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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124221
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】免震装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/04 20060101AFI20230830BHJP
【FI】
F16F15/04 E
F16F15/04 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027863
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002255
【氏名又は名称】SWCC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 滋夫
【テーマコード(参考)】
3J048
【Fターム(参考)】
3J048AA03
3J048AC01
3J048BA08
3J048BG04
3J048DA01
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】面圧の均一化を図ることできるとともに、許容荷重の低減を防ぐことができる免震装置を提供すること。
【解決手段】上部構造物と下部構造物のうちの一方に設けられるすべり板と、上部構造物と下部構造物のうちの他方に設けられ、すべり板を摺動する支承本体と、を有し、支承本体は、外周部よりも中央部がすべり板から離間する凹状に保持され、すべり板に対し摺動可能に配置されたすべり材を有し、すべり材は、鉛直荷重を受けて前記凹状からフラット形状に変形する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部構造物と下部構造物のうちの一方に設けられるすべり板と、
上部構造物と下部構造物のうちの他方に設けられ、前記すべり板を摺動する支承本体と、
を有し、
前記支承本体は、
外周部よりも中央部が前記すべり板から離間する凹状に保持され、前記すべり板に対し摺動可能に配置されたすべり材を有し、
前記すべり材は、鉛直荷重を受けて前記凹状からフラット形状に変形する、
免震装置。
【請求項2】
前記すべり材は、前記凹状に形成されている、
請求項1記載の免震装置。
【請求項3】
前記支承本体は、
上下面のうちの一方の面が凹状に形成され、前記すべり材に当接して前記すべり材を位置決めして保持する保持部材をさらに有し、
前記保持部材は、前記鉛直荷重を受けて凹状からフラット形状に変形して前記すべり材をフラット形状に変形させる、
請求項1または2記載の免震装置。
【請求項4】
前記支承本体は、上下部のうちの一方に前記保持部材を有し、且つ、複数の弾性板と硬質板とを交互に積層して形成され、積層方向と直交する水平方向にせん断変形可能な積層体を有する、
請求項3記載の免震装置。
【請求項5】
複数の前記硬質板のうち少なくとも1枚が、前記鉛直荷重を受けてフラット形状に変形する凹状硬質板である、
請求項4記載の免震装置。
【請求項6】
前記凹状は、湾曲状である、
請求項1から5のいずれか一項に記載の免震装置。
【請求項7】
前記凹状は、ドーム形状である、
請求項1から5のいずれか一項に記載の免震装置。
【請求項8】
前記すべり材は、厚み3mm~6mmのドーム形状に形成されている、
請求項7に記載の免震装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルディング、戸建て住宅、橋梁等の建築物を含む構造物や機械装置等の免震構造に用いられる免震装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地震や台風等により受ける動的荷重による振動、例えば、地震発生時により受ける地震動から建築物等の構造物を保護するために、地盤と建築物との間には、免震装置が配設されることが知られている。
【0003】
免震装置として、各種の積層ゴム、すべり系支承、転がり系支承等が知られている。すべり系支承としては、積層ゴム等を有する積層ゴム支承装置等、水平方向に弾性変位可能な免震支持装置とともに使用される弾性すべり支承装置が普及しつつある。
【0004】
弾性すべり支承装置は、地盤側に設けた平滑なステンレス製のすべり板と、すべり板上に摺動自在に配設した、弾性すべり支承体と、を有する。
【0005】
弾性すべり支承体は、一般的に、金属板及びゴム等の軟質板からなる積層体の下面に、円形或いは矩形状に形成されたすべり材を有し、このすべり材を介して弾性すべり支承体は、すべり板上を摺動する。なお、弾性すべり支承体は、積層体の上面に固着されたフランジを介して、建築物等の上部構造物と緊結されている。
【0006】
このようなすべり支承装置では、地震や振動が発生した場合、弾性すべり支承体におけるすべり材が、相手材であるすべり板をすべり、地震や振動による変位を吸収する。これにより、建築物等の上部構造物に伝達される振動が大幅に軽減される。
