(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124256
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】温度制御システム、観察システムおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
G02B 21/30 20060101AFI20230830BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20230830BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20230830BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20230830BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20230830BHJP
G01N 1/44 20060101ALI20230830BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20230830BHJP
G02B 21/28 20060101ALN20230830BHJP
【FI】
G02B21/30
C12Q1/686 Z
C12M1/00 A
C12M1/34 Z
G01N1/28 J
G01N1/28 F
G01N1/28 W
G01N1/44
G01N21/64 E
G02B21/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027911
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
(71)【出願人】
【識別番号】000101617
【氏名又は名称】アマノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桂 進司
(72)【発明者】
【氏名】大重 真彦
(72)【発明者】
【氏名】勝島 慎二郎
(72)【発明者】
【氏名】北林 功一
(72)【発明者】
【氏名】能登 健介
(72)【発明者】
【氏名】福田 恭平
(72)【発明者】
【氏名】水野 彰
【テーマコード(参考)】
2G043
2G052
2H052
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G043AA03
2G043BA16
2G043CA04
2G043DA06
2G043DA08
2G043EA01
2G043FA02
2G043HA01
2G043HA02
2G043HA09
2G043JA03
2G043KA02
2G043LA03
2G043MA03
2G052AA28
2G052AB16
2G052DA33
2G052EB11
2G052GA28
2G052GA29
2G052GA32
2G052HA17
2G052HC04
2G052HC17
2G052HC22
2G052HC42
2G052JA08
2G052JA27
2H052AA09
2H052AD23
2H052AD24
2H052AF14
4B029AA07
4B029AA23
4B029BB20
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4B029FA12
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4B063QA01
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4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR56
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS34
4B063QS39
4B063QX02
(57)【要約】
【課題】顕微鏡等を含む観察システムにおいて、精度を高めた温度制御を可能にする。
【解決手段】温度制御システムは、透明導電基材と、透明導電基材に通電するための一対の電極と、一対の電極に電力を供給する第1の電源と、一対の電極を含む透明導電基材を抵抗素子として検出される電気信号から透明導電基材の温度を測定する測定回路と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明導電基材と、
前記透明導電基材に通電するための一対の電極と、
前記一対の電極に電力を供給する第1の電源と、
前記一対の電極を含む前記透明導電基材を抵抗素子として検出される電気信号から前記透明導電基材の温度を測定する測定回路と、を備える温度制御システム。
【請求項2】
前記第1の電源は第1のダイオードを介して前記測定回路に接続された前記一対の電極に電力を供給し、
前記測定回路は、第1の電源よりも電圧の低い第2の電源から第2のダイオードを介して電力を供給される請求項1に記載の温度制御システム。
【請求項3】
前記第1の電源は第1のスイッチング素子を介して前記測定回路に接続された前記一対の電極に電力を供給し、
前記測定回路は、第1の電源よりも電圧の低い第2の電源から第2のスイッチング素子を介して電力を供給される請求項1に記載の温度制御システム。
【請求項4】
前記測定回路内における一対の端子間の電圧から前記透明導電基材の温度を検出する検出部をさらに備える請求項1乃至3のいずれか1項に記載の温度制御システム。
【請求項5】
前記測定回路は、ブリッジ回路を有し、前記一対の電極を含む前記透明導電基材は前記ブリッジ回路の可変抵抗辺に対応する測定辺となっている請求項1乃至4のいずれか1項に記載の温度制御システム。
【請求項6】
前記測定回路は、ブリッジ回路を有し、
前記一対の端子間の電圧は、前記ブリッジ回路が平衡状態において電位差がゼロとなる一対の検出端子間における非平衡状態での電位差である請求項4に記載の温度制御システム。
【請求項7】
前記測定回路によって測定される前記透明導電基材の温度が目標温度となるように前記第1の電源から供給される電力を制御する制御部をさらに備える請求項1乃至6のいずれか1項に記載の温度制御システム。
【請求項8】
前記透明導電基材は、酸化インジウムスズ、酸化亜鉛、炭素系水酸化マグネシウム、インジウム酸化亜鉛、ガリウム酸化亜鉛、インジウムガリウム酸化亜鉛、アルミニウム酸化亜鉛、酸化第2スズのいずれか1の材料で製膜される透明導電基材である、請求項1に記載の温度制御システム。
【請求項9】
前記透明導電基材に冷却面を接触させたペルチェ素子をさらに備える請求項1乃至8のいずれか1項に記載の温度制御システム。
【請求項10】
試料を挟み込む一対の透明基材と、
前記一対の透明基材の一方の面に設けられた測温抵抗体と、
前記測温抵抗体に電力を供給する第1の電源と、
前記測温抵抗体から検出される電気信号から前記測温抵抗体の温度を測定する測定回路と、を備える温度制御システム。
【請求項11】
前記一対の透明基材の少なくとも一方または前記測温抵抗体に冷却面を接触させたペルチェ素子をさらに備える請求項10に記載の温度制御システム。
【請求項12】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の温度制御システムと、
前記温度制御システムにより温度制御された試料を観察する顕微鏡と、を備える観察システム。
【請求項13】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の温度制御システムと、
