(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124169
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/12 20060101AFI20230830BHJP
B60C 11/13 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
B60C11/12 B
B60C11/12 A
B60C11/12 C
B60C11/13 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027775
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】河越 義史
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BC13
3D131BC18
3D131EB48W
3D131EB87W
3D131EB99W
3D131EC11W
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ドライ路面での操縦安定性を維持しつつ、優れた雪上性能を発揮し得るタイヤを提供する。
【解決手段】トレッド部を有するタイヤである。トレッド部は、第1トレッド端と、第2トレッド端と、第1ミドル陸部とを含む。第1ミドル陸部には、複数のミドル横溝20と、複数の第1ミドルサイプ31とが設けられている。複数のミドル横溝20のそれぞれは、第1溝部26と、第2溝部27と、縦溝部28とを含む。縦溝部28は、第1縦溝縁28aと、第2縦溝縁28bとを含む。複数の第1ミドルサイプ31のそれぞれの途切れ端31aは、第1縦溝縁28aよりも第2縦エッジ13b側に位置している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、第1トレッド端と、第2トレッド端と、前記第1トレッド端と前記第2トレッド端との間に設けられた第1ミドル陸部とを含み、
前記第1ミドル陸部は、前記第1トレッド端側でタイヤ周方向に延びる第1縦エッジと、前記第2トレッド端側でタイヤ周方向に延びる第2縦エッジと、前記第1縦エッジと前記第2縦エッジとの間の踏面とを含み、
前記第1ミドル陸部には、前記第1ミドル陸部をタイヤ軸方向に完全に横断する複数のミドル横溝と、前記第1縦エッジから延び、かつ、前記踏面内に途切れ端を有する複数の第1ミドルサイプとが設けられており、
前記複数のミドル横溝のそれぞれは、前記第1縦エッジからタイヤ軸方向に延びる第1溝部と、前記第2縦エッジからタイヤ軸方向に延びる第2溝部と、前記第1溝部及び前記第2溝部に連通し、かつ、タイヤ周方向に延びる縦溝部とを含み、
前記縦溝部は、前記第1縦エッジ側の第1縦溝縁と、前記第2縦エッジ側の第2縦溝縁とを含み、
前記複数の第1ミドルサイプのそれぞれの前記途切れ端は、前記第1縦溝縁よりも前記第2縦エッジ側に位置している、
タイヤ。
【請求項2】
タイヤ周方向で隣接する2本の前記ミドル横溝の間には、前記第1ミドルサイプが1本設けられている、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記第1ミドルサイプは、面取り部が形成されており、
前記第1ミドルサイプの前記面取り部の面取り幅は、前記第1ミドルサイプの前記途切れ端に向かって小さくなっている、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記第1ミドルサイプのタイヤ軸方向の長さは、前記第1ミドル陸部の前記踏面のタイヤ軸方向の最大の幅の40%~60%である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記第1ミドル陸部には、前記第2縦エッジから延び、かつ、前記踏面内に途切れ端を有する複数の第2ミドルサイプが設けられており、
前記第2ミドルサイプの前記途切れ端は、前記第2縦溝縁よりも前記第1縦エッジ側に位置している、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項6】
タイヤ周方向で隣接する2本の前記ミドル横溝の間には、前記第2ミドルサイプが1本のみ設けられている、請求項5に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記第2ミドルサイプは、面取り部が形成されており、
前記第2ミドルサイプの前記面取り部の面取り幅は、前記第2ミドルサイプの前記途切れ端に向かって小さくなっている、請求項5又は6に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記第2ミドルサイプの前記途切れ端は、前記第1ミドルサイプの前記途切れ端よりも前記第1縦エッジ側に位置している、請求項5ないし7のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ミドル陸部に複数の第1ミドル横溝及び複数の第2ミドル横溝が設けられたタイヤが提案されている。このタイヤは、前記第1ミドル横溝及び第2ミドル横溝によって、ドライ路面での操縦安定性及び氷雪上性能の両立を期待している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の車両の高性能化に伴い、タイヤにおいても、ドライ路面での操縦安定性及び雪上性能について、より一層の向上が求められている。