【0007】
ところで、従来のすべり支承の構造では、基礎等の下部構造物と、建築物等の上部構造物との間に設置されて、弾性すべり支承体に上部構造物からの鉛直荷重が載荷される。
【0008】
すべり材は、すべり板上をすべるすべり面全面が均一な面となるように構成されているものの、すべり支承体に鉛直荷重が載荷されると、すべり支承体全体の中央部、つまり、すべり材の中央部に鉛直荷重が集中する。
【0009】
特に、大径のすべり材であれば、すべり材の周辺部で曲げ変形等を生じて、すべり材の支圧応力度が、中央部と周辺部とで不均一となることが知られている。これにより、弾性すべり支承体がすべり板上を摺動する際も、すべり材の中央部に面圧が集中することになり、面圧が集中する中央部のみが摩耗する可能性が生じる。
【0010】
例えば、引用文献1では、建築物等の上部構造物からの鉛直荷重が大きくかからない通常の状態において、揺れによる水平方向の力が作用した場合、圧縮応力の分布が、すべり支承体下部の滑り層の中央部ほど大きく、外周部ほど小さくなることが開示されている。すなわち、滑り層の中心部近辺を中心として、圧縮応力が広い分布で作用しており、この状態で、水平方向の力が大きくなり支承体が振動すると圧縮応力が大きい滑り層の中央部が摩耗し、中央部と周辺部とで不均一となる。
【0011】
これに対し、特許文献2のすべり支承では、すべり材の下面の中央部に凹部を設け、すべり材の下面の中央部と、すべり材とを接触しない構造が開示されている。この構成では、弾性すべり支承体がすべり板を摺動しても、中央部に面圧が集中しても、中央部がすべり板に接触しないため、摩耗することなく、弾性すべり支承体をすべらせて免震効果を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003-113896号公報
【特許文献2】特開2004-169715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献2のすべり支承では、すべり材において、鉛直荷重が集中する中央部に凹部を有し、中央部ですべり板とは接触しない構造であるので、中央部への面圧の集中を回避できるものの、この部分では、鉛直荷重を受けることができない。
すなわち、このすべり支承では、すべり材の中央部に面圧が集中することによる中央部の摩耗を防止できるものの、中央部の面圧(圧縮応力)を確保できず、すべり材において凹部の領域分の許容荷重が減少するという問題があった。
【0014】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、面圧の均一化を図ることできるとともに、許容荷重の低減を防ぐことができる免震装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上部構造物と下部構造物のうちの一方に設けられるすべり板と、
上部構造物と下部構造物のうちの他方に設けられ、前記すべり板を摺動する支承本体と、
を有し、
前記支承本体は、
外周部よりも中央部が前記すべり板から離間する凹状に保持され、前記すべり板に対し摺動可能に配置されたすべり材を有し、
前記すべり材は、鉛直荷重を受けて前記凹状からフラット形状に変形する構成を採る。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、面圧の均一化を図ることできるとともに、許容荷重の低減を防ぐことができる免震装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態の免震装置の一例を示す全体斜視図である。
図2】本発明の一実施の形態の免震装置の要部構成を示す縦断面図である。
図3】上部構造物と下部構造物との間に配置された免震装置の要部構成を示す縦断面図である。
図4】本発明の一実施の形態の変形硬質板の一例を示す斜視図である。
図5】本発明の一実施の形態の変形硬質板の変形例を示す斜視図である。
図6】本発明の一実施の形態の免震装置の変形例1を示す縦断面図である。
図7】本発明の一実施の形態の免震装置の変形例2を示す縦断面図である。
図8】本発明の一実施の形態の免震装置の変形例3を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態の免震装置の一例を示す全体斜視図である。本実施の形態において、免震装置の各部の構成及び動作を説明するために使用される上、下等の方向を示す表現は、絶対的なものでなく相対的なものであり、免震装置の各部が図に示される姿勢である場合に適切であるが、その姿勢が変化した場合には姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。上下は逆であってもよい。
【0019】
図1に示す免震装置1は、上部構造物と下部構造物との間に配置され、上部構造物を免震支承する弾性すべり支承である。
【0020】
図2は、同免震装置の要部構成を示す縦断面図であり、図3は、上部構造物と下部構造物との間に配置された免震装置の要部構成を示す縦断面図である。
【0021】