前記温度制御システムにより温度制御された試料の蛍光を検出する蛍光検出器と、
を備える観察システム。
【請求項14】
試料を付着させた透明導電基材に通電するための一対の電極に電力を供給することと、
前記一対の電極を含む前記透明導電基材を抵抗素子として検出される電気信号から前記透明導電基材の温度を測定することと、
前記測定された温度が目標値に近づくように前記電力を制御することと、を実行する制御方法。
【請求項15】
試料を挟み込む一対の透明基材の一方の面に設けられた測温抵抗体に電力を供給することと、
前記測温抵抗体から検出される電気信号から前記測温抵抗体の温度を測定することと、
前記測定された温度が目標値に近づくように前記電力を制御することと、を実行する制御方法。
【請求項16】
前記試料に蛍光を生じさせ、前記試料に対する観察を可能にする工程
をさらに実行する請求項14または15に記載の制御方法。
【請求項17】
透明電極表面に有機シランによる疎水性処理をほどこす工程をさらに実行する請求項14乃至16のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項18】
前記試料は蛍光染色したDNA分子であり、前記DNA分子の蛍光像を取得し、取得される蛍光像に基づきDNA分子の増加を判定可能とする請求項16に記載の制御方法。
【請求項19】
一分子観察用のエバネッセント光を励起光として前記試料に蛍光を生じさせる請求項16に記載の制御方法。
【請求項20】
前記透明導電基材の表面をアミノシラン化処理する工程をさらに実行する請求項14に記載の制御方法。
【請求項21】
前記試料を挟み込む一対の透明基材の表面をアミノシラン化処理する工程をさらに実行する請求項15に記載の制御方法。
【請求項22】
透明導電基材と、
前記透明導電基材に通電するための一対の電極と、
前記一対の電極に電力を供給する第1の電源と、
前記一対の電極を含む前記透明導電基材を抵抗素子として検出される電気信号から前記透明導電基材の温度を測定する測定回路との組合せを複数に備え、
前記組合せ毎に前記透明導電基材の温度を測定する、温度制御システム。
【請求項23】
試料を挟み込む一対の透明基材と、
前記一対の透明基材の一方の面に設けられた測温抵抗体と、
前記測温抵抗体に電力を供給する第1の電源と、
前記測温抵抗体から検出される電気信号から前記測温抵抗体の温度を測定する測定回路
との組合せを複数に備え、
前記組合せ毎に前記測温抵抗体の温度を測定する、温度制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡視野内における局所領域の温度を制御可能な温度制御システム、観察システムおよび制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、生化学等の分野では、ステージに載置された観察対象の生化学反応を顕微鏡の視野内で観察することが行われている。生化学反応を観察する際には、例えば、温度、濃度、圧力、光、触媒、酵素、表面積等を生化学反応に寄与する因子として様々な対象の観察または測定が行われ、定性的・定量的な分析が行われる。顕微鏡視野内で様々な生化学反応を観測することにより、幅広い分析技術に応用することが可能である。
【0003】
なお、本明細書で説明する技術に関連する技術が記載されている先行技術文献としては、以下の文献が存在している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】高木,”透明導電膜の現状と今後の課題”,一般社団法人 日本真空学会,ジャーナル真空,2007,第50巻,第2号,p.105-110
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
生化学反応の制御を目的として顕微鏡視野内での温度制御が行われる場合には、例えば、透明なガラス基板に特殊導電膜を蒸着させたヒータを用いて、ステージ全体を設定温度に昇温させながら反応温度等が測定される。しかしながら、温度を測定する温度センサは観察対象が存在する位置とは異なる離れた位置にある場合がある。さらに、光照射による観察対象の温度上昇変化は透明ヒータの温度センサでは計測できないため、温度センサによって測定された測定温度が視野域に存在する観察部分の真の反応温度であることの保証が十分ではなかった。その結果、温度制御の精度が必ずしも十分ではなかった。
【0006】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、顕微鏡等を含む観察システムにおいて、精度を高めた温度制御を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態は、以下の構成を採用した。すなわち、一実施形態に係る温度制御システムは、透明導電基材と、透明導電基材に通電するための一対の電極と、一対の電極に電力を供給する第1の電源と、一対の電極を含む透明導電基材を抵抗素子として検出される電気信号から透明導電基材の温度を測定する測定回路と、を備えるようにした。
ここで、第1の電源の一例として、本実施形態に係る温度制御システム1の加熱部30が有する電源V2が相当する。また、測定回路の一例として本実施形態に係る温度制御システム1の測定部20および制御部40が相当する。これにより、顕微鏡等を用いた観察システムにおいて、ステージに載置され、顕微鏡視野内の局所領域における温度を精度よく制御する温度制御システムが提供できる。
【0008】
ここで、第1の電源は第1のダイオードを介して測定回路に接続された一対の電極に電力を供給し、測定回路は、第1の電源よりも電圧の低い第2の電源から第2のダイオードを介して電力を供給されるように構成してもよい。
これにより、温度制御システムにおいては、第1のダイオードおよび第2のダイオードの整流作用により、透明導電基材に設けられた一対の電極に印加される加熱系の電力と測定系の電力とが干渉することはない。
【0009】
また、第1の電源は第1のスイッチング素子を介して測定回路に接続された一対の電極に電力を供給し、測定回路は、第1の電源よりも電圧の低い第2の電源から第2のスイッチング素子を介して電力を供給されるように構成してもよい。このような形態であっても、第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子により、透明導電基材の一対の電極に印加される加熱系の電力と測定系の電力との相互干渉が抑制される。
【0010】
さらに、測定回路内における一対の端子間の電圧から透明導電基材の温度を検出する検出部をさらに備えるようにしてもよい。測定回路は、ブリッジ回路を有し、一対の電極を含む透明導電基材はブリッジ回路の可変抵抗辺に対応する測定辺となっているように構成してもよい。一対の端子間の電圧は、ブリッジ回路が平衡状態において電位差がゼロとなる一対の検出端子間における非平衡状態での電位差であるようにしてもよい。さらに、測定回路によって測定される透明導電基材の温度が目標温度となるように第1の電源から供給される電力を制御する制御部を備えるようにしてもよい。
【0011】
透明導電基材は、酸化インジウムスズ、酸化亜鉛、炭素系水酸化マグネシウム、インジウム酸化亜鉛、ガリウム酸化亜鉛、インジウムガリウム酸化亜鉛、アルミニウム酸化亜鉛、酸化第2スズのいずれか1の材料で製膜される透明導電基材で構成されるようにしてもよい。
【0012】
