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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124264
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】浴槽装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/00 20060101AFI20230830BHJP
   A47K 3/28 20060101ALI20230830BHJP
   A47K 3/20 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
A47K3/00 E
A47K3/28
A47K3/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027925
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】坪井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】市川 由有
(72)【発明者】
【氏名】榎 将剛
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 慧
(72)【発明者】
【氏名】東 賢輔
(72)【発明者】
【氏名】神出 真緒
(72)【発明者】
【氏名】宇野 涼子
(72)【発明者】
【氏名】石井 悠和
(72)【発明者】
【氏名】小黒 利雄
(72)【発明者】
【氏名】園田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】大江 俊春
【テーマコード(参考)】
2D132
【Fターム(参考)】
2D132FA03
2D132FB02
2D132FC02
2D132FD04
2D132FF03
2D132FF04
2D132FG01
2D132FH11
2D132FJ07
2D132FJ24
2D132FJ30
2D132FJ32
2D132FK04
(57)【要約】
【課題】一般的な給湯器を用いて湯を浴槽内に供給する浴槽装置であっても、吐水孔から吐出される湯水の温度を適切に調整することができる浴槽装置を提供する。
【解決手段】本発明は、浴槽装置(1)であって、浴槽本体(2)と、吸水口(9b)と、吸水口から吸い込まれた湯水を吐出させる吐水装置(8)と、循環流路と、この循環流路に設けられ、吸水口から吐水口へ向けて湯水を圧送する循環ポンプ(6)と、給湯器(52)からの湯を循環流路に流入させる供給管路(10)と、給湯器の湯の流量を検出する水量センサ(24)と、吐出される湯水の温度を上昇させるために、供給管路から循環流路へ湯を流入させる制御装置(16)と、を有し、吐出される湯水の温度を上昇させる場合において、水量センサによって検出された湯の流量が所定流量以下になったとき、制御装置は、吸水口から循環流路に吸い込まれる湯水の量を増大させることを特徴としている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐水装置を備えた浴槽装置であって、
湯水を貯留する浴槽本体と、
この浴槽本体内の湯水を吸い込むための吸水口と、
上記浴槽本体の上方に設けられ、上記吸水口から吸い込まれた湯水を上記浴槽本体の内方に向けて吐出させる吐水口を備えた吐水装置と、
上記吸水口と上記吐水口を接続する循環流路と、
この循環流路に設けられ、上記吸水口から上記吐水口へ向けて湯水を圧送する循環ポンプと、
給湯器から供給された湯を上記循環流路に流入させる供給管路と、
上記給湯器から供給された湯の流量を検出可能な水量センサと、
上記吐水口から吐出される湯水の温度を上昇させるために、上記供給管路から上記循環流路へ湯を流入させると共に、上記循環ポンプを制御して、上記吸水口から上記循環流路に吸い込まれる湯水の量を調整する制御装置と、を有し、
上記吐水口から吐出される湯水の温度を上昇させる場合において、上記水量センサによって検出された湯の流量が所定流量以下になったとき、上記制御装置は、上記循環ポンプを制御して、上記吸水口から上記循環流路に吸い込まれる湯水の量を増大させることを特徴とする浴槽装置。
【請求項2】
上記制御装置は、上記循環ポンプを制御することにより、上記吸水口から上記循環流路に吸い込まれる湯水の量を増大させた後、上記供給管路から湯を上記循環流路に流入させる請求項1記載の浴槽装置。
【請求項3】
上記供給管路から供給される湯は、上記循環流路内の、負圧になる部分に流入される請求項1又は2に記載の浴槽装置。
【請求項4】
さらに、上記給湯器から供給された湯を一時的に貯留する貯留タンクを有し、上記制御装置は、上記水量センサによって検出された湯の流量が所定流量よりも多い場合には、上記給湯器から上記貯留タンクに流入する湯の流量が、上記貯留タンクから上記循環流路内に流入する湯の流量よりも多くなるように、上記貯留タンクに流入する湯の流量を制御する請求項1乃至3の何れか1項に記載の浴槽装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽装置に関し、特に、吐水装置を備えた浴槽装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2019-150334号公報(特許文献1)には、浴槽水循環型吐水装置が記載されている。この浴槽水循環型吐水装置は、浴槽内の湯水を取り込み、取り込んだ湯水を浴槽の水面よりも上方から浴槽内に吐出させるように構成されている。このように、上方から吐出された湯水を入浴者の肩や首筋に当てることにより、入浴者には心地良い刺激が与えられる。また、この浴槽水循環型吐水装置においては、検出部によって検出された湯水の温度が所定温度よりも高い場合には、吐水孔から吐水される湯水の単位時間当たりの合計熱量が少なくなるように制御される。即ち、吐水孔から吐水される湯水の流量を低下させることにより、吐水される湯水の単位時間当たりの合計熱量を少なくし、入浴者が逆上せてしまうのを抑制している。
【0003】