免震装置1は、すべり支承本体4と、すべり板5とを有する。
【0022】
免震装置1は、本実施の形態では、図2に示すように、すべり支承本体4が建築物(上部構造物)20に固定され、すべり板5が基礎(下部構造物)30側に固定される。
【0023】
免震装置1の基本的な性能は、中小地震時には、すべり支承本体4の有する積層体7が水平方向にせん断変形することで地震力を緩和し、大地震時には、すべり支承本体4のすべり材8が、すべり板5上を摺動することにより、摩擦エネルギーで地震力を吸収して低減する。
【0024】
免震装置1は、例えば、上部構造物としての建築物20と下部構造物としての基礎30との間に、他の免震部材としての複数の積層ゴム支承体とともに配置される。なお、免震装置1は、他の免震部材とともに、安定して建築物20を支える支持(支承)機能、地震エネルギーを吸収して建築物20の揺れを低減する減衰機能、及び建築物20の水平位置を元に戻す復元機能を備える免振システムとして機能する。
【0025】
他の免震部材としては、積層ゴム支承体の他、例えば、プラグ入り積層ゴム、高減衰積層ゴム、転がり支承等を用いてもよい。また、免震部材として、オイルダンパー、鋼材ダンパー、鉛ダンパー等の支持機能を有さないダンパー、或いは、荷重支承機能が無く水平変位の抑制機能のみ有する変位抑制装置等の他の免震部材や装置が用いられてもよい。
【0026】
なお、免震装置1は、上部構造物としての建築物20の柱の直下と下部構造物としての基礎30の間、或いは、建築物20の四隅等と基礎30との間に配置されてもよい。
【0027】
免震装置1は、免震機能とともに、通常時は建築物20から鉛直荷重(柱荷重であってもよい)を支える支持機能を有する。
【0028】
免震装置1は、すべり材8とすべり板5とが摺動して相対的に移動する場合でも、建築物20の鉛直荷重をすべり材8の全面で均等に受けて支持しつつ、建築物20を基礎(下部構造物)30に対して相対的に水平方向(図3の左右方向)へ移動可能する。
【0029】
<すべり支承本体4>
すべり支承本体4は、弾性すべり支承であり、積層ゴム部6、連結鋼板72及び端部鋼板(保持部材)74を有する積層体7と、すべり材8と、を備え、それぞれ高さ方向に変形可能に形成されている。積層ゴム部6は、複数の変形硬質板76を複層で有する。
【0030】
すべり支承本体4では、上部構造物から鉛直荷重を受けた際に、すべり支承本体4の最下部のすべり材8における面圧分布が均等になるように、すべり材8、端部鋼板74及び変形硬質板76は形成される。
すべり材8、端部鋼板74及び変形硬質板76のうち、少なくともすべり材8及び端部鋼板74が、外周部よりも中央部がすべり板5から離間する凹状に形成される。少なくともすべり材8及び端部鋼板74は、変形可能な形状である下側凹状に形成されているとともに、変形可能な上側に突出する凸形状(「上側凸状」とも称してもよい)に形成されているともいえる。
【0031】
すべり支承本体4では、すべり材8及び端部鋼板74に加えて、変形硬質板76も変形可能な凹形状(或いは、「凸形状」)に形成されている。すべり材8、端部鋼板74及び変形硬質板76は、外周部よりも中央部(中央部分)側が高く位置するように形成され、鉛直荷重を受けた際に変形して、鉛直荷重を外周部側に分散する形状である。すなわち、すべり材8、端部鋼板74とともに変形硬質板76は、例えば、変形可能な形状である上側凸状に形成されている。すべり材8、端部鋼板74及び変形硬質板76は、外周部よりも中央部(中央部分)側がすべり板5から離れる凹状に形成されており、鉛直荷重を受けた際に変形して、前記鉛直荷重を外周部側に分散する。
【0032】
すべり材8、端部鋼板74及び変形硬質板76は、すべり支承本体4が積層方向に沿って荷重を受けない状態で、すべり板5に対して、外周部側よりも中央部側が積層方向側(例えば、下側)に離間する凹状をなすよう形成されている。
具体的には、すべり材8、端部鋼板74及び変形硬質板76は、それぞれの外周部から軸心に向かって漸次上方に高さレベルが高くなる形状に形成されている。
【0033】
なお、積層方向に沿う荷重とは、構造物(上下部構造物の間)に設置されたときにすべり支承本体4に掛かる鉛直荷重である。
【0034】
また、凹状は、湾曲状であってもよく、円錐状であってもよい。そして、凹状に形成される要素、例えば、すべり材8、端部鋼板74及び変形硬質板76は、すべり支承本体4が鉛直荷重を受けると、その鉛直荷重によりフラット形状に変形して、鉛直荷重を中央部側から外周部側に分散させる。具体的には、凹状の端部鋼板74及び変形硬質板76は、上部構造物による荷重を含む鉛直荷重を受けた際に、受けた荷重を直交する全面で受けるように変形して、すべり材8での面圧分布が均等となるように荷重を分散する。
【0035】
すべり材8、端部鋼板74及び変形硬質板76は、半球状であるドーム形状に形成されている。すなわち、すべり材8及び端部鋼板74に加えて、変形硬質板76を中央部に向けて下側に凹状となるように湾曲させている。これにより、すべり材8及び端部鋼板74に加えて、変形硬質板76は、すべり支承本体4が積層方向に沿って荷重を受けた状態において、すべり支承本体4で最も面圧が高く摩耗が激しい中央部の面圧(接触面圧)を下げて摩耗を均等にしている。
