(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124341
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】皮膚保護剤及び皮膚染色防止方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/19 20060101AFI20230830BHJP
A61K 8/87 20060101ALI20230830BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20230830BHJP
A61K 8/85 20060101ALI20230830BHJP
A61Q 17/00 20060101ALI20230830BHJP
A61Q 5/10 20060101ALI20230830BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
A61K8/19
A61K8/87
A61K8/81
A61K8/85
A61Q17/00
A61Q5/10
A61Q5/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028055
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000113274
【氏名又は名称】ホーユー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(72)【発明者】
【氏名】西岡 侑子
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏明
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA161
4C083AB051
4C083AB372
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC061
4C083AC102
4C083AC171
4C083AC211
4C083AC331
4C083AC782
4C083AD071
4C083AD072
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD111
4C083AD112
4C083AD151
4C083AD262
4C083CC02
4C083CC36
4C083DD22
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE12
(57)【要約】
【課題】皮膚染色抑制、染毛阻害抑制及び操作性の良さを並立させることができる皮膚保護剤及び皮膚染色防止方法を提供する。
【解決手段】本皮膚保護剤は、毛髪用着色料による皮膚染色を防ぐための皮膚保護剤であって、液媒と、皮膚上に被膜を形成する被膜形成用成分と、を含み、前記液媒は、揮発性液媒及び水からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記被膜形成用成分は、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エステル系樹脂、ポリビニルブチラール、鉱物からなる群から選ばれる少なくとも1種である。本皮膚染色防止方法は、本皮膚保護剤を、皮膚に塗布する塗布工程と、前記揮発性液媒を揮発させて前記皮膚上に前記被膜を形成する被膜形成工程と、を備える。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛髪用着色料による皮膚染色を防ぐための皮膚保護剤であって、
液媒と、皮膚上に被膜を形成する被膜形成用成分と、を含み、
前記液媒は、揮発性液媒及び水からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
前記被膜形成用成分は、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エステル系樹脂、ポリビニルブチラール、鉱物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする皮膚保護剤。
【請求項2】
前記揮発性液媒が、アルコール、エーテル、ケトン、エステル、シリコーン、炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の皮膚保護剤。
【請求項3】
前記揮発性液媒を含み、
前記揮発性液媒と前記被膜形成用成分との合計を100質量%とした場合に、前記揮発性液媒が70質量%以下である請求項1又は2に記載の皮膚保護剤。
【請求項4】
前記毛髪用着色料が、直接染料である請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の皮膚保護剤。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちのいずれかに記載の皮膚保護剤を、皮膚に塗布する塗布工程と、
前記揮発性液媒を揮発させて前記皮膚上に前記被膜を形成する被膜形成工程と、を備えることを特徴とする皮膚染色防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚保護剤及び皮膚染色防止方法に関する。更に詳しくは、着色料による皮膚染色を防ぐための皮膚保護剤及び皮膚染色防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、染毛剤(染毛料組成物)の意図しない付着により、皮膚染色を生じるという課題が存在する。この課題に対する解決手段として、下記特許文献1~4の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-160187号公報
【特許文献2】特表平06-507183号公報
【特許文献3】特開平03-127721号公報
【特許文献4】特開2005-270539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1は、皮膚に塗布しやすく、染毛後簡単に洗い落すことができ、かつ染毛剤による皮膚の染まりを防ぎ、染毛を阻害しない皮膚保護剤を提供することを目的として、ワセリン、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を所定の割合で含んだ皮膚保護剤を開示している。
