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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124310
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】意思決定支援システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20230830BHJP
   G06Q 10/04 20230101ALI20230830BHJP
   G06Q 50/26 20120101ALI20230830BHJP
【FI】
G05B23/02 R
G06Q10/04
G06Q50/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027996
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陰山 晃治
(72)【発明者】
【氏名】崎村 茂寿
(72)【発明者】
【氏名】田所 秀之
(72)【発明者】
【氏名】山本 智裕
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 賢一
【テーマコード(参考)】
3C223
5L049
【Fターム(参考)】
3C223AA06
3C223BA01
3C223CC01
3C223DD01
3C223EB01
3C223FF03
3C223FF05
3C223FF13
3C223FF24
3C223FF42
3C223HH03
3C223HH08
5L049AA04
5L049CC35
(57)【要約】
【課題】ユーザの意思決定を効果的に支援する。
【解決手段】意思決定支援システム100において、実績データベース21は、外的要因から決定される物理量である外的因子と、ユーザが調整可能な物理量である運転因子と、外的因子および運転因子に応じて決定される物理量である運転結果因子と、の各因子の過去の実績に関する履歴データが記録されている。範囲設定部11は、いずれかの因子を検索対象項目に指定するとともに、当該検索対象項目のデータ範囲を設定する。検索部13は、範囲設定部11により設定された検索対象項目の値がデータ範囲を満たす履歴データが記録されている期間を実績データベース21において特定し、検索対象項目以外の他の因子について、当該期間における値を実績データベース21から検索する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外的要因から決定される物理量である外的因子と、ユーザが調整可能な物理量である運転因子と、前記外的因子および前記運転因子に応じて決定される物理量である運転結果因子と、の各因子の過去の実績に関する履歴データが記録された実績データベースと、
前記外的因子、前記運転因子および前記運転結果因子のいずれかの因子を検索対象項目に指定するとともに、当該検索対象項目のデータ範囲を設定する範囲設定部と、
前記範囲設定部により設定された前記検索対象項目の値が前記データ範囲を満たす履歴データが記録されている期間を前記実績データベースにおいて特定し、前記検索対象項目以外の他の因子について、当該期間における値を前記実績データベースから検索する検索部と、
前記検索部により検索された前記他の因子の値を、前記履歴データの検索結果として表示装置に表示させる検索結果表示部と、を備える
意思決定支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の意思決定支援システムであって、
前記範囲設定部は、設定した前記検索対象項目および前記データ範囲と、前記検索対象項目の将来予測値とを、前記表示装置に表示させる
意思決定支援システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の意思決定支援システムであって、
前記範囲設定部は、前記検索対象項目を複数設定する
意思決定支援システム。
【請求項4】
請求項3に記載の意思決定支援システムであって、
前記範囲設定部により設定された複数の前記検索対象項目における前記データ範囲間の論理関係を設定する検索条件論理関係設定部を備え、
前記検索部は、前記範囲設定部により設定された複数の前記検索対象項目の値が前記論理関係および前記データ範囲をそれぞれ満たす履歴データが記録されている期間を前記実績データベースにおいて特定する
意思決定支援システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の意思決定支援システムであって、
前記他の因子は前記運転因子を含み、
前記検索結果表示部は、前記検索部により特定された前記期間における前記運転因子の値を前記表示装置に表示させる
意思決定支援システム。
【請求項6】
請求項5に記載の意思決定支援システムであって、
前記範囲設定部は、前記運転結果因子を含む各因子を前記検索対象項目に指定する
意思決定支援システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の意思決定支援システムであって、
前記検索結果表示部は、前記検索部により検索された前記他の因子の値の範囲を示す図形を前記表示装置に表示させる
意思決定支援システム。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の意思決定支援システムであって、
前記検索結果表示部は、前記検索部により検索された前記他の因子の値の頻度を示すヒストグラムを前記表示装置に表示させる
意思決定支援システム。
【請求項9】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の意思決定支援システムであって、
前記検索結果表示部は、前記検索部により検索された前記他の因子の値の頻度差を色の濃淡または色合い差で表現した図形を前記表示装置に表示させる
意思決定支援システム。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の意思決定支援システムであって、
前記ユーザの操作入力を検出する操作入力装置を備え、
前記範囲設定部は、前記操作入力装置により検出された前記ユーザの操作入力に基づいて、前記データ範囲を設定する
意思決定支援システム。
【請求項11】
請求項10に記載の意思決定支援システムであって、
前記操作入力装置は、前記表示装置に表示されるアイコンの位置を前記ユーザの操作入力に応じて指定するためのポインティングデバイスを含み、
前記範囲設定部は、前記ユーザが前記ポインティングデバイスを用いて前記表示装置の画面上で指定した前記アイコンの位置に基づいて、前記データ範囲を設定する
意思決定支援システム。
【請求項12】
請求項11に記載の意思決定支援システムであって、
前記範囲設定部は、複数の前記検索対象項目にそれぞれ対応する複数の軸を有するレーダーチャートを前記表示装置に表示させ、
前記範囲設定部は、前記ユーザが前記ポインティングデバイスを用いて前記レーダーチャートの各軸上で指定した前記アイコンの位置に基づいて、前記データ範囲を設定する
意思決定支援システム。
【請求項13】
請求項11に記載の意思決定支援システムであって、
前記範囲設定部は、横軸が経過時間を、縦軸が前記検索対象項目の値をそれぞれ表し、前記検索対象項目の値の時系列変化を示すトレンドグラフを、前記表示装置に表示させる
意思決定支援システム。
【請求項14】
請求項13に記載の意思決定支援システムであって、
前記範囲設定部は、前記ユーザが前記ポインティングデバイスを用いて前記トレンドグラフの表示枠内で指定した前記アイコンの位置に基づいて、前記データ範囲を設定する
意思決定支援システム。
【請求項15】
請求項14に記載の意思決定支援システムであって、
前記アイコンは、前記トレンドグラフの表示枠内に複数表示され、
前記範囲設定部は、前記ユーザが前記ポインティングデバイスを用いて前記トレンドグラフの表示枠内で指定した複数の前記アイコンのそれぞれの位置に基づいて、前記データ範囲を設定する
意思決定支援システム。
【請求項16】
請求項14または15に記載の意思決定支援システムであって、
前記アイコンは、前記トレンドグラフの表示枠内で前記縦軸方向には移動可能で前記横軸方向には移動不可能である
意思決定支援システム。
【請求項17】
請求項14から請求項16のいずれか一項に記載の意思決定支援システムであって、
前記トレンドグラフには、所定の基準時刻からの前記検索対象項目の将来予測値の時系列変化が表示され、
前記アイコンは、前記トレンドグラフの表示枠内で前記横軸方向の位置が前記基準時刻から離れるほど、前記将来予測値に対する前記縦軸方向の移動自由度が大きい
意思決定支援システム。
【請求項18】
請求項1から請求項17のいずれか一項に記載の意思決定支援システムであって、
前記外的因子は雨水ポンプ所のポンプ井への流入量であり、
前記運転因子は前記雨水ポンプ所のポンプ運転台数であり、
前記運転結果因子は前記ポンプ井の水位であり、
前記範囲設定部は、前記流入量を前記検索対象項目に指定する
意思決定支援システム。
【請求項19】
請求項1から請求項18のいずれか一項に記載の意思決定支援システムであって、
所定のふるい分け判断条件に基づいて、前記検索部による検索結果のふるい分けを行うふるい分け部を備え、
前記検索結果表示部は、前記検索部により検索された前記他の因子の値のうち、前記ふるい分け部によるふるい分けで残った前記他の因子の値を、前記履歴データの検索結果として前記表示装置に表示させる
意思決定支援システム。
【請求項20】
請求項19に記載の意思決定支援システムであって、
前記ユーザに指定された条件に基づいて、前記ふるい分け判断条件を設定するふるい分け判断情報入力部を備える
意思決定支援システム。
【請求項21】
雨水ポンプ所のポンプ井への流入量の将来予測値の時系列変化を示すグラフであって、横軸が基準時刻に対する将来の時間を、縦軸が前記将来予測値をそれぞれ表すトレンドグラフと、
前記トレンドグラフの表示枠内にそれぞれ表示された複数のアイコンと、
複数の前記アイコンにより規定される範囲内で時系列変化する前記流入量の履歴データと、
前記流入量の履歴データに対応する前記ポンプ井の水位および前記雨水ポンプ所のポンプ運転台数の履歴データと、を含む画面を、表示装置に表示させる
意思決定支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの意思決定を支援するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球の気候変動に伴って局所的な豪雨の発生が各地で増加傾向にあり、豪雨時の内水氾濫の防止が喫緊の課題となっている。内水氾濫の防止には、下水に流入した雨水をポンプで吸い上げて河川等へ放流する雨水ポンプ所の活用が有効であるが、時々刻々と変化する降雨状況に対して適切なポンプ運転計画を定めるのは容易ではない。
【0003】