【0036】
本実施の形態では、すべり支承本体4は、すべり材8及び端部鋼板74の少なくとも下面に加えて変形硬質板76を、鉛直荷重を受けた際に、変形してすべり材8をフラット形状にするよう形成されている。
【0037】
積層体7では、積層ゴム部6の上下両端部に固定される両端に連結鋼板72と端部鋼板74とがそれぞれ接合されている。
【0038】
積層ゴム部6は、連結鋼板72を介してフランジ部42に結合され、端部鋼板74にはすべり材8が接合されている。連結鋼板72とフランジ部42とは、一体化して構成されてもよい。すべり支承本体4では、すべり材8は端部鋼板74から下面を突出させた状態で、端部鋼板74に嵌合している。
【0039】
積層ゴム部6は、複数のそれぞれ変形可能な弾性板62及び変形硬質板76を交互に積層して一体化した柱状体を有し、この柱状体の外周部分は、弾性部材からなる被覆部66で覆われている。被覆部66は、耐候性に優れたゴム材料等からなり、弾性板62及び変形硬質板76を外部環境から保護するものであり、被覆部66は、弾性板62を構成するゴム材と同時に加硫接着することで一体化してもよい。
【0040】
また、被覆部66は、弾性板62及び変形硬質板76の外周面に接着剤を塗布して貼り合わせて形成されてもよく、巻回された自己融着型のテープで構成されてもよい。積層ゴム部6の上下端部の外周縁部は、それぞれ上下方向に突出して、連結鋼板72及び端部鋼板74のそれぞれの外周を被覆している。積層ゴム部6は、その上下端部に配した連結鋼板72、端部鋼板74に対して接着して一体化されている。
【0041】
図4は、本発明の変形硬質板76の一例を示す斜視図である。
変形硬質板76は、変形可能な板状体であり、所謂、中間鋼板に相当する。変形硬質板76は、例えば、すべり材8、端部鋼板74とともに、板状材の下面側を下方に凹とするドーム形状、言い換えれば、板状材の上面側を上方に凸とするドーム形状に形成されており、中央部に位置決め孔78となる開口部を有する。図4に示すドーム形状の変形硬質板76は、鉛直荷重を受けて変形し、フラット形状になる形状である。
【0042】
変形硬質板76は、外周部76aよりも内周部76bの方が上方に位置し、高さレベルが高い。変形硬質板76は、上部からの荷重により変形し、水平方向にフラットな形状に変形する。変形硬質板76は、変形した際に、下方のすべり材8の全面に均一な荷重が加わるよう変形する。
【0043】
変形硬質板76は、すべり支承本体4が鉛直荷重を受けない状態で、外周部側よりも中央部側が、弾性板62と変形硬質板76との積層方向で、すべり板5から離間する側への湾曲状をなすよう形成されている。そして、変形硬質板76は、すべり支承本体4が鉛直荷重を受ける状態で、フラット形状に変形して、鉛直荷重を前記中央部側から前記外周部側に分散させる。この構成により、変形硬質板76は、鉛直荷重を受けて変形し、下方に伝達される荷重を軽減するものである。なお、すべり板5が変形硬質板76より上側にある場合、変形硬質板76は、外周部76aがすべり板5に当接するように天地を逆にして用いられる。
【0044】
変形硬質板76は、すべり支承本体4が鉛直荷重を受けない状態で、外周部側よりも中央部側が、すべり板5から離間する側へ非平坦状、例えば、図5に示すように、円錐状となるように形成されてもよい。この構成を有する免震装置では、すべり材8、端部鋼板74も同様に非平坦状、例えば、円錐状に形成されてもよく、すべり材8における面圧分布は、変形硬質板76A、端部鋼板74の変形により、中央部に応力が集中することなく、全面に均一に分散される。
【0045】
変形硬質板76は、例えば、鋼板の他、セラミック、プラスチック、繊維強化プラスチック等、金属板であっても非金属板であっても構わない。鋼板の場合は、鋼板をドーム形状に湾曲する形状となるようにプレス等に加工して形成してもよく、プラスチックといった樹脂で構成する場合は、成形により形成してもよい。
【0046】
弾性板62は、変形硬質板76の形状に対応して形成された円環状の板材であり、変形硬質板76の形状に追従して、変形硬質板76と同様の形状を有する。
【0047】
弾性板62としては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、クロロプレンゴム等のゴム材が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの合成樹脂、ゴムと合成樹脂との混合物等で形成してもよい。
【0048】
なお、積層ゴム部6(弾性板62、変形硬質板76及び被覆部66)の中央部には、上下に貫通して製造時に使用される位置決め孔78が設けられているが、この位置決め孔78は、必要に応じて設けられるものであり、設けられていない構成でもよい。位置決め孔78は、空孔のままであっても、弾性体で充填されてもよく、また、鉛プラグ等の減衰プラグを挿入されてもよい。積層ゴム部6の中央部の下端部には、端部鋼板74が取り付けられている。
【0049】
