ネジ等の固定具93で縦胴縁41に回転可能に取り付けるのが好ましい。
【0034】
複数の化粧面材3は、縦胴縁41の前方に複数の留具9を介して取り付けられるが、このとき、化粧面材3の実部33は留具9の係止部にスライド可能に係止されるのが好ましい。これにより、パネル2のロッキング動作時に、留具9に対して化粧面材3がスライド移動可能となり、パネル2のロッキング動作が化粧面材3や縦胴縁41で妨げられにくくなる。なお、
図11A及びBのように、化粧面材3の実部33は化粧面材3の上端及び下端の長辺21に沿って、化粧面材3の全長にわたって形成されている。また、留具9は
図6Aのような短尺物であってもよいが、
図6Bのような長尺物であっても良い。長尺物の留具95は、耐風圧が要求される高層階などで使用するのが好ましく、各縦胴縁41に対して一本ずつのビス、釘、ネジ等で回転可能に取り付けるのが好ましい。
【0035】
図12A及びBは、外壁の一般部における構造を示している。
図12Aに示すように、パネル2の左右方向(短辺方向)の略中央部にアダプター6を介して取り付けられている縦胴縁41の前面において、左右方向に隣接して並ぶ複数の化粧面材3の短辺32同士が隣接している。左右方向に隣接する化粧面材3は、同じ縦胴縁41の前面に左右方向に並べて取り付けられる別々の留具9にそれぞれの短辺32側の端部が係止されて取り付けられる。短辺32の間には弾性体36が設けられている。弾性体36としては、シーリング材などが例示され、これにより、化粧面材3の間の防水性も確保することができる。弾性体36は、化粧面材3がロッキング動作により動いても、伸縮して破損することがないような弾性を有している。弾性体36は、ハット型ジョイナーや片側ハット型ジョイナーなどのバックアップ材35に支持されて、化粧面材3の短辺32の間の目地に配置されている。なお、隣接するパネル2の間には弾性体8が設けられている。弾性体8によりパネル2間の防水性が確保される。
【0036】
図12Bには、補助胴縁11を使用した施工を示している。補助胴縁11は縦胴縁4が位置しない箇所に設けられている。つまり、化粧面材3の短辺32と、この短辺32に最も近い縦胴縁41との左右方向に位置ずれしている箇所であって、この位置に補助胴縁11が設けられている。この場合、縦胴縁41はパネル2の左右方向の略中央部に設けられるが、化粧面材3の割付の関係で、化粧面材3の短辺32側の端部が縦胴縁41の前方に位置しないことがあり、化粧面材3の端部を支持するために補助胴縁11が用いられる。
【0037】
補助胴縁11は縦胴縁41と同様の溝形鋼44が用いられる。補助胴縁11は、連結材12を介して当該補助胴縁11に最も近い縦胴縁41に連結されている。連結材12は、連結材本体121と一対のLアングル122とを備える。連結材本体121は、縦胴縁41と同様の溝形鋼44が用いられる。Lアングル122は、
図4C~Eに示すように、断面L型に形成される短尺物である。そして、連結材本体121の一端は、補助胴縁11に最も近い縦胴縁41と一対のLアングル122の1つで連結されている。また連結材本体121の他端は、補助胴縁11と一対のLアングル122の他の1つで連結されている。このようにして補助胴縁11は、最も近い縦胴縁41に片持ち梁のようにして連結されている。補助胴縁11の表面には上記と同様にして留具9が取り付けられており、この留具9に化粧面材3の短辺32側の端部が取り付けられている。
【0038】
図13及び
図14には、出隅部10の構造を示している。出隅部10においては、上記と同様の補助胴縁11を使用して出隅部材101が取り付けられている。出隅部10において隣接する一対のパネル2は、一方を勝ち側とし、他方を負け側として弾性体8を介して略直角に配置されている。隣接する一対のパネル2には、それぞれ、縦胴縁41が取り付けられており、各縦胴縁41には出隅部10の先端の方向に向かって突出する連結材12が設けられている。そして、各連結材12にはそれぞれ補助胴縁11が連結されている。また勝ち側のパネル2の縦胴縁41に連結された補助胴縁11は、勝ち側のパネル2の小口23より外方に突出している。また負け側のパネル2の縦胴縁41に連結された補助胴縁11は、勝ち側のパネル2の小口23付近(前方)に位置している。