(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124240
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】自立連系システム及びパワーコンディショナ
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20230830BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20230830BHJP
【FI】
H02J3/38 180
H02J3/38 130
H02M7/48 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027888
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000217491
【氏名又は名称】ダイヤゼブラ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】國分 友輝
(72)【発明者】
【氏名】アリプル ジャベル
【テーマコード(参考)】
5G066
5H770
【Fターム(参考)】
5G066HA06
5G066HA11
5G066HB06
5G066HB09
5G066JB03
5H770BA11
5H770CA01
5H770CA05
5H770CA06
5H770DA22
5H770DA30
5H770LA07Y
5H770LB07
(57)【要約】
【課題】複数のパワーコンディショナによる自立運転を相互間での情報通信をすることなく実現する。
【解決手段】自立連系システムは、自立運転が可能に構成された第1のパワーコンディショナPCS1と、連系端子P22の電圧及び周波数にしたがって連系端子P22の出力を制御するように構成された第2のパワーコンディショナとを備える。第1のパワーコンディショナPCS1は、蓄電手段BTの充電の可不可状態を検知する検知手段と、自立端子P13の電圧または周波数の少なくとも一方を制御する制御手段とを備える。制御手段は、蓄電手段BTが充電不可状態にあることが検知された場合に、自立端子P13の周波数を系統連系規定の規格範囲外に変化させて、第2のパワーコンディショナPCS2の出力を停止させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充放電が可能な蓄電手段を含む第1の分散型電源が接続される第1の電源端子と、負荷に接続される自立端子とを有し、前記負荷を電力系統から切り離した状態にして前記自立端子を介して前記第1の分散型電源から供給された電力を前記負荷に供給する自立運転が可能に構成された第1のパワーコンディショナと、
第2の分散型電源が接続される第2の電源端子と、前記自立端子及び前記負荷に接続される連系端子とを有し、前記連系端子の電圧及び周波数にしたがって当該連系端子の出力を制御するように構成された第2のパワーコンディショナとを備え、
前記第1のパワーコンディショナは、
前記蓄電手段の充電の可不可状態を検知する検知手段と、
前記自立端子の電圧または周波数の少なくとも一方を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記蓄電手段が充電不可状態にあることが検知された場合に、前記自立端子の周波数を系統連系規定の規格範囲外に変化させて、前記第2のパワーコンディショナの出力を停止させる
自立連系システム。
【請求項2】
前記第1のパワーコンディショナの制御手段は、前記自立端子の周波数を、前記系統連系規定の規格範囲外である第1の周波数に変化させた後に、前記第1の周波数より前記系統連系規定からのずれ幅が小さくかつ前記第2のパワーコンディショナが相互接続動作をしない第2の周波数に変化させる
請求項1に記載の自立連系システム。
【請求項3】
前記検知手段は、前記蓄電手段の充電量を取得し、前記蓄電手段の充電量を検知するするように構成され、
前記第1のパワーコンディショナの制御手段は、
前記検知手段で取得された前記蓄電手段の充電量が所定の第1閾値以上となったことが検知された場合に、前記蓄電手段が充電不可状態にあると判断して前記自立端子の周波数を系統連系規定の範囲外に変化させる第1工程と、
前記第1工程の後に、前記検知手段で取得された前記蓄電手段の充電量が前記第1閾値より小さい所定の第2閾値未満となった場合に、前記自立端子の周波数を前記系統連系規定の規格範囲内に戻す第2工程を実行する