また、一実施形態に係る観察システムは、透明導電基材と、透明導電基材に通電するための一対の電極と、一対の電極に電力を供給する第1の電源と、一対の電極を含む透明導電基材を抵抗素子として検出される電気信号から透明導電基材の温度を測定する測定回路と、を有する温度制御システムと、温度制御システムにより温度制御された試料を観察する顕微鏡と、を備える。また、一実施形態に係る温度制御方法は、制御部が、透明導電基材に通電するための一対の電極に電力を供給することと、一対の電極を含む透明導電基材を抵抗素子として検出される電気信号から透明導電基材の温度を測定することと、測定された温度が目標値に近づくように電力を制御することと、を実行する温度制御方法である。このような形態であっても、顕微鏡等を用いた観察システムにおいて、ステージに載置され、顕微鏡視野内の局所領域における温度を精度よく制御することが可能になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、顕微鏡等を含む観察システムにおいて、精度を高めた温度制御が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係る温度制御システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】実施形態に係る透明導電基材の特性の一例を示す図である。
【
図3】透明導電基材の温度による抵抗値の変化を計測するための実験回路の一例を示す図である。
【
図4】温度特性の測定の結果の一例を示すグラフである。
【
図5】実施形態の温度制御システムによる温度制御の結果の一例を示すグラフである。
【
図6】変形例に係る温度制御システムの構成の一例を示す図である。
【
図7】PCR溶液組成の詳細を示すテーブルである。
【
図8】観察システムを用いたPCR観察を説明する図である。
【
図9】PCRサイクルにおける透明導電基材の温度の遷移を示すグラフの一例である。
【
図10】ペルチェ素子を用いた冷却形態を説明する図である。
【
図11】測温抵抗体を用いた温度制御形態による蛍光観察を説明する図である。
【
図12】蛍光顕微鏡システムの一例を示す図である。
【
図13】複数の異なる温度制御を可能する形態の一例を示す図である。
【
図14】複数の異なる温度制御を可能する形態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、一実施の形態に係る温度制御システムを説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本温度制御システムは実施形態の構成には限定されない。また、本実施形態に開示される構成部品の寸法、材質、形状、相対配置などは、特に記載がない限り発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0016】
〔実施形態1〕
図1は、本実施形態に係る温度制御システム1の構成の一例を示す図である。本実施形態に係る温度制御システム1は、顕微鏡等を含む観察システムにおいて、顕微鏡視野内における局所領域の温度を制御可能なシステムである。
図1に示されるように、温度制御システム1は、透明導電基材10と、破線枠で囲まれた測定部20および加熱部30と、制御部40と、情報処理装置50とを構成に含む。
【0017】
情報処理装置50は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等のメモリ、
外部機器との通信インターフェースを備えるコンピュータである。メモリには、オペレーティングシステム(OS:Operating System)、各種プログラム、各種テーブル等が格納される。情報処理装置50は、通信インターフェースを通じて制御部40と接続される。
【0018】
制御部40は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、メモリを備える
マイコンユニットである。このようなマイコンユニットとして、Arduino due
等のマイコンボードが例示される。制御部40は、デジタルI/O、アナログI/O、AD変換器、DA変換器、通信インターフェース等を有する。制御部40は、例えば、アナログI/Oに入力された電圧値を取得し、AD変換後のデジタルデータを通信インターフェースを介して接続されたPC等の情報処理装置50に出力する。また、制御部40は、メモリ等に保持されたプログラム等にしたがってPWM(Pulse Width Modulation)信号を生成し、アナログI/Oから出力する。なお、情報処理装置50が制御部40の機能を備え、一体的に構成されてもよく、制御部40が情報処理装置50の機能を備えるようにしてもよい。
【0019】
透明導電基材10は、導電性を有し、かつ、可視域で透過性を有する材料で製膜された薄膜基材である。このような薄膜基材として、酸化インジウムスズ(ITO:Indium Tin
Oxide)が例示される。以下、本実施形態においては、透明導電基材10は酸化インジウムスズで製膜された薄膜基材として説明するが、他の透明導電基材が採用されてもよい。例えば、酸化亜鉛(ZnO)、炭素系水酸化マグネシウム(Mg(OH)2:C)インジウム酸化亜鉛(IZO)、ガリウム酸化亜鉛(GZO)、インジウムガリウム酸化亜鉛(IGZO)、アルミニウム酸化亜鉛(AZO)、酸化第2スズ(SnO2)等で製膜された透明導電基材が例示される。
【0020】
図2は、本実施形態に係る透明導電基材10の特性の一例を示す図である。本実施形態では、透明導電基材10として、
図2に示す品番が「1001」のGEOMATEC社製のITO薄膜基材を採用した。
図2に示されるように、採用されたITO薄膜基材のサイズは、「100mm×100mm×1.1mm(厚さ)」であり、単位面積(sq)当た
りの抵抗値は「5±1Ω」である。また、400nmから700nmの可視域における平均分光透過率は「80%以上」であり、製膜されたITO薄膜の膜厚は「300±20nm」である。
【0021】
図1に戻り、透明導電基材10には、製膜されたITO薄膜に対して通電可能なように一対の電極が設けられる。吹出し矢印で囲まれた領域に示されるように、1対の電極は、矩形状の正側電極11aと負側電極11bから構成され、透明導電基材10の同一面に所定の離間距離を有して対向して配置される。本実施形態では、正側電極11aおよび負側電極11bは矩形状に形成され、正側電極11a長手方向の辺と負側電極11bの長手方向の辺が同じ長さで対向するように配置される。本実施形態1では、一例として、正側電極11aおよび負側電極11bの長手方向の長さは約10mmとし、正側電極11aと負側電極11bとの間の離間距離は、上記長手方向の長さと同じ約10mmとした。
【0022】
測定部20は、透明導電基材10の温度を計測するための回路である。
図1に示されるように、測定部20は、電源V1と、ダイオード素子D1と、ブリッジ回路(R1、R2、透明導電基材10、R4)と、差動アンプQ1とを含み構成される。電源V1は、透明導電基材10の通電時における抵抗値を検出するための抵抗値検出用の電源である。本実施形態では、電源V1の電圧は加熱部30の電源V2より低い電圧に設定されている。電源V1の正極側はダイオード素子D1のアノードに接続され、負極側は、透明導電基材10に設けられた負側電極11bと接続される接続点P5に接続される。
【0023】
ダイオード素子D1は整流作用によって、電源V1から供給される電力の電流方向をアノード側からカソード側への順方向に整流する半導体素子である。ダイオード素子D1のカソードは、ブリッジ回路を構成する抵抗素子R1の一端と抵抗素子R2の一端とが接続される接続点P1に接続される。本実施形態では、測定部20の有する電源V1およびダイオード素子D1が、それぞれ「第2の電源」、「第2のダイオード」の一例に相当する。
【0024】
