(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124162
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】メモリシステム
(51)【国際特許分類】
G06F 12/06 20060101AFI20230830BHJP
G06F 12/00 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
G06F12/06 550B
G06F12/06 515A
G06F12/00 597D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027768
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 哲郎
【テーマコード(参考)】
5B160
【Fターム(参考)】
5B160CA12
5B160CC01
5B160MM01
(57)【要約】
【課題】メモリシステムにおいて、データアクセス性能の低下を抑制する。
【解決手段】メモリシステム100は、半導体メモリ装置120と、メモリコントローラ110と、からなるメモリシステムであって、メモリコントローラは、バンク数指定部と、バンクアドレス部と、ロウアドレス部と、を含むアクティブコマンドを、半導体メモリ装置に発行し、半導体メモリ装置は、アクティブコマンドにより、2つのバンクをアクティブにすることを指定された場合には、第1ロウと、第2ロウと、をアクティブにし、アクティブコマンドにより、1つのバンクをアクティブにすることを指定された場合には、第1ロウと第2ロウとのうちの第1ロウをアクティブにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバンクグループを備える半導体メモリ装置(120)と、前記半導体メモリ装置にアクセスする演算装置(200)から前記半導体メモリ装置へのアクセス要求に応じてコマンドを発行するメモリコントローラ(110)と、からなるメモリシステム(100)であって、
前記メモリコントローラは、
1つのバンクをアクティブにすることと2つのバンクをアクティブにすることとのいずれかを指定するビット列であるバンク数指定部と、
アクセス対象のバンクアドレスを定めるビット列であるバンクアドレス部と、
前記アクセス対象のロウアドレスを定めるビット列であるロウアドレス部と、
を含むアクティブコマンドを、前記半導体メモリ装置に発行し、
前記半導体メモリ装置は、
(i)前記アクティブコマンドにより、2つのバンクをアクティブにすることを指定された場合には、
前記バンクアドレス部により定められる第1バンクに属し、前記ロウアドレス部により定められるロウである第1ロウと、
前記バンクアドレス部のうち、バンクグループを定めるビット列のうちの予め定められた1ビットである反転対象ビットを反転させて得られるバンクアドレスによって定められる第2バンクに属し、前記ロウアドレス部により定められるロウである第2ロウと、
をアクティブにし、
(ii)前記アクティブコマンドにより、1つのバンクをアクティブにすることを指定された場合には、前記第1ロウと前記第2ロウとのうちの前記第1ロウをアクティブにする、
メモリシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のメモリシステムであって、
前記メモリコントローラは、論理アドレスから物理アドレスへ変換する際に、
前記論理アドレスを、前記論理アドレスの最下位ビットから、バンクアドレスのうちの前記反転対象ビットに対応するビット、カラムアドレス、バンクアドレスのうちの前記反転対象ビットに対応するビットを除いて得られるビット列、ロウアドレス、として順に割り当てることにより、前記物理アドレスを定める、
メモリシステム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のメモリシステムであって、
前記半導体メモリ装置は、
前記アクティブコマンドにより、2つのバンクをアクティブにすることを指定された場合には、前記第1ロウをアクティブにし、その後、前記第1バンクが属するバンクグループと異なるバンクグループに属するバンクに対して続けて前記アクティブコマンドを発行することができる最短間隔の経過後、前記第2ロウをアクティブにする、
メモリシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、メモリシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体メモリ装置として、複数のバンクグループを備えるDDR4やLPDDR5が用いられることがある。このような半導体メモリ装置では、異なるバンクグループに属する2つのバンクに対して、アクティブコマンドを続けて発行する際には、2つのアクティブコマンド発行の間に設けなければならない間隔を短くできる(非特許文献1、非特許文献2)。このため、コマンドバスに空きサイクルを作ることなく、続けてアクティブコマンドおよびリード/ライトコマンドの発行を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】JEDEC STANDARD DDR4 SDRAM JESD79-4B,JUNE 2017
【非特許文献2】JEDEC STANDARD Low Power Double Data Rate 5(LPDDR5)JESD209-4A,JANUARY 2020
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アクティブコマンドおよびリード/ライトコマンドの発行を続けて行う場合、リフレッシュコマンドやプリチャージコマンド等の、メモリシステムの動作に必要な他のコマンドを発行するためのコマンドバスの空きサイクルがなくなってしまう。リフレッシュコマンドやプリチャージコマンドを発行するためにアクティブコマンドおよびリード/ライトコマンドの発行を延期すると、半導体メモリ装置のデータアクセス性能が低下してしまうという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本開示の一形態によれば、メモリシステム(100)が提供される。このメモリシステムは、複数のバンクグループを備える半導体メモリ装置(120)と、前記半導体メモリ装置にアクセスする演算装置(200)から前記半導体メモリ装置へのアクセス要求に応じてコマンドを発行するメモリコントローラ(110)と、からなるメモリシステムであって、前記メモリコントローラは、1つのバンクをアクティブにすることと2つのバンクをアクティブにすることとのいずれかを指定するビット列であるバンク数指定部と、アクセス対象のバンクアドレスを定めるビット列であるバンクアドレス部と、前記アクセス対象のロウアドレスを定めるビット列であるロウアドレス部と、を含むアクティブコマンドを、前記半導体メモリ装置に発行し、前記半導体メモリ装置は、前記アクティブコマンドにより、2つのバンクをアクティブにすることを指定された場合には、前記バンクアドレスにより定められる第1バンクに属し、前記ロウアドレスにより定められるロウである第1ロウと、前記バンクアドレス部のうち、バンクグループを定めるビット列のいずれか1ビットである反転対象ビットを反転させて得られるバンクアドレスによって定められる第2バンクに属し、前記ロウアドレス部により定められるロウである第2ロウと、をアクティブにし、前記アクティブコマンドにより、1つのバンクをアクティブにすることを指定された場合には、前記第1ロウと前記第2ロウとのうちの前記第1ロウをアクティブにする。
この形態のメモリシステムによれば、1回のアクティブコマンドで、第1バンクと第2バンクとの2つのバンクをアクティブにすることにより、アクティブコマンドの発行回数を抑制しコマンドバスに空きを作ることができる。これにより、リフレッシュコマンドやプリチャージコマンドの発行によるアクティブコマンドおよびリード/ライトコマンドの発行の延期を抑制し、半導体メモリ装置のデータアクセス性能の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態におけるメモリシステムの概略構成を示す説明図である。
【
図2】本実施形態におけるメモリアクセス処理の手順の前半部分を示すフローチャートである。
【
図3】本実施形態におけるメモリアクセス処理の手順の後半部分を示すフローチャートである。
【
図4】本実施形態における論理アドレスから物理アドレスへのアドレス変換方法を示す説明図である。
【
図5】本実施形態における論理アドレスから物理アドレスへのアドレス変換方法を示す説明図である。
【
図6】本実施形態におけるアクティブ化処理の手順を示すフローチャートである。
【
図7】本実施形態におけるメモリシステムの動作の一例を表すタイミングチャートである。
【
図8】本実施形態におけるメモリシステムの動作の一例を表すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.実施形態:
A1.システム構成:
図1に示すように、本実施形態のメモリシステム100は、メモリコントローラ110と半導体メモリ装置120とからなる。メモリシステム100は、演算装置200から発行されるアクセス要求に応じて、メモリコントローラ110を介して、半導体メモリ装置120へのデータの読み書きを実行する。演算装置200は、例えば、CPUやGPU(Graphics Processing Unit)が該当する。
【0009】
メモリコントローラ110は、バス10により演算装置200と接続し、演算装置200から発行される半導体メモリ装置120へのアクセス要求を受信する。また、メモリコントローラ110は、バス20により半導体メモリ装置120と接続し、アクセス要求に応じて、半導体メモリ装置120に対して、ビット列で表されたコマンドの発行を行う。メモリコントローラ110は、メモリシステム100の動作の基準となるクロック信号に従って、上述したコマンドの発行を行う。加えて、メモリコントローラ110は、後述する、アクセス要求に含まれるアクセス対象のデータの論理アドレスから、当該データが格納された半導体メモリ装置120上の格納領域を示す物理アドレスへの変換を行う。
【0010】
アクセス要求が、半導体メモリ装置120へのデータの書き込みを要求するライトアクセス要求である場合、メモリコントローラ110は、半導体メモリ装置120に対して、アクセス要求で指定されたアドレス(以下、「アクセス対象アドレス」とも呼ぶ)へのデータの書き込みを指示するライトコマンドを発行する。また、アクセス要求が、半導体メモリ装置120からのデータの読み出しを要求するリードアクセス要求である場合、メモリコントローラ110は、半導体メモリ装置120に対して、アクセス対象アドレスからのデータの読み出しを指示するリードコマンドを発行する。ライトコマンドおよびリードコマンドは、アクセス対象アドレスのうち、カラムアドレスを指定するカラムアドレス部を備える。
【0011】
半導体メモリ装置120に対してライトコマンドまたはリードコマンドを発行する前に、メモリコントローラ110は、半導体メモリ装置120をアクセス可能状態(以下、「アクティブ」とも呼ぶ)にするために、半導体メモリ装置120に対して、アクティブコマンドを発行する。アクティブコマンドは、バンク数指定部と、バンクアドレス部と、ロウアドレス部とを備える。バンク数指定部は1ビットで表され、バンク数指定部の値を0と1とのいずれかの値に設定することにより、半導体メモリ装置120が1つのバンクをアクティブにするか、2つのバンクをアクティブにするかを指定することができる。本実施形態では、バンク数指定部が、0である場合には1つのバンクをアクティブにすることを指定し、1である場合には2つのバンクをアクティブにすることを指定する。
【0012】
バンクアドレス部は、アクセス対象アドレスのうち、バンクアドレスを指定する。本実施形態では、後述するように、半導体メモリ装置120が備えるバンクの数は16であるので、バンクアドレスは4ビットで表される。なお、バンクアドレスのうち、上位2ビットはバンクグループアドレスを示す。
【0013】
ロウアドレス部は、アクセス対象アドレスのうち、ロウアドレスを示すビット列を格納する。ロウアドレスは十数ビットに及ぶため、コマンドバス幅が不足する場合には、ロウアドレスを2つに分割して、2回のアクティブコマンドに分けて発行してもよい。
【0014】
半導体メモリ装置120は、記憶素子であるメモリセルがマトリクス状に配置されて形成され、メモリコントローラ110から発行されるコマンドに応じて、各メモリセルへのデータの書き込みおよび各メモリセルからのデータの読み出しが可能である。本実施形態の半導体メモリ装置120はLPDDR5であり、半導体メモリ装置120は、バンクグループBG0~BG3を備える。バンクグループBG0~BG3はそれぞれ4つのバンクを備え、バンクグループBG0はバンクB0~B3を備え、バンクグループBG1はバンクB4~B7を備え、バンクグループBG2はバンクB8~B11を備え、バンクグループBG3はバンクB12~B15を備える。
【0015】
半導体メモリ装置120は、アクティブコマンドを受けて、バンクアドレス部およびロウアドレス部により指定されるアクセス対象アドレスをアクティブにする(以下、「アクティブ化処理」とも呼ぶ)。バンク数指定部が0である場合、半導体メモリ装置120は、バンクアドレス部により指定される第1バンクに属し、ロウアドレス部により指定されるロウである第1ロウをアクティブにする。バンク数指定部が1である場合、半導体メモリ装置120は、第1ロウに加え、第2ロウをアクティブにする。第2ロウとは、バンクアドレス部の最上位ビット(以下、「反転対象ビット」とも呼ぶ)を反転させて得られるバンクアドレスにより定められる第2バンクに属し、ロウアドレス部により定められるロウを意味する。アクティブ化処理については、後に詳しく述べる。
