(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124249
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】塗装アルミニウム製容器、塗装アルミニウム製容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 25/34 20060101AFI20230830BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20230830BHJP
B32B 15/20 20060101ALI20230830BHJP
B05D 1/38 20060101ALI20230830BHJP
B05D 7/22 20060101ALI20230830BHJP
B05D 7/14 20060101ALI20230830BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20230830BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20230830BHJP
C09D 11/101 20140101ALI20230830BHJP
C09D 11/30 20140101ALI20230830BHJP
C09D 11/54 20140101ALI20230830BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230830BHJP
B41J 2/21 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
B65D25/34 B
B32B15/08 F
B32B15/20
B05D1/38
B05D7/22 Q
B05D7/14 101C
B05D7/24 301R
B05D7/24 301T
B05D1/26 Z
B05D7/24 302Z
C09D11/101
C09D11/30
C09D11/54
B41J2/01 129
B41J2/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027900
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】アルテミラ製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】川村 康晴
【テーマコード(参考)】
2C056
3E062
4D075
4F100
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EE17
2C056FB08
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4J039GA24
(57)【要約】
【課題】液滴吐出による印刷法を用いても高い生産性を保つことが可能であり、意匠性の高い塗装アルミニウム製容器、およびこの塗装アルミニウム製容器の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】アルミニウム製の容器本体と、前記容器本体の表面を覆うように形成された第1樹脂層と、前記第1樹脂層の表面の一部に形成された第2樹脂層と、を有し、前記第2樹脂層は、光重合性材料を含む複数の樹脂膜を光重合によって一体化させたものからなり、前記第1樹脂層は、その一部が外部に露出していることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム製の容器本体と、
前記容器本体の表面を覆うように形成された第1樹脂層と、
前記第1樹脂層の表面の一部に形成された第2樹脂層と、を有し、
前記第2樹脂層は、光重合性材料を含む複数の樹脂膜を光重合によって一体化させたものからなり、
前記第1樹脂層は、その一部が外部に露出していることを特徴とする塗装アルミニウム製容器。
【請求項2】
前記第1樹脂層は熱硬化性樹脂と光重合性材料とを含み、少なくとも最下層の前記樹脂膜と前記第1樹脂層とが光重合によって接合されていることを特徴とする請求項1に記載の塗装アルミニウム製容器。
【請求項3】
前記光重合性材料は、光ラジカル重合または光カチオン重合する光重合性オリゴマーまたは光重合性モノマーであることを特徴とする請求項1または2に記載の塗装アルミニウム製容器。
【請求項4】
前記第2樹脂層は、可視光透過性樹脂を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の塗装アルミニウム製容器。
【請求項5】
前記容器本体と前記第1樹脂層との間、または前記第1樹脂層と前記第2樹脂層との間、または前記第2樹脂層の前記樹脂膜どうしの間のうち、少なくともいずれか1つには、更に印刷層が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の塗装アルミニウム製容器。
【請求項6】
前記第1樹脂層には、更にフィラーが分散されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の塗装アルミニウム製容器。
【請求項7】
前記第2樹脂層の厚みは、0.03mm以上、1mm以下であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の塗装アルミニウム製容器。
【請求項8】
前記容器本体は、底部と、該底部の外周縁から円筒状に延びる円筒部と、該円筒部の上端から上方に向かうに従い縮径する肩部と、該肩部から更に上方に向かって延びる首部と、該首部の上端側に設けられ、上部開口端を塞ぐキャップが被着されるキャップ取付部と、が一体に形成されてなり、
前記円筒部の表面全体に、熱硬化性樹脂を含む前記第1樹脂層からなる下地塗膜層が形成され、任意の形状に形成された前記第2樹脂層からなる意匠層が前記下地塗膜層の露出部分を残して、前記円筒部の全周に渡って形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の塗装アルミニウム製容器。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の塗装アルミニウム製容器の製造方法であって、
前記容器本体の表面に前記第1樹脂層を形成する第1樹脂層形成工程と、
前記第1樹脂層の一部が露出するように、前記第1樹脂層に重ねて前記第2樹脂層を形成する第2樹脂層形成工程と、を有し、
前記第2樹脂層形成工程は、液滴吐出装置によって光重合性材料を含む樹脂液を吐出して前記樹脂膜を複数、重ねて形成する際に、互いに隣接する前記樹脂膜どうしを光重合させることを特徴とする塗装アルミニウム製容器の製造方法。
【請求項10】