抵抗素子(R1、R2、R4)と透明導電基材10から構成されるブリッジ回路は、通電時の透明導電基材10を抵抗素子R3と想定し、当該通電時における抵抗素子R3の抵抗値を検出するための検出回路である。一端が接続点P1に接続された抵抗素子R1の他端は接続点P2に接続され、一端が接続点P1に接続された抵抗素子R2の他端は接続点P4に接続される。一端が接続点P4に接続される抵抗素子R4の他端は接続点P5に接続される。なお、透明導電基材10に設けられた正側電極11aは接続点P2に接続され、負側電極11bは接続点P5に接続されている。本実施形態では、抵抗素子R1、R2、R4の抵抗値は、それぞれ、2.2kΩ、2.2kΩ、2.8Ωとした。
【0025】
差動アンプQ1は、抵抗素子(R1、R2、R4)を含むブリッジ回路の接続点P2、P4との間の電位差を所定の利得Gで増幅する差動増幅器である。差動アンプQ1の非反転入力端子は接続点P2(接続点P2に接続された接続点P3)に接続され、差動アンプQ1の反転入力端子は接続点P4に接続される。差動アンプQ1により、非反転入力端子に接続された接続点P2、反転入力端子に接続された接続点P4との間の電位差が所定の利得Gによって増幅された電気信号(差分電圧)として出力端子から出力される。本実施形態では、接続点P2と接続点P4との間が、「一対の端子間」の一例に相当する。また、一対の端子間の電圧の一例として、差動アンプQ1の非反転入力端子および反転入力端子間に印加される電位差が相当する。
【0026】
測定部20において、例えば、通電時における透明導電基材10を抵抗素子R3と想定した場合に、抵抗素子(R1、R2、R3、R4)によってブリッジ回路が構成されることになる。このブリッジ回路では、各抵抗素子が、「R1×R4=R2×R3」の条件を
満たす場合に平衡状態になり、接続点P2およびP4間の電位差はゼロ(0V)になる。平衡状態のブリッジ回路においては、抵抗値が既知である抵抗素子(R1、R2、R4)を用いて、通電時における透明導電基材10の抵抗値(R3)を求めることが可能になる。例えば、可変抵抗辺である抵抗素子R4の抵抗値を適宜に増加減することで、測定辺である抵抗素子R3の抵抗値が求められる。また、不平衡状態(非平衡状態)であっても、電源V1から供給される電圧または電流が一定値の場合には、通電時における透明導電基材10の抵抗値(R3)に対応した電位差が差動アンプQ1を介して検出されることになる。本実施形態では、測定部20が「測定回路」の一例であり、接続点P2およびP4間の電位差が入力される差動アンプQ1が「検出部」の一例に相当する。
【0027】
本実施形態に係る温度制御システム1においては、抵抗素子(R1、R2、R4)と通電時の透明導電基材10(抵抗素子R3)とで構成されるブリッジ回路に電源V1から定電圧(5V)を供給する。ブリッジ回路に供給された定電圧は、接続点P2およびP4を介して透明導電基材10に設けられた1対の電極(正側電極11a、負側電極11b)間に印加される。そして、本実施形態に係る温度制御システム1は、定電圧が印加されたブリッジ回路を構成する透明導電基材10の温度による抵抗値の変化を、差動アンプQ1を介し、接続点P2とP4との間に生じる電位差の変化として計測する。なお、通電によって加熱された透明導電基材10の温度変化と、当該透明導電基材を含むブリッジ回路との相関を確認するために、恒温器を用いて透明導電基材10の表面温度を模擬的に変化させ、当該ブリッジ回路における電位差の変化を予め実験的に計測した。
【0028】
図3は、透明導電基材10の温度による抵抗値の変化を計測するための実験回路の一例を示す図である。実験においては、透明導電基材10の温度による抵抗値の変化を計測するため、抵抗素子(R1、R2、R4)と透明導電基材10(抵抗素子R3)とで構成されるブリッジ回路を恒温器(Incubator)内に設ける。そして、恒温器内の温度を室温か
ら100℃まで上昇させて透明導電基材10の表面温度を変化させ、単位温度ステップ毎の接続点P2およびP4間の電位差の変化を測定した。なお、電源V1から供給される電圧は「5.0V」の定電圧とし、電源V1の正極側はダイオード素子D1を介して恒温器外部から接続点P1に接続させ、電源V1の負極側は恒温器外部から接続点P5に接続させた。そして、恒温器外部に設けられた差動アンプQ1の非反転入力端子と接続点P2とを接続させ、反転入力端子と接続点P4とを接続させて、接続点P2とP4との間に生じる電位差の変化を計測した。
【0029】
また、
図3に示す実験回路においては、ブリッジ回路を構成する抵抗素子R1、R2、R4の抵抗値は、一例として、それぞれ、2.0kΩ、2.0kΩ、2.8Ωとした。また、差動アンプQ1の利得Gは1055.7とした。差動アンプQ1の出力は、制御部40を通じて情報処理装置50に入力され、単位温度ステップ毎の接続点P2とP4との間に生じる電位差の変化が計測される。透明導電基材10の温度による抵抗値の変化は、単位温度ステップ毎の接続点P2とP4との間に生じる電位差の変化として計測される。
【0030】
図4は、温度特性の測定の結果の一例を示すグラフである。
図4において、縦軸は差動アンプQ1を介して計測される電位差(V)を表し、横軸は透明導電基材10の表面温度(℃)、すなわち、恒温器内の温度を表す。グラフg1は、単位温度ステップ毎に計測された電位差の推移を表す。グラフg1に示されるように、恒温器内の温度を室温から100℃まで単位温度ステップで上昇させた場合、約1.03Vから約1.53Vの間で線形性を有して上昇変化する電位差が計測された。
【0031】
計測された温度/電位差の相関関係を求めるため、温度を変数y、計測された電位差を変数xとして多項式近似を行い、近似式であるy=ax2+bx+cとなる係数a、bおよびcを最小二乗法を用いて特定した。この結果、一例として、以下の近似式(1)が得ら
れた。
y=7.0803894205x2+174.7189821807x-167.3685908906・・・近似式(1)
また、この測定では、温度と電位差との間の良好な相関関係(相関係数0.9995)が確認された。
【0032】
したがって、近似式(1)で関係付けられた、透明導電基材10の表面温度および当該透明導電基材を仮想的な抵抗素子R3とするブリッジ回路における電位差の関係を用いることで、通電時における透明導電基材10の加熱温度の制御が可能になる。具体的には、本実施形態に係る温度制御システム1は、近似式(1)を用いて加熱時における透明導電基材10の目標温度を設定し、当該目標温度に対する電位差を特定する。温度制御システム1は、透明導電基材10を仮想的な抵抗素子R3とするブリッジ回路の接続点P2およびP4を介して目標温度に至る際の電位差を計測する。そして、本実施形態に係る温度制御システム1の加熱部30は、計測された電位差と目標温度に対する電位差とが同等となるように透明導電基材10の加熱温度を制御する。
【0033】
図1に戻り、加熱部30は、電源V2と、スイッチング回路31と、ダイオード素子D2とを含み構成される。電源V2は、通電時に透明導電基材10を加熱するための加熱用の電源である。本実施形態においては、電源V2から供給される電圧は「12V」である。電源V2の正極側はスイッチング回路31に接続され、負極側は電源V1と共通する接地電位に接続される。
【0034】