【0016】
半導体メモリ装置120は、アクティブ時にライトコマンドを受けて、ライトコマンドにより指定されたカラムにデータを格納し保持する。また、半導体メモリ装置120は、アクティブ時にリードコマンドを受けて、リードコマンドにより指定されたカラムに保持していたデータを読み出す。半導体メモリ装置120は、予めバースト長を指定することにより、ライトコマンドまたはリードコマンドにより指定されたカラムから、バースト長分のデータを連続して出力することができる。
【0017】
A2.メモリアクセス処理:
メモリシステム100は、演算装置200から発行されるアクセス要求に応じて、半導体メモリ装置120へのデータの読み書きを行うメモリアクセス処理を実行する。メモリシステム100は、2つのメモリアクセス処理を実行する場合、それぞれのアクセス対象バンクが互いに異なれば、一方のメモリアクセス処理の実行と並行して、他方のメモリアクセス処理を実行してもよい。演算装置200からリードアクセス要求が発行される場合を例として、
図2および
図3に示す、メモリアクセス処理を説明する。なお、演算装置200からライトアクセス要求が発行される場合であっても、メモリシステム100において、同様のメモリアクセス処理が実行される。
【0018】
図2において、演算装置200からリードアクセス要求が発行されると、メモリコントローラ110は、リードアクセス要求のアクセス対象アドレスを取得する(ステップS110)。リードアクセス要求は、複数のアクセス対象アドレスを含んでもよい。
【0019】
メモリコントローラ110は、論理アドレスで表されたアクセス対象アドレスを、物理アドレスに変換する(ステップS120)。
図4に示す、ロウアドレスおよびカラムアドレスがそれぞれ2ビットで表される物理アドレスへの変換を例に、論理アドレスから物理アドレスへの変換を説明する。メモリコントローラ110は、論理アドレスから物理アドレスへの変換の際に、論理アドレスの最下位ビットから順番に、バンクアドレスのうちの反転対象ビットに対応するビット(1ビット)、カラムアドレス(2ビット)、バンクアドレスのうち反転対象ビットに対応するビットを除いて得られるビット列(3ビット)、ロウアドレス(2ビット)、として順に割り当てることにより、物理アドレスを定める。アドレス変換方法は、ロウアドレスおよびカラムアドレスを表すビット数が多くなっても同様である。このアドレス変換方法によれば、例えば、連続する論理アドレス0~5を物理アドレスに変換した場合、
図5に示すように、互いに異なるバンクグループに属する2つのバンクである、バンクB0(バンクアドレス:0000)およびバンクB8(バンクアドレス:1000)に対して、データは交互に配置されることとなる。なお
図5では、論理アドレス0~5を物理アドレスに変化した場合に定められる物理アドレスをハッチングにより表し、また、定められる順番を数字で表している。
【0020】
図2に示すように、メモリコントローラ110は、アドレス変換により得られたアクセス対象アドレスに応じて、バンク数指定部に0または1を設定し、物理アドレスで表されたアクセス対象アドレスを含むアクティブコマンドを半導体メモリ装置120に対して発行する(ステップS130)。アクセス対象アドレスが、上述した第1ロウと第2ロウとに対して、続けてリードコマンドを発行する必要があるアドレスである場合、メモリコントローラ110は、バンク数指定部に1を設定する。他方、アクセス対象アドレスが、単一ロウのみにリードコマンドを発行すればよいアドレスである場合、または、第1ロウと、第2ロウとは異なる他のロウとに対して、続けてリードコマンドを発行する必要があるアドレスである場合に、メモリコントローラ110は、バンク数指定部に0を設定する。
【0021】
半導体メモリ装置120は、アクティブコマンドを受信して、アクティブ化処理を実行する(ステップS140)。
図6に示すように、アクティブ化処理において、半導体メモリ装置120は、受信したアクティブコマンドのバンク数指定部が1であるか否かを判定する(ステップS210)。
【0022】
バンク数指定部が1である場合(ステップS210:Yes)、半導体メモリ装置120は、上述した第1ロウをアクティブにする(ステップS220)。
【0023】