勝ち側のパネル2の補助胴縁11の基部片111に固定された留具9に、化粧面材3の端部34における実部33が係止されている。またこの補助胴縁11の基部片111と一方(外方側)の側片112にそれぞれ固定された出隅材留具91に、断面略L字型の出隅材101の両片102が係止されている。またハット型ジョイナー35が勝ち側のパネル2の縦胴縁41に連結された補助胴縁11に固定され、勝ち側のパネル2に取り付けられる化粧面材3と出隅材101の間に位置し、シーリング材(弾性体)36のバックアップ材として機能している。一方、負け側のパネル2の補助胴縁11の基部片111に固定された留具9には、勝ち側のパネル2の小口23の前方にある負け側のパネル2に取り付けられる化粧面材3の端部34が係止されている。また片側ハット型ジョイナー37が負け側のパネル2の縦胴縁41に連結された補助胴縁11に固定され、出隅材101と負け側のパネル2に取り付けられる化粧面材3の間に位置し、シーリング材(弾性体)38のバックアップ材として機能している。本実施例においては、
図14に示すように、一枚のパネル2に対し、5個のアダプター6を用いて一本の縦胴縁41が取り付けられている。補助胴縁11は縦胴縁41と略同等の長さを有し、5個の連結材12を用いて縦胴縁41に連結されている。各連結材12は、各アダプター6の上方近傍に位置するよう取り付けられている。これにより、縦胴縁41への負荷が緩和されるものである。
【0039】
図15は、他の出隅部10の構造を示している。この出隅部10においても、隣接する一対のパネル2は、一方を勝ち側とし、他方を負け側として弾性体8を介して略直角に配置されているが、勝ち側のパネル2の縦胴縁41に連結された補助胴縁11は、勝ち側のパネル2の小口23より外方に突出していない。また負け側のパネル2の縦胴縁41に連結された補助胴縁11は、勝ち側のパネル2の小口23付近(前方)に位置している。従って、それぞれの補助胴縁11は、出隅部10の頂点を境に略対称に位置しており、断面略L字型の出隅材101は、一方の片が勝ち側のパネル2の縦胴縁41に連結された補助胴縁11の基部片111に固定された出隅材留具91に係止され、他方の片が負け側のパネルの縦胴縁に連結された補助胴縁11の基部片111に固定された出隅材留具91に係止されている。勝ち側のパネル2の補助胴縁11の基部片111に固定された留具9に、勝ち側のパネル2に取り付けられる化粧面材3の端部34における実部33が係止されている。負け側のパネル2の補助胴縁11の基部片111に固定された留具9に、負け側のパネル2に取り付けられる化粧面材3の端部34における実部33が係止されている。またハット型ジョイナー35が勝ち側及び負け側のパネル2のそれぞれの補助胴縁41に固定されて隣接する化粧面材3と出隅材101の間に位置し、シーリング材36、38のバックアップ材として機能している。
【0040】
図16は入隅部70の構造をしている。入隅部70において隣接する一対のパネル2は、一方を勝ち側とし、他方を負け側として弾性体8を介して略直角に配置されている。また、入隅部70の隣接する一対のパネル2は短辺が一般部のパネル2よりも短いものを使用している。そのため、補助胴縁11は使用せず、一般部と同様にして、アダプター6と縦胴縁41及び留具9を使用して化粧面材3が施工されている。勝ち側の化粧面材3は、その端部を負け側のパネル2近傍に位置させて勝ち側のパネル2の縦胴縁41に固定された留具9に係止され、負け側の化粧面材3は、その端部を勝ち側の化粧面材3近傍に位置させて負け側のパネル2の縦胴縁41に固定された留具9に係止されている。また片側ハット型ジョイナーが負け側のパネル2の縦胴縁41に固定されて負け側の化粧面材3の小口と勝ち側の化粧面材3の表面の間に位置し、シーリング材38のバックアップ材として機能している。
【0041】
なお、入隅部70は、出隅部10と同様に、補助胴縁11を使用しても良い。すなわち、入隅部70において隣接する一対のパネル2は、一方を勝ち側とし、他方を負け側として弾性体8を介して略直角に配置されている。勝ち側のパネル2の縦胴縁41に連結された補助胴縁11は、負け側のパネル2近傍に位置している。負け側のパネル2の縦胴縁41に連結された補助胴縁11は、勝ち側の化粧面材3に干渉しないよう勝ち側のパネル2から所定寸法隔てて位置している。勝ち側の化粧面材3は、その端部を負け側のパネル2近傍に位置させて勝ち側のパネル2の補助胴縁11に固定された留具9に係止され、負け側の化粧面材3は、その端部を勝ち側の化粧面材3近傍に位置させて負け側のパネル2の補助胴縁11に固定された留具9に係止されている。また片側ハット型ジョイナー37が負け側のパネル2の補助胴縁11に固定されて負け側の化粧面材3の小口と勝ち側の化粧面材3の表面の間に位置し、シーリング材38のバックアップ材として機能している。