スイッチング回路31は、電源V2から供給された電力をPWM制御によって時分割し、当該時分割された電力をダイオード素子D2を介して透明導電基材10の一対の電極(正側電極11aおよび負側電極11b)に印加するための回路である。スイッチング回路31には、制御部40で生成されたPWM信号が入力される。スイッチング回路31は、入力されたPWM信号にしたがって、電源V2から供給された電力をオンオフ制御する。スイッチング回路31は、例えば、PWM信号がオフステータスを示すときには、電源V2とダイオード素子D2間の接続を開放する。また、PWM信号がオンテータスを示すときには、電源V2とダイオード素子D2間の接続を導通する。これにより、電源V2から供給された電力は、PWM信号のオンステータスおよびオフステータスが繰り返される期間、オンステータス期間にしたがってオンオフ制御されることになる。オンオフ制御された電力はダイオード素子D2のアノードに出力される。
【0035】
ダイオード素子D2は整流作用によって、電源V2から供給される電力の電流方向をアノード側からカソード側への順方向に整流する半導体素子である。ダイオード素子D2のカソードは接続点P3に接続される。接続点P3は、透明導電基材10に設けられた正側電極11aと接続される接続点P2に接続されている。したがって、本実施形態では、電源V2に対して順方向接続のダイオード素子D2の整流作用を介し、スイッチング回路31でオンオフ制御されたオンステータス期間の電力を、当該オンステータス期間に限定して透明導電基材10の一対の電極間に通電することが可能になる。透明導電基材10は、一対の電極間に通電されたオンステータス期間の電力によって加熱することが可能になる。本実施形態では、加熱部30の有する電源V2およびダイオード素子D2が、それぞれ「第1の電源」、「第1のダイオード」の一例に相当する。
【0036】
なお、既に説明したように、接続点P2には、ダイオード素子D1のカソードが接続される。このため、電源V1に順方向接続され、電源V2に逆方向接続されたダイオード素子D1の整流作用により、スイッチング回路31でオンオフ制御された電源V2のオンステータス期間の電力が電源V1側に流れ込むことはない。
【0037】
本実施形態の温度制御システム1では、電源V1は常時オンとなっているが、差動アン
プQ1の出力信号を取得するアナログ/デジタルコンバータのサンプリングは電源V2オフ時に実行される。電源V2オフ時には、電源V1による定電圧(5.0V)が透明導電基材10を抵抗素子R3としたブリッジ回路に印加され、差動アンプQ1の出力信号が取得される。ただし、電源V2を常時オンにしたとしても、本実施形態の温度制御システム1は、以下のように動作する。例えば、電源V1と電源V2を常時ONとする。この場合、スイッチング回路31でオンオフ制御されたオフテータス期間においては、電源V2から透明導電基材10に供給される電力はオフになり、電源V1による定電圧(5.0V)が透明導電基材10を抵抗素子R3としたブリッジ回路に印加されることになる。また、電源V2からPWM制御で電力が供給されている間、差動アンプQ1は、信号を増幅している。ただし、電源V1が常時オンであっても、スイッチング回路31でオンオフ制御されたオンステータス区間では、ダイオードD1が逆バイアスとなり、電源V1の電圧は、実効的には、ブリッジ回路に印加されないことになる。したがって、温度のサンプリング中に差動アンプQ1で増幅される信号は、スイッチング回路31でのオフステータス区間での信号である。いずれにしても、本実施形態では、電源V1による定電圧が印加されたブリッジ回路の接続点P2およびP4を通じて、オンステータス期間で加熱された透明導電基材10の温度に対応する電位差を計測することが可能になる。なお、接続点P2には、接続点P3を通じてダイオード素子D2のカソードが接続される。
【0038】
このため、電源V2に順方向接続され、電源V1に逆方向接続されたダイオード素子D2の整流作用により、電源V1から供給される電力が電源V2側に流れ込むことはない。本実施形態では、透明導電基材10を加熱する加熱部30と、加熱された透明導電基材10の温度に対応する電位差を測定する測定部20との相互干渉を抑制しながら、透明導電基材10の加熱および温度(電位差)計測が可能になる。
【0039】
制御部40は、差動アンプQ1から出力された差分電圧と、予め設定された目標温度(目標値)に基づいて、一対の電極間に印加される電力の制御を行う。差動アンプQ1から出力された差分電圧は、例えば、PWM信号のオフステータス期間の、オンステータス期間からオフステータス期間への遷移のタイミングで取得される。なお、目標温度の設定は、制御部40と通信インターフェースを介して接続された情報処理装置50によって行われる。
【0040】
例えば、制御部40は、メモリに近似式(1)で示される透明導電基材10の表面温度と、当該透明導電基材を仮想的な抵抗素子R3とするブリッジ回路における電位差との相対関係を示す情報を保持する。このような情報は、近似式(1)の形態であってもよく、単位温度ステップ毎に電位差情報が格納されたテーブル形式であってもよい。
【0041】
そして、制御部40は、PI制御により、目標温度に対応する電位差情報と計測された電位差が同等となるように、スイッチング回路31に出力されるPWM信号を制御する。例えば、PWM信号のオンステータスおよびオフステータスが繰り返される周期、単一周期内におけるオンステータス期間、オフステータス期間の長さ等が制御される。制御部40によって生成されたPWM信号は、スイッチング回路31に出力され、透明導電基材10の一対の電極間の所定領域(対向する正側電極11aと負側電極11b間の10mm×10mm間の局所領域)の温度が目標温度になるように制御される。本実施形態では、制御部40を介して実行されるPWMによる温度制御が「温度制御方法」の一例である。ただし、本実施形態の温度制御方法がPWMに限定される訳ではない。例えば、電源V2から供給する電圧を制御することにより、透明導電基材10に投入される電力を制御してもよい。この場合、投入される電力は電圧の2乗に比例する。
【0042】
図5は、本実施形態の温度制御システム1による温度制御の結果の一例を示すグラフである。
図5に示す制御例では、目標温度を「70℃」として、本実施形態に係る温度制御
システム1による温度制御が行われた。
図5において、縦軸は透明導電基材10の表面温度(℃)を表し、横軸は経過時間(sec)を表す。グラフg2は、単位時間ステップ毎に測定された表面温度の推移を表す。透明導電基材10の局所領域における表面温度は、熱電対を用いて測定された。
【0043】
グラフg2に示されるように、透明導電基材10の局所領域における表面温度は、温度制御開始時の室温温度(約27℃)から上昇し、約40秒後に目標温度に到達した。目標温度到達後では、制御部40によるPI制御が継続され、透明導電基材10の局所領域における表面温度は目標温度近傍で推移していることがわかる。
【0044】
以上、説明したように、本実施形態に係る温度制御システム1は、透明導電基材10に対して、当該透明導電基材に通電するための一対の電極(正側電極11a、負側電極11b)を設けることができる。一対の電極は、透明導電基材10上において所定の離間距離で対向して配置される。そして、温度制御システム1は、一対の電極を通じて透明導電基材10の、当該一対の電極間の局所領域を加熱する加熱部30と当該局所領域の温度を測定する測定部20とを備えることができる。これにより、顕微鏡等を用いた観察システムにおいて、ステージに載置され、顕微鏡視野内の局所領域における温度を精度よく制御する温度制御システム1が提供できる。
【0045】
加熱部30は、ダイオード素子D2を介し、電源V2から供給された電力をスイッチング回路31で時分割して1対の電極間に印加する。スイッチング回路31では、制御部40から出力されたPWM信号に基づいて、電源V2から供給された電力をオンオフ制御する。