連結鋼板72は、端部鋼板74とともに、弾性板62及び変形硬質板76の積層部分を挟持した状態で配置される。連結鋼板72は、積層体7をフランジ部42に固定する。連結鋼板72は、フランジ部42とともに、すべり支承本体4が鉛直荷重を受けない状態において、フラットな形状に形成されていることが好ましい。
連結鋼板72及びフランジ部42は、上下面がフラットな板状あるいは柱状に形成されている。連結鋼板72は、円盤状或いは円環状に形成され、フランジ部42は、円盤状、多角形板状、円柱状、多角形柱状に形成されている。連結鋼板72は、フランジ部42に密着して積層するように固定されている。
【0050】
端部鋼板74は、低摩擦材であるすべり材8上に配置され、すべり材8をすべり支承本体4において位置決めして保持する。端部鋼板74は、上下面のうちの一方の面、ここでは上下面ともに、すべり材8の形状、つまり、下側凹状に対応して形成されている。端部鋼板74は、本実施の形態では、すべり材8を積層体7に取り付けるものであり、取付金具と称してもよい。
【0051】
端部鋼板74は、積層体7の下部を構成する。端部鋼板74は、下面にすべり材8が取り付けられる。端部鋼板74は、すべり材8を介して、上部構造物(建築物20)及び下部構造物(基礎30)のうちの一方の構造物(基礎30)に固定されるすべり板5に当接して、すべり板5上で摺動可能に配置される。
【0052】
端部鋼板74において、上下面の少なくともすべり材8上に配置される下面74aは、すべり材の形状、つまり、表面形状に対応した形状を有し、すべり材8の変形とともに変形する。
【0053】
端部鋼板74は、下面74a及び上面74bともにすべり材8の形状に対応した形状を有してもよい。これにより、端部鋼板74に上部から懸かる荷重により端部鋼板74全体で中央部が下方に撓み全体でフラットとなるように変形し、下面のすべり材8に伝達する。すなわち、端部鋼板74は、上方からの荷重を受けて下側凹状からフラット形状に変形してすべり材8を下側凹状からフラット形状に変形させる。
【0054】
端部鋼板74は、下面に凹部742を有し、凹部742内の底面(端部鋼板の下面)74aにすべり材8が配置される。
【0055】
端部鋼板74の凹部742内には、すべり材8が嵌合されており、接着剤またはボルト等にて嵌着されている。
【0056】
すべり支承本体4では、すべり材8が端部鋼板74に嵌め込まれた構造により、地震時にすべり支承本体4が水平に変形する際に、すべり材8に生じる水平方向の力を端部鋼板74に伝えることができる。同時に、荷重支持下においてすべり材8が凹部742内に広がることで厚さが薄くなってしまうクリープ現象(コールドフロー)を防止する。
【0057】
凹状部742の底面(端部鋼板74の下面)74aは、すべり材8の上面の湾曲面に対応した形状を有する。
なお、端部鋼板74とすべり材8は、上部からの荷重(主に鉛直荷重であるが、これに水平方向の荷重が加わってもよい)により、端部鋼板の変形とともに、すべり材8がフラット形状に変形するものであれば、互いに接着されていなくてもよい。
【0058】
また、端部鋼板74の凹状部742の底面74aには、中央の位置決め孔78を塞ぐキャッププレート79が取り付けられている。キャッププレート79は、底面74aに設けられた凹みに嵌合して取り付ける。このキャッププレート79は、位置決め孔78を閉塞し、底面74aを連続する面にして、底面74aにおいてすべり材8が密着する面積を増加する、これにより、端部鋼板74にすべり材8を全面的に取り付けることができる。また、キャッププレート79は、すべり材8のコールドフローによる位置決め孔79への入り込みを避けることもできる。
【0059】
本実施の形態では、端部鋼板74は、すべり材8の形状に対応した形状を有し、すべり材8の変形と同様に変形する。
【0060】
すべり材8がドーム形状であれば、端部鋼板74もドーム形状に形成される。端部鋼板74は、すべり材8と同じ形状であり、上方からの荷重(主に鉛直荷重)により変形してフラット形状になるようされていることが好ましい。鉛直荷重がかかると、双方とも同様に変形してフラット形状となる。すべり材8と同じ曲率半径の形状を有していればより好ましい。
【0061】
また、鉛直荷重を含む荷重(例えば、鉛直荷重自体)がかかる場合、端部鋼板74は、端部鋼板74は水平方向に延在する全面で受けて変形し、この変形とともにすべり材8も変形して、中央部が下方に撓み、すべり材8とともにフラット形状となる。このときすべり材8は、均一な面圧分布を有するものとなる。
【0062】
さらに、連結鋼板72、端部鋼板74位及び変形硬質板76には、積層ゴム部6のゴム部分との付着性から、通常は、鋼板を用いるが、ニッケル板、銅板、黄銅板またはニッケルメッキ、銅メッキ、黄銅メッキを施した鋼板を使用できる。
【0063】
フランジ部42は、平断面において矩形状、円盤状、楕円状或いは多角形状等のどのような断面形状で構成されてもよい。本実施の形態ではフランジ部42を、円盤状に形成されたものとして、連結鋼板72、端部鋼板74とともに積層ゴム部6よりも外径が大きい例として説明する。
【0064】