上記特許文献2は、染毛時に、髪の生え際に接する皮膚を着色から保護し、染毛後に水で容易に除去でき、良好な皮膚親和性を持つ調合剤を提供することを目的として、ポリエチレングリコール、オキシエチル化された水添ひまし油、グリセリン及び/又はエチルヘキサンジオール及び/又はポリエチレングリコール、水を含有する調合剤を開示している。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1及び2の技術は、いずれも油分を主とする保護剤であるため、乾燥被膜が得られず、べたつきを残した状態で染毛操作をする必要がある。また、石鹸等の洗浄剤を利用しなければ除去することが困難である。即ち、使用感の良さが得られ難く、除去性において煩わしさがある。更に、油分が多いため、使用時にクリーム状である染毛剤と混合され易く、皮膚染色抑制と染毛阻害抑制との両立が難しい。更に、特許文献2のように、ポリエチレングリコールが主たる成分であると、皮膚染色抑制効果が得られ難く、染毛剤に対する溶剤となるために、染毛阻害を生じ易くなる。
【0006】
上記特許文献3は、油っぽい感触を生じたり、髪が皮膚に貼り付いたり、拭き取った後も油感が残ったり、不快感を与えたりするワセリンの使用を避け、べたつきが少なくさっぱりした使用感を有し、薬液ダレによる皮膚障害を防止し得る皮膚汚れ防止剤を提供することを目的として、部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物と低粘度シリコーン油を含有する皮膚汚れ防止剤を開示している。
特許文献3によれば、特許文献1及び2において生じる使用感に対する課題は生じ難いとされているものの、シロキサン系ポリマーは、皮膚染色抑制効果が得られ難く、また、使用感についても十分な効果が得られているとはいい難い。
【0007】
上記特許文献4は、毛髪に染毛液を塗布するときに染毛液を頭皮、顔、額、首筋等に付けずに、更には衣服等を汚さずに毛髪をむらなく綺麗に手軽に染めることができる染毛用具の提供を目的として、不透液性の手袋又は指サックに、連続した空隙を有するシートに穴及び/又は溝が複数配置された塗布部材を貼付した染毛用具を開示している。
このような染毛用具は、確実な皮膚染色抑制効果が得られ、上記特許文献1~3のような保護剤を利用しないために染毛阻害も生じない点で優れるが、染毛用具は手先を覆ってしまうため、手先の感覚が阻害されるという課題を生じる。昨今の染毛剤の普及により、ヘアーサロン等の専門店における染毛だけでなく、一般家庭において、個人が自身の毛髪を染毛する機会が大幅に増大し、操作性の良さが求められる状況がある。即ち、本人とは別の施術者が染毛を行う専門店と異なり、家庭では、自身の毛髪を染毛するため、特に頭髪の場合、毛髪を直視しながら操作することができない。このため、指先や爪先等の手先の感覚を頼りに染毛できる良好な操作性が重要となる。しかしながら、上述の通り、染毛用具は、手先の感覚を阻害し、細かな染毛操作が難しくなり、操作性の良さを得ることが難しい。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、皮膚染色抑制、染毛阻害抑制及び操作性の良さを並立させることができる皮膚保護剤及び皮膚染色防止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明は以下に示す通りである。
[1]毛髪用着色料による皮膚染色を防ぐための皮膚保護剤であって、
液媒と、皮膚上に被膜を形成する被膜形成用成分と、を含み、
前記液媒は、揮発性液媒及び水からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
前記被膜形成用成分は、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エステル系樹脂、ポリビニルブチラール、鉱物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする皮膚保護剤。
[2]前記揮発性液媒が、アルコール、エーテル、ケトンからなる群から選ばれる少なくとも1種である上記[1]に記載の皮膚保護剤。
[3]前記揮発性液媒を含み、
前記揮発性液媒と前記被膜形成用成分との合計を100質量%とした場合に、前記揮発性液媒が70質量%以下である上記[1]又は[2]に記載の皮膚保護剤。
[4]前記毛髪用着色料が、直接染料である上記[1]乃至[3]のうちのいずれかに記載の皮膚保護剤。
[5]上記[1]乃至[4]のうちのいずれかに記載の皮膚保護剤を、皮膚に塗布する塗布工程と、
前記揮発性液媒を揮発させて前記皮膚上に前記被膜を形成する被膜形成工程と、を備えることを特徴とする皮膚染色防止方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の皮膚保護剤によれば、皮膚染色抑制、染毛阻害抑制及び操作性の良さを並立させることができる。
本発明の皮膚染色防止方法によれば、皮膚染色抑制、染毛阻害抑制及び操作性の良さを並立させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳しく説明する。
尚、別途に明記しない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味し、「X~Y」の表記は「X以上且つY以下」を意味する。
また、一部の化合物の名称に関して、日本化粧品工業連合会成分表示名称リストに準じた名称、又は、INCI(INCI:International Nomenclature of Cosmetic Ingredient:化粧品原料国際命名法)に準じた名称を用いる。
更に、一部の化合物の名称に関して、ポリオキシアルキレン鎖について、ポリオキシエチレン鎖を「POE」、ポリオキシプロピレン鎖を「POP」と略記する場合がある。また、これらの略記に続くカッコ内の数字は、各々付加モル数を表す。更に、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又はメタクリル酸を表す。
【0012】
[1]皮膚保護剤
本発明の皮膚保護剤は、毛髪用着色料による皮膚染色を防ぐための皮膚保護剤であって、
液媒と、皮膚上に被膜を形成する被膜形成用成分と、を含み、
前記液媒は、揮発性液媒及び水からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
前記被膜形成用成分は、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エステル系樹脂、ポリビニルブチラール、鉱物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする。
