(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124083
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】耐火ボード枠、天井埋込装置の設置構造、及び天井埋込装置の設置方法
(51)【国際特許分類】
E04B 9/00 20060101AFI20230830BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20230830BHJP
A62C 2/00 20060101ALI20230830BHJP
F24F 1/0047 20190101ALI20230830BHJP
F24F 13/32 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
E04B9/00 D
E04B9/00 F
E04B1/94 F
E04B1/94 A
A62C2/00 X
F24F1/0047
F24F13/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027663
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000110664
【氏名又は名称】ナンカイ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】田里 香織
(72)【発明者】
【氏名】漆原 慎
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 大樹
(72)【発明者】
【氏名】足立 智之
(72)【発明者】
【氏名】輕部 元喜
(72)【発明者】
【氏名】潮 真之介
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001FA15
2E001GA12
2E001HA03
(57)【要約】
【課題】 二重の天井構造を必要とすることなく防火ラインを形成することができ、しかも施工を容易にすることができる耐火ボード枠、天井埋込装置の設置構造、及び天井埋込装置の設置方法を提供する。
【解決手段】耐火ボード枠1は、天井に開かれた矩形開口5を周囲に形成される天井野縁6に固定されて上方に延びており、前記矩形開口5の角部にそれぞれ形成される4つの縦枠部11と、前記縦枠部11の上端同士を接続するように矩形に形成される4つの上枠部12と、を備え、前記縦枠部11が天井裏に形成される箱状空間7の側面を形成する側面耐火ボード9の側縁部の下地となるとともに、前記上枠部12が前記側面耐火ボード9の上縁部、及び前記箱状空間7の上面を形成する上面耐火ボード8の外周部の下地となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井に開かれた矩形開口を周囲に形成される天井野縁に固定されて上方に延びており、前記矩形開口の角部にそれぞれ形成される4つの縦枠部と、
前記縦枠部の上端同士を接続するように矩形に形成される4つの上枠部と、を備え、
前記縦枠部が天井裏に形成される箱状空間の側面を形成する側面耐火ボードの側縁部の下地となるとともに、前記上枠部が前記側面耐火ボードの上縁部、及び前記箱状空間の上面を形成する上面耐火ボードの外周部の下地となることを特徴とする耐火ボード枠。
【請求項2】
前記縦枠部及び前記上枠部が互いに着脱可能であることを特徴とする請求項1に記載の耐火ボード枠。
【請求項3】
互いに対向する2つの前記上枠部の長さ方向の中間に、前記上面耐火ボードの下地となる中間枠部が架設されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の耐火ボード枠。
【請求項4】
前記縦枠部に、前記天井野縁の上面に当接する落下防止部が形成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の耐火ボード枠。
【請求項5】
上端に前記上枠部に形成された固定孔に係止される係止部を有し、前記側面耐火ボードの内側に垂れ下がって、下端に前記箱状空間に設置される天井埋込装置を固定する機器固定枠を吊り下げる仮固定部を有する落下防止フックをさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の耐火ボード枠。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の耐火ボード枠と、
