(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124192
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】ブラケット付き防振装置
(51)【国際特許分類】
F16F 13/10 20060101AFI20230830BHJP
【FI】
F16F13/10 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027811
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】近藤 弘基
(72)【発明者】
【氏名】大木 健司
【テーマコード(参考)】
3J047
【Fターム(参考)】
3J047AA03
3J047CA04
3J047CB04
3J047CC02
3J047FA02
3J047GA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ブラケットに対して防振装置本体を側方から組み付けるブラケット付き防振装置において、防振装置本体における組付け容易性を確保しつつ、ブラケットに対する第二の取付部材の位置決め精度や位置決め強度の向上を図る。
【解決手段】第二の取付部材22とブラケット14を金属製とし、一方の連結部54aの外周面と下面で金属を露出させて一方の連結溝部72aの溝内底面86と溝内下面76にメタルタッチさせると共に、該連結部54aの上面に上側付勢ゴム82を設けて一方の連結溝部72aの溝内上面80に当接させた。また、他方の連結部54bの下面で金属を露出させて他方の連結溝部72bの溝内下面76にメタルタッチさせ、該連結部54bの上面と外周面に付勢ゴムを設けて他方の連結溝部72bの溝内上面80と溝内底面86に当接させた。更に、各連結部と各連結溝部との間に連結溝部からの抜け出しを阻止する抜止係合部106,108を設けた。
【選択図】
図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に離れた第一の取付部材と第二の取付部材が本体ゴム弾性体で弾性連結された防振装置本体が、ブラケットの両側脚部の対向内面に設けられた一対の連結溝部に対して該第二の取付部材に設けられた両側一対の連結部が挿し入れられることで、該ブラケットへ側方から組み付けられているブラケット付き防振装置において、
前記第二の取付部材の前記一対の連結部と、前記ブラケットの前記一対の連結溝部とが、何れも金属製とされており、
一方の該連結部は、外周面と下面で金属が露出されて一方の前記連結溝部の溝内底面と溝内下面に対してメタルタッチされていると共に、上面に上側付勢ゴムが設けられて該一方の連結溝部の溝内上面に当接されており、
他方の該連結部は、下面で金属が露出されて他方の前記連結溝部の溝内下面に対してメタルタッチされていると共に、上面に上側付勢ゴムが設けられて該他方の連結溝部の溝内上面に当接され、且つ外周面に外周付勢ゴムが設けられて該他方の連結溝部の溝内底面に当接されており、
該他方の該連結部の該外周付勢ゴムによる付勢力が該第二の取付部材に対して側方へ向けて及ぼされることで、該第二の取付部材の該一方の連結部の外周面が該一方の連結溝部の溝内底面に対してメタルタッチで押し付けられている一方、
該一方の連結部の外周面と該一方の連結溝部との間および該他方の連結部の内周面と該他方の連結溝部との間には、それぞれ、該外周付勢ゴムによる付勢力で係合状態に保持されて各該連結溝部に挿し入れられた各該連結部の抜け出しを阻止する抜止係合部が設けられているブラケット付き防振装置。
【請求項2】
前記抜止係合部が、
前記一方の連結部の外周面に設けられた段差状の凹部に対して前記一方の連結溝部の溝内底面に設けられた段差状の凸部が係合する一方の凹凸係合部と、
前記他方の連結部の内周面に設けられた段差状の凹部に対して前記他方の連結溝部の溝内底面から突設された内壁部に設けられた段差状の凸部が係合する他方の凹凸係合部と
を、含んで構成されている請求項1に記載のブラケット付き防振装置。
【請求項3】
前記抜止係合部において、前記連結溝部に挿し入れられた前記連結部の抜け出し方向で相互に係止される係止面が、前記第二の取付部材を前記ブラケットへの組付方向で3等分した中央領域内に位置して設けられている請求項1又は2に記載のブラケット付き防振装置。
【請求項4】
前記一方の連結部において、前記抜止係合部が該一方の連結部の上下方向で部分的に設けられている請求項1~3の何れか一項に記載のブラケット付き防振装置。
【請求項5】
前記第二の取付部材における前記ブラケットへの側方からの組付方向の先端面には、先端付勢ゴムが設けられて該ブラケットに対して組付方向で当接されている請求項1~4の何れか一項に記載のブラケット付き防振装置。
【請求項6】
前記連結溝部の溝内底面には、少なくとも前記連結部が挿し入れられる挿入口側の開口部分において、該連結部の挿し入れ方向の奥方から開口側に向かって溝深さを大きくするように傾斜したガイドテーパーが付されている請求項1~5の何れか一項に記載のブラケット付き防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のエンジンマウントなどに用いられるブラケット付き防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両用のエンジンマウント等の防振装置の一種として、防振装置本体をブラケットに対して側方から組み付けたブラケット付き防振装置が知られている。かかる防振装置本体は、上下に離れた第一の取付部材と第二の取付部材が本体ゴム弾性体で弾性連結された構造とされている。また、ブラケットの両側脚部の対向内面には一対の連結溝部が形成されている。そして、かかるブラケットの一対の連結溝部に対して、防振装置本体の第二の取付部材に設けられた両側一対の連結部が挿し入れられて嵌合支持されることで、防振装置本体がブラケットへ側方から組み付けられている。