【0013】
(1)液媒
上記「液媒」は、液状の媒体を意味する。即ち、被膜形成用成分に対する液状の媒体である。具体的には、溶媒及び分散媒が含まれる。溶媒は、被膜形成用成分を溶解させる液体であり、分散媒は、被膜形成用成分を分散させる液体である。液媒は、これらのいずれか一方のみの機能を発揮してもよいし、両方の機能を発揮してもよい。両方の機能を発揮する場合としては、被膜形成用成分の一部のみを溶解させながら、残部を析出・分散させている態様が挙げられる。
【0014】
また、液媒は、揮発性液媒及び水からなる群から選ばれる少なくとも1種である。即ち、液媒は、揮発性液媒のみからなってもよく、水のみからなってもよく、これらの混合物であってもよい。
上記のうち、揮発性液媒としては、アルコール、エーテル、ケトン、エステル、シリコーン、炭化水素等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
このうち、アルコールとしては、低級アルコールが好ましく、更には、炭素数5以下の低級アルコールが好ましく、更には、1価の炭素数5以下の低級アルコールが好ましい。具体的には、エタノール、プロパノール(イソプロパノール、n-プロパノール等)、ブタノール(2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、n-ブタノール等)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また、エーテルとしては、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
更に、ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
エステルとしては、酢酸エチル、酢酸ビニル等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
シリコーンとしては、シクロトリシロキサン、シクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等の揮発性を有する環状シリコーン(例えば、ケイ素原子数20以下)、低重合ジメチルポリシロキサン(例えば、平均重合度10以下)、ヘキサメチルジシロキサン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
炭化水素としては、イソドデカン、イソオクタン等の分枝炭化水素(例えば、炭素数16以下)が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0015】
また、上述のうち、揮発性液媒は、揮発させ易い液媒であることが好ましい。揮発させ易い液媒であることにより、本皮膚保護剤を塗り広げてから、皮膚保護膜として利用可能な被膜が形成されるまでの時間を短縮することができる。即ち、速乾性を得ることができる。また、水のみを液媒とする場合に比べて、揮発性液媒を同時に含む方が速乾性を向上させることができる。
【0016】
揮発させ易い液媒とは、より具体的には、常温常圧(例えば25℃/1気圧)で揮発させ易い液媒である。このような液媒としては、沸点が250℃以下(通常、60℃以上)であることが好ましく、更には、150℃以下がより好ましく、更には、100℃以下が好ましい。また、蒸気圧が、水の蒸気圧(3.17kPa/25℃)を超える液体であることが好ましい。また、揮発性液媒が、アルコール、エーテル、ケトン、エステル及び炭化水素である場合、その炭素数は16以下(通常、1以上)が好ましく、更には10以下が好ましい。また、揮発性液媒がシリコーンである場合、そのケイ素原子数は20以下(通常、2以上)が好ましく、更には10以下が好ましい。
このような観点から、揮発性液媒としては、アルコールが好ましく、中でも、エタノール、イソプロパノール等を好適に用いることができる。
【0017】
本皮膚保護剤全体を100質量%とすると、液媒の質量割合は、1~99質量%とすることができ、50~98質量%が好ましい。この場合、皮膚染色抑制、染毛阻害抑制及び操作性の良さを並立させることができ、更には、良好な使用感と、良好な除去性も得ることができる。更に、この質量割合は、55質量%以上、更には60質量%以上、更には65質量%以上、更には70質量%以上とすることができる。一方、この質量割合は、より優れた皮膚染色抑制能及びより良い除去性を得る観点から、97質量%以下、更には96質量%以下、更には95質量%以下、更には94質量%以下とすることができる。
【0018】
尚、速乾性という点において、皮膚保護剤は、これを塗り広げてから、1分以内、更には、30秒以内、更には、15秒以内等に、利用可能な被膜を形成できることが好ましい。とりわけ、塗り広げる際は、過度な液媒蒸散が抑制されて塗り広げを阻害せず、塗り広げを終える頃には液媒が蒸散されて皮膚保護膜が完成されることが好ましい。
また、通常、皮膚保護剤に含まれる液媒は、そのすべてが蒸散されずとも利用可能な皮膚保護膜は形成される。即ち、利用可能な皮膚保護膜内に液媒は残存されていてもよい。
【0019】
前述の通り、液媒は、揮発性液媒のみ、又は、水のみ、であってもよいが、これら両方を含むことができる。両方を含む場合、その量比は限定されないが、本皮膚保護剤に含まれる水の質量をM1とし、本皮膚保護剤に含まれる揮発性液媒の質量をM2とした場合に、製膜性(皮膚染色抑制を向上させる)及び除去性の観点からは、M1/M2≧0.1とすることが好ましい。一方、速乾性及び使用感(べたつき)、操作性の観点からは、M1/M2≦20とすることが好ましい。この比率(M1/M2)の上限は15以下がより好ましく、10以下が更に好ましく、5以下が特に好ましく、4以下がとりわけ好ましい。一方、この比率(M1/M2)の下限は限定されないが、0.5以上が好ましく、1以上がより好ましく、1.5以上が更に好ましく、1.7以上が特に好ましい。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。即ち、例えば、0.5~15とすることができ、1.0~10とすることができ。更に、揮発性液媒よりも水を多く含むことが好ましく、具体的には、1.5~5とすることができ、1.7~4.0とすることができる。
【0020】
(2)被膜形成用成分
上記「被膜形成用成分」(以下、単に「被膜成分」とも記載する)は、皮膚上に被膜を形成する成分である。より具体的には、液媒の除去により、皮膚保護膜を形成できる成分である。