前記耐火ボード枠の前記上枠部を下地として貼り付けられる上面耐火ボードと、
前記耐火ボード枠の前記縦枠部を下地として貼り付けられる側面耐火ボードと、
前記上面耐火ボート及び前記側面ボードにより形成された前記箱状空間の内部に配置されて、前記天井野縁に固定される前記機器固定枠と、
前記箱状空間に配置され前記機器固定枠に固定される天井埋込装置と、
を備えることを特徴とする天井埋込装置の設置構造。
【請求項7】
請求項6に記載の天井埋込装置の設置構造を施工する天井埋込装置の設置方法であって、
前記耐火ボード枠の縦枠部を前記天井野縁に固定する工程と、
前記耐火ボード枠の前記上枠部に前記上面耐火ボードを固定するとともに、前記縦枠部に前記側面耐火ボードを固定する工程と、
前記上面耐火ボード及び前記側面耐火ボードによりその内側に形成される前記箱状空間の内部に、前記機器固定枠を配置して前記天井野縁に固定する工程と、
前記天井埋込装置を前記箱状空間に配置して、前記機器固定枠に固定する工程と、
を備えることを特徴とする天井埋込装置の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルトイン空気調和機や換気扇などの天井埋込装置を天井裏に設置するために天井面の一部を上方に窪ませた箱状空間を形成する耐火ボードを固定する下地となる耐火ボード枠、及び当該耐火ボード枠を用いた天井埋込装置の設置構造、及び、天井埋込装置の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より空気調和機や換気扇の中には、天井に埋め込まれる天井埋め込み式のものが種々知られている。このような天井埋込装置が建物に支持される方法としては、天井裏の建物躯体に支持される吊りボルトに天井埋込装置から突出する吊り金具が固定されて、天井埋込装置が吊り下げられるように支持されるものが知られている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
上述のような天井埋込装置の設置構造は、天井埋込装置に、吊り金具や吊りボルトが設けられており、これらの吊り金具や吊りボルトが邪魔になるので、断熱材料のマットで被覆する場合に、天井埋込装置に巻き付けにくく、また、隙間なく巻き付けることが困難であった。また、断熱材料のボードで被覆する場合にも、吊り金具や吊りボルトとの干渉を避けることは困難であり、切欠きなどの現場加工作業を必要とするため施工手間がかかっていた。
【0004】
そこで、本願の出願人は、断熱被覆の施工を容易にすることができるとともに、一定の断熱性能を確実に確保するために、下方に開口する断熱ボックスを、躯体から吊り下げて、断熱ボックス内に天井埋込装置を固定した天井埋込装置の取付構造を提案した(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-320888号公報
【特許文献2】特開2001-235177号公報
【特許文献3】特開2017-146012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献3の断熱ボックスは、グラスウールボード又はロックウールボードで構成されており、1時間準耐火構造で求められる強化石膏ボード15mm相当の耐火性能を確保することはできない。したがって、天井埋込装置を配置しつつ、1時間準耐火構造で設計するためには、天井及び天井埋込装置よりも上に、強化石膏ボード15mmを敷き詰めた防火ラインを形成し、当該防火ラインの下に天井を形成する石膏ボード及び天井埋込装置を吊り下げる二重の天井構造とする必要がある。
【0007】
しかし、二重の天井構造とする場合、天井が低くなる設計の自由度が低下し、居住性が低下するおそれがある。また、防火ラインのための強化石膏ボードの施工、及び天井の石こうボードの施工の2重の作業が必要となるので施工手間が大きくなる問題がある。さらに、天井埋込装置を吊り下げる部材が防火ラインを形成する強化石膏ボードを貫通することとなるので、施工の難易度が上がるとともに、防火ラインを保つために、貫通部に耐火パテを処理するなどの施工手間が加わる。
【0008】