【0042】
図17A~Cは、外壁の開口部50における構造を示している。開口部50においては、上記と同様に、補助胴縁11を使用して施工される。補助胴縁11は開口部50の縦寸法より長く形成され、開口部50の上下に突出するよう開口部50の両側方に位置しており、各補助胴縁11は、最も近い縦胴縁41に連結材12を介して連結されている。なお、本実施形態に示した以外の箇所においても、必要に応じて補助胴縁11を使用しても良い。
【0043】
本実施形態の外壁構造1では、
図1Aの通常状態(ロッキング前の状態)と
図1Bのロッキングした状態との間でパネル2がロッキング動作するが、この際、縦胴縁41、化粧面材3がパネル2のロッキング動作に追随しやすくなる。よって、パネル2のロッキング動作が妨げられにくくなる。
【0044】
(実施形態2)
本実施形態に係る外壁構造1は、縦胴縁41の構成が実施形態1に係る縦胴縁41と相違する。
【0045】
以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
【0046】
実施形態2で説明した構成は、実施形態1で説明した構成と適宜組み合わせて適用可能である。
【0047】
実施形態1では、縦胴縁41の上下方向の寸法がパネル2の上下方向の寸法(長辺21の寸法)よりも短い場合を示した。一方、実施形態2では、上下方向に隣接する縦胴縁41のうち、上側又は下側のいずれか一方の縦胴縁41がパネル2の上下方向の寸法よりも長く形成されている。
図18A及びBでは、下側の縦胴縁41がパネル2の上下方向の寸法よりも長く形成されている。従って、下側の縦胴縁41の上部が上下方向に隣接するパネル2の短辺22を跨ぐように、配置されている。この場合、下側の縦胴縁41は、上側のパネル2には固定されておらず、下側のパネル2にのみ固定されている。これにより、縦胴縁41が上下方向に隣接するパネル2の短辺22を跨ぐように配置されていてもパネル2のロッキング動作が妨げられにくくなる。
【0048】
図19Aに示すように、下側の縦胴縁41は全長にわたって連続的に形成されていてもよいが、
図19Bに示すように、パネル2の長辺21の長さ以下の縦胴縁本体411と、縦胴縁本体411に連結される延長用胴縁412とで形成しても良い。この場合、
図19Cに示すように、延長用胴縁412の下端に設けた差し込み片413を縦胴縁本体411の上部に差し込み、ネジやボルト等の固定具414で固定することができる。これにより、パネル2の長辺21の長さを超えるように、縦胴縁41が形成される。
【0049】
実施形態1の場合、
図1Aのように、上下方向に隣接するパネル2の短辺22間を跨ぐように、化粧面材3が配置されている。しかしながら、化粧面材3の割付等の関係で、
図18A、Bに示すように、上下方向に隣接するパネル2の短辺22間の目地と、上下方向に隣接する化粧面材3の長辺31間の目地との位置が、正面視において略一致する場合がある。この場合、
図1Aのように、縦胴縁41の長さがパネル2の上下方向の長さ以下であると、留具9を縦胴縁41に取り付けることができず、化粧面材3の長辺31を留具9に係止できないことがある。そこで、実施形態2では、上下方向に隣接するパネル2の短辺22間を跨ぐようにして縦胴縁41の上部を配置するようにしている。この場合、パネル2の短辺22を越境した縦胴縁41の上部の位置に留具9を取り付けることができ、上下方向に隣接するパネル2の短辺22間の目地と、上下方向に隣接する化粧面材3の長辺31間の目地との位置が、正面視において略一致する場合でも、化粧面材3の長辺31を留具9で係止することができ、化粧面材3の施工が損なわれないようにできる。なお、隣接するパネル2の短辺22を跨ぐ縦胴縁41として、パネル2の上下方向の寸法よりも長く形成されている場合について説明したがこれに限るものではなく、パネル2の上下方向の長さ以下であっても、上方又は下方にずらすことにより隣接するパネル2の短辺22を跨ぐようにして良いものである。