測定部20は、ダイオード素子D1を介して電源V1による定電圧が印加されたブリッジ回路を用いて、加熱された透明導電基材10の局所領域の温度を計測する。定電圧が印加されたブリッジ回路においては、加熱された透明導電基材10の局所領域の温度が、不平衡状態の接続点P2と接続点P4との間に生じる電位差として差動アンプQ1により検出される。差動アンプQ1により検出された不平衡状態の接続点P2と接続点P4との間の電位差は差分電圧として制御部40に出力される。
これにより、本実施形態に係る温度制御システム1では、順方向に接続されたダイオード素子D1およびD2の整流作用により、透明導電基材10に設けられた一対の電極に印加される加熱系の電力と測定系の電力とが干渉することはない。
【0046】
制御部40では、透明導電基材10の温度と、ブリッジ回路から不平衡状態で差動アンプQ1を介して出力される差動電圧との関係が保持される。制御部40は、差動アンプQ1から出力された差分電圧と、予め設定された目標温度に基づいて、一対の電極間に印加される電力の制御を行う。
制御部40は、PI制御により、計測された差分電圧(差動アンプQ1出力)が、目標温度に対応する差分電圧となるように、スイッチング回路31に出力されるPWM信号を制御する。例えば、PWM信号のオンステータスおよびオフステータスが繰り返される周期、単一周期内におけるオンステータス期間、オフステータス期間の長さ等が制御される。
この結果、本実施形態に係る温度制御システム1においては、透明導電基材10の一対の電極間の局所領域の温度を目標温度になるように制御できる。本実施形態によれば、顕微鏡等を含む観察システムにおいて、精度を高めた温度制御を可能にする技術が提供できる。
【0047】
〔変形例〕
実施形態1においては、ダイオード素子D1およびD2の整流作用により、透明導電基材10に設けられた一対の電極に印加される加熱系の電力と測定系の電力との相互干渉を
抑制した。変形例に係る温度制御システム1においては、スイッチ素子を用いて、透明導電基材10に設けられた一対の電極に印加される加熱系の電力と測定系の電力との相互干渉を抑制する。
【0048】
図6は、変形例に係る温度制御システム1の構成の一例を示す図である。変形例に係る温度制御システム1においては、スイッチ素子Q2、Q3を備えることで実施形態1に係る温度制御システム1と相違する。以下、実施形態1との相違点を主に説明する。
【0049】
図6に示されるように、変形例においては、実施形態1の温度制御システム1のダイオード素子D1、D2がそれぞれスイッチ素子Q2、Q3に置換えられる。このようなスイッチ素子として、例えば、リレー、FET(Field Effect Transistor)等のスイッチ素
子が例示される。スイッチ素子Q2の入力端子Q2aは電源V1の正極側と接続され、出力端子Q2bは、ブリッジ回路を構成する抵抗素子R1とR2との接続点P1に接続される。また、スイッチ素子Q3の入力端子Q3aは電源V2の正極側と接続され、出力端子Q3bは、接続点P3を介してブリッジ回路の接続点P2に接続される。接続点P2は、透明導電基材10に設けられた正側電極11aに接続される。
【0050】
変型例においては、制御部40からスイッチング回路31に出力されるPWM信号に基づいてスイッチ素子Q2、Q3の導通/開放を制御してもよい。例えば、加熱部30のスイッチ素子Q3は、PWM信号のオンステータス期間に同期して入力端子Q3aと出力端子Q3bとの間を導通させ、オフステータス期間に同期して入力端子Q3aと出力端子Q3bとの間を開放させる。また、測定部20のスイッチ素子Q2は、PWM信号のオフステータス期間に同期して入力端子Q3aと出力端子Q3bとの間を導通させ、オンステータス期間に同期して入力端子Q3aと出力端子Q3bとの間を開放させる。このように、変形例においても、スイッチ素子Q2の導通/開放と、スイッチ素子Q3の導通/開放とを反転させたPWM信号で制御することにより、透明導電基材10の一対の電極に印加される加熱系の電力と測定系の電力との相互干渉が抑制される。変形例において、加熱部30が有するスイッチ素子Q3は「第1のスイッチング素子」の一例に相当し、測定部20が有するスイッチ素子Q2は「第2のスイッチング素子」の一例に相当する。
ただし、スイッチング回路31に出力されるPWM信号と無関係、独立にスイッチ素子Q2、Q3の導通/開放を制御してもよい。すなわち、制御部40は、望ましい加熱期間だけスイッチ素子Q3をオンに制御し、スイッチ素子Q2をオフに制御すればよい。そして、制御部40は、望ましい測定タイミングで、スイッチ素子Q3をオフに制御し、スイッチ素子Q2をオンに制御すればよい。このように、スイッチ素子Q2、Q3を用いることで、加熱制御とは無関係に温度測定が可能となり、温度測定の自由度が増加する。
【0051】
なお、スイッチ素子Q2、Q3が、FETで構成される場合には、各入力端子をドレイン端子とし、各出力端子をソース端子として、上記反転関係にあるPWM信号をゲート端子に入力すればよい。スイッチ素子Q3は、PWM信号のオンステータス期間に同期してドレイン端子とソース端子との間を導通させ、オフステータス期間に同期してドレイン端子とソース端子との間を開放させることができる。また、スイッチ素子Q2では、反転させたPWM信号のオンステータス期間に同期してドレイン端子とソース端子との間を導通させ、オフステータス期間に同期してドレイン端子とソース端子との間を開放させることができる。
【0052】
〔温度制御実験例〕
本実施形態に係る温度制御システム1を用いて、生化学反応の観察実験を行った。具体的には、MS2バクテリオファージの濃縮ファージ溶液(1.1×10
7phage)を鋳型にし、
PCR溶液とともにエマルションを作成する。そして、作成されたエマルション溶液を観察対象として、1step エマルションRT(Real Time)-PCR(Polymerase Chain Re
action)によるDNA(Deoxyribonucleic Acid)増幅の観察を行った。ここで、PCR
溶液組成の詳細は、
図7に示される通りである。
【0053】
エマルション溶液におけるDNA増幅の観察は、顕微鏡等を有する観察システムを用いて行われる。
図8は、観察システムを用いたPCR観察を説明する図である。
図8(a)に示されるように、作成されたエマルション溶液13は、透明導電基材10の一対の電極間の領域に分注される。分注されたエマルション溶液の液量は20μLである。なお、透明導電基材10の一対の電極間の領域に分注されたエマルション溶液13には、カバーガラス12が載置される。カバーガラス12と透明導電基材10との間のエマルション溶液13の層の厚さは119μmと計算される。エマルション溶液13が分注された透明導電基材10は、カバーガラス12とともに顕微鏡のステージに載置され、DNA増幅のためのPCRサイクルによる温度制御が行われる。PCRサイクルによる温度制御条件は
図8(b)に示される通りである。透明導電基材10の一対の電極間の領域に分注されたエマルション溶液、またはカバーガラス12が載置された状態のエマルション溶液は、温度制御システムにより温度制御された試料の一例に相当する。なお、エマルション溶液は、透明導電基材10上に分注されてもよく、顕微鏡のステージに載置されたカバーガラス12上に分注し、当該分注されたエマルション溶液に透明導電基材10を載置するようにしてもよい。
図8の観察システムでは、透明導電基材10は、試料を付着させたものということができる。
【0054】
本実施形態に係る温度制御システム1は、