この被膜成分は、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エステル系樹脂、ポリビニルブチラール、鉱物からなる群から選ばれる少なくとも1種である。即ち、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エステル系樹脂、ポリビニルブチラール及び鉱物のうちの1種のみの成分からなってもよく、これらの成分のうちの2種以上からなってもよい。
【0021】
上述のうちウレタン系樹脂としては、ポリウレタン-1、ポリウレタン-2、ポリウレタン-4、ポリウレタン-6、ポリウレタン-7、ポリウレタン-8、ポリウレタン-9、ポリウレタン-10、ポリウレタン-11、ポリウレタン-14、ポリウレタン-15、ポリウレタン-16、ポリウレタン-21、ポリウレタン-23、ポリウレタン-24、ポリウレタン-26、ポリウレタン-27、ポリウレタン-32、ポリウレタン-33、ポリウレタン-34、ポリウレタン-35、ポリウレタン-39、ポリウレタン-40、ポリウレタン-42、ポリウレタン-43、ポリウレタン-44、ポリウレタン-45、ポリウレタン-46、ポリウレタン-48、ポリウレタン-49、ポリウレタン-50、ポリウレタン-51、ポリウレタン-52、ポリウレタン-53、ポリウレタン-54、ポリウレタン-55、ポリウレタン-57、ポリウレタン-58、ポリウレタン-59、ポリウレタン-61、ポリウレタン-62、ポリウレタン-64、ポリウレタン-66、ポリウレタン-67、ポリウレタン-74、ポリウレタン-75、ポリウレタン-79、ポリウレタン-82、ポリウレタン-85、ポリウレタン-86、ポリウレタン-93、ポリウレタン-95、ポリウレタン-96、ポリウレタン-97、ポリウレタン-98等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0022】
上述のうちアクリル系樹脂としては、アクリレーツコポリマー、アクリル酸アルキルコポリマー、(スチレン/アクリレーツ)コポリマー、(スチレン/アクリル酸アルキル/ジメチコン)コポリマー、アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル)コポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸ジメチルアミノエチル)コポリマー等の(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を備えた各種重合体(単独重合体及び共重合体を含む)、更には、その塩(アンモニウム塩等)が挙げられる。
【0023】
上述のうちエステル系樹脂としては、(アジピン酸/ネオペンチルグリコール/無水トリメリト酸)コポリマー、(無水フタル酸/無水トリメリト酸/グリコールズ)コポリマー、イソステアリン酸デキストリン等のエステル結合を介してモノマーが重合された各種重合体(単独重合体及び共重合体を含む)が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0024】
上述のうち、ポリビニルブチラールは、ポリアセタールの1種であり、ポリビニルアルコールとブチルアルデヒドとの反応により得られる高分子化合物である。尚、ポリアセタールは、ポリビニルアルコールとアルデヒドとの反応により得られる高分子化合物である。
【0025】
上述のうち、鉱物としては、粘土鉱物を利用でき、具体的には、層状ケイ酸塩鉱物を好適に利用でき、なかでも、スメクタイト属の層状ケイ酸塩鉱物がより好ましい。具体的には、モンモリロナイト、パイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
更に、化粧品表示名称では、ケイ酸(Li/Mg/Na)、ケイ酸(トロメタミン/Al/Mg)、ケイ酸(Al/Ca/Na)、ケイ酸(Al/Mg)、ケイ酸(Al/鉄)、ケイ酸(Na/K/Al)、ケイ酸(Na/Mg)、ケイ酸(Na/Mg/Al)、ケイ酸(アンモニウム/銀/亜鉛/Al)、ケイ酸Na、ケイ酸K、ケイ酸Mg、ケイ酸Ca、ケイ酸Al、ケイ酸ジルコニウム、ジメチコンケイ酸シリカ、トリケイ酸Mg、フルオロケイ酸(Mg/K)、フルオロケイ酸(Mg/Na)、フルオロケイ酸(Na/Mg)、ホウケイ酸(Ca/Al)、ホウケイ酸(Ca/Na)、ホウケイ酸(Ca/チタン)、ポリケイ酸エチル、アルミノケイ酸Na等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
本発明において鉱物を用いる場合、天然より産出される天然鉱物であってもよいし、天然鉱物を加工した半合成品(加工鉱物)であってもよいし、合成品(合成鉱物)であってもよい。
【0026】
上記被膜形成用成分は、上記のなかでも、特にウレタン系樹脂が好ましい。ウレタン系樹脂は、他の被膜形成用成分と比較して、皮膚染色抑制、染毛阻害抑制及び操作性の良さを高度に並立させられる点から好ましい。
これらのうちでも、除去性(水で容易に除去できることが好ましい)の観点から、ポリウレタン-1、ポリウレタン-10、ポリウレタン-14、ポリウレタン-34、ポリウレタン-48が好ましく、更に、使用感(べたつきが少ないことが好ましい)の観点から、ポリウレタン-1、ポリウレタン-10、ポリウレタン-48がより好ましい。
【0027】
更に、上記被膜形成用成分は、好適に併用することができる。即ち、2種の被膜形成用成分の併用、3種以上の被膜形成用成分の併用等とすることができるが、特にウレタン系樹脂と、ウレタン系樹脂以外の被膜形成用成分との併用が好ましい。より具体的には、ウレタン系樹脂とアクリル系樹脂との併用が好ましく、とりわけ、ポリウレタン-1とアクリレーツコポリマーとの併用が好ましい。これらの被膜形成用成分の併用により、操作性、使用感、皮膚染色抑制、染毛阻害及び除去性等を向上させることができる。併用する場合、各被膜形成用成分の質量割合は限定されず、例えば、ウレタン系樹脂とアクリル系樹脂とを併用する場合、ウレタン系樹脂とアクリル系樹脂との合計を100質量%とした場合に、ウレタン系樹脂の質量割合を1~99質量%とすることができ、25~75質量%とすることができ、35~65質量%とすることができる。
【0028】
本皮膚保護剤全体を100質量%とすると、被膜形成用成分の質量割合は、1~99質量%とすることができ、2~50質量%が好ましい。この場合、皮膚染色抑制、染毛阻害抑制及び操作性の良さを並立させることができ、更には、良好な使用感と、良好な除去性も得ることができる。更に、この質量割合は、3質量%以上、更には4質量%以上、更には5質量%以上、更には6質量%以上とすることができる。一方、この質量割合は、より優れた皮膚染色抑制能及びより良い除去性を得る観点から、45質量%以下、更には40質量%以下、更には35質量%以下、更には30質量%以下とすることができる。