【0050】
(変形例)
図20A~Dは、連結材12の変形例を示している。この連結材12は、連結材本体121と一対のT型ジョイント13を備えている。T型ジョイント13は、
図20Dに示すように、胴縁4と連結材本体121とが交差する位置において、表面側から被せてボルトナット等により取り付けることが好ましい。T型ジョイント13は、
図20A~Cに示すように、T型プレート131と、T型プレート131の三方向の端縁を除く周縁にT型プレート131から奥側に延設される挟持片132とを備えており、腕部133を胴縁4又は補助胴縁11に、脚部134を連結材本体12にそれぞれ表面側から被せ、胴縁4、補助胴縁11及び連結材本体12の取付孔と、T型ジョイント13の挟持片132の貫通孔135にボルトを挿通し、ナットにより取り付けることができる。即ち、T型ジョイント13は、連結材本体121の上方及び下方の両方において、腕部133及び脚部134がボルトナット等の固定具により取り付けられている。なお、
図20B及びCは、連結材12の形状、また、連結材12と胴縁4及び補助胴縁11の取り付け状態が分かるよう、裏面方向からの概略図としている。
【0051】
図21B及びCは、胴縁4の変形例を示している。この変形例で使用される胴縁4は、角型鋼管からなり、アダプター6の固定具65との干渉を防ぐ逃し孔48を有している。逃し孔48は胴縁4の四面のうちの1面に設けられている。逃し孔48は、ボルトなどの固定具65の頭部651が収容可能な十分な大きさを有している。また逃し孔48は、固定具65の頭部651が収容される位置に予め穿孔しておくことが好ましい。
【0052】
図21Aのように、上記実施形態1では、溝形鋼の胴縁4を使用しているため、胴縁4の開口45に固定具65の頭部651を挿入し、固定具65の頭部651と胴縁4とが接触しないようにして干渉を防いでいる。一方、本変形例では、逃し孔48を有する面がパネル2側に向くように、胴縁4をアダプター6に取り付ける。これにより、逃し孔48に頭部651が収容され、頭部651と胴縁4とが接触しないようにして干渉を防ぐことができる。
【0053】
図22A及びBは、開口部50における通常時とロッキング時の状態を示している。ロッキング時においては、縦胴縁41と補助胴縁11が連動して動き、縦胴縁41と補助胴縁11に留具9により取り付けられている各化粧面材3が横方向にスライドしている。これにより、パネル2のロッキング動作を妨げ難くしている。
【0054】
図23~28は、留具9の取り付け状態の変形例を示している。変形例では、階高に関係なく補助胴縁11の取り付け強度を向上させるため、長尺物の留具95と短尺物の留具96を併用している。例えば、長尺物の留具95は、
図29A及びBに示すものを使用することができる。また、短尺物の留具96は、
図1A及び
図1B、
図6、
図9~
図13、
図15、
図16、
図22A及び
図22Bに示す留具9と同様のものを使用することができる。以下、各部位毎に説明する。
【0055】
図23は、
図12Bと同様の外壁の一般部における構造を示している。胴縁4は、縦胴縁41であって、上記と同様に、アダプター6を介してパネル2の表面に取り付けられている。二つの縦胴縁41のうち、補助胴縁11に近い方の縦胴縁41aは、上記と同様にして、連結材12を介して、補助胴縁11と連結されている。そして、長尺物の留具95は、少なくとも補助胴縁11と、二つの縦胴縁41とにわたって取り付けられている。二つの縦胴縁41とは、補助胴縁11に近い方の縦胴縁41aと、縦胴縁41aに比べて、補助胴縁11から遠い方の縦胴縁41bである。つまり、長尺物の留具95は、補助胴縁11と、連結材12を介して補助胴縁11と連結された縦胴縁41aと、当該縦胴縁41に対して補助胴縁11と反対側に隣接する一つの縦胴縁41bとにわたって取り付けられている。長尺物の留具95は、補助胴縁11及び縦胴縁41に対して一本ずつのビス、釘、ネジ等で回転可能に取り付けられている。
【0056】
長尺物の留具95は、上記と同様に、固定具93により、二つの縦胴縁41a、41bの前面(表面)と、補助胴縁11の前面とに取り付けられている。長尺物の留具95は、短尺物の留具96と同様に、金具で構成されており、固定板部951の前方に、化粧面材3の実部33に引っかかる係止部(爪)92を有している(