さらに、特許文献1記載の別の実施形態においては、検出部によって検出された湯水の温度が所定温度よりも高い場合には、循環させている湯水に、給水管から供給された水道水を流入させ、吐水孔から吐水される湯水の温度を低下させている。これにより、吐水される湯水の単位時間当たりの合計熱量が少なくなり、入浴者の逆上せを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-150334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の浴槽水循環型吐水装置によれば、浴槽内から取り込まれた湯水を入浴者の肩や首筋に当てて、入浴者には心地良い刺激を与えることができると共に、吐水される湯水の単位時間当たりの合計熱量を少なくすることにより、逆上せを抑制することができる。しかしながら、入浴者は、肩や首筋に湯水を浴びることによる温刺激を求めている場合もある。ところが、浴槽内に貯留されている湯水が十分に高い温度でない場合には、浴槽内から取り込んだ湯水を入浴者に当てたとしても、入浴者に十分な温刺激を与えることができないという問題がある。
【0006】
ここで、入浴者に温刺激を与えるために、浴槽内から取り込まれて循環されている湯水に、外部の給湯器から供給された温度の高い湯を混入させ、吐水孔から吐出される湯水の温度を上昇させることが考えられる。しかしながら、吐水孔から吐出された湯水は入浴者に急速に熱を与えるため、入浴者に心地良い温刺激を与えるためには、吐出される湯水の極めて微妙な温度管理が必要となる。一方で、一般的に、外部の給湯器は、少ない流量の湯を供給することはできない。具体的には、一般的に、外部の給湯器は、供給指示を受けた湯の流量が一定値(最低着火流量)以下であると給湯器に入った水を温めるためのバーナーが消火してしまうといった課題がある。したがって、外部の給湯器から最低着火流量以上の流量しか流入させることは難しいため、吐水孔から吐出される湯水の温度を適切に維持することが難しいという問題がある。
【0007】
従って、本発明は、一般的な給湯器を用いて湯を浴槽内に供給する浴槽装置であっても、吐水口から吐出される湯水の温度を適切に調整することができる浴槽装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、吐水装置を備えた浴槽装置であって、湯水を貯留する浴槽本体と、この浴槽本体内の湯水を吸い込むための吸水口と、浴槽本体の上方に設けられ、吸水口から吸い込まれた湯水を浴槽本体の内方に向けて吐出させる吐水口を備えた吐水装置と、吸水口と吐水口を接続する循環流路と、この循環流路に設けられ、吸水口から吐水口へ向けて湯水を圧送する循環ポンプと、給湯器から供給された湯を循環流路に流入させる供給管路と、給湯器から供給された湯の流量を検出可能な水量センサと、吐水口から吐出される湯水の温度を上昇させるために、供給管路から循環流路へ湯を流入させると共に、循環ポンプを制御して、吸水口から循環流路に吸い込まれる湯水の量を調整する制御装置と、を有し、吐水口から吐出される湯水の温度を上昇させる場合において、水量センサによって検出された湯の流量が所定流量以下になったとき、制御装置は、循環ポンプを制御して、吸水口から循環流路に吸い込まれる湯水の量を増大させることを特徴としている。
【0009】
このように構成された本発明においては、循環ポンプにより吸水口から吸い込まれた浴槽本体内の湯水が、循環流路を通って浴槽本体の上方に設けられた吐水装置の吐水口から、浴槽本体の内方に向けて吐出される。一方、給湯器から供給された湯は、吐水口から吐出される湯水の温度を上昇させるために、制御装置により、供給管路を介して循環流路に流入される。制御装置は、水量センサによって検出された湯の流量が所定流量以下になったとき、循環ポンプを制御して、吸水口から循環流路に吸い込まれる湯水の量を増大させている。
【0010】
このように構成された本発明によれば、給湯器から供給された湯が供給管路を介して循環流路に流入されるので、吐水装置の吐水口から吐出される湯水の温度を上昇させることができ、入浴者に温刺激を与えることができる。ここで、給湯器から供給される湯は、その温度制御、流量制御が難しく、温度の高い多量の湯を循環流路に流入させてしまうと、吐水口から吐出される湯水の温度が高くなり過ぎ、入浴者が逆上せてしまう虞がある。ところが、一般的な給湯器では、着火を維持するために最低限必要な流量があり、この最低流量よりも供給量を絞ることが困難である。
【0011】
上記のように構成された本発明によれば、水量センサによって検出された湯の流量が所定流量以下になったとき、制御装置は、循環ポンプを制御して、吸水口から循環流路に吸い込まれる湯水の量を増大させる。これにより、浴槽本体の吸水口から循環流路に吸い込まれて循環する湯水に対して、供給管路から循環流路へ流入する温度の高い湯の割合が低下するので、一般的な給湯器を用いて湯を浴槽内に供給する浴槽装置であっても、吐水口から吐出される湯水の温度を適切に調整することができる。この結果、逆上せを防止しながら、入浴者に心地良い温刺激を与えることができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、制御装置は、循環ポンプを制御することにより、吸水口から循環流路に吸い込まれる湯水の量を増大させた後、供給管路から湯を循環流路に流入させる。
【0013】
このように構成された本発明によれば、吸水口から循環流路に吸い込まれる湯水の量を増大させた後、供給管路から湯を循環流路に流入させるので、循環流路を循環する湯水の流量が増加した後で、供給管路から温度の高い湯が混入される。このため、吐水口から吐出される湯水の温度を上昇させる過渡期において、湯水の温度が上がりすぎるのを防止することができ、入浴者に心地良い温刺激を与えることができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、供給管路から供給される湯は、循環流路内の、負圧になる部分に流入される。