【0003】
ところで、このようなブラケット付き防振装置では、ブラケットへ側方から組み付けられた防振装置本体における、組付方向とは逆向きのブラケットからの抜け出しを阻止する機構が必要となる。
【0004】
そこで、特許第5083405号公報(特許文献1)や特許第6808544号公報(特許文献2)では、合成樹脂製の第二の取付部材を採用して係合突起を形成し、かかる係合突起をブラケットに設けた係合受部に対して合成樹脂材の弾性変形を利用したスナップフィッティング作用等で係合させることにより、防振装置のブラケットからの抜け出しを阻止する機構が提案されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1,2に記載の機構では、防振装置本体をブラケットへ側方から組み付ける際に、合成樹脂製の第二の取付部材の係合突起等が弾性的に変形して係合受部へ係合する必要があり、変形時の損傷が問題になり易い。
【0006】
しかも、防振装置本体における第二の取付部材を合成樹脂製とする必要があることから、要求される耐荷重性能や強度特性の実現が難しい場合があり、クリープ変形等の経時的な劣化が問題になるおそれもある。特に入力荷重が大きいエンジンマウント等では、合成樹脂の経年劣化による第二の取付部材の連結部の寸法変化に起因して、かかる連結部とブラケットの連結溝部との間に隙間が生じて、がたつきによる異音が発生するおそれもあった。
【0007】
なお、このような問題に鑑み、本出願人は特許6644640号公報(特許文献3)において、ブラケットの連結溝部に挿し入れられる防振装置本体の連結部を、第二の取付部材に一体形成された連結部本体と付勢ゴムとを上下に重ね合わせ状態で一体的に設けた複合構造としたものを提案した。かかる複合構造の連結部では、防振装置本体をブラケットへ側方から組み付ける際に付勢ゴムが積極的に弾性変形することから、連結部本体の変形が軽減乃至は回避され得て、組付時の損傷が防止される。また、連結部本体を備えた第二の取付部材を金属製とすることも可能になり、それによって、第二の取付部材や連結部本体の耐荷重性能や強度特性を有利に確保できると共に、クリープ変形等の経時的な劣化も回避され得る。
【0008】
ところが、本発明者が更に検討したところ、かかる特許文献3に開示したブラケット付き防振装置にも更なる改善の余地のあることが明らかとなった。即ち、特許文献3に開示したブラケット付き防振装置では、ブラケットに設けられた一対の連結溝部の対向方向では、防振装置本体の一対の連結部がそれぞれ外周面に設けられた付勢ゴムを介して一対の連結溝部の溝内底面に当接されることで位置決め支持されている。
【0009】
そのために、かかる一対の連結溝部の対向方向では、両側の付勢ゴムの釣り合いによって、防振装置がブラケットに対して位置決めされていることとなり、高精度な位置設定が難しい場合があった。また、かかる一対の連結溝部の対向方向の一方側への入力荷重が大きい場合に、付勢ゴムが介在していることにより、充分な耐荷重性能の実現が難しくなるおそれもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第5083405号公報
【特許文献2】特許第6808544号公報
【特許文献3】特許第6644640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、特許文献1,2に記載のものに比して、防振装置本体をブラケットへ側方から組み付ける際の連結部等の損傷が防止される新規な抜出防止機構を備えており耐荷重特性の向上や経時的な劣化の抑制なども図られ得ると共に、特許文献3に記載のものに比して、一対の連結溝部の対向方向でのブラケットに対する防振装置本体の位置決め精度の向上や一方側での耐荷重性能の向上などが図られ得る、新規な構造のブラケット付き防振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0013】
本発明の第一の態様は、以下のとおりである。
上下に離れた第一の取付部材と第二の取付部材が本体ゴム弾性体で弾性連結された防振装置本体が、ブラケットの両側脚部の対向内面に設けられた一対の連結溝部に対して該第二の取付部材に設けられた両側一対の連結部が挿し入れられることで、該ブラケットへ側方から組み付けられているブラケット付き防振装置において、
前記第二の取付部材の前記一対の連結部と、前記ブラケットの前記一対の連結溝部とが、何れも金属製とされており、
一方の該連結部は、外周面と下面で金属が露出されて一方の前記連結溝部の溝内底面と溝内下面に対してメタルタッチされていると共に、上面に上側付勢ゴムが設けられて該一方の連結溝部の溝内上面に当接されており、
他方の該連結部は、下面で金属が露出されて他方の前記連結溝部の溝内下面に対してメタルタッチされていると共に、上面に上側付勢ゴムが設けられて該他方の連結溝部の溝内上面に当接され、且つ外周面に外周付勢ゴムが設けられて該他方の連結溝部の溝内底面に当接されており、
該他方の該連結部の該外周付勢ゴムによる付勢力が該第二の取付部材に対して側方へ向けて及ぼされることで、該第二の取付部材の該一方の連結部の外周面が該一方の連結溝部の溝内底面に対してメタルタッチで押し付けられている一方、
該一方の連結部の外周面と該一方の連結溝部との間および該他方の連結部の内周面と該他方の連結溝部との間には、それぞれ、該外周付勢ゴムによる付勢力で係合状態に保持されて各該連結溝部に挿し入れられた各該連結部の抜け出しを阻止する抜止係合部が設けられているブラケット付き防振装置。
【0014】
本態様のブラケット付き防振装置では、各連結部を連結溝に対して挿し入れて防振装置本体をブラケットへ圧入状態で組み付ける際に、上下方向では上部付勢ゴムが弾性変形されると共に、一対の連結溝部の対向方向では外周付勢ゴムが弾性変形されることから、連結部の弾性変形が必要とされない。それ故、連結部を含む第二の取付部材を金属製とすることで、防振装置本体をブラケットへ組み付ける際の連結部を含む第二の取付部材の損傷を防止することができると共に、樹脂製の部材におけるクリープ変形などの経時的劣化に起因するガタつきや強度低下などの問題も回避され得る。