【0005】
本開示は、以上のような実状に鑑み案出なされたもので、ドライ路面での操縦安定性を維持しつつ、優れた雪上性能を発揮し得るタイヤを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、第1トレッド端と、第2トレッド端と、前記第1トレッド端と前記第2トレッド端との間に設けられた第1ミドル陸部とを含み、前記第1ミドル陸部は、前記第1トレッド端側でタイヤ周方向に延びる第1縦エッジと、前記第2トレッド端側でタイヤ周方向に延びる第2縦エッジと、前記第1縦エッジと前記第2縦エッジとの間の踏面とを含み、前記第1ミドル陸部には、前記第1ミドル陸部をタイヤ軸方向に完全に横断する複数のミドル横溝と、前記第1縦エッジから延び、かつ、前記踏面内に途切れ端を有する複数の第1ミドルサイプとが設けられており、前記複数のミドル横溝のそれぞれは、前記第1縦エッジからタイヤ軸方向に延びる第1溝部と、前記第2縦エッジからタイヤ軸方向に延びる第2溝部と、前記第1溝部及び前記第2溝部に連通し、かつ、タイヤ周方向に延びる縦溝部とを含み、前記縦溝部は、前記第1縦エッジ側の第1縦溝縁と、前記第2縦エッジ側の第2縦溝縁とを含み、前記複数の第1ミドルサイプのそれぞれの前記途切れ端は、前記第1縦溝縁よりも前記第2縦エッジ側に位置している、 タイヤである。
【発明の効果】
【0007】
本開示のタイヤは、上記の構成を採用したことによって、ドライ路面での操縦安定性を維持しつつ、優れた雪上性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態を示すトレッド部の展開図である。
【
図3】
図2の2本のミドル横溝及び第1ミドルサイプの拡大図である。
【
図10】
図9の第1クラウンサイプ、第2クラウンサイプ、第3クラウンサイプ及び第4クラウンサイプの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本開示の一実施形態を示すタイヤ1のトレッド部2の展開図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、冬用のタイヤであって、乗用車用の空気入りタイヤとして好適に使用される。但し、本開示は、このような態様に限定されるものではなく、重荷重用の空気入りタイヤや、タイヤの内部に加圧された空気が充填されない非空気式タイヤに適用されても良い。
【0010】
図1に示されるように、本開示のトレッド部2は、第1トレッド端T1と、第2トレッド端T2と、第1トレッド端T1と第2トレッド端T2との間でタイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝3と、これらの周方向溝3に区分された複数の陸部4とを含む。望ましい態様として、本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2が4本の周方向溝3及び5つの陸部4で構成された所謂5リブのタイヤとして構成されている。
【0011】
本実施形態のトレッド部2は、例えば、車両への装着の向きが指定されている。これにより、第1トレッド端T1は、車両装着時に車両外側に位置することが意図されている。第2トレッド端T2は、車両装着時に車両内側に位置することが意図されている。車両への装着の向きは、例えば、サイドウォール部(図示省略)に、文字又は記号で表示される。但し、本開示のタイヤ1は、このような態様に限定されず、車両への装着の向きが指定されないものでも良い。
【0012】
第1トレッド端T1及び第2トレッド端T2は、それぞれ、正規状態のタイヤ1に正規荷重の70%が負荷され、トレッド部2をキャンバー角0°で平面に接地させたときの接地面の端に相当する。
【0013】
「正規状態」とは、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤや、非空気式タイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって車両に未装着かつ無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。また、本明細書において、特に断りの無い限り、前記寸法や材料の組成の測定方法には、公知の方法を適宜適用することができる。
【0014】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0015】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0016】
「正規荷重」は、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。また、各種の規格が定められていないタイヤの場合、「正規荷重」は、上述の規格に準じ、タイヤを使用する上で適用可能な最大の荷重を指す。
【0017】
周方向溝3は、第1ショルダー周方向溝5及び第2ショルダー周方向溝6と、これらの間に設けられた第1クラウン周方向溝7及び第2クラウン周方向溝8とを含む。第1ショルダー周方向溝5は、複数の周方向溝3のうち、最も第1トレッド端T1側に設けられている。第2ショルダー周方向溝6は、複数の周方向溝3のうち、最も第2トレッド端T2側に設けられている。第1クラウン周方向溝7は、第1ショルダー周方向溝5とタイヤ赤道Cとの間に設けられている。第2クラウン周方向溝8は、第2ショルダー周方向溝6とタイヤ赤道Cとの間に設けられている。