図29A及びB参照)。固定板部951には、複数の固定孔部952が形成されており、固定孔部952に固定具93を挿入して縦胴縁41a、41b及び補助胴縁11に固定することができる。そして、上記と同様に、係止部92に化粧面材3の実部33を係止することによって、複数の化粧面材3が、パネル2、縦胴縁41、補助胴縁11、連結材12及び長尺物の留具95の前方に取り付けられる。
【0057】
この変形例では、長尺物の留具95を介して補助胴縁11と縦胴縁41とが連結されることになる。長尺物の留具95は金属製であって、所定の剛性を有するものである。従って、補助胴縁11と縦胴縁41とは、連結材12を介して連結されるのに加えて、長尺物の留具95によっても連結されることになる。従って、連結材12により片持ち状態で縦胴縁41に連結されている補助胴縁11が、長尺物の留具95により縦胴縁41にさらに連結されることになり、補助胴縁11の取り付け強度が向上する。しかも、長尺物の留具95は、補助胴縁11と隣接する縦胴縁41aだけでなく、縦胴縁41aに対して補助胴縁11と反対側に隣接する縦胴縁41bにも固定されている。このため、補助胴縁11は、長尺物の留具95を介して少なくとも二つの縦胴縁41に連結されることになり、補助胴縁11の取り付け強度がさらに向上する。
【0058】
また、ロッキング時においては、縦胴縁41と補助胴縁11が連動して動き、縦胴縁41と補助胴縁11に長尺物の留具95により取り付けられている各化粧面材3が横方向にスライドし、パネル2のロッキング動作を妨げ難くしている。
【0059】
図24は、
図17A~Cと同様の外壁の開口部50における構造を示している。開口部50の周縁部には、サッシ枠等の窓枠やドア枠などの枠材60が取り付けられている。
図17A~Cと同様に、補助胴縁11は開口部50の縦寸法より長く形成され、開口部50の上下に突出するよう開口部50の両側方に位置しており、各補助胴縁11は、最も近い縦胴縁41に連結材12を介して連結されている。そして、この変形例においても、留具9として短尺物の留具96とともに、上記と同様の長尺物の留具95を使用している。長尺物の留具95は、少なくとも補助胴縁11と、二つの縦胴縁41とにわたって取り付けられている。つまり、長尺物の留具95は、連結材12を介して補助胴縁11と連結された縦胴縁41aと、当該縦胴縁41に対して補助胴縁11と反対側に隣接する一つの縦胴縁41bとにわたって取り付けられている。
【0060】
図25は、
図15と同様の外壁の出隅部10における構成を示している。
図15と同様に、出隅部材101は、補助胴縁11に設けた短尺物の出隅材留具91に支持されているが、長尺物の留具95は、補助胴縁11と、連結材12を介して補助胴縁11と連結された縦胴縁41aと、当該縦胴縁41aに対して補助胴縁11と反対側に隣接する一つの縦胴縁41bとにわたって取り付けられている。長尺物の留具95は、出隅部材101に隣接する化粧面材3を支持するよう補助胴縁11と縦胴縁41a、41bに取り付けられている。なお、隣接する一対のパネル2のうち、負け側のパネル2の縦胴縁41に補助胴縁11が連結材12を介して連結されているが、Lアングル122やT型ジョイント13を使用せず、連結材本体121と縦胴縁41及び補助胴縁11とが直接、溶接されて連結されている。
【0061】
図26は、外壁の入隅部70における構成を示している。この入隅部70においては、隣接する一対のパネル2のうち、負け側のパネル2の縦胴縁41に補助胴縁11が連結材12を介して連結されている。また、負け側のパネル2の前方の化粧面材3は、入隅部70付近において長尺物の留具95により支持され、補助胴縁11と縦胴縁41を介して負け側のパネル2に取り付けられている。そして、長尺物の留具95は、補助胴縁11と、連結材12を介して補助胴縁11と連結された縦胴縁41aと、当該縦胴縁41aに対して補助胴縁11と反対側に隣接する一つの縦胴縁41bとにわたって取り付けられている。勝ち側のパネル2は、縦胴縁41が化粧面材3の端部付近に位置するため補助胴縁11を必要とせず、縦胴縁41及び短尺物の留具96を使用して化粧面材3が取り付けられている。なお、負け側のパネル2の縦胴縁41に補助胴縁11が連結材12を介して連結されているが、Lアングル122やT型ジョイント13を使用せず、連結材本体121と縦胴縁41及び補助胴縁11とが直接、溶接されて連結されている。
