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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124135
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】配線接続状態の確認支援システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/50 20200101AFI20230830BHJP
   G01R 31/54 20200101ALI20230830BHJP
【FI】
G01R31/50
G01R31/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027738
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼麗 龍一
(72)【発明者】
【氏名】小林 農
【テーマコード(参考)】
2G014
【Fターム(参考)】
2G014AA02
2G014AA13
2G014AB60
2G014AC01
(57)【要約】
【課題】遠隔地で接続の出来栄えの確認を行うことができる配線接続状態の確認支援システムを提供する。
【解決手段】ウェアラブルグローブを装着して配線接続作業の終了後に、作業中にセンサにより取得した情報をコンピュータにより処理して配線が正常に接続されているか否かを確認する作業を支援するシステムにおいて、センサには圧力センサとジャイロセンサが含まれ、コンピュータはウェアラブルグローブを使用して配線接続作業を予め行って圧力センサにより取得した正常時の圧力センサの信号波形をモデル波形として記憶した記憶手段と、確認対象の作業中に取得したジャイロセンサの信号波形に含まれる特殊波形に基づいて押込み動作の終了点を検出する押込み動作終了点検出手段と、押込み動作終了点よりも所定時間前から押込み動作終了点までの圧力センサの信号波形を抽出しモデル波形とを比較して正常か否かを判定する判定手段とを備えるようにした。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類のセンサを内蔵したウェアラブルグローブを作業者が装着して端子台へ配線の端部を接続する作業の終了後に、前記作業の間に前記複数種類のセンサにより取得した情報をコンピュータにより処理して配線が正常に接続されているか否かを確認する作業を支援する配線接続状態の確認支援システムであって、
前記複数種類のセンサには、圧力センサとジャイロセンサが含まれ、
前記コンピュータは、
前記ウェアラブルグローブを使用して端子台へ配線の端部を接続する作業を予め行って前記圧力センサにより取得した情報に基づく正常時の圧力センサの信号波形をモデル波形として記憶した記憶手段と、
確認対象の配線接続の作業中に取得した前記ジャイロセンサの信号波形に含まれる特殊波形に基づいて押込み動作の終了点を検出する押込み動作終了点検出手段と、
前記押込み動作終了点よりも所定時間前から前記押込み動作終了点までの前記圧力センサの信号波形を抽出し、抽出された信号波形と前記モデル波形とを比較して正常か否かを判定する判定手段と、
を備えていることを特徴とする配線接続状態の確認支援システム。
【請求項2】
端子台への配線端部の接続作業には、配線端部の押込み動作と配線端部の引っ張り動作とが含まれており、
前記ウェアラブルグローブは、前記複数種類のセンサとして圧力センサと加速度センサとジャイロセンサを内蔵し、
前記コンピュータは、
確認対象の作業の際に取得した前記加速度センサの信号波形に含まれる特殊波形に基づいて前記引っ張り動作の終了点を検出する引っ張り動作終了点検出手段を備え、
前記判定手段は、前記押込み動作終了点から前記引っ張り動作終了点までの前記圧力センサの信号波形を抽出し、抽出された信号波形と前記記憶手段に予め記憶されている所定のモデル波形とを比較して正常か否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の配線接続状態の確認支援システム。
【請求項3】
前記判定手段は、
前記押込み動作終了点検出手段または前記引っ張り動作終了点検出手段のいずれか一方が押込み動作終了点または引っ張り動作終了点を検出できなかった場合に、配線接続状態が異常であると判定することを特徴とする請求項2に記載の配線接続状態の確認支援システム。
【請求項4】
前記圧力センサは、前記ウェアラブルグローブの親指と人差し指と中指の先端の手の平側にそれぞれ設けられており、