前記第1樹脂層形成工程は、光重合性材料を含む材料によって前記第1樹脂層を形成し、
前記第2樹脂層形成工程は、少なくとも最下層の樹脂膜を前記第1樹脂層に対して光重合させることを特徴とする請求項9に記載の塗装アルミニウム製容器の製造方法。
【請求項11】
前記第2樹脂層形成工程は、前記液滴吐出装置によって前記樹脂液を吐出させた後、紫外線を照射して前記第1樹脂層と最下層の前記樹脂膜とを重合させることを特徴とする請求項10に記載の塗装アルミニウム製容器の製造方法。
【請求項12】
前記樹脂液は、重合性不飽和樹脂のモノマーまたはオリゴマーを含むことを特徴とする請求項9から11のいずれか一項に記載の塗装アルミニウム製容器の製造方法。
【請求項13】
前記容器本体は、底部と、該底部の外周縁から円筒状に延びる円筒部と、該円筒部の上端から上方に向かうに従い縮径する肩部と、該肩部から更に上方に向かって延びる首部と、該首部の上端側に設けられ、上部開口端を塞ぐキャップが被着されるキャップ取付部と、が一体に形成されてなり、
前記第1樹脂層形成工程は、前記円筒部の表面全体に下地塗料を塗布して焼付し、前記第1樹脂層である下地塗膜層を形成する工程であり、
前記第2樹脂層形成工程は、前記液滴吐出装置によって前記樹脂液である紫外線硬化性塗料を、下地塗膜層の一部が露出するように吐出して、複数の前記樹脂膜を順次積層させた前記第2樹脂層からなる意匠層を形成する工程であり、
前記第2樹脂層形成工程では、1つの前記樹脂膜に重ねて上層の前記樹脂膜を形成するごとに紫外線を照射して、隣接する前記樹脂膜どうしを紫外線重合させるか、または、前記意匠層を構成する全ての前記樹脂膜を積層した後に、前記樹脂膜の全体を紫外線重合させることを特徴とする請求項9から12のいずれか一項に記載の塗装アルミニウム製容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム製容器に塗装を施した塗装アルミニウム製容器、および塗装アルミニウム製容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、飲料などの販売用として、各種のアルミニウム製容器、特にアルミ缶が幅広く利用されている。こうしたアルミ缶の容器本体には、外面塗装及び内面塗装が行われる。外面塗装では、通常、下地塗料による下地塗装が行われ、下地塗装の焼付・乾燥の後、任意のデザインの印刷、および外面仕上げ塗装が行われる。
【0003】
近年、こうしたアルミ缶の容器本体などの湾曲した金属面に任意のデザインを印刷する際に、液滴吐出装置、例えばインクジェットプリンターを用いたインクジェット印刷法を適用することが考えられている(例えば、特許文献1を参照)。インクジェット印刷法は、ノズルヘッドを増やすことで多色表現が容易であり、鮮やかな色調のデザインを印刷することができる。また、インクジェット印刷法は印刷版を作成せずに印刷をすることができる。
一方で、インクジェット印刷法は、微細なインクの液滴をノズルヘッドから吐出するため、広い面積を印刷する場合、オフセット印刷やスクリーン印刷などに比べて印刷時間が長くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された発明では、胴体部に下地となるプライマー層を形成した後、このプライマー層の一部に任意のデザインを表現する意匠構築層を重ねて形成し、更にプライマー層の露出部分と意匠構築層とを覆うように保護層を形成している。しかしながら、意匠構築層に加えて、更にプライマー層の露出部分と意匠構築層とを覆うように保護層を全てインクジェット印刷法によって形成する場合、印刷時間が長くなり、高速で大量に製造される缶の印刷に適用すると、生産性が低下するという課題があった。また、プライマー層の露出部分と意匠構築層とを覆うように保護層を形成すると立体感が低下し、意匠性の効果が薄れるという課題もあった。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、液滴吐出による印刷法を用いても高い生産性を保つことが可能であり、意匠性の高い塗装アルミニウム製容器、およびこの塗装アルミニウム製容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
即ち、本発明の塗装アルミニウム製容器は、アルミニウム製の容器本体と、前記容器本体の表面を覆うように形成された第1樹脂層と、前記第1樹脂層の表面の一部に形成された第2樹脂層と、を有し、前記第2樹脂層は、光重合性材料を含む複数の樹脂膜を光重合によって一体化させたものからなり、前記第1樹脂層は、その一部が外部に露出していることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、従来のような、立体性に乏しい平坦な塗膜によってデザインされた塗装アルミニウム製容器と比較して、複数の樹脂膜を光重合によって一体化させて得られる、第1樹脂層から突出するように形成された第2樹脂層によって、立体的なデザインで、高い意匠性を備えた塗装アルミニウム製容器を実現することができる。
【0009】
また、本発明の塗装アルミニウム製容器によれば、第1樹脂層の一部を外部に露出させる構成にしたことによって、第2樹脂層や第1樹脂層の露出部分を覆う保護膜の形成が不要になり、オフセット印刷など比較して印刷に時間が掛かる液滴吐出による印刷法によって容器本体に塗装を行う場合であっても、保護膜のプリント時間を省略することができ、塗装アルミニウム製容器の生産性の低下を防止することができる。
【0010】
また、本発明では、前記第1樹脂層は熱硬化性樹脂と光重合性材料とを含み、少なくとも最下層の前記樹脂膜と前記第1樹脂層とが光重合によって接合されていてもよい。
【0011】
また、本発明では、前記光重合性材料は、光ラジカル重合または光カチオン重合する光重合性オリゴマーまたは光重合性モノマーであってもよい。
【0012】
また、本発明では、前記第2樹脂層は、可視光透過性樹脂を含んでいてもよい。
【0013】
また、本発明では、前記容器本体と前記第1樹脂層との間、または前記第1樹脂層と前記第2樹脂層との間、または前記第2樹脂層の前記樹脂膜どうしの間のうち、少なくともいずれか1つには、更に印刷層が形成されていてもよい。
【0014】
また、本発明では、前記第1樹脂層には、更にフィラーが分散されていてもよい。
【0015】
また、本発明では、前記第2樹脂層の厚みは、0.03mm以上、1mm以下であってもよい。
【0016】
また、本発明では、前記容器本体は、底部と、該底部の外周縁から円筒状に延びる円筒部と、該円筒部の上端から上方に向かうに従い縮径する肩部と、該肩部から更に上方に向かって延びる首部と、該首部の上端側に設けられ、上部開口端を塞ぐキャップが被着されるキャップ取付部と、が一体に形成されてなり、前記円筒部の表面全体に、熱硬化性樹脂を含む前記第1樹脂層からなる下地塗膜層が形成され、任意の形状に形成された前記第2樹脂層からなる意匠層が前記下地塗膜層の露出部分を残して、前記円筒部の全周に渡って形成されていてもよい。