【0015】
しかも、金属製とされた第二の取付部材に設けられた一対の連結部が、各上面に設けられた上部付勢ゴムの付勢力によって、各下面においてブラケットの連結溝部に対してメタルタッチで押し付けられている。それ故、特に大きな荷重が入力され易いバウンド方向(下向き)の耐荷重性能の向上が図られる。
【0016】
また、一方の連結部の外周面が、他方の連結部に設けられた外周付勢ゴムの付勢力によって、一方の連結溝部の溝内底面に対してメタルタッチで押し付けられている。それ故、一対の連結溝部の対向方向においても、ブラケットに対する防振装置本体の位置決め精度が良好に確保される。また、一方の連結部が一方の連結溝部の溝内底面に対してメタルタッチで押し付けられる方向では、耐荷重性能の向上も図られ得る。
【0017】
さらに、一対の連結溝部とそこに挿し入れられた一対の連結部との間には、それぞれ、各連結溝部からの各連結部の抜け出しを阻止する抜止係合部が設けられていることから、大きな抜け出し阻止力が発揮されると共に、仮に抜け出し方向に大きな荷重が入力された場合でも、防振装置本体の回転変位や回転方向のモーメント力の発生が効果的に抑えられて、ブラケットに対する防振装置本体の組付状態がより安定して維持され得る。
【0018】
本発明の第二の態様は、以下のとおりである。
前記抜止係合部が、
前記一方の連結部の外周面に設けられた段差状の凹部に対して前記一方の連結溝部の溝内底面に設けられた段差状の凸部が係合する一方の凹凸係合部と、
前記他方の連結部の内周面に設けられた段差状の凹部に対して前記他方の連結溝部の溝内底面から突設された内壁部に設けられた段差状の凸部が係合する他方の凹凸係合部と
を、含んで構成されている前記第一の態様に記載のブラケット付き防振装置。
【0019】
本態様のブラケット付き防振装置では、各連結部の凹部の段差状面と、各連結溝部の凸部の段差状面との係合作用によって、各連結溝部に挿し入れられた各連結部の抜け出しが阻止され得る。また、互いに係合する各連結部の凹部の段差状面と各連結溝部の凸部の段差状面とにおいて、メタルタッチの当接面とすることができることから、大きな強度や位置決め性能をもって抜止係合部を構成することができて、ブラケット付き防振装置における抜け出し方向の耐荷重性能も有利に確保することが可能になる。
【0020】
本発明の第三の態様は、以下のとおりである。
前記抜止係合部において、前記連結溝部に挿し入れられた前記連結部の抜け出し方向で相互に係止される係止面が、前記第二の取付部材を前記ブラケットへの組付方向で3等分した中央領域内に位置して設けられている前記第一又は第二の態様に記載のブラケット付き防振装置。
【0021】
本態様のブラケット付き防振装置では、防振装置本体のブラケットに対する組み付け方向において、抜止係合部の係止面の位置を防振装置本体の上下方向に延びる中心軸の位置に近づけて設定できる。それ故、例えば防振装置本体に中心軸回りの回転方向におけるガタつき等も、両側に設けられた抜止係合部の係止面における係止作用によって効果的に防止することが可能になる。
【0022】
本発明の第四の態様は、以下のとおりである。
前記一方の連結部において、前記抜止係合部が該一方の連結部の上下方向で部分的に設けられている前記第一~三の何れかの態様に記載のブラケット付き防振装置。
【0023】
本態様のブラケット付き防振装置では、例えば連結部における凸部や連結溝部における凹部などによって構成される抜止係合部が上下方向で部分的に設けられることから、一方の連結部の外周面と一方の連結溝部の溝内底面とにおけるメタルタッチの面積をより大きく確保することが可能になる。
【0024】
本発明の第五の態様は、以下のとおりである。
前記第二の取付部材における前記ブラケットへの側方からの組付方向の先端面には、先端付勢ゴムが設けられて該ブラケットに対して組付方向で当接されている前記第一~四の何れかの態様に記載のブラケット付き防振装置。
【0025】
本態様のブラケット付き防振装置では、先端付勢ゴムによる付勢力が、防振装置本体に対してブラケットへの組付方向と反対に向けて及ぼされることで、抜止係合部において連結溝部から連結部の抜け出しを阻止する当接係合状態に保持されて、連結部の連結溝部に対する挿し入れ方向での位置決め状態の安定化が図られ、ガタつきなどの防止にも有利となる。
【0026】
本発明の第六の態様は、以下のとおりである。
前記連結溝部の溝内底面には、少なくとも前記連結部が挿し入れられる挿入口側の開口部分において、該連結部の挿し入れ方向の奥方から開口側に向かって溝深さを大きくするように傾斜したガイドテーパーが付されている前記第一~五の何れかの態様に記載のブラケット付き防振装置。
【0027】
本態様のブラケット付き防振装置では、連結溝部に対する連結部の挿し入れがガイドテーパーによって案内されることで容易となり、仮に連結部に設けられた外周付勢ゴムの付勢力を大きく設定した場合でも、連結溝部への連結部の挿し入れの作業性ひいては防振装置本体のブラケットへの組付作業性が良好に維持され得る。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、連結部を含む第二の取付部材を金属製とすることが可能になり、また、上下方向や一対の連結溝部の対向方向、更には防振装置本体のブラケットへの組付方向の各方向において、連結部のブラケットに対するメタルタッチで第二の取付部材をブラケットに対して位置決め状態で支持せしめることが可能となる。
【0029】
それ故、例えば特許文献1,2に記載のものに比して、防振装置本体をブラケットへ組み付ける際の連結部等の損傷が防止されると共に、連結部におけるクリープ変形等の経時的な劣化も回避される。また、特許文献3に記載のものに比して、一対の連結溝部の対向方向でのブラケットに対する防振装置本体の位置決め精度の向上等も達成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の一実施形態としてのブラケット付き防振装置であるエンジンマウントを示す全体斜視図