そこで本発明は、二重の天井構造を必要とすることなく防火ラインを形成することができ、しかも施工を容易にすることができる耐火ボード枠、天井埋込装置の設置構造、及び天井埋込装置の設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の耐火ボード枠は、天井に開かれた矩形開口を周囲に形成される天井野縁に固定されて上方に延びており、前記矩形開口の角部にそれぞれ形成される4つの縦枠部と、前記縦枠部の上端同士を接続するように矩形に形成される4つの上枠部と、を備え、前記縦枠部が天井裏に形成される箱状空間の側面を形成する側面耐火ボードの側縁部の下地となるとともに、前記上枠部が前記側面耐火ボードの上縁部、及び前記箱状空間の上面を形成する上面耐火ボードの外周部の下地となることを特徴としている。
【0010】
本発明の耐火ボード枠は、前記縦枠部及び前記上枠部が互いに着脱可能であることを特徴としている。。
【0011】
本発明の耐火ボード枠は、互いに対向する2つの前記上枠部の長さ方向の中間に、前記上面耐火ボードの下地となる中間枠部が架設されることを特徴としている。
【0012】
本発明の耐火ボード枠は、前記縦枠部に、前記天井野縁の上面に当接する落下防止部が形成されることを特徴としている。
【0013】
本発明の耐火ボード枠は、上端に前記上枠部に形成された固定孔に係止される係止部を有し、前記側面耐火ボードの内側に垂れ下がって、下端に前記箱状空間に設置される天井埋込装置を固定する機器固定枠を吊り下げる仮固定部を有する落下防止フックをさらに備えることを特徴としている。
【0014】
本発明の天井埋込装置の設置構造は、上記のいずれかに記載の耐火ボード枠と、前記耐火ボード枠の前記上枠部を下地として貼り付けられる上面耐火ボードと、前記耐火ボード枠の前記縦枠部を下地として貼り付けられる側面耐火ボードと、前記上面耐火ボート及び前記側面ボードにより形成された前記箱状空間の内部に配置されて、前記天井野縁に固定される前記機器固定枠と、前記箱状空間に配置され前記機器固定枠に固定される天井埋込装置と、を備えることを特徴としている。
【0015】
本発明の天井埋込装置の設置方法は、上記の天井埋込装置の設置構造を施工する天井埋込装置の設置方法であって、前記耐火ボード枠の縦枠部を前記天井野縁に固定する工程と、前記耐火ボード枠の前記上枠部に前記上面耐火ボードを固定するとともに、前記縦枠部に前記側面耐火ボードを固定する工程と、前記上面耐火ボード及び前記側面耐火ボードによりその内側に形成される前記箱状空間の内部に、前記機器固定枠を配置して前記天井野縁に固定する工程と、前記天井埋込装置を前記箱状空間に配置して、前記機器固定枠に固定する工程と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の耐火ボード枠によると、4つの縦枠部が箱状空間を形成する4面の側面耐火ボードのそれぞれの側縁部の下地となり、上枠部が側面耐火ボードの上縁部、及び上面耐火ボードの外周部の下地となるので、天井野縁を側面耐火ボードの下縁部の下地とすることで、側面耐火ボード及び上面耐火ボードの周縁をそれぞれ適切なビスピッチで固定することができ、適切な耐火性能を有する箱状空間を形成できるので、二重の天井構造とすることなく適切な防火ラインを形成することができる。そして、このような耐火ボード枠を天井野縁に固定するだけで耐火ボードの下地が形成されるので、施工性を高めることができ、二重天井でないことから天井を低くする必要がなく、設計の自由度を高めることができ、また、二重天井を設ける施工手間も減らすことができる。
【0017】
本発明の耐火ボード枠によると、縦枠部と、上枠部とが互いに着脱可能な構成となっていることで、耐火ボード枠の建築現場への搬入を容易にすることができる。
【0018】
本発明の耐火ボード枠によると、互いに対向する2つの上枠部の長さ方向の中間に、上面耐火ボードの下地となる中間枠部が架設されているので、上面耐火ボードをその周縁のみならず中間部でも適切なビスピッチで固定することができ、十分な天井の耐火性能を確保することができる。
【0019】
本発明の耐火ボード枠によると、縦枠部に、天井野縁の上面に当接する落下防止部が形成されるので、耐火ボード枠を天井野縁に固定する際に、天井野縁に落下防止部を引っ掛けることで、耐火ボード枠が落下することを防止できるので、作業性及び安全性を向上させることができる。
【0020】
本発明の耐火ボード枠によると、落下防止フックが側面耐火ボードの内側に垂れ下がり機器固定枠を吊り下げるので、機器固定枠の高さを調整しつつ簡単に適切な位置に設置することができ、機器固定枠の設置作業を安全かつ容易にすることができる。
【0021】