一方、近年では様々な分野において人工知能(AI)の利用が広がっており、雨水ポンプ所におけるポンプ運転計画の策定にAIを利用することも提案されている。しかしながら、AIにより求められたポンプ運転計画が常に100%の正解率であるとは限らず、降雨状況によっては、不適切なポンプ運転計画に従って雨水ポンプ所の運用が行われてしまい、その結果、内水氾濫で人命や家財に大きな影響が生じる可能性がある。これを確実に避けるためには、AIにより求められたポンプ運転計画が適切であるか否かを、経験豊富な運転員が最終的に判断する必要がある。
【0004】
ところが、運転員はAIで求められたポンプ運転計画を提示されても、その情報だけでは適切かどうかを最終的に判断するのが難しく、過去に類似条件下でどのような運転が実施されたのかを、過去のポンプ運転実績から確認したい場合がある。また、こうした課題は雨水ポンプ所におけるポンプ運転計画の確認に限らず、他の分野における情報確認の際にも存在する。さらに、AI以外の手法で求められたポンプ運転計画や他の情報についても、同様の課題がある。したがって、過去の実績情報からユーザが指定する条件に適合する情報を容易に検索し、その検索結果をユーザに提示することで、ユーザの意思決定を支援するシステムが求められている。
【0005】
上記課題に関連し、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1には、アイコンを用いたユーザの操作内容からデータの変化を示すトレンドグラフの部分を指定し、抽出した部分データを表示することで、制御対象に関連付けられたデータから制御対象を精度よくモニタできるようにした制御システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-159868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されているアイコンは時間(日時)を指定するためのものであり、データの数値や数値の範囲を指定するものではない。したがって、過去の実績情報からユーザの意思決定に役立つ情報を適切に検索できず、その結果、ユーザの意思決定を効果的に支援できない場合がある。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、ユーザの意思決定を効果的に支援することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による意思決定支援システムの一態様は、外的要因から決定される物理量である外的因子と、ユーザが調整可能な物理量である運転因子と、前記外的因子および前記運転因子に応じて決定される物理量である運転結果因子と、の各因子の過去の実績に関する履歴データが記録された実績データベースと、前記外的因子、前記運転因子および前記運転結果因子のいずれかの因子を検索対象項目に指定するとともに、当該検索対象項目のデータ範囲を設定する範囲設定部と、前記範囲設定部により設定された前記検索対象項目の値が前記データ範囲を満たす履歴データが記録されている期間を前記実績データベースにおいて特定し、前記検索対象項目以外の他の因子について、当該期間における値を前記実績データベースから検索する検索部と、前記検索部により検索された前記他の因子の値を、前記履歴データの検索結果として表示装置に表示させる検索結果表示部と、を備える。
本発明による意思決定支援システムの他の一態様は、雨水ポンプ所のポンプ井への流入量の将来予測値の時系列変化を示すグラフであって、横軸が基準時刻に対する将来の時間を、縦軸が前記将来予測値をそれぞれ表すトレンドグラフと、前記トレンドグラフの表示枠内にそれぞれ表示された複数のアイコンと、複数の前記アイコンにより規定される範囲内で時系列変化する前記流入量の履歴データと、前記流入量の履歴データに対応する前記ポンプ井の水位および前記雨水ポンプ所のポンプ運転台数の履歴データと、を含む画面を、表示装置に表示させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ユーザの意思決定を効果的に支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る意思決定支援システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の第1の実施形態に係る意思決定支援システムにおける情報の流れを示す図である。
図3図2は、本発明の第1の実施形態に係る意思決定支援システムにおける情報の流れの別例を示す図である。
図4図4は、本発明の第1の実施形態に係る表示画面例を示す図である。
図5図5は、本発明の第2の実施形態に係る意思決定支援システムにおける情報の流れを示す図である。
図6図6は、本発明の第2の実施形態に係る表示画面例を示す図である。
図7図7は、本発明の第3の実施形態に係る意思決定支援システムにおける情報の流れを示す図である。
図8図8は、本発明の第3の実施形態に係る表示画面例を示す図である。
図9図9は、本発明の第4の実施形態に係る表示画面例を示す図である。
図10図10は、本発明の第5の実施形態に係る表示画面例を示す図である。
図11図11は、本発明の第6の実施形態に係る表示画面例を示す図である。
図12図12は、本発明の第7の実施形態に係る表示画面例を示す図である。
図13図13は、本発明の第8の実施形態に係る表示画面例を示す図である。
図14図14は、本発明の第9の実施形態に係る表示画面例を示す図である。
図15図15は、本発明の第10の実施形態に係る表示画面例を示す図である。
図16図16は、本発明の第11の実施形態に係る表示画面例を示す図である。
図17図17は、本発明の第12の実施形態に係る表示画面例を示す図である。
図18図18は、本発明の第13の実施形態に係る表示画面例を示す図である。
図19図19は、本発明の第14の実施形態に係る意思決定支援システムにおける情報の流れを示す図である。
図20図20は、本発明の第14の実施形態に係る表示画面例を示す図である。
図21図21は、本発明の第15の実施形態に係る表示画面例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。以下の各実施形態では、本発明に係る意思決定支援システムの具体例として、雨水を河川等に放流する雨水ポンプ所について策定されるポンプ運転計画に対するユーザの意思決定を支援するシステムへの適用例を説明する。
【0013】
雨水ポンプ所において、雨水によるポンプ井への流入量は、基本的に天候(降水量)や地形によって支配される物理量であるため、運転員としては自由に調整ができない外的要因から決定される外的因子に相当する。一方、雨水が流れ込んで貯水されるポンプ井の水位は、ポンプ井への流入量に応じて変化し、雨水ポンプ所が有する複数のポンプをそれぞれ起動または停止させることによって運転員が調整できる物理量である。すなわち、ポンプの運転台数は、ユーザである運転員が調整可能な運転因子に相当し、その操作の結果として得られるポンプ井水位は、外的因子および運転因子に応じて定まる運転結果因子に相当すると言える。このように、外的因子、運転因子および運転結果因子の各因子に相当する物理量を取り扱うシステムであれば、雨水ポンプ所に限らず、本発明の適用対象とすることができる。
【0014】
例えば、浄水場を対象とする場合は、外的因子には取水する原水水質を、運転因子には薬品注入量を、運転結果因子には浄水場内あるいは浄水後の水質(濁度など)をそれぞれ適用できる。また、下水処理場を対象とする場合は、外的因子には流入する下水水質を、運転因子にはブロワ送風量や活性汚泥返送量を、運転結果因子には下水処理場内あるいは放流水の水質(有機物や窒素・リンの濃度など)をそれぞれ適用できる。これ以外にも、様々なシステムについて本発明を適用可能である。
【0015】
(意思決定支援システムの構成)
図1は、本発明の実施形態に係る意思決定支援システムの構成を示すブロック図である。図1に示す意思決定支援システム100は、制御部1、記憶部2、メモリ3、操作入力装置4および表示装置5を備えたコンピュータであり、これらの各装置がバス6を介して互いに接続されることにより構成されている。
【0016】
制御部1は、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いて構成され、意思決定支援システム100を動作させるための様々な処理や演算を行う。制御部1は、記憶部2に格納されたプログラムを実行することで、範囲設定部11、検索条件論理関係設定部12、検索部13、ふるい分け部14、ふるい分け判断情報入力部15、検索結果表示部16の各機能ブロックを実現する。これらの機能ブロックの詳細については後述する。なお、制御部1の機能の一部または全部を、CPU以外のデバイス、例えばGPU(Graphic Processing Unit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を用いて実現してもよい。
【0017】
ただし、制御部1では上記機能ブロックを必ずしも全て実現する必要はなく、意思決定支援システム100が備える機能に応じて、任意の機能ブロックのみを制御部1で実現し、それ以外の機能ブロックを制御部1から省略することもできる。意思決定支援システム100が備える機能と制御部1の機能ブロックとの関係については、後述する各実施形態においてそれぞれ説明する。
【0018】
記憶部2は、例えばHDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶装置やSSD(Solid State Drive)などの大容量かつ不揮発性の記憶装置を用いて構成され、制御部1が実行するプログラムや、制御部1の処理で利用される各種情報が格納される。記憶部2に格納される情報には、実績データベース21が含まれる。
【0019】
実績データベース21は、過去の雨水ポンプ所の運用実績に関する履歴データが記録されたデータベースである。実績データベース21には、例えば過去の所定期間に得られた雨水ポンプ所における外的因子、運転因子および運転結果因子の各因子、すなわち、ポンプ井への雨水流入量、ポンプ運転台数、ポンプ井水位の各物理量の実績に関する履歴データが、当該履歴データが得られた日時と互いに関連付けて記録される。これらの履歴データは、意思決定支援システム100を操作する運転員等のユーザが予め入力してもよいし、意思決定支援システム100と通信可能に接続された雨水ポンプ所の制御装置(不図示)から送信されたものを受信することで取得してもよい。意思決定支援システム100では、任意の方法により記憶部2に予め格納された実績データベース21を用いて、ポンプ運転計画に対するユーザの意思決定を支援することができる。
【0020】
メモリ3は、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)等の高速かつ揮発性の記憶装置を用いて構成され、制御部1がプログラムを実行する際の作業領域として使用される。