請求項1または2に記載の自立連系システム。
【請求項4】
充放電が可能な蓄電手段を含む第1の分散型電源の供給電力を受けて、電線に接続された負荷に供給するパワーコンディショナであって、
前記負荷には、前記電線の電圧及び周波数にしたがって前記電線への出力電力を制御するように構成された系統連系型パワーコンディショナが前記電線を介して接続されており、
前記パワーコンディショナは、
前記第1の分散型電源が接続される第1の電源端子と、前記電線に接続される自立端子とを有し、前記負荷を電力系統から切り離した状態にして前記自立端子を介して前記第1の分散型電源から供給された電力を前記負荷に供給する自立運転が可能に構成され、
前記蓄電手段の充電の可不可状態を検知する検知手段と、
前記自立端子の電圧または周波数の少なくとも一方を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記蓄電手段が充電不可状態にあることが検知された場合に、前記自立端子の周波数を系統連系規定の規格範囲外に変化させて、前記系統連系型パワーコンディショナの出力を停止させる
パワーコンディショナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電手段及び蓄電手段等の分散型電源と電力変換装置とを備えた自立連系システム及びパワーコンディショナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電手段を活用した発電システムにおいて、停電等の場合に、電力系統から切り離した状態でパワーコンディショナを動作させ、負荷に電源を供給するいわゆる自立運転が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、電力系統において停電が発生していない場合に電力系統から供給される交流電力を負荷に供給する連系運転を行い、電力系統において停電が発生した場合に負荷と電力系統とを接続しない状態にして直流電源からの供給電力を負荷に供給する自立運転を行う機能を有する系統連系インバータ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、自立運転機能を有するパワーコンディショナ(以下、「自立型PCS」という)から自立運転時における負荷に対する供給能力を増強したり、自立型PCSのみでは出力電力もしくは太陽光発電手段の発電量が不足する場合のために、他の分散型電源に接続されたパワーコンディショナ(「系統連系型PCS」という)を接続して電力を追加供給するニーズがある。
【0006】
しかしながら、系統連系型PCSからの供給電力が負荷での消費電力を超過している状態が継続した場合に、自立型PCSの蓄電手段が満充電状態となることが想定される。そうすると、自立型PCSのバス電圧が上昇する等に起因して不具合が発生したり、自立型PCS及び系統連系型PCSの両パワーコンディショナが停止状態となり、負荷に電源供給ができなくなるおそれがある。
【0007】
これに対し、例えば、系統連系型PCSにおいて、自立型PCSの蓄電手段の状態を監視し、系統連系型PCSの出力電力量を調整する方法がある。しかしながら、系統連系型PCSにおいて、追加の出力制御機能を設ける必要があるという問題がある。
【0008】
上記問題に鑑み、本発明は、複数のパワーコンディショナによる自立運転を、複数のパワーコンディショナ間における情報のやりとりをすることなく実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様では、自立連系システムを対象として、充放電が可能な蓄電手段を含む第1の分散型電源が接続される第1の電源端子と、負荷に接続される自立端子とを有し、前記負荷を電力系統から切り離した状態にして前記自立端子を介して前記第1の分散型電源から供給された電力を前記負荷に供給する自立運転が可能に構成された第1のパワーコンディショナと、第2の分散型電源が接続される第2の電源端子と、前記自立端子及び前記負荷に接続される連系端子とを有し、前記連系端子の電圧及び周波数にしたがって当該連系端子の出力を制御するように構成された第2のパワーコンディショナとを備え、前記第1のパワーコンディショナは、前記蓄電手段の充電の可不可状態を検知する検知手段と、前記自立端子の電圧または周波数の少なくとも一方を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記蓄電手段が充電不可状態にあることが検知された場合に、前記自立端子の周波数を系統連系規定の規格範囲外に変化させて、前記第2のパワーコンディショナの出力を停止させる、構成とした。