本発明の天井埋込装置の設置構造によると、耐火ボード枠に上面耐火ボード及び側面耐火ボードを貼り付けて箱状空間を形成し、当該箱状空間の内部に機器固定枠及び天井埋込装置を設置するものであるので、当該上面耐火ボード及び側面耐火ボードを防火ラインとすることができ、天井埋込装置を設置するために形成される天井の開口を適切に防火することができる。そして、天井埋込装置を固定する機器固定枠が天井野縁に固定されることとなるので、天井埋込装置を吊り下げる部材が必要なくなるので、当該吊り下げる部材を天井埋込装置に接続させるために、耐火ボードを貫通させる必要もなくなるので、施工を容易にするとともに、貫通部に耐火パテを処理するなどの施工手間も不要とすることができる。
【0022】
本発明の天井埋込装置の設置方法によると、耐火ボード枠を天井野縁に固定したのち、当該耐火ボード枠に上面耐火ボード及び側面耐火ボードを設置することで、防火ラインを構成する箱状空間を形成することができ、その内側に機器固定枠及び天井埋込装置を配置して固定するので、簡単に防火ラインを確保した状態で天井埋込装置を設置することができる。防火ラインを形成するために二重天井とする必要がないので、施工性が向上するとともに、天井高さを高くし、又は天井懐の設計の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図3】耐火ボード枠を天井野縁に固定する状態を説明する図。
【
図4】耐火ボード枠を下地として貼り付けられる上面耐火ボード、及び側面耐火ボードを説明する斜視図。
【
図5】上面耐火ボードを上枠部にビス固定する状態を説明する断面図。
【
図6】落下防止フックの全体構成を説明する斜視図。
【
図7】側面耐火ボードを側枠部にビス固定するとともに、落下防止フックを固定孔及び側面耐火ボードの上面に引っかける状態を説明する断面図。
【
図8】上面耐火ボード及び側面耐火ボードにより形成された箱状空間内で機器固定枠を落下防止フックに固定する状態を説明する図。
【
図10】機器固定枠を落下防止フックに仮固定する状態を説明する図。
【
図11】機器固定枠を天井野縁に固定した状態を説明する図。
【
図12】機器固定枠を天井野縁に固定した状態を説明する図。
【
図13】機器固定枠に天井埋込装置を固定した状態を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る耐火ボード枠1、天井埋込装置の設置構造2、及び天井埋込装置の設置方法の実施形態について、各図を参照しつつ説明する。天井埋込装置3は、ビルトイン空気調和機や換気扇などの天井裏に設置されるとともに、下面が天井面に露出して、屋内の空調や換気を行う装置である。天井面は厚さ15mmの強化石膏ボード製の天井板4を天井野縁6に固定して形成される。天井板4は1時間準耐火構造で求められる不燃性能を有している。天井面には天井埋込装置3の下面を露出させるための矩形開口5が形成される。したがって、例えば1時間準耐火構造において、天井板4を防火ラインとした場合、天井埋込装置3の下面を露出させるための矩形開口5が防火ライン上の欠損となるので、天井懐内に防火ラインを連続させる処置が必要となる。
【0025】
このような天井埋込装置3を設置する天井埋込装置の設置構造2は、
図13に示すように、天井野縁6に固定される耐火ボード枠1と、耐火ボード枠1の内側に貼り付けられて箱状空間7を形成する上面耐火ボード8及び側面耐火ボード9と、箱状空間7の内部に配置されて天井野縁6に固定される機器固定枠10と、箱状空間7の内部に配置されて機器固定枠10に固定される天井埋込装置3と、を備えている。
【0026】
天井野縁6は中空の鋼製四角筒状であり、天井面を形成する天井板4の下地を形成している。天井板4は、天井野縁6の下面に所定間隔のビスで貼り付けられて固定されており、更にその下に例えば図示しないクロス等の化粧材が貼り付けられて、天井面を形成している。天井面に形成された矩形開口5の周縁には天井野縁6が配置されている。
【0027】
耐火ボード枠1は、
図1及び
図2に示すように、矩形開口5の角部に配置され、当該角部から天井懐に向かって立ち上がって配置される4つの縦枠部11と、縦枠部11の上端同士を接続するように配置される4つの上枠部12と、互いに対向する2つの上枠部12の間に架設される中間枠部13と、を有する。耐火ボード枠1は、4つの上枠部12が水平な矩形の枠を形成するとともに、当該矩形の枠の角からそれぞれ垂れ下がるように鉛直な縦枠部11が形成されて、直方体のフレーム状に形成される。