フランジ部42は、建築物(上部構造物)20及び基礎(下部構造物)30のうち、他方の構造物(建築物20)に、連結鋼板72を介して積層体7を固定する。フランジ部42は、外周側に設けられたボルト孔に挿入されるボルトを介して建築物20に接合され、内周側で、周方向で所定間隔を空けて設けられたボルト孔に挿入されるボルトを介して積層体7が接合される。
【0065】
すべり材8は、建築物20と基礎30との間に免震装置1が配設されることによって鉛直荷重を受けた際に、これを分散して、摺動面である底面81において全面的に均等な面圧分布を有するように設けられている。すべり材8は、全面的に均一にすべり板5に当接するものである。
【0066】
すべり材8は、中央部で積層方向下方に窪む凹状に形成されている。すべり材8は、下側に窪む凹状に湾曲した下側凹状の上下面を有し、別言すれば、すべり材8は、上方に突出する凸状に湾曲した上側凸状の上下面を有するとも言える。すべり材8は、ドーム形状を有し、すべり材8の形状に合わせた形状の端部鋼板74に一体に設けられている。
【0067】
すべり材8は、本実施の形態では、PTFE(polytetrafluoroethylene)といったフッ素樹脂等の樹脂により成形されてもよく、ナイロンにより成形されてもよい。また、すべり材8は、フッ素樹脂を端部鋼板74の底面にコーティングしたり、ポリアセタール板を貼付したりして構成されてもよい。
【0068】
すべり材8は、厚み(例えば樹脂厚)tを3~6mm程度とすることが好ましく、4mm、あるいは5mmの厚みを有したドーム形状に形成されてもよい。すべり材8は、厚みtを6mmより大きくしてドーム形状に形成すると、必要以上に厚すぎる形状となりコストが掛かる。また、厚みが大きいドーム形状の滑り材8にすると、中央部に対して、凹部742からのすべり材8の外周部の突出度合いが大きくなる。免震装置1では、上方で支持する建築物が当初設定より軽かったり、また、地震等により上下動したりする等の場合、すべり材8の外周部が先に摩耗する場合がある。
【0069】
これにより、すべり材8の外周側に位置する端部鋼板74の外周部(wで示す部分)がすべり板5側に接近していき、すべり板5と接触する可能性がある。6mm以下であれば、すべり材8の外周部が摩耗しても、端部鋼板74がすべり板5に接触するより先に、中央部がすべり板5に接触して鉛直荷重を伝達する。このようにすべり材8の外周部が中央部より先に摩耗するといった極めて希な状態でも、端部鋼板74の外周部がすべり板5に接触することがない。また、すべり材8の厚さを3mm未満にすると、薄過ぎることで早期に摩滅する可能性があり、耐久性に欠けるという問題がある。例えば、すべり材8は、厚み3mm~6mmとすると、端部鋼板74の外周部の長さwが10mmであっても、鉛直荷重により変形して中央部がすべり板5に当接してフラット形状になる。
【0070】
すべり材8は、すべり板5に当接して摺動する際に、摩擦係数が小さく、好適に摺動可能にする部材であれば、どのように形成されてもよい。すべり材8は一枚で形成されてもいし、複数の薄い板状材を積層してドーム形状に一体的に形成し、端部鋼板74の底面に貼着してもよい。
【0071】
また、すべり材8は、支承本体4において、外周部よりも中央部がすべり板5から離間する凹状に保持され、すべり板5に対し摺動可能に配置される構成であればよい。すべり材8は、例えば、PTFE、ナイロン等の合成樹脂により可撓性を有するフラットなシート状で形成され、端部鋼板74等に取り付けられて、凹状に保持されるように構成されてもよい。この構成では、すべり材8は、鉛直荷重を受けて端部鋼板74等が変形することにより凹状からフラット形状に変形する。この構成によれば、すべり材8自体を凹状等に加工する必要がなくすべり材自体の製作コストの削減を図ることができる。
【0072】
<すべり板5>
すべり板5は、基礎30に固定され、建築物20に固定されるすべり支承本体4が摺動自在に当接する。
【0073】
すべり板5は、すべり支承本体4のすべり材8が摺動可能に当接するすべり面部51を有する。すべり面部51は、すべり支承本体4の外径よりも大きい外径を有する。すべり板5は、補強板53の上面に布設され、補強板53に一体に設けられている。
【0074】
すべり板5(すべり面部51)は、補強板53上にボルト等の固定部材で固定されている。このすべり板5としては、水分等による発錆を考慮してステンレス鋼板が用いられ、特に、表面をバフ研磨等で鏡面状に仕上げられたもの(例えば、♯400仕上げ)が多用されているが、これに限らない。すべり板5は、摺動抵抗の低いフッ素樹脂等でコーティングしたものでもよく、また、クラッド鋼が用いられてもよい。ここで、クラッド鋼とは、鋼材を母材としたクラッドで、ある金属を他の金属で全面に亘り被覆し、且つその境界面が金属組織的に接合しているものをいう。なお、すべり板5は、剛性を保つことができれば、エンジニアリング・プラスチックや非鉄金属等を用いてもよい。
【0075】
なお、補強板53は、本実施の形態では、矩形状に形成されているが、これに限らず、円盤状、楕円形状、或いは、多角形板状でもよい。補強板53は、基礎30の上面に固定される。補強板53は、すべり板5が配設されていない四隅に形成されたボルト孔に、図示しないボルトを挿通して、基礎30に埋設された図示しないベースプレートに止着され、一体的に固定されている。ベースプレートは、例えば、基礎30のコンクリートに上部を露出した状態で埋め込まれてもよい。