【0010】
上記の第1態様の構成によると、第1のパワーコンディショナは、蓄電手段が充電不可状態の場合に、第2のパワーコンディショナとの間で情報のやり取りをすることなく、第2のパワーコンディショナの出力を停止させることができる。これにより、例えば、蓄電手段が満充電にもかかわらず、第2のパワーコンディショナからの放電電力が第1のパワーコンディショナに給電され続けて、自立連系システムの不具合が発生したり、負荷への電源供給が停止されるといった事態を回避することができる。言い換えると、本態様の自立連系システムでは、複数のパワーコンディショナとの間における情報のやり取りをすることなく、複数のパワーコンディショナによる自立運転を実現することができる。
【0011】
上記態様において、前記第1のパワーコンディショナの制御手段は、前記自立端子の周波数を、前記系統連系規定の規格範囲外である第1周波数に変化させた後に、前記第1周波数より小さくかつ第2のパワーコンディショナが相互接続動作に復帰しない第2周波数に変化させる、としてもよい。
【0012】
この構成によると、第1のパワーコンディショナの制御手段は、第2のパワーコンディショナが相互接続動作に復帰しない状態を継続させるのに際して、第1周波数より小さい第2周波数に変化させるので、負荷への影響をできるだけ与えないようにすることができる。
【0013】
上記態様において、前記検知手段は、前記蓄電手段の充電量を取得し、前記蓄電手段の充電量を検知するするように構成され、前記第1のパワーコンディショナの制御手段は、前記検知手段で取得された前記蓄電手段の充電量が所定の第1閾値以上となったことが検知された場合に、前記蓄電手段が充電不可状態にあると判断して前記自立端子の周波数を系統連系規定の範囲外に変化させる第1工程と、前記第1工程の後に、前記検知手段で取得された前記蓄電手段の充電量が前記第1閾値より小さい所定の第2閾値未満となった場合に、前記自立端子の周波数を前記系統連系規定の規格範囲内に戻す第2工程を実行する、としてもよい。
【0014】
この構成によると、第1のパワーコンディショナの蓄電手段が充電可能な状態になった場合には、その充電を再開することができるので、第2のパワーコンディショナの発電電力を有効に活用することができる。
【0015】
本発明の第2態様では、充放電が可能な蓄電手段を含む第1の分散型電源の供給電力を受けて、電線に接続された負荷に供給するパワーコンディショナを対象として、前記負荷には、前記電線の電圧及び周波数にしたがって前記電線への出力電力を制御するように構成された系統連系型パワーコンディショナが前記電線を介して接続されており、前記パワーコンディショナは、前記第1の分散型電源が接続される第1の電源端子と、前記電線に接続される自立端子とを有し、前記負荷を電力系統から切り離した状態にして前記自立端子を介して前記第1の分散型電源から供給された電力を前記負荷に供給する自立運転が可能に構成され、前記蓄電手段の充電の可不可状態を検知する検知手段と、前記自立端子の電圧または周波数の少なくとも一方を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記蓄電手段が充電不可状態にあることが検知された場合に、前記自立端子の周波数を系統連系規定の規格範囲外に変化させて、前記系統連系型パワーコンディショナの出力を停止させる、構成とした。
【0016】
上記第2態様のパワーコンディショナは、第1態様の場合と同様に、蓄電手段が充電不可状態の場合に、系統連系型パワーコンディショナとの間で情報のやり取りをすることなく、系統連系型パワーコンディショナの出力を停止させることができる。これにより、例えば、蓄電手段が満充電にもかかわらず、系統連系型パワーコンディショナからの放電電力が継続して入力されることによる不具合が発生したり、負荷への電源供給が停止されるといった事態を回避することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、複数のパワーコンディショナによる自立運転を、複数のパワーコンディショナ間における情報のやりとりをすることなく実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係る自立連系システムの全体構成を示した図
【
図2】自立連系システムの動作例を示すフローチャート
【
