IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日産自動車株式会社の特許一覧 ▶ ルノー エス.ア.エス.の特許一覧

<>
  • 特開-情報提供方法、及び、情報提供装置 図1
  • 特開-情報提供方法、及び、情報提供装置 図2
  • 特開-情報提供方法、及び、情報提供装置 図3
  • 特開-情報提供方法、及び、情報提供装置 図4
  • 特開-情報提供方法、及び、情報提供装置 図5
  • 特開-情報提供方法、及び、情報提供装置 図6
  • 特開-情報提供方法、及び、情報提供装置 図7
  • 特開-情報提供方法、及び、情報提供装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124286
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】情報提供方法、及び、情報提供装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/26 20060101AFI20230830BHJP
   G10L 15/10 20060101ALI20230830BHJP
   G10L 15/00 20130101ALI20230830BHJP
   G08G 1/133 20060101ALI20230830BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
G01C21/26 C
G10L15/10 200W
G10L15/10 500Z
G10L15/00 200J
G08G1/133
G09B29/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027960
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 沙織
(72)【発明者】
【氏名】高松 敦
(72)【発明者】
【氏名】柳 拓良
【テーマコード(参考)】
2C032
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2C032HB11
2C032HC08
2C032HC16
2F129AA03
2F129BB03
2F129BB20
2F129BB26
2F129CC03
2F129DD13
2F129DD21
2F129DD38
2F129DD39
2F129EE21
2F129EE43
2F129EE78
2F129EE94
2F129FF02
2F129FF15
2F129FF20
2F129FF62
2F129FF71
2F129GG17
2F129HH14
2F129HH29
2F129HH33
2F129HH35
5H181AA01
5H181BB05
5H181CC04
5H181CC27
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF25
5H181FF27
5H181FF33
(57)【要約】
【課題】搭乗者の嗜好に応じた情報提供を行うことができる情報提供方法及び情報提供装置を提供する。
【解決手段】この情報提供方法は、位置情報33を取得する位置情報取得部27と、搭乗者10の音声を取得する音声取得部28と、を有する車両100が、搭乗者10に情報を提供する情報提供方法である。位置情報33及び/または音声に基づいて搭乗者10の行動が認識され、車両100が認識した搭乗者10の行動に関する記録である行動記録26が記憶される。また、音声に基づいて、搭乗者10に対して提供する情報に関し、搭乗者10の嗜好が推定される。そして、搭乗者10に対して行動記録26に係る情報を提供するときに、推定された嗜好に基づいて、搭乗者10に対して提供する情報の内容が調整される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置情報を取得する位置情報取得部と、搭乗者が発する音声を取得する音声取得部と、を備える車両が、前記搭乗者に情報を提供する情報提供方法であって、
前記位置情報及び/または前記音声に基づいて前記搭乗者の行動を認識し、
前記車両が認識した前記搭乗者の行動に係る記録である行動記録を記憶し、
前記音声に基づいて、前記搭乗者に対して提供する情報に関し、前記搭乗者の嗜好を推定し、
前記搭乗者に対して前記行動記録に係る情報を提供するときに、前記嗜好に基づいて、前記搭乗者に対して提供する情報の内容を調整する、
情報提供方法。
【請求項2】
請求項1に記載の情報提供方法であって、
前記音声に含まれるキーフレーズの出現頻度を計数し、
前記嗜好は、前記出現頻度に基づいて前記搭乗者を複数の類型に分類することによって推定される、
情報提供方法。
【請求項3】
請求項2に記載の情報提供方法であって、
前記出現頻度に基づいて、前記搭乗者が、過去の前記行動記録に関する情報の提供を好む過去志向型であるか否かを判定し、
前記搭乗者を、前記過去志向型と、前記過去志向型とは異なる前記類型に分類する、
情報提供方法。
【請求項4】
請求項3に記載の情報提供方法であって、
前記搭乗者が前記過去志向型に分類される場合、前記搭乗者に対して前記行動記録に係る情報を提供するときに、前記搭乗者が前記過去志向型と異なる前記類型に分類される場合と比較して、前記搭乗者に提供すべき前記行動記録に関して詳細な情報を提供する、
情報提供方法。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか1項に記載の情報提供方法であって、
前記出現頻度に基づいて、前記搭乗者が、前記搭乗者の現在の行動に関する情報の提供を好む現在志向型であるか否かを判定し、
前記搭乗者を、前記現在志向型と、前記現在志向型とは異なる前記類型に分類する、
情報提供方法。
【請求項6】
請求項5に記載の情報提供方法であって、
前記搭乗者が前記現在志向型に分類される場合、前記搭乗者に対して前記行動記録に係る情報を提供するときに、前記搭乗者の現在の行動に関連する情報を付加する、
情報提供方法。
【請求項7】
請求項2~6のいずれか1項に記載の情報提供方法であって、
前記出現頻度に基づいて、前記搭乗者が、前記行動記録に関連した新たな情報の提供を好む未来志向型であるか否かを判定し、
前記搭乗者を、前記未来志向型と、前記未来志向型とは異なる前記類型に分類する、
情報提供方法。
【請求項8】
請求項7に記載の情報提供方法であって、
前記搭乗者が前記未来志向型に分類される場合、前記搭乗者に対して前記行動記録に係る情報を提供するときに、前記搭乗者に提供すべき前記行動記録に関連した新たな情報を付加する、
情報提供方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の情報提供方法であって、
前記音声に含まれるキーワードを抽出し、
前記キーワードを蓄積し、
認識された前記搭乗者の行動と、蓄積された前記キーワードと、の関連性を判定し、
少なくとも、認識された前記搭乗者の行動と蓄積された前記キーワードが関連すると判定されたときに、認識された前記搭乗者の行動を前記行動記録として記憶する、
情報提供方法。
【請求項10】
請求項9に記載の情報提供方法であって、
認識された前記搭乗者の行動と、蓄積された前記キーワードと、が関連すると判定されたときに、認識された前記搭乗者の行動について追加的に記録すべき情報である追加記録情報を取得し、
認識された前記搭乗者の行動についての前記行動記録に、前記追加記録情報を関連付けて記憶する、
情報提供方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の情報提供方法であって、
前記行動記録は、少なくとも、前記搭乗者が訪れた場所に係る記録、及び/または、前記搭乗者が体験した事象に係る記録、を含む、
情報提供方法。
【請求項12】
位置情報を取得する位置情報取得部と、搭乗者の音声を取得する音声取得部と、を有する車両に搭載され、前記車両の前記搭乗者に情報を提供する情報提供装置であって、
前記位置情報及び/または前記音声に基づいて、前記搭乗者の行動を認識する行動認識部と、
前記車両が認識した前記搭乗者の行動に係る記録である行動記録を記憶する行動記録記憶部と、
前記音声に基づいて、前記搭乗者に対して提供する情報に関し、前記搭乗者の嗜好を推定する嗜好推定部と、
前記搭乗者に対して前記行動記録に係る情報を提供するときに、前記嗜好に基づいて、前記搭乗者に対して提供する情報の内容を調整する提供情報調整部と、