半導体メモリ装置120は、アクティブコマンドの発行から間隔tRRD_Sの経過後(ステップS230:Yes)、半導体メモリ装置120は、上述した第2ロウをアクティブにし(ステップS240)、アクティブ化処理を終了する。間隔tRRD_Sは、半導体メモリ装置120の規格により定められている、互いに異なるバンクグループに属する2つのバンクに対して、2つのアクティブコマンドを続けて発行することができる最短間隔を意味する。「間隔」とは、2つのコマンド間に設ける時間およびクロック信号の周期を意味する。間隔tRRD_Sが経過していない場合(ステップS230:No)、半導体メモリ装置120は、間隔tRRD_Sが経過するまで、ステップS240を実行せずに待機する。
【0024】
他方、バンク数指定部が1でない場合(ステップS210:No)、つまり、バンク数指定部が0である場合、半導体メモリ装置120は、上述した第1ロウと第2ロウとのうち、第1ロウのみをアクティブにし(ステップS222)、アクティブ化処理を終了する。
【0025】
アクティブ化処理の終了後、メモリコントローラ110は、
図2に示すように、リードアクセス要求を満たすすべてのアクティブコマンドの発行が完了したか否かを判定する(ステップS150)。アクティブコマンドの発行が完了していない場合(ステップS150:No)、メモリコントローラ110は、前回のアクティブコマンドの発行から間隔tRRD_Sの経過後(ステップS152:Yes)、再びステップS130を実行する。前回のアクティブコマンドの発行から間隔tRRD_Sが経過していない場合(ステップS152:No)、メモリコントローラ110は、間隔tRRD_Sが経過するまで、ステップS130を実行せずに待機する。
【0026】
アクティブコマンドの発行が完了した後(ステップS150:Yes)、
図3に示すように、メモリコントローラ110は、アクティブコマンドの発行から間隔tRCD_Sの経過後(ステップS160:Yes)、アクティブコマンドにより定められたアクセス対象アドレスに対して、リードコマンドを発行する(ステップS170)。間隔tRCD_Sは、半導体メモリ装置120の規格により定められている、アクティブコマンドの発行後にリードコマンドを発行できるまでの最短間隔を意味する。最初のアクティブコマンドの発行から間隔tRCD_Sが経過していない場合(ステップS160:No)、メモリコントローラ110は、間隔tRCD_Sが経過するまで、ステップS170を実行せずに待機する。
【0027】
メモリコントローラ110は、リードアクセス要求を満たすすべてのリードコマンドの発行が完了したか否かを判定する(ステップS180)。リードコマンドの発行が完了していない場合(ステップS180:No)、メモリコントローラ110は、前回のリードコマンドの発行から間隔tCCD_Sの経過後(ステップS182:Yes)、再びステップS170を実行する。間隔tCCD_Sは、半導体メモリ装置120の規格により定められている、互いに異なるバンクグループに属する2つのバンクに対して、2つのリードコマンドを続けて発行できる最短間隔を意味する。前回のアクティブコマンドの発行から間隔tCCD_Sが経過していない場合(ステップS182:No)、メモリコントローラ110は、間隔tCCD_Sが経過するまで、ステップS170を実行せずに待機する。
【0028】
リードコマンドの発行が完了した後(ステップS180:Yes)、ステップS190において、半導体メモリ装置120は、受信したリードコマンドに応じて、データを出力する。半導体メモリ装置120は、リードコマンドの発行から間隔CLの経過後にデータを出力する。間隔CLは、半導体メモリ装置120の規格により定められている、半導体メモリ装置120がリードコマンドを受信してからデータを出力するまでの間隔を意味する。出力されたデータは、メモリコントローラ110を介して演算装置200へ出力される。ステップS190の終了後、メモリシステム100は、メモリアクセス処理を終了する。
【0029】
以上説明したメモリアクセス処理について、より具体的に説明する。
図7および
図8は、ともに、ロウaおよびロウbへのリードアクセスを実行するメモリアクセス処理と、ロウcおよびロウdへのリードアクセスを実行するメモリアクセス処理とを並行して実行する例を表している。2つのメモリアクセス処理は、それぞれ、2周期分のデータ出力を4回実行する。
図7に示すアクティブコマンドでは1つのバンクをアクティブにすることを指定し、
図8に示すアクティブコマンドでは2つのバンクをアクティブにすることを指定する点で、
図7と
図8とは異なっている。なお、
図7および