図3】自立連系システムの動作例を示すタイミングチャート
【
図5】自立連系システムの他の動作例を示すタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用範囲あるいはその用途を制限することを意図するものではない。
【0020】
図1は実施形態に係る自立連系システムの構成例を示した図である。
【0021】
図1に示すように、自立連系システムは、第1の分散型電源システム10と、第2の分散型電源システム20とを備える。
【0022】
-第1の分散型電源システム-
第1の分散型電源システム10は、太陽光発電手段PV1と、蓄電池等の蓄電手段BTと、第1のパワーコンディショナPCS1とを備える。太陽光発電手段PV1及び蓄電手段BTは、第1の分散型電源の一例である。
【0023】
第1のパワーコンディショナPCS1は、系統連系運転及び自立運転が可能に構成されている。
【0024】
本開示において、「系統連系運転」とは、電力系統から供給される交流電力を負荷に供給する運転状態を指す。また、後述する「系統連系モード」とは、連系端子の電圧と周波数にしたがって、分散型電源から最大電力を取り出して出力するように制御する動作モードである。
【0025】
また、「自立運転」とは、停電等が発生して電力系統からの電力の供給が停止した場合に、負荷と電力系統との接続を切り離した状態にして分散型電源からの供給電力を負荷に供給することを指す。また、後述する「自立モード」とは、自立運転時に、自立端子を介した充放電が可能な状態にする動作モードである。
【0026】
第1のパワーコンディショナPCS1には、太陽光発電手段PV1が接続される入力端子P11と、蓄電手段BTが接続される入出力端子P12と、負荷7に接続される自立端子P13とが設けられている。入力端子P11及び入出力端子P12は、第1の電源端子の一例である。
【0027】
第1のパワーコンディショナPCS1は、自立モードで動作する場合に、後述する制御部の制御に基づいて、自立端子P13の電圧と周波数を確定させるように構成されている。また、第1のパワーコンディショナPCS1は、自立モードにおいて、自立端子に入出力される電力バランスを維持するために、太陽光発電手段PV1及び/または蓄電手段BTから入力された電力を自立端子P13を介して放電させたり、自立端子P13からの入力された電力を蓄電手段BTに充電させたりする。
【0028】
第1のパワーコンディショナPCS1は、蓄電手段BTの充電の可不可状態(充電可/充電不可)を検知する検知手段と、自立端子の電圧または周波数の少なくとも一方を制御する制御手段とを備える。
【0029】
図1には、第1のパワーコンディショナPCS1の具体的な構成例を示す。ただし、第1のパワーコンディショナPCS1の構成は、
図1の構成に限定されない。
【0030】
図1の例において、第1のパワーコンディショナPCS1は、2つのDC/DCコンバータ11,12と、双方向型のDC/ACインバータ13(以下、単に「インバータ13」という)と、制御部14とを備える。
【0031】
DC/DCコンバータ11は、入力端子P11を介して太陽光発電手段PV1に接続される。DC/DCコンバータ11は、太陽光発電手段PV1で発電された電力を受け、発電電圧に応じて昇圧または降圧し、DCバス15を介してインバータ13に出力する。DC/DCコンバータ11は、太陽光発電手段PV1から取り出す電力量を制御することが可能に構成され、例えば、最大動作点追従制御が可能に構成されている。この最大動作点追従制御を行うことで、太陽光発電手段PV1から最大電力を取り出すことができる。なお、DC/DCコンバータ11は、従来から知られた構成を用いることができるので、ここでは詳細な回路構成の説明を省略する。
【0032】
DC/DCコンバータ12は、双方向型のDC/DCコンバータであり、入出力端子P12を介して蓄電手段BTに接続される。DC/DCコンバータ12は、制御部14から受信した充放電制御信号に基づいて蓄電手段BTの充放電を制御する。蓄電手段BTの放電電力は、DCバス15を介してインバータ13に出力される。また、充電の際には、DCバス15を介してDC/DCコンバータ12に入力された電力が蓄電手段BTに充電される。なお、DC/DCコンバータ12は、従来から知られた構成を用いることができるので、ここでは詳細な回路構成の説明を省略する。
【0033】