【0062】
図27は、外壁の入隅部70における構成を示している。この入隅部70においては、隣接する一対のパネル2のうち、勝ち側と負け側の両方のパネル2の縦胴縁41に補助胴縁11が連結材12を介して連結されている。また、勝ち側と負け側のそれぞれのパネル2の前方の化粧面材3は、入隅部70付近において長尺物の留具95により支持され、補助胴縁11と縦胴縁41を介して勝ち側と負け側のそれぞれのパネル2に取り付けられている。そして、各長尺物の留具95は、補助胴縁11と、連結材12を介して補助胴縁11と連結された縦胴縁41aと、当該縦胴縁41に対して補助胴縁11と反対側に隣接する一つの縦胴縁41bとにわたって取り付けられている。なお、勝ち側のパネル2の縦胴縁41に補助胴縁11が連結材12を介して連結されているが、Lアングル122やT型ジョイント13を使用せず、連結材本体121と縦胴縁41及び補助胴縁11とが直接、溶接されて連結されている。
【0063】
図28は、外壁の張分け部を示している。この張分け部には、化粧面材3と同質の張分材30が設けられており、この張分材30は、補助胴縁11にスペーサーを介して固定具39で固定されている。また、補助胴縁11は、隣接する縦胴縁41に連結材12を介して連結されている。長尺物の留具95は、補助胴縁11と、連結材12を介して補助胴縁11と連結された縦胴縁41aと、当該縦胴縁41aに対して補助胴縁11と反対側に隣接する一つの縦胴縁41bとにわたって取り付けられている。長尺物の留具95は、張分材30に隣接する化粧面材3を支持するよう補助胴縁11と縦胴縁41a、41bに取り付けられている。張分材30は、専用の部材を予め用意してもよく、また、出隅材101を現場で切断加工してもよい。
【0064】
図23~
図28で示す変形例では、長尺物の留具95が、補助胴縁11と、連結材12を介して補助胴縁11と連結された縦胴縁41aと、当該縦胴縁41に対して補助胴縁11と反対側に隣接する一つの縦胴縁41bとにわたって取り付けられているため、補助胴縁11は、長尺物の留具95を介して少なくとも二つの縦胴縁41に連結されることになり、補助胴縁11の取り付け強度が向上する。
図23~
図28で示す変形例のように、補助胴縁11と、連結材12を介して補助胴縁11と連結された縦胴縁41aと、当該縦胴縁41に対して補助胴縁11と反対側に隣接する一つの縦胴縁41bにのみ長尺物の留具95が取り付けられ、それ以外は、それぞれ短尺物の留具96が取り付けられてもよく、一つの建築物に長尺物の留具95と短尺物の留具96を併用することを妨げない。また、対象となる建築物に応じて、全ての留具9を短尺物としたり、長尺物としたりすることも妨げない。
【0065】
図30は、留具9の取り付け状態の更に別の変形例を示している。変形例では、階高に関係なく補助胴縁11の取り付け強度を向上させるため、長尺物の留具95と短尺物の留具96を併用している。例えば、長尺物の留具95は、
図29A及びBに示すものを使用することができる。また、短尺物の留具96は、
図1A及び
図1B、
図6、
図9~
図13、
図15、
図16、
図22A及び
図22Bに示す留具9と同様のものを使用することができる。以下、各部位毎に説明する。
【0066】
図30は、
図17A~C及び
図24と同様の外壁の開口部50における構造を示している。開口部50の周縁部には、サッシ枠等の窓枠やドア枠などの枠材60が取り付けられている。
図17A~C及び
図24と同様に、補助胴縁11は開口部50の縦寸法より長く形成され、開口部50の上下に突出するよう開口部50の両側方に位置しており、各補助胴縁11は、最も近い縦胴縁41に連結材12を介して連結されている。そして、この変形例においても、
図24と同様に、留具9として短尺物の留具96とともに、長尺物の留具95を使用しているが、この変形例においては、
