(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124175
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】連結金具
(51)【国際特許分類】
E21D 5/10 20060101AFI20230830BHJP
E02D 29/05 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
E21D5/10
E02D29/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027785
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 正宏
(72)【発明者】
【氏名】若山 崇大
(72)【発明者】
【氏名】鎌崎 祐治
【テーマコード(参考)】
2D147
【Fターム(参考)】
2D147AA05
2D147EA01
2D147MB04
(57)【要約】
【課題】地山側から掘削孔に向かう径方向の土圧が土留部材に作用して、上下に隣り合うフランジが掘削孔の径方向に相対変位しても、差込み部が連結孔から抜け出ることがなく、隣り合うフランジの連結状態を維持できる、連結金具を提供する。
【解決手段】連結金具は、連結金具本体部と、差込み部と、挟持部と、を備えている。差込み部は、連結した隣り合うフランジが掘削孔の径方向に相対変位した際に、連結金具本体部と差込み部とを繋ぐ段差部の側縁が連結孔の開口縁に突き当たるように、連結金具本体部の延伸する方向に対して所定の角度に傾けて形成されている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結孔が形成されたフランジを有する土留部材を掘削孔の内壁面に沿って複数配置し、隣り合う前記土留部材の前記フランジを突き合わせた状態で相互に連結する連結金具であって、
板状の連結金具本体部と、
前記連結金具本体部の一端縁から前記連結金具本体部の一方面側にL字状に折り曲げて形成され、前記フランジに形成された前記連結孔に差し込まれる差込み部と、
前記連結金具本体部の他端縁から前記連結金具本体部の前記一方面側にU字状に折り曲げて形成され、突き合わせた前記フランジの端縁を前記連結金具本体部と共に挟持する挟持部と、を備え、
前記差込み部は、連結した隣り合う前記フランジが掘削孔の径方向に相対変位した際に、前記連結金具本体部と前記差込み部とを繋ぐ段差部の側縁が前記連結孔の開口縁に突き当たるように、前記連結金具本体部の延伸する方向に対して所定の角度に傾けて形成されている、連結金具。
【請求項2】
前記差込み部は、前記段差部の側縁が前記連結孔の開口縁に突き当たるまでの変位が、前記挟持部によって前記フランジが挟持されている前記径方向の長さよりも短くなるように構成されている、請求項1に記載の連結金具。
【請求項3】
前記連結金具本体部は、隣り合う前記土留部材の前記フランジを相互に連結した状態において、前記掘削孔の前記径方向に対して前記フランジが延伸する方向に傾けて形成されており、
前記差込み部は、前記連結金具本体部が延伸する方向から、更に前記フランジが延伸する方向に傾けて形成されている、請求項1又は2に記載の連結金具。
【請求項4】
前記差込み部が前記連結金具本体部から突き出す長さは、前記連結孔の孔径の寸法よりも長い、請求項1~3のいずれか一項に記載の連結金具。
【請求項5】
前記段差部の側縁の代わりに又は前記段差部の側縁と共に、前記連結孔の開口縁に突き当たって面接触する補強部を更に備えている、請求項1~4のいずれか一項に記載の連結金具。
【請求項6】
前記補強部は、前記段差部の側縁に鋼板を取り付けた構成である、請求項5に記載の連結金具。
【請求項7】
前記補強部は、前記段差部の側縁又は前記連結金具本体部の側縁から一部を折り曲げて形成されている、請求項5に記載の連結金具。
【請求項8】
前記補強部は、前記連結孔の開口縁に沿うように湾曲した形状である、請求項5~7のいずれか一項に記載の連結金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フランジを有する土留部材を相互に連結する連結金具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に開示されているように、連結孔が形成されたフランジを有する土留部材を掘削孔の内壁面に沿って複数配置し、隣り合う土留部材のフランジを突き合わせた状態で相互に連結する連結金具が知られている。この連結金具は、板状の連結金具本体部と、連結金具本体部の一端縁から連結金具本体部の一方面側にL字状に折り曲げて形成され、フランジに形成された連結孔に差し込まれる差込み部と、連結金具本体部の他端縁から連結金具本体部の一方面側にU字状に折り曲げて形成され、突き合わせたフランジの端縁を連結金具本体部と共に挟持する挟持部と、を備えている。