インバータ13は、双方向型のインバータである。放電の際には、DC/DCコンバータ11,12からの出力電力が足し合わされてインバータ33に入力され、直流交流変換されて、自立端子P13または電力系統に接続される連系端子(図示省略)から出力される。また、充電の際には、自立端子P13または連系端子からインバータに入力された電力が交流直流変換されて、DC/DCコンバータ12を介して蓄電手段BTに充電される。なお、インバータ13には、従来から知られた構成を用いることができるので、ここでは詳細な回路構成の説明を省略する。
【0034】
制御部14は、例えばマイコンに記憶されたプログラムで実現されており、第1のパワーコンディショナPCS1の各部を制御する機能を備える。また、制御部14は、外部から設定された各種設定情報、CTセンサ(図示省略)で検出された電流値及び/または蓄電手段BTから取得された前述の蓄電情報等の各種情報を受信して一元管理する機能を備える。
【0035】
この例では、制御部14は、取得・管理している情報に基づいて、蓄電手段の充電の可不可状態を検知する検知手段としての機能を備える。例えば、前記取得対象の情報として、蓄電手段BTの最大充電電力(スペック)を超過したことを示す情報、蓄電手段BTの現在の蓄電量を示す情報、及び/または、蓄電手段BTが放電していることを示す情報を取得する。そしてこれらの取得情報に基づいて、蓄電手段BTの充電可不可状態を検知する。なお、蓄電手段BTの充電可不可状態の検知方法は、上記の方法に限定されるものではなく、例えば、専用のセンサ等を設け、そのセンサからの入力情報に基づいて充電可不可状態を検知してもよい。また、制御部14とは独立して検知手段の機能を実現する構成を設けてもよい。
【0036】
また、制御部14は、第1のパワーコンディショナPCS1の出力、すなわち、自立端子P13及び系統連系端子(図示省略)の電圧及び/または周波数を設定する制御手段としての機能を備える。
【0037】
例えば、制御部14は、通常運転状態(系統連系モードでの動作)において、系統連系規定にしたがって第1のパワーコンディショナPCS1の出力を所定の電圧及び所定の周波数(例えば、60.0Hz)に設定する。また、例えば、制御部14は、蓄電手段が充電不可状態にあることが検知された場合に、自立端子P13の周波数を系統連系規定の規格範囲外に変化させる。制御部14による自立端子P13の周波数制御については、後ほど具体例を挙げて説明する。
【0038】
-第2の分散型電源システム-
第2の分散型電源システム20は、太陽光発電手段PV2と、第2のパワーコンディショナPCS2とを備える。第2のパワーコンディショナPCS2は、系統連系運転が可能に構成されており、系統連系型パワーコンディショナの一例である。また、太陽光発電手段PV2は、第2の分散型電源の一例である。
【0039】
第2のパワーコンディショナPCS2には、太陽光発電手段PV2が接続される入力端子P21と、負荷7に接続される連系端子P22とが設けられている。入力端子P21は、第2の電源端子の一例である。
【0040】
図1には、第2のパワーコンディショナPCS2の具体的な構成例を示す。ただし、第2のパワーコンディショナPCS2の構成は、
図1の構成に限定されない。
【0041】
図2の例において、第2のパワーコンディショナPCS2は、DC/DCコンバータ21と、DC/ACインバータ23(以下、単に「インバータ23」という)と、制御部24とを備える。
【0042】
DC/DCコンバータ21は、入力端子P21を介して太陽光発電手段PV2に接続される。DC/DCコンバータ21は、太陽光発電手段PV2で発電された電力を受け、発電電圧に応じて昇圧または降圧し、DCバス25を介してインバータ23に出力する。DC/DCコンバータ21は、太陽光発電手段PV2から取り出す電力量を制御することが可能に構成され、例えば、最大動作点追従制御が可能に構成されている。この最大動作点追従制御を行うことで、太陽光発電手段PV2から最大電力を取り出すことができる。なお、DC/DCコンバータ21は、従来から知られた構成を用いることができるので、ここでは詳細な回路構成の説明を省略する。
【0043】
インバータ23は、DC/DCコンバータ21からの出力電力を入力として受け、直流交流変換して連系端子P22から出力する。なお、インバータ23には、従来から知られた構成を用いることができるので、ここでは詳細な回路構成の説明を省略する。
【0044】
制御部24は、例えばマイコンに記憶されたプログラムで実現されており、第2のパワーコンディショナPCS2の各部を制御する機能を備える。また、制御部24は、外部から設定された各種設定情報やCTセンサ(図示省略)で検出された電流値等の各種情報を受信して一元管理する機能を備える。