【0018】
タイヤ赤道Cから第1ショルダー周方向溝5又は第2ショルダー周方向溝6の溝中心線までのタイヤ軸方向の距離L1は、例えば、トレッド幅TWの25%~35%であるのが望ましい。タイヤ赤道Cから第1クラウン周方向溝7又は第2クラウン周方向溝8の溝中心線までのタイヤ軸方向の距離L2は、例えば、トレッド幅TWの5%~15%であるのが望ましい。なお、トレッド幅TWは、前記正規状態における第1トレッド端T1から第2トレッド端T2までのタイヤ軸方向の距離である。
【0019】
本実施形態では、第2ショルダー周方向溝6、第1クラウン周方向溝7及び第2クラウン周方向溝8が、タイヤ周方向に平行に直線状又に延びている。一方、第1ショルダー周方向溝5は、タイヤ赤道C側の溝縁がジグザグ状に延びている。但し、各周方向溝3は、このような形状に限定されるものではない。
【0020】
各周方向溝3の溝幅W1は、少なくとも3mm以上であるのが望ましい。また、各周方向溝3の溝幅W1は、例えば、トレッド幅TWの3.0%~7.0%であるのが望ましい。各周方向溝3の深さは、乗用車用の空気入りタイヤの場合、例えば、5~10mmである。
【0021】
本実施形態の陸部4は、第1トレッド端T1と第2トレッド端T2との間に設けられた第1ミドル陸部13を含む。望ましい態様とし、第1ミドル陸部13は、第1トレッド端T1とタイヤ赤道Cとの間に設けられており、具体的には、第1ショルダー周方向溝5と第1クラウン周方向溝7との間に区分されている。本実施形態の陸部4は、第1ショルダー陸部11、第2ショルダー陸部12、第2ミドル陸部14及びクラウン陸部15を含む。第1ショルダー陸部11は、第1トレッド端T1を含んでおり、第1ショルダー周方向溝5を介して第1ミドル陸部13と隣接している。第2ショルダー陸部12は、第2トレッド端T2を含んでおり、第2ショルダー周方向溝6のタイヤ軸方向外側に区分されている。第2ミドル陸部14は、第2トレッド端T2とタイヤ赤道Cとの間に設けられており、具体的には、第2ショルダー周方向溝6と第2クラウン周方向溝8との間に区分されている。クラウン陸部15は、第1クラウン周方向溝7と第2クラウン周方向溝8との間に区分されている。これにより、クラウン陸部15は、タイヤ赤道C上に設けられている。
【0022】
図2には、第1ミドル陸部13の拡大図が示されている。
図2に示されるように、第1ミドル陸部13は、第1トレッド端T1側でタイヤ周方向に延びる第1縦エッジ13aと、第2トレッド端T2側でタイヤ周方向に延びる第2縦エッジ13bと、第1縦エッジ13aと第2縦エッジ13bとの間の踏面13sとを含む。また、第1ミドル陸部13には、複数のミドル横溝20と、複数の第1ミドルサイプ31とが設けられている。
【0023】
本明細書において、「サイプ」とは、小さな幅を有する溝状体(長手方向を有する凹部であり、溝及びサイプを含むものとする。)であって、その本体部において、2つの内壁の間の幅が1.5mm以下であるものを意味する。また、前記本体部は、2つの内壁が互いに略平行にタイヤ半径方向に延びる部分を意味する。前記本体部は、サイプの横断面においてタイヤ半径方向にジグザグ状に延びるものでも良い。また、後述されるように、サイプは、面取り部を含むものでも良い。また、サイプは、底部において幅が拡大した所謂フラスコ底を備えるものでも良い。
【0024】
図3には、2本のミドル横溝20及び第1ミドルサイプ31の拡大図が示されている。
図3に示されるように、ミドル横溝20は、第1ミドル陸部13をタイヤ軸方向に完全に横断している。第1ミドルサイプ31は、第1縦エッジ13aから延び、かつ、踏面13s内に途切れ端31aを有している。
【0025】
複数のミドル横溝20のそれぞれは、第1縦エッジ13aからタイヤ軸方向に延びる第1溝部26と、第2縦エッジ13bからタイヤ軸方向に延びる第2溝部27と、第1溝部26及び第2溝部27に連通し、かつ、タイヤ周方向に延びる縦溝部28とを含む。また、縦溝部28は、第1縦エッジ13a側の第1縦溝縁28aと、第2縦エッジ13b側の第2縦溝縁28bとを含む。本実施形態では、第1縦溝縁28a及びその長さ方向に延びる仮想延長線と、第2縦溝縁28b及びその長さ方向に延びる仮想延長線との間の領域が、縦溝部28として構成されている。
【0026】
本開示では、複数の第1ミドルサイプ31のそれぞれの途切れ端31aは、第1縦溝縁28aよりも第2縦エッジ13b側に位置している。なお、第1縦溝縁28aがタイヤ周方向に対して傾斜している場合、前記途切れ端31aは、第1縦溝縁28aの第2縦エッジ13b側の端よりも、第2縦エッジ13b側に位置している。本開示のタイヤは、上記の構成を採用したことによって、ドライ路面での操縦安定性(以下、単に「操縦安定性」という場合がある。)を維持しつつ、優れた雪上性能を発揮することができる。その理由として、以下のメカニズムが推察される。
【0027】
本開示のタイヤでは、ミドル横溝20が、第1溝部26、第2溝部27及び縦溝部28を含んでいる。雪上走行時において、このようなミドル横溝20によって形成された雪柱は、多方向に大きなせん断力を発揮できる。具体的には、前記雪柱のうち、第1溝部26及び第2溝部27で形成された部分(以下、第1雪柱部という)は、縦溝部28で形成された部分(以下、第2雪柱部という)によって支持され、雪上走行時においてタイヤ周方向に大きな反力を提供する。同様に、第2雪柱部は、第1雪柱部によって支持され、雪上走行時においてタイヤ軸方向に大きな反力を提供する。したがって、上述のミドル横溝20は、雪上でのトラクション性能、ブレーキ性能及び旋回性能を有意に高めることができる。