このように構成された本発明によれば、供給管路から供給される湯が循環流路内の負圧になる部分に流入されるので、循環流路に送られた湯が供給管路に逆流するのを防止することができ、湯を循環流路に確実に流入させることができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、さらに、給湯器から供給された湯を一時的に貯留する貯留タンクを有し、制御装置は、水量センサによって検出された湯の流量が所定流量よりも多い場合には、給湯器から貯留タンクに流入する湯の流量が、貯留タンクから循環流路内に流入する湯の流量よりも多くなるように、貯留タンクに流入する湯の流量を制御する。
【0016】
このように構成された本発明によれば、給湯器から貯留タンクに流入する湯の流量が、貯留タンクから循環流路内に流入する湯の流量よりも多くされる。このため、貯留タンクに貯留されている湯が枯渇するのを防止することができ、吐水口から吐出される湯水の温度制御を確実に維持することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の浴槽装置によれば、一般的な給湯器を用いて湯を浴槽内に供給する浴槽装置であっても、吐水口から吐出される湯水の温度を適切に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態による浴槽装置を設置した浴室全体を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態による浴槽装置の、図1のII-II線に沿う全断面図である。
図3】本発明の実施形態の浴槽装置に備えられている循環装置、及び温度調節装置の全体構成を示すブロック図である。
図4】本発明の実施形態の浴槽装置に備えられている循環装置、及び温度調節装置を示す斜視図である。
図5】本発明の実施形態の浴槽装置に備えられているチャンバ及び吐水装置を取り出して示した正面図である。
図6】本発明の実施形態の浴槽装置に備えられているチャンバ及び吐水装置の、図5のVI-VI線に沿う断面図である。
図7】本発明の実施形態による浴槽装置によって実行される温刺激制御の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による浴槽装置を説明する。
図1は、本発明の実施形態による浴槽装置を設置した浴室全体を示す斜視図である。
【0020】
図1に示すように、本発明の実施形態の浴槽装置1は、浴槽本体2と、浴槽本体2の上縁に設けられた吐水装置8と、この吐水装置からの湯水の吐出を制御する制御装置(制御部)16と、を有し、浴室R内に設置される。また、浴室Rの壁面には、リモコン18が取り付けられており、このリモコン18により、吐水装置8からの湯水の吐出を操作できるようになっている。さらに、本実施形態において、浴槽装置1は、浴室Rの一側に、壁面に接するように配置されている。
【0021】
浴槽本体2は、平面視において略長方形の箱形に形成され、内部に湯水を貯留するように構成されている。本実施形態においては、浴槽本体2は、その1つの長辺、及びその両側の2つの短辺全体が、浴室Rの内壁面に接するように配置されている。また、浴槽本体2の一方の短辺を構成する内壁面は、入浴者が寄りかかるように形成された浴槽本体2の短辺方向の内壁面である背もたれ面2aとして構成されている。また、浴室Rの内壁面に接していない側の浴槽本体2の長辺には、エプロン2cが着脱可能に取り付けられている。ここで、背もたれ面とは、入浴の際に、入浴者の背中が接する内壁面である。
【0022】
吐水装置8は、浴槽本体2の背もたれ面2aの上部に設けられ、浴槽本体2の内方に向けて湯水を吐出するように構成されている。本実施形態において、吐水装置8は、背もたれ面2a上縁に沿って延びる扁平で幅広な吐水口8aを備えており、背もたれ面2aに寄りかかった入浴者の肩に向けて湯水を吐出するように構成されている。
【0023】
本発明の実施形態による浴槽装置1は、浴槽本体2内に貯留されている湯水を、浴槽本体2に設けられた吸水口(浴槽取水口)9bから吸い込み、吐水装置8の吐水口8aから吐出させるように構成されている。即ち、浴槽本体2内の湯水は、吸水口9bから吸い込まれ、吐水装置8の吐水口8aから浴槽本体2内に戻るように循環される。一方、吐水口8aから吐出される湯水の温度を上昇、又は低下させる場合には、循環されている湯水に、給湯器から供給された湯又は水道から供給された水を混入させるように構成されている。
【0024】
次に、図2乃至図4を参照して、浴槽本体2内の湯水を、吐水装置8の吐水口8aを通って循環させる循環装置、及び循環されている湯水に所定温度の湯又は水を混入させて、吐水装置から吐出される湯水の温度を調整する温度調節装置の構成を説明する。
図2は、本発明の実施形態による浴槽装置の、図1のII-II線に沿う全断面図である。図3は、本発明の実施形態の浴槽装置に備えられている循環装置、及び温度調節装置の全体構成を示すブロック図である。図4は、本発明の実施形態の浴槽装置に備えられている循環装置、及び温度調節装置を示す斜視図である。
【0025】
まず、図3及び図4に示すように、浴槽本体2内の湯水を循環させる循環装置は、浴槽本体2の側壁面2b(図2)に設けられた2つの吸水口9bと、これらの吸水口9bから吸い込まれた湯水が流入するチャンバ11と、湯水をチャンバ11に圧送する循環ポンプ6と、を有する。
【0026】
図3に示すように、2つの吸水口9bのうちの一方の吸水口9bは、第1管路4aによってチャンバ11に接続されている。また、第1管路4aの途中には循環ポンプ6が設けられ、吸水口9bから吸い込まれた湯水をチャンバ11に圧送するように構成されている。さらに、第1管路4aは、循環ポンプ6の下流側で分岐されており、一方はチャンバ11に接続され、他方は、浴槽本体2の背もたれ面2aに設けられた浴槽吐水口9aに接続されている。従って、循環ポンプ6によって加圧された湯水の一部は、浴槽本体2内の水面下から浴槽吐水口9aを通って浴槽本体2内に環流する。
【0027】
2つの吸水口9bのうちの他方の吸水口9bは、第2管路4bによってチャンバ11に直接接続されている。後述するように、循環ポンプ6によって加圧された湯水が第1管路4aからチャンバ11に流入することにより、チャンバ11内に負圧が発生し、この負圧によって湯水が第2管路4bからチャンバ11内に引き込まれる。さらに、チャンバ11の上面には第3管路4cが接続されており、チャンバ11から流出した湯水は、第3管路4cを通って吐水装置8に供給される。従って、第1管路4a、第2管路4b、第3管路4c及びチャンバ11は、吸水口9b及び吐水口8aに接続された循環流路を構成している。
