IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ いすゞ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電力供給制御装置 図1
  • 特開-電力供給制御装置 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124207
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】電力供給制御装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/633 20140101AFI20230830BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230830BHJP
   H02J 7/04 20060101ALI20230830BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20230830BHJP
   H01M 10/6571 20140101ALI20230830BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20230830BHJP
【FI】
H01M10/633
H02J7/00 Q
H02J7/04 L
H01M10/615
H01M10/6571
H01M10/625
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027841
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯島 成規
(72)【発明者】
【氏名】古町 圭司
【テーマコード(参考)】
5G503
5H031
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA08
5G503CB11
5G503EA09
5H031KK03
(57)【要約】
【課題】バッテリの加温時間を短縮することができる電力供給制御装置を提供すること。
【解決手段】バッテリを加温するヒータへの電力供給を制御する電力供給制御装置であって、検出された前記バッテリの温度が予め設定された温度未満である場合、前記バッテリの状態値を算出する算出部と、算出された前記状態値が予め設定された状態値以上である場合、前記バッテリへの充電に用いられる充電装置の電力、および、前記バッテリの電力の両方を用いて前記ヒータを動作させる制御部と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリを加温するヒータへの電力供給を制御する電力供給制御装置であって、
検出された前記バッテリの温度が予め設定された温度未満である場合、前記バッテリの状態値を算出する算出部と、
算出された前記状態値が予め設定された状態値以上である場合、前記バッテリへの充電に用いられる充電装置の電力、および、前記バッテリの電力の両方を用いて前記ヒータを動作させる制御部と、を有する、
電力供給制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
算出された前記状態値が前記予め設定された状態値未満である場合、前記充電装置の電力のみを用いて前記ヒータを動作させる、
請求項1に記載の電力供給制御装置。
【請求項3】
前記算出部は、
前記充電装置の電力および前記バッテリの電力の両方を用いて前記ヒータの動作を開始させた後に、前記バッテリの状態値を新たに算出し、
前記制御部は、
新たに算出された前記状態値が前記予め設定された状態値未満である場合、前記充電装置の電力のみを用いて前記ヒータを動作させるように切り替える、
請求項1または2に記載の電力供給制御装置。
【請求項4】
前記状態値は、
前記バッテリの充電率または放電可能電力である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の電力供給制御装置。
【請求項5】
前記バッテリ、前記ヒータ、および前記電力供給制御装置は、自動車に搭載される、
請求項1から4のいずれか1項に記載の電力供給制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バッテリ加温用ヒータへの電力供給を制御する電力供給制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両において、バッテリが低温である場合に、ヒータを用いてバッテリを加温する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-152221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来では、バッテリの加温に要する時間(以下、加温時間という)の点で改善の余地があった。
【0005】
本開示の一態様の目的は、バッテリの加温時間を短縮することができる電力供給制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る電力供給制御装置は、バッテリを加温するヒータへの電力供給を制御する電力供給制御装置であって、検出された前記バッテリの温度が予め設定された温度未満である場合、前記バッテリの状態値を算出する算出部と、算出された前記状態値が予め設定された状態値以上である場合、前記バッテリへの充電に用いられる充電装置の電力、および、前記バッテリの電力の両方を用いて前記ヒータを動作させる制御部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、バッテリの加温時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施の形態に係る電力供給制御装置とその周辺の構成要素を概略的に示す図
図2】本開示の実施の形態に係る電力供給制御装置の動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
まず、図1を用いて、本実施の形態の電力供給制御装置100とその周辺の構成要素について説明する。図1は、電力供給制御装置100とその周辺の構成要素を概略的に示す図である。