を備える情報提供装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両における搭乗者への情報提供方法、及び、情報提供装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、乗車者に関する情報(人物を特定する情報)に基づいて記録再生する画像音声記録再生装置が記載されている。特に、特許文献1は、乗車者のうち所定の人物の個人的な情報(誕生日や年齢)に基づいて記録再生することで、タイムカプセルのように、その人物の個人的な情報に応じたきめ細かな再生を行うことを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-105174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の車両は、車両の位置情報等を一時的または永続的に記憶することによって、搭乗者が訪れた場所に関する情報等、車両による搭乗者の行動記録を記憶している。このような車両では、例えば搭乗者が過去に訪れた場所等に関する情報を“思い出”として、搭乗者に提供することによって、搭乗者に豊かな乗車体験を提供することが検討されている。
【0005】
しかし、搭乗者が車両からの提供を期待する情報は、通常、その搭乗者の嗜好が強く反映されるので、具体的な搭乗者に応じて千差万別である。例えば、現在走行中の道路を1年前にも通行した事実を搭乗者に“思い出”として提供する場合、ある搭乗者はこの情報を好意的に受け止めて過去を回顧する。一方、別の搭乗者は、幾度となく走行している道路についての情報提供を不要と感じ、この情報を否定的に受け止める場合がある。そして、このような相違は、車両からの提供を期待する情報に関する搭乗者の嗜好によるものである。したがって、車両は、情報提供の対象である搭乗者の嗜好に応じて、適切な情報を提供することが望まれる。
【0006】
本発明は、搭乗者の嗜好に応じた情報提供を行うことができる情報提供方法及び情報提供装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、位置情報を取得する位置情報取得部と、搭乗者の音声を取得する音声取得部と、を有する車両が、搭乗者に情報を提供する情報提供方法である。この情報提供方法では、位置情報及び/または音声に基づいて搭乗者の行動が認識され、車両が認識した搭乗者の行動に関する記録である行動記録が記憶される。また、音声に基づいて、搭乗者に対して提供する情報に関し、搭乗者の嗜好が推定される。そして、搭乗者に対して行動記録に係る情報を提供するときに、推定された嗜好に基づいて、搭乗者に対して提供する情報の内容が調整される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、搭乗者の嗜好に応じた情報提供を行うことができる情報提供方法及び情報提供装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、車両の構成を示すブロック図である。
図2図2は、エージェントコントローラの構成を示すブロック図である。
図3図3は、嗜好推定処理のフローチャートである。
図4図4は、行動記録に関する情報提供を行うシーンにおける作用を示すフローチャートである。
図5図5は、過去志向型の搭乗者に対する情報提供の例を示す説明図である。
図6図6は、現在志向型の搭乗者に対する情報提供の例を示す説明図である。
図7図7は、未来志向型の搭乗者に対する情報提供の例を示す説明図である。
図8図8は、搭乗者の行動を記録するシーンにおける作用を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、車両100の構成を示すブロック図である。本実施形態の車両100は、エージェントシステム15を用いて、車両100の搭乗者10に対して対話的に各種の情報を提供する。例えば、車両100は、エージェントシステム15を用いて、1または複数の搭乗者10と実質的に会話(雑談)をすることができる。そして、車両100は、その会話の中で、搭乗者10の過去の行動について言及することにより、その過去の行動に関する情報を搭乗者10に提供する。これにより、車両100は、搭乗者10に対して、豊かな乗車体験を提供する。なお、搭乗者10は、車両100の運転者、及び/または、同乗者である。本実施形態においては、簡単のため、搭乗者10は車両100の運転者であるものとする。また、搭乗者10は、車両100が行う情報提供の主たる対象者であるものとする。
【0012】
図1に示すように、車両100は、運転操作部11、カーナビゲーションシステム12、通信機13、スピーカ14、エージェントシステム15、車両コントローラ16、及び、センサ17を備える。
【0013】
運転操作部11は、車両100の運転操作のために搭乗者10が操作する操作部である。運転操作部11は、例えば、ステアリングホイール、アクセルペダル、及び、ブレーキペダル等である。
【0014】
カーナビゲーションシステム12は、搭乗者10に対して、目的地までの経路等を案内する案内装置である。カーナビゲーションシステム12は、固有のディスプレイ及び操作キーを備える。搭乗者10は、カーナビゲーションシステム12の操作キーを用いて、目的地の設定等、経路案内等に必要な操作を行う。また、搭乗者10は、カーナビゲーションシステム12のディスプレイ、及び/または、スピーカ14から出力される音または音声によって、経路案内等を内容とする情報の提供を受けることができる。
【0015】
カーナビゲーションシステム12は、地図情報21を保有する。地図情報21は、地図、及び、地図に関連付けられた交通情報を含むデータベース等である。地図情報21は、例えば通信機13を用いた車両100の外部との情報通信により、適宜更新され得る。なお、地図情報21は、カーナビゲーションシステム12によって経路案内等に使用されるだけでなく、エージェントシステム15及び車両コントローラ16等、車両100の各部において適宜利用可能である。
【0016】
通信機13は、周辺にある車両、交通設備、及び/または、その他任意のシステムやサーバ等と、無線により通信する通信インタフェースである。通信機13は、通信対象となる機器等と、直接に、または、インターネット回線等を介して接続し、各種の情報を送受信する。本実施形態においては、車両100が通信機13を備えているが、通信機13は、カーナビゲーションシステム12またはエージェントシステム15の一部として設けられていてもよい。通信機13の所属に関わらず、車両100の各部、すなわちカーナビゲーションシステム12、エージェントシステム15、及び、車両コントローラ16等は、通信機13を用いて車両100の外部にあるサーバ等と適宜に情報通信を行うことができる。
【0017】
スピーカ14は、車両100の内部に向けて音及び音声等を出力する。車両100の各部は必要に応じてスピーカ14にアクセスし、音声等を出力させることができる。本実施形態においては、カーナビゲーションシステム12が経路案内等のためにスピーカ14から音及び音声を出力する。また、エージェントシステム15は、搭乗者10との会話等による情報提供のために、スピーカ14から音及び音声等を出力する。
【0018】
エージェントシステム15は、車両100に搭載された搭乗者10への情報提供装置である。エージェントシステム15は、例えば、車両100または車両100に搭載された各種機器やシステム等の操作や車両100が行うべき情報提供等の支援をする。エージェントシステム15は、搭乗者10と対話的に情報を授受するインタラクティブコミュニケーションによって、上記支援を行う。
【0019】
特に、本実施形態では、エージェントシステム15は、各種機器の操作等に関連した情報提供等を行うだけでなく、ごく日常的な会話によって、搭乗者10とコミュニケーションをとる。例えば、エージェントシステム15は、搭乗者10が車両100によって、ある特定の場所に訪れたことがあるという事実等、車両100とともに行った搭乗者10の行動を“思い出”として適宜に記憶する。そして、エージェントシステム15は、搭乗者10との日常的な会話の中で、こうした“思い出”に言及することにより、搭乗者10の行動に関する情報提供を行う。
【0020】
エージェントシステム15は、具体的に、エージェント部22、エージェントコントローラ23、ディスプレイ24、及び、記憶装置25等によって構成される。
【0021】
エージェント部22は、搭乗者10に対するインタフェースとして機能する部分である。すなわち、エージェントシステム15は、エージェント部22を介して、搭乗者10とのインタラクティブコミュニケーションを行う。エージェント部22は、少なくとも搭乗者10にとってコミュニケーションの対象となり得る程度に、擬人的に構成される。すなわち、エージェント部22は、自身の感情、及び、感情の変化である情動を、音もしくは音声、及び/または、形態の変化によって表現することができるように構成される。
【0022】