前記加速度センサは、互いに直交する3軸方向の加速度を検知するセンサであり前記ウェアラブルグローブの手の甲に相当する部位に内蔵され、
前記ジャイロセンサは、互いに直交する3軸回りの角速度を検知するセンサであり前記ウェアラブルグローブの手の甲に相当する部位に内蔵されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の配線接続状態の確認支援システム。
【請求項5】
前記ウェアラブルグローブは、前記センサにより検知された情報を無線で送信する通信手段を備えていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の配線接続状態の確認支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子台への配線の接続が正常になされたか否かを確認する作業を支援する配線接続状態の確認支援システムに関し、例えばリレーが接続されるジャック板への配線の接続状態を確認する配線接続状態の確認支援システムに利用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、端子台としてのジャック板へ配線端部を接続する作業の終了後における配線接続作業の出来栄えすなわち配線接続状態の確認は、作業現場で作業者が頭部に装着したウェアラブルグラスのカメラにより撮影した映像を遠隔地のパソコン等の端末へ送信し表示装置の画面に表示させるシステムを構築し、端末の表示画面を担当者が目視して作業結果確認の行うようにすることで、確認作業の効率化を図ることが実施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-38446号公報
【特許文献2】特開2020-64429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ジャック板上の配線接続箇所はミリ単位であるため、上記のような配線作業システムを利用して、配線接続状態の確認を端末の表示画面を介した目視で行う場合、多数の差込み口を有するジャック板に複数の配線が接続されていると、画面内に複数の配線が映り込んでしまうため、接続箇所の状態を確認するのが困難であり、目視に依存する方法では、配線が確実に接続していることを正確に判断することが難しいという課題がある。
【0005】
なお、従来、端子台への配線端部の接続状態の確認は、例えば特許文献1に記載されている接続不良検出装置の発明のように、2本の測定子を接続部へ接触させて測定子間に電圧を印加し、当接部分の絶縁抵抗をテスタのような測定器で測定して検査する方法が一般的であった。
しかしながら、特許文献1の発明のように、絶縁抵抗を測定器で測定して確認する方法は、ジャック板のように比較的小さな面積に多数の配線が接続される箇所においては、そもそも測定子を接続部へ接触させることが困難であり、適していない。また、絶縁抵抗を測定器で測定して検査する方法は、作業結果を確認する担当者が現地に赴く必要があるため、作業効率が非常に悪いという課題がある。
【0006】
また、従来、圧力センサを主とする複数のセンサを内蔵した手袋型のウェアラブルデバイスを用いて作業中の情報を収集し、収集した複数のセンサ情報を組み合わせて照合して特定の身体動作を認識する動作照合部と、動作照合部が認識した身体動作に基づいて作業者の作業内容が正常に行われたかを判定する信号判定部と、信号判定部の判定結果を報知する報知部とを有する作業情報管理システムに関する発明が特許文献2に記載されている。しかしながら、特許文献2の発明は、手袋型のウェアラブルデバイスに内蔵するセンサとして圧力センサ、音センサ、加速度センサを使用するもので、ジャイロセンサを使用することについては記載されておらず、圧力センサと加速度センサとジャイロセンサで取得した情報を用いて配線接続状態を確認する本願発明とは相異している。
【0007】
本発明は上記のような背景のもとになされたもので、端子台への配線端部の接続作業が行われた現場へ作業結果の確認を行う担当者が赴くことなく、遠隔地で接続の出来栄えすなわち正常な接続状態か否かの確認を行うことができる配線接続状態の確認支援システムを提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、担当者の目視に依存することなく、比較的小さな面積に多くの配線が接続されることがあるジャック板のような端子台へ配線が確実に接続されているか否かを確認することができる配線接続状態の確認支援システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本出願に係る発明は、