【0017】
本発明の塗装アルミニウム製容器の製造方法は、前記各項に記載の塗装アルミニウム製容器の製造方法であって、前記容器本体の表面に前記第1樹脂層を形成する第1樹脂層形成工程と、前記第1樹脂層の一部が露出するように、前記第1樹脂層に重ねて前記第2樹脂層を形成する第2樹脂層形成工程と、を有し、前記第2樹脂層形成工程は、液滴吐出装置によって光重合性材料を含む樹脂液を吐出して前記樹脂膜を複数、重ねて形成する際に、互いに隣接する前記樹脂膜どうしを光重合させることを特徴とする。
【0018】
また、本発明では、前記第1樹脂層形成工程は、光重合性材料とを含む材料によって前記第1樹脂層を形成し、前記第2樹脂層形成工程は、少なくとも最下層の樹脂膜を前記第1樹脂層に対して光重合させてもよい。
【0019】
また、本発明では、前記第2樹脂層形成工程は、前記液滴吐出装置によって前記樹脂液を吐出させた後、紫外線を照射して前記第1樹脂層と最下層の前記樹脂膜とを重合させてもよい。
【0020】
また、本発明では、前記樹脂液は、重合性不飽和樹脂のモノマーまたはオリゴマーを含んでいてもよい。
【0021】
また、本発明では、前記容器本体は、底部と、該底部の外周縁から円筒状に延びる円筒部と、該円筒部の上端から上方に向かうに従い縮径する肩部と、該肩部から更に上方に向かって延びる首部と、該首部の上端側に設けられ、上部開口端を塞ぐキャップが被着されるキャップ取付部と、が一体に形成されてなり、前記第1樹脂層形成工程は、前記円筒部の表面全体に下地塗料を塗布して焼付し、前記第1樹脂層である下地塗膜層を形成する工程であり、前記第2樹脂層形成工程は、前記液滴吐出装置によって前記樹脂液である紫外線硬化性塗料を、下地塗膜層の一部が露出するように吐出して、複数の前記樹脂膜を順次積層させた前記第2樹脂層からなる意匠層を形成する工程であり、前記第2樹脂層形成工程では、1つの前記樹脂膜に重ねて上層の前記樹脂膜を形成するごとに紫外線を照射して、隣接する前記樹脂膜どうしを紫外線重合させるか、または、前記意匠層を構成する全ての前記樹脂膜を積層した後に、前記樹脂膜の全体を紫外線重合させてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、液滴吐出による印刷法を用いても高い生産性を保つことが可能であり、意匠性の高い塗装アルミニウム製容器、およびこの塗装アルミニウム製容器の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1実施形態の塗装アルミニウム製容器を示す外観斜視図である。
【
図2】
図1の塗装アルミニウム製容器の要部拡大断面図である。
【
図3】第2実施形態の塗装アルミニウム製容器の要部拡大断面図である。
【
図4】第3実施形態の塗装アルミニウム製容器の要部拡大断面図である。
【
図5】第4実施形態の塗装アルミニウム製容器の要部拡大断面図である。
【
図6】第5実施形態の塗装アルミニウム製容器の要部拡大断面図である。
【
図7】第6実施形態の塗装アルミニウム製容器の外観斜視図である。
【
図8】第2樹脂層形成工程に用いるインクジェットプリンタ(液滴吐出装置)の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を適用した一実施形態である塗装アルミニウム製容器、およびこの塗装アルミニウム製容器の製造方法について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0025】
(塗装アルミニウム製容器:第1実施形態)
本発明の第1実施形態の塗装アルミニウム製容器について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態の塗装アルミニウム製容器を示す外観斜視図である。また、
図2は、
図1の塗装アルミニウム製容器の要部拡大断面図である。
本実施形態の塗装アルミニウム製容器10は、アルミニウム製の容器本体11と、この容器本体11に形成された第1樹脂層12と、この第1樹脂層12の一部に形成された第2樹脂層13とを有する。
容器本体11は、一方が開口した有底筒状を成し、例えば、アルミニウム合金板に絞りしごき加工に施すことによって形成される。
【0026】
第1樹脂層12は、容器本体11の表面を保護する下地塗装膜であり、例えば、透明なサイズコートや、白色など有色のベースコートであればよい。
【0027】
第1樹脂層12は、この第1樹脂層12に重ねて形成される第2樹脂層13に対して、光重合、例えば光ラジカル重合または光カチオン重合によって互いの界面が結合されている。これにより、第2樹脂層13に外部応力が加わっても、第1樹脂層12から剥離することを防止する。
【0028】
第1樹脂層12は、この第1樹脂層12に重ねて形成される第2樹脂層13に対して、光重合、例えば光ラジカル重合または光カチオン重合によって互いの界面が結合されている。これにより、第2樹脂層13に外部応力が加わっても、第1樹脂層12から剥離することを防止する。
【0029】
第2樹脂層13を形成する前(重合前)の第1樹脂層12は、熱硬化性樹脂を含む樹脂基材と、第2樹脂層13に対して光重合させる光重合性材料とを含んでいる。
第1樹脂層12を構成する樹脂基材としては、例えば、ポリエステル樹脂およびアミノ樹脂を必須成分とする塗膜を硬化させたものであればよい。また、こうした樹脂に、更にエポキシ樹脂、イソシアネート樹脂などを含んでいても良い。また、エポキシ樹脂を必須成分とし、尿素系樹脂またはフェノール樹脂の少なくとも一つを含む塗膜を硬化させたものであればよい。また、アクリル系樹脂を必須成分とする塗膜を硬化させたものであればよい。
【0030】
上述したポリエステル樹脂を構成する酸成分としては、例えば、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、無水マレイン酸などから選ばれる1 種以上の二塩基酸およびこれらの酸の低級アルキルエステル化物が主として用いられ、必要に応じて安息香酸、クロトン酸、p-tert-ブチル安息香酸などの一塩基酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、無水ピロメリット酸などの3価以上の多塩基酸などが併用されればよい。
【0031】
上述したポリエステル樹脂を構成するアルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル1,3-プロパンジオール、3-メチルペンタンジオール、1,4ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4ジメチロールシクロヘキサンなどの二価アルコールが用いられればよい。更に必要に応じてグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールを併用することもできる。これらのアルコール成分は単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0032】