エージェント部22は、例えば、人、動物、植物、物、またはその他のシンボル等の形態で表されるマスコット(マスコットキャラクタあるいは単にキャラクタとも称される)あるいはアシスタントである。エージェント部22は、ロボットのように機械的機構を用いて実体的に構成され、または、コンピュータグラフィックス等によって仮想的に構成される。本実施形態においては、エージェント部22は、ディスプレイ24に表示される仮想的な構成である。
【0023】
エージェントコントローラ23は、エージェントシステム15の動作を制御する制御ユニットである。より具体的には、エージェントコントローラ23は、エージェントシステム15の動作がプログラムされたコンピュータによって構成される。エージェントコントローラ23の具体的構成については、詳細を後述する。エージェントシステム15を動作させるプログラムは、情報提供プログラムである。情報提供プログラムは、エージェントシステム15、または、車両100で読み取ることができる記録媒体の形態で提供され得る。さらに、記録媒体を用いて、または、いわゆるOTA(Over The Air)技術によって、情報提供プログラムは、実装後に、その一部または全部が更新され得る。
【0024】
ディスプレイ24は、動画等や各種情報を表示する表示部である。エージェント部22が仮想的に構成される場合、エージェント部22はディスプレイ24に表示される。また、ディスプレイ24は、例えば、車両100が撮影した動画等を表示することができる。本実施形態においては、ディスプレイ24は、HUD(Head-Up Display)であり、搭乗者10の視野の一部に、エージェント部22を表示する。
【0025】
なお、本実施形態においては、ディスプレイ24は、エージェントシステム15の一部として設けられている。しかし、ディスプレイ24をエージェントシステム15に設ける代わりに、または、エージェントシステム15のディスプレイ24の他に、車両100またはカーナビゲーションシステム12にディスプレイが設けられていてもよい。この場合、エージェントシステム15は、車両100またはカーナビゲーションシステム12に設けられたディスプレイにエージェント部22等を表示することができる。
【0026】
記憶装置25は、エージェントシステム15が使用するデータやプログラム等を、一時的または永続的に記録するストレージである。記憶装置25は、メモリ、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、または、ウェブ上に設けられたクラウドストレージ等によって構成される。
【0027】
本実施形態においては、記憶装置25は、特に行動記録26を記憶している。すなわち、記憶装置25は、エージェントシステム15における行動記録記憶部である。行動記録26は、位置情報や音声等に基づいてエージェントシステム15が認識した「搭乗者10の行動」に係る記録(履歴)である。エージェントシステム15は実質的に車両100と一体となって搭乗者10に情報提供をするものであるから、行動記録26は、車両100が認識した搭乗者10の行動に係る記録ということができる。
【0028】
「搭乗者10の行動」とは、搭乗者10の活動や体験に関する事項等のいわゆるイベントである。例えば、車両100によって搭乗者10がある道路を通行したこと、搭乗者10がある場所を訪れたこと、搭乗者10がある物を食べたこと、または、搭乗者10がある物を見たこと等が、「搭乗者10の行動」の例である。情報提供の主対象である特定の搭乗者10の他に同伴者(同乗者またはその他の者)がいることを、車両100が音声等に基づいて認識し得る場合がある。この場合、イベントに同伴者がいたこと、あるいは、イベントを特定の同伴者とともに体験したこと、等の情報も「搭乗者10の行動」に含まれる。すなわち、行動記録26は、搭乗者10がいつ/どこで/誰と/何をしたかという要素のうち、全部または一部の要素を含む記録である。
【0029】
なお、上述のエージェントシステム15は、車両100と実質的に一体に構成される。したがって、エージェントコントローラ23の機能の全部または一部は、車両コントローラ16によって構成され得る。また、エージェントシステム15は、車両100から独立して別個のデバイスによって構成されていてもよい。例えば、搭乗者10が所有するスマートフォン等のデバイスが車両100と連携し得るときには、エージェントシステム15は搭乗者10が所有するデバイスに実装され得る。
【0030】
車両コントローラ16は、車両100の動作を統括的に制御する制御部である。車両コントローラ16は、運転操作部11からの入力に基づいて、車両100を駆動する電動モータ及び/またはエンジン、並びに、ブレーキ等を制御する。車両コントローラ16は、例えば、車両100を構成する各部の動作がプログラムされた1または複数のコンピュータによって構成される。
【0031】
車両コントローラ16は、車両100の制御等のために、センサ17が出力する信号等を適宜取得する。車両コントローラ16は、要求に応じて、センサ17による計測データ等を車両100の各部に提供することができる。例えば、車両コントローラ16は、エージェントシステム15からの要求に応じて、位置情報や音声等を取得し、これをエージェントシステム15に提供することができる。
【0032】
本実施形態では、車両コントローラ16は、例えば、位置情報取得部27、及び、音声取得部28として機能する。
【0033】
位置情報取得部27は、センサ17(位置センサ31)を用いて、車両100の位置情報を取得する位置情報取得処理を実行する。搭乗者10が車両100に登場している場合、車両100の位置情報は、実質的に搭乗者10の位置情報である。また、位置情報取得部27は、例えば、搭乗者10が所有するスマートフォン等のデバイスから、その位置情報(搭乗者10の位置情報)を取得することができる。すなわち、位置情報取得部27は、少なくとも車両100の位置情報を取得することができ、これに加えて、車両100から独立した搭乗者10の位置情報を取得する場合がある。本実施形態では、簡単のため、位置情報取得部27は、車両100の位置情報を取得するものとし、車両100では、車両100の位置情報が搭乗者10の位置情報であるとみなされる。
【0034】
音声取得部28は、センサ17(車内マイク30)を用いて、搭乗者10等が発する音声、及び/または、その他の音を取得する音声取得処理を実行する。また、音声取得部28は、例えば、搭乗者10が所有するスマートフォン等のデバイスにアクセスすることにより、搭乗者10の音声等を取得することができる。すなわち、音声取得部28は、少なくとも車両100内で発せられた搭乗者10の音声等をリアルタイムに取得することができ、これに加えて、車両100内外で発せられた搭乗者10の音声等をリアルタイムに、またはその録音を取得する場合がある。本実施形態では、簡単のため、音声取得部28は、車両100内で発せられた搭乗者10の音声等(以下、車内音声32という(図2参照))を取得するものとする。
【0035】
上記のように位置情報や音声等を取得する他、車両コントローラ16は、車両100に対する操作、及び、車両100に搭載された各種機器等に対する操作を取得する。この他、車両コントローラ16は、センサ17から取得する信号等を用いた演算により、車両100または車両100に搭載された各種機器等を制御するために必要なパラメータを得る。
【0036】
センサ17は、車両100を構成する各部の状況や車両100の内部または外部の状況を計測等する1または複数のセンサである。センサ17は、例えば、速度センサ、加速度センサ、車内カメラ、車内マイク30、車外カメラ、車外マイク、及び/または、位置センサ31等である。本実施形態においては、センサ17は、少なくとも、車内マイク30、及び、位置センサ31を備える。
【0037】
車内マイク30は、車両100の内部で生じた音または音声を取得する1または複数の収音装置である。本実施形態においては、車内マイク30は、少なくとも搭乗者10が発話した音声等である車内音声32を取得する。車内音声32によれば、搭乗者10のつぶやき(独り言)、複数の搭乗者10による会話、及び、搭乗者10とエージェント部22との対話のため音声等(以下、単に「会話」という)が取得され得る。
【0038】
車内マイク30は、エージェントシステム15及び/または車両コントローラ16等の要求に応じて、車内音声32を適宜取得し得る。本実施形態においては、車内マイク30はエージェントシステム15からの要求に応じて車内音声32を断続的または継続的に取得する。そして、車内音声32は、少なくとも一時的に保持され、エージェントシステム15において、搭乗者10の会話を取得あるいは検出するために利用される。
【0039】
位置センサ31は、GPS(Global Positioning System)センサ、または、その他のGNN(Global Navigation Satellite System)センサであり、車両100の位置を計測する。以下では、位置センサ31の計測データを位置情報33(図2参照)という。位置センサ31が出力する位置情報33及びその変化によれば、車両100の位置、向き、及び、進行方向等が特定され得る。位置センサ31が出力する位置情報は、カーナビゲーションシステム12が経路案内等のために利用する他、搭乗者10に対する情報提供のために利用される。