【0028】
一方、上述の第1ミドルサイプ31は、第1ミドル陸部13の剛性を維持しつつ、雪上走行時に摩擦力を提供でき、ドライ路面での操縦安定性を維持しつつ、雪上性能を高めることができる。とりわけ、第1ミドルサイプ31の途切れ端31aが縦溝部28の第1縦溝縁28aよりも第2縦エッジ13b側に位置していることにより、第1ミドルサイプ31が十分な長さを有し、雪上でのエッジ効果性能をさらに高めることができる。
【0029】
さらに、第1ミドルサイプ31の途切れ端31aが上記の様に特定されることにより、ミドル横溝20の第1溝部26及び縦溝部28と、第1ミドルサイプ31との間の陸部片が、適度に変形し易くなる。このような作用は、雪上走行時において、ミドル横溝20(特に、第1溝部26及び縦溝部28)の内部に雪が詰まるのを防ぐのに役立つ。このようなメカニズムにより、本開示のタイヤ1は、優れた雪上性能を持続して発揮させることができると考えられる。
【0030】
以下、本実施形態のさらに詳細な構成が説明される。なお、以下で説明される各構成は、本実施形態の具体的態様を示すものである。したがって、本開示は、以下で説明される構成を具えないものであっても、上述の効果を発揮し得るのは言うまでもない。また、上述の特徴を具えた本開示のタイヤに、以下で説明される各構成のいずれか1つが単独で適用されても、各構成に応じた性能の向上は期待できる。さらに、以下で説明される各構成のいくつかが複合して適用された場合、各構成に応じた複合的な性能の向上が期待できる。
【0031】
図2に示されるように、本実施形態では、各ミドル横溝20が、上述の特徴を具えている。また、トレッド平面視において、第1溝部26及び第2溝部27は、一定の溝幅W3でタイヤ軸方向に延びている。第1溝部26及び第2溝部27の溝幅W3は、例えば、第1ミドル陸部13の接地面の幅W2の15%~25%である。第1溝部26及び第2溝部27のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、25~35°である。なお、本明細書において、特に断りのない限り、溝の角度や長さは、溝中心線で測定され、溝幅は、溝中心線と直交方向の幅として測定される。サイプも同様である。
【0032】
本実施形態では、第1溝部26及び第2溝部27が異なる断面形状を有している。これにより、第1溝部26の最大の深さは、第2溝部27の最大の深さと異なる。また、本実施形態では、ミドル横溝20は、深さの分布が異なる複数の第1ミドル横溝21及び複数の第2ミドル横溝22を含んでいる。第1ミドル横溝21と第2ミドル横溝22とは、例えば、タイヤ周方向に交互に設けられている。
【0033】
図4には、
図2のA-A線断面図が示されている。
図4は、第1ミドル横溝21の溝長手方向に沿った断面図である。
図5には、
図2のB-B線断面図が示されている。
図5は、第2ミドル横溝22の溝長手方向に沿った断面図である。
図4及び
図5に示されるように、本実施形態の第1ミドル横溝21の第1溝部26及び第2溝部27、並びに、第2ミドル横溝22の第1溝部26及び第2溝部27は、それぞれ、一定の深さで溝長手方向に延びている。
【0034】
図4に示されるように、第1ミドル横溝21は、第1溝部26の最大の深さd1が第2溝部27の最大の深さd2よりも小さい。第1ミドル横溝21において、第2溝部27の前記深さd2は、例えば、第1クラウン周方向溝7の深さdcの60%~80%である。また、第1ミドル横溝21において、第1溝部26の深さd1は、第1クラウン周方向溝7の深さdcの40%~60%である。これにより、第1溝部26の深さd1は、第2溝部27の深さd2の60%~70%であるのが望ましい。
【0035】
図5に示されるように、第2ミドル横溝22は、その断面形状について、実質的に第1ミドル横溝21の反転形状を有している。すなわち、第2ミドル横溝22は、第1溝部26の最大の深さd1が第2溝部27の最大の深さd2よりも大きい。第2ミドル横溝22において、第1溝部26の前記深さd1は、例えば、第1クラウン周方向溝7の深さdcの60%~80%である。また、第2ミドル横溝22において、第2溝部27の深さd2は、第1クラウン周方向溝7の深さdcの40%~60%である。これにより、前記第2溝部27の深さd2は、前記第1溝部26の深さd1の60%~70%であるのが望ましい。
【0036】
本実施形態では、これらの第1ミドル横溝21及び第2ミドル横溝22がタイヤ周方向に交互に設けられることにより、操縦安定性と雪上性能とをバランス良く高めることができる。
【0037】
図6には、
図2のC-C線断面図が示されている。
図6は、第1ミドル横溝21の第2溝部27、又は、第2ミドル横溝22の第1溝部26(以下、これらを総称して深溝部37という場合がある。)の横断面図である。
図7には、
図2のD-D線断面図が示されている。
図7は、第1ミドル横溝21の第1溝部26、又は、第2ミドル横溝22の第2溝部27(以下、これらを総称して浅溝部36という場合がある。)の横断面図である。
【0038】
図6及び
図7に示されるように、深溝部37及び浅溝部36は、それぞれ、面取り部25を介して開口しているのが望ましい。面取り部25は、陸部の踏面と溝壁との間を切り欠いた傾斜面25sを含む。本実施形態の傾斜面25sは、タイヤ半径方向外側に凸となる向きに僅かに湾曲している。傾斜面25sは、例えば、平面状でも良い。このような面取り部25は、踏面13sに作用する接地圧を均一化し、耐偏摩耗性能を高めるのに役立つ。