連結金具では、連結金具本体部が延伸する方向の延長線上に差込み部が形成されている。連結金具本体部と挟持部との間には、2枚のフランジの端縁を挿入するための挿入部が形成されている。連結金具は、連結孔に差し込まれた差込み部が、重ね合わせた2枚のフランジの一方の表面に当接し、挿入部に差し込まれた2枚のフランジの端縁を連結金具本体部と挟持部とで挟み付けることで、2枚のフランジを連結する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
掘削孔の内壁面に沿って配置した複数の土留部材は、地山側から掘削孔に向かう径方向の土圧を受け、上下に隣り合う土留部材が掘削孔の径方向に相対変位するおそれがある。特許文献1に開示された連結金具のように、連結金具本体部が延伸する方向の延長線上に差込み部が形成されている場合、上下に隣り合う土留部材の相対変位が大きいと、フランジの端縁が連結金具の挿入部から外れた勢いで、連結金具の差込み部が連結孔から抜け出てしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、地山側から掘削孔に向かう径方向の土圧が土留部材に作用して、上下に隣り合うフランジが掘削孔の径方向に相対変位しても、差込み部が連結孔から抜け出ることがなく、隣り合うフランジの連結状態を維持できる、連結金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る連結金具は、連結孔が形成されたフランジを有する土留部材を掘削孔の内壁面に沿って複数配置し、隣り合う前記土留部材の前記フランジを突き合わせた状態で相互に連結する連結金具であって、板状の連結金具本体部と、前記連結金具本体部の一端縁から前記連結金具本体部の一方面側にL字状に折り曲げて形成され、前記フランジに形成された前記連結孔に差し込まれる差込み部と、前記連結金具本体部の他端縁から前記連結金具本体部の前記一方面側にU字状に折り曲げて形成され、突き合わせた前記フランジの端縁を前記連結金具本体部と共に挟持する挟持部と、を備え、前記差込み部は、連結した隣り合う前記フランジが掘削孔の径方向に相対変位した際に、前記連結金具本体部と前記差込み部とを繋ぐ段差部の側縁が前記連結孔の開口縁に突き当たるように、前記連結金具本体部の延伸する方向に対して所定の角度に傾けて形成されているものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る連結金具では、地山側から掘削孔に向かう径方向の土圧が土留部材に作用して、上下に隣り合うフランジが掘削孔の径方向に相対変位しても、フランジの端縁が連結金具の挿入部から外れる前に、連結金具の段差部の側縁が連結孔の開口縁に突き当たるので、差込み部が連結孔から抜け出ることがなく、上下に隣り合うフランジの連結状態を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】土留構造物の一例を模式的に示した斜視図である。
【
図2】土留構造物を構成する土留部材の一例を示した斜視図である。
【
図4】隣り合う土留部材を連結金具で連結した状態を示した説明図である。
【
図5】土留構造物を構成する土留部材の異なる形態を示した斜視図である。
【
図7】本実施の形態1に係る連結金具を示した斜視図である。
【
図8】本実施の形態1に係る連結金具を示した平面図である。
【
図9】本実施の形態1に係る連結金具を示した底面図である。
【
図10】本実施の形態1に係る連結金具で土留部材の横フランジを連結した状態を概略的に示した説明図である。
【
図11】本実施の形態1に係る連結金具で土留部材の横フランジを連結した状態であって、土留部材に土圧が作用した状態を概略的に示した説明図である。
【
図12】(A)~(C)は、本実施の形態1に係る連結金具で土留部材の横フランジを連結する手順を示した説明図である。
【
図13】本実施の形態1に係る連結金具の変形例を示した説明図である。
【
図14】本実施の形態2に係る連結金具を示した斜視図である。
【
図15】本実施の形態2に係る連結金具の変形例1を示した斜視図である。
【
図16】本実施の形態2に係る連結金具の変形例2を示した斜視図である。
【
図17】本実施の形態2に係る連結金具の変形例3を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には、同一符号を付して、その説明を適宜省略又は簡略化する。また、各図に記載の構成について、その形状、大きさ、及び配置等は、本発明の範囲内で適宜変更することができる。
【0010】
実施の形態1.