上述したアミノ樹脂は、特に制限はないが、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミドなどのアミノ成分とメチロール成分とから構成されるメチロール化アミノ樹脂などを用いることができる。こうしたアミノ成分と反応してメチロール成分を形成する化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒドなどが挙げられる。
【0033】
また、第1樹脂層12を構成する樹脂基材は、第1樹脂層12の絞り加工性、付着性、耐傷付き性、耐熱水性および光沢を高める観点から、上述したメチロール化アミノ樹脂のメチロール成分の少なくとも一部を1価のアルコールでエーテル化したアルコキシ化アミノ樹脂を用いることができる。特に、アミノ成分としてはベンゾグアナミンが好ましく、メチロール成分の少なくとも一部はブタノールによりエーテル化されていることが好ましい。具体的には、ブトキシ化ベンゾグアナミン樹脂が特に好ましい。
【0034】
上述したイソシアネート化合物は、特に制限はないが、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ジメチルビフェニレンジイソシアネート、ジメトキシビフェニレンジイソシアネート、ジクロロビフェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート化合物、テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、シクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素添加キシリレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネート化合物などが挙げられる。また、上述したイソシアネート化合物の二量体、三量体なども用いることができる。脂肪族イソシアネート化合物は、芳香族イソシアネート化合物に比べて黄変性が少ない観点から好ましい。
【0035】
重合前の第1樹脂層12は、上述した樹脂基材とともに、第2樹脂層13に対して光重合させる光重合性材料を含んでいる。光重合性材料としては、光ラジカル重合または光カチオン重合する光重合性オリゴマーまたは光重合性モノマーが挙げられる。例えば、(メタ)アクリレートを含む各種オリゴマーもしくはポリマーが挙げられる。これらを用いることで、第1樹脂層12に重ねて第2樹脂層13を形成する際に、第1樹脂層12と第2樹脂層13との界面を光重合によって強固に結合させることができる。
【0036】
光ラジカル重合性材料はアクリロイル基を持つ化合物を用いることができる。オリゴマーとしては、例えば、アクリルアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、およびグリシジルアクリレートなどを用いることができる。また、分岐構造を持つような多官能アクリレートを用いることもできる。また、光カチオン重合性材料は、グリシジル基、オキセタン基を持つ化合物を用いることもでき、脂環式エポキシ、グリシジル型エポキシ、オキセタン化合物などのオリゴマーを用いることもできる。
【0037】
例えば、重合前の第1樹脂層12は、第1樹脂層12の固形分全体、例えば上述した樹脂基材に対して、アクリロイル基、またはグリシジル基を持つ化合物を1質量%以上、10質量%以下の範囲で含んでいればよい。
【0038】
また、第1樹脂層12に、アクリル樹脂ビーズ、ヒュームドシリカ、珪藻土などの固形物を用いて第2樹脂層13側の表面に微小な凹凸を形成し、第1樹脂層12と第2樹脂層13との密着性を高めるような構成にすることも好ましい。こうした固形物を用いて第1樹脂層12に微細な凹凸を形成することによって、成膜時に第2樹脂層13の吐出液が着弾した際の移動(位置ズレ)を抑制することもできる。
【0039】
また、第1樹脂層12には、アクリル樹脂ビーズ、ヒュームドシリカ、珪藻土などの固形物の表面に、更にメタクリルシリル、アクリルシリルなどの光重合性官能基を持つ材料で表面処理を行ったものを用いることもできる。
【0040】
また、第1樹脂層12には、BET法で測定された比表面積が20~410m2/gの親水性フュームドシリカもしくは表面を有機化合物で修飾された疎水性ヒュームドシリカのいずれか一種類以上を0.1~5質量%の範囲で含ませることもできる。
【0041】
第1樹脂層12には、更に潤滑剤を含むことも好ましい。こうした潤滑剤を含むことにより、容器本体11の加工や搬送の際に、第1樹脂層12の傷付きを効果的に防止することができる。潤滑剤は、特に限定されるものではないが、例えば、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、石油系ワックス、脂肪酸エステル系ワックス、シリコーン系ワックス、フッ素系ワックス、ポリオレフィン系ワックスなどが挙げられる。また、これらワックスを2種類以上併用することもできる。
【0042】
上述した植物系ワックスとしては、例えば、カルナウバワックス、綿ワックス、木ロウなどが挙げられる。また、動物系ワックスとしては、ラノリンワックス、ゲイロウ、蜜ろうなどが挙げられ、鉱物系ワックスとしてはオゾケライト、モンタンワックスなどが挙げられる。
【0043】
また、上述した石油系ワックスとしては、例えば、パラフィン系ワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムなどが挙げられ、脂肪酸エステル系ワックスとしては、脂肪酸蔗糖エステルポリグリセリンエーテルと脂肪酸とのエステル化物などが挙げられる。
【0044】
上述したフッ素系ワックスとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレンワックスなどが挙げられ、ポリオレフィン系ワックスとしては、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックスなどが挙げられる。
【0045】
これら第1樹脂層12を構成する潤滑剤の添加量としては、例えば、第1樹脂層12のベースとなる樹脂である、上述した樹脂基材100質量部に対し、0.1~30質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましい。
【0046】