【0039】
図6に示されるように、深溝部37は、例えば、平坦な溝底部37dを含んで構成されている。一方、
図7に示されるように、浅溝部36は、溝底部36dで開口してタイヤ半径方向に延びる溝底サイプ38が連なっている。このような溝底サイプ38は、浅溝部36を適度に開き易くし、雪上性能を高めるのに役立つ。なお、上述の第1ミドル横溝21の第1溝部26の深さd1、及び、第2ミドル横溝22の第2溝部27の深さd2は、溝底サイプ38を含まない深さを意味している。また、
図4及び
図5では、溝底サイプ38が省略されている。望ましい態様では、陸部の踏面から溝底サイプ38の底までの総深さも、深溝部37の深さよりも小さい。これにより、操縦安定性と雪上性能とがバランス良く向上する。
【0040】
図3に示されるように、本実施形態の第1縦溝縁28a及び第2縦溝縁28bは、例えば、第1ミドル陸部13の踏面13sをタイヤ軸方向に3等分したときの中央の領域に配されている。これにより、第1縦溝縁28a及び第2縦溝縁28bが、第1ミドル陸部13の踏面13sのタイヤ軸方向の中心位置を挟むように配置されている。また、第1縦溝縁28a及び第2縦溝縁28bは、それぞれ、タイヤ周方向に沿って延びており、望ましい態様ではこれらが互いに平行に延びている。第1縦溝縁28a及び第2縦溝縁28bのタイヤ周方向に対する角度は、例えば、10°以下であり、望ましくは5°以下である。第1縦溝縁28a及び第2縦溝縁28bのタイヤ周方向の長さL3は、第1溝部26及び第2溝部27における最大の溝幅よりも小さいのが望ましい。具体的には、前記長さL3は、前記溝幅の75%~95%である。このような第1縦溝縁28a及び第2縦溝縁28bは、偏摩耗を抑制しつつ、雪上走行時の旋回性能を高めることができる。
【0041】
図4及び
図5に示されるように、縦溝部28の最大の深さd3は、第1溝部26の最大の深さd1及び第2溝部27の最大の深さd2よりも小さい。具体的には、縦溝部28の最大の深さd3は、第1クラウン周方向溝7の深さdcの20%~30%である。このような縦溝部28は、第1ミドル陸部13の中央部の剛性を高め、耐偏摩耗性能を向上させる。
【0042】
図2に示されるように、第1ミドル陸部13には、タイヤ周方向に延びる少なくとも1本の縦サイプ30が設けられているのが望ましい。本実施形態の第1ミドル陸部13には、複数の縦サイプ30がタイヤ周方向に隔設されている。なお、本実施形態の縦サイプ30は、第1ミドル陸部13の踏面13sから底まで一定幅で延びている。
【0043】
縦サイプ30は、例えば、第1ミドル陸部13の踏面13sをタイヤ軸方向に3等分したときの中央の領域に配されているのが望ましい。縦サイプ30のタイヤ周方向に対する角度は、例えば、10°以下であり、望ましくは5°以下である。このような縦サイプ30は、雪上走行時においてタイヤ軸方向に大きな摩擦力を提供できる。
【0044】
縦サイプ30は、例えば、ミドル横溝20をタイヤ周方向に横切っている。望ましい態様では、縦サイプ30が第1ミドル横溝21を横切るように配されており、第2ミドル横溝22には縦サイプ30が連通していない。より具体的には、縦サイプ30は、第1ミドル横溝21の縦溝部28を横切っている。これにより、前記縦溝部28の溝底部には、縦サイプ30が溝底サイプとして構成されている。一方、第2ミドル横溝22は、このような構成を具えていない。これにより、操縦安定性、雪上性能及び耐偏摩耗性能がバランス良く向上する。
【0045】
図3に示されるように、第1ミドルサイプ31のタイヤ軸方向の長さL10は、第1ミドル陸部13のタイヤ軸方向の幅W2(
図2に示す)の40%~60%である。より望ましい態様として、本実施形態の第1ミドルサイプ31は、第1縦エッジ13aから延び、かつ、縦サイプ30に連通している。このような第1ミドルサイプ31は、操縦安定性と雪上性能とをバランス良く高めるのに役立つ。
【0046】
図2に示されるように、第1ミドル陸部13には、上述の第1ミドルサイプ31に加え、複数の第2ミドルサイプ32が設けられている。第2ミドルサイプ32は、第2縦エッジ13bから延び、かつ、縦サイプ30に連通している。望ましい態様では、第1ミドルサイプ31の踏面13s内の端が、縦サイプ30のタイヤ周方向の一方側の端部に連通している。第2ミドルサイプ32の踏面13s内の端が、縦サイプ30のタイヤ周方向の他方側の端部に連通している。このような第1ミドルサイプ31及び第2ミドルサイプ32は、縦サイプ30と協働して多方向に摩擦力を提供し、雪上性能をより一層向上させる。なお、第2ミドルサイプ32は、第1ミドルサイプ31と同様のタイヤ軸方向の長さを有している。
【0047】
第1ミドルサイプ31及び第2ミドルサイプ32は、例えば、タイヤ軸方向に対してミドル横溝20と同じ向きに傾斜している。これらのサイプのタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、10~50°であり、望ましくは25~35°である。望ましい態様では、第1ミドルサイプ31と縦サイプ30との間の角部が鋭角となるようにこれらが連通している。同様に、第2ミドルサイプ32と縦サイプ30との間の角部が鋭角となるようにこれらが連通している。これにより、雪上走行時、前記角部が路面に食い込み易くなり、優れた雪上性能が発揮される。