【0028】
縦枠部11は、長尺な薄鋼板を直角に折り曲げて、鉛直方向に長く水平断面が直角2等辺の山型に形成されている。縦枠部11を構成する2つの板面には、それぞれ、天井面の矩形開口5の周縁に形成されている天井野縁6の上面に当接する落下防止部14が突出して形成されている。落下防止部14は、縦枠部11の2つの板面にそれぞれ形成されており、縦枠部11に、上辺が繋がった矩形の切れ目を設けて、当該切れ目の内側の板面を斜めに下方に突出するように起こしてひれ状に形成されている。落下防止部14の下端と縦枠部11の下端との鉛直距離は、天井野縁6の高さ方向の長さと略等しく、
図3に示すように、落下防止部14の下端が天井野縁6の上面に当接した状態のとき、縦枠部11の下端は天井野縁6の下面の高さとほぼ等しい。
【0029】
上枠部12は、水平方向に長く形成されており、鉛直な面を有する側部15と、側部15の上端を耐火ボード枠1の内側に向かって直角に折り曲げて形成される上部16と、を有している。上枠部12の側部15には、矩形に貫通する固定孔17が水平方向に距離を開けて2箇所ずつに形成されている。固定孔17は水平方向に長く鉛直方向に短い矩形に形成されており、当該固定孔17に後述する落下防止フック18を引っ掛け可能となっている。
【0030】
中間枠部13は、水平に形成された長尺な薄鋼板の両端を下方に折り曲げて形成されており、両端が2つの上枠部12に当接して固定されている。中間枠部13は幅方向の両側縁が上方に立ち上がっており、上面耐火ボード8を固定する下地としての剛性を確保している。
【0031】
耐火ボード枠1は、4つの縦枠部11、4つの上枠部12、及び中間枠部13がそれぞれボルト及びナットで固定されて連結されており、ボルトの締め緩めによって、互いに着脱可能となっている。このように、各部がそれぞれ着脱可能となっていることで、建築現場への搬入時や保管時に省スペース化することができる。なお、本発明における耐火ボード枠1は、各部が着脱可能な構成に限定されるものではなく、例えば溶接等によって、箱状に組み立てられて建築現場に搬入されるものであってもよい。
【0032】
上面耐火ボード8は、
図4及び
図5に示すように、略正方形の強化石膏ボード板であり、耐火ボード枠1の内側で、4つの上枠部12の水平面を形成する上部16に下側から当接して周縁がビス止されて、箱状空間7の上面を形成している。上面耐火ボード8は、また、中央が中間枠部13に沿ってビス止めされており、これによって耐火性能を発揮することができる。側面耐火ボード9は、
図4及び
図7に示すように、4枚の矩形の強化石膏ボードである。側面耐火ボード9は、耐火ボード枠1の内側で、側縁が縦枠部11にビス止めされるとともに、上枠部12の鉛直面を形成する側部15に内側から当接して上縁が上枠部12にビス止めされる。また、側面耐火ボード9は下縁が天井野縁6にビス止めされる。したがって、側面耐火ボード9の全周縁は、上枠部12、縦枠部11、及び天井野縁6にビス止めされることとなり、これによって、側面耐火ボード9はその耐火性能を発揮することができる。このように1枚の上面耐火ボード8及び4枚の側面耐火ボード9によって、天井懐に耐火被覆がなされた箱状空間7が形成される。
【0033】
落下防止フック18は、
図6に示すように、上下方向に長尺な薄鋼板の上端が2箇所で折れ曲がってフック状に形成されてる係止部19と、係止部19から垂れ下がるように形成された平板状の仮固定部20と、を有する。係止部19は、水平に形成される上平面部21と、上平面部21の一端から鉛直に短く垂れ下がる前垂部22と、上平面部21の他端から垂れ下がる後垂部23とを有し、後垂部23の下端がそのまま垂れ下がって仮固定部20を形成している。係止部19は、
図7に示すように、前垂部22を上枠部12の固定孔17に挿入して引っ掛けて、側面耐火ボード9の上面に上平面部21が当接した状態で、後垂部23及び仮固定部20が側面耐火ボード9に沿って箱状空間7の内側に垂れ下がって配置される。
【0034】
機器固定枠10は、
図9に示すように、箱状空間7にはめ込まれる矩形枠状であり、鉛直な筒状の外周部24と、外周部24の下端から内側に延びる内側延出部25と、を有する。外周部24は、
図8及び
図10に示すように、側面耐火ボード9の下端の内側で、落下防止フック18の仮固定部20に当接し、当該落下防止フック18にビスで吊り下げられる。機器固定枠10は、落下防止フック18に仮固定されつつ適切な位置に高さ調整を行い、更に、