【
図4】
図1に示されたエンジンマウントの
図3と直交する方向の縦断面図
【
図8】
図1に示されたエンジンマウントの防振装置本体であるマウント本体を奥側から見た全体を示す斜視図
【
図12】
図1に示されたエンジンマウントのブラケットを示す全体斜視図
【
図15】
図12に示されたブラケットに対して
図8に示されたマウント本体を側方から組み付ける際の初期状態を説明するための説明図
【
図16】
図12に示されたブラケットに対して
図8に示されたマウント本体を側方から組み付ける際の中間状態を説明するための説明図
【
図17】
図12に示されたブラケットに対して
図8に示されたマウント本体を側方から組み付ける際の最終状態を説明するための説明図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0032】
図1-7には、本発明に従う構造とされたブラケット付き防振装置の一実施形態として、自動車用のエンジンマウント10が示されている。エンジンマウント10は、防振装置本体としてのマウント本体12がブラケット14に横方向で側方から挿し入れられることで、いわゆる横挿入で組み付けられた構造とされている。以下の説明では、原則として、上下方向とはマウント中心軸に沿った方向である
図3中の上下方向をいう。また、本実施形態のエンジンマウント10は、
図3中の上下方向を鉛直上下方向とし、同図中の左右方向を車両前後方向とすると共に、同図中の紙面垂直方向を車両左右方向として、自動車のボデーとパワーユニットの間に装着されることを想定しているが、図面上の理解のし易さを優先して、以下の説明では、
図3中の左右方向をマウント左右方向、同図中の紙面垂直方向をマウント前後方向(又は奥/手前方向)という。なお、各図において、マウント本体12に設けられた各ゴム弾性体(付勢ゴム)は、ブラケット14への組付状態での圧縮の有無を判りやすくするために、ブラケット14への組付前の形状のままで示してある。
【0033】
より詳細には、マウント本体12は、
図1-7の他に
図8-11に単品状態で示されているように、第一の取付部材20と第二の取付部材22が本体ゴム弾性体24によって弾性連結された構造を有している。これら第一の取付部材20と第二の取付部材22との間にパワーユニットの支持荷重や振動が入力されることとなる。
【0034】
第一の取付部材20は、金属などで形成された高剛性の部材であって、上下逆向きの円錐台形状などの中実ブロック構造とされている。かかる第一の取付部材20には、
図1-4に例示されているように、パワーユニット等に取り付けられる取付部材26が固定ボルト等で固定されるようになっている。
【0035】
第二の取付部材22は、アルミニウム合金や鋼材などの金属で形成された高剛性の部材であって、全体として略厚肉環状のブロック形状とされており、特に本実施形態では、
図6から理解できるように、中央に角丸矩形状の透孔を有し、全体が略矩形の厚肉環状のブロック形状とされている。
【0036】
これら第一の取付部材20と第二の取付部材22を弾性連結する本体ゴム弾性体24は、周方向が略オーバル状乃至は角丸矩形状とされて下方から上方に向かって外径寸法が次第に小さくなる外周面形状とされている。そして、上端の小径部分に対して第一の取付部材20が挿し入れられるように略埋設状態で固着されていると共に、下端大径の外周部分に対して第二の取付部材22が固着されている。なお、本体ゴム弾性体24は、第一及び第二の取付部材22を備えた一体加硫成形品として形成されることが望ましい。
【0037】
本体ゴム弾性体24には、下面中央に開口する逆向きの凹所28が形成されており、かかる凹所28が第二の取付部材22の透孔を通じて下方に開口している。また、第二の取付部材22には、下方から封止部材30が重ね合わされて組み付けられている。
【0038】
封止部材30は、硬質の合成樹脂材等で形成されており、第二の取付部材22に対応した略厚肉環状のブロック形状とされている。また、封止部材30は、下端から内方に突出する支持底部32を有しており、封止部材30の断面形状が略L字状とされている。かかる封止部材30には、可撓性膜34とオリフィス部材36が上方から差し入れられて、支持底部32上に重ね合わされるようにして収容状態で組み付けられている。そして、これら可撓性膜34とオリフィス部材36は、各外周部分において、第二の取付部材22と封止部材30との間で上下に挟まれて固定的に支持されている。
【0039】
また、封止部材30の上側では、第二の取付部材22と封止部材30及びオリフィス部材36の間が、第二の取付部材22の下面に設けられたシールゴム38を挟むことでシールされている。また、封止部材30の下側では、封止部材30とオリフィス部材36の間が、可撓性膜34の外周部分を上下に挟むことでシールされている。
【0040】
これにより、本体ゴム弾性体24の凹所28が可撓性膜34で覆蓋されて液密にシールされることにより、所定の液体が封入された液室40が画成されている。また、かかる液室40は、略板形状のオリフィス部材36で上下に仕切られている。そして、オリフィス部材36の上側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体24で構成されて、振動入力に伴って圧力変動が生ぜしめられる受圧室42が形成されている。また、オリフィス部材36の下側には、壁部の一部がダイヤフラムゴム等の可撓性膜34で構成されることで圧力変動が吸収される容積可変の平衡室44が形成されている。
【0041】