こうした第1樹脂層12は、更に充填剤を含むことができる。充填剤としては特に制限はないが、例えば、容器本体11の金属色を隠して意匠性を高めるために、酸化チタン、アルミニウムペースト、パール粉末、高輝度無機化合物などを用いることができる。
【0047】
例えば、充填剤として酸化チタンを含む下塗り塗料はホワイトと称され、容器本体11に対する接合性を高めるプライマーとしての作用と共に、容器本体11の金属色を隠す白色の第1樹脂層12を形成し、この第1樹脂層12に重ねて形成される第2樹脂層13の意匠を高める着色層の役割を果たす。
【0048】
以上のような構成の第1樹脂層12は、例えば、膜厚が例えば0.5μm~15μm程度になるように形成されればよい。第1樹脂層12は、例えば、ロールコーターによって上述した樹脂基材と光重合性材料からなる樹脂を容器本体11の表面に塗布し、樹脂基材を例えば160℃~240℃で熱硬化させることで形成される。こうした熱硬化後も、光重合性材料の重合反応点は維持される。
【0049】
また、第1樹脂層12は、20℃での表面張力が22mN/m以上、72N/m以下になるように形成されることが好ましい。第1樹脂層12の表面張力を22mN/m以上にすることによって、第1樹脂層12に重ねて第2樹脂層13を形成する際に、液滴吐出装置を用いて形成する樹脂膜14が第1樹脂層12の表面で弾かれることを防止し、意図した部位、形状で第2樹脂層13の厚みを増して立体的に形成することができる。
【0050】
第2樹脂層13は、全体が重合性化合物で構成されるか、あるいは一部に重合性化合物を含む樹脂、例えば、光ラジカル重合型紫外線硬化樹脂からなる樹脂膜14を、液滴吐出装置、例えばインクジェットプリンターを用いて第1樹脂層12の表面に形成し、各層ごとにUV照射による光重合反応で硬化させながら順次積層させるか、積層された複数の樹脂膜14,14…を光重合反応によって一体化させることで形成する。
【0051】
樹脂膜14の形成時に各層ごとにUV光を照射をする場合、UV光の照射強度を低くしたり、照射時間を短くすることなどで、反応を一定割合で抑えれば、次に積層される樹脂膜14に対して光重合反応を行い、積層される全ての樹脂膜14を一体化して第2樹脂層13を形成することができる。
【0052】
こうした第2樹脂層13の形成過程で、最下層の樹脂膜14に含まれる光重合性材料と、第1樹脂層12に含まれる光重合性材料とを光重合させることで、第2樹脂層13は第1樹脂層12に対して強固に結合される。
【0053】
第2樹脂層13を形成するための重合前の樹脂膜14(液滴吐出装置から吐出する樹脂液)は、光重合性材料を含んでいる。重合前の樹脂膜14に含まれる光重合性材料としては、例えば、アクリル樹脂(メタクリル樹脂を含む)、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ビニル樹脂(塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、酢酸ビニル樹脂を含む)、ポリエステル樹脂、ポリエステルアミノ樹脂、シリコン樹脂、ポリオレフィン樹脂のうち、少なくともいずれか1つのモノマーまたはオリゴマーが挙げられる。
【0054】
より具体的には、重合前の樹脂膜14に含まれる光重合性材料としては、アクリルモノマー、メタクリルモノマー及びビニル化合物として、単官能からオリゴ官能、プレポリマーを用いることができる。そのほか、光重合性オリゴマーとして、例えば、エポキシアクリレート、脂肪族及び芳香族ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、アクリルオリゴマーなどを用いることができる。
【0055】
特に、第1樹脂層12に対して密着性の良い光重合性材料として、ポリエステル系樹脂、例えばポリエステルアクリレート(紫外線重合性オリゴマー)を0.1%~2%含んだ樹脂塗料によって樹脂膜14を形成すれば、重合前の第1樹脂層12に含まれる光重合性材料との間で光重合させることができる。
【0056】
また、複数の樹脂膜14を光重合性材料による光重合で一体化して第2樹脂層13を形成することによって、例えば、水性塗料や油性塗料のような乾燥時の溶媒蒸発分による収縮を防止することができる。
【0057】
第2樹脂層13を形成する際の重合前の樹脂膜14は、上述した樹脂を水性溶媒に溶解させた水性塗料や、上述した樹脂を有機溶媒に溶解させた油性塗料を液滴吐出装置、例えばインクジェットプリンターのイングジェットヘッドから第1樹脂層12に向けて吐出することによって形成することができる。
【0058】
また、樹脂膜14は、重合性不飽和化合物を含む樹脂塗料をインクジェットヘッドから吐出することによって形成することができる。樹脂膜14として、重合性不飽和化合物を含む紫外線硬化樹脂塗料を用いれば、水性塗料や油性塗料のように、乾燥時の溶媒蒸発分による塗膜の収縮を防止することができる。
【0059】
重合性不飽和化合物としては、アクリルモノマー、メタクリルモノマー及びビニル化合物として、単官能からオリゴ官能、プレポリマーを用いることができる。そのほか、重合性オリゴマーとして、エポキシアクリレート、脂肪族及び芳香族ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、アクリルオリゴマーなどを用いることができる。
【0060】
特に、第1樹脂層12に対して密着性の相性の良いポリエステル系樹脂の重合性オリゴマーを0.1%~2%含んだ樹脂塗料によって樹脂膜14を形成すれば、第1樹脂層12に強固に固着した第2樹脂層13を形成できる。
【0061】
このような第2樹脂層13は、任意のデザイン、例えば、文字や図形を象るように形成されていればよい。本実施形態では、第2樹脂層13は第1樹脂層12から突出するように形成された漢字をデザインしたものとなっている。
【0062】
本実施形態の第2樹脂層13は、断面が例えば略半円形に形成されており、表面が滑らかな湾曲面を成している。第2樹脂層13の表面を滑らかな湾曲面にすることで、光線の乱反射が抑制される。このため、第2樹脂層13を可視光非透過性の色調にすれば、メタリック調の外観を得ることができる。また、第2樹脂層13を可視光透過性の透明な色調にすれば、レンズ効果によって、第2樹脂層13が象るデザインを立体的に浮き上がらせることができる。
【0063】
こうした第2樹脂層13の第1樹脂層12の表面から突出する突出厚みは、例えば、0.03mm以上、1mm以下となるようにすればよい。第2樹脂層13の突出厚みが0.03mm未満では、第2樹脂層13の立体感が得られない懸念がある。また、第2樹脂層13の突出厚みが1mmを超えると、第1樹脂層12からの突出量が大きくなりすぎるため、第2樹脂層13の部分的な剥離などが生じる懸念がある。
【0064】