【0029】
本皮膚保護剤は、どのような剤型(25℃における剤型)であってもよいが、例えば、液状(液体)とすることができる。液状である場合、粘稠な液状(粘稠な液体)であってもよいし、非粘稠な液状(非粘稠な液体)であってもよい。粘稠な状態として、より具体的には、クリーム状、ペースト状、ジェル状等が挙げられる。
【0030】
本皮膚保護剤が、液状である場合、その粘度は限定されず、例えば、1~300,000mPa・sとすることができる。
上記のうち、粘稠な液状の場合、例えば、10,000~300,000mPa・sとすることができる。本皮膚保護剤が、粘稠な液状である場合、例えば、ポンプ及びチューブから吐出することが可能となり、ポンプタイプ及びチューブタイプの製品とすることができる。また、本皮膚保護剤を使用部へ塗り広げた際に形成される被膜の膜厚を厚くできるという観点から、本皮膚保護剤の粘度の下限は10,000mPa・s以上が好ましく、20,000mPa・s以上がより好ましく、30,000mPa・s以上が最も好ましい。更に、塗り広げやすさや形成される被膜の膜厚の均一性という観点から、粘度の上限は250,000mPa・s以下が好ましく、240,000mPa・s以下が好ましく、230,000mPa・s以下が好ましく、220,000mPa・s以下がより好ましく、210,000mPa・s以下が最も好ましい。被膜の膜厚を厚く、更に均一な被膜を形成することで、皮膚染色抑制効果を向上させることができる。
尚、粘度の測定は、B型粘度計を用いて25℃で行う。
【0031】
一方、本皮膚保護剤が、非粘稠な液状の場合、10,000mPa・s未満とすることができ、更に1~9,900mPa・sとすることができ、更に5~7,500mPa・sとすることができ、更に10~5,000mPa・sとすることができる。本皮膚保護剤が、非粘稠な液状である場合、例えば、ポンプ、ミスト容器、ムース容器等から吐出することが可能となり、ポンプタイプ、ミストタイプ、ムースタイプの製品とすることができる。
尚、粘度の測定は、B型粘度計を用いて25℃で行う。
【0032】
(3)他の成分
本皮膚保護剤は、上述した液媒及び被膜形成用成分以外の他の成分を含まなくてもよいが、必要に応じて他の成分を含有できる。
他の成分を含有する場合、本皮膚保護剤全体を100質量%とした場合に、20質量%以下とすることが好ましく、15質量%以下とすることができ、更に10質量%以下とすることができる。その下限値は限定されないが、例えば、0.001質量%以上、更には、0.005質量%以上とすることができる。
【0033】
他の成分としては、高分子化合物が挙げられる。高分子化合物の利用により粘性を調整できる。更に、本皮膚保護剤に含まれる液媒として水が含まれる場合、高分子化合物として水溶性高分子化合物を用いることが好ましい。
高分子化合物としては、セルロースアルキルエーテル(メチルセルロース、エチルセルロース等)、ニトロセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系高分子;アラビアガム、カラギーナン、ガラクタン、グアーガム、クインスシードガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、ペクチン、マンナン、デンプン、キサンタンガム、デキストラン、ヒアルロン酸、カードラン、サクシノグルカン、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン、寒天、アルゲコロイド(褐藻エキス)、アルブミン、プルラン等の天然系高分子;カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン、メチルデンプン、可溶性デンプン等のデンプン系高分子;アルギン酸塩(アルギン酸ナトリウム等)、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子;カルボキシビニルポリマー、高重合ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン等の合成高分子等が挙げられる(但し、皮膜形成用成分を除く)。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。尚、高分子化合物の重量平均分子量は、100,000以上とすることができる。
これらのなかでも、本皮膚保護剤では、セルロース系高分子が好ましく、更には、セルロースアルキルエーテルが好ましい。
【0034】
高分子化合物を用いる場合、その含有量は限定されないが、液媒と高分子化合物との合計を100質量%とした場合に、高分子化合物の質量割合は、通常、8質量%以下であり、6質量%以下が好ましく、4質量%以下がより好ましい。一方、高分子化合物の質量割合の下限は限定されないが、0.001以上が好ましく、0.005以上がより好ましく、0.01以上が更に好ましい。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。即ち、例えば、0.001~8質量%とすることができ、0.005~6質量%とすることができ、0.01~4質量%とすることができる。
【0035】
更に、本皮膚保護剤は、他の成分として、油性成分を用いることができる。油性成分としては、高級アルコール、炭化水素、エステル類、油脂、ロウ類、高級脂肪酸、シリコーン、フッ素油、アルキルグリセリルエーテル等が挙げられる(但し、揮発性液媒を除く)。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0036】
高級アルコールは、炭素数が6以上の炭素鎖を持つアルコールを利用できる。例えば、炭素数8以上40以下の高級アルコールが含まれる。また、その骨格は、飽和でもよく不飽和でもよく、直鎖でもよく分岐鎖でもよい。具体的には、セテアリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール(セタノール)、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、2-ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、ラノリンアルコール、フィトステロール、コレステロールなどが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0037】