【0028】
次に、図4乃至図6を参照して、チャンバ11の構成を説明する。
図5は、本実施形態の浴槽装置1に備えられているチャンバ11及び吐水装置8を取り出して示した正面図である。また、図6は、図5のVI-VI線に沿う断面図である。
【0029】
図4乃至図6に示すように、チャンバ11は、概ね直方体の箱状に構成されており、その底面には、第1管路4a及び第2管路4bが夫々接続されている。また、チャンバ11上面の、第1管路4aに対向する位置には、第3管路4cが接続されている。さらに、チャンバ11の上面には、後述する温度調節装置から供給される湯水を流入させる供給管路10も接続されている。即ち、第1管路4a及び第2管路4bは、チャンバ11の底面に横方向に並んで接続され、第3管路4cは、チャンバ11上面の、第1管路4aに対向する位置に接続されている。また、供給管路10は、チャンバ11上面の、第1管路4aと第2管路4bの間の位置に配置されている。
【0030】
なお、図4に示すように、チャンバ11は浴槽本体2に対して比較的低い位置に配置されており、浴槽本体2内に貯留されている湯水の水面よりも下側に位置する。このため、浴槽装置1の通常の使用時においては、チャンバ11、及び第1管路4a、第2管路4bの全体、及び第3管路4cの下部は、湯水が満たされた状態になっている。
【0031】
また、図6に示すように、チャンバ11の底面に接続された第1管路4aの先端にはノズル20が設けられ、第1管路4aからチャンバ11内に流入する湯水の流路が絞られている。このため、循環ポンプ6(図3図4)によって加圧された湯水が第1管路4aからノズル20を通ってチャンバ11内に流入する際の流速が高められる。これにより、第1管路4aからチャンバ11内に流入した湯水が、第1管路4aに対向するように接続された第3管路4cに勢いよく流入すると共に、チャンバ11内に満たされていた湯水も巻き込まれて第3管路4cに流入する。
【0032】
さらに、チャンバ11内の湯水が巻き込まれて第3管路4cに流入することにより、チャンバ11内において、少なくとも第2管路4bが接続されている部分N1や、供給管路10が接続されている部分N2が負圧となる。即ち、第2管路4b及び供給管路10は、循環流路の一部であるチャンバ11内の負圧になる部分に接続されている。これにより、第2管路4b内の湯水、及び供給管路10内の湯水は、負圧によってチャンバ11内に引き込まれ、第1管路4aから流入した湯水と共に第3管路4cに流入する。
【0033】
即ち、チャンバ11内に設けられたノズル20、及びこれに対抗して接続された第3管路4cは、ジェットポンプのように作用して、第2管路4b及び供給管路10から夫々供給された湯水を、第3管路4cに流入させる。第3管路4cに流入した湯水は、第3管路4cの上端に接続された吐水装置8に流入し、その吐水口8aから浴槽本体2の内方に向けて吐出される。図5に示すように、吐水装置8の吐水口8aは、薄く、幅広に構成されているため、吐水口8aから吐出される湯水は、薄い膜状となって入浴者の首筋や肩に当たる。
【0034】
次に、図3及び図4を参照して、本発明の実施形態の浴槽装置1に備えられている温度調節装置を説明する。
温度調節装置は、浴槽本体2の吸水口9bから吐水装置8の吐水口8aに到る循環流路に、所定温度の湯水を流入させるように構成されている。これにより、吐水装置8から吐出される湯水の温度を上昇、又は低下させ、入浴者に温刺激又は冷刺激を与えることができる。
【0035】
図3に示すように、温度調節装置は、外部の給湯源から供給された湯、又は外部の給水源から供給された水を流入させ、一時的に貯留する貯留タンク12と、この貯留タンク12からチャンバ11に流入させる湯又は水の流量を制御する加圧ポンプ14と、を有する。本実施形態においては、外部の給湯源として給湯器52が接続されており、上水道54から供給された水が分岐部54aにおいて分岐され、給湯器52に供給される。
【0036】
給湯器52は、上水道54から供給された水を加熱し、生成された湯を、給湯管40a、湯用電磁弁56を通って貯留タンク12に供給する。なお、本実施形態において、給湯器52は、台所(図示せず)用の給湯器と兼用であり、台所側で給湯温度が設定されると、その温度の湯が貯留タンク12にも供給される。従って、本実施形態において、制御装置16は、給湯器52から供給される湯水の温度を独立して制御することはできない。
【0037】
一方、外部の給水源である上水道54から供給された水は、給水管40b、水用電磁弁58を通って貯留タンク12に供給される。さらに、給湯管40aには、湯用電磁弁56の上流側に逆止弁41aが設けられ、給水管40bには、水用電磁弁58の上流側に逆止弁41bが設けられている。また、給湯管40a及び給水管40bは、湯用電磁弁56及び水用電磁弁58の下流側に設けられた合流部43aにおいて合流される。
【0038】
合流部43aの下流側には共用管43が接続され、貯留タンク12まで延びている。この共用管43には、上流側から順に、水量センサ24、流調バルブ26、定流量弁28、流入側温度センサ30が設けられている。
水量センサ24は、単位時間当たりに共用管43を流れる湯水の体積流量[L/min]を検出し、検出信号を制御装置16に出力するように構成されている。なお、湯用電磁弁56が開弁され、水用電磁弁58が閉弁された状態においては、水量センサ24によって、給湯器52から供給される湯の流量を検出することができる。
【0039】
流調バルブ26は、制御装置16からの制御信号に基づいて、共用管43を流れる湯水の流量を制御する水量比例弁である。
定流量弁28は、共用管43を流れる湯水の流量が、所定流量を超えないように調整するように構成されている。
流入側温度センサ30は、共用管43を通って貯留タンク12に流入する湯水の温度を検出し、検出信号を制御装置16に出力するように構成されたサーミスタである。
【0040】