図8(b)に示されるPCRサイクルにしたがって、エマルション溶液13が分注された透明導電基材10の一対の電極間の局所領域の温度制御を行う。例えば、DNA増幅の熱サイクルでは、温度制御システム1は、95℃を目標温度として加熱を行い、透明導電基材10の一対の電極間の局所領域の温度を目標温度に到達させる。そして、目標温度到達後、95℃の温度期間を10秒間継続させる。その後、95℃の温度を冷却させながら目標温度を60℃として温度制御を行い、目標温度到達後、60℃の温度期間を30秒間継続させる。そして、温度制御システム1は、この熱サイクルを40回繰り返すように制御を行う。
【0055】
図9は、PCRサイクルにおける透明導電基材10の温度の遷移を示すグラフの一例である。縦軸は温度(℃)を表し、横軸は経過時間(min)を表す。
図9(a)に示されるように、PCRサイクルにしたがって、エマルション溶液13が分注された透明導電基材10の一対の電極間の局所領域の温度制御が行われる場合では、PCRサイクルが完了するまでに約70分の時間を要した。これは、95℃に加熱された透明導電基材10が60℃の温度に冷却するまで時間を要したためである。PCRサイクルが完了するまでの期間を短縮するため、ファンを用いて95℃に加熱された透明導電基材10を冷却するようにした。この結果、
図9(b)に示されるように、95℃から60℃に至る冷却時間が短縮され、PCRサイクルが完了するまでの期間が60以内に短縮された。
【0056】
さらなる冷却時間の短縮のため、ペルチェ素子を用いて透明導電基材10の冷却効率を高めるようにしてもよい。
図10は、ペルチェ素子を用いた冷却形態を説明する図である。
図10(a)は、ペルチェ素子(15、15a)による冷却形態の構成を上面視する上面図であり、
図10(b)はペルチェ素子(15、15a)による冷却形態の構成を側面視する側面図である。
図10(a)、(b)に示されるように、ペルチェ素子15の冷却面に当接する熱伝導ブロック(銅ブロック)15aが、透明導電基材10の片面側に接触するように設けられる。ペルチェ素子15の放熱面には、冷却フィン16が設けられる。なお、観察対象の試料溶液14は、例えば、一対のカバーガラス12aおよび12b間に分注され、顕微鏡等の対物レンズ101を介して観察される。なお、
図10と同様の構成で、
図1の透明導電基材10をペルチェ素子15によって冷却してもよい。また、後述する
図11の測温抵抗体10aを用いた温度制御システム1において、測温抵抗体10aま
たはカバーガラス12aおよび12bの少なくとも一方をペルチェ素子15によって冷却してもよい。
【0057】
温度制御システム1は、例えば、ペルチェ素子に流れる電流を制御する回路構成を備える。そして、温度制御システム1は、例えば、上記PCRサイクルの95℃から60℃に至る冷却期間において、透明導電基材10に当接させたペルチェ素子に流れる電流を吸熱方向に制御すればよい。ペルチェ素子を用いて冷却効率を高めることで冷却時間が短縮でき、例えば、顕微鏡の視野域に載置された酵素等の反応の観察が効率化できる。温度制御システム1は、ペルチェ素子の冷却面を透明電極等を用いる試料観察部に接触させ、冷却時間を短縮するPCR反応観察システムということができる。なお、ここで、透明電極等とは、
図1の透明導電基材10、
図10の透明導電基材10、
図11の測温抵抗体10aまたはカバーガラス12aおよび12b等である。
【0058】
PCRサイクル完了後、透明導電基材10の一対の電極間の局所領域に分注されたエマルションを顕微鏡の視野域で観察すると、蛍光を発するエマルションが確認できた。本実施形態に係る温度制御システム1による温度制御を行うことで、透明導電基材10上での、1step エマルションRT-PCRによるDNA増幅が観察できた。
【0059】
〔他の変形例〕
上記実施形態1の温度制御システム1では、ITO薄膜基材である透明導電基材10に正側電極11aと負側電極11bを設けて、透明導電基材10を介した試料の加熱と温度測定が実施された。ただし、温度制御システム1の構成が、このような構成に限定される訳ではない。例えば、ITO薄膜基材に代えて、測温抵抗体を用いた温度制御形態が可能である。測温抵抗体は、金属または金属酸化物が温度変化によって電気抵抗値が変化する特性を有するため、この測温抵抗体の特性を利用することで、電気抵抗値に対応する温度の計測と加熱とが可能になる。このような測温抵抗体として、例えば、白金測温抵抗体、銅測温抵抗体、ニッケル測温抵抗体等が例示できる。
【0060】
図11は、測温抵抗体を用いた温度制御形態による蛍光観察を説明する図である。
図11(a)は、蛍光観察時における測温抵抗体を上面視する上面図であり、
図11(b)は測温抵抗体を用いた蛍光観察を側面視する側面図である。
図11(a)に示されるように、測温抵抗体10aには一対の電極(正側電極11a、負側電極11b)が当該測温抵抗体に対して通電可能なように設けられる。そして、一対の電極が設けられた測温抵抗体10aは、透明導電基材10と置換えられて、
図1乃至
図4または
図6等と同様の構成で、本実施形態に係る温度制御システム1による温度制御が行われる。すなわち、測温抵抗体10aは、加熱のためのヒータとして機能するとともに、ブリッジ回路の測定辺の抵抗として機能する。
【0061】
測温抵抗体を用いた温度制御形態による蛍光観察は、例えば、
図11(b)に示されるように、一対のカバーガラス12aおよび12b間に分注された試料溶液14を観察対象として行われる。そして、一対の電極が設けられた測温抵抗体10aは、例えば、カバーガラス12aの、分注された試料溶液14が接する面(内側の面)に対向する一方の面(外側の面)に設けられる。カバーガラス12bの、分注された試料溶液14が接する面(内側の面)に対向する一方の面(外側の面)側には、観察システムを構成する顕微鏡等の対物レンズ101が設けられ、当該対物レンズを通して照明光を照射することで、試料溶液14の蛍光が観察可能になる。すなわち、一対の電極が設けられた測温抵抗体10aを制御対象とする場合であっても、本実施形態に係る温度制御システム1による温度制御が行われることで、試料溶液14の温度を因子とする生化学反応の蛍光観察が可能になる。顕微鏡視野内の局所領域においては、精度を高めた温度制御が可能になる。なお、カバーガラス12aおよび12bは、試料を挟み込む一対の透明基材の一例に相当する。
【0062】
視野域における蛍光観察においては蛍光顕微鏡を用いてもよい。
図12は、蛍光観察するための蛍光顕微鏡システムの一例を示す図である。
図12に示されるように、蛍光顕微鏡システム2は、蛍光分子励起用の励起光源、対物レンズ101、当該対物レンズに励起光を導入する光学系を有する。そして、対物レンズ101に導入された励起光により透明導電基材10に設けられた一対の電極間の対象蛍光分子を励起するとともに、蛍光像は励起光成分をカットする光学フィルタ等を通して、高感度カメラなどで観察される。本実施例において、高感度カメラは「蛍光検出器」の一例である。励起光は、例えば、波長488nmの可視光が用いられる。蛍光像は、例えば、512nmの緑色の蛍光による像として、青色をカットする光学フィルタを通して観察される。蛍光像は高感度カメラなどで画像として取り込まれる。蛍光像の大きさと数を画像処理などで調べ、特定の大きさの蛍光像を計数することで、測定したい大きさのDNA分子の数量等が求められる。
図1または
図6のシステムを用いて温度制御を実行しつつ、蛍光顕微鏡により、DNA分子を観察し、DNA分子の数を求めればよい。この手順は、一分子イメージングによる観察工程ということもできる。また、この手順が試料に蛍光を生じさせ、試料に対する観察を可能にする工程ということができる。このように、顕微鏡観察用の透明電極である透明導電基材10を蛍光顕微鏡でのPCR反応観察に使用し、蛍光染色したDNA分子の蛍光像を画像としてとらえ、蛍光像の増加を調べることで、PCR反応の進行状況を調べることが可能となる。
【0063】