【0011】
バッテリ10、ヒータ20、バッテリセンサ30、および電力供給制御装置100は、例えば自動車(図示略)に搭載されている。なお、自動車としては、例えば、EV(Electric Vehicle)、HV(Hybrid Vehicle)、またはPHV(Plug-in Hybrid Vehicle)などが挙げられる。
【0012】
一方、充電装置1は、自動車の外部(例えば、施設、家庭等)に設けられる。充電装置1としては、例えば、充電スタンド、充電用コンセントなどが挙げられる。図示は省略するが、充電装置1側の接続部と、自動車側の接続部とが電気的に接続されることにより、充電装置1から自動車へ電力の出力が可能な状態となる。また、充電装置1は、電力出力動作の開始(実行)/停止(非実行)を切り替えるコントローラを含む。このコントローラは、電力供給制御装置100の指示に基づいて、電力出力動作を開始したり、停止したりする。
【0013】
電力供給制御装置100は、充電装置1、ヒータ20、バッテリセンサ30のそれぞれと電気的に接続されている。
【0014】
図1において、バッテリセンサ30から電力供給制御装置100へ向かう点線の矢印は、バッテリセンサ30の検出結果を示す検出情報(詳細は後述)の出力を示している。また、図1において、電力供給制御装置100から充電装置1、ヒータ20のそれぞれへ向かう点線の矢印は、指示の出力を示している。
【0015】
バッテリ10とヒータ20は、電力供給ライン(符号の図示略)を介して充電装置1に接続される。
【0016】
バッテリ10は、充電装置1からの電力供給により充電される二次電池である。バッテリ10に蓄積された電力は、自動車に搭載された各種電動装置(例えば、図示しない走行用モータ、補機等や、図1のヒータ20)に用いられる。
【0017】
ヒータ20は、バッテリ10を加温(加熱)する装置である。ヒータ20は、電力供給源であるバッテリ10および充電装置1のそれぞれと電気的に接続される。ヒータ20は、加温動作の開始(実行)/停止(非実行)を行うコントローラを含む。このコントローラは、電力供給制御装置100の指示に基づいて、加温動作を開始したり、停止したりする。
【0018】
バッテリセンサ30は、バッテリ10の温度、電流、および電圧を検出するセンサである。バッテリセンサ30は、随時、検出された温度、電流、および電圧を示す検出情報を、電力供給制御装置100へ出力する。
【0019】
電力供給制御装置100は、ヒータ20への電力供給を制御する装置である。
【0020】
図示は省略するが、電力供給制御装置100は、ハードウェアとして、例えば、CPU(Central Processing Unit)、コンピュータプログラムを格納したROM(Read Only Memory)、作業用メモリであるRAM(Random Access Memory)、入力ポート、出力ポート等を有する。
【0021】
以下に説明する電力供給制御装置100の各機能は、CPUがROMから読み出したコンピュータプログラムをRAMにて実行することにより実現される。電力供給制御装置100は、例えば、ECU(Electronic Control Unit)によって実現されてもよい。その場合、1つのECUで全ての機能を実現してもよいし、複数のECUで各機能を分担してもよい。
【0022】
図1に示すように、電力供給制御装置100は、算出部110、判定部120、および制御部130を有する。
【0023】
算出部110は、バッテリセンサ30から取得した検出情報に示されるバッテリ10の電流および電圧に基づいて、バッテリ10の充電率(SOC:State Of Charge)を算出する。この算出方法は、公知の技術を適用できる。ここで算出されるバッテリ10の充電率は、バッテリの状態値の一例に相当する。
【0024】
算出部110による充電率の算出は、後述する判定部120により、電力供給ラインに対する充電装置1の接続が検出され、かつ、バッテリセンサ30からの検出情報に示される温度が設定温度未満であると判定された場合に、実行される。
【0025】
判定部120は、電力供給ラインに充電装置1が接続されたことを検出する。この検出方法は、公知の技術を適用できる。例えば、判定部120は、自動車側の接続部に設けられた接点の状態に変化があった場合に、電力供給ラインに充電装置1が接続されたことを検出する。
【0026】
また、判定部120は、電力供給ラインに対する充電装置1の接続を検出した場合、バッテリセンサ30から取得した検出情報に示されるバッテリ10の温度(以下、検出温度という)が設定温度未満であるか否かを判定する。
【0027】
設定温度は、予め設定された閾値であり、例えば、バッテリ10に対する加温が必要ないとされる温度の下限値である。設定温度は、予め実施された実験またはシミュレーション等の結果に基づいて、設定される。
【0028】
また、判定部120は、算出部110によりバッテリ10の充電率(以下、算出充電率という)が算出された場合、その算出充電率が設定充電率以上であるか否かを判定する。
【0029】
設定充電率は、予め定められた閾値であり、例えば、バッテリ10からの電力供給に適しているとされる充電率の下限値である。設定充電率は、予め実施された実験またはシミュレーション等の結果に基づいて、設定される。
【0030】
制御部130は、判定部120により検出温度が設定温度以上であると判定された場合、ヒータ20を動作させないように制御し、かつ、充電装置1の電力をバッテリ10へ供給する制御を行う。
【0031】
具体的には、制御部130は、充電装置1に電力出力動作の開始を指示し、ヒータ20に加温動作の停止を指示する。これにより、充電装置1からバッテリ10へ電力が供給され、バッテリ10の充電が実行される。一方で、ヒータ20は動作せず、ヒータ20による加温は実行されない。
【0032】
また、制御部130は、判定部120により算出充電率が設定充電率以上であると判定された場合、充電装置1およびバッテリ10の両方の電力を用いてヒータ20を動作させる制御を実行する。
【0033】
具体的には、制御部130は、充電装置1に電力出力動作の開始を指示し、ヒータ20に加温動作の開始を指示する。これにより、ヒータ20は、充電装置1およびバッテリ10の両方から供給される電力を用いて動作する。よって、ヒータ20によるバッテリ10の加温が実行される。
【0034】