図8において、ハッチングを付して表すアクティブコマンドAに付された記号は、2つに分割された、同じ記号が付されたアクティブコマンドAと対応するアクティブコマンドAであることを意味している。また、データDに付された記号および番号は、同じ記号および番号が付されたリードコマンドRによるデータ出力であることを示している。
【0030】
図7に示す例では、1つのアクティブコマンドにつき1つのバンクのみアクティブにするので、メモリコントローラ110は、ロウa、ロウb、ロウcおよびロウdに対して1回ずつアクティブコマンドを発行する必要がある。そのため、周期T20~T27のように、コマンドバスに空きがなくなる場合がある。
【0031】
図8に示す例では、ロウaとロウbとの組み合わせおよびロウcとロウdとの組み合わせが、上述した第1ロウと第2ロウとの組み合わせに相当する場合には、第2ロウに相当するロウに対するアクティブコマンドの発行が不要となる。そのため、周期T6、周期T7、周期T25および周期T27において、コマンドバスを空けることができる。
【0032】
以上説明したように、
図8に示す例のように、アクセスを実行する2つのロウが、第1ロウと第2ロウの組み合わせに相当する場合には、コマンドバスに空きを作ることができるので、リフレッシュコマンドやプリチャージコマンド等の、メモリシステム100の動作に必要な他のコマンドも発行できる。
【0033】
以上説明した実施形態のメモリシステム100によれば、1回のアクティブコマンドで、第1バンクと第2バンクとの2つのバンクをアクティブにすることにより、アクティブコマンドの発行回数を抑制しコマンドバスに空きを作ることができる。これにより、リフレッシュコマンドやプリチャージコマンドの発行によるアクティブコマンド、リードコマンドおよびライトコマンドの発行の延期を抑制し、半導体メモリ装置120のデータアクセス性能の低下を抑制できる。
【0034】
また、メモリコントローラ110は、論理アドレスから物理アドレスへ変換する際に、論理アドレスの最下位ビットから、バンクアドレスのうちの反転対象ビット、カラムアドレス、バンクアドレスのうち反転対象ビットを除いて得られるビット列、ロウアドレス、として順に割り当てることにより、物理アドレスを定めるので、データを第1バンクと第2バンクとに交互に配置できる。これにより、第1バンクと第2バンクとに対して交互にコマンドを発行する確率を高くできるので、さらに、半導体メモリ装置120のデータアクセス性能の低下を抑制できる。
【0035】
B.他の実施形態:
(B1)上記実施形態において、反転対象ビットは、バンクアドレス部の最上位ビットであるが、本開示はこれに限定されない。反転対象ビットは、バンクアドレス部のうち、バンクグループを定めるビット列のうちの予め定められた1ビットであってもよい。
【0036】
(B2)上記実施形態において、メモリコントローラ110は、論理アドレスから物理アドレスへ変換する際に、論理アドレスの最下位ビットから、バンクアドレスのうちの反転対象ビットに対応するビット、カラムアドレス、バンクアドレスのうち反転対象ビットに対応するビットを除いて得られるビット列、ロウアドレス、として順に割り当てることにより、物理アドレスを定めるが、本開示はこれに限定されない。メモリコントローラ110は、論理アドレスから物理アドレスへ変換する際に、ロウアドレスの後に、バンクアドレスのうち反転対象ビットに対応するビットを除いて得られるビット列を割り当ててもよい。
【0037】
(B3)上記実施形態において、2つのバンクをアクティブにする場合、半導体メモリ装置120は、第1ロウをアクティブにした後に第2ロウをアクティブにするが、本開示はこれに限定されない。半導体メモリ装置120は、第2ロウをアクティブにした後に、第1ロウをアクティブにしてもよい。
【0038】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した形態中の技術的特徴に対応する各実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0039】
本開示に記載の制御部およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部およびその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部およびその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0040】
100…メモリシステム、110…メモリコントローラ、120…半導体メモリ装置、200…演算装置