図1は、土留構造物300の一例を模式的に示した斜視図である。
図2は、土留構造物300を構成する土留部材200の一例を示した斜視図である。
図3は、
図2に示した土留部材200の縦断面図である。
図4は、隣り合う土留部材200を連結金具100で連結した状態を示した説明図である。
【0011】
本実施の形態1に係る連結金具100は、
図1~
図4に示すように、連結孔202a、203aが形成されたフランジ202、203を有する土留部材200を、地面を掘削して形成された鉛直の掘削孔の内壁面に沿って配置し、隣り合う土留部材200のフランジ202、203を突き合わせた状態で該フランジ202、203を相互に連結するものである。先ず、
図1~
図4を参照して、土留部材200によって構築された土留構造物300の構成について説明する。
【0012】
土留構造物300は、例えば建築構造物の基礎を構築するための立坑又は地中に構築される集水井等である。土留構造物300は、地面を掘削して形成された鉛直の掘削孔に、
図1に示すように、環状の構造体301を掘削孔の孔軸方向に沿って複数段に積み重ねて構築される。
【0013】
土留構造物300を構成する各々の構造体301は、同じ断面係数から成る複数の土留部材200を環状に配置して形成された構成である。土留部材200は、一例として
図2及び
図3に示すように、波形断面がサインカーブ状に形成された、所謂ライナープレートである。土留部材200は、
図2及び
図3に示すように、波形の山部及び谷部が長手方向Xに沿って延びるように形成された1枚の波付け鋼板201と、波付け鋼板201の長手方向Xとなる両端部に設けられた縦フランジ202と、を備えている。図示した土留部材200の波付け鋼板201は、平面視が円弧状である。波付け鋼板201の厚さは、一例として2.7mm~7mm程度である。なお、波付け鋼板201は、図示した円弧状に限定されず、構築される土留構造物300の形状に応じて、例えば平面視が直線状であるものでもよいし、その他形状でもよい。
【0014】
図2及び
図3に示すように、波付け鋼板201は、短手方向Yの両端部に、波形の両端縁を曲げ加工によって形成された横フランジ203を有している。横フランジ203は、孔軸方向に対してほぼ垂直に形成された平板状の部分である。横フランジ203には、掘削孔の孔軸方向に積み重ねた上下に隣り合う土留部材200同士を連結するための連結孔203aが長手方向Xに沿って複数形成されている。
図4に示すように、上下に隣り合う土留部材200は、横フランジ203を突き合わせ、連結孔203aに挿通した連結金具100で連結される。なお、図示した連結孔203aの個数は、一例であって、これに限定されるものではない。
【0015】
縦フランジ202は、波付け鋼板201の長手方向Xの両端縁にプレートを溶接して設けられた構成である。縦フランジ202は、土留構造物300に必要な強度及び剛性に応じて厚さが決定される。縦フランジ202には、掘削孔の周方向θに配置した左右に隣り合う土留部材200同士を連結するための連結孔202aが上下方向(Y方向)に沿って複数形成されている。
図4に示すように、左右に隣り合う土留部材200同士は、縦フランジ202を突き合わせ、連結孔202aに挿通した連結金具100で連結される。なお、図示した連結孔202aの個数は、一例であって、これに限定されるものではない。
【0016】
なお、土留構造物300は、
図1に示した平面視において円形状とした構成に限定されない。土留構造物300は、平面視が矩形状に構築された構成としてもよい。この場合、土留部材200は、構築される土留構造物300の形状に応じた形状として平面視が直線状及びL字状のものが使用される。
【0017】
また、土留部材200は、
図2及び
図3に示した構成に限定されず、その他の構成でもよい。
図5は、土留構造物300を構成する土留部材200の異なる形態を示した斜視図である。
図6は、
図5に示した土留部材200の縦断面図である。例えば
図5及び
図6に示した土留部材200は、波形断面が角波状となるように屈曲成形した波付け鋼板である。角波状とは、一例として、角が丸められた台形波状である。
図5及び
図6に示した土留部材200は、一例として、3つの山部と2つの谷部とで構成されているが、山部と谷部の個数は、図示した個数に限定されない。なお、山部と谷部は、略平行となるように形成されている。
【0018】