複数種類のセンサを内蔵したウェアラブルグローブを作業者が装着して端子台へ配線の端部を接続する作業の終了後に、前記作業中に前記複数種類のセンサにより取得した情報をコンピュータにより処理して配線が正常に接続されているか否かを確認する作業を支援する配線接続状態の確認支援システムにおいて、
前記複数種類のセンサには、圧力センサとジャイロセンサが含まれ、
前記コンピュータは、
前記ウェアラブルグローブを使用して端子台へ配線の端部を接続する作業を予め行って前記圧力センサにより取得した情報に基づく正常時の圧力センサの信号波形をモデル波形として記憶した記憶手段と、
確認対象の配線接続の作業中に取得した前記ジャイロセンサの信号波形に含まれる特殊波形に基づいて押込み動作の終了点を検出する押込み動作終了点検出手段と、
前記押込み動作終了点よりも所定時間前から前記押込み動作終了点までの前記圧力センサの信号波形を抽出し、抽出された信号波形と前記モデル波形とを比較して正常か否かを判定する判定手段と、ように構成したものである。
【0009】
上記のように構成された配線接続状態の確認支援システムによれば、端子台への配線端部の接続作業が行われた現場へ作業結果の確認を行う担当者が赴くことなく、遠隔地で接続の出来栄えすなわち接続状態が正常か否かの確認を行うことができる。また、作業者による端子台への配線端部の接続作業にバラつきがあったとしても、接続状態が正常か否かの判定を正確に行うことができる。さらに、目視に頼らないで接続状態を判定するため、比較的小さな面積に多くの配線が接続されることがあるジャック板のような端子台へ配線が確実に接続されているか否かを確認することができる。
【0010】
ここで、望ましくは、端子台への配線端部の接続作業には、配線端部の押込み動作と配線端部の引っ張り動作とが含まれており、
前記ウェアラブルグローブは、前記複数種類のセンサとして圧力センサと加速度センサとジャイロセンサを内蔵し、
前記コンピュータは、
確認対象の作業の際に取得した前記加速度センサの信号波形に含まれる特殊波形に基づいて前記引っ張り動作の終了点を検出する引っ張り動作終了点検出手段を備え、
前記判定手段は、前記押込み動作終了点から前記引っ張り動作終了点までの前記圧力センサの信号波形を抽出し、抽出された信号波形と前記記憶手段に予め記憶されている所定のモデル波形とを比較して正常か否かを判定するように構成する。
【0011】
上記のような構成によれば、端子台への配線端部の接続作業に配線端部の押込み動作と配線端部の引っ張り動作とが含まれていることにより接続状態の確認を正確に行えるともに、押込み動作と引っ張り動作とが含まれている場合に、正確な判定に必要な圧力センサの信号波形を適切に抽出することができる。
【0012】
さらに、望ましくは、前記判定手段は、前記押込み動作終了点検出手段または前記引っ張り動作終了点検出手段のいずれか一方が押込み動作終了点または引っ張り動作終了点を検出できなかった場合に、配線接続状態が異常であると判定するように構成する。
押込み動作終了点または引っ張り動作終了点を検出できなければ、判定に必要な圧力センサの信号波形の所定の部位を抽出できず判定結果の信頼性が低下するが、上記構成によれば、判定結果の信頼性を高めることができる。
【0013】
また、望ましくは、前記圧力センサは、前記ウェアラブルグローブの親指と人差し指と中指の先端の手の平側にそれぞれ設けられており、
前記加速度センサは、互いに直交する3軸方向の加速度を検知するセンサであり前記ウェアラブルグローブの手の甲に相当する部位に内蔵され、
前記ジャイロセンサは、互いに直交する3軸回りの角速度を検知するセンサであり前記ウェアラブルグローブの手の甲に相当する部位に内蔵されているようにする。
上記のような構成によれば、配線接続状態の高精度の判定に必要な情報を取得することができる。
【0014】
また、望ましくは、前記ウェアラブルグローブは、前記センサにより検知された情報を無線で送信する通信手段を備えているようにする。