【0021】
操作入力装置4は、ユーザの操作入力を検出するための装置であり、例えばキーボードやマウス、各種スイッチ類を用いて構成される。表示装置5は、意思決定支援システム100の処理結果を画面表示してユーザに提示する装置であり、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等を用いて構成される。なお、意思決定支援システム100と通信可能な他のコンピュータやスマートフォン等を、操作入力装置4や表示装置5として利用してもよい。
【0022】
なお、図1に示した意思決定支援システム100の構成は、物理的に一つの計算機上に構築されてもよいし、複数の計算機上に分散して構築されてもよい。さらに、物理的には一つまたは複数の計算機上に論理区画を構成し、この論理区画上に意思決定支援システム100の各構成が構築されてもよい。
【0023】
次に、制御部1における範囲設定部11、検索条件論理関係設定部12、検索部13、ふるい分け部14、ふるい分け判断情報入力部15、検索結果表示部16の各機能ブロックについて説明する。意思決定支援システム100では、制御部1がこれらの機能ブロックとして動作することで、雨水ポンプ所のポンプ運転計画に対して、ユーザが設定した検索条件に合致する過去のポンプ運転実績の履歴データが実績データベース21から検索され、ユーザに提示される。これにより、ポンプ運転計画に対するユーザの意思決定を支援するものである。
【0024】
範囲設定部11は、ユーザが操作入力装置4を用いて入力した操作内容に基づいて、実績データベース21から所望の履歴データを検索する際の検索対象項目とデータ範囲の組み合わせを設定する。本実施形態では、範囲設定部11は、外的因子であるポンプ井への流入量、運転因子であるポンプ運転台数、運転結果因子であるポンプ井水位のいずれかの因子を検索対象項目に指定するとともに、当該検索対象項目のデータ範囲を設定する。例えばユーザは、不図示の計画立案装置によりAI等を利用して立案されたポンプ運転計画に対して、当該ポンプ運転計画が適切かどうかを確認するために参照すべき履歴データの項目を、ポンプ井への流入量、ポンプ運転台数、ポンプ井水位の中から選択するとともに、当該項目のデータ範囲を定めて、操作入力装置4により入力する。範囲設定部11は、ユーザから入力されたこれらの情報に従って、実績データベース21の検索に用いる検索対象項目とデータ範囲の組み合わせを設定する。これにより、過去の雨水ポンプ所の運転実績データに対する検索条件を設定することができる。
【0025】
検索条件論理関係設定部12は、範囲設定部11により履歴データの検索条件として複数の検索対象項目が設定された場合に、その複数の検索対象項目におけるデータ範囲間の論理関係を設定する。例えば、雨水ポンプ所が複数のポンプ井を有しており、ユーザが操作入力装置4を用いて、各ポンプ井への流入量を検索対象項目に指定し、各ポンプ井への流入量がそれぞれ所定のデータ範囲内であることを、履歴データの検索条件に指定したとする。この場合、検索条件論理関係設定部12は、各ポンプ井への流入量条件に指定されたデータ範囲間の論理関係として、論理積(AND)を設定する。他にも、例えば論理和(OR)、否定論理積(NAND)、否定論理和(NOR)、排他的論理和(XOR)や、これらの組み合わせなどを、検索条件論理関係設定部12ではユーザの操作入力に応じて設定することができる。
【0026】
検索部13は、範囲設定部11により設定された検索条件や、検索条件論理関係設定部12により設定された論理関係に基づいて、実績データベース21から履歴データの検索を行う。
【0027】
ふるい分け部14は、検索部13による履歴データの検索結果のふるい分けを行う。ふるい分け判断情報入力部15は、ユーザが操作入力装置4を用いて入力した操作内容に基づいて、ふるい分け部14が履歴データの検索結果のふるい分けを行う際に用いるふるい分け判断情報を設定し、ふるい分け部14に入力する。ふるい分け部14は、ふるい分け判断情報入力部15から入力されたふるい分け判断情報に基づいて、検索部13により検索された履歴データの中で所望の条件を満たす履歴データを抽出することができる。
【0028】
ふるい分け判断情報入力部15は、例えば雨水ポンプ所におけるポンプ非稼働期間(保守機関、故障機関等)の日時情報などを、ふるい分け判断情報として設定することができる。あるいは、ポンプ運転実績に対する評価結果(「成功/失敗/やや成功/また再現したい/二度と繰り返したくない」、「優/良/可/不可」、「A/B/C」等の評価区分や、評価点数など)が実績データベース21に記録されている場合は、これらの評価結果をふるい分け判断情報に利用することもできる。雨水ポンプ所の運転員であるユーザは、操作入力装置4を用いて任意の条件を指定することにより、ふるい分け判断情報を設定し、履歴データの検索結果のふるい分けを行うことができる。
【0029】
検索結果表示部16は、検索部13により検索された履歴データを表示装置5に表示してユーザに提示する。なお、ふるい分け部14によりふるい分けを行った場合は、検索部13により検索された履歴データのうち、ふるい分けで残った履歴データを表示装置5に表示する。また、範囲設定部11により検索条件として設定された検索対象項目とデータ範囲の組み合わせや、検索条件論理関係設定部12により設定された論理関係などを、履歴データの検索結果とともに表示してもよい。このとき表示装置5に表示される具体的な画面例については、以下の各実施形態において説明する。
【0030】
続いて、意思決定支援システム100の具体的な動作例について、以下の各実施形態により説明する。
【0031】
(第1の実施形態)
図2は、本発明の第1の実施形態に係る意思決定支援システム100における情報の流れを示す図である。第1の実施形態では、範囲設定部11、検索部13および検索結果表示部16を用いて、実績データベース21から履歴データを検索してユーザに提示する例を説明する。なお、本実施形態においては、制御部1が、検索条件論理関係設定部12、ふるい分け部14およびふるい分け判断情報入力部15を有していなくてもよい。
【0032】
範囲設定部11は、ユーザの操作内容に基づいて検索対象項目とデータ範囲の組み合わせを設定し、これらの設定内容を検索範囲情報として検索部13に受け渡す。検索部13は、範囲設定部11から入力された検索範囲情報を実績データベース21に出力し、実績データベース21の検索を行う。このとき必要に応じて、検索範囲情報のフォーマット変換を行う。これにより、実績データベース21に記録された雨水ポンプ所の運用実績に関する履歴データのうち、検索対象項目について検索範囲情報で指定されたデータ範囲を満たす履歴データが抽出される。
【0033】
実績データベース21から抽出された履歴データは、実績データベース21の検索結果として、実績データベース21から検索部13に転送される。検索部13は、実績データベース21から転送された検索結果を検索結果表示部16に受け渡す。このとき必要に応じて、検索結果のフォーマット変換を行う。
【0034】
検索結果表示部16は、検索部13から転送された検索結果をユーザに提示するための表示画面を生成し、表示装置5に出力して表示させる。
【0035】
例えば、雨水ポンプ所の運転員のニーズの一つとして、降雨量に対するポンプ井水位の過去の実績値を知りたい場合がある。この場合、本実施形態では、運転員が操作入力装置4を用いて降雨量を選択すると、図2の範囲設定部11により、降雨量が検索対象項目に設定される。また、この場合に指定すべきデータ範囲としてもっとも単純なのは、降雨量の上限値あるいは下限値のいずれか、または両方の値である。
【0036】
運転員が降雨量の上限値を指定した場合、検索部13は、その上限値よりも降雨量が少なかった時期のポンプ井水位と日時を実績データベース21から検索し、指定されたデータ範囲を満たす履歴データとして抽出する。また、運転員が降雨量の下限値を指定した場合、検索部13は、その下限値よりも降雨量が多かった時期のポンプ井水位と日時を実績データベース21から検索し、指定されたデータ範囲を満たす履歴データとして抽出する。上限値と下限値の両方を指定した場合は、降雨量がこれらの間にあった時期のポンプ井水位と日時を実績データベース21から検索し、指定されたデータ範囲を満たす履歴データとして抽出すればよい。そして、検索結果表示部16では、検索結果として得られたポンプ井水位の値を含む表示画面を生成し、表示装置5に表示させる。なお、検索結果としてポンプ井水位の値が複数得られた場合は、その範囲を運転員が確認しやすいような形態で表示画面を生成してもよい。
【0037】
次に、検索部13の具体的な計算方法の例について以下に述べる。以下の説明では、実績データベース21には、雨水ポンプ所の過去の運転実績に関するレコード数n個の履歴データセットが所定の時間間隔で記録されており、i番目のデータセットにおける降雨量をri、ポンプ井水位をLiとする。ただし、iは1~nの範囲を取る整数である。
【0038】
検索部13では、範囲設定部11から入力される設定範囲情報のフォーマット変換を必要に応じて行った後、設定範囲情報を用いて実績データベース21の検索を行う。例えば、設定範囲情報に含まれる降雨量の上限値をupperLimit、下限値をlowerLimitとすると、検索部13では、(ri < upperLimit)かつ(lowerLimit < ri)を満足するiの値を、IF-THENの判断文等を用いて実績データベース21内で検索する。そして、得られたiの値に対応するポンプ井水位Liと日時の値を、履歴データの検索結果として実績データベース21から取得する。
【0039】
上記のように、検索部13で行われる演算は単純であるため、実績データベース21が蓄積しているレコード数にもよるが、本実施形態では履歴データの検索にかかる時間が比較的少なく、検索条件の入力から検索結果を得られるまでの反応が速い。そのため、ユーザの問い合わせとそれに対する応答を繰り返すことでユーザの意思決定を支援する対話型の意思決定支援に適している。
【0040】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る意思決定支援システム100における情報の流れの別例を示す図である。図3では、図2に示した各情報に加えて、範囲設定部11に入力される検索対象項目の将来予測値の情報の流れがさらに追加されている。この将来予測値は、例えば、ユーザが表示装置5の画面上で操作入力装置4を用いて入力した数値に従って決定してもよいし、あるいは、意思決定支援システム100とは別に設けられた装置やシステムによる計算値を反映することで、ユーザの操作入力なしで自動的に決定してもよい。
【0041】
範囲設定部11は、ユーザが検索対象項目とデータ範囲を入力する際に表示装置5に表示される画面と同一の画面内に、入力された将来予測値を表示させることができる。このようにすれば、ユーザがデータ範囲の上限値や下限値を設定する際に、これらの値を誤って入力することを抑制できるとともに、より適切な上限値や下限値を設定することが可能となる。