次に、
図7~
図13を参照して、本実施の形態1に係る連結金具100について説明する。
図7は、本実施の形態1に係る連結金具100を示した斜視図である。
図8は、本実施の形態1に係る連結金具100を示した平面図である。
図9は、本実施の形態1に係る連結金具100を示した底面図である。
図10は、本実施の形態1に係る連結金具100で土留部材200の横フランジ203を連結した状態を概略的に示した説明図である。
図11は、本実施の形態1に係る連結金具100で土留部材200の横フランジ203を連結した状態であって、土留部材200に土圧Pが作用した状態を概略的に示した説明図である。なお、以下の説明では、連結金具100を用いて横フランジ203を連結する例について説明するが、縦フランジ202を連結する場合においても同様に連結金具100が使用される。
【0019】
本実施の形態1に係る連結金具100は、板金を折り曲げて形成された金具である。連結金具100は、
図7~
図11に示すように、連結金具本体部1と、差込み部2と、挟持部3と、を備えている。
【0020】
連結金具本体部1は、
図7~
図11に示すように、板状であり、連結金具100で土留部材200を連結した状態において、掘削孔側から地山側に向かって長く延びるように形成されている。連結金具本体部1の長手方向の一端縁10には、差込み部2が形成されている。連結金具本体部1の長手方向の他端縁11には、挟持部3が形成されている。連結金具本体部1は、
図10に示すように、隣り合う土留部材200の横フランジ203を相互に連結した状態において、掘削孔の径方向rに対して、横フランジ203が延伸する方向である掘削孔の周方向θに傾けて形成されている。これは、連結金具本体部1と横フランジ203との接触面積を増やして、強固に連結させるためである。また、差込み部2を連結孔203aに差し込む際の差し込み易さも考慮されている。
【0021】
連結金具本体部1は、
図7~
図11に示すように、長手方向に沿った側端縁1a、1bのうち、一方の側端縁1aが直線状に傾斜させて形成され、他方の側端縁1bが差込み部2に向かって窄まるように形成されている。そのため、連結金具本体部1は、差込み部2が形成される側の一端縁10の幅寸が、挟持部3が形成される側の他端縁11の幅よりも短い。これは、横フランジ203に形成された連結孔203aに差し込まれる差込み部2の寸法に対応させるためである。また、連結金具本体部1の他端縁11の幅寸を長くすることで、横フランジ203の端縁203bに沿って挟持部3を長く形成することができ、挟持部3で2枚の横フランジ203の端縁203bを強固に挟持させることができる。なお、連結金具本体部1には、差込み部2が形成された近傍に、エンボス加工によって形成された凸部12が設けられている。連結金具本体部1は、凸部12を有することにより剛性が向上する。
【0022】
差込み部2は、
図7~
図11に示すように、連結金具本体部1の一端縁10から連結金具本体部1の一方面側にL字状に折り曲げて形成され、横フランジ203に形成された連結孔203aに差し込まれるものである。差込み部2は、連結金具本体部1が延伸する方向から、更に横フランジ203が延伸する方向である掘削孔の周方向θに傾けて形成されている。具体的には、差込み部2は、
図11に示すように、連結した隣り合う横フランジ203が掘削孔の径方向rに相対変位した際に、連結金具本体部1と差込み部2とを繋ぐ段差部20の側縁20a又は20bが連結孔203aの開口縁に突き当たるように、連結金具本体部1の延伸する方向に対して所定の角度に傾けて形成されている。一例として、
図10に示した差込み部2は、掘削孔の周方向θの接線方向に沿って延びている。そして、段差部20は、一側縁20aから他側縁20bに向かう方向が、径方向rに沿うように配置され、挟持部3のU字の開口の幅方向に対し実質的に直交する方向を向いている。また、差込み部2は、
図10に示すように、段差部20の側縁20a又は20bが連結孔203aの開口縁に突き当たるまでの変位L1が、挟持部3によって横フランジ203が挟持される径方向rの長さL2よりも短くなるように構成されている。なお、差込み部2の先端部2aは、連結孔203aに差し込まれた状態において、横フランジ203の表面に突き当たるように傾斜させてもよい。
【0023】
挟持部3は、