かかる構成によれば、配線接続作業の終了直後にウェアラブルグローブからセンサが取得した情報を送信することができるため、リアルタイムで判定を行うことができ、配線接続状態の異常を検出した場合に直ちに作業のやり直しを指示することができ、効率的に作業を進めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る配線接続状態の確認支援システムによれば、端子台への配線端部の接続作業が行われた現場へ作業結果の確認を行う担当者が赴くことなく、遠隔地で接続の出来栄えすなわち正常な接続状態か否かの確認を行うことができる。また、担当者の目視に依存することなく、比較的小さな面積に多くの配線が接続されることがあるジャック板のような端子台へ配線が確実に接続されているか否かを確認することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る配線接続状態の確認支援システムによる支援作業の対象となるA形ジャック板の一構成例を示す正面図である。
図2】(A)は本発明に係る配線接続状態の確認支援システムを構成するウェアラブルグローブの構成例を示す正面図、(B)はウェアラブルグローブに内蔵された加速度センサが検知する加速度の方向を示す斜視説明図、(C)はウェアラブルグローブに内蔵されたジャイロセンサが検知する角速度の向きを示す斜視説明図である。
図3】実施形態のウェアラブルグローブの圧力センサと加速度センサとジャイロセンサより取得した信号の具体例を示す波形図である。
図4】実施形態の配線接続状態の確認支援システムにおける配線接続作業および接続状態確認作業の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明に係る配線接続状態の確認支援システムの一実施形態について説明するが、先ず、実施形態に係る配線接続状態の確認支援システムによる支援作業の対象となる端子台の一例としてのA形ジャック板の構成について、図1を用いて説明する。
A形ジャック板10は、鉄道設備用の器具箱内に設置され踏切遮断機などの制御に使用されるJRS規格A形の直流リレーを取り付けるための端子台であり、前面にリレーが装着されるソケットが設けられ、背面には、図1に示すように、配線の端部(プラグ)を差し込むための複数の差込み口12がマトリックス状に並んで配設されたジャック部11が設けられており、各差込み口12の内部に接続用の端子が固定されている。
【0018】
また、図1に示すA形ジャック板10は、ジャック部11の横に基板部13が設けられ、この基板部13は他の複数の基板部とともに1つの配電盤に配設されている。さらに、ジャック板10の周縁部には、当該ジャック板10を配電盤等に固定するための固定用ネジ15を挿通する複数のネジ穴が設けられている。
【0019】
なお、前記ジャック板10へ配線ケーブルを接続する場合、作業者は図2のウェアラブルグローブ20を手に装着して、図示しないペンチ等の工具で配線端部のプラグを挟んで所定の差込み口12へ押し込む作業を行う。また、差し込まれたプラグは、工具でプラグを挟み込んで強く引っ張ることで引き抜くことができるようになっている。
本実施形態に係る配線接続状態の確認支援システムは、工具で配線端部のプラグをジャック板10の差込み口12へ接続する作業中の動作を、ウェアラブルグローブ20に設けた複数のセンサで検知して、その検知情報に基づいてジャック板への配線の接続が確実になされているか否かを判定するものである。なお、配線の接続作業は、配線端部のプラグをジャック板10の差込み口12へ差し込む作業と、その後プラグを軽く引っ張って状態を確認する作業とからなる。
【0020】
図2には本実施形態の配線接続状態の確認支援システムを構成するウェアラブルグローブ20の構成例が示されている。
図2に示すように、本実施形態で使用するウェアラブルグローブ20は、親指と人差し指と中指に相当するフィンガー部21a,21b,21cの先端部の手の平の側にそれぞれ圧力センサP1,P2,P3が内蔵されている。また、グローブの手の甲に相当する部位22には、X,Y,Zの3軸方向の加速度をそれぞれ検知する加速度センサA1,A2,A3と、X軸,Y軸,Z軸の各軸回りの角速度をそれぞれ検知するジャイロセンサG1,G2,G3が内蔵されている。
【0021】
さらに、ウェアラブルグローブ20の手首に近い部位23または手の甲の部位22には、上記センサで検知したデータを無線通信で図示しない作業管理用のコンピュータ(PC)へ送信するための無線通信器が内蔵されている。
作業管理用のコンピュータは、専用のアプリケーションを実行することによって、ウェアラブルグローブ20から送信されてきた圧力、加速度および角速度のデータに基づいて、ジャック板への配線の接続が確実になされているか否かを判定する機能を備えている。
【0022】