【0045】
具体的には、制御部24は、通常運転時には、系統連系モードで動作するように構成されており、系統連系モードでは、連系端子P22の電圧及び周波数にしたがって連系端子P22の出力(電圧及び周波数)が系統連系規定の規格範囲内になるように制御する。
【0046】
-自立連系システムの動作例(1)-
次に、
図2及び
図3を参照しつつ、自立連系システムの動作について説明する。
【0047】
(ステップS11)
この例では、第1のパワーコンディショナPCS1及び第2のパワーコンディショナPCS2の電源がONされ、ステップS11(
図4の時刻t10)において、停電等が発生していない通常運転をしているものとする。言い換えると、ステップS11において、第1のパワーコンディショナPCS1及び第2のパワーコンディショナPCS2は、系統連系モードで動作しているものとする。通常運転では、電力系統から供給される交流電力が負荷7に供給される。
【0048】
(ステップS12)
次のステップS12では、停電等により電力系統からの電源供給が遮断されているかどうかが判定される。具体的な判定方法は、特に限定されず、従来から知られている方法を使用することができる。
【0049】
ステップS12において、電力系統からの電源供給が遮断されていない場合(S12でNO)、通常運転が継続される。一方で、停電等により電力系統からの電源供給が遮断された場合(S12でYES)、フローはステップS13に進む。
【0050】
(ステップS13)
ステップS13において、第1のパワーコンディショナPCS1は、系統連系モードから自立モードに移行し、自立運転に切り替わる(
図4の時刻t11)。言い換えると、第1のパワーコンディショナPCS1は、電力系統と負荷7との接続を切り離して、第1の分散型電源(太陽光発電手段PV1または蓄電手段BT)からの供給電力を自立端子P13を介して負荷7に供給する。言い換えると、第1のパワーコンディショナPCS1は、負荷に供給する電力が停止しないように動作する。
【0051】
時刻t12では、第2のパワーコンディショナPCS2が立ち上がり、連系端子P22の電圧及び周波数が系統連系時と同様の状態になる。そうすると、第2のパワーコンディショナPCS2は、自動的に系統連系モードでの動作を再開する。この例では、第2のパワーコンディショナPCS2からの供給電力が負荷7での消費電力よりも大きいものとする。そうすると、自立端子P13を介して差分電力が入力され、蓄電手段BTへの充電が開始される。
図3では、上から3段目に蓄電手段BTの充電量Rを図示しており、時刻t12から充電量R(初期値=R0とする)が上昇し始める。
【0052】
(ステップS14)
ステップ14では、蓄電手段BTへの充電の可不可状態が判定される。例えば、蓄電手段BTが満充電に近い状態である場合や異常等により第1のパワーコンディショナPCS1が自立端子P13から入力される充電電力を引き込めない状態にある場合、充電不可と判定される。この例では、制御部14は、蓄電手段BTの充電量が所定の閾値Rt1を超えると充電不可と判定するものとする。所定の閾値Rt1は、任意に設定することができ、例えば、満充電よりも少しマージンを持たせた値に設定される。
【0053】
ステップS14において、充電可能と判定された場合、第1のパワーコンディショナPCS1及び第2のパワーコンディショナPCS2では、系統連系モードでの動作が継続される。そして、時刻t13において、蓄電手段BTの充電量が閾値Rt1を超えると、制御部14において、蓄電手段BTが充電不可状態と判定され(S14で不可判定)、フローは次のステップS15に進む。
【0054】
(ステップS15)
ステップS15において、制御部14は、自立端子P13の周波数を系統連系規定の規格範囲外に変化させて、第2のパワーコンディショナPCS2の出力を停止させる処理を行う。ステップS14及びステップS15での処理は、第1工程の一例である。
【0055】
具体的には、例えば、制御部14は、
図5に示す系統連系規定(系統連系規程)の保護協調に対して、自立端子P13の周波数を規格範囲外に変化させる。例えば、制御部14は、自立端子P13の周波数fを運転継続の上限周波数(例えば、61Hz)よりも1Hz程度大きい周波数f1に設定し、その継続時間tx(tx=t14-t13)を規定時間(0.06秒)よりも長く設定する。このとき、例えば、制御部14は、自立端子P13の周波数fの変化の傾きを+2Hzに設定する。