これら受圧室42と平衡室44は、オリフィス部材36に設けられたオリフィス通路46で連通されており、振動入力時にオリフィス通路46を通じて流動する流体の流動作用を利用した防振効果が発揮されるようになっている。なお、本実施形態では、オリフィス部材36の中央部分に位置してマウント中心軸に直交する方向に広がるようにして、受圧室42と平衡室44にそれぞれ連通された収容領域が形成されており、かかる収容領域に可動膜48が収容配置されている。そして、例えばオリフィス通路46のチューニング周波数を超える高周波数域の振動入力時には、可動膜48の変形又は変位に基づいて受圧室42の圧力変動が軽減乃至は吸収されて、著しい高動ばね化が回避されるようになっている。
【0042】
なお、液室40の具体的構造やオリフィス通路46のチューニング特性、可動膜48による高周波液圧吸収機構の有無などは限定されるものでなく、要求される防振特性に応じて適宜に設定され得る。また、第二の取付部材22に対する封止部材30の組付構造も限定されるものでないが、本実施形態では、樹脂フックを用いた引っ掛けによる係止機構が採用されている。
【0043】
すなわち、係止機構は、第二の取付部材22の外周面上に突出して形成された係止爪50と、封止部材30の外周面において上方に延び出して設けられた可撓性の係止片52とによって構成されている。これら係止爪50と係止片52は、互いに対応する位置に設けられて対を為しており、第二の取付部材22と封止部材30の周方向で複数対が設けられている。特に本実施形態では、第二の取付部材22と封止部材30において、各前後方向の両側で略直線状に延びる各部位に2対ずつの係止爪50と係止片52が設けられている。
【0044】
係止片52は、略逆U字形状とされることで中央部分を上下に延びる係止孔を備えており、この係止孔に対して係止爪50が引っ掛けることで、第二の取付部材22に対して封止部材30が組み付けられて固定されている。なお、各係止片52への各係止爪50の引っ掛けは、第二の取付部材22の下面に対して下方から封止部材30の上面を重ね合わせ、シールゴム38を押圧させつつ接近させることで、各係止片52の弾性変形と復元を利用して略同時に行うことができる。
【0045】
さらに、封止部材30が組み付けられた第二の取付部材22には、係止爪50が形成されていない左右両側の外周部分において、それぞれ略一定厚さで前後方向へ直線状に延びる一対の連結部54,54が設けられている。そして、マウント本体12のブラケット14への組付状態では、これら連結部54,54を利用して、ブラケット14で第二の取付部材22が固定的に支持されるようになっている。
【0046】
ブラケット14は、アルミニウム合金のような金属や繊維補強樹脂などで形成された高剛性の部材であって、
図1-7の他に
図12-14にも示されているように、略矩形平板状のベース部58の上面からそれぞれ上方に立ち上がる左右の取付脚部60,60と、それら左右の取付脚部60,60の上端部を一体的に連結する天板部62とを、一体的に備えている。そして、これらベース部58と左右の取付脚部60,60と天板部62とで囲まれた状態で、マウント本体12が組み付けられる組付スペース66が側方に開口して形成されている。
【0047】
なお、組付スペース66の奥方(側方への開口側と反対の側)には、組付スペース66の開口を塞ぐように奥壁68が一体的に設けられていると共に、かかる奥壁68の上側部分には、前記取付部材26を挿し入れてマウント本体12(第一の取付部材20)へ組み付けるための挿入穴70が形成されている。また、ベース部58の両側は、各取付脚部60から外方に広がる固定板部とされており、かかる一対の固定板部において、ブラケット14が車両ボデー側へボルト固定されるようになっている。
【0048】
左右の取付脚部60,60は、前後方向に所定の幅寸法を有する厚肉の板状とされており、左右で相互に対向している。また、これら左右の取付脚部60,60には、対向内面に開口して前後へ延びる連結溝部72,72が形成されている。
【0049】
そして、これら一対の連結溝部72,72に対して、マウント本体12の第二の取付部材22に設けられた一対の連結部54,54が側方から挿し入れられて、
図15-17において組付途中工程が順次に示されているように、マウント本体12がブラケット14へ横挿入されて組み付けられている。なお、かかる組付状態下、マウント本体12の封止部材30は、底壁下面がブラケット14のベース部58の上面に当接状態で重ね合わされて支持されている。
【0050】
ここにおいて、マウント本体12のブラケット14への組付状態下において第二の取付部材22の連結部54,54がブラケット14の連結溝部72,72によって位置決めされて固定的に支持されるように、各一対の連結部54,54と連結溝部72,72は、特別な構成を備えている。
【0051】
具体的には、第二の取付部材22の各連結部54は、第二の取付部材22の左右両側端部において前後方向の中間部分を所定長さで延びて設けられている。これら一対の連結部54,54の下面74,74には金属製の第二の取付部材22が露出されており、対応する連結溝部72,72の溝内下面76,76と共に、略水平で平坦なメタル面をもって前後方向に直線的に延びている。
【0052】
なお、一対の連結部54,54の上面78,78と一対の連結溝部72,72の溝内上面80,80も、略水平に前後方向に延びる平坦面とされていても良いが、本実施形態では、連結溝部72,72の溝内上面80,80が、それぞれ開口側(手前側)の所定長さに亘って開口部(
図7中の右端)に向かって次第に上方に傾斜する傾斜面とされて、連結部54,54の挿し入れの作業性向上が図られている。
【0053】
かかる一対の連結部54,54の上下方向の厚さ寸法は、
図7等から理解できるように、一対の連結溝部72,72の溝内上下寸法(溝幅寸法)よりも僅かに小さくされている。また、一対の連結部54,54の上面78,78には、それぞれ上側付勢ゴム82,82が設けられている。
【0054】