【0040】
図2は、エージェントコントローラ23の構成を示すブロック図である。図2に示すように、エージェントコントローラ23は、音声認識部41、行動認識部42、嗜好推定部43、提供情報調整部44、及び、エージェント制御部45を備える。
【0041】
音声認識部41は、車内音声32を解析することによって、搭乗者10の発言内容(発話内容)を認識する音声認識処理を実行する。音声認識部41は、車内音声32に基づいて、実質的にリアルタイムに、搭乗者10の発言内容を認識することができる。本実施形態では、音声認識部41は、特に、キーフレーズ抽出部51、及び、キーワード抽出部52を含む。
【0042】
キーフレーズ抽出部51は、車内音声32から、予め定められたキーフレーズを抽出する。キーフレーズ抽出部51が抽出するキーフレーズは、過去、現在、または未来等の時間的要素を表す1または複数のワードで構成されたフレーズである。本実施形態では、キーフレーズ抽出部51が抽出すべきキーフレーズとして、過去型キーフレーズ、現在型キーフレーズ、及び、未来型キーフレーズの3種類が予め定められている。
【0043】
過去型キーフレーズは、搭乗者10が過去の行動や習慣等について言及(特に懐古)するときに使用するキーフレーズである。過去型キーフレーズは、例えば、「昔」「○○した」「○○していた」「懐かしい」等の過去の事象を表すワード、または、これらの複合によって構成される。
【0044】
現在型キーフレーズは、搭乗者10が現在の習慣等について言及するときに使用するキーフレーズである。現在型キーフレーズは、例えば、「毎日」「○○する」「○○している」等の現在の事象を表すワード、または、これらの複合によって構成される。
【0045】
未来型キーフレーズは、搭乗者10が未来についての希望や願望を表現するときに使用するキーフレーズである。未来型キーフレーズは、例えば、「いつか」「将来」「○○したい」「○○してみたい」「○○を始めたい」「○○するつもりだ」等の未来の事象を表すワード、または、これらの複合によって構成される。
【0046】
キーワード抽出部52は、車内音声32からキーワードを抽出する。キーワード抽出部52が抽出するキーワードは、搭乗者10による会話の内容を特定するワードである。例えば、出来事、場所、物、または人等の物事についての名称または総称がキーワードである。
【0047】
行動認識部42は、位置情報33及び/または車内音声32に基づいて、搭乗者10の行動を認識する行動認識処理を実行する。例えば、行動認識部42は、位置情報33を取得し、地図情報21を参照する。これにより、行動認識部42は、位置情報33に基づいて、搭乗者10が特定の道路を通行したこと、及び、搭乗者10が特定の場所を訪れたこと等を認識する。また、例えば、行動認識部42は、音声認識部41の認識結果を用いることにより、車内音声32に基づいて、搭乗者10が見たものや食べたもの等を特定する。これにより、行動認識部42は、搭乗者10がある活動や体験をしたことを認識する。行動認識処理で使用される音声認識部41の認識結果は、搭乗者10の発言内容についての認識結果であり、キーフレーズ抽出部51で抽出されたキーフレーズ、及び/または、キーワード抽出部52で抽出されたキーワードを含むことができる。なお、行動認識部42は、過去における搭乗者10の行動だけでなく、現在または未来における搭乗者10の行動を認識することができる。例えば、行動認識部42は、搭乗者10が特定の場所を訪れた後になってその場所を認識できるだけでなく、搭乗者10が特定の場所を訪れていること、または、搭乗者10が特定の場所を訪れようとしていることを認識することができる。
【0048】
また、行動認識部42は、関連性判定部53、及び、行動記録作成部54を含む。
【0049】
関連性判定部53は、音声認識部41(キーワード抽出部52)において抽出されたキーワードを取得し、蓄積する。そして、関連性判定部53は、行動認識部42において認識された搭乗者10の行動と、蓄積されたキーワードと、の関連性を判定する関連性判定処理を実行する。認識された搭乗者10の行動と、蓄積されたキーワードと、の関連性が高い場合、その認識された搭乗者10の行動は、搭乗者10が“思い出”として認識している可能性が高い行動である。
【0050】
関連性判定部53は、例えば、蓄積したキーワードの出現頻度または出現頻度と実質的に等価なパラメータ(以下、単に出現頻度という)に対し、予め閾値を定める。関連性判定部53は、これらの出現頻度が閾値以上である1または複数のキーワードを、予め重要キーワードに設定する。重要キーワードは、搭乗者10の行動のうち特に頻度(例えば言及の頻度)が高い行動に関するキーワードである。
【0051】
一方、関連性判定部53は、認識された搭乗者10の行動について、位置情報33やキーワードを取得する。また、関連性判定部53は、重要キーワードと、認識された搭乗者10の行動に係る位置情報33及び/またはキーワードと、の類似度を演算する。重要キーワードと位置情報33の類似度は、例えば、位置情報33に該当する施設等の名称や属性等と、重要キーワードと、の類似度である。関連性判定部53は、例えば、地図情報21を参照することにより、特定の位置情報33に該当する施設等の名称や属性等を取得する。
【0052】
また、関連性判定部53は、例えば、類似度について予め閾値を設定する。そして、関連性判定部53は、重要キーワードとの類似度が閾値以上である搭乗者10の行動を、蓄積したキーワードと関連性が高い行動であると判定する。すなわち、関連性判定部53は、例えば、蓄積されたキーワードのうち、予め定められた所定の条件を満たすキーワードと、認識された搭乗者10の行動に係る位置情報33やキーワード等と、を比較し、その類似度に基づいて関連性を判定する。この関連性判定処理の結果は、例えば、行動記録作成部54によって使用される他、エージェント制御部45においても使用される。
【0053】
行動記録作成部54は、認識された搭乗者10の行動について、行動記録26を作成し、これを記憶装置25に記憶させる。行動記録作成部54は、認識された搭乗者10の行動の全部または一部について、それぞれ行動記録26を作成することができる。本実施形態では、行動記録作成部54は、少なくとも、蓄積されたキーワードとの関連性が高いと判定された搭乗者10の行動について、行動記録26を作成する。また、本実施形態では、行動記録26は、時間要素である日時(搭乗者10の行動日時)の他に、少なくとも、位置情報33等の搭乗者10が訪れた場所に係る記録、及び/または、搭乗者10が体験した事象(イベント)に係る記録、を含むものとする。この他、本実施形態においては、搭乗者10の行動が認識された後、追加的に記録すべき情報(追加記録情報)が新たに取得される場合がある。この場合、行動記録作成部54は、認識された搭乗者10の行動についての行動記録26に、追加記録情報を関連付けて、記憶装置25に記憶させる。
【0054】
嗜好推定部43は、車内音声32に基づいて、搭乗者10に対して提供する情報に関し、搭乗者10の嗜好を推定する嗜好推定処理を実行する。本実施形態において、提供する情報に関する搭乗者10の「嗜好」とは、搭乗者10が好む情報提供の方法及び/または態様(情報提供スタイル)についての傾向をいう。嗜好推定部43が推定した搭乗者10の嗜好に関する情報は、嗜好情報(図示しない)として、嗜好推定部43に保有され、または、記憶装置25に記憶され、提供情報調整部44等からの要求に応じて適宜使用される。また、嗜好推定部43は、例えば新たにキーフレーズが抽出されたとき等、予め定められたタイミングで、嗜好情報を定期的に適宜更新する。
【0055】
本実施形態では、嗜好推定部43は、キーフレーズ抽出部51が抽出したキーフレーズを用いることによって、車内音声32に基づき、搭乗者10の嗜好を推定する。具体的には、嗜好推定部43は、車内音声32に含まれるキーフレーズを適宜取得し、その出現頻度を計数する。そして、嗜好推定部43は、キーフレーズの出現頻度に基づいて、提供する情報に関する搭乗者10の嗜好を推定する。
【0056】
また、本実施形態では、嗜好推定部43は、搭乗者10を予め定める複数の類型に分類することによって、提供する情報に関する搭乗者10の嗜好を推定する。具体的には、本実施形態の嗜好推定部43は、過去志向型、現在志向型、及び、未来志向型の3類型に、搭乗者10を分類する。
【0057】
過去志向型は、過去の行動記録26に関する情報の提供を好む類型である。例えば、過去型キーフレーズの出現頻度が、現在型キーフレーズの出現頻度及び未来型キーフレーズの出現頻度よりも大きいときに、その搭乗者10は過去志向型に分類される。また、本実施形態では、過去型キーフレーズの出現頻度が、未来型キーフレーズの出現頻度よりも大きく、現在型キーフレーズの出現頻度とほぼ等しい場合も、その搭乗者10は過去志向型に分類される。