第2樹脂層13は、第1樹脂層12の一部を覆うように形成されている。即ち、第1樹脂層12の一部(第2樹脂層13が形成されない部分)は、外部に露出している。このため、第1樹脂層12のうち、外部に露出している部分は、容器本体11の保護膜の役割を果たしている。
【0065】
以上の様な構成の本実施形態の塗装アルミニウム製容器10によれば、従来のような、立体性に乏しい平坦な塗膜によってデザインされた塗装アルミニウム製容器と比較して、複数の樹脂膜14を積層して一体化させて得られる、第1樹脂層12から突出するように形成された第2樹脂層13によって、立体的なデザインで、高い意匠性を備えた塗装アルミニウム製容器10を実現することができる。
【0066】
また、第1樹脂層12と第2樹脂層13を光重合性材料を含む樹脂から構成し、第1樹脂層12と第2樹脂層13との界面を光重合、例えば紫外線重合させることによって、第1樹脂層12と第2樹脂層13とを強固に結合させることができる。これにより、第1樹脂層12の上に立体的な厚みのある第2樹脂層13を形成しても、外部応力等によって第2樹脂層13が第1樹脂層12から剥離する懸念の無い、高い耐久性を有する塗装アルミニウム製容器10を実現することができる。
【0067】
そして、本実施形態の塗装アルミニウム製容器10によれば、第1樹脂層12の一部を外部に露出させる構成にすることによって、第2樹脂層13や第1樹脂層12の露出部分を覆う保護膜の形成が不要になり、オフセット印刷など比較して印刷に時間が掛かるインクジェット印刷法によって容器本体11に塗装を行う場合であっても、保護膜のプリント時間を省略することができ、塗装アルミニウム製容器10の生産性の低下を防止することができる。
【0068】
また、本実施形態の塗装アルミニウム製容器10において、重合性不飽和化合物を含む樹脂塗料を用いて第2樹脂層13を構成する樹脂膜14を形成する場合、複数の樹脂膜14を積層した後に重合によってこれらを一体化させて第2樹脂層13を形成できるので、第2樹脂層13の突出厚みを例えば0.03mm以上、1mm以下といった立体的な厚みのある塗膜にしても、物理的な強度に優れ、耐久性に富んだデザインプリントを容器本体11に形成することができる。
【0069】
(塗装アルミニウム製容器:第2実施形態)
本発明の第2実施形態の塗装アルミニウム製容器について説明する。
図3は、第2実施形態の塗装アルミニウム製容器の要部拡大断面図である。
なお、第1実施形態と同様の構成には同一の番号を付し、重複する説明を省略する。
本実施形態の塗装アルミニウム製容器20は、容器本体11と、この容器本体11に形成された第1樹脂層12と、この第1樹脂層12の一部に形成された第2樹脂層23とを有する。
【0070】
第2樹脂層23は、光重合性材料を含む複数の樹脂膜24,24を光重合によって一体化させたものからなる。本実施形態の樹脂膜24は、第1樹脂層12に接する下層の樹脂膜24から上層の樹脂膜24に向かって、幅を段階的に狭めるように形成している。これにより、第2樹脂層23の外面には、複数の段差が形成され、その断面形状は略台形とされている。
【0071】
本実施形態の塗装アルミニウム製容器20によれば、第1樹脂層12の表面から突出する第2樹脂層23は、断面が例えば略台形に形成されており、両側の傾斜部には複数の段差が形成されている。これにより、第2樹脂層23に光が当たると、この複数の段差によって光が乱反射され、マッド調の外観を得ることができる。そして、第2樹脂層23を顔料によって任意の色調に着色することで、光沢を抑えた任意の色調の文字などを立体的に浮き上がるように表現することができる。
【0072】
また、本実施形態では、第2樹脂層23の上部のエッジ部分が直接外部に露出するので、保護膜などで覆う場合と比較して、第2樹脂層23の輪郭をよりシャープに表現することができる。
【0073】
このような第2実施形態の塗装アルミニウム製容器20においても、光重合性材料を含む材料で第1樹脂層12を形成し、第1樹脂層12と第2樹脂層23との界面を光重合にさせることによって、第1樹脂層12と第2樹脂層23とを強固に結合させることができる。これにより、第1樹脂層12の上に、例えば立体的な厚みのある第2樹脂層23を形成しても、外部応力等によって第2樹脂層23が第1樹脂層12から剥離する懸念の無い、高い耐久性を有する塗装アルミニウム製容器20を実現することができる。
【0074】
また、第1樹脂層12の一部を第2樹脂層23によって覆わずに外部に露出させる構成にすることによって、第2樹脂層13や第1樹脂層12の露出部分を覆う保護膜の形成が不要になり、オフセット印刷など比較して印刷に時間が掛かるインクジェット印刷法によって容器本体11に塗装を行う場合であっても、保護膜のプリント時間を省略することができ、塗装アルミニウム製容器10の生産性の低下を防止することができる。
【0075】
(塗装アルミニウム製容器:第3実施形態)
本発明の第3実施形態の塗装アルミニウム製容器について説明する。
図4は、第3実施形態の塗装アルミニウム製容器の要部拡大断面図である。
なお、第1実施形態と同様の構成には同一の番号を付し、重複する説明を省略する。
本実施形態の塗装アルミニウム製容器30は、容器本体11と、この容器本体11に形成された第1樹脂層12と、この第1樹脂層12の一部に形成された、複数の樹脂膜14,14を光重合によって一体化させた第2樹脂層13と、容器本体11と第1樹脂層12の間に形成された印刷層31とを有する。
【0076】
印刷層31は、任意の模様などを容器本体11の表面にプリントした層であり、インクジェットプリント等の以外にも、オフセット印刷やスクリーン印刷などによって形成することができる。
【0077】
第2樹脂層13は、印刷層31と重なる位置に形成すればよい。そして、例えば、第2樹脂層13を、第1実施形態と同様に、可視光透過性の無色透明な色調で、表面が平滑な断面半円形に形成すれば、第2樹脂層13のレンズ効果によって、外部から見ると第2樹脂層13の下層にある印刷層31の模様などが拡大して見えるようになる。
【0078】
このように、本実施形態の塗装アルミニウム製容器30では、容器本体11の表面に形成した印刷層31によって、第1樹脂層12から突出するように形成される第2樹脂層13自体を加飾できるので、より一層、意匠性に優れた立体的なデザインの塗装アルミニウム製容器30を実現することができる。
【0079】
また、第1樹脂層12の一部を第2樹脂層13によって覆わずに外部に露出させる構成にすることによって、第2樹脂層13や第1樹脂層12の露出部分を覆う保護膜の形成が不要になり、オフセット印刷など比較して印刷に時間が掛かるインクジェット印刷法によって容器本体11に塗装を行う場合であっても、保護膜のプリント時間を省略することができ、塗装アルミニウム製容器10の生産性の低下を防止することができる。
【0080】
(塗装アルミニウム製容器:第4実施形態)
本発明の第4実施形態の塗装アルミニウム製容器について説明する。