貯留タンク12は、吐水口8aから吐出される湯水の温度を上昇又は低下させるために、循環流路の一部であるチャンバ11に流入させる湯水を一時的に貯留するように構成されている。即ち、共用管43を通って供給された水又は湯は、貯留タンク12に流入して一時的に貯留され、供給管路10を通ってチャンバ11に流入する。貯留タンク12は矩形状のタンクであり、共用管43は貯留タンク12の上面に接続され、供給管路10は貯留タンク12の底面に接続されている。即ち、共用管43は、貯留タンク12内に貯留された水又は湯の水面W0の上方から所定のエアギャップをもって湯又は水を貯留タンク12に流入させる。このため、貯留タンク12に接続されている給湯器52及び上水道54は、貯留タンク12において、その下流側と縁切りされる。
【0041】
また、図3に示すように、貯留タンク12の内部には、貯留タンク温度センサ32と、フロートスイッチ42と、オーバーフロー管44が設けられている。
貯留タンク温度センサ32は、貯留タンク12内に貯留されている湯水の温度を検出し、検出信号を制御装置16に出力するように構成されたサーミスタである。
フロートスイッチ42は、ステム42a、及びこのステム42aに沿って上下に移動可能なフロート42bを備えている。フロート42bは貯留タンク12内の水位に応じて上下に移動し、貯留タンク12内の水位が所定水位になると、フロートスイッチ42から制御装置16に検出信号が出力される。
【0042】
オーバーフロー管44は、貯留タンク12の底面から、上方に向けて貯留タンク12内に延びる開管であり、その上端が溢流部44aを構成している。オーバーフロー管44が設けられていることにより、貯留タンク12内の水位が所定の水位以上に上昇すると、貯留タンク12内の湯又は水は、上端の溢流部44aを越えてオーバーフロー管44内に流入し、オーバーフロー管44を通って排出される。なお、オーバーフロー管44を通って貯留タンク12から排出された湯又は水は、浴槽本体2の下側に設けられた排水パン(図示せず)の上に落ち、下水に排水される。
【0043】
次に、貯留タンク12は、供給管路10を介してチャンバ11に接続されている。また、供給管路10の途中には、上流側から順に、流出側温度センサ34、加圧ポンプ14、水量センサ36、逆止弁38、及び電磁弁39が設けられている。供給管路10からチャンバ11に流入した湯又は水は、浴槽本体2内から第1管路4a及び第2管路4bを通ってチャンバ11に流入した湯水と混合され、混合された湯水は、第3管路4cを通って吐水装置8の吐水口8aから吐出される。第3管路4cの途中には、吐出流量センサ21及び吐水温度センサ22が夫々設けられている。また、浴槽本体2内に貯留されている湯水の温度は、浴槽温度センサ23によって検出される。
【0044】
流出側温度センサ34は、貯留タンク12から流出する湯水の温度を検出し、検出信号を制御装置16に出力するように構成されたサーミスタである。
加圧ポンプ14は、制御装置16からの制御信号に基づいて、貯留タンク12からチャンバ11に流入する湯又は水の流量を制御するように構成されている。
水量センサ36は、単位時間当たりに供給管路10を流れる湯又は水の体積流量[L/min]を検出し、検出信号を制御装置16に出力するように構成されている。
【0045】
逆止弁38は、チャンバ11から貯留タンク12へ、供給管路10を通って湯又は水が逆流するのを防止するように構成されている。
電磁弁39は、制御装置16からの制御信号に基づいて開閉され、チャンバ11に湯又は水を流入させるとき開弁されるように構成されている。チャンバ11への湯又は水の供給を行わないときは電磁弁39が閉弁され、チャンバ11内に負圧が発生しても、供給管路10からチャンバ11内に湯又は水が流入することはない。
【0046】
吐出流量センサ21は、第3管路4cを通って吐水装置8から吐出される湯水の流量を検出し、検出信号を制御装置16に出力するように構成されたセンサである。なお、吐水装置8から吐出される湯水の流量は、例えば、循環ポンプ6の回転数や電圧値から、検出(推定)することができる。その場合は、吐出流量センサ21を省略することができる。
吐水温度センサ22は、第3管路4cを通って吐水装置8から吐出される湯水の温度を検出し、検出信号を制御装置16に出力するように構成されたサーミスタである。
【0047】
浴槽温度センサ23は、浴槽本体2内に貯留されている湯水の温度を検出し、検出信号を制御装置16に出力するように構成されたサーミスタである。なお、浴槽本体2内に貯留されている湯水の温度は、供給管路10からチャンバ11内に湯水を流入させていない状態においては、吐水温度センサ22によって検出することもできる。従って、吐水温度センサ22を、浴槽温度センサ23として使用することができ、この場合には浴槽温度センサ23を省略することもできる。
【0048】
次に、本発明の実施形態による浴槽装置1に備えられた制御装置16を説明する。
制御装置16は、入浴者によるリモコン18(図1)の操作に基づいて、入浴者が希望する温度の湯水が吐水装置8から吐出されるように温度調節装置を制御するように構成されている。具体的には、制御装置16は、マイクロプロセッサ、メモリ、これらを作動させるソフトウェア、インターフェイス回路(以上図示せず)等から構成されている。また、制御装置16は、浴槽本体2の背もたれ面2aの裏側の空間に収容されている。図1に示すように、背もたれ面2aの裏側の空間は、浴槽本体2のエプロン2cを取り外すことにより、浴室Rの洗い場側からアクセスすることができる。このため、浴槽本体2のエプロン2cを取り外すだけで、制御装置16の調整、修理等のメンテナンスを容易に行うことができる。即ち、制御装置16を、アクセスしやすい空間に集約的に配置することにより、メンテナンス性を高めることができる。
【0049】
まず、制御装置16には、吐水温度センサ22、浴槽温度センサ23、流入側温度センサ30、貯留タンク温度センサ32、及び流出側温度センサ34によって検出された各温度が入力される。さらに、リモコン18からの指令信号、及び水量センサ24、水量センサ36、及びフロートスイッチ42による各検出信号も制御装置16に入力される。
【0050】