本発明者らは、本発明に先立って、圧力センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、音センサ、磁気センサなど複数種類のセンサを内蔵したウェアラブルグローブを使用して、ジャック板への配線接続作業を行い、作業中の各センサのデータを収集した後、収集したデータ(センサの信号波形)の解析を行なった。その結果、内蔵するセンサとして圧力センサと加速度センサとジャイロセンサを用いることで、高い確率でジャック板への配線の接続が確実になされたか否かを確認できることを見出し、本発明を想到するに至った。以下、圧力センサと加速度センサとジャイロセンサの具体的な信号波形の例および具体的な配線接続状態の確認作業の手順について説明する。
【0023】
図3には、複数種類のセンサを内蔵したウェアラブルグローブを使用して、ジャック板への配線接続作業すなわち配線端部のジャック板への差込みおよび確認のために配線を引っ張る操作を行なった際に取得された圧力センサP1,P2,P3と加速度センサA1,A2,A3とジャイロセンサG1,G2,G3の信号波形の具体例が示されている。
【0024】
また、上記各センサのデータの収集中には、作業の様子を映像カメラで撮影し、時刻データとともに記憶した。
そして、時刻を指標にして各センサの信号波形と映像とを照合した結果、圧力センサの信号波形(図3(A))はばらつきが大きく押込み動作や引っ張り動作の終了点の判別が困難であること、押込み動作期間T2と引っ張り動作期間T4の間の期間T3にジャイロセンサの信号(図3(C))に特異な波形W3が表われること、加速度センサの信号波形(図3(B))は接続作業終了後(期間T5)に変化が非常に小さくなることが分かった。
【0025】
以上の知見から、ジャイロセンサの信号に特異な波形W3が表われるところをプラグの押込み動作の終了点とみなすことができ、それによって期間T3の直前の期間T2がプラグ押込み動作期間でありプラグ押込み時の圧力センサの信号波形を抽出できること、期間T3とT5との間の期間T4がプラグ引っ張り動作期間でありプラグ引っ張り時の圧力センサの信号波形を抽出できることが分かった。
そこで、上記のようにして抽出された期間T2と期間T4の圧力センサの波形と、予めウェアラブルグローブを装着しジャック板の設置高さを段階的に変えて配線接続を実施して収集した多数の正常作業時のモデル波形とを比較することで、配線接続状態の正常/異常を判定することとした。
なお、予めウェアラブルグローブを装着して接続作業を繰り返し実施して収集した多数の正常作業時の波形や異常作業時の波形を、AI(人工知能)に教師データとして与えて機械学習させ、AIにより配線接続状態の正常/異常を判定させるようにしてもよい。
【0026】
次に、本実施形態の配線接続状態の確認支援システムによる支援を受けて行う配線接続状態の確認作業の具体的な手順の一例について、図4のフローチャートを用いて説明する。なお、以下の説明では、作業対象のジャック板は配電盤に取り付けられているとともに、配電盤の所定位置には当該配電盤及びジャック板の識別情報を含む2次元コードを印刷したシールが貼付されている。また、配電盤のある現場から離れた場所に設置されている作業支援用PCの記憶装置には、上記配電盤に設けられているジャック板の位置情報および各ジャック板における配線接続を行うべき差込み口の位置情報がリスト形式で記憶されているものとする。
【0027】
配線接続を行う作業者が作業対象の配電盤のある現場に到着し、ウェアラブルグローブを手に装着するとともに映像撮影機能および無線通信機能を有するウェアラブルグラスを頭部に装着して電源スイッチをオンすると、ウェアラブルグラスの映像カメラにより撮影が開始され、ウェアラブルグラスは撮影した映像画像を遠隔地にある作業支援用PCへ送信する(ステップS11)。
【0028】
一方、ウェアラブルグラスより送信された映像画像を受信した作業支援用PCは、受信した配電盤の映像画像をモニタ上に表示する(ステップS21)。そして、記憶装置内の当該配電盤上に配設されているジャック板のリストをモニタ上に表示し、モニタ上に表示されているリストの中から作業対象のジャックおよび配線接続作業を行う差込み口がオペレータ(確認担当者)により選択されると、作業支援用PCは記憶装置内のリストを参照して作業対象のジャック板の配電盤上での位置情報および配線接続を行う差込み口の位置情報を作業者のウェアラブルグラスへ送信する(ステップS22)。なお、送信された情報はウェアラブルグラスの前面表示部に表示される。
【0029】