【0076】
<免震装置1の動作>
免震装置1では、積層体7における変形硬質板76及び端部鋼板74と、すべり材8とが、変形してフラット形状になるように形成されている。
【0077】
免震装置1は、上部構造物(建築物20)と下部構造物(基礎30)との間に配設され、鉛直荷重が掛かる。
【0078】
鉛直荷重が掛かることにより、積層体7では、変形硬質板76及び端部鋼板74は中央部が下方に撓むように変形する。例えば、変形硬質板76及び端部鋼板74は、フラット形状となるように変形する。変形硬質板76及び端部鋼板74が変形すると、積層ゴム部6では、変形膨出部66aが積層ゴム部6の外周から突出することにより変形硬質板76の変形及びまたは端部鋼板74の変形を吸収して、鉛直荷重はすべり材8において、水平方向に分散されて加わり、すべり材8もフラット形状になるように変形する。
【0079】
これにより、従来の弾性すべり支承においてすべり材に鉛直荷重が掛かった際に、積層体の面圧分布に従い、すべり材の面圧分布において中央部に集中していた応力が分散される。
【0080】
よって、すべり材8における面圧分布は、中央部分に集中することがなく、均一になり摩擦係数を安定させることができる。すなわち、すべり材8において、最も面圧が高く、摩耗が激しい中央部の接触面圧を下げて、中央部と外周部とを含むすべり材8の全面での摩耗を均等にできる。
【0081】
本実施の形態では、すべり材8は、その厚みを3~6mmにして、上面および下面がともに下側に窪む凹状の湾曲面であるドーム形状に形成されている。厚み3~6mmのドーム形状のすべり材とすることで、すべり材8が変形した際に、すべり材8の摺動面に対して全面的に面圧を付与でき、均一に面圧を分布させることができる。
【0082】
また、すべり支承本体4は、すべり板5との摺動によって、すべり材8の中央部が温度上昇により、すり減ることがなく、繰り返し好適に使用することができ、繰り返し性能の低下を防ぎ、その性能を向上させることができる。
【0083】
また、すべり支承本体4の下面を下側凹状で厚さ3mm~6mmのすべり材8により構成され、すべり材8は、端部鋼板74の外周部から端部鋼板74の湾曲面を外面とする球形の半径に沿って1.5mm~3mm突出した状態で配置されている。なお、すべり材8の厚みを規定することにより、予め設定された上方からの荷重を受けられてフラットになるすべり材8を形成できる。
【0084】
建築物20と基礎30との間に設置された免震装置1において、すべり材8が完全にフラットになっておらず、外周部ですべり板5に接触した状態ですべり板5を摺動する場合があったとする。この場合、すべり材8では、すべり板5との摺動により中央部よりも外周部が先に消耗しても、端部鋼板74の端部がすべり板5に接触する前に、すべり材8の中央部がすべり板8に当接して摺動する。
【0085】
よって、端部鋼板74がすべり板5に摺動することがなく、端部鋼板74とすべり板5との摺動によるすべり板5或いは端部鋼板74の損傷を防ぐことができる。
【0086】
本実施の形態の免震装置1によれば、すべり支承本体4においてすべり材8で受ける接触面圧の均一化を図ることできるとともに、すべり材8の外形に対応する許容荷重に対して、その許容荷重の低減を防ぐことができる。また、摺動するすべり材8において局部的な摩耗を防止して耐久性に優れた免震装置となる。
【0087】
なお、本実施の形態の免震装置1では、変形硬質板76、端部鋼板74及びすべり材8を、上方からの荷重を受けてフラット形状に変形するドーム形状として構成としたが、鉛直荷重を受けた際に、すべり材8における面圧分布が均一になればよい。よって、変形硬質板76、端部鋼板74及びすべり材8のうちの少なくとも一つをドーム形状(湾曲形状体)にして、鉛直荷重を受けた際に中央に応力が集中することなく、均一にすることができる。
【0088】
図6に示す免震装置1Aは、免震装置1の構成において、変形硬質板76Aをフラット形状にした構成である。免震装置1Aは、フラット形状の変形硬質板76Aと、湾曲して設けられたすべり材8と、湾曲して設けられた(上側に突出する凸形状の)端部鋼板74とを有する。すなわち、変形硬質板76Aの外周部761aと内周部(中央部)761bとの高さレベルは同じであり、すべり材8と端部鋼板74の外周部と内周部の高さレベルが内周部の方が、すべり板5から離間する側に突出した形状である。この構成により、免震装置1Aでは、積層方向に沿う荷重、例えば、鉛直荷重を受けた際に、すべり材8における面圧分布が均一になるようにしてもよい。
【0089】
また、図7に示す免震装置1Bでは、免震装置1の構成において、複数の変形硬質板76の一部をフラット形状の硬質板としている。これにより、免震装置1Bでは、積層方向に沿う荷重としての鉛直荷重を受けた際に下方に荷重を伝達してすべり材8における面圧分布が均一になるようにしてもよい。
【0090】