図5は、第4実施形態の塗装アルミニウム製容器の要部拡大断面図である。
なお、第1実施形態と同様の構成には同一の番号を付し、重複する説明を省略する。
本実施形態の塗装アルミニウム製容器40は、容器本体11と、この容器本体11に形成された第1樹脂層12と、この第1樹脂層12の一部に形成された、複数の樹脂膜14,14を光重合によって一体化させた第2樹脂層13と、第1樹脂層12と第2樹脂層13の間に形成された印刷層41とを有する。
【0081】
印刷層41は、任意の模様などを第1樹脂層12の表面にプリントした層であり、インクジェットプリント以外にも、オフセット印刷やスクリーン印刷などによって形成することができる。
【0082】
第2樹脂層13は、印刷層41と重なる位置に形成すればよい。そして、例えば、第2樹脂層13を、第1実施形態と同様に、可視光透過性の無色透明な色調で、表面が平滑な断面半円形に形成すれば、第2樹脂層13のレンズ効果によって、外部から見ると第2樹脂層13の下層にある印刷層41の模様などが拡大して見えるようになる。
【0083】
このように、本実施形態の塗装アルミニウム製容器40では、第1樹脂層12の表面に形成した印刷層41によって、第1樹脂層12から突出するように形成される第2樹脂層13自体を加飾できるので、より一層、意匠性に優れた立体的なデザインの塗装アルミニウム製容器30を実現することができる。
【0084】
また、第1樹脂層12の一部を第2樹脂層13によって覆わずに外部に露出させる構成にすることによって、第2樹脂層13や第1樹脂層12の露出部分を覆う保護膜の形成が不要になり、オフセット印刷など比較して印刷に時間が掛かるインクジェット印刷法によって容器本体11に塗装を行う場合であっても、保護膜のプリント時間を省略することができ、塗装アルミニウム製容器10の生産性の低下を防止することができる。
【0085】
(塗装アルミニウム製容器:第5実施形態)
本発明の第5実施形態の塗装アルミニウム製容器について説明する。
図6は、第5実施形態の塗装アルミニウム製容器の要部拡大断面図である。
なお、第1実施形態と同様の構成には同一の番号を付し、重複する説明を省略する。
本実施形態の塗装アルミニウム製容器50は、容器本体11と、この容器本体11に形成された第1樹脂層12と、この第1樹脂層12の一部に形成された、複数の樹脂膜14,14を光重合によって一体化させた第2樹脂層53とを有する。
【0086】
本実施形態の第1樹脂層12は、微細なフィラー56が混合、分散されている。フィラー56は、例えば、ミクロサイズやナノサイズの無機物粉末、あるいは有機物粉末であればよい。第1樹脂層12にフィラー56を混合させることによって、第1樹脂層12の外観のマッド感を高めるなど、視覚的な効果を向上させることができる。
【0087】
(塗装アルミニウム製容器:第6実施形態)
本発明の第6実施形態の塗装アルミニウム製容器について説明する。
図7は、第6実施形態の塗装アルミニウム製容器の外観斜視図である。
なお、第1実施形態と同様の構成には同一の番号を付し、重複する説明を省略する。
本実施形態の塗装アルミニウム製容器60は、例えば、酒類などを収容することを想定したボトル形状のアルミニウム製のボトル缶であり、容器本体61を有する。
【0088】
容器本体61は、底部62と、この底部62の外周縁から上方に向けて円筒状に延びる円筒部63と、この円筒部63の上端から上方に向かうに従い縮径する肩部64と、この肩部64から更に上方に向かって延びる首部65と、この首部65の上端側に設けられ、上部開口端65aを塞ぐキャップCが被着されるキャップ取付部66と、が、アルミニウムによって一体に形成されてなる。
【0089】
キャップ取付部66は、キャップCの形状に応じて、ネジまたはフランジが形成されていればよい。本実施形態では、キャップCの内周面に形成された雌ネジ(図示略)に螺合する雄ネジ部66bが形成されている。
【0090】
このような容器本体61を製造するには、まずカッピングプレス機によるカッピングプレス工程においてアルミニウムまたはアルミニウム合金等の金属板を円板状に打ち抜いて絞り加工を施すことにより深さの浅いカップ状素材を製造する。次いで、このカップ状素材にDIプレス機によるDIプレス工程において再絞りおよびしごき加工を施して缶軸方向に延伸することにより、ボトル状の有底円筒体である容器本体61を成形することができる。
【0091】
容器本体61の円筒部63には、表面全体を覆うように、熱硬化性樹脂を含む下地塗膜層(第1樹脂層)72が形成されている。意匠層(第2樹脂層)73を形成する前(重合前)の下地塗膜層72は、この下地塗膜層72の一部を露出させるように形成される意匠層73に対して、光重合、例えば光ラジカル重合または光カチオン重合によって互いの界面が結合されていることが好ましい。これにより、意匠層73に外部応力が加わっても、下地塗膜層72から意匠層73が剥離することを防止できる。
【0092】
意匠層(第2樹脂層)73は、全体が重合性化合物で構成されるか、あるいは一部に重合性化合物を含む樹脂、例えば、光ラジカル重合型紫外線硬化樹脂からなる樹脂膜(
図2等を参照)を、液滴吐出装置を用いて下地塗膜層72の表面に形成し、各層ごとにUV照射による光重合反応で硬化させながら順次積層させるか、積層された複数の樹脂膜を一括して光重合反応によって一体化させることで形成される。
【0093】
本実施形態の意匠層(第2樹脂層)73は、例えば、容器本体61の円筒部63の全周方向に、任意の意匠を象るように形成され、中央付近に、楕円形にベタ塗りされたラベル領域が形成されている。本実施形態の意匠層73は、例えば、収容物としてワインをイメージした意匠を形成している。
【0094】
このような本実施形態の塗装アルミニウム製容器60によれば、従来のガラス製のボトルと同様の形状に形成された容器本体61に対して、複数の樹脂膜を積層して一体化させて得られる、下地塗膜層72から突出するように形成された意匠層73によって、立体的なデザインで、高い意匠性を備えたボトル形状の塗装アルミニウム製容器60を実現することができる。
【0095】
そして、意匠層73を下地塗膜層72から突出するように、円筒部63の全周に渡って形成することによって、例えば、塗装アルミニウム製容器60を備えた飲料入りボトル缶を、収容箱に複数並べて搬送した際に振動が加わっても、隣接する飲料入りボトル缶の意匠層(第2樹脂層)73どうしが接触して、擦れあうだけで、その下層の下地塗膜層72は擦れあうことが無い。これにより、容器本体61を保護する下地塗膜層72が剥離することがなく、容器本体61の腐食などを防止することができる。
【0096】
(塗装アルミニウム製容器の製造方法)
本発明の一実施形態の塗装アルミニウム製容器の製造方法について説明する。
例えば、上述した第1実施形態の塗装アルミニウム製容器10を製造する際には、アルミニウム合金板に絞りしごき加工に施すことによって形成した容器本体11を用意する。