【0058】
現在志向型は、搭乗者10の現在の行動に関する情報の提供を好む類型である。例えば、現在型キーフレーズの出現頻度が、過去型キーフレーズの出現頻度及び未来型キーフレーズの出現頻度よりも大きいときに、その搭乗者10は現在志向型に分類される。
【0059】
未来志向型は、搭乗者10の過去の行動に関連した新たな情報の提供を好む類型である。例えば、未来型キーフレーズの出現頻度が、過去型キーフレーズの出現頻度及び現在型キーフレーズの出現頻度よりも大きいときに、搭乗者10は未来志向型に分類される。また、本実施形態では、未来型キーフレーズの出現頻度が、過去型キーフレーズの出現頻度よりも大きく、かつ、現在型キーフレーズの出現頻度とほぼ等しい場合も、その搭乗者10は未来志向型に分類される。
【0060】
なお、搭乗者10を過去志向型、現在志向型、及び、未来志向型の3類型に分類する方法は、搭乗者10を分類する方法の一例である。嗜好推定部43は、搭乗者10を過去志向型と未来志向型の2類型に分類する等、搭乗者10を2つの類型に分類することができる。また、嗜好推定部43は、過去志向型と現在志向型の中間型である過去現在志向型や、現在志向型と未来志向型の中間型である現在未来志向型、過去志向型と未来志向型の特徴を併せ持った過去未来型もしくは未来過去型、及び/または、特定の嗜好を有しない統合志向型等を含む4以上の類型に搭乗者10を分類することができる。
【0061】
この他、本実施形態では、嗜好推定部43は、過去志向型、現在志向型、及び、未来志向型という時間的要素に着目した類型に搭乗者10を分類しているが、これに限らない。例えば、嗜好推定部43は、場所に関する情報の提供を好む類型や、特定の体験やイベント等に関する情報の提供を好む類型等、提供する情報の内容に関する嗜好によって搭乗者10を分類することができる。
【0062】
提供情報調整部44は、エージェントシステム15(車両100)から搭乗者10に情報を提供するときに、嗜好推定部43によって推定された搭乗者10の嗜好に基づいて、搭乗者10に提供する情報(以下、提供情報という)の内容を調整する。すなわち、提供情報調整部44は、搭乗者10の嗜好情報を取得し、搭乗者10の嗜好に応じて提供情報の内容を調整する。
【0063】
本実施形態では、提供情報調整部44は、特に行動記録26に係る情報を提供するときに、提供情報の内容を調整する。具体的には、搭乗者10が過去志向型に分類される場合、搭乗者10が過去志向型とは異なる類型に分類される場合と比較して、搭乗者10に提供すべき行動記録26に関して詳細な情報が提供されるように、提供情報の内容を調整する。搭乗者10が現在志向型に分類される場合、行動記録26に関する情報に加えて、搭乗者10の現在の行動に関する情報が付加的に提供されるように、提供情報の内容を調整する。また、搭乗者10が未来志向型に分類される場合、行動記録26に関する情報に加えて、その行動記録26に関連した新たな情報が付加的に提供されるように、提供情報の内容を調整する。
【0064】
提供情報調整部44は、例えば、行動記録検索部55、付加情報取得部56、及び、提供情報作成部57を含み、これらを用いて提供情報の内容を調整する。
【0065】
行動記録検索部55は、記憶された行動記録26の中から、行動認識部42において認識された搭乗者10の行動に関連する特定の行動記録26(以下、特定行動記録という)を検索する行動記録検索処理を実行する。特定行動記録は、搭乗者10の現在の行動に関連した“思い出”である。例えば、搭乗者10がある特定の場所を訪れたことが認識された場合、行動記録検索部55は、行動記録26を検索することにより、その場所または類似の場所の訪問に関する特定行動記録を抽出する。また、搭乗者10がある特定の体験をしたこと(例えば、ある特定の食べ物を食べたこと)が認識された場合、行動記録検索部55は、行動記録26を検索することにより、それと同じまたは類似する体験に関する特定行動記録を抽出する。
【0066】
また、行動記録検索部55は、搭乗者10の嗜好に応じて、特定行動記録として行動記録26から抽出する情報の深度を調整する。
【0067】
本実施形態では、行動記録検索部55は、搭乗者10が過去志向型である場合と、搭乗者10が現在志向型または未来志向型である場合とで、情報の抽出深度を変更する。例えば、搭乗者10が現在志向型または未来志向型である場合、行動記録検索部55は、搭乗者10がいつ/どこで/誰と/何をしたかという各要素について、一部の要素を抽出する。一方、搭乗者10が過去志向型である場合、行動記録検索部55は、搭乗者10がいつ/どこで/誰と/何をしたかという各要素について、搭乗者10が現在志向型または未来志向型である場合よりも多くの要素を抽出する。
【0068】
より具体的には、特定の場所の訪問に関する特定行動記録を抽出する場合、搭乗者10が現在志向型または未来志向型であるときには、行動記録検索部55は、例えば「その特定の場所に訪問したことがある」という情報を、行動記録26から抽出する。一方、搭乗者10が過去志向型であるときには、行動記録検索部55は、「その特定の場所に訪問したことがある」という情報に加えて、その特定の場所に訪問した具体的な日時や経過時間等の時間的要素に関する情報や、その特定の場所における体験(その場所で○○を食べた等)に関する情報等を、行動記録26からさらに抽出する。特に本実施形態では、行動記録検索部55は、搭乗者10が過去志向型である場合、少なくとも時間的要素に関する情報を、行動記録26からさらに抽出する。行動記録検索部55がさらに抽出する時間的要素は、例えば、「○年前にここに来た」等、行動記録26として記憶された搭乗者10の行動からの経過時間である。経過時間に関する情報は、過去志向型の搭乗者10が好む傾向がある情報の例である。以下では、行動記録検索部55が特定行動記録として抽出する情報のうち、搭乗者10の嗜好に依らずに各志向型で共通に抽出される情報を基本情報といい、搭乗者10の嗜好に応じて追加的に抽出される詳細な情報を詳細情報という。
【0069】
付加情報取得部56は、行動記録検索部55が抽出した特定行動記録の内容に加えて搭乗者10に提供すべき付加的な情報(以下、付加情報という)を、必要に応じて取得または作成する。付加情報は、原則として、ある時(ある日)に関する1つの行動記録26に直接的には含まれず、行動記録26を用いた統計処理等の演算によって、または、インターネット等を介した外部からの情報取得によって得られる情報である。したがって、付加情報取得部56は、行動記録26を用いた演算により、または、通信機13を用いた外部機器等との通信によって、付加情報を得る。
【0070】
本実施形態では、搭乗者10が現在志向型または未来志向型である場合に、付加情報取得部56は、付加情報を取得する。
【0071】
例えば、搭乗者10が現在志向型である場合、付加情報取得部56は、付加情報として、搭乗者10の現在の行動に関連する情報(以下、現在型付加情報という)を取得する。過去における搭乗者10の習慣または行動等と、現在における搭乗者10の習慣または行動等と、を比較した情報は、搭乗者10の現在の行動に関連する情報の例である。例えば、「久しぶりに○○を訪れた」「毎日○○するようになった」等、過去における搭乗者10の習慣または行動等と比較した現在における搭乗者10の習慣または行動等の頻度に関する情報は、現在志向型の搭乗者10が好む傾向がある情報(付加情報)の例である。
【0072】
また、例えば、搭乗者10が未来志向型である場合、付加情報取得部56は、付加情報として、特定行動記録に関連した新たな情報(以下、未来型付加情報という)を取得または作成する。搭乗者10が過去に訪れた特定の場所またはその特定の場所における体験について、類似の場所または類似の体験を提案するために必要な情報は、新たな情報の例である。すなわち、特定の場所や体験に類似する場所や体験に関する情報は、取得される新たな情報の例である。また、搭乗者10が過去に訪れた特定の場所への再来訪、または、その特定の場所における再体験を促す提案は、作成される新たな情報の例である。このように、搭乗者10の新たな行動を促す提案に関する情報は、未来志向型の搭乗者10が好む傾向がある情報(付加情報)である。
【0073】
本実施形態においては、搭乗者10が未来志向型である場合、付加情報取得部56は、過去における搭乗者10の行動(特定行動記録)に含まれず、かつ、過去における搭乗者10の行動に関連した新たな情報を、付加情報として取得するものとする。例えば、搭乗者10が未来志向型である場合、付加情報取得部56は、搭乗者10が過去に訪れた場所と同一でなく、かつ、類似する場所への来訪を促す提案に必要な情報(類似場所の情報)を取得する。
【0074】