図7に示すように、連結金具本体部1の他端縁11から連結金具本体部1の一方面側にU字状に折り曲げて形成され、突き合わせた2枚の横フランジ203の端縁203bを連結金具本体部1と共に挟持するものである。挟持部3と連結金具本体部1との間には、2枚の横フランジ203の端縁203bを挿入するための挿入部30が形成されている。突き合わせた2枚の横フランジ203は、
図10に示すように、端縁203bを挿入部30に差し込んで挿入され、挟持部3と連結金具本体部1とによって挟持される。挟持部3は、挿入部30の間隔が重ね合わせた2枚の横フランジ203の板厚よりも小さくなるように折り曲げて形成されている。2枚の横フランジ203を強固に挟持するためである。また、挟持部3の先端部3aは、
図7に示すように、挿入部30の間隔が広くなるように形成されている。2枚の横フランジ203を挿入部30に入れやすくするためである。
【0024】
図12の(A)~(C)は、本実施の形態1に係る連結金具100で土留部材200の横フランジ203を連結する手順を示した説明図である。上記構成の連結金具100を用いて隣り合う上下の横フランジ203を連結するには、先ず、
図12(A)に示すように、重ね合わせた横フランジ203の2つの連結孔203aに差込み部2を挿入する。次に、
図12(B)に示すように、一方の横フランジ203の表面に差込み部2を当接させた状態で、該差込み部2を中心として、挟持部3を横フランジ203の端縁203bに向かって回動させる。最後に、
図12(C)に示すように、挟持部3を例えばハンマー等で叩き込んで、2枚の横フランジ203の端縁203bを挿入部30に挿入させる。このとき、挟持部3の先端部3aは、挿入部30の間隔が広くなるように形成されているので、2枚の横フランジ203の端縁203bを挿入部30にスムーズに挿入させることができる。このように、連結金具100は、連結孔203aに差し込まれた差込み部2が、重ね合わせた2枚の横フランジ203の一方の表面に当接し、挿入部30に差し込まれた2枚の横フランジ203の端縁203bを連結金具本体部1と挟持部3とで挟み付けることで、隣り合う上下の横フランジ203を連結する。
【0025】
ところで、掘削孔の内壁面に沿って配置した複数の土留部材200は、地山側から掘削孔に向かう径方向rの土圧Pを受けて、上下に隣り合う土留部材200が掘削孔の径方向rに相対変位するおそれがある。このとき、連結金具本体部が延伸する方向の延長線上に差込み部が形成されている連結金具を用いて横フランジ203が連結されていると、上下に隣り合う土留部材200の相対変位が大きい場合、一方の横フランジ203の端縁203bが連結金具の挿入部から外れた勢いで、連結金具の差込み部が連結孔から抜け出てしまうおそれがある。
【0026】
一方、本実施の形態1に係る連結金具100では、
図10及び
図11に示すように、地山側から掘削孔に向かう径方向rの土圧Pにより、連結した隣り合う横フランジ203が掘削孔の径方向rに相対変位した際に、連結金具本体部1と差込み部2とを繋ぐ段差部20の側縁20a又は20bが連結孔203aの開口縁に突き当たるように、差込み部2を連結金具本体部1の延伸する方向に対して所定の角度に傾けて形成している。また、連結金具100は、段差部20の側縁20a又は20bが連結孔203aの開口縁に突き当たるまでの変位L1が、挟持部3によって横フランジ203が挟持されている径方向rの長さL2よりも短くなるように構成されている。
【0027】
よって、本実施の形態1に係る連結金具100は、
図11に示すように、地山側から掘削孔に向かう径方向rの土圧Pが土留部材200に作用して、上下に隣り合う横フランジ203が掘削孔の径方向rに相対変位しても、横フランジ203の端縁203bが連結金具100の挿入部30から外れる前に、連結金具100の段差部20の側縁20a又は20bが連結孔203aの開口縁に突き当たるので、差込み部2が連結孔203aから抜け出ることがなく、上下に隣り合う横フランジ203の連結状態を維持できる。
【0028】
なお、
図13は、本実施の形態1に係る連結金具100の変形例を示した説明図である。
図13に示すように、差込み部2が連結金具本体部1から突き出す長さL3は、連結孔203aの孔径の寸法よりも長くするとよい。これにより、隣り合う土留部材200が周方向θに相対変位しても、差込み部2が連結孔203aから抜け出ることがなく、横フランジ203の連結状態を維持することができる。
【0029】
実施の形態2.