この上側付勢ゴム82の厚さ寸法(連結部54から上方への突出高さ寸法)は、上記の連結部54の上下厚さ寸法と連結溝部72の溝内上下寸法との差よりも大きくされている。これにより、一対の連結部54,54が一対の連結溝部72,72に挿し入れられることでブラケット14に組み付けられた第二の取付部材22は、連結溝部72,72の溝内上面80,80へ当接して圧縮された上側付勢ゴム82,82の反発弾性力により、一対の連結部54,54の下面74,74が連結溝部72の溝内下面74,74に対してメタルタッチで押し付けられて位置決めされている。
【0055】
また、一対の連結部54,54の外周面84,84は、上下方向で一定幅をもって前後方向に相互に平行に延びていても良いが、本実施形態では、奥方(
図6の上側となる前方)から手前(
図6の下側となる後方)に向かって外周への突出高さが次第に且つ僅かに大きくなる傾斜面とされている。
【0056】
かかる一対の連結部54,54の外周面84,84間の左右離隔寸法、即ち連結部54,54の形成部位における第二の取付部材22の左右方向の部材外寸は、
図6等から理解できるように、一対の連結溝部72,72の溝内底面86,86の対向間距離よりも僅かに小さくされている。また、一方の連結部(
図2,3,5,6中の左側の連結部)54aの外周面84は、金属製の第二の取付部材22が露出されたメタル面とされて、一方の連結溝部72aの溝内底面76のメタル面に重ね合わされている。
【0057】
なお、一対の連結溝部72,72の溝内底面86,86は、一対の連結部54,54の外周面84,84に対応した平面形状とされて、略全面に亘ってメタルタッチで当接されるようになっている。即ち、本実施形態では、一対の連結溝部72,72の溝内底面86,86が、一対の連結部54,54の外周面84,84と対応して、奥方から手前に向かって一対の溝内底面86,86の対向面間距離が次第に大きくなる傾斜面とされている。特に本実施形態では、ブラケット本体12の一対の取付脚部60,60の対向内面の略全体が、奥方から手前に向かって対向面間距離が次第に大きくなる傾斜面とされていることで、傾斜した溝内底面86を有する連結溝部72は、手前側から奥側に向かって略一定の溝深さ寸法とされている。
【0058】
更にまた、他方の連結部54bの外周面84には、略全面に亘って外周付勢ゴム88が設けられている。この外周付勢ゴム88の厚さ寸法(連結部54bから側方への突出高さ寸法)は、上記の一対の連結部54,54の外周面84,84間の左右離隔寸法と一対の連結溝部72,72の溝内底面86,86の対向間距離との差よりも大きくされている。
【0059】
これにより、一対の連結部54,54が一対の連結溝部72,72に挿し入れられることでブラケット14に組み付けられた第二の取付部材22は、他方の連結部54b側で他方の連結溝部72bの溝内底面86へ当接して圧縮された外周付勢ゴム88の反発弾性力により、一方の連結部54aの外周面84が一方の連結溝部72aの溝内底面76に対してメタルタッチで押し付けられて位置決めされている。
【0060】
さらに、一方の連結部54aと一方の連結溝部72aとの間および他方の連結部54bと他方の連結溝部72bとの間には、それぞれ、外周付勢ゴム88による付勢力で係合状態に保持されて一対の連結溝部72,72に挿し入れられた一対の連結部54,54の抜け出しを阻止する抜止係合部が設けられている。
【0061】
本実施形態では、一方の連結部54aと一方の連結溝部72aとの間における抜止係合部が、一方の連結部54aの外周面84に設けられた段差状の凹部90と、一方の連結溝部72aの溝内底面に設けられた段差状の凸部92とによって構成されている。
【0062】
一方の連結部54aの段差状凹部90は、連結部54aの外周面84において、後端から前方に向かって略中央まで延びる切欠形状をもって形成されており、段差状凹部90の前方側端面である段差面によって、前後方向に直交して上下左右方向に広がる平面をもって係止面94が構成されている。特に本実施形態では、かかる段差状凹部90が、連結部54aの下端から上下方向で中間部分までの大きさで形成されている。これにより、一方の連結部54aにおいて、一方の連結溝部72aの溝内底面86に対するメタルタッチでの当接面積が、段差状凹部90で大きく損なわれることが回避されており、当該メタルタッチ面における耐荷重性能等の向上が図られている。
【0063】
一方の連結溝部72aの段差状凸部92は、連結溝部72aの溝内底面86において、後端から前方に向かって略中央まで延びる突条形状をもって形成されており、段差状凸部92の前方側端面である段差面によって、前後方向に直交して上下左右方向に広がる平面をもって係止面96が構成されている。特に本実施形態では、かかる段差状凸部92が、連結溝部72aの溝内底面86の下端から上下方向で中間部分までの大きさで形成されている。
【0064】
これにより、連結溝部72aの段差状凸部92が連結部54aの段差状凹部90に入り込んで略収容された状態とされて、かかる段差状凸部92の係止面96に対して連結部54aの係止面94が、奥方から手前側に向けて当接することで、連結溝部72aに挿し入れられた連結部54aの手前側への抜け出しが防止されるようになっている。特に本実施形態では、相互に当接する係止面94と係止面96がメタルタッチで重ね合わされることで耐荷重性能の向上が図られている。また、これら両係止面94,96の当接位置が、第二の取付部材22をブラケット14への組付方向(
図5中の上下方向)で3等分した中央領域内に位置して設けられていることで、例えばマウント本体12の中心軸回りの回転方向におけるガタつき等も、両係止面94,96の当接による係止作用によって効果的に抑えられ得る。
【0065】
また、他方の連結部54bと他方の連結溝部72bとの間における抜止係合部は、本実施形態において、他方の連結部54bの内側部分に設けられた段差状の凹部100と、他方の連結溝部72bの開口部分に設けられた段差状の凸部102とによって構成されている。
【0066】