提供情報作成部57は、行動記録検索部55による行動記録26の検索の結果を受けて、提供情報を作成(編集)する。すなわち、提供情報作成部57は、行動記録検索部55から、特定行動記録について少なくとも基本情報を取得する。また、提供情報作成部57は、行動記録検索部55から、必要に応じて、特定行動記録についての詳細情報を取得する。そして、提供情報作成部57は、少なくとも特定行動記録についての基本情報を含む提供情報を作成する。また、付加情報取得部56が付加情報を取得したときには、提供情報作成部57は、その付加情報を取得し、その付加情報を基本情報に加えた提供情報を作成する。
【0075】
本実施形態では、搭乗者10が過去志向型に分類される場合、提供情報作成部57は、特定行動記録について、基本情報の他に、詳細情報を含む提供情報を作成する。搭乗者10が現在志向型に分類される場合、提供情報作成部57は、特定行動記録についての基本情報に、現在型付加情報を加えた提供情報を作成する。また、搭乗者10が未来志向型に分類される場合、提供情報作成部57は、特定行動記録についての基本情報に、未来型付加情報を加えた提供情報を作成する。
【0076】
上記のように提供情報調整部44が内容を調整した提供情報は、エージェント制御部45に入力される。
【0077】
エージェント制御部45は、提供情報調整部44が内容を調整した提供情報を、エージェント部22を用いて搭乗者10に提供する。また、エージェント制御部45は、搭乗者10の行動が行動記録26として記録されるときに、その搭乗者10の行動について追加的に記録すべき情報(以下、追加記録情報という)を、エージェント部22によって搭乗者10から引き出す場合がある。これらのために、エージェント制御部45は、情報提供制御部58と、追加記録情報取得制御部59と、を含む。
【0078】
情報提供制御部58は、エージェント部22の動作を制御することにより、エージェント部22によって、提供情報調整部44から取得した提供情報を搭乗者10に提供させる。例えば、スピーカ14を介してエージェント部22の音声を出力させることにより、対話的に、提供情報を搭乗者10に提供する。
【0079】
追加記録情報取得制御部59は、認識された搭乗者10の行動と、蓄積されたキーワードに関連性があると判定されたときに、その搭乗者10の行動についての追加記録情報を搭乗者10から取得し得るように、エージェント部22の動作を制御する。例えば、認識された搭乗者10の行動が、重要キーワードとの関連性が高い行動であった場合、追加記録情報取得制御部59は、その行動及び/または重要キーワードについて、エージェント部22から搭乗者10に質問をさせる。これにより、追加記録情報取得制御部59は、認識された搭乗者10の行動についての情報のうち、いつ/どこで/誰と/何をしたかに関して未取得の情報を積極的に引き出す。この質問に対する搭乗者10の回答から得られる情報が、追加記録情報の例である。追加記録情報取得制御部59は、得られた追加記録情報を、認識された搭乗者10の行動についての行動記録26に関連付けて、記憶装置25に記憶させる。行動記録26に関連付けて記憶された追加記録情報は、その行動記録26が後に特定行動記録となった場合に、基本情報及び/または詳細情報として利用される。
【0080】
以下、上記のように構成される車両100による搭乗者10への情報提供に関する作用を説明する。
【0081】
図3は、嗜好推定処理のフローチャートである。図3に示すように、まず、ステップS11で車内音声32が取得されると、ステップS12において音声認識部41がその車内音声32からキーフレーズを抽出する。ステップS11における車内音声32の取得、及び、ステップS12におけるキーフレーズの抽出は適宜行われ、抽出されたキーフレーズが蓄積される。
【0082】
このように、抽出されたキーフレーズが蓄積されると、嗜好推定部43は蓄積されたキーフレーズに基づいて、搭乗者10の嗜好を推定する。本実施形態では、嗜好推定部43は、過去型キーフレーズ、現在型キーフレーズ、及び、未来型キーフレーズの各出現頻度に基づいて、搭乗者10は、過去志向型、現在志向型、または、未来志向型に分類される。
【0083】
具体的には、ステップS13に示すように、嗜好推定部43は、過去型キーフレーズの出現頻度を、他型のキーフレーズの出現頻度と比較する。そして、過去型キーフレーズの出現頻度が、現在型キーフレーズ及び未来型キーフレーズの各出現頻度よりも多い場合、嗜好推定部43は、搭乗者10が過去の行動記録26に関する情報の提供を好むものと推定する。このため、ステップS14において、搭乗者10は過去志向型に分類される。なお、ステップS13において、過去型キーフレーズの出現頻度が、現在型キーフレーズと同程度であり、未来型キーフレーズの出現頻度よりも多い場合も、ステップS14において搭乗者10は過去志向型に分類される。
【0084】
一方、ステップS13において、過去型キーフレーズの出現頻度が、現在型キーフレーズまたは未来型キーフレーズの各出現頻度よりも少ない場合、ステップS15に示すように、嗜好推定部43は、未来型キーフレーズの出現頻度が、他型のキーフレーズの出現頻度と比較する。そして、未来型キーフレーズの出現頻度が、現在型キーフレーズ及び過去型キーフレーズの各出現頻度よりも多い場合、嗜好推定部43は、搭乗者10が過去の行動に関連した新たな情報を好むものと推定する。このため、ステップS16において、搭乗者10は未来志向型に分類される。なお、ステップS15において、未来型キーフレーズの出現頻度が、現在型キーフレーズと同程度であり、過去型キーフレーズの出現頻度よりも多い場合も、ステップS16において搭乗者10は未来志向型に分類される。
【0085】
また、ステップS15において、未来型キーフレーズの出現頻度が、現在型キーフレーズまたは過去型キーフレーズの各出現頻度よりも少ない場合、ステップS17において、嗜好推定部43は、搭乗者10を現在志向型に分類する。すなわち、現在型キーフレーズの出現頻度が、過去型キーフレーズ及び未来型キーフレーズの各出現頻度よりも多い場合、搭乗者10は現在志向型に分類される。
【0086】
本実施形態では、上記のように搭乗者10の嗜好は、過去志向型、現在志向型、または、未来志向型のいずれかに推定される。こうして推定された搭乗者10の嗜好情報として、例えば、嗜好推定部43が保有し、適宜更新される。
【0087】
図4は、行動記録26に関する情報提供を行うシーンにおける作用を示すフローチャートである。図4に示すように、ステップS21において、行動認識部42が、位置情報33及び/または車内音声32に基づいて、現在における搭乗者10の行動を認識する。現在における搭乗者10の行動が認識されると、ステップS22において、記憶された行動記録26の中から、認識された行動に関連する特定行動記録が検索される。このとき、特定行動記録に関して、基本情報が取得される。また、ステップS23においては、搭乗者10について予め推定された嗜好情報が取得される。そして、特定行動記録に関して、嗜好情報に基づき、搭乗者10の嗜好に応じた情報提供がなされる。
【0088】
具体的には、ステップS24において、搭乗者10が過去志向型か否かが確認される。搭乗者10が過去志向型に分類されている場合、ステップS25において、特定行動記録に関して、詳細情報がさらに取得される。
【0089】
一方、ステップS24において、搭乗者10が過去志向型でない場合、ステップS26において、搭乗者10が未来志向型か否かが確認される。搭乗者10が未来志向型に分類されている場合、ステップS27において未来型付加情報が取得される。
【0090】
また、ステップS26において搭乗者10が未来志向型でない場合、搭乗者10は現在志向型である。このため、ステップS28において現在型付加情報が取得される。
【0091】
このように、特定行動記録に関して、基本情報に加え、詳細情報、もしくは、現在型付加情報または未来型付加情報が取得されると、ステップS29において、搭乗者10に提供すべき情報である提供情報が作成される。具体的には、搭乗者10が過去志向型である場合、特定行動記録に関する基本情報と詳細情報を含む提供情報が作成される。搭乗者10が現在志向型である場合、特定行動記録に関する基本情報と、現在型付加情報と、を含む提供情報が作成される。また、搭乗者10が未来志向型である場合、特定行動記録に関する基本情報と、未来型付加情報と、を含む提供情報が作成される。
【0092】
その後、ステップS30において、エージェント部22を用いた情報提供制御が実行される。すなわち、搭乗者10との対話により、エージェント部22から、上記のように作成された提供情報に係る情報提供がなされる。
【0093】
図5は、過去志向型の搭乗者10に対する情報提供の例を示す説明図である。図5(A)は、過去志向型の搭乗者10に対して、特定行動記録に関する基本情報と詳細情報を含む情報を提供する実施例である。図5(B)は、現在志向型または未来志向型の搭乗者10に対して、特定行動記録に関する基本情報と詳細情報を含む情報を提供する比較例である。