【0042】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る表示画面例を示す図である。図4に示す表示画面は、範囲設定部11や検索結果表示部16によって表示装置5に表示される画面の一例を示しており、範囲設定枠51と検索結果表示枠52を含んで構成されている。なお、図4の表示画面では、雨水ポンプ井に2系列から雨水が流入する場合を想定している。
【0043】
範囲設定枠51には、検索対象項目であるポンプ井流入量Aとポンプ井流入量Bのそれぞれについて、将来予測値、制約最大値、制約最小値および他項目の最大最小条件下でのデータ範囲が表示されている。これらの表示内容は、ユーザが検索対象項目とデータ範囲を入力する際に範囲設定部11によって決定される。
【0044】
将来予測値は、図3において範囲設定部11に入力されるポンプ井流入量A,Bの将来予測値を表す。制約最大値と制約最小値は、範囲設定部11により設定されるポンプ井流入量A,Bのデータ範囲の上限値と下限値をそれぞれ表す。これらの表示により、ユーザがポンプ井流入量Aとポンプ井流入量Bのそれぞれに対して制約最大値および制約最小値を指定する際に、誤入力の可能性を減少させることができる。したがって、より適切な値を設定することが可能となる。
【0045】
他項目の最大最小条件下でのデータ範囲は、範囲設定部11に表示される各検索対象項目間のデータ範囲の相互関係を表す。すなわち、ポンプ井流入量Aにおける他項目の最大最小条件下でのデータ範囲は、ポンプ井流入量Bのデータ範囲に対応するポンプ井流入量Aのデータ範囲を表し、反対にポンプ井流入量Bにおける他項目の最大最小条件下でのデータ範囲は、ポンプ井流入量Aのデータ範囲に対応するポンプ井流入量Bのデータ範囲を表す。これらの情報は、ポンプ井流入量A,Bそれぞれのデータ範囲の論理積(AND)により、実績データベース21において検索対象とする履歴データセットを絞り込む際の参考に用いることができる。なお、初期状態ではこれらの値はブランクとなっているか、あるいは、実績データベース21の全レコードにおける最大値と最小値が入力されていることが好ましい。
【0046】
例えば、ポンプ井流入量Aの実績値をflowAi、ポンプ井流入量Bの実績値をflowBi、ポンプ井水位をLiとする。ただし、iは1~nの範囲を取る整数である。また、ポンプ井流入量Aの制約最大値としてユーザに入力された上限値をupperLimitA、制約最小値としてユーザに入力した下限値をlowerLimitAとする。図4の画面例では、upperLimitA = 160[m3/min]、lowerLimitA = 150[m3/min]と表示されている。
【0047】
範囲設定枠51において上記の上限値upperLimitAおよび下限値lowerLimitAがユーザに入力されると、検索部13は、これらの制約値を満たすポンプ井流入量Aの履歴データを実績データベース21から自動的に検索することで、(flowAi < upperLimitA)かつ(lowerLimitA < flowAi)を満足するiの値を抽出する。そして、抽出したiの値に対応するflowBiの値のうちで最小値と最大値をそれぞれ特定し、これらの値を、ポンプ井流入量Bにおける他項目の最大最小条件下でのデータ範囲にそれぞれ設定する。図4の例では、ポンプ井流入量Aのデータ範囲に対応するポンプ井流入量Bのデータ範囲として、最小値が119[m3/min]、最大値が167[m3/min]と表示されている。
【0048】
上記の各値が範囲設定枠51に表示されると、次にユーザは、ポンプ井流入量Bの制約最大値に相当する上限値upperLimitBと、ポンプ井流入量Bの制約最小値に相当する下限値lowerLimitBとを入力する。このとき、ポンプ井流入量Bにおける他項目の最大最小条件下でのデータ範囲の外側には該当データが存在しないため、ユーザは、表示されたデータ範囲の最小値と最大値の間、すなわち119[m3/min]から167[m3/min]までの数値を入力すればよいことが分かる。
【0049】
以上説明したように、ユーザは、範囲設定枠51においてポンプ井流入量Bのデータ範囲を入力する際に、他項目の最大最小条件下でのデータ範囲の数値(最小値119[m3/min]および最大値167[m3/min])と、将来予測値(134[m3/min])とを参考にして、入力値を決定することができる。そのため、無駄なデータ範囲での検索を減らすことができ、効率的な履歴データ検索が可能となる。図4の画面例では、ユーザが上記各値を参考にして入力したポンプ井流入量Bのデータ範囲として、制約最大値を表す上限値upperLimitBが140[m3/min]であり、制約最小値を表す下限値lowerLimitBが130[m3/min]である場合の例を示している。
【0050】
範囲設定枠51において上記の上限値upperLimitBおよび下限値lowerLimitBがユーザに入力されると、検索部13は、ポンプ井流入量Aについて抽出されたiの値のみを対象として、これらの制約値を満たすポンプ井流入量Bの履歴データを実績データベース21から検索し、(flowBi < upperLimitB)かつ(lowerLimitB < flowBi)を満たすiの値を抽出する。そして、抽出したiの値に対応するflowAiの値のうちで最小値と最大値をそれぞれ特定し、これらの値を、ポンプ井流入量Aにおける他項目の最大最小条件下でのデータ範囲にそれぞれ設定する。図4の例では、ポンプ井流入量Bのデータ範囲に対応するポンプ井流入量Aのデータ範囲として、最小値が110[m3/min]、最大値が200[m3/min]と表示されている。
【0051】
このように、ユーザは範囲設定枠51を用いて、実績データベース21において目的とする履歴データセットが存在する範囲を相互に逐一確認しながら、履歴データの検索を進めることができる。そのため、履歴データセットが全く存在しないデータ範囲を制約最大値や制約最小値として設定してしまい、無駄な検索が生じてしまうことを回避できる。なお、この例ではポンプ井流入量Aを先に、ポンプ井流入量Bを後に入力する例を記載したが、順序は逆でも良く、この調整を反復しても良い。
【0052】
上述の検索手順を取ることで、下記の式(1)を満足するiの値を効率よく絞り込み、ポンプ井水位Liの範囲の情報を取得することができる。
(flowAi < upperLimitA)AND(lowerLimitA < flowAi)AND
(flowBi < upperLimitB)AND(lowerLimitB < flowBi) ・・・式(1)
【0053】
以上のように、範囲設定部11により複数の検索対象項目が指定された場合でも、制約最大値と制約最小値を設定することで規定されたデータ範囲において、該当するポンプ井水位Liと日時の情報が求められる。こうして求められた情報は、検索結果表示部16の制御により、表示装置5において検索結果表示枠52内に表示される。このとき検索結果表示部16は、図4の画面例に示すように、抽出された各データセットの日時とデータ値を検索結果表示枠52内に同時に表示することが望ましい。これにより、運転員であるユーザは、検索条件に該当する履歴データが得られた日時を容易に確認できるため、その履歴データが通常運転時のデータであるか、あるいは点検時や洗浄時等の特殊な運転時のデータであるかを判断することがより容易となる。したがって、ポンプ運転計画に対するユーザの意思決定を有効に支援することができる。
【0054】
なお、図4の検索結果表示枠52には、検索結果としてポンプ井水位の数値のみを表示しているが、ポンプ井水位に対応するポンプ井流入量Aやポンプ井流入量Bのデータ値も表示されるようにしてもよい。
【0055】
以上説明した本発明の第1の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0056】
(1)意思決定支援システム100は、実績データベース21と、範囲設定部11と、検索部13と、検索結果表示部16と、を備える。実績データベース21は、外的要因から決定される物理量である外的因子(ポンプ井流入量)と、ユーザが調整可能な物理量である運転因子(ポンプ運転台数)と、外的因子および運転因子に応じて決定される物理量である運転結果因子(ポンプ井水位)と、の各因子の過去の実績に関する履歴データが記録されている。範囲設定部11は、外的因子、運転因子および運転結果因子のいずれかの因子を検索対象項目に指定するとともに、当該検索対象項目のデータ範囲を設定する。検索部13は、範囲設定部11により設定された検索対象項目の値がデータ範囲を満たす履歴データが記録されている期間を実績データベース21において特定し、検索対象項目以外の他の因子について、当該期間における値を実績データベース21から検索する。検索結果表示部16は、検索部13により検索された他の因子の値を、履歴データの検索結果として表示装置5に表示させる。このようにしたので、ユーザの意思決定を効果的に支援することができる。
【0057】
(2)範囲設定部11は、設定した検索対象項目およびデータ範囲と、検索対象項目の将来予測値とを、表示装置5に表示させる(範囲設定枠51)。このようにしたので、ユーザが不適切な検索対象項目やデータ範囲を指定することで無駄な検索が行われてしまうのを回避できる。
【0058】
(3)範囲設定部11は、検索対象項目を複数設定することができる(ポンプ井流入量Aおよびポンプ井流入量B)。このようにすれば、目的とする履歴データをより効果的に絞り込んで検索することが可能となる。
【0059】
(4)意思決定支援システム100は、ユーザの操作入力を検出する操作入力装置4を備える。範囲設定部11は、操作入力装置4により検出されたユーザの操作入力に基づいて、データ範囲を設定する。このようにしたので、ユーザは操作入力装置4を用いてデータ範囲の設定を容易に行うことができる。
【0060】
(5)外的因子は雨水ポンプ所のポンプ井への流入量であり、運転因子は雨水ポンプ所のポンプ運転台数であり、運転結果因子はポンプ井の水位である。範囲設定部11は、ポンプ井への流入量を検索対象項目に指定することができる。このようにしたので、雨水ポンプ所について策定されるポンプ運転計画に対するユーザの意思決定の支援に、意思決定支援システム100を利用することができる。
【0061】
(第2の実施形態)
図5は、本発明の第2の実施形態に係る意思決定支援システム100における情報の流れを示す図である。本実施形態では、第1の実施形態で説明した範囲設定部11、検索部13および検索結果表示部16に加え、さらに検索条件論理関係設定部12を用いて、実績データベース21から履歴データを検索してユーザに提示する例を説明する。なお、本実施形態においては、制御部1が、ふるい分け部14およびふるい分け判断情報入力部15を有していなくてもよい。
【0062】