すなわち、他方の連結部54bの内周側には、下面に開口して前後方向に延びる前後溝104が形成されており、この前後溝104の外側壁面において、段差状凹部100が、後端から前方に向かって略中央まで延びる切欠形状をもって形成されている。そして、かかる段差状凹部100の前方側端面である段差面により、前後方向に直交して上下左右方向に広がる平面をもって係止面106が構成されている。
【0067】
他方の連結溝部72bの段差状凸部102は、連結溝部72bの溝内下面76から上方に向かって突出形成された内壁部によって形成されている。即ち、段差状凸部としての内壁部102は、連結溝部72bの開口端縁に沿って、略一定の断面形状をもって、連結溝部72bの後端から前方に向かって略中央まで延びる竪壁形状とされている。そして、かかる段差状凸部102の前方側端面である段差面により、前後方向に直交して上下左右方向に広がる平面をもって係止面108が構成されている。
【0068】
これにより、連結溝部72bの段差状凸部(内壁部)102が連結部54bの段差状凹部100に入り込んで略収容された状態とされて、かかる段差状凸部102の係止面108に対して連結部54bの係止面106が、奥方から手前側に向けて当接することで、連結溝部72bに挿し入れられた連結部54bの手前側への抜け出しが防止されるようになっている。特に本実施形態では、相互に当接する係止面106と係止面108がメタルタッチで重ね合わされることで耐荷重性能の向上が図られている。
【0069】
また、本実施形態では、一方の連結部54a及び連結溝部72aの抜止係合部における係止面94,96と、他方の連結部54b及び連結溝部72bの抜止係合部における係止面106,108とが、前後方向で略同じ位置に設定されており、且つ、マウント中心軸を含む直線上で左右両側に位置せしめられている。これにより、ブラケット14からのマウント本体12の抜け出し阻止力が、より安定して効率的に発揮されるようになっている。
【0070】
なお、マウント本体12のブラケット14への組付状態において、一方の連結部54aと連結溝部72aの抜止係合部における段差状凹部90と段差状凸部92、及び、他方の連結部54bと連結溝部72bの抜止係合部における段差状凹部100と段差状凸部102は、何れも、左右方向において相互に当接状態とされていても良いが、好適には、僅かな隙間をもって左右方向で対向するようにされる。これにより、一方の連結部54aの外周面84と一方の連結溝部72aの溝内底面76とのメタルタッチでの当接状態がより安定して発現可能となる。
【0071】
ところで、上述の如き一対の連結部54,54の一対の連結溝部72,72への組み付けによる第二の取付部材22のブラケット14への固定的な支持状態は、
図15-17に示されるように、一対の連結溝部72,72に対して一対の連結部54,54を手前から奥方に向けて挿し入れて押し進め、第二の取付部材22がブラケット14へ略収容される位置に達するまで圧入することによって実現される。
【0072】
先ず、
図15に示されるように、ブラケット14の組付スペース66の開口部分からマウント本体12を挿し入れるようにして、第二の取付部材22の一対の連結部54,54を、ブラケット14の一対の連結溝部72,72に対して手前側の開口部から挿し入れる。この際、一対の連結溝部72,72の溝内底面86,86の対向面間距離は、奥側から手前側に向けて左右外側へ大きくなっていると共に、一対の連結部54,54の外周面84,84間の左右寸法は、挿し入れ方向の前方側(奥側)に向けて小さくなっていることから、一対の連結部54,54を一対の連結溝部72,72へ容易に挿し入れることができる。特に他方の連結溝部72bは、手前側の端部付近において溝内底面86の外側への傾斜角度が一層大きくされており(
図6,14等参照)、外周付勢ゴム88の引っ掛かりが防止されている。また、上下方向においても、各連結溝部72の溝内上面80が、奥側から手前側に向けて次第に上方へ傾斜しており、特に手前側の端部付近では傾斜角度が一層大きくされていることにより(
図7,15等参照)、上側付勢ゴム82,82の引っ掛かりが防止されて、連結溝部72,72に対する連結部54,54の挿し入れが、一層容易とされている。なお、外周付勢ゴム88や上側付勢ゴム82,82は、例えば挿し入れ方向の前方側端部におけるゴム厚さ寸法を小さくして、挿し入れ方向の後方側に向けて次第に厚くなるテーパ形状とすることで、連結溝部72,72に対する連結部54,54の挿し入れを一層容易にすることも可能である。
【0073】
さらに、
図16に示されているように、ブラケット14の一対の連結溝部72,72に挿し入れた一対の連結部54,54を奥方へ押し進めて行くこととなるが、その際、各連結部54,54の下面74,74は、連結溝部72,72の溝内下面76,76に対してメタルタッチで重ね合わされて、平坦な溝内下面76,76上を滑るようにして平坦な下面74,74が案内されて奥方へ移動することとなる。なお、他方の連結部54bでは外周付勢ゴム88が他方の連結溝部72bの溝内底面86に当接して、その圧縮反力で第二の取付部材22が全体的に左方に押圧されることとなる。しかし、一方の連結部54aの外周面84は、一方の連結溝部72aに形成された段差状凸部(内壁部)92に当接して、連結溝部72aの溝内底面86から離れた状態で当該段差状凸部92上を奥方へ移動することとなる。
【0074】
そして、
図17に示されているように、ブラケット14の一対の連結溝部72,72に沿って一対の連結部54,54を最奥方へ押し進めると、一方の連結部54aに形成された段差状凹部90の係止面94が、一方の連結溝部72aの段差状凸部92の係止面96にまで達することで、一方の連結部54aの外周面84が一方の連結溝部72aに形成された段差状凸部(内壁部)92への当接状態から外れる。これと略同時に、他方の連結部54bに形成された段差状凹部100の係止面106が、他方の連結溝部72bの段差状凸部102の係止面108にまで達することで、他方の連結部54bの外周面84が他方の連結溝部72bに形成された段差状凸部(内壁部)102への当接状態から外れる。これにより、第二の取付部材22の全体が外周付勢ゴム88の圧縮反力によって左方へ移動する。その結果、一方の連結部54aの外周面84が、一方の連結溝部72aの溝内底面86に対してメタルタッチで当接されて押し付け状態に保持され得る。