また、制御部130は、判定部120により算出充電率が設定充電率未満であると判定された場合、充電装置1の電力のみを用いてヒータ20を動作させる制御を実行する。
【0035】
具体的には、算出部110は、ヒータ20(具体的には、コントローラ)からその消費電力を示す情報を取得し、その消費電力に基づいて、バッテリ10を充電せずにヒータ20を動作させることが可能な電力を算出する。そして、制御部130は、算出された電力を出力するように充電装置1に指示する。また、制御部130は、ヒータ20に加温動作の開始を指示する。これにより、ヒータ20は、充電装置1からの電力のみで動作する。よって、ヒータ20によるバッテリ10の加温が実行される。
【0036】
次に、電力供給制御装置100の動作について、図2を用いて説明する。図2は、電力供給制御装置100の動作例を示すフローチャートである。
【0037】
図2のフローは、例えば、判定部120によって、電力供給ラインに充電装置1が接続されたことが検出された場合に開始される。
【0038】
まず、算出部110および判定部120は、バッテリセンサ30から検出情報を取得する(ステップS11)。
【0039】
次に、判定部120は、検出情報に示されるバッテリ10の温度(すなわち、検出温度)が設定温度未満であるか否かを判定する(ステップS12)。
【0040】
検出温度が設定温度未満ではない場合(ステップS12:NO)、フローは終了する。なお、図示は省略しているが、この場合では、上述したとおり、制御部130は、ヒータ20が動作しないように制御し、かつ、充電装置1の電力をバッテリ10へ供給する制御を行う。
【0041】
一方、検出温度が設定温度未満である場合(ステップS12:YES)、算出部110は、検出情報に示されるバッテリ10の電流および電圧に基づいて、バッテリ10の充電率を算出する(ステップS13)。
【0042】
次に、判定部120は、算出部110により算出されたバッテリ10の充電率(すなわち、算出充電率)が設定充電率以上であるか否かを判定する(ステップS14)。
【0043】
算出充電率が設定充電率以上である場合(ステップS14:YES)、制御部130は、充電装置1およびバッテリ10の両方の電力を用いてヒータ20を動作させる(ステップS15)。
【0044】
一方、算出充電率が設定充電率以上ではない場合(ステップS14:NO)、制御部130は、充電装置1の電力のみを用いてヒータ20を動作させる(ステップS16)。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態の電力供給制御装置100は、バッテリ10を加温するヒータ20への電力供給を制御する装置であって、検出されたバッテリ10の温度が予め設定された温度未満である場合、バッテリ10の充電率(状態値の一例)を算出し、算出された充電率が予め設定された充電率以上である場合、バッテリ10への充電に用いられる充電装置1の電力、および、バッテリ10の電力の両方を用いてヒータ20を動作させることを特徴とする。
【0046】
この特徴により、ヒータ20への供給電力が増えるため、バッテリ10の加温時間を短縮することができる。よって、バッテリ10の出力特性をより短時間で高めることができる。
【0047】
また、本実施の形態の電力供給制御装置100は、算出された充電率が予め設定された充電率未満である場合、充電装置1の電力のみを用いてヒータ20を動作させることを特徴とする。
【0048】
この特徴により、充電率が低い状態のバッテリ10の電力を使用することなく、バッテリ10を加温できるので、バッテリ10の電欠(電池切れ)を防止しつつ、バッテリ10の出力特性を高めることができる。
【0049】
なお、本開示は、上記実施の形態の説明に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。以下、変形例について説明する。
【0050】
[変形例1]
実施の形態において、算出部110は、充電装置1の電力およびバッテリ10の電力の両方を用いてヒータ20の動作を開始させた後に、バッテリセンサ30から新たに取得した検出情報に基づいて、バッテリ10の充電率を算出してもよい。そして、制御部130は、新たに算出された充電率が設定充電率未満である場合、充電装置1の電力のみを用いてヒータ20を動作させるように切り替えてもよい。
【0051】
[変形例2]
実施の形態では、バッテリ10の状態値として、バッテリ10の充電率を用いる場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、バッテリ10の状態値として、バッテリ10の放電可能電力を用いてもよい。
【0052】
その場合、算出部110は、検出情報に示されるバッテリ10の電圧、電流、および温度に基づいて、放電可能電力を算出する。この算出方法は、公知の技術を適用できる。
【0053】
また、その場合、判定部120は、算出された放電可能電力(以下、算出放電可能電力という)が予め設定された放電可能電力(以下、設定放電可能電力という)以上であるか否かを判定する。
【0054】
そして、制御部130は、算出放電可能電力が設定放電可能電力以上である場合、充電装置1の電力およびバッテリ10の電力の両方を用いてヒータ20を動作させる制御を実行する。一方、算出放電可能電力が設定放電可能電力以上ではない場合、制御部130は、充電装置1の電力のみを用いてヒータ20を動作させる制御を実行する。
【0055】
[変形例3]
実施の形態では、図1に示した充電装置1以外の構成要素、すなわち、バッテリ10、ヒータ20、バッテリセンサ30、および電力供給制御装置100が、自動車に搭載される場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。それらの構成要素は、自動車以外の移動体(例えば、船舶、自律移動ロボット等)、または、定置式の装置などに搭載されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本開示の電力供給制御装置は、バッテリ加温用ヒータへの電力供給を制御する技術全般に有用である。
【符号の説明】
【0057】
1 充電装置
10 バッテリ
20 ヒータ
30 バッテリセンサ
100 電力供給制御装置
110 算出部
120 判定部
130 制御部
図1
図2