蛍光顕微鏡でDNA分子を観察する代わりに、分光光度計で、蛍光の強度を測定してもよい。過去の実験で得られた蛍光の強度とDNA分子の数のデータを蓄積しておき、その関係を校正曲線として保持することで、次回以降のPCRでのDNA分子の数を分光光度計で得られた蛍光の強度から推定してもよい。そして、
図1または
図6のシステムを用いて温度制御を実行しつつ、分光光度計で得られた蛍光の強度から現在時点のDNA分子の数を計測(推定)してもよい。この手順は、分光光度計による蛍光強度の計測工程ということもできる。
【0064】
なお、一般的なPCR反応を蛍光観察する場合には、PCR溶液はエマルジョン化をしなくても良い。観察対象とするDNA分子は、定量PCRなどに用いられている一般的な方法で蛍光色素により修飾される。なお、DNA染色に使用されるYOYO-1といった緑色蛍光色素が用いられてもよい。
【0065】
DNAはリン酸バックボーンに負の電荷を帯びているためにアミノ基のような正電荷を有する官能基と静電気的に引き合う。このため、エマルションを使わない一般的なPCR反応を蛍光顕微鏡で観察するには、透明導電基材10の表面上に静電的に緩くDNA分子を固定することで蛍光観察がしやすくなる。例えば、3-Aminopropyltriethoxysilane(3-APTES, H2N(CH2)3 Si(OC2H5)3)により、透明導電基材1
0の表面を処理(アミノシラン化)して正電荷を持たせるようにしてもよい。透明導電基材10の表面に静電的に緩く結合させることで、動きを止め蛍光観察しやすくする。また緩く結合させているため、酵素(ポリメラーゼ)の反応が阻害されないといった効果が期待できる。なお、DNA分子が表面に強く結合すると酵素が立体的にDNA分子に回り込めなくなる立体阻害を起こして反応できなくなる。
【0066】
視野域における蛍光観察においては、例えば、試料に照射された光の全反射によって生ずる近接場光(エバネッセント光)による観察が採用されてもよい。近接場光は、例えば、光学プリズムや屈折率マッチングオイル等を用いて発生させることができる。近接場光による蛍光観察により、反応産物検出の高感度化(低バックグランド化)が期待できる。蛍光顕微鏡システムに一分子観察用のエバネッセント光を励起に用いることでPCR反応の進行状況が把握できる。このように、蛍光顕微鏡システムに使用して、一分子観察用の
エバネッセント光を励起に用いてPCR反応の進行状況を調べることができる。
【0067】
また、観察対象の試料が載置される透明導電基材10、あるいはカバーガラス12の表面にジクロロジメチルシラン等の有機シラン等によるシラン処理を施して疎水性を高め、反応中の物質の吸着を抑制するようにしてもよい。すなわち、エマルションが表面吸着すると、変形を起こして光学的に不均一(複雑な屈折で像がゆがむ)になることが想定される。このため、表面を疎水性処理して、エマルションの吸着を防ぐことが有効となる。また、エマルションによるPCR(エマルションPCR)の場合、静電的に緩やかに表面に付着させるなら、その強さ(変形度)の加減ができる可能性があり、この点から、エマルションPCRの観察にアミノシラン処理が有効であると推定できる。なお、エマルションを使わない、通常のPCRを観察する場合もDNA分子が特異的に表面に吸着されると、酵素が回り込めず立体阻害を起こして反応できなくなる。このため、表面をジクロロジメチルシラン等の有機シラン等により疎水性処理してDNA分子の吸着を抑制することは一般のPCR反応の進行状況を把握するためにも有用である。そこで、顕微鏡観察においてエマルションやDNA分子の表面吸着を抑制して蛍光観察しやすくするため、透明電極である透明導電基材10の表面にジクロロジメチルシランによる疎水性処理をほどこすとよい。また、透明電極表面をアミノシラン化処理することで、蛍光顕微鏡によりPCR反応の進行状況が観察しやすくなる。
【0068】
本実施形態に係る透明導電基材10においては、一対の電極を微細加工により形成し、顕微鏡視野内における複数の局所領域で異なった温度制御が行われるようにしてもよい。
図13は、微細加工により、複数の異なる温度制御を可能する形態の一例を示す図である。
図13(a)は、微細加工により複数の透明導電基材(10#1~10#8)のそれぞれに形成された一対の電極(11a#1~11a#8、11b#1~11b#8、)を上面視した上面図である。また、
図13(b)は、微細加工により複数の透明導電基材(10#1~10#8)のそれぞれに形成された一対の電極(11a#1~11a#8、11b#1~11b#8、)を側面視した側面図である。なお、
図13に示される形態は、透明導電基材10と一対の電極との組合せが、並列させて構成されたユニット10cの一例である。
【0069】
図13(a)、(b)に示されるように、透明導電基材(10#1~10#8)のそれぞれには、一対の電極(11a#1~11a#8、11b#1~11b#8、)が形成され、それぞれの電極間には試料等が分注される凹部(17#1~17#8)が設けられる。
図13に示すユニット10cにおいては、正側電極(11a#1~11a#8)は同一端に形成され、負側電極(11b#1~11b#8)は正側電極とは異なる同一端に形成される。そして、ユニット10c周辺に各一対の電極に接続される端子を設け測定系、加熱系の配線で接続されるようにする。
【0070】
図14は、ユニット10cを採用する形態における温度制御システム1の一例を示す図である。
図14に示されるように、本形態の温度制御システム1では、透明導電基材(10#1~10#8)のそれぞれに対応する温度制御チャンネル(20#1-20#8、30#1-30#8)が設けられる。透明導電基材(10#1~10#8)のそれぞれの一対の電極(11a#1~11a#8、11b#1~11b#8、)が、ブリッジ回路の測定辺の抵抗として機能する。すなわち、温度制御チャンネル(20#1-20#8、30#1-30#8)の各々の端子対は、
図1の接続点P2とP5に対応する。温度制御チャンネル(20#1-20#8、30#1-30#8)の各々は、接続点P2とP5を測定辺とする
図1に例示したブリッジ回路を有している。すなわち、透明導電基材(10#1~10#8)のそれぞれの一対の電極(11a#1~11a#8、11b#1~11b#8、)が、ブリッジ回路の測定辺の抵抗として機能する。したがって、温度制御チャンネル(20#1-20#8、30#1-30#8)の各々は、独立して透明導電基材(10
#1~10#8)温度測定が可能である。そして各温度制御チャンネルは、制御部40に接続され、メモリ等に保持された温度制御チャンネル毎のプログラムにしたがって生成されたPWM制御による加熱のための電流が透明導電基材(10#1~10#8)に出力される。以上のように、各透明導電基材の一対の電極間に設けられた凹部(17#1~17#8)に分注された試料においては、それぞれが独立してPWM制御による加熱および温度測定が実行される。
【符号の説明】
【0071】
1・・温度制御システム、2・・蛍光顕微鏡システム、10・・透明導電基材、10b・・測温抵抗体、10c・・ユニット、11a・・正側電極、11b・・負側電極、12,12a,12b・・カバーガラス、13・・エマルション溶液、14・・試料溶液、15,15a・・ペルチェ素子、16・・冷却フィン、17・・凹部、20・・測定部、30・・加熱部、31・・スイッチング回路、40・・制御部、50・・情報処理装置、100・・ステージ、101・・対物レンズ、D1,D2・・ダイオード素子、P1,P2,P3,P4,P5・・接続点、Q1・・差動アンプ、Q2,Q3・・スイッチ素子、R1,R2,R4・・抵抗素子(ブリッジ回路)、V1・・電源(測定用)、V2・・電源(加熱用)