炭化水素としては、流動パラフィン、流動イソパラフィン、パラフィン(パラフィンワックス)、オレフィンオリゴマー、ポリイソブテン、水添ポリイソブテン、ミネラルオイル、合成スクワラン、スクアレン、スクアラン(水添スクアレン)、ポリブテン、ポリエチレン(ポリエチレンワックス)、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン、オゾケライト、セレシン、リモネン、テレビン油などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0038】
エステル類としては、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸-2-ヘキシルデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、オクタン酸セチル、イソオクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、セバシン酸ジイソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルへキシル、エチルヘキサン酸セチル、ステアリン酸ブチル、イソステアリン酸イソセチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、脂肪酸(C10-30)(コレステリル/ラノステリル)、乳酸ラウリル、乳酸オクチルドデシル、酢酸ラノリン、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリトリット、テトライソステアリン酸ペンタエリ
トリット、ラノリン誘導体、ダイマージリノール酸ジリノレイル、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル)、イソステアリン酸水添ヒマシ油等が挙げられる。
【0039】
油脂としては、植物性油(植物性油脂)、動物性油(動物性油脂)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。このうち植物性油としては、マカデミア種子油、メドウフォーム油、ホホバ種子油、コメ胚芽油、ヒマワリ種子油、オリーブ油、ブドウ種子油、アーモンド油、杏仁油、桃仁油、パーシック油、シア脂、ローズヒップ油、ツバキ油、茶実油、サザンカ油、アルガニアスピノサ核油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、カカオ脂、トウモロコシ油、落花生油、ナタネ油、月見草油、コメヌカ油、コメ胚芽油、小麦胚芽油、ハトムギ油、アボカド油、カロット油、ヒマシ油、アマニ油、ヤシ油、パーム油等が挙げられる。また、動物性油としては、牛脂、ラード、ミンク油、卵黄油等が挙げられる。
【0040】
ロウ類としては、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、ラノリン、鯨ロウ、コメヌカロウ、サトウキビロウ、パームロウ、モンタンロウ、綿ロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、カポックロウ、セラックロウ等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0041】
高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、リノール酸、リシノール酸、ラノリン脂肪酸等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0042】
シリコーン(但し、揮発性液媒としてのシリコーンを除く)としては、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、末端水酸基変性ジメチルポリシロキサン、650~10000の平均重合度を有する高重合シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(アモジメチコン)等のアミノ変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等が挙げられる。
【0043】
油性成分を用いる場合、その含有量は限定されないが、本皮膚保護剤全体を100質量%とした場合に、2質量%以下とすることが好ましく、1.5質量%以下とすることができ、更に1.0質量%以下とすることができる。その下限値は限定されないが、例えば、0.001質量%以上、更には、0.005質量%以上とすることができる。
【0044】
本発明の皮膚保護剤は、液媒及び被膜形成用成分以外に、他の成分として、例えば、防腐剤、pH調整剤、安定剤、酸化防止剤等を用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
上述のうち、防腐剤としては、フェノキシエタノール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、イソプロピルパラベン、ブチルパラベン、イソブチルパラベン、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
pH調整剤としては、リンゴ酸、ピロリドンカルボン酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、乳酸等の有機酸、グルタミン酸、アルギニン等のアミノ酸、タウリン等の有機スルホン酸、リン酸、塩酸、硫酸、ホウ酸等の無機酸、更には、それらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
安定剤としては、フェナセチン、8-ヒドロキシキノリン、アセトアニリド、ピロリン酸ナトリウム、バルビツール酸、尿酸、タンニン酸等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
酸化防止剤としては、アスコルビン酸(L-アスコルビン酸)、無水亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0045】
更に、本皮膚保護剤は、他の成分としてポリペプチド類、アミノ酸類等を用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
上記のうち、ポリペプチド類としては、動物性蛋白質、植物性蛋白質、これらの加水分解物(加水分解蛋白)、カチオン化加水分解蛋白等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