【0056】
第2のパワーコンディショナPCS2において、連系端子P22の周波数が規定を外れたことが検知されると、制御部24は、インバータ23の出力を停止させる(時刻t14)。周波数f1は、第1の周波数の一例である。
【0057】
さらに、制御部14は、第2のパワーコンディショナPCS2を停止させ続けることを目的として、自立端子P13の周波数fを、周波数f1に変化させた後に、第2のパワーコンディショナPCS2が復帰動作をしない周波数f2(f2<f1)に変化させる。周波数f2は、任意に設定できるが、例えば、「f2=規定の定格上限値+ΔF」に設定される。例えば、第2のパワーコンディショナPCS2は、規定の定格周波数値よりもΔF(例えば、ΔF=0.1Hz)よりも大きい場合には、相互接続動作(いわゆる復帰動作)を行わないように構成されている。周波数f2は、第2の周波数の一例である。
【0058】
(ステップS16)
ステップ16では、第2のパワーコンディショナPCS2が放電可能な状態になっているかどうかが判定される。放電可能かどうかは、例えば、蓄電手段BTにおいて第2のパワーコンディショナPCS2の放電電力を充電できるかどうか、または、第2のパワーコンディショナPCS2の放電電力が負荷で消費されるかどうか、に基づいて判断することができる。具体的には、制御部14は、例えば、バス電圧に基づいて放電可能かどうかを判断することができる。例えば、制御部14は、バス電圧が下がれば供給電力不足と判断して供給量を増やし、バス電圧が上がれば供給過剰と判断して供給量を下げるように制御する。第2のパワーコンディショナPCS2についても同様である。この例では、第1のパワーコンディショナPCS1の制御部14は、蓄電手段BTの充電量が所定の閾値Rt2未満となった場合に、第2のパワーコンディショナPCS2が放電可能な状態になっていると判定し、フローは次のステップS17に進む。
【0059】
(ステップS17)
ステップS17において、第1のパワーコンディショナPCS1の制御部14は、自立端子P13の周波数を系統連系規定の規格範囲内に戻す(時刻t15)。
【0060】
連系端子P22の周波数が系統連系規定の規格範囲内に戻ると、制御部24は、連系端子P22の周波数の検知結果に基づいて、系統連系モードでの動作に移行し、インバータ23の出力を再開させる(時刻t15)。そして、第1のパワーコンディショナPCS1では、蓄電手段BTの充電が再開される。このように、蓄電手段BTが充電可能な状態になった場合には、その充電を再開することができるので、第2のパワーコンディショナPCS2の発電電力を有効に活用することができる。ステップS16及びステップS17での処理は、第2工程の一例である。
【0061】
そして、電力系統が復帰するまでの間、ステップS14からステップS17の動作が繰り返される。
【0062】
以上のように、本実施形態によると、制御部14は、蓄電手段BTの蓄電量が蓄電手段が充電不可状態にあることが検知された場合に、自立端子P13の周波数fを系統連系規定の規格範囲外に変化させて、第2のパワーコンディショナPCS2の出力を停止させる。これにより、第1のパワーコンディショナPCS1と第2のパワーコンディショナPCS2との間で情報のやり取りをすることなく、複数のパワーコンディショナPCS1,PCS2による自立運転を実現することができる。言い換えると、本開示の自立連系システムは、第2のパワーコンディショナPSC2に新たな機能を追加する必要がなく、既存のシステムに第1のパワーコンディショナPSC1を追加するだけでよいという特徴がある。
【0063】
また、制御部14は、第2のパワーコンディショナPCS2が相互接続動作に復帰しない状態を継続させるために、自立端子P13の周波数fを周波数f1より小さい周波数f2に変化させる。これにより、負荷7への影響をできるだけ与えないようにすることができる。
【0064】
また、系統連系規程の動作に加えて、第2のパワーコンディショナPCS2の復帰前の周波数設定を実施することで、第1のパワーコンディショナPCS1の蓄電手段BTの放電動作時間を確保することができる。これにより、蓄電手段BTは放電された状態に至るので、第2のパワーコンディショナPCS2は、運転復帰後にチャタリングを起こすことなく、蓄電手段BTへの電力供給が可能になる。
【0065】
-自立連系システムの動作例(2)-
次に、自立連系システムの動作の他の例について、
図2及び