【0048】
図8には、
図2のE-E線断面図が示されている。
図8は、第1ミドルサイプ31の横断面図であり、以下で説明される構成は、第2ミドルサイプ32にも適用することができる。
図8に示されるように、第1ミドルサイプ31は、面取り部35を介して踏面13sで開口している。面取り部35は、踏面13sとサイプ壁31wとの間を切り欠いた傾斜面35sを含む。本実施形態の傾斜面35sは、タイヤ半径方向外側に凸となる向きに僅かに湾曲している。傾斜面35sは、例えば、平面状でも良い。このような面取り部35は、踏面13sに作用する接地圧を均一化し、操縦安定性及び耐偏摩耗性能を向上させるのに役立つ。
【0049】
図2に示されるように、第1ミドルサイプ31の面取り部35は、面取り幅が縦サイプ30側に向かって小さくなっているのが望ましい。同様に、第2ミドルサイプ32の面取り部35は、面取り幅が縦サイプ30側に向かって小さくなっているのが望ましい。これにより、第1ミドル陸部13の中央部の接地面積が確保され、操縦安定性を維持することができる。なお、面取り幅は、トレッド平面視における、面取り部の開口幅である。また、前記開口幅は、サイプ長手方向と直交する向きの幅を意味する。
【0050】
本実施形態の第1ミドルサイプ31及び第2ミドルサイプ32は、その横断面においてタイヤ半径方向に直線状に延びる本体部を含む。但し、これらのサイプは、このような態様に限定されるものではない。別の実施形態では、第1ミドルサイプ31及び第2ミドルサイプ32は、その横断面においてタイヤ半径方向にジグザグ状に延びる本体部を含むものでも良い。さらに別の実施形態では、第1ミドルサイプ31及び第2ミドルサイプ32は、横断面においてタイヤ半径方向に延びるジグザグ状に延びる本体部を含み、かつ、トレッド平面視においてもジグザグ状に延びる所謂3Dサイプとして構成されても良い。
【0051】
図9には、
図1のクラウン陸部15の拡大図が示されている。クラウン陸部15は、第1トレッド端T1側でタイヤ周方向に延びる第1縦エッジ15aと、第2トレッド端T2側でタイヤ周方向に延びる第2縦エッジ15bと、第1縦エッジ15aと第2縦エッジ15bとの間の踏面15sとを含む。また、クラウン陸部15には、複数の第1クラウンサイプ41、複数の第2クラウンサイプ42、複数の第3クラウンサイプ43及び複数の第4クラウンサイプ44が設けられている。
【0052】
図10には、第1クラウンサイプ41、第2クラウンサイプ42、第3クラウンサイプ43及び第4クラウンサイプ44の拡大図が示されている。
図10に示されるように、これらのサイプは、タイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜している。望ましい態様では、これらのサイプは、タイヤ軸方向に対してミドル横溝20(
図2に示す)と同じ向きに傾斜していている。これらのサイプのタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、25~35°である。
【0053】
第1クラウンサイプ41は、第1縦エッジ15aから延び、かつ、踏面15s内に途切れ端41aを有している。第2クラウンサイプ42は、第2縦エッジ15bから延び、かつ、踏面15s内に途切れ端42aを有している。第3クラウンサイプ43は、第1縦エッジ15aから延び、かつ、踏面15s内に途切れ端43aを有している。トレッド平面視において、第3クラウンサイプ43は、第1クラウンサイプ41とは異なる形状を有している。第4クラウンサイプ44は、第2縦エッジ15bから延び、かつ、踏面15s内に途切れ端44aを有している。トレッド平面視において、第4クラウンサイプ44は、第2クラウンサイプ42とは異なる形状を有している。
【0054】
第1クラウンサイプ41の第1縦エッジ15a側の外端41bと、第2クラウンサイプ42の第2縦エッジ15b側の外端42bとの間のタイヤ周方向の距離L4は、第1クラウンサイプ41のタイヤ周方向の1ピッチ長さP1(
図9に示す)の10%以下であるのが望ましい。これにより、ウェット走行時、クラウン陸部15が押し退けた水は、いずれかのサイプの外端側に案内され易くなり、ウェット性能が向上する。
【0055】
第1クラウンサイプ41のタイヤ軸方向の長さL6は、例えば、クラウン陸部15の踏面15sのタイヤ軸方向の幅W5(
図9に示され、以下、同様である。)の40%~60%である。
【0056】
第2クラウンサイプ42は、クラウン陸部15の踏面15sのタイヤ軸方向の中心位置を横切っているのが望ましい。第2クラウンサイプ42の途切れ端42aは、第1クラウンサイプ41の途切れ端41aよりも第1縦エッジ15a側に位置している。第2クラウンサイプ42のタイヤ軸方向の長さL7は、第1クラウンサイプ41のタイヤ軸方向の長さL6よりも大きいのが望ましい。具体的には、第2クラウンサイプ42の前記長さL7は、クラウン陸部15の踏面15sの前記幅W5の65%~85%である。このような第2クラウンサイプ42は、操縦安定性を維持しつつ、雪上性能及びウェット性能を高めることができる。
【0057】
第3クラウンサイプ43の第1縦エッジ15a側の外端43bと、第4クラウンサイプ44の第2縦エッジ15b側の外端bとの間のタイヤ周方向の距離L5は、第3クラウンサイプ43のタイヤ周方向の1ピッチ長さP2(
図9に示す)の10%以下であるのが望ましい。これにより、ウェット性能がより一層向上する。