図11及び
図12に示すように、天井野縁6にビス固定される。
【0035】
ビルトイン空気調和機や換気扇などの天井埋込装置3は、下端に水平に広がるフランジ26を有する。天井埋込装置3は、
図13に示すように、下方から箱状空間7の内部に持ち上げられ、そのフランジ26を機器固定枠10の内側延出部25に当接させて、ネジを締結することで固定される。
【0036】
天井埋込装置の設置方法は、まず、建築現場に搬入された4つ縦枠部11、4つの上枠部12、及び、中間枠部13を、
図1及び
図2に示すように、互いにボルト及びナットで固定して耐火ボード枠1を形成する。次に、
図3に示すように、当該耐火ボード枠1を持ち上げて、天井野縁6の間に挿入する。このとき、縦枠部11に形成されている落下防止部14が天井野縁6の側面に押されて弾性変形しつつ、当該天井野縁6の間を通過し、当該天井野縁6の上に移動させられて広がる。このようにして、落下防止部14が天井野縁6の上面に当接することで、耐火ボード枠1が天井野縁6の上面に支持された状態で仮置きすることができ、耐火ボード枠1を天井野縁6に固定する作業を容易にすることができる。その後、縦枠部11にビスを打ち込んで、縦枠を天井野縁6に固定し、耐火ボード枠1を固定する。
【0037】
次に、
図4及び
図5に示すように、耐火ボード枠1の内側に上面耐火ボード8を持ち上げて上枠部12に上面耐火ボード8を当接させ、下方からビスを打ち込んで、上面耐火ボード8を上枠部12に固定する。さらに、上面耐火ボード8の下方から中間枠部13に沿ってビスを打ち込んで、上面耐火ボード8を中間枠部13に固定する。そして、
図7に示すように、側面耐火ボード9を上面耐火ボード8を周縁部の下に鉛直向きに配置し、側面耐火ボード9の外側の面の側縁を耐火ボード枠1の縦枠部11に当接させる。このとき、落下防止フック18の係止部19を耐火ボード枠1の上枠部12に形成された固定孔17に引っかけるとともに、側面耐火ボード9の上面に引っかけて、落下防止フック18の仮固定部20が、側面耐火ボード9の内側の面に沿って垂れ下がるようにする。そして、側面耐火ボード9の両側縁に内側からビスを打ち込んで側面耐火ボード9を縦枠部11にビス固定し、側面耐火ボード9の上縁に内側からビスを打ち込んで側面耐火ボード9を上枠部12の側部15にビス固定し、側面耐火ボード9の下縁に内側からビスを打ち込んで側面耐火ボード9を天井野縁6にビス固定する。このようにして、4つの側面耐火ボード9をそれぞれ固定すると、上面耐火ボード8及び側面耐火ボード9で耐火被覆された箱状空間7が形成される。
【0038】
次に、
図8及び
図10に示すように、機器固定枠10を箱状空間7の下端に配置して、機器固定枠10の外周部24を落下防止フック18の仮固定部20にビスで吊り下げつつ、当該機器固定枠10の高さを調整する。そして、
図11及び
図12に示すように、さらに機器固定枠10の内側からビスを打ち込んで機器固定枠10を天井野縁6に固定する。その後、
図13に示すように、天井埋込装置3を下方から箱状空間7の内部に挿入し、天井埋込装置3のフランジ26を機器固定枠10の内側延出部25に当接させて、ネジを締結し、天井埋込装置の設置方法を完了する。
【0039】
このように、本実施形態の天井埋込装置の設置方法は、天井野縁6に固定された耐火ボード枠1に上面耐火ボード8及び側面耐火ボード9をビス固定することで、耐火被覆された箱状空間7を形成し、天井埋込装置3を設置することができるので、所定の基準を充たす防火ラインを簡単に形成することができる。そして、天井面とは別に、天井懐内に防火ラインを設ける必要がないので、天井面が低くならず、施工手間を低減させることができるとともに、下方の居住空間の居住性を高めることができる。
【0040】
なお、本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係る耐火ボード枠1、天井埋込装置の設置構造2、及び天井埋込装置の設置方法は、天井に例えばビルトイン空気調和機を取り付けるための箱状空間7を形成する耐火ボードの下地となる耐火ボード枠1、当該耐火ボード枠1を用いた天井埋込装置の設置構造2、及び天井埋込装置の設置方法として好適である。
【符号の説明】
【0042】
1 耐火ボード枠
2 天井埋込装置の設置構造
3 天井埋込装置
5 矩形開口
6 天井野縁
7 箱状空間
8 上面耐火ボード
9 側面耐火ボード
11 縦枠部
12 上枠部
13 中間枠部
14 落下防止部
18 落下防止フック