このうち、動物性蛋白質としては、ケラチン、コラーゲン、シルク、コンキオリン、エラスチン、フィブロイン、カゼイン、ゼラチン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。また、植物性蛋白質としては、大豆、コムギ、オオムギ、カラスムギ、アーモンド等の植物から得られる植物性蛋白質(大豆蛋白、コムギ蛋白、オオムギ蛋白、カラスムギ蛋白、アーモンド蛋白)が挙げられる。
また、加水分解蛋白には、上述の各種蛋白質を、酸、アルカリ、酵素等により加水分解した成分が含まれる。また、カチオン化加水分解蛋白には、加水分解蛋白を変性剤によりカチオン化させた成分や、予め変性されたカチオン化蛋白を加水分解した成分等が含まれる。更に、加水分解蛋白としては、加水分解ケラチン、加水分解コラーゲン、加水分解シルク、加水分解コンキオリン、加水分解大豆蛋白等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0046】
アミノ酸類としては、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、アラニン、テアニン、アルギニン、ヒスチジン、トレオニン等のアミノ酸及びこれらの塩;タウリン等のアミノ酸類似化合物:などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0047】
上記以外にも、更に、糖類(ソルビトール、マルトース、グリコシルトレハロース、N-アセチルグルコサミンなど)、無機塩(塩化ナトリウム、炭酸ナトリウムなど)、緩衝剤(リン酸ナトリウムなど)、キレート化剤(エデト酸及びその塩類、ジエチレントリアミン五酢酸及びその塩類、ヒドロキシエタンジホスホン酸及びその塩など)、ビタミン類、植物エキス、香料、着色剤及び紫外線吸収剤、並びに「医薬部外品原料規格」(2006年6月発行、薬事日報社)に収載されるものから選ばれる少なくとも一種等の成分を含有できる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0048】
更に、本皮膚保護剤は、他の成分として界面活性剤を用いることができる。界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0049】
カチオン性界面活性剤としては、モノアルキル型4級アンモニウム塩、ジアルキル型4級アンモニウム塩、トリアルキル型4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム型4級アンモニウム塩、モノアルキルエーテル型4級アンモニウム塩等のアルキル4級アンモニウム塩類、アルキルアミン塩、脂肪酸アミドアミン塩、エステル含有3級アミン塩、アーコベル型3級アミン塩等のアミン塩類、アルキルピリジニウム塩、アルキルイソキノリウム塩等の環式4級アンモニウム塩類、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0050】
アニオン性界面活性剤としては、アルキルエーテル硫酸塩、POEアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホン脂肪酸塩、N-アシルアミノ酸型界面活性剤、リン酸モノ又はジエステル型界面活性剤、スルホコハク酸エステル等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらの界面活性剤のアニオン基の対イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、トリエタノールアミン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0051】
即ち、例えば、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、セチル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム、POEラウリルエーテル硫酸ナトリウム、POEラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン、POEラウリルエーテル硫酸アンモニウム、POEステアリルエーテル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、ラウリルリン酸ナトリウム、POEラウリルエーテルリン酸及びその塩、N-ラウロイルグルタミン酸塩類(ラウロイルグルタミン酸ナトリウム等)、N-ラウロイルメチル-β-アラニン塩、N-アシルグリシン塩、N-アシルグルタミン酸塩、高級脂肪酸であるラウリン酸、ミリスチン酸及びこれらの高級脂肪酸の塩が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0052】
両性界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、エーテル型ノニオン性界面活性剤、エステル型ノニオン性界面活性剤、アルキルグルコシド等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0053】
更に、本皮膚保護剤では、染毛阻害抑制の効果を最大限に得るという観点から、アニオン性界面活性剤を実質的に含まないものとすることができる。具体的には、本皮膚保護剤全体を100質量%とした場合に、アニオン性界面活性剤の含有量を5質量%以下(0質量%であってもよい)に抑えることが好ましく、2質量%以下が好ましく、1質量%以下が更に好ましい。
【0054】
(4)毛髪用着色料
本皮膚保護剤は、毛髪用着色料による皮膚染色を防ぐものであり、どのような毛髪用着色料に対しても効果を得ることができる。毛髪用着色料としては、酸化染料、直接染料等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0055】