検索条件論理関係設定部12は、ユーザの操作内容に基づいて、範囲設定部11が設定した複数の検索対象項目におけるデータ範囲間の論理関係を設定し、その設定内容を論理関係情報として検索部13に受け渡す。検索部13は、範囲設定部11から入力された検索範囲情報と、検索条件論理関係設定部12から入力された論理関係情報とを実績データベース21に出力し、実績データベース21の検索を行う。このとき必要に応じて、検索範囲情報や論理関係情報のフォーマット変換を行う。これにより、実績データベース21に記録された雨水ポンプ所の運用実績に関する履歴データのうち、検索対象項目について検索範囲情報および論理関係情報で指定されたデータ範囲を満たす履歴データが抽出される。
【0063】
前述の第1の実施形態では、図4に示した画面例の左側にある範囲設定枠51において、ポンプ井流入量Aとポンプ井流入量Bの2つの検索対象項目が示されており、これらの検索対象項目が論理積(AND)の関係にある場合について記述した。しかしながら、例えば論理和(OR)など、他の論理関係で履歴データを検索したいというニーズも存在する。本実施形態では、こうしたニーズに応じて、例えば論理積や論理和など、検索条件間の論理関係を運転員が任意に変更・設定できる場合の例を説明する。
【0064】
本実施形態では、上記の動作を実現するために、検索条件論理関係設定部12が追加されており、この検索条件論理関係設定部12を用いて、任意の論路関係を設定できるようにしている。検索条件論理関係設定部12が設定可能な論理関係は、論理積(AND)条件や論理和(OR)条件のみならず、他の論理関係、例えば否定論理積(NAND)条件や否定論理和(NOR)条件、排他的論理和(XOR)などを含んでもよい。また、複数の論理関係を組み合わせて設定できるようにしてもよい。
【0065】
例えば、ポンプ井流入量Aに対して設定された制約最大値と制約最小値により規定されるデータ範囲と、ポンプ井流入量Bに対して設定された制約最大値と制約最小値により規定されるデータ範囲と、のいずれかの条件が該当する履歴データセットを抽出する場合には、以下の式(2)の検索条件を満たす履歴データが、実績データベース21から検索される。
{(flowAi < upperLimitA)AND(lowerLimitA < flowAi)}OR
{(flowBi < upperLimitB)AND(lowerLimitB < flowBi)} ・・・式(2)
【0066】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る表示画面例を示す図である。図6に示す表示画面は、第1の実施形態で説明した範囲設定枠51および検索結果表示枠52に加えて、さらに検索条件論理関係枠53を含んで構成されている。
【0067】
図6において、検索条件論理関係枠53には、ANDボタンとORボタンが表示されている。ユーザは、これらのボタンのいずれかを選択することで、選択したボタンに応じた論理関係を設定することができる。すなわち、ANDボタンを選択した場合は前述の式(1)の検索条件を満たす履歴データの検索が実行され、ORボタンを選択した場合は式(2)の検索条件を満たす履歴データの検索が実行される。なお、論理関係の設定方法はこれに限らず、例えば数式を書き込むなど、他の方法により設定してもよい。また、AND,OR以外の論理関係を設定できるようにしてもよい。
【0068】
以上説明した本発明の第2の実施形態によれば、意思決定支援システム100は、範囲設定部11により設定された複数の検索対象項目におけるデータ範囲間の論理関係を設定する検索条件論理関係設定部12を備える。検索部13は、範囲設定部11により設定された複数の検索対象項目の値が設定された論理関係およびデータ範囲をそれぞれ満たす履歴データが記録されている期間を、実績データベース21において特定する。このようにしたので、目的とする履歴データの検索をより一層効率的に行うことが可能となる。
【0069】
(第3の実施形態)
図7は、本発明の第3の実施形態に係る意思決定支援システム100における情報の流れを示す図である。第3の実施形態では、第2の実施形態と同様に、範囲設定部11、検索条件論理関係設定部12、検索部13および検索結果表示部16を用いて、実績データベース21から履歴データを検索してユーザに提示する例を説明する。
【0070】
本実施形態では、図5に示した第2の実施形態に係る意思決定支援システム100と比べて、実績データベース21から検索部13に出力される検索結果と、検索部13から検索結果表示部16に出力される検索結果とが、運転因子であるポンプ運転台数の情報をそれぞれ含んでいる点が異なる。これにより、運転員であるユーザは、雨水ポンプ所において過去にどのような運転が実施されたかを把握しやすくなるため、より的確な運転を実現できる可能性を高められる。
【0071】
図8は、本発明の第3の実施形態に係る表示画面例を示す図である。図8に示す表示画面は、第2の実施形態で説明した図6の表示画面と同様に、範囲設定枠51、検索結果表示枠52および検索条件論理関係枠53を含んで構成されている。本実施形態と第2の実施形態との違いは、検索条件論理関係枠53において、運転因子であるポンプ運転台数の情報が含まれている点である。
【0072】
図8において、検索条件論理関係枠53には、他項目の最大最小条件下でのデータ範囲として、ポンプ運転台数が1~2[台]と表示されている。すなわち、図8の左側に示される範囲設定枠51および検索条件論理関係枠53により指定された検索条件下では、過去に雨水ポンプを1台または2台稼働させた実績があるということになる。
【0073】
また、範囲設定枠51には、ポンプ井流入量Aの将来予測値が154[m3/min]、ポンプ井流入量Bの将来予測値が134[m3/min]と示されている。ユーザは、これらの値の近傍のデータ範囲、すなわちポンプ井流入量Aのデータ範囲を150~160[m3/min]とし、ポンプ井流入量Bのデータ範囲を130~140[m3/min]として、実績データベース21から検索条件を満たす履歴データを検索することで、ポンプ運転台数が1~2台であったことが分かる。そのため、将来のポンプ運転台数もこれに合わせて1~2台とするのが確実であると判断できる。
【0074】
図4図6の画面例と同様に、検索結果表示枠52には、抽出された各データセットの日時とデータ値が表示されることが望ましい。これにより、運転員であるユーザは、検索条件に該当する履歴データが得られた日時を容易に確認できるため、その履歴データが通常運転時のデータであるか、あるいは点検時や洗浄時等の特殊な運転時のデータであるかを判断することがより容易となる。したがって、ポンプ運転計画に対するユーザの意思決定を有効に支援することができる。
【0075】
なお、図8の検索結果表示枠52には、検索結果としてポンプ井水位とポンプ運転台数の数値のみを表示しているが、これらに対応するポンプ井流入量Aやポンプ井流入量Bのデータ値も表示されるようにしてもよい。
【0076】
以上説明した本発明の第3の実施形態によれば、検索対象項目以外の他の因子は、運転因子であるポンプ運転台数を含む。検索結果表示部16は、検索部13により特定された期間における運転因子(ポンプ運転台数)の値を表示装置5に表示させる(検索結果表示枠52)。このようにしたので、将来の運転因子として適切と考えられる値をユーザに提示し、ユーザの意思決定支援をさらに効果的に行うことができる。
【0077】
(第4の実施形態)
図9は、本発明の第4の実施形態に係る表示画面例を示す図である。図9に示す表示画面は、第2、第3の各実施形態で説明した図6、8の表示画面と同様に、範囲設定枠51、検索結果表示枠52および検索条件論理関係枠53を含んで構成されている。本実施形態と第2、第3の実施形態との違いは、範囲設定枠51において運転結果因子であるポンプ井水位が含まれている点と、検索結果表示枠52において運転因子であるポンプ運転台数の情報が含まれているが、ポンプ井水位の情報は含まれていない点である。
【0078】
範囲設定枠51に示されているポンプ井流入量は、降雨状況次第で決まる外的因子であり、ユーザである運転員が所望の値へと自由に制御することはできない。一方、範囲設定枠51に示されているポンプ井水位は、各雨水ポンプの運転の結果として得られる運転結果因子である。運転員であるユーザは、図9のような表示画面を見ることで、過去に雨水ポンプ所の各ポンプがどのような外的因子に従って運転され、それに応じてどのような運転結果が得られたかを容易に確認することができる。
【0079】
上記のように、本実施形態では、範囲設定枠51において、ユーザが直接制御できない外的因子と、制御後の目標状態の数値とをそれぞれ設定することができる。また、検索結果表示枠52では、履歴データの検索結果として、運転因子であるポンプ運転台数を表示することができる。これにより、運転結果として何らかの目標値(ここではポンプ井水位の範囲)が明確である場合には、運転員の意思決定をより的確に支援することが可能となる。
【0080】
図4図6図8の画面例と同様に、検索結果表示枠52には、抽出された各データセットの日時とデータ値が表示されることが望ましい。これにより、運転員であるユーザは、検索条件に該当する履歴データが得られた日時を容易に確認できるため、その履歴データが通常運転時のデータであるか、あるいは点検時や洗浄時等の特殊な運転時のデータであるかを判断することがより容易となる。したがって、ポンプ運転計画に対するユーザの意思決定を有効に支援することができる。
【0081】
なお、図9の検索結果表示枠52には、検索結果としてポンプ運転台数の数値のみを表示しているが、ポンプ運転台数に対応するポンプ井流入量やポンプ井水位のデータ値も表示されるようにしてもよい。
【0082】
以上説明した本発明の第4の実施形態によれば、範囲設定部11は、運転結果因子であるポンプ井水位を含む各因子を検索対象項目に指定する(範囲設定枠51)。このようにしたので、運転結果として何らかの目標値が明確である場合に、運転員であるユーザの意思決定をより的確に支援することができる。
【0083】
(第5の実施形態)
図10は、本発明の第5の実施形態に係る表示画面例を示す図である。図10に示す表示画面は、第1の実施形態で説明した図4の表示画面と同様に、範囲設定枠51および検索結果表示枠52を含んで構成されている。本実施形態と第1の実施形態との違いは、検索結果表示枠52において、ポンプ井水位の情報に加えて運転因子であるポンプ運転台数の情報が含まれている点と、これらのデータ範囲が棒グラフ521,522により示されている点である。
【0084】
棒グラフ521は、ポンプ井水位のデータ範囲を示す図形である。この棒グラフ521において太線で表示されている部分の両端が、ポンプ井水位の最大値(-12.4m)および最小値(-12.6m)を示している。同様に、棒グラフ522は、ポンプ運転台数のデータ範囲を示す図形である。この棒グラフ522において太線で表示されている部分の両端が、ポンプ運転台数の最大値(2台)および最小値(1台)を示している。
【0085】
図10の画面例では、棒グラフ521,522を用いてポンプ井水位やポンプ運転台数のデータ範囲が示されているため、ユーザは、履歴データの検索結果を一目で把握することができる。そのため、第3の実施形態で説明した図8の画面例と比べて、より感覚的に理解することが可能となり、読み取り間違いや思い違いなどを減らすことができるため、適切な雨水ポンプ所の運転に一層有効となる。