【0075】
また、
図17に示されているように一対の連結溝部72,72に対して一対の連結部54,54を最奥方まで押し進めた組付状態では、一方の連結部54aの段差状凹部90の係止面94が、一方の連結溝部72aの段差状凸部92の係止面96に対して、第二の取付部材22のブラケット14に対する組付方向において奥方から手前側に向かって重ね合わされてメタルタッチで当接されている。また、他方の連結部54bの段差状凹部100の係止面106が、他方の連結溝部72bの段差状凸部102の係止面108に対して、第二の取付部材22のブラケット14に対する組付方向において奥方から手前側に向かって重ね合わされてメタルタッチで当接されている。これら一方及び他方の側における当接によって、第二の取付部材22のブラケット14からの抜け出しが阻止されている。
【0076】
特に本実施形態では、第二の取付部材22のブラケット14に対する組付方向の先端面において、外周(奥方)に向かって突出する先端付勢ゴム112が設けられており、
図17の組付状態において、かかる先端付勢ゴム112がブラケット14の奥壁68へ当接することで、その弾性的な当接反力が、連結部54a,54bの係止面94,106と連結溝部72a,72bの係止面96,108とを、それぞれ当接方向に押し付けるように作用せしめられている。これにより、連結部54a,54bの係止面94,106と連結溝部72a,72bの係止面96,108とが当接状態に保持されて、ガタツキなどが防止されるようになっている。
【0077】
上述の説明から明らかなように、第二の取付部材22がブラケット14に対して、上下方向でメタルタッチで位置決めされていると共に、左右方向でもメタルタッチで位置決めされており、更に前後方向でもメタルタッチで位置決めされていることから、高精度で且つ大きな耐荷重性能をもって、第二の取付部材22をブラケット14に対して位置決め支持させることが可能になる。
【0078】
また、第二の取付部材22のブラケット14への組付けに際して、一対の連結部54,54の平坦な下面74,74が、一対の連結溝部72,72の平坦な溝内下面76,76上を滑るように案内されて、第二の取付部材22が略平行移動して組み付けられることから、組付操作に際しての第二の取付部材22のブラケット14に対する傾動が回避される。それ故、第二の取付部材22のブラケット14への組付けを容易に行うことができると共に、例えば第二の取付部材22のブラケット14への組付けに際して、マウント本体12の全体が傾いて、第二の取付部材22に引っ掛け係合された封止部材30が局所的に強くブラケット14のベース部58に当接されること等に起因する、第二の取付部材22と封止部材30との間のシール性能の部分的且つ一時的な低下や液漏れなども回避され得ることとなる。
【0079】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、上側付勢ゴム82や外周付勢ゴム88などは、本体ゴム弾性体24と一体形成されても良いし、別形成しても良い。また、上下付勢ゴム82や外周付勢ゴム88,先端付勢ゴム112などは、相互に一体形成されても良いし、別形成されていても良い。
【0080】
また、第二の取付部材22の連結部54a,54bをブラケット14の連結溝部72a,72bに沿って挿し入れる際のガイド機構は、前述の如き両側の連結溝部72a,72bに設けられた凸部92,102によって両側の連結部54a,54bをそれぞれスライド案内する機構に限定されない。例えば、左右の一方の側だけにおいて、連結部54を連結溝部72によってスライド案内させても良い。また、かくの如きガイド機構は本発明において必須ではなく、例えばそのようなスライド式のガイド機構を設けないで、抜止係合部を構成する突起等を乗り越えるようにして連結部を連結溝部に挿し入れるようにしても良い。
【0081】
また、前記実施形態では、防振装置本体として液封式のマウント本体12を例示したが、例えば、第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で弾性連結した、液室を備えないソリッドタイプの防振装置本体や、アクチュエータによる能動的な防振効果を得る能動型液封式の防振装置本体、防振特性を切り替え可能とした切替型液封式の防振装置本体なども、採用することができる。
【0082】
前記実施形態に示したブラケットの具体的な構造は、あくまでも例示であって、連結溝部を備えていれば、車両ボデーへの取付構造や天板部および底板部の有無および具体的な構造などは、適宜に変更され得る。
【符号の説明】
【0083】
10 エンジンマウント
12 マウント本体
14 ブラケット
20 第一の取付部材
22 第二の取付部材
24 本体ゴム弾性体
26 取付部材
28 凹所(本体ゴム弾性体)
30 封止部材
32 支持底部(封止部材)
34 可撓性膜
36 オリフィス部材
38 シールゴム(第二の取付部材の下面)
40 液室
42 受圧室
44 平衡室
46 オリフィス通路
48 可動膜
50 係止爪
52 係止片
54 連結部(第二の取付部材)
54a 一方の連結部
54b 他方の連結部
58 ベース部
60 取付脚部
62 天板部
66 組付スペース
68 奥壁
70 挿入穴
72 連結溝部
72a 一方の連結溝部
72b 他方の連結溝部
74 下面(連結部)
76 溝内下面(連結溝部)
78 上面(連結部)
80 溝内上面(連結溝部)
82 上側付勢ゴム
84 外周面(連結部)
86 溝内底面(連結溝部)
88 外周付勢ゴム
90 凹部(一方の連結部)
92 凸部(一方の連結溝部)
94 係止面(凹部)
96 係止面(凸部)
100 凹部(他方の連結部)
102 凸部(内壁部,他方の連結溝部)
104 前後溝
106 係止面(凹部)
108 係止面(凸部)
112 先端付勢ゴム