制御装置16は、温度調節装置を構成する循環ポンプ6、加圧ポンプ14、流調バルブ26、電磁弁39、湯用電磁弁56、及び水用電磁弁58に制御信号を送り、吐水装置8から吐出される湯水の温度が設定温度になるように制御する。即ち、制御装置16は、吐水温度センサ22によって検出される温度が所定温度となるように、循環流路を循環している湯水に、貯留タンク12から湯又は水を流入させる。これにより、浴槽温度センサ23によって検出された温度よりも高い温度又は低い温度の湯水を、吐水装置8から吐出させることができる。
【0051】
即ち、浴槽本体2内の湯水の温度よりも高い温度の湯水を吐出させる場合には、水用電磁弁58を閉弁させ、湯用電磁弁56を開弁させて、浴槽本体2内の湯水よりも温度の高い湯を、貯留タンク12に貯留させる。次いで、電磁弁39を開弁させると共に、加圧ポンプ14を作動させて、貯留タンク12内の温度の高い湯をチャンバ11に流入させる。これにより、循環流路を通って循環されている浴槽本体2内の湯水に、貯留タンク12からの温度の高い湯が混合され、吐水装置8の吐水口8aから吐出される湯水の温度が上昇する。
【0052】
吐水口8aから吐出される湯水の温度は、吐水温度センサ22によって検出される。吐水温度センサ22によって検出された温度が設定温度よりも低い場合には、加圧ポンプ14の回転数を増加させる一方、循環ポンプ6の回転数を低下させ、混合される温度の高い湯の割合を増加させる。吐水温度センサ22によって検出された湯水の温度が設定温度よりも高い場合には、加圧ポンプ14の回転数を低下させる一方、循環ポンプ6の回転数を増加させ、混合される温度の高い湯の割合を低下させる。また、制御装置16は、水量センサ24及び水量センサ36の検出信号に基づいて、貯留タンク12内に貯留されている湯の量が適正になるように、流調バルブ26を制御する。
【0053】
一方、浴槽本体2内の湯水の温度よりも低い温度の湯水を吐出させる場合には、水用電磁弁58を開弁させ、湯用電磁弁56を閉弁させて、浴槽本体2内の湯水よりも温度の低い水を、貯留タンク12に貯留させる。次いで、電磁弁39を開弁させると共に、加圧ポンプ14を作動させて、貯留タンク12内の温度の低い水をチャンバ11に流入させる。これにより、循環流路を通って循環されている浴槽本体2内の湯水に、貯留タンク12からの温度の低い水が混合され、吐水装置8の吐水口8aから吐出される湯水の温度が低下する。
【0054】
吐水温度センサ22によって検出された湯水の温度が設定温度よりも高い場合には、加圧ポンプ14の回転数を増加させる一方、循環ポンプ6の回転数を低下させ、混合される温度の低い水の割合を増加させる。吐水温度センサ22によって検出された湯水の温度が設定温度よりも低い場合には、加圧ポンプ14の回転数を低下させる一方、循環ポンプ6の回転数を増加させ、混合される温度の低い水の割合を低下させる。
【0055】
次に、図7を参照して、制御装置16による温刺激制御を具体的に説明する。
本実施形態の浴槽装置1は、浴槽本体2内の入浴者が温まりたいとき、入浴者に心地良い温刺激を与えることを目的として、温刺激制御を実行可能に構成されている。図7は、本発明の実施形態による浴槽装置1によって実行される温刺激制御の処理を示すフローチャートである。図7に示すフローチャートは、入浴者が温まりたいときに、リモコン18を操作することにより実行される。
【0056】
まず、図7のステップS1においては、入浴者がリモコン18を操作した時点において、吐水装置8から循環吐水が行われているか否かが判断される。即ち、循環吐水が行われている状態においては、電磁弁39が閉弁されると共に、循環ポンプ6が作動されている。この状態においては、浴槽本体2内の湯水が、吸水口9bから吸い込まれ、吐水装置8の吐水口8aから吐出されて浴槽本体2内に戻るように循環される。一方、電磁弁39が閉弁されているため、貯留タンク12内の湯水が循環流路内に流入することはない。このように、循環吐水が行われている状態で、入浴者がリモコン18を操作した場合には、図7に示すフローチャートの処理はステップS3に進む。
【0057】
一方、循環吐水が行われていない状態で、入浴者がリモコン18を操作した場合にはステップS2に進み、ステップS2においては、循環吐水が開始される。即ち、電磁弁39を閉弁させたままで循環ポンプ6を作動させ、浴槽本体2内の湯水を吐水装置8の吐水口8aから吐出させて循環させる。このように、入浴者が温まるべくリモコン18を操作した場合でも、最初から浴槽本体2内の湯水よりも温度の高い湯水を吐水装置8から吐出させることはなく、まず、循環吐水が開始される。
【0058】
次に、ステップS3においては、吐水温度センサ22によって検出された、吐水装置8から吐出されている湯水の温度が、制御装置16によって取得される。さらに、ステップS4においては、吐出流量センサ21によって検出された、吐水装置8から吐出される湯水の流量が、制御装置16によって取得される。
【0059】
次に、ステップS5において、貯留タンク12の準備が行われる。具体的には、制御装置16は、湯用電磁弁56に制御信号を送ってこれを開弁させ、給湯器52において生成された湯を、貯留タンク12に流入させる。なお、上述したように、本実施形態において、給湯器52は台所(図示せず)で使用する給湯器と兼用にされているため、台所において設定されている温度 の湯が貯留タンク12に供給される場合もあり、制御装置16が給湯器52の設定温度を制御することはない。
【0060】
さらに、ステップS6においては、貯留タンク温度センサ32によって検出された、貯留タンク12に貯留されている湯水の温度が、制御装置16によって取得される。なお、給湯器52からの湯の供給が開始された時点において、貯留タンク12が空であった場合には、貯留タンク12に貯留されている湯水の温度は、概ね給湯器52から供給された湯の温度と等しくなる。しかしながら、給湯器52からの湯の供給が開始された時点において、貯留タンク12内に低温の湯水又は水が残っていた場合には、貯留タンク12内の湯水の温度は、給湯器52から供給された湯の温度よりも低くなる。
【0061】
このように貯留タンク12内に低温の湯水等が残っていた場合には、給湯器52から湯を流入させ続け、貯留タンク12内で低温の湯水等と混合された温度の低い湯水をオーバーフロー管44を介して溢流させる。これにより、貯留タンク12内に貯留されている湯水の温度が上昇する。なお、貯留タンク12は比較的容積が小さいため、貯留タンク12内に低温の湯水等が残っていた場合でも、比較的短時間で貯留タンク12内の湯水の温度は上昇する。