図24と異なり、連結材12を介して補助胴縁11と連結された縦胴縁41aの前面において、左右方向に隣接して並ぶ複数の化粧面材3の短辺32同士が隣接している。短辺32の間には弾性体36が設けられている。弾性体36としては、シーリング材などが例示され、これにより、化粧面材3の間の防水性を確保することができる。弾性体36は、化粧面材3がロッキング動作により動いても、伸縮して破損することがないような弾性を有している。弾性体36は、ハット型ジョイナーや片側ハット型ジョイナーなどのバックアップ材35に支持されて、化粧面材3の短辺32の間の目地に配置されている。長尺物の留具95は、補助胴縁11と、一つの縦胴縁41とにわたって取り付けられている。つまり、長尺物の留具95は、補助胴縁11と、連結材12を介して補助胴縁11と連結された縦胴縁41aにわたって取り付けられている。これにより、長尺物の留具95がバックアップ材35に干渉することなく、補助胴縁11の取り付け強度を向上させることができる。
【0067】
なお、この変形例では、バックアップ材35を挟んで反対側は、短尺物の留具96を併用しているが、これに限られることなく、長尺物の留具95を使用してもよい。
【0068】
また、この変形例は、開口部だけでなく、出隅、入隅、張分け部など必要に応じて使用することができる。
【0069】
(まとめ)
第1の態様に係る壁構造1は、表面略長方形のパネル2が、長辺21同士及び短辺22同士を隣接させて上下左右方向に配置されている。また表面略長方形の化粧面材3がパネル2の表面側に胴縁4を介して取り付けられている。化粧面材3の取り付け位置において、胴縁4が位置しない箇所に、胴縁4に連結材12を介して連結される補助胴縁11を備えている。
【0070】
第1の態様によれば、化粧面材3は、胴縁4が位置しない箇所でも、胴縁4に連結材12を介して連結された補助胴縁11に取り付けられる、という利点がある。
【0071】
第2の態様は、ロッキング機構を有する表面略長方形のパネル2が、長辺同士及び短辺同士を隣接させて上下方向に配置されている。パネル2の表面には、化粧面材と直交する方向に胴縁4がアダプター6を介して取り付けられている。表面略長方形の化粧面材3は、長辺方向を横にパネル2の表面側の胴縁4に、留具(留め金具)9を介して積層して取り付けられている。複数のパネル2のロッキングを妨げにくいように取り付けられている壁構造であり、開口部、出隅部及び入隅部に前記胴縁4に連結材12を介して、補助胴縁11を取り付けて化粧面材3を取り付けることにより、胴縁4と同じ変形追従性能を有している。
【0072】
第2の態様によれば、パネル2のロッキングが、化粧面材3、縦胴縁41、補助胴縁11及び連結材12で妨げられ難いとともに開口部、出隅部及び入隅部においても化粧面材3を容易に取り付けることができる、という利点がある。
【0073】
第3の態様は、第1又は2の態様の壁構造1であって、各パネル2は、躯体構造にロッキング可能に縦長に取り付けられている。胴縁4は、上下方向に長い縦胴縁41である。各縦胴縁41は、短辺方向中央および上下方向にアダプター6を介して略一直線上に位置するように、パネル2毎に取り付けられている。アダプター6は、パネル2のロッキングに対し、縦胴縁41の動きを緩和できる機構を持っている。化粧面材3は、縦胴縁41に横長に積層して取り付けられている。
【0074】
第3の態様によれば、縦胴縁41がパネル2毎で分離されているため、複数のパネル2のロッキングが、縦胴縁41で妨げられ難いとともに、アダプター6を介して縦胴縁41を取り付けているため、縦胴縁41の動きを緩和できるという利点がある。
【0075】
第4の態様は、第1乃至3のいずれか1つの態様の壁構造1であって、連結材12は、連結材本体121と少なくとも一対のLアングル122とを備える。連結材本体121の一端は、補助胴縁11に最も近い縦胴縁41と少なくとも一対のLアングル122の少なくとも1つで連結されている。連結材本体12の他端は、補助胴縁11と少なくとも一対のLアングル122の他の少なくとも1つで連結されている。
【0076】
第4の態様によれば、補助胴縁11はLアングル122を用いて縦胴縁41に対して容易に片持ち状態で取り付けられ、パネル2のロッキングが、補助胴縁11及び連結材12で妨げられ難い、という利点がある。
【0077】
第5の態様は、第1乃至3のいずれか1つの態様の壁構造1であって、連結材12は、連結材本体121と一対のT型ジョイント13とを備える。連結材本体121の一端は、補助胴縁11に最も近い縦胴縁41と一対のT型ジョイント13の1つで連結されている。連結材本体121の他端は、補助胴縁11と一対のT型ジョイント13の他の1つで連結されている。