酸化染料は、染料中間体、又は染料中間体及びカプラーである。染料中間体としては、p-フェニレンジアミン、p-トルエンジアミン、p-アミノフェノール、2,2'-[(4-アミノフェニル)イミノ]ビスエタノール及びこれらの塩が挙げられる。その他にも、N-フェニル-p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、o-アミノフェノール、p-メチルアミノフェノール、2-ヒドロキシエチル-p-フェニレンジアミン、o-クロル-p-フェニレンジアミン、4-アミノ-m-クレゾール、2-アミノ-4-ヒドロキシエチルアミノアニソール、2,4-ジアミノフェノール及びこれらの塩が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また、カプラーとしては、塩酸2,4-ジアミノフェノキシエタノール、α-ナフトール、2,6-ジアミノピリジン、5-アミノ-o-クレゾール、5-(2-ヒドロキシエチルアミノ)-2-メチルフェノール、レゾルシン、m-アミノフェノール、カテコール、ピロガロール、フロログルシン、没食子酸、ハイドロキノン、m-フェニレンジアミン、トルエン-3,4-ジアミン、ジフェニルアミン、3,3’-イミノジフェニール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、タンニン酸、及びこれらの塩が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0056】
直接染料としては、アニオン性染料(酸性染料)、カチオン性染料(塩基性染料)、ノニオン性染料(天然染料、ニトロ染料、HC染料、分散染料等)などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。本皮膚保護剤は、これらのなかでも、カチオン性染料及び/又はノニオン性染料を用いる場合に特に好適である(即ち、アニオン性染料を併用しない態様)。このようなカチオン性染料及び/又はノニオン性染料を利用した染毛剤組成物としては、カラートリートメント、カラーシャンプー、カラーリンス、カラーコンディショナー、カラークリーム等が挙げられる。
【0057】
アニオン性染料としては、赤色2号、赤色102号、黄色4号、黄色5号、黄色202号の(1)、橙色205号、緑色3号、緑色204号、紫色401号、青色1号、青色2号、褐色201号、黒色401号等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0058】
カチオン性染料としては、塩基性茶16、塩基性茶17、塩基性茶4、塩基性青75、塩基性青99、塩基性青124、塩基性青3、塩基性青7、塩基性青9、塩基性青26、塩基性青47、塩基性青6、塩基性青41、塩基性青77、塩基性緑1、塩基性緑4、塩基性橙31、塩基性橙1、塩基性橙2、塩基性赤51、塩基性赤2、塩基性赤22、塩基性赤46、塩基性赤76、塩基性赤1、塩基性赤118、塩基性紫2、塩基性紫1、塩基性紫3、塩基性紫4、塩基性紫14、塩基性紫16、塩基性黄40、塩基性黄57、塩基性黄87、塩基性黄11、塩基性黄28、HC青16、HC橙6、HC赤17、HC黄17、ヒドロキシアントラキノンアミノプロピルメチルモルホリニウムメトサルフェート等が挙げられる。これらのカチオン性染料は、例えば、四級アンモニウム基、フェノキサジン環基、フェノチアジン環基等を陽イオン性基とすることによりカチオン性を発揮することができる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0059】
ノニオン性染料としては、HC青2、HC青8、HC青11、HC青12、HC青14、HC青15、HC青18、HC青19、HC青20、HC青5、HC青6、HC青9、HC青10、HC青13、HC橙1、HC橙2、HC橙7、HC橙3、HC赤1、HC赤3、HC赤7、HC赤10、HC赤11、HC赤13、HC赤18、HC赤19、HC赤20、HC赤21、HC赤14、HC紫1、HC紫2、HC紫3、HC紫4、HC黄2、HC黄4、HC黄5、HC黄7、HC黄9、HC黄11、HC黄13、HC黄16、HC黄18、HC黄6、HC黄10、HC黄12、HC黄14、HC黄15、HC黄19、2-アミノ-6-クロロ-4-ニトロフェノ-ル、2-アミノ-3-ニトロフェノ-ル、4-アミノ-3-ニトロフェノ-ル、3-メチルアミノ-4-ニトロフェノキシエタノ-ル、2-ニトロ-5-グリセリルメチルアニリン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0060】
(5)その他
本皮膚保護剤の剤型(25℃における剤型)は限定されず、用途や目的に応じて適宜選択でき、例えば、分散液状、ペースト状、クリーム状、乳化物状(乳液状)、泡状(フォーム状)、液体状、水溶液状、ゲル状、ミスト状(塗布時にミスト形態)、固体状等とすることができる。このうち、被膜形成をよりさせ易いという観点からは、クリーム状、乳化物状、分散液状及びペースト状が好ましく、更には、分散液状及びペースト状がより好ましい。また、本皮膚保護剤は、通常、1剤式であるが、2剤以上に分割した多剤式として用いてもよい。
【0061】
本皮膚保護剤の用途は限定されず、各種染毛作用を有する染毛剤組成物の使用前に、これらの染毛剤組成物に起因して皮膚が染色されることを防止又は抑制するために、皮膚に対して塗布して用いることができる。この染毛剤組成物としては、カラートリートメント、カラーシャンプー、カラーリンス、カラーコンディショナー、カラークリーム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0062】
[2]皮膚染色防止方法
本発明の皮膚染色防止方法は、塗布工程と被膜形成工程と、を備えることを特徴とする。
上記「塗布工程」は、本皮膚保護剤を、皮膚に塗布する工程である。塗布工程において、塗布方法は限定されず、手による塗布、スプレー(噴霧)による塗布、刷毛を用いた塗布等を利用できる。
また、皮膚保護剤は、水や温湯で濡れた状態の皮膚に適用されてもよいし、乾いた皮膚に適用されてもよい。但し、より水濡れの少ない皮膚に対して適用する方が、被膜形成の観点からは好ましい。
塗布する皮膚は、どこの皮膚であってもよく、対象部位としては、手(手掌、手背、母指球、小指球等を含む)、指(指先、指頭、指尖、爪先、指腹、母指、示指、中指、環指、小指等を含む)、ひたい、うなじ、側頭部(露出部)、こめかみ、耳等が挙げられる。これらは1種のみに適用してもよく2種以上に対して同時に適用してもよい。
【0063】
上記「被膜形成工程」は、塗布された塗膜から、揮発性液媒を揮発させて皮膚上に被膜を形成する工程である。この被膜形成工程は、塗布工程と別途に進行されてもよいが、塗布工程と同時に進行されることが好ましい。即ち、塗布により塗膜が形成されながら、同時に液媒が蒸散されて被膜形成が進行することが好ましい。
【0064】
尚、必要であれば、塗膜に風をあてることにより液媒の蒸散速度を大きくする等、適宜の乾燥工程を設けることもできる。
また、使用後(染毛作業を終えた後)は、被膜を除去する除去工程を行うことができる。被膜の除去はどのような方法で行ってもよいが、通常、