【0058】
第3クラウンサイプ43のタイヤ軸方向の長さL8は、第2クラウンサイプ42の前記長さL7よりも小さく、かつ、第1クラウンサイプ41の前記長さL6よりも小さい。また、第3クラウンサイプ43の途切れ端43aは、第4クラウンサイプ44の途切れ端44aよりも第1縦エッジ15a側に位置している。より望ましい態様では、第3クラウンサイプ43の途切れ端43aは、第2クラウンサイプ42の途切れ端42aよりも第2縦エッジ15b側に位置している。第3クラウンサイプ43の前記長さL8は、クラウン陸部15の踏面15sの前記幅W5の25%~45%である。このような第3クラウンサイプ43は、操縦安定性と、雪上性能及びウェット性能とをバランス良く高めるのに役立つ。
【0059】
同様の観点から、第4クラウンサイプ44のタイヤ軸方向の長さL9は、例えば、第2クラウンサイプ42の前記長さL7よりも小さく、かつ、第1クラウンサイプ41の前記長さL6よりも小さい。具体的には、第4クラウンサイプ44の前記長さL9は、クラウン陸部15の踏面15sの前記幅W5の25%~45%である。
【0060】
第1クラウンサイプ41、第2クラウンサイプ42、第3クラウンサイプ43及び第4クラウンサイプ44は、それぞれ、面取り部45を介して踏面15sで開口している。これにより、クラウン陸部15の踏面15sに作用する接地圧が均一化し、操縦安定性及び耐偏摩耗性能が向上する。なお、これらのサイプの面取り部45には、第1ミドルサイプ31の面取り部35(
図8に示す)の構成を適用することができ、ここでの説明は省略される。
【0061】
図9に示されるように、第1クラウンサイプ41及び第2クラウンサイプ42は、それぞれ、その長さ方向の全体が面取り部45を介して前記踏面で開口しているのが望ましい。また、第1クラウンサイプ41の面取り部45の面取り幅W6、及び、第2クラウンサイプ42の面取り部45の面取り幅W7は、それぞれ、サイプ長手方向に一定であるのが望ましい。また、第2クラウンサイプ42の面取り部45の面取り幅W7は、第1クラウンサイプ41の面取り部45の面取り幅W6の80%~120%であり、本実施形態ではこれらが実質的に同一とされる。これにより、これらのサイプ周辺での偏摩耗が抑制される。
【0062】
第3クラウンサイプ43の面取り部45の面取り幅は、第1縦エッジ15aから途切れ端43aに向かって連続して小さくなっているのが望ましい。第4クラウンサイプ44の面取り部45の面取り幅は、第2縦エッジ15bから途切れ端44aに向かって連続して小さくなっているのが望ましい。これにより、クラウン陸部15の中央部の接地面積を十分に確保でき、操縦安定性を確実に維持することができる。なお、本実施形態の第3クラウンサイプ43は、途切れ端43aにおいて面取り部が実質的に消失しているが、このような態様に限定されるものではなく、途切れ端43aにおいて面取り部45が残存するものでも良い。第4クラウンサイプ44も同様である。
【0063】
第3クラウンサイプ43の面取り部45の最大の面取り幅W8は、第1クラウンサイプ41の面取り部45の面取り幅W6よりも小さい。具体的には、第3クラウンサイプ43の前記面取り幅W8は、第1クラウンサイプ41の前記面取り幅W6の75%~90%である。同様に第4クラウンサイプ44の面取り部45の最大の面取り幅W9は、第2クラウンサイプ42の面取り部45の面取り幅W7よりも小さい。具体的には、第4クラウンサイプ44の前記面取り幅W9は、第2クラウンサイプ42の前記面取り幅W7の75%~90%である。このような第3クラウンサイプ43及び第4クラウンサイプ44は、操縦安定性と雪上性能とをバランス良く高めるのに役立つ。
【0064】
本実施形態の各クラウンサイプは、その横断面においてタイヤ半径方向に直線状に延びる本体部を含む。但し、これらのサイプは、このような態様に限定されるものではない。別の実施形態では、各クラウンサイプは、その横断面においてタイヤ半径方向にジグザグ状に延びる本体部を含むものでも良い。さらに別の実施形態では、各クラウンサイプは、横断面においてタイヤ半径方向に延びるジグザグ状に延びる本体部を含み、かつ、トレッド平面視においてもジグザグ状に延びる所謂3Dサイプとして構成されても良い。
【0065】
図11には、第2ミドル陸部14の拡大図が示されている。
図11に示されるように、第2ミドル陸部14には、第3ミドル横溝23と第4ミドル横溝24とがタイヤ周方向に交互に設けられている。第3ミドル横溝23及び第4ミドル横溝24は、トレッド平面視における形状が共通しており、第2ミドル陸部14をタイヤ軸方向に完全に横切っている。また、第3ミドル横溝23及び第4ミドル横溝24は、タイヤ軸方向に対してミドル横溝20(
図2に示す)と同じ向きに傾斜している。第3ミドル横溝23及び第4ミドル横溝24のタイヤ軸方向に対する角度は、ミドル横溝20(
図2に示す)のタイヤ軸方向に対する角度よりも小さく、クラウン陸部15(
図9に示す)に設けられた各サイプのタイヤ軸方向に対する角度よりも小さい。具体的には、第3ミドル横溝23及び第4ミドル横溝24のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、10~20°である。一方、第3ミドル横溝23と第4ミドル横溝24とは、内部の構成が相違している。
【0066】
図12には、
図11のF-F線断面図が示されている。
図12に示されるように、第3ミドル横溝23は、第2クラウン周方向溝8側に浅溝部46を有し、第2ショルダー周方向溝6側に深溝部47を有する。