【0078】
第5の態様によれば、補助胴縁11はT型ジョイント13を用いて縦胴縁41に対して容易に片持ち状態で取り付けられ、パネル2のロッキングが、補助胴縁11及び連結材12で妨げられ難い、という利点がある。
【0079】
第6の態様は、第1乃至5のいずれか1つの態様の壁構造1であって、連結材12は、壁面の開口部において、化粧面材3を取り付けるための補助胴縁11を胴縁4に固定して下地を形成している。
【0080】
第6の態様によれば、開口部の近傍に設けられた補助胴縁11に化粧面材3が取り付けられているため、複数のパネル2のロッキングが、縦胴縁41で妨げられ難いとともに、胴縁4と補助胴縁41が連動して作動する、という利点がある。
【0081】
第7の態様は、第1乃至6のいずれか1つの態様の壁構造1であって、出隅部10において隣接する一対のパネル2は、一方を勝ち側とし、他方を負け側として弾性体8を介して配置されて構造躯体5に取り付けられている。隣接する一対のパネル2には、それぞれ、縦胴縁41が取り付けられるとともに、各縦胴縁41には出隅部10の方向に連結材12を介して補助胴縁11が連結されている。勝ち側のパネル2の縦胴縁41に連結された補助胴縁11は、勝ち側のパネル2の小口23より外方に突出している。負け側のパネル2の縦胴縁41に連結された補助胴縁11は、勝ち側のパネル2の小口23付近に位置している。勝ち側のパネル2の補助胴縁41に固定された留具9に、化粧面材3の端部34における実部33が係止されている。当該補助胴縁11に固定された出隅材留具91に、断面略L字型の出隅材101の両片102が係止されている。負け側のパネル2の補助胴縁11に固定された留具9に、化粧面材の端部34が係止されている。
【0082】
第7の態様によれば、勝ち側のパネル2の補助胴縁11に断面略L字型の出隅材101の両片102が係止されているため、複数のパネル2のロッキングが両片102に同時に作用して出隅材101に歪みが生じ難い、という利点がある。
【0083】
第8の態様は、第1乃至7のいずれか1つの態様の壁構造1であって、パネル2の表面に取り付けられた胴縁4に化粧面材3が留具9を介して積層して取り付けられ、留具9の少なくとも一部は長尺物であって、当該長尺物の留具95が、補助胴縁11と、連結材12を介して補助胴縁11と連結された胴縁4とにわたって取り付けられている。
【0084】
第8の態様によれば、補助胴縁11が長尺物の留具95を介して胴縁4に取り付けられることになり、連結材12により片持ち状態になっている補助胴縁11の取り付け強度が向上する、という利点がある。
【0085】
第9の態様は、第1乃至7のいずれか1つの態様の壁構造1であって、パネル2の表面に取り付けられた胴縁4に化粧面材3が留具9を介して積層して取り付けられている。留具9の少なくとも一部は長尺物であって、当該長尺物の留具95が、少なくとも補助胴縁11と、連結材12を介して補助胴縁11と連結された胴縁4と、当該胴縁4に対して補助胴縁11と反対側に隣接する一つの胴縁4とにわたって取り付けられている。
【0086】
第9の態様によれば、補助胴縁11が長尺物の留具95を介して少なくとも二つの胴縁4に取り付けられることになり、連結材12により片持ち状態になっている補助胴縁11の取り付け強度が向上する、という利点がある。
【0087】
第10の態様は、第1乃至9のいずれか1つの態様の壁構造1であって、複数のパネル2は、ALCパネル2からなり、複数の化粧面材3は、窯業系サイディングからなる。
【0088】
第10の態様によれば、建築物の壁において一般的に用いられるALCパネル2や窯業系サイディングを用いることができる、という利点がある。
【符号の説明】
【0089】
1 外壁構造
12 連結材
121 連結材本体
122 Lアングル
13 T型ジョイント
2 パネル
21 長辺
22 短辺
23 小口
3 化粧面材
30 張分材
31 長辺
32 短辺
33 実部
34 端部
4 胴縁
41 縦胴縁
5 構造躯体
6 アダプター
9 留具
95 長尺物の留具
96 短尺物の留具
10 出隅部
101 出隅材
102 両片