【0086】
以上説明した本発明の第5の実施形態によれば、検索結果表示部16は、検索部13により検索された検索対象項目以外の他の因子(ポンプ井水位、ポンプ運転台数)の値の範囲を示す図形である棒グラフ521,522を表示装置5に表示させる。このようにしたので、履歴データの検索結果をユーザに一目で把握させ、ユーザの意思決定支援をさらに効果的に行うことができる。
【0087】
(第6の実施形態)
図11は、本発明の第6の実施形態に係る表示画面例を示す図である。図11に示す表示画面は、第5の実施形態で説明した図10の表示画面と同様に、範囲設定枠51および検索結果表示枠52を含んで構成されている。本実施形態と第5の実施形態との違いは、検索結果表示枠52において、ポンプ井水位とポンプ運転台数のデータ範囲がヒストグラム523,524により示されている点である。
【0088】
ヒストグラム523は、ポンプ井水位のデータ範囲および頻度分布を示す図形である。同様に、ヒストグラム524は、ポンプ運転台数のデータ範囲および頻度分布を示す図形である。これらのヒストグラムでは、各データ値の頻度分布を棒グラフの高さでそれぞれ示している。
【0089】
図11の画面例では、ヒストグラム523,524を用いて、ポンプ井水位やポンプ運転台数のデータ範囲に加えて頻度分布がさらに示されている。これにより、第3の実施形態で説明した図8の画面例や、第5の実施形態で説明した図10の画面例と比べて、頻度の情報が追加されている。ヒストグラム523,524において頻度が高い点は、過去の実績数が多く信用度も高いと判断できる。そのため、ユーザである運転員は、これらの情報から確実性の高い運転条件を把握することが可能となり、さらに的確な雨水ポンプ所の運転を行うことができる。
【0090】
以上説明した本発明の第6の実施形態によれば、検索結果表示部16は、検索部13により検索された検索対象項目以外の他の因子(ポンプ井水位、ポンプ運転台数)の値の頻度を示すヒストグラム523,524を表示装置5に表示させる。このようにしたので、履歴データの検索結果における各データ値の頻度をユーザに把握させ、ユーザの意思決定支援をさらに効果的に行うことができる。
【0091】
(第7の実施形態)
図12は、本発明の第7の実施形態に係る表示画面例を示す図である。図12に示す表示画面は、第6の実施形態で説明した図11の表示画面と同様に、範囲設定枠51および検索結果表示枠52を含んで構成されている。本実施形態と第6の実施形態との違いは、検索結果表示枠52において、ポンプ井水位とポンプ運転台数のデータ範囲および頻度分布が濃淡ヒストグラム525,526により示されている点である。
【0092】
濃淡ヒストグラム525は、ポンプ井水位のデータ範囲および頻度分布を示す図形である。同様に、濃淡ヒストグラム526は、ポンプ運転台数のデータ範囲および頻度分布を示す図形である。これらのヒストグラムでは、各データ値の頻度分布を色の濃淡でそれぞれ示している。すなわち、頻度が高い箇所の色を濃く、頻度が低い箇所の色を薄く表示することで、履歴データの検索結果におけるポンプ井水位とポンプ運転台数の頻度分布をそれぞれ示している。
【0093】
図12の画面例では、第6の実施形態で説明した図11の画面例におけるヒストグラム523,524の代わりに、濃淡ヒストグラム525,526を用いて、ポンプ井水位やポンプ運転台数のデータ範囲および頻度分布が示されている。濃淡ヒストグラム525,526において頻度が高い点は、過去の実績数が多く信用度も高いと判断できる。そのため、ユーザである運転員は、これらの情報から確実性の高い運転条件を把握することが可能となり、さらに的確な雨水ポンプ所の運転を行うことができる。
【0094】
以上説明した本発明の第7の実施形態によれば、検索結果表示部16は、検索部13により検索された検索対象項目以外の他の因子(ポンプ井水位、ポンプ運転台数)の値の頻度差を色の濃淡で表現した図形である濃淡ヒストグラム525,526を表示装置5に表示させる。このようにしたので、履歴データの検索結果における各データ値の頻度をユーザに把握させ、ユーザの意思決定支援をさらに効果的に行うことができる。
【0095】
(第8の実施形態)
図13は、本発明の第8の実施形態に係る表示画面例を示す図である。図13に示す表示画面は、第6の実施形態で説明した図11の表示画面と同様に、範囲設定枠51および検索結果表示枠52を含んで構成されている。本実施形態と第6の実施形態との違いは、検索結果表示枠52において、ポンプ井水位とポンプ運転台数のデータ範囲および頻度分布が色ヒストグラム527,528により示されている点である。
【0096】
色ヒストグラム527は、ポンプ井水位のデータ範囲および頻度分布を示す図形である。同様に、色ヒストグラム528は、ポンプ運転台数のデータ範囲および頻度分布を示す図形である。これらのヒストグラムでは、各データ値の頻度分布を色合い差でそれぞれ示している。例えば、最も頻度が高い箇所を赤色とし、そこから頻度が低くなるに応じて、オレンジ、黄色、緑、青、紺、黒の順に色を変化させて表示することで、履歴データの検索結果におけるポンプ井水位とポンプ運転台数の頻度分布をそれぞれ示している。なお、上述した色の組合わせはあくまでも一例であり、直観的に頻度の高い箇所と低い箇所が把握できるのであれば、他の色や濃淡との組合せであってもよい。
【0097】
図13の画面例では、第6の実施形態で説明した図11の画面例におけるヒストグラム523,524の代わりに、色ヒストグラム527,528を用いて、ポンプ井水位やポンプ運転台数のデータ範囲および頻度分布が示されている。色ヒストグラム527,528では、色が赤色に近い箇所ほど頻度が高く、過去の実績数が多く信用度も高いと判断できる。そのため、ユーザである運転員は、これらの情報から確実性の高い運転条件を把握することが可能となり、さらに的確な雨水ポンプ所の運転を行うことができる。
【0098】
以上説明した本発明の第8の実施形態によれば、検索結果表示部16は、検索部13により検索された検索対象項目以外の他の因子(ポンプ井水位、ポンプ運転台数)の値の頻度差を色合い差で表現した図形である色ヒストグラム527,528を表示装置5に表示させる。このようにしたので、履歴データの検索結果における各データ値の頻度をユーザに把握させ、ユーザの意思決定支援をさらに効果的に行うことができる。
【0099】
(第9の実施形態)
図14は、本発明の第9の実施形態に係る表示画面例を示す図である。図14に示す表示画面は、第5の実施形態で説明した図10の表示画面と同様に、範囲設定枠51および検索結果表示枠52を含んで構成されている。本実施形態と第5の実施形態との違いは、範囲設定枠51において、ユーザがポンプ井流入量A,Bのデータ範囲を、数値入力ではなく、画面上に表示されたアイコンの位置により指定できるようにした点である。
【0100】
入力バー511は、ポンプ井流入量Aに対して設定するデータ範囲の入力を行うための図形であり、アイコン5111,5112を含む。同様に、入力バー512は、ポンプ井流入量Bに対して設定するデータ範囲の入力を行うための図形であり、アイコン5121,5122を含む。ユーザは、これらの入力バーにおいて、操作入力装置4の一部であるマウス等のポインティングデバイスの操作により、各アイコンを任意の位置に移動させることが可能である。
【0101】
入力バー511では、アイコン5111,5112により、ポンプ井流入量Aの制約最大値と制約最小値をそれぞれ指定することができる。これらのアイコンの間で指定されたデータ範囲を満たすポンプ井流入量Aの履歴データが、実績データベース21から検索される。同様に、入力バー512では、アイコン5121,5122により、ポンプ井流入量Bの制約最大値と制約最小値をそれぞれ指定することができる。これらのアイコンの間で指定されたデータ範囲を満たすポンプ井流入量Bの履歴データが、実績データベース21から検索される。
【0102】
なお、入力バー511,512には、ユーザがデータ範囲を設定する際の参考とするために、線分5113,5123により、他項目の最大最小条件下でのデータ範囲がそれぞれ示されている。すなわち、入力バー511の線分5113は、ポンプ井流入量Bのデータ範囲に対応するポンプ井流入量Aのデータ範囲を表し、入力バー512の線分5123は、ポンプ井流入量Aのデータ範囲に対応するポンプ井流入量Bのデータ範囲を表している。また、入力バー511において、アイコン5111とアイコン5112の間には、ポンプ井流入量Aの将来予測値を示す記号「●」が表示されている。同様に、入力バー512において、アイコン5121とアイコン5122の間には、ポンプ井流入量Bの将来予測値を示す記号「●」が表示されている。ユーザである運転員は、これらの画面表示により、検索条件の設定内容を容易に把握することができる。そのため、思い違いや勘違いが生じにくく、かつ的確に検索条件の設定を行うことが可能となる。
【0103】
以上説明した本発明の第9の実施形態によれば、操作入力装置4は、表示装置5に表示されるアイコンの位置をユーザの操作入力に応じて指定するためのポインティングデバイスを含む。範囲設定部11は、ユーザがポインティングデバイスを用いて表示装置5の画面上で指定したアイコン5111,5112,5121,5122の位置に基づいて、データ範囲を設定する。このようにしたので、ユーザはデータ範囲の設定を間違いなく、かつ容易に行うことができる。
【0104】
(第10の実施形態)
図15は、本発明の第10の実施形態に係る表示画面例を示す図である。図15に示す表示画面は、第9の実施形態で説明した図14の表示画面と同様に、範囲設定枠51および検索結果表示枠52を含んで構成されており、範囲設定枠51において、ユーザが複数のポンプ井流入量のデータ範囲を、画面上に表示されたアイコンの位置により指定できるようになっている。本実施形態と第9の実施形態との違いは、範囲設定枠51において、検索対象項目に指定された各ポンプ井流入量に対応する複数の軸を有するレーダーチャートの各軸上に、これらのデータ範囲や将来予測値を示した点である。なお、図15の画面例では、5種類のポンプ井流入量A~Eが検索対象項目に指定され、これらのポンプ井流入量のデータ範囲や将来予測値を五角形のレーダーチャート513で表現した例を示しているが、検索対象項目数およびレーダーチャートの形状はこれに限定されない。
【0105】
レーダーチャート513は、ポンプ井流入量A~Eに対して設定するデータ範囲の入力を行うための図形であり、例えばポンプ井流入量Aに対応するアイコン5111,5112など、ポンプ井流入量A~Eにそれぞれ対応するアイコンのペアを含む。ユーザは、レーダーチャート513において、操作入力装置4の一部であるマウス等のポインティングデバイスの操作により、各アイコンを任意の位置に移動させることが可能である。
【0106】