図13には、
図11のG-G線断面図が示されている。
図13に示されるように、第4ミドル横溝24は、実質的に第3ミドル横溝23の反転形状を有している。すなわち、第4ミドル横溝24は、第2クラウン周方向溝8側に深溝部47を有し、第2ショルダー周方向溝6側に浅溝部46を有する。本実施形態では、このような第3ミドル横溝23及び第4ミドル横溝24がタイヤ周方向に交互に設けられることにより、耐偏摩耗性能及び操縦安定性が向上する。
【0067】
第3ミドル横溝23及び第4ミドル横溝24の浅溝部46には、上述のミドル横溝20の浅溝部36(
図7に示す)の構成を適用することができる。同様に、第3ミドル横溝23及び第4ミドル横溝24の深溝部47には、上述のミドル横溝20の深溝部37(
図6に示す)の構成を適用することができる。
【0068】
図11に示されるように、第2ミドル陸部14には、複数の折れ曲がりサイプ56がタイヤ軸方向に並んだミドルサイプ群55がタイヤ周方向に複数設けられている。本実施形態では、複数の折れ曲がりサイプ56がタイヤ軸方向に重複するように配列されることにより、ミドルサイプ群55が構成されている。折れ曲がりサイプ56は、タイヤ周方向の一方側又は他方側に凸となる部分を含んでいる。このようなミドルサイプ群55は、制動時及び駆動時において開き難いため、雪上走行時において内部に雪や氷が詰まりにくく、優れた雪上性能を持続して発揮することができる。
【0069】
図1に示されるように、第1ショルダー陸部11には、複数の第1ショルダー横溝51及び第1ショルダーサイプ52が設けられている。第1ショルダー横溝51及び第1ショルダーサイプ52は、例えば、第1ショルダー周方向溝5から少なくとも第1トレッド端T1まで延びている。また、第2ショルダー陸部12には、複数の第2ショルダー横溝53及び複数の折れ曲がりサイプ61がタイヤ軸方向に並んだショルダーサイプ群60が設けられている。ショルダーサイプ群60は、上述のミドルサイプ群55と実質的に同じ構成を具えている。これらの横溝及びサイプは、雪上性能をより一層向上させるのに役立つ。
【0070】
以上、本開示の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本開示は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【0071】
[付記]
本開示は以下の態様を含む。
【0072】
[本開示1]
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、第1トレッド端と、第2トレッド端と、前記第1トレッド端と前記第2トレッド端との間に設けられた第1ミドル陸部とを含み、
前記第1ミドル陸部は、前記第1トレッド端側でタイヤ周方向に延びる第1縦エッジと、前記第2トレッド端側でタイヤ周方向に延びる第2縦エッジと、前記第1縦エッジと前記第2縦エッジとの間の踏面とを含み、
前記第1ミドル陸部には、前記第1ミドル陸部をタイヤ軸方向に完全に横断する複数のミドル横溝と、前記第1縦エッジから延び、かつ、前記踏面内に途切れ端を有する複数の第1ミドルサイプとが設けられており、
前記複数のミドル横溝のそれぞれは、前記第1縦エッジからタイヤ軸方向に延びる第1溝部と、前記第2縦エッジからタイヤ軸方向に延びる第2溝部と、前記第1溝部及び前記第2溝部に連通し、かつ、タイヤ周方向に延びる縦溝部とを含み、
前記縦溝部は、前記第1縦エッジ側の第1縦溝縁と、前記第2縦エッジ側の第2縦溝縁とを含み、
前記複数の第1ミドルサイプのそれぞれの前記途切れ端は、前記第1縦溝縁よりも前記第2縦エッジ側に位置している、
タイヤ。
[本開示2]
タイヤ周方向で隣接する2本の前記ミドル横溝の間には、前記第1ミドルサイプが1本設けられている、本開示1に記載のタイヤ。
[本開示3]
前記第1ミドルサイプは、面取り部が形成されており、
前記第1ミドルサイプの前記面取り部の面取り幅は、前記第1ミドルサイプの前記途切れ端に向かって小さくなっている、本開示1又は2に記載のタイヤ。
[本開示4]
前記第1ミドルサイプのタイヤ軸方向の長さは、前記第1ミドル陸部の前記踏面のタイヤ軸方向の最大の幅の40%~60%である、本開示1ないし3のいずれかに記載のタイヤ。
[本開示5]
前記第1ミドル陸部には、前記第2縦エッジから延び、かつ、前記踏面内に途切れ端を有する複数の第2ミドルサイプが設けられており、
前記第2ミドルサイプの前記途切れ端は、前記第2縦溝縁よりも前記第1縦エッジ側に位置している、本開示1ないし4のいずれかに記載のタイヤ。
[本開示6]
タイヤ周方向で隣接する2本の前記ミドル横溝の間には、前記第2ミドルサイプが1本のみ設けられている、本開示5に記載のタイヤ。
[本開示7]
前記第2ミドルサイプは、面取り部が形成されており、
前記第2ミドルサイプの前記面取り部の面取り幅は、前記第2ミドルサイプの前記途切れ端に向かって小さくなっている、本開示5又は6に記載のタイヤ。
[本開示8]
前記第2ミドルサイプの前記途切れ端は、前記第1ミドルサイプの前記途切れ端よりも前記第1縦エッジ側に位置している、本開示5ないし7のいずれかに記載のタイヤ。
【符号の説明】
【0073】
2 トレッド部
13 第1ミドル陸部
20 ミドル横溝
26 第1溝部
27 第2溝部
28 縦溝部
28a 第1縦溝縁
28b 第2縦溝縁
31 第1ミドルサイプ
31a 途切れ端
T1 第1トレッド端
T2 第2トレッド端