次に、
図14~
図17を参照して、本実施の形態2に係る連結金具101を説明する。
図14は、本実施の形態2に係る連結金具101を示した斜視図である。なお、実施の形態1で説明した連結金具100と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0030】
実施の形態2に係る連結金具101は、段差部20の側縁20a又は20bの代わりに、連結孔203aの開口縁に突き当たって面接触させる補強部4を備えている。
図14に示した補強部4は、一例として、段差部20の側縁20a及び20bに鋼板を溶接により取り付けた構成である。鋼板は、差込み部2が連結孔203aに差し込まれる際に、差し込みの妨害とならないように、三角形状とされている。なお、鋼板の形状及び大きさは、図示した構成に限定されず、連結孔203aの大きさや差込み部2の大きさ等に応じて適宜変更して形成される。また、補強部4は、段差部20の平面又は連結金具本体部1に鋼板を溶接等で取り付けて、段差部20の側縁20a又は20bと共に、連結孔203aの開口縁に突き当たって面接触させる構成としてもよい。
【0031】
段差部20の側縁20a及び20bが、連結孔203aの開口縁に突き当たり、該開口縁の一部に応力が集中してしまうと、該開口縁を通じて横フランジ203に亀裂が生じるおそれがある。実施の形態2に係る連結金具101では、連結孔203aの開口縁に面接触させる補強部4を備えているので、該補強部4で開口縁に掛かる応力を分散させることができ、横フランジ203に亀裂が生じる事態を抑制することができる。
【0032】
図15は、本実施の形態2に係る連結金具101の変形例1を示した斜視図である。
図16は、本実施の形態2に係る連結金具101の変形例2を示した斜視図である。
図15に示した補強部5は、段差部20の側縁20a及び20bから連結金具本体部1側に向かって一部を折り曲げられて形成された構成である。また、
図16に示した補強部6は、連結金具本体部1の側端縁1a及び1bの一部から下方に向かって一部を折り曲げて形成された構成である。
図15及び
図16に示した連結金具101では、段差部20の側縁20a又は20bと共に、連結孔203aの開口縁に面接触させる補強部5又は6を備えているので、該補強部5又は6で開口縁に掛かる応力を分散させることができ、横フランジ203に亀裂が生じる事態を抑制することができる。
【0033】
また、
図17は、本実施の形態2に係る連結金具101の変形例3を示した斜視図である。
図17に示した補強部7は、連結孔203aの開口縁に沿うように湾曲した形状である。補強部7は、例えば半円形状、円柱形状又は円筒形状等の湾曲面を有する鋼材からなる補強部材を、段差部20の側縁20a及び20b、又は段差部20の平面に溶接等で取り付けた構成である。なお、補強部7は、段差部20の側縁20a又は20bから連結金具本体部1側に向かって湾曲状に曲げて形成してもよい。
図17に示した連結金具101は、連結孔203aの開口縁に沿うように、補強部7を連結孔203aに面接触させることができるので、該補強部7で開口縁に掛かる応力をより分散させることができる。なお、補強部7は、連結孔203aの開口縁に沿うように湾曲した形状であればよく、前記構成に限定されない。
【0034】
なお、補強部(4~7)は、
図14~
図17に示した構成に限定されない。補強部(4~7)は、連結孔203aの開口縁に面接触させることができ、該開口縁に掛かる応力を分散させることができれば、他の形態でもよい。
【0035】
以上に、連結金具100、101を、実施の形態に基づいて説明したが、連結金具100、101は、上述した実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば連結金具100、101は、上述した構成要素に限定されるものではなく、他の構成要素を含んでもよい。要するに、連結金具100、101は、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更及び応用のバリエーションの範囲を含むものである。
【符号の説明】
【0036】
1 連結金具本体部、1a、1b 側端縁、2 差込み部、2a 先端部、3 挟持部、3a 先端部、4、5、6、7 補強部、10 一端縁、11 他端縁、12 凸部、20 段差部、20a、20b 側縁、30 挿入部、100、101 連結金具、200 土留部材、201 波付け鋼板、202 縦フランジ、202a 連結孔、203 横フランジ、203a 連結孔、203b 端縁、300 土留構造物、301 構造体。