レーダーチャート513において、ポンプ井流入量Aに対応する軸では、アイコン5111,5112により、ポンプ井流入量Aの制約最大値と制約最小値をそれぞれ指定することができる。これらのアイコンの間で指定されたデータ範囲を満たすポンプ井流入量Aの履歴データが、実績データベース21から検索される。また、レーダーチャート513において、アイコン5111とアイコン5112の間には、ポンプ井流入量Aの将来予測値を示す記号「●」が表示されている。ポンプ井流入量B~Eに対応する各軸についても同様である。
【0107】
ユーザである運転員は、レーダーチャート513の表示内容により、検索条件の設定内容を容易に把握することができる。そのため、思い違いや勘違いが生じにくく、かつ的確に検索条件の設定を行うことが可能となる。なお、レーダーチャート513の各軸において、第9の実施形態で説明した図14の画面例における線分5113,5123のように、他項目の最大最小条件下でのデータ範囲をさらに表示してもよい。
【0108】
以上説明した本発明の第10の実施形態によれば、範囲設定部11は、複数の検索対象項目(ポンプ井流入量A~E)にそれぞれ対応する複数の軸を有するレーダーチャート513を表示装置5に表示させる。そして、ユーザがポインティングデバイスを用いてレーダーチャート513の各軸上で指定したアイコンの位置に基づいて、データ範囲を設定する。このようにしたので、ユーザは多数の検索対象項目を指定した場合でも、各検索対象項目に対するデータ範囲の設定を間違いなく、かつ容易に行うことができる。
【0109】
(第11の実施形態)
図16は、本発明の第11の実施形態に係る表示画面例を示す図である。図16に示す表示画面は、第9の実施形態で説明した図14の表示画面と同様に、範囲設定枠51および検索結果表示枠52を含んで構成されており、範囲設定枠51において、ユーザがポンプ井流入量のデータ範囲を、画面上に表示されたアイコンの位置により指定できるようになっている。本実施形態と第9の実施形態との違いは、範囲設定枠51において、検索対象項目に指定されたポンプ井流入量の時系列変化を示すトレンドグラフ514を表示し、このトレンドグラフ514の表示枠内でユーザが指定したアイコンの位置に基づいて、ポンプ井流入量のデータ範囲を設定するようにした点である。
【0110】
トレンドグラフ514は、横軸がある基準時刻からの経過時間を、縦軸が検索対象項目に指定されたポンプ井流入量の値をそれぞれ表しており、これらの組み合わせによってポンプ井流入量の時系列変化が示される。トレンドグラフ514の表示枠内には、複数のアイコンが表示されている。アイコン5141に代表される記号「▼」の各アイコンは、各経過時間におけるポンプ井流入量の制約最大値を指定するためのアイコンであり、アイコン5142に代表される記号「▲」の各アイコンは、各経過時間におけるポンプ井流入量の制約最小値を指定するためのアイコンである。ユーザは、トレンドグラフ514において、操作入力装置4の一部であるマウス等のポインティングデバイスの操作により、各アイコンを任意の位置に移動させることが可能である。このとき、アイコンの移動方向を制限せずに、各アイコンをトレンドグラフ514の表示枠内で上下左右の各方向へ移動可能としてもよい。あるいは、アイコンの移動方向に制限を設け、例えば縦軸(上下)方向には移動可能であるが、横軸(左右)方向には移動不可能としてもよい。この場合、各アイコンの横軸方向の位置は、例えば所定間隔ごとに定めることができる。
【0111】
トレンドグラフ514では、アイコン5141,5142を含む複数のアイコンにより、経過時間ごとのポンプ井流入量の制約最大値と制約最小値をそれぞれ指定することができる。これらのアイコンの間で指定されたデータ範囲内で時系列変化するポンプ井流入量の履歴データが実績データベース21から検索され、トレンドグラフ514に示される。図16の画面例では、2019年12月4日の11:35~12:15の期間に記録されたポンプ井流入量の履歴データの時系列変化(図中の破線)と、2019年12月5日の19:02~19:42の期間に記録されたポンプ井流入量の履歴データの時系列変化(図中の一点鎖線)とが、トレンドグラフ514に示されている。
【0112】
このように、指定されたデータ範囲内で複数の履歴データの時系列変化が検索された場合、トレンドグラフ514では、これらの表示形態を互いに異なるものとすることが好ましい。このようにすれば、ユーザはそれぞれの時系列変化をトレンドグラフ514から容易に判別することができる。なお、図16の画面例では線種を変えることで表示形態を変化させたが、例えば色や線の太さなど、他の表示形態を変化させてもよい。
【0113】
トレンドグラフ514には、ユーザがデータ範囲を設定する際の参考とするために、現在または将来のある時点を基準時刻として、その基準時刻からのポンプ井流入量の将来予測値の時系列変化(図中の実線)も示されている。前述のように、アイコンの移動方向に制限を設ける場合は、この将来予測値の時系列変化を基準として、各アイコンの移動可能範囲を定めてもよい。例えば、トレンドグラフ514の表示枠内で横軸方向の位置が基準時刻から離れるほど、すなわち経過時間が長くなるほど、将来予測値に対する各アイコンの縦軸方向の移動自由度を大きくする。このようにすれば、経過時間が短い期間では、将来予測値の精度が高いためアイコンの移動可能範囲を制限しつつ、経過時間が長くなって将来予測値の精度が低下するほど、アイコンの移動可能範囲を大きくすることができる。その結果、直近での精度がより高い過去の履歴データセットを、より重要度が高い履歴データとして実績データベース21から抽出することが可能となる。
【0114】
なお、トレンドグラフ514の表示枠内のアイコンの位置で指定されたデータ範囲内に該当する履歴データの時系列変化は、前述の式(1)や式(2)を時間軸上に複数個用いて計算を行うことにより検索できる。この計算は、単純な式(1)や式(2)を用いているため短時間で実施可能である。そのため、ユーザは本実施形態の意思決定支援システム100に対して検索条件を指定すると、その検索結果を即時に得られる。したがって、ユーザの問い合わせとそれに対する応答を繰り返すことでユーザの意思決定を支援する対話型の意思決定支援に適している。
【0115】
図16の画面例において、検索結果表示枠52には、ポンプ井水位の時系列変化を示すトレンドグラフ529と、ポンプ運転台数の時系列変化を示すトレンドグラフ530とが表示されている。トレンドグラフ529は、範囲設定枠51のトレンドグラフ514に示されたポンプ井流入量の各履歴データに対応するポンプ井水位の各履歴データの時系列変化を示している。トレンドグラフ530は、範囲設定枠51のトレンドグラフ514に示されたポンプ井流入量の各履歴データに対応するポンプ運転台数の各履歴データの時系列変化を示している。すなわち、図16の画面例では、2019年12月4日の11:35~12:15の期間に記録されたポンプ井水位およびポンプ運転台数の履歴データの時系列変化(図中の破線)と、2019年12月5日の19:02~19:42の期間に記録されたポンプ井水位およびポンプ運転台数の履歴データの時系列変化(図中の一点鎖線)とが、トレンドグラフ529,530にそれぞれ示されている。
【0116】
なお、図16の画面例では、範囲設定枠51および検索結果表示枠52の各トレンドグラフが表す時系列変化の履歴データが記録された期間を、検索結果表示枠52の下部において示している。さらに、各トレンドグラフ中に複数の履歴データの時系列変化が示されている場合は、これらを互いに判別できるように、表示形態の違いを表す凡例も示している。これにより、運転員であるユーザは、検索条件に該当する各履歴データが得られた期間を容易に確認できるため、各履歴データが通常運転時のデータであるか、あるいは点検時や洗浄時等の特殊な運転時のデータであるかを判断することがより容易となる。したがって、ポンプ運転計画に対するユーザの意思決定を有効に支援することができる。
【0117】
以上説明した本発明の第11の実施形態によれば、範囲設定部11は、横軸が経過時間を、縦軸が検索対象項目であるポンプ井流入量の値をそれぞれ表し、ポンプ井流入量の値の時系列変化を示すトレンドグラフ514を、表示装置5に表示させる。このようにしたので、検索対象項目の時系列変化をユーザに分かりやすく提示することができる。
【0118】
また、範囲設定部11は、ユーザがポインティングデバイスを用いてトレンドグラフ514の表示枠内で指定したアイコンの位置に基づいて、データ範囲を設定する。このようにしたので、ユーザは検索対象項目の履歴データの時系列変化を考慮して、検索したいデータ範囲の設定を間違いなく、かつ容易に行うことができる。
【0119】
また、本実施形態において、データ範囲の設定に用いられるアイコンは、トレンドグラフ514の表示枠内に複数表示される。範囲設定部11は、ユーザがポインティングデバイスを用いてトレンドグラフ514の表示枠内で指定した複数のアイコンのそれぞれの位置に基づいて、データ範囲を設定する。このようにしたので、細かいデータ範囲の設定を容易に行うことができる。
【0120】
また、本実施形態において、データ範囲の設定に用いられるアイコンは、トレンドグラフ514の表示枠内で縦軸方向には移動可能で横軸方向には移動不可能としてもよい。このようにすれば、ユーザの誤入力を防止しつつ、適切にデータ範囲の設定を行うことができる。
【0121】
また、本実施形態において、トレンドグラフ514には、所定の基準時刻からのポンプ井流入量の将来予測値の時系列変化が表示され、アイコンは、トレンドグラフ514の表示枠内で横軸方向の位置が基準時刻から離れるほど、将来予測値に対する縦軸方向の移動自由度が大きくなるようにしてもよい。このようにすれば、直近での精度がより高い履歴データをより重要度が高い履歴データとして検索できるように、データ範囲の設定を行うことができる。
【0122】
(第12の実施形態)
図17は、本発明の第12の実施形態に係る表示画面例を示す図である。図17に示す表示画面は、第11の実施形態で説明した図16の表示画面と同様に、範囲設定枠51および検索結果表示枠52を含んで構成されている。また、範囲設定枠51において、ポンプ井流入量の時系列変化を示すトレンドグラフ514が表示され、検索結果表示枠52において、ポンプ井水位の時系列変化を示すトレンドグラフ529と、ポンプ運転台数の時系列変化を示すトレンドグラフ530とが表示されている。さらに、ユーザがポンプ井流入量のデータ範囲を、トレンドグラフ514の表示枠内に表示されたアイコンの位置により指定できるようになっている。本実施形態と第12の実施形態との違いは、トレンドグラフ514,529,530において、それぞれの時系列変化がグラフの濃淡で表現されている点である。
【0123】
検索結果として得られたトレンドグラフの本数が極めて多い場合、全てのトレンドグラフを描画すると、色や太さ、パターンが異なっていても互いに重なり合ってしまい、頻度の高い箇所が見分けられないことが生じる。そのような場合には、本実施形態のように、得られた各トレンドグラフを経過時間ごとの確率分布に換算し、グラデーションのある濃淡として表示することが望ましい。なお、ユーザがデータ範囲を設定する際の参考とするため、トレンドグラフ514の表示枠内には、将来予測値の時系列変化も同時に表示できることが望ましい。