【0097】
容器本体11としては、例えば、
図7に示すように、底部62と、この底部62の外周縁から上方に向けて円筒状に延びる円筒部63と、この円筒部63の上端から上方に向かうに従い縮径する肩部64と、この肩部64から更に上方に向かって延びる首部65と、この首部65の上端側に設けられ、上部開口端65aを塞ぐキャップCが被着されるキャップ取付部66と、が、アルミニウムによって一体に形成されてなるボトル缶であればよい。
【0098】
そして、上述したような容器本体11の例えば円筒部63の表面に第1樹脂層(下地塗膜層)12を形成する(第1樹脂層形成工程)。
第1樹脂層12の形成材料としては、例えば、熱硬化性樹脂からなる樹脂基材と、次工程で第2樹脂層13に対して光重合させる光重合性材料、本実施形態では紫外線照射によって硬化(重合)する紫外線硬化性塗料とを含んだ材料を用いればよい。紫外線硬化性の光重合性材料としては、光ラジカル重合性材料や光カチオン重合性材料が挙げられる。例えば、(メタ)アクリレートを含む各種オリゴマーもしくはポリマーが挙げられる。これらを用いることで、第1樹脂層12に重ねて第2樹脂層13を形成する際に、第1樹脂層12と第2樹脂層13との界面を光重合によって強固に結合させることができる。
【0099】
第1樹脂層12の形成は、例えば、ロールコーターを用いて、第1樹脂層12の形成材料を含む塗液を容器本体11の表面に、膜厚が例えば3μm~10μm程度になるように塗布し、第1樹脂層12の形成材料に含まれる熱硬化性樹脂を例えば160℃~240℃で熱硬化(焼付)させることで形成される。こうした熱硬化後も、光重合性材料の重合反応点は維持される。
【0100】
次に、第1樹脂層12を形成した容器本体11に、液滴吐出装置、例えばインクジェットプリンタを用いて複数の樹脂膜14を積層して、紫外線照射による重合によって一体化させ、第2樹脂層13を形成する(第2樹脂層形成工程)。この第2樹脂層形成工程では、第1樹脂層12の表面に樹脂液を吐出して、重合前の樹脂膜14を形成した後、例えば、紫外線を照射することによって、第1樹脂層12の表面に対して光重合によって結合させた第2樹脂層13を形成する。
【0101】
第2樹脂層13を形成する際には、金属の湾曲面に対して樹脂膜14を形成するための樹脂液を吐出可能なインクジェットヘッドを有するインクジェットプリンタ(液滴吐出装置)を用いればよい。
【0102】
第2樹脂層13を構成する樹脂膜14を形成するための樹脂液に用いる光重合性材料としては、例えば、アクリルモノマー、メタクリルモノマー及びビニル化合物として、単官能からオリゴ官能、プレポリマーを用いることができる。そのほか、重合性オリゴマーとして、エポキシアクリレート、脂肪族及び芳香族ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、アクリルオリゴマーなどを用いることができる。
【0103】
本実施形態では、
図8に示すように、例えば6個のインクジェットヘッドを有するインクジェットプリンタP(液滴吐出装置)を用いるが、使用するインクジェットヘッドの数を限定して生産性を向上させている。例えば、カラープリントに用いるヘッドとして、C、M、Y、Kのうち、M(マゼンタ)ヘッドだけを用い、更に透明な樹脂膜(バーニッシュ)を積層させるために、2つのヘッドVを割り当てている。
【0104】
そして、それぞれ第1樹脂層12が形成された容器本体11を回転させつつ、各ヘッドから光重合性材料を含む樹脂液を吐出して重合前の樹脂膜14を形成する。そして、例えば、各ヘッドに対向する位置に形成した紫外線照射部UVから紫外線を照射することによって、各ヘッドで吐出された重合前の樹脂膜14を光重合させて、最下層の樹脂膜14においては第1樹脂層12との間で、それよりも上層の樹脂膜14においては下層の樹脂膜14との間で、それぞれ光重合によって互いに結合させる。これにより、第1樹脂層12に対して光重合によって強固に結合した第2樹脂層13が形成される。
【0105】
なお、第2樹脂層13の形成にあたっては、上述したように、各インクジェットヘッドに対応してそれぞれ紫外線照射部UVを配置し、1つの樹脂膜14を形成するたびに下層の樹脂膜14と重合させてもよく、また、全ての重合前の樹脂膜14を積層した後、一括して重合させてもよい。
【0106】
こうした何れの方法であっても、最下層の樹脂膜14と第1樹脂層12とを光重合させて、第1樹脂層12に対して強固に結合された第2樹脂層13を形成することができる。例えば、第1樹脂層12に含まれる光重合性材料に対して光重合させることが可能な光重合性材料、例えば、ポリエステル系樹脂の重合性オリゴマーを1~10質量%の範囲で含んだ樹脂液を吐出して最下層の樹脂膜14を形成して紫外線を照射すれば、第1樹脂層12に対して光重合した第2樹脂層13を形成することができる。
【0107】
また、本実施形態のように、多色塗装を行わずに、色数を絞ることによって、第2樹脂層13を形成する時間を短くして、塗装アルミニウム製容器10の生産性を向上させることができる。また、第2樹脂層13の厚みを増すための透明な樹脂膜(バーニッシュ)を積層するヘッドを2つにして、樹脂液の吐出量を増大させることによって、厚みの厚い立体感に富んだ第2樹脂層13を短時間で形成し、塗装アルミニウム製容器10の生産性を向上させることができる。
【0108】
第2樹脂層形成工程では、樹脂膜14を形成するための樹脂液として、重合性不飽和化合物を含む樹脂塗料を用いることができる。例えば、重合性不飽和化合物を含む紫外線硬化樹脂塗料を樹脂液としてインクジェットヘッドから吐出して、複数の樹脂膜14を積層させ、紫外線を照射すれば、複数の樹脂膜14が互いに収縮することなく重合して一体化された第2樹脂層13を形成することができる。
【0109】
このようにして形成される第2樹脂層13は、
図8に示すように、例えば、容器本体61の円筒部63の全周方向に、任意の意匠を象るように形成された意匠層(第2樹脂層)73であればよく、下地塗膜層72から突出するように形成された意匠層73によって、立体的なデザインで、高い意匠性を備えたボトル形状の塗装アルミニウム製容器60を製造することができる。
【0110】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0111】
例えば、実施形態の容器本体は、内容物充填前の一方が開口された容器本体であってもよいし、内容物が充填され缶蓋が巻締られた容器本体(充填済みの缶)であってもよい。また、アルミニウム製の容器本体に代えて、円筒状またはテーパー状の胴部を有するアルミニウム製のカップ状の容器本体であってもよい。
【符号の説明】
【0112】
10…塗装アルミニウム製容器
11…容器本体
12…第1樹脂層(下地塗膜層)
13…第2樹脂層(意匠層)
14…樹脂膜