図5を参照しつつ説明する。なお、ここでは、「自立連系システムの動作例(1)」(以下、単に「動作例1」という)との相違点を中心に説明する。具体的に、本動作例では、処理の全体フローは、
図2と同じである。一方で、ステップS14における充電可不可状態の判定方法、及び、ステップS15における出力周波数の調整方法が、動作例1と異なっている。
【0066】
なお、説明の便宜上、
図5において、
図3と共通または対応する要素については、同じ符号を付して説明を省略する場合がある。
【0067】
(ステップS14)
この例では、ステップ14において、DCバス15のバス電圧Vbに基づいて蓄電手段BTへの充電の可不可状態が判定される。具体的には、動作例1と同様に、時刻t12から充電量R(初期値=R0とする)が上昇し始める。その後、蓄電手段BT充電量Rが満充電状態R3になると、バス電圧Vbが上昇し始める(時刻t33)。この例では、制御部14は、バス電圧Vbが所定の閾値Vtを超えると充電不可と判定するものとする。所定の閾値Vtは、任意に設定することができる。
【0068】
ステップS14において、充電可能と判定された場合、第1のパワーコンディショナPCS1及び第2のパワーコンディショナPCS2では、系統連系モードでの動作が継続される。そして、時刻t34において、バス電圧Vbが閾値Vtを超えると、制御部14において、蓄電手段BTが充電不可状態と判定され(S14で不可判定)、フローは次のステップS15に進む。
【0069】
(ステップS15)
この例では、動作例1と同様に、制御部14は、自立端子P13の周波数を系統連系規定の規格範囲外に変化させるが、その変化の方向が異なる例を示している。具体的に、制御部14は、自立端子P13の周波数fを運転継続の下限周波数(例えば、60Hz)よりも1Hz程度小さい周波数f3に設定し、その継続時間tx(tx=t14-t34)を規定時間(0.06秒)よりも長く設定する。このとき、例えば、制御部14は、自立端子P13の周波数fの変化の傾きを-2Hzに設定する。
【0070】
第2のパワーコンディショナPCS2において、連系端子P22の周波数が規定を外れたことが検知されると、制御部24は、インバータ23の出力を停止させる(時刻t14)。
【0071】
さらに、制御部14は、第2のパワーコンディショナPCS2を停止させ続けることを目的として、自立端子P13の周波数fを、周波数f3に変化させた後に、第2のパワーコンディショナPCS2が復帰動作をしない周波数f4に変化させる。ここで、周波数f4は、周波数f3よりも系統連系規定からのずれ幅が小さい周波数である。周波数f4は、任意に設定できるが、例えば、「f4=規定の定格上限値+ΔF」に設定される。動作例1と同様に、例えば、第2のパワーコンディショナPCS2は、規定の定格周波数値よりもΔF(例えば、ΔF=0.1Hz)よりも大きい場合には、相互接続動作(いわゆる復帰動作)を行わないように設定されている。
【0072】
この例においても、制御部14は、蓄電手段BTの蓄電量が蓄電手段が充電不可状態にあることが検知された場合に、自立端子P13の周波数fを系統連系規定の規格範囲外に変化させて、第2のパワーコンディショナPCS2の出力を停止させる。これにより、第1のパワーコンディショナPCS1と第2のパワーコンディショナPCS2との間で情報のやり取りをすることなく、複数のパワーコンディショナによる自立運転を実現することができる。
【0073】
また、制御部14は、第2のパワーコンディショナPCS2が相互接続動作に復帰しない状態を継続させるために、自立端子P13の周波数fを周波数f4に変化させるので、負荷への影響を与えないようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明によると、複数のパワーコンディショナによる自立運転を相互間での情報通信をすることなく実現することができるので極めて有用である。また、第2のパワーコンディショナに機能を追加する必要がなく、既存の装置(システム)に第1のパワーコンディショナを追加するだけでよいので極めて有用である。
【符号の説明】
【0075】
14 制御部(蓄電情報取得手段、制御手段)
BT 蓄電手段(第1の分散型電源)
P11 入力端子(第1の電源端子)
P12 入出力端子(第1の電源端子)
P13 自立端子
P21 入力端子(第2の電源端子)
P22 連系端子
PCS1 第1のパワーコンディショナ
PCS2 第2のパワーコンディショナ
PV1 太陽光発電手段(第1の分散型電源)
PV2 太陽光発電手段(第2の分散型電源)
f1 周波数(第1の周波数)