【0124】
なお、図17の画面例では、複数の履歴データの時系列変化をグラフの濃淡により表現する例を示したが、他の表示形態を用いてもよい。例えば、最も頻度が高い箇所は赤色、次いでオレンジ色、黄色、緑色、青色のように、色や濃淡を頻度に応じて変化することで、複数の履歴データの時系列変化をユーザが見分けられるようにしてもよい。これ以外にも、任意の表示形態を利用することが可能である。
【0125】
(第13の実施形態)
図18は、本発明の第13の実施形態に係る表示画面例を示す図である。図18に示す表示画面は、第11の実施形態で説明した図16の表示画面と同様に、範囲設定枠51および検索結果表示枠52を含んで構成されている。また、範囲設定枠51において、ポンプ井流入量の時系列変化を示すトレンドグラフ514が表示され、検索結果表示枠52において、ポンプ運転台数の時系列変化を示すトレンドグラフ530が表示されている。さらに、ユーザがポンプ井流入量のデータ範囲を、トレンドグラフ514の表示枠内に表示されたアイコンの位置により指定できるようになっている。本実施形態と第12の実施形態との違いは、ポンプ井水位の履歴データの時系列変化を示すトレンドグラフ529が、検索結果表示枠52ではなく範囲設定枠51に表示されている点である。
【0126】
範囲設定枠51のトレンドグラフ514により時系列変化の様子が示されたポンプ井流入量は、降雨次第で定まる外的因子であるため、運転員がこれを所望の値に制御することはできない。一方、範囲設定枠51のトレンドグラフ529により時系列変化の様子が示されたポンプ井水位は、運転因子であるポンプ運転台数を運転員が制御することによって得られたものであり、ポンプ運転台数の時系列変化は、検索結果表示枠52のトレンドグラフ530によって示されている。すなわち、図18の画面例では、ユーザである運転員がトレンドグラフ529に示されたポンプ井水位の時系列変化を得るために、過去にどのようにしてポンプの運転を行ったかの情報が、検索結果表示枠52のトレンドグラフ530に示されている。
【0127】
本実施形態では、上記のように、ユーザが制御できない外的因子の値と、制御後の目標状態を表す運転結果因子の値とを、トレンドグラフ514,529として範囲設定枠51にそれぞれ表示している。一方、検索結果表示枠52には、ユーザが制御可能な運転因子の値を示すトレンドグラフ530を表示している。これにより、運転結果として何らかの目標値(ここではポンプ井水位の範囲)が明確である場合には、ポンプ運転計画に対するユーザの意思決定をより的確に支援することが可能となる。
【0128】
なお、検索結果として得られたトレンドグラフの本数が複数となる場合には、図18の画面例に示すように、線種を変えて互いを判別可能としてもよいし、他の表示形態、例えば色や線の太さ、グラフの濃淡などを変化させることで互いを判別可能としてもよい。
【0129】
図18の画面例では、第11の実施形態で説明した図16の画面例と同様に、範囲設定枠51および検索結果表示枠52の各トレンドグラフが表す時系列変化の履歴データが記録された期間を、検索結果表示枠52の下部において示している。さらに、各トレンドグラフ中に複数の履歴データの時系列変化が示されている場合は、これらを互いに判別できるように、表示形態の違いを表す凡例も示している。これにより、運転員であるユーザは、検索条件に該当する各履歴データが得られた期間を容易に確認できるため、各履歴データが通常運転時のデータであるか、あるいは点検時や洗浄時等の特殊な運転時のデータであるかを判断することがより容易となる。したがって、ポンプ運転計画に対するユーザの意思決定を有効に支援することができる。
【0130】
(第14の実施形態)
図19は、本発明の第14の実施形態に係る意思決定支援システム100における情報の流れを示す図である。本実施形態では、第1の実施形態で説明した範囲設定部11、検索部13および検索結果表示部16に加え、さらにふるい分け部14およびふるい分け判断情報入力部15を用いて、実績データベース21から履歴データを検索してユーザに提示する例を説明する。なお、本実施形態においては、制御部1が検索条件論理関係設定部12を有していなくてもよい。
【0131】
検索部13は、範囲設定部11から入力された検索範囲情報を実績データベース21に出力し、実績データベース21の検索を行う。このとき必要に応じて、検索範囲情報のフォーマット変換を行う。これにより、実績データベース21に記録された雨水ポンプ所の運用実績に関する履歴データのうち、検索対象項目について検索範囲情報で指定されたデータ範囲を満たす履歴データが抽出される。
【0132】
実績データベース21から抽出された履歴データは、実績データベース21の検索結果として、実績データベース21から検索部13に転送される。検索部13は、実績データベース21から転送された検索結果をふるい分け部14に受け渡す。このとき必要に応じて、検索結果のフォーマット変換を行う。
【0133】
ふるい分け判断情報入力部15は、ユーザの操作内容に基づいてふるい分け判断条件を設定し、その設定内容をふるい分け判断情報としてふるい分け部14に受け渡す。ここでは前述のように、ポンプ非稼働期間の日時情報や、ポンプ運転実績に対する評価結果などに基づいてユーザが指定したふるい分け判断条件を、ふるい分け判断情報入力部15により設定することができる。
【0134】
ふるい分け部14は、ふるい分け判断情報入力部15から与えられたふるい分け判断情報を用いて、検索部13から転送された検索結果をふるい分けし、その結果を検索結果表示部1624に出力する。検索結果表示部16は、検索部13により検索された履歴データのうち、ふるい分け部14によるふるい分けで残った履歴データをユーザに提示するための表示画面を生成し、表示装置5に出力して表示させる。
【0135】
図20は、本発明の第14の実施形態に係る表示画面例を示す図である。図20に示す表示画面は、第1の実施形態で説明した範囲設定枠51および検索結果表示枠52に加えて、さらにふるい分け判断情報枠54を含んで構成されている。
【0136】
図20において、ふるい分け判断情報枠54には、運転良否レベルの最大値と最小値の入力欄が表示されている。ユーザは、これらの入力欄に任意の数値を入力することで、ふるい分け条件とする運転良否レベルの最大値と最小値を設定することができる。例えば、実績データベース21において、ポンプ運転実績に対する評価結果を表す数値が履歴データごとに記録されているとする。この場合、ふるい分け部14は、実績データベース21から検索された履歴データのうち、ポンプ運転実績の評価結果が、ふるい分け判断情報枠54においてユーザに指定された運転良否レベルの最小値と最大値の範囲内(図20の例では、80~100)にあるものを残し、他の履歴データを削除することで、検索結果のふるい分けを行う。
【0137】
検索結果表示枠52には、ふるい分け部14が上記のようにして実施したふるい分けで残ったポンプ井水位とポンプ運転台数の履歴データが表示されている。ふるい分け結果の表示後、ユーザは、ふるい分け判断情報枠54において、運転良否レベルの最大値や最小値を変更してもよい。このようにすれば、ふるい分けの条件を対話的に変更することも可能となる。
【0138】
以上説明した本発明の第14の実施形態によれば、意思決定支援システム100は、所定のふるい分け判断条件に基づいて、検索部13による検索結果のふるい分けを行うふるい分け部14を備える。検索結果表示部16は、検索部13により検索された検索対象項目以外の他の因子(ポンプ井水位、ポンプ運転台数)の値のうち、ふるい分け部14によるふるい分けで残った他の因子の値を、履歴データの検索結果として表示装置5に表示させる。このようにしたので、目的とする履歴データの検索をより一層効率的に行うことが可能となる。
【0139】
また、本実施形態において、意思決定支援システム100は、ユーザに指定された条件に基づいてふるい分け判断条件を設定するふるい分け判断情報入力部15を備える。このようにしたので、ユーザは任意のふるい分け判断条件を指定することができる。
【0140】
(第15の実施形態)
図21は、本発明の第15の実施形態に係る表示画面例を示す図である。図21に示す表示画面は、第11の実施形態で説明した図16の表示画面と同様に、範囲設定枠51および検索結果表示枠52を含んで構成されている。また、範囲設定枠51において、ポンプ井流入量の時系列変化を示すトレンドグラフ514が表示され、検索結果表示枠52において、ポンプ井水位の時系列変化を示すトレンドグラフ529と、ポンプ運転台数の時系列変化を示すトレンドグラフ530とが表示されている。さらに、ユーザがポンプ井流入量のデータ範囲を、トレンドグラフ514の表示枠内に表示されたアイコンの位置により指定できるようになっている。本実施形態と第12の実施形態との違いは、画面内にさらにふるい分け判断情報枠54が含まれている点である。なお、ふるい分け判断情報枠54の内容は、第14の実施形態で説明した図20の画面例のものと同様である。
【0141】
検索結果表示枠52のトレンドグラフ529,530には、範囲設定枠51のトレンドグラフ514に示されたポンプ井流入量の各履歴データに対応するポンプ井水位とポンプ運転台数の履歴データのうち、ふるい分け部14が上記のようにして実施したふるい分けで残ったポンプ井水位とポンプ運転台数の履歴データの時系列変化がそれぞれ示されている。すなわち、図21の画面例では、2019年12月4日の11:35~12:15の期間に記録されたポンプ井水位およびポンプ運転台数の履歴データの時系列変化のみが、グラフ529,530にそれぞれ示されている。一方、2019年12月5日の19:02~19:42の期間に記録されたポンプ井水位およびポンプ運転台数の履歴データの時系列変化は、ふるい分けで削除されたため、グラフ529,530には示されていない。
【0142】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で、任意の構成要素を用いて実施可能である。また、各実施形態や変形例は任意に組み合わせて実施することも可能である。
【0143】
上記の実施形態や変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、上記では種々の実施形態や変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0144】
1…制御部、2…記憶部、3…メモリ、4…操作入力装置、5…表示装置、6…バス、11…範囲設定部、12…検索条件論理関係設定部、13…検索部、14…ふるい分け部、15…ふるい分け判断情報入力部、16…検索結果表示部、21…実績データベース、100…意思決定支援システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21