ジャック板の位置情報を受信した作業者は、受信した位置情報に基づいて作業対象のジャック板および配線接続を行う差込み口を見つける(ステップS12)。それから、作業者は、接続作業を開始して先ず配線端部を指定されたジャック板の差込み口に押し込む動作を行う(ステップS13)。その後、差し込んだ配線を引っ張って接続状態を確認する動作を行う(ステップS14)。なお、上記動作中、ウェアラブルグローブ20に内蔵された各センサの検知データが、無線通信器により作業支援用PCへ送信され(ステップS15)、作業支援用PC側のメモリに記憶される(ステップS23)。
【0030】
一方、センサの検知データを受信した作業支援用PCは、配線接続作業が終了すると作業終了時点から、押し込み作業に要する所定時間(例えば4秒)だけ遡って、記憶されているセンサの検知データを読み出して信号波形を分析する(ステップS24)。そして、加速度センサの信号波形から確認動作の終了点を検出するとともに、ジャイロセンサの信号波形から押込み動作の終了点を検出する(ステップS25)。その後、2つの終了点を検出できたか否か判定し、検出できていない(No)と判定すると、ステップS29へ移行して異常判定を報知する。
【0031】
また、ステップS25で、2つの終了点を検出できた(Yes)と判定すると、ステップS26へ進み、圧力センサの信号から図3の押込み動作期間(押込み動作終了点から例えば4秒前までの期間)T2の信号波形と引っ張り動作期間T3の信号波形を抽出する。そして、抽出した信号波形と収集済みの正常作業時のモデル波形とを比較して、配線接続状態が正常か異常か判定する(ステップS27)。そして、正常(Yes)と判定すると、ステップS28へ進み、正常判定を報知する。
一方、ステップS27の処理で配線接続状態が正常でない(No)と判定すると、ステップS29へ移行して異常判定を報知する。その後、ステップS22へ戻って、次の差込み口の位置情報を作業者へ送信し、上記処理を繰り返す。さらに、上記判定を配線接続作業終了直後に行えば、ステップS29で異常が報知された場合に、作業者へ作業のやり直しを指示することができる。
【0032】
上記のような手順に従った処理を実行可能なシステムによれば、ウェアラブルグローブ20に内蔵されたセンサの信号に基づいて、配線接続作業が行われたジャック板の差込み口の接続状態が正常か否か作業支援用PCにより判定できるため、従来のようにジャック板への配線端部の接続作業が行われた配電盤のある現場へ作業結果確認の担当者が赴くことなく、遠隔地で接続の出来栄えすなわち正常な接続状態にあるか否かの確認を行うことができる。また、接続状態が正常か否かを担当者の目視に依存することなく、作業支援用PCにより判定できるため、比較的小さな面積に多くの配線が接続されることがあるジャック板のような端子台へ配線が確実に接続されているか否かを確認することができる。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、上記実施形態では、ウェアラブルグローブ20に内蔵するセンサとして、圧力センサと加速度センサとジャイロセンサの3種類のセンサを使用したが、充分に機械学習させたAIを使用して判定を行うことで、圧力センサと加速度センサまたは圧力センサとジャイロセンサの信号に基づいて配線接続状態が正常か否かの判定を行うようにすることも可能である。
【0034】
また、前記実施形態においては、配線端部をジャック板の差込み口へ押し込む動作と差し込んだ配線を引っ張って抜けないか確認する動作を含めて配線接続作業としたが、配線接続を行う端子台によっては、配線端部を差込み口へ押し込む動作のみで配線接続を行うことも想定されるので、押込み動作中のみのセンサの信号波形に基づいて配線接続状態が正常か否かの判定を行うようにしても良い。
【0035】
さらに、前記実施形態においては、ウェアラブルグローブ20にセンサにより取得した情報を作業支援用PCへ送信する無線通信器を設けると説明したが、無線通信器を設ける代わりにメモリをウェアラブルグローブに内蔵して、センサにより取得した情報を一旦メモリに記憶し、作業終了後にメモリに記憶した情報をPCに読み込んで配線接続状態が正常か否かの判定を行うようにしても良い。
また、配電盤のある現場で配線接続作業を行う作業者がウェアラブルグローブと共にウェアラブルグラスを装着して作業をすると説明したが、ウェアラブルグラスを装着する代わりにタブレット端末のような携帯端末を保有し、作業支援用PCから携帯端末へ接続作業対象のジャック板(端子台)を指示する情報等を送信するように構成しても良い。
【符号の説明】
【0036】
10 ジャック板
11 ジャック部
12 差込み口
13 基板部
15 固定用ネジ
20 ウェアラブルグローブ
P1,P2,P3 圧力センサ
A1,A2,A3 加速度センサ
G1,G2,G3 ジャイロセンサ
図1
図2
図3
図4