免震装置1Bは、すべり支承本体4Bにおいて積層体7Bを構成する積層する複数の変形硬質板として、湾曲した変形硬質板76と、フラット形状の変形硬質板76Bとの双方を有する。免震装置1Bは、更に、湾曲して設けられたすべり材(例えば、ドーム形状のすべり材)8と、湾曲して設けられた(上側に突出する凸形状、例えばドーム形状の)端部鋼板74とを有した複合形状となっている。免震装置1Bにおける複数の変形硬質板の構成は、積層ゴム部6内において、上部にフラット形状の変形硬質板76Bが積層(図では3枚)され、下部に、下側凹状の変形硬質板76が積層(図では3枚)されている。
【0091】
これにより、免震装置1Bを建築物20と基礎30との間に配設して、すべり支承本体4が、上方から積層方向に沿う荷重としての鉛直荷重を受けると、その荷重は積層ゴム部6とともにフラットな変形硬質板76Bで受ける。そして荷重が下方に伝達されると、変形硬質板76Bから下方の変形硬質板76に伝達されて変形し、すべり材8における面圧分布が均一になり、実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。
【0092】
また、実施の形態及び変形例1、2では、すべり板5が基礎側に設けられ、支承本体4が建築物側にあるものとして説明したが、これに限らず、例えば、図8の免震装置1Cに示すように、すべり板5を建築物側に設け、支承本体4Cを基礎側に設けてもよい。なお、図8では、図2に示す本実施の形態の免震装置と同様の構成については、同名称同符号を付して説明は省略する。
【0093】
図8では、免震装置1Cでは、すべり板5が補強板53に一体に設けられ、建築物(下部構造物)20側に固定されている。また、すべり板5を摺動するすべり支承本体4Cが基礎(下部構造物)30に固定されている。
【0094】
なお、支承本体4Cは、支承本体4の天地を逆にした構成であり、支承本体4と同様に、積層体7Cと、すべり材8Cとを有する。積層体7Cでは、積層ゴム部6の上下両端部に固定される両端に端部鋼板74と連結鋼板72とがそれぞれ接合されている。積層ゴム部6は、連結鋼板72を介してフランジ部42に結合され、端部鋼板74にはすべり材8Cが接合されている。
【0095】
すべり支承本体4Cでは、例えば、すべり材8C、端部鋼板74及び変形硬質板76Cも変形可能な凹形状(或いは、「凸形状」)に形成されている。
すべり材8Cは、外周部よりも中央部がすべり板5から離間する凹状に保持され、すべり板5に対し摺動可能に配置されている。
【0096】
このように構成されるすべり材8Cは、端部鋼板74及び変形硬質板76Cとともに、外周部よりも中央部(中央部分)側が低く位置するように下側に窪む凹形状に形成されている。すべり材8C、端部鋼板74及び変形硬質板76Cは、鉛直荷重を受けた際に変形して、鉛直荷重を外周部側に分散する形状である。端部鋼板74の上面の凹部742内の面(端部鋼板74の上面)74aにすべり材8が配置されている。
【0097】
そして、支承本体4Cは、外周部よりも中央部がすべり板5から離間する凹状に保持され、すべり板5に対し摺動可能に配置されたすべり材8Cを有する。すべり材8Cは、鉛直荷重を受けて凹状からフラット形状に変形する。例えば、支承本体4Cでは、すべり材8Cの上面81Cを介して荷重を中央部側から外周部側に均一となるように分散させる。これにより、各実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0098】
なお、本実施の形態において、すべり材8、8C、端部鋼板74、変形硬質板76、76A、76Cのそれぞれの凹状は、鉛直荷重を受けたすべり材8、8Cをフラット形状に変形させるものであれば、画一的な形状ではなく、異なる曲率で形成されてもよい。
【0099】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0100】
以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記免震装置1、1A、1B、1Cの構成や各部分の形状についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明に係る免震装置は、弾性すべり支承の機能を備えるとともに、想定外の大地震より更に大きな地震動に対して免震効果でき、巨大地震動が発生する恐れがあり、設置スペースが小さい免震層に配置可能な免震装置として有用である。
【符号の説明】
【0102】
1、1A、1B、1C 免震装置
4 すべり支承本体(支承本体)
5 すべり板
6 積層ゴム部
7 積層体
8、8C すべり材
20 建築物(上部構造物)
30 基礎(下部構造物)
42 フランジ部
51 すべり面部
53 補強板
62 弾性板
66 被覆部
66a 変形膨出部
72 連結鋼板
74 端部鋼板(保持部材)
74a 下面
76、76A、76B、76C 変形硬質板(硬質板)
76a 外周部
76b 内周部(中央部)
78 位置決め孔
79 キャッププレート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8