【0062】
次に、ステップS7においては、貯留タンク12の準備が完了したか否かが判断される。即ち、ステップS7においては、貯留タンク12に、十分に高い温度の湯が、十分な量、貯留されたか否かが判断される。上述したように、貯留タンク12内の湯水の温度は、貯留タンク温度センサ32によって検出される。また、貯留タンク12内に十分な量の湯水が貯留されているか否かは、フロートスイッチ42によって検出される。貯留タンク12の準備が完了していない場合には、ステップS5に戻り、準備が完了するまでステップS5→S6→S7→S5の処理が繰り返される。
【0063】
貯留タンク12の準備が完了すると、ステップS8~S18の温調処理が実行される。
ステップS9においては、温調処理を終了する指示信号が入力されたか否かが判断される。温調処理終了の指示信号が入力された場合には、図7に示すフローチャートの1回の処理を終了する。具体的には、入浴者が暖かい湯水の吐出による温刺激を終了すべく、リモコン18を操作すると、温調処理終了の指示信号が制御装置16に入力される。
【0064】
温調処理終了の指示信号が入力されていない場合には、ステップS10に進み、ステップS10においては、制御部16は、吐水装置8からの目標吐水温度と、吐水装置8からの現在の現在吐水温度とを取得し、S11に進む。
【0065】
ステップS11においては、制御部16は、例えば、目標吐水温度と現在吐水温度との差分、及び循環流路4側の湯水の流量等から、給水流路10から給水すべき湯水等の必要流量を算出し、S12に進む。
【0066】
次いで、ステップS12においては、ステップS11において計算された必要流量がゼロよりも大きいか否かが判断される。計算された必要流量がゼロである場合には、図7に示すフローチャートの1回の処理を終了する。例えば、吸水口9bから吸い込まれ、循環している湯水の温度と、ステップS10において取得された設定温度が等しい場合には、貯留タンク12から湯を流入させる必要はなく、貯留タンク12から流入させるべき湯の必要流量はゼロになる(例えば、温刺激を長時間継続していると、浴槽本体2内の湯水の温度が高くなるため、このような状態になる場合がある。)。
一方、ステップS11において計算された必要流量がゼロよりも大きい場合には、制御装置16は、給湯器52から必要流量の湯が貯留タンク12に流入するように、流調バルブ26に制御信号を送る。さらに、水量センサ24は、給湯器52から供給された湯の流量を検出し、図7に示すフローチャートにおける処理はステップS13に進む。
【0067】
ステップS13においては、水量センサ24によって検出された流量が所定流量よりも多いか否かが判断される。即ち、一般的なガス給湯器は、供給すべき湯の流量が所定の着火最低流量よりも少なくなると、ガスに着火された状態を維持できないため、それ以上流量を絞ることができない。ステップS13においては、貯留タンク12から必要流量を流入させるために、給湯器52から供給される流量が着火最低流量よりも多く、着火された状態が安定して維持できるか否かが判断される。なお、本実施形態において、給湯器52の着火最低流量は、約3.5L/minであり、給湯器52が安定した着火状態を維持可能な所定流量は、約4.0L/minに設定されている。水量センサ24によって検出された流量が所定流量よりも多い場合には、フローチャートにおける処理は、ステップS14に進む。
【0068】
ステップS14において、制御装置16は、流調バルブ26に制御信号を送り、給湯器52から貯留タンク12に流入させる湯の給湯流量を、ステップS11において計算された必要流量とほぼ同じ流量に設定する。この給湯流量は、着火最低流量よりも十分に多いため、給湯器52は着火を維持することができる。さらに、ステップS16において、制御装置16は、加圧ポンプ14に制御信号を送り、ステップS11において計算された必要流量の湯を循環流路に流入させる。即ち、制御装置16は、水量センサ36によって検出される流量が、ステップS11において計算された必要流量になるように、加圧ポンプ14を作動させる。これにより、吐水装置8から吐出される湯水の温度は、設定温度となる。
【0069】
また、給湯器52から貯留タンク12に流入する湯の給湯流量と、貯留タンク12から循環流路に流入させる湯の流量がほぼ等しくなり、貯留タンク12内の水位は、ほぼ一定に維持される。なお、変形例として、給湯器52から貯留タンク12に流入する給湯流量を、貯留タンク12から流出する必要流量よりも僅かに多く設定することもできる。さらに、変形例として、給湯器52からの湯の供給と共に、上水道54から少量の水が貯留タンク12に供給されるように本発明を構成することもできる。この場合には、給湯器52から貯留タンク12に流入する湯、及び上水道54から貯留タンク12に流入する水の合計の流量が、貯留タンク12から循環流路内に流入する湯水の流量よりも僅かに大きくなるように制御する。これにより、流調バルブ26や水量センサ36に検出誤差がある場合でも、貯留タンク12内の湯が枯渇するのを防止することができる。
【0070】
一方、ステップS13において、水量センサ24によって検出された流量が所定流量以下であると判断された場合には、ステップS15に進む。ステップS15においては、制御装置16は、流調バルブ26に制御信号を送り、給湯器52から貯留タンク12に流入させる湯の給湯流量を給湯器52の着火最低流量よりも多い所定流量に設定する。これにより、給湯器52は着火を維持することができる。
【0071】
さらに、ステップS15において、制御装置16は、循環ポンプ6に制御信号を送り、吸水口9bから吸い込まれる浴槽本体2内の湯水の量が増加するように、循環ポンプ6の回転数を高くする。これにより、吸水口9bから吸い込まれて吐水装置8の吐水口8aから吐出される循環する湯水の流量が増加する。ここで、循環する湯水の流量は、所定流量の湯が、貯留タンク12から供給管路10を介して循環流路(チャンバ11)に流入した場合に、吐水装置8の吐水口8aから吐出される湯水の温度が設定温度になる流量に増加される。即ち、吸水口9bから吸い込まれて循環する循環流量を増加させることにより、供給管路10から循環流路に流入する湯の割合が低下する。このため、ステップS11において計算された必要流量よりも多い所定流量の湯を流入させた場合でも、吐水装置8から吐出される湯水の温度を設定温度にすることができる。