【0094】
図5(A)に示すように、ここでは、「ある特定の道路を通行している」という搭乗者10の行動が認識され、その特定の道路を「通行したことがある」という基本情報が特定行動記録から抽出されたものとする。そして、搭乗者10が過去志向型であることを前提に、その特定の道路の通行履歴が「XX年前」であるという詳細情報が取得されたものとする。この場合、エージェント部22は、「この道は、XX年前によく通ったね」等といったように、特定行動記録に関する基本情報と詳細情報を含む発言をすることによって、搭乗者10に、現在の行動に関連する過去の行動についての情報提供がなされる。これにより、過去志向型の搭乗者10は、例えば過去を懐古して、「確かに、昔よく通ってたな。懐かしい。」等とエージェント部22からの情報提供を好意的に受け入れることができる。
【0095】
一方、図5(B)に示すように、現在志向型または未来志向型の搭乗者10に対し、上記と同様に「この道は、XX年前によく通ったね」等といった発言によって、エージェント部22が現在の行動に関連する過去の行動についての情報提供をしたとする。この場合、現在志向型または未来志向型の搭乗者10は、例えば「何度も通っている道だから、そういわれてもなぁ…」等といったように、提供情報に対して困惑する場合がある。
【0096】
すなわち、現在の通行している特定の道路を、過去にも通行したことがある情報を提供する場合、同じ内容の情報を提供しても、情報提供の対象である搭乗者10の嗜好によって、車両100から提供した情報の受け止められ方が異なる。本実施形態では、図5(A)のように、搭乗者10の嗜好(過去志向型)に応じて、適切な情報提供がなされるので、提供した過去の行動に関連する情報は搭乗者10に好意的に受け止められる。また、本実施形態では、過去志向型の搭乗者10が好む傾向にある経過時間に関して、「XX年前」という詳細情報が提供されるので、提供情報は、過去志向型の搭乗者10に特に好意的に受け入れられやすい。
【0097】
図6は、現在志向型の搭乗者10に対する情報提供の例を示す説明図である。図6に示すように、ここでは「ある特定の場所を訪問した」という搭乗者10の行動が認識され、その特定の場所に「来たことがある」という基本情報が特定行動記録から抽出されたものとする。そして、搭乗者10が現在志向型であることを前提に、過去の行動と比較して「久しぶりに」その特定の場所に訪れたという現在型付加情報が取得されたものとする。この場合、エージェント部22は、「久しぶりにここに来たね」等といったように、特定行動記録に関する基本情報と、現在型付加情報と、を含む発言をすることによって、搭乗者10に、現在の行動に関連する過去の行動についての情報提供がなされる。このため、現在志向型の搭乗者10は、例えば「(エージェント部22が)いつも見ていてくれるんだな」と想起する等、単に特定行動記録に係る基本情報(及び/または詳細情報)を提供する場合と比較して、エージェント部22からの情報提供を好意的に受け入れることができる。また、本実施形態では、過去における行動等と比較した現在行動等の頻度に関し、「久しぶりに」という現在型付加情報が提供情報に加えられており、現在志向型の搭乗者10はこのような付加情報を好む傾向にある。このため、提供情報は、現在志向型の搭乗者10に特に好意的に受け入れられやすい。
【0098】
図7は、未来志向型の搭乗者10に対する情報提供の例を示す説明図である。図7に示すように、ここでは特定の道路を通行しているという搭乗者10の行動が認識され、この特定の道路が過去に「江の島」という特定の場所に訪れるために通行した道路であるという基本情報が特定行動記録から抽出されたものとする。そして、搭乗者10が未来志向型であることを前提に、「江の島」に類似する別の特定の場所である「△△」について、未来型付加情報が取得されたものとする。この場合、エージェント部22は、「XX年前に江の島に一緒に行ったとき、楽しかったね」等といった特定行動記録に係る情報とともに、「江の島に似た△△という場所にも行ってみたいね」等といったように、新たな場所「△△」への訪問を提案する情報を、搭乗者10に提供する。このため、未来志向型の搭乗者10は、例えば「今度行ってみようかな」等といったように、単に特定行動記録に係る基本情報(及び/または詳細情報)を提供する場合と比較して、エージェント部22からの情報提供を好意的に受け入れることができる。また、本実施形態では、搭乗者10が未訪問の場所である「△△」についての訪問を促す未来型付加情報が提供情報に加えられており、未来志向型の搭乗者10はこのような付加情報を好む傾向にある。このため、提供情報は、未来志向型の搭乗者10に特に好意的に受け入れられやすい。
【0099】
図8は、搭乗者10の行動を記録するシーンにおける作用を示すフローチャートである。図8に示すように、ステップS31において、位置情報33及び/または車内音声32に基づいて搭乗者10の行動が認識されると、ステップS32において、認識された搭乗者10の行動と、車内音声32の解析によって蓄積されたキーワード(特に重要キーワード)との関連性が判定される。
【0100】
ステップS32において、認識された搭乗者10の行動と蓄積されたキーワードが関連する判定された場合、ステップS34において、その行動の記録である行動記録26が作成される。さらに、ステップS35において、エージェント部22から、その行動またはキーワードに関連する質問が搭乗者10に投げかけられる。この質問に搭乗者10が返答すると、ステップS36において、音声認識部41によって返答内容が解析される。その結果、ステップS37において、認識された搭乗者10の行動について、いつ/どこで/誰と/何をしたかに関する未取得の情報が、追加記録情報として取得される。このように取得された追加記録情報は、ステップS38において、認識された搭乗者10の行動に関する行動記録26と関連付けて記憶される。これにより、認識された搭乗者10の行動が、搭乗者10にとって“思い出”となる可能性が高い行動である場合には、その行動について詳細情報が補充される。
【0101】
なお、図8では、認識された搭乗者10の行動と蓄積されたキーワードが関連する場合に行動記録26が作成される例を示しているが、蓄積されたキーワードとの関連性に関わらず、認識された搭乗者10の行動について行動記録26が作成されてもよい。すなわち、少なくとも、認識された搭乗者10との行動と蓄積されたキーワードが関連する場合に、行動記録26が作成されればよい。認識された搭乗者10の行動と、蓄積されたキーワードと、の関連性が高い場合、その認識された搭乗者10の行動は、搭乗者10が“思い出”として認識している可能性が高い。このため、その行動は、行動記録26として記憶しておく必要性が高いので、上記のように、少なくとも、認識された搭乗者10との行動と蓄積されたキーワードが関連する場合には行動記録26が作成されることが好ましい。
【0102】
以上のように、本実施形態に係る情報提供方法は、位置情報33を取得する位置情報取得部27と、搭乗者10が発する音声(車内音声32)を取得する音声取得部28と、を備える車両100が、搭乗者10に情報を提供する情報提供方法である。この情報提供方法では、車両100(エージェントシステム15)が認識した搭乗者10の行動に係る記録である行動記録26が記憶される。また、搭乗者10が発する音声に基づいて、搭乗者10に対して提供する情報(提供情報)に関し、搭乗者10の嗜好が推定される。そして、搭乗者10に対して行動記録26(特定行動記録)に係る情報を提供するときに、搭乗者10の嗜好に基づいて、搭乗者10に対して提供する情報の内容が調整される。
【0103】
このように、本実施形態の情報提供方法では、搭乗者10の嗜好が推定され、搭乗者10の嗜好に応じた情報提供がなされる。これにより、車両100は、搭乗者10に受け入れられやすい情報提供スタイルで、搭乗者10の過去の行動についての“思い出”を、適切に提供することができる。すなわち、本実施形態の情報提供方法によれば、車両100は、搭乗者10の嗜好に応じた情報提供を行うことができる。
【0104】
本実施形態に係る情報提供方法では、音声(車内音声32)に含まれるキーフレーズの出現頻度を計数し、搭乗者10の嗜好は、その出現頻度に基づいて搭乗者10を複数の類型に分類することによって推定される。このように、キーフレーズの出現頻度に基づいて、予め定める類型に搭乗者10を分類することにより、情報提供スタイルに関する搭乗者10の嗜好が簡易かつ適切に推定される。その結果、車両100は、搭乗者10の嗜好に応じて、搭乗者10が受け入れやすい情報提供スタイルで、特に適切に情報提供を行うことができる。
【0105】
特に、本実施形態に係る情報提供方法では、キーフレーズの出現頻度に基づいて、搭乗者10が過去の行動記録26に関する情報の提供を好む過去志向型であるか否かが判定される。そして、搭乗者10は、過去志向型と、過去志向型とは異なる類型に分類される。
【0106】
過去志向型は、車両100からの情報提供スタイルに関し、多くの搭乗者10が属する嗜好類型の1つであるから、上記のように、搭乗者10を過去志向型とその他の類型に分類することによって、過去志向型の搭乗者10に対して、特に受け入れられやすい情報提供スタイルで情報提供をすることができる。また、過去志向型に属しない搭乗者10に対しても、情報提供の際に、過去志向型の搭乗者10に好まれるスタイルでの情報提供が押し付けられない。このため、過去志向型に属しない搭乗者10に対しても、受け入れられやすいスタイルで“思い出”が提供され得る。
【0107】
特に、本実施形態に係る情報提供方法では、搭乗者10が過去志向型に分類される場合、搭乗者に対して行動記録26に係る情報を提供するときに、搭乗者10が過去志向型とは異なる類型に分類される場合と比較して、搭乗者10に提供すべき行動記録26(特定行動記録)に関して詳細な情報が提供される。過去志向型の搭乗者10は、特定行動記録に関する詳細な情報提供を好む傾向にあるので、特定行動記録についての基本情報と併せて、詳細情報を提供することにより、提供情報が搭乗者10に特に好意的に受け入れられやすくなる。
【0108】
本実施形態に係る情報提供方法では、キーフレーズの出現頻度に基づいて、搭乗者10が現在の行動に関する情報提供を好む現在志向型であるか否かが判定される。そして、搭乗者10は、現在志向型と、現在志向型とは異なる類型に分類される。
【0109】
現在志向型は、車両100からの情報提供スタイルに関し、多くの搭乗者10が属する嗜好類型の1つであるから、上記のように、搭乗者10を現在志向型とその他の類型に分類することによって、現在志向型の搭乗者10に対して、特に受け入れられやすい情報提供スタイルで情報提供をすることができる。また、現在志向型に属しない搭乗者10に対しても、情報提供の際に、現在志向型の搭乗者10に好まれるスタイルでの情報提供が押し付けられない。このため、現在志向型に属しない搭乗者10に対しても、受け入れられやすいスタイルで“思い出”が提供され得る。
【0110】
特に、本実施形態に係る情報提供方法では、搭乗者10が現在志向型に分類される場合、搭乗者10に対して行動記録26(特定行動記録)に係る情報を提供するときに、搭乗者10の現在の行動に関連する情報(現在型付加情報)が付加される。現在志向型の搭乗者10は、現在の行動や習慣等についての情報提供を好む傾向にあるので、特定行動記録について情報提供をする際に、現在の行動に関連する情報(現在型付加情報)を加えることにより、提供情報が搭乗者10に特に好意的に受け入れられやすくなる。
【0111】
本実施形態に係る情報提供方法では、キーフレーズの出現頻度に基づいて、搭乗者10が、行動記録26(特定行動記録)に関連した新たな情報の提供を好む未来志向型であるか否が判定される。そして、搭乗者10は、未来志向型と、未来志向型とは異なる類型に分類される。
【0112】
未来志向型は、車両100からの情報提供スタイルに関し、多くの搭乗者10が属する嗜好類型の1つであるから、上記のように、搭乗者10を未来志向型とその他の類型に分類することによって、未来志向型の搭乗者10に対して、特に受け入れられやすい情報提供スタイルで情報提供をすることができる。また、未来志向型に属しない搭乗者10に対しても、情報提供の際に、未来志向型の搭乗者10に好まれるスタイルでの情報提供が押し付けられない。このため、未来志向型に属しない搭乗者に対しても、受け入れられやすいスタイルで“思い出”が提供され得る。
【0113】
特に、本実施形態に係る情報提供方法では、搭乗者10が未来志向型に分類される場合、搭乗者10に対して行動記録26(特定行動記録)に係る情報を提供するときに、搭乗者10に提供すべき行動記録26(特定行動記録)に関連した新たな情報(未来型付加情報)が付加される。未来志向型の搭乗者10は、特定行動記録に関連した新たな情報の提供を好む傾向にあるので、特定行動記録について情報提供をする際に、特定行動記録に関連した新たな情報(未来型付加情報)を加えることにより、提供情報が搭乗者10に特に好意定期に受け入れられやすくなる。
【0114】
本実施形態に係る情報提供方法では、音声(車内音声32)に含まれるキーワードが抽出され、抽出されたキーワードは蓄積される。また、認識された搭乗者10の行動と、蓄積されたキーワードと、の関連性が判定される。そして、少なくとも、認識された搭乗者10の行動と蓄積されたキーワードが関連すると判定されたときには、認識された搭乗者10の行動は、行動記録26として記憶される。
【0115】
蓄積されたキーワードとの関連する行動は、搭乗者10が“思い出”として認識している可能性が高い行動であるから、上記のように、蓄積されたキーワードとの関連する行動について行動記録26を作成しておくことにより、後に、搭乗者10に対して特に適切な“思い出”を提供することができる。
【0116】
また、本実施形態に係る情報提供方法では、認識された搭乗者10の行動と、蓄積されたキーワードと、が関連すると判定されたときに、認識された搭乗者10の行動について追加的に記録すべき情報である追加記録情報が取得される。そして、追加記録情報は、認識された搭乗者10の行動についての行動記録26に関連付けられて記憶される。このように、追加記録情報を取得し、行動記録26に関連付けて記憶しておくことにより、いつ/どこで/誰と/何をしたかといった情報が行動記録26に補充される。このため、後に、搭乗者10に対して特に適切な“思い出”を提供することができる。
【0117】
本実施形態に係る情報提供方法では、行動記録26は、少なくとも、搭乗者10が訪れた場所に係る記録、及び/または、搭乗者10が体験した事象に係る記録、を含む。行動記録26が、単なる位置情報33等ではなく、上記のような情報を含むことにより、後に、搭乗者10に対して適切に“思い出”を提供することができる。
【0118】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態及び各変形例で説明した構成は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。
【0119】
例えば、上記実施形態においては、エージェントシステム15は、エージェント部22を介して搭乗者10との対話的なコミュニケーションを図るが、これに限らず、エージェント部22の代わりにカーナビゲーションシステム12等を利用することができる。また、エージェントシステム15がエージェント部22を有する場合でも、搭乗者10と音声によるコミュニケーションが図れる限りにおいて、エージェント部22がシンボリックな外見または外形を有している必要はない。
【0120】
また、上記実施形態においては、車両コントローラ16が位置情報取得部27及び音声取得部28として機能するが、これに限らず、エージェントシステム15が位置情報取得部27及び/または音声取得部28を備えていてもよい。但し、搭乗者10に対する情報提供に関し、車両100(車両コントローラ16)とエージェントシステム15は実質的に一体に構成されるものである。このため、エージェントシステム15が位置情報取得部27及び/または音声取得部28を備える場合、車両100が位置情報取得部27及び/または音声取得部28を備えていることと実質的に同じである。
【0121】
また、上記実施形態においては、搭乗者10を過去志向型、現在志向型、及び、未来志向型に分類するときに、過去型キーフレーズ、現在型キーフレーズ、及び、未来型キーフレーズの各出現頻度を計数しているが、これに限らない。例えば、過去型キーフレーズと未来型キーフレーズの各出現頻度を計数し、過去型キーフレーズと未来型キーフレーズの各出現頻度が同程度であるときに、搭乗者10を現在志向型に分類してもよい。
【符号の説明】
【0122】
10:搭乗者,11:運転操作部,12:カーナビゲーションシステム,13:通信機,14:スピーカ,15:エージェントシステム,16:車両コントローラ,17:センサ,21:地図情報,22:エージェント部,23:エージェントコントローラ,24:ディスプレイ,25:記憶装置,26:行動記録,27:位置情報取得部,28:音声取得部,30:車内マイク,31:位置センサ,32:車内音声,33:位置情報,41:音声認識部,42:行動認識部,43:嗜好推定部,44:提供情報調整部,45:エージェント制御部,51:キーフレーズ抽出部,52:キーワード抽出部,53:関連性判定部,54:行動記録作成部,55:行動記録検索部,56:付加情報取得部,57:提供情報作成部,58:情報提供制御部,59:追加記録情報取得制御部,100:車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8