【0072】
次に、ステップS17においては、制御装置16は、加圧ポンプ14に制御信号を送り、所定流量の湯を循環流路に流入させる。ステップS15において循環流量を増加させているため、吐水装置8から吐出される湯水は設定温度になる。ここで、制御装置16は、ステップS15において循環流量を増加させた後、所定時間経過した後に、所定流量の湯を循環流路に流入させる。即ち、吐水装置8から吐出される循環流量が確実に増大した後に、所定流量の湯の混入が開始される。これにより、供給管路10からの湯の注入を開始する過渡期において、吐水装置8から吐出される湯水の温度が過度に上昇するのを防止している。本実施形態においては、吐水装置8から吐出される循環流量を増大させた後、約30秒後に供給管路10からの湯の注入を開始させている。
【0073】
なお、ステップS15において、給湯器52から貯留タンク12に流入させる湯の給湯流量が所定流量に設定され、ステップS17において、貯留タンク12から循環流路に流入させる湯の流量も所定流量に設定されるので、貯留タンク12内の水位は概ね一定に維持される。
【0074】
ステップS16又はS17の処理が終了すると、フローチャートにおける処理はステップS9に戻り、温調処理の終了指示が入力され(ステップS9→リターン)、又は必要流量がゼロになる(ステップS12→リターン)まで、ステップS9~S16、又はS9~S17の処理が繰り返し実行される。
【0075】
このように、給湯器52から供給される湯の温度が高い場合には、少量の湯を循環流路に流入させることにより、吐水装置8から吐出される湯水の温度が高くなるので、必要流量が少なくなる。これにより、必要流量が所定流量よりも少なくなる。このため、水量センサ24によって検出された湯の流量が所定流量以下になったとき、制御装置16は、循環ポンプを制御して、吸水口9bから循環流路に吸い込まれる湯水の量を増大させる。この結果、吸水口9bから吸い込まれて循環する循環流量が増大して、供給管路10から循環流路に流入する湯の割合が低下することにより、必要流量よりも多い所定流量の湯を流入させた場合でも、吐水装置8から吐出される湯水の温度を設定温度にすることができる。
【0076】
本発明の実施形態の浴槽装置1によれば、給湯器52から供給された湯が供給管路10を介して循環流路に流入されるので、吐水装置8の吐水口8aから吐出される湯水の温度を上昇させることができ、入浴者に温刺激を与えることができる。また、本実施形態の浴槽装置1によれば、水量センサ24によって検出された湯の流量が所定流量以下になったとき、制御装置16は、循環ポンプ6を制御して、吸水口9bから循環流路に吸い込まれる湯水の量を増大させる。これにより、浴槽本体2の吸水口9bから循環流路に吸い込まれて循環する湯水に対して、供給管路10から循環流路へ流入する温度の高い湯の割合が低下するので、一般的な給湯器52を用いて湯を浴槽本体2内に供給する浴槽装置1であっても、吐水口8aから吐出される湯水の温度を適切に調整することができる。この結果、逆上せを防止しながら、入浴者に心地良い温刺激を与えることができる。
【0077】
また、本実施形態の浴槽装置1によれば、吸水口9bから循環流路に吸い込まれる湯水の量を増大させた後、供給管路10から湯を循環流路に流入させるので、循環流路を循環する湯水の流量が増加した後で、供給管路10から温度の高い湯が混入される。このため、吐水口8aから吐出される湯水の温度を上昇させる過渡期において、湯水の温度が上がりすぎるのを防止することができ、入浴者に心地良い温刺激を与えることができる。
【0078】
さらに、本実施形態の浴槽装置1によれば、供給管路10から供給される湯が循環流路内の負圧になる部分に流入されるので、循環流路に送られた湯が供給管路に逆流するのを防止することができ、湯を循環流路に確実に流入させることができる。
【0079】
また、本実施形態の浴槽装置1によれば、給湯器52から貯留タンク12に流入する湯の流量が、貯留タンク12から循環流路内に流入する湯の流量よりも多くされる。このため、貯留タンク12に貯留されている湯が枯渇するのを防止することができ、吐水口8aから吐出される湯水の温度制御を確実に維持することができる。
【0080】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。なお、本発明の実施形態において、吐水装置8から吐出される湯水を、浴槽本体2内の湯水よりも温度の高い湯水から低い湯水へ切り替える場合、又はその反対に切り替える場合には、貯留タンク12内の湯水を温度の高い湯水から温度の低い湯水へ、又はその逆に入れ替える必要がある。この場合には、湯水の温度を切り替える所定時間前から、貯留タンク12に流入する湯水の流量を、貯留タンク12から流出する湯水の流量よりも少なくしておき、切り替え時に貯留タンク12内に貯留されている湯水の量を少なくしておくことが望ましい。これにより、吐水装置8から吐出される湯水の温度の切り替えを迅速に行うことができる。
【符号の説明】
【0081】
1 浴槽装置
2 浴槽本体
2a 背もたれ面
2b 側壁面
2c エプロン
4a 第1管路
4b 第2管路
4c 第3管路
6 循環ポンプ
8 吐水装置
8a 吐水口
9a 浴槽吐水口
9b 吸水口
10 供給管路
11 チャンバ
12 貯留タンク
14 加圧ポンプ
16 制御装置
18 リモコン
20 ノズル
21 吐出流量センサ
22 吐水温度センサ
23 浴槽温度センサ
24 水量センサ
26 流調バルブ
28 定流量弁
30 流入側温度センサ
32 貯留タンク温度センサ
34 流出側温度センサ
36 水量センサ
38 逆止弁
39 電磁弁
40a 給湯管
40b 給水管
41a 逆止弁
41b 逆止弁
42 フロートスイッチ
42a ステム
42b フロート
43 共用管
43a 合流部
44 オーバーフロー管
44a 溢流部
52 給湯器
54 上水道
54a 分岐部
56 湯用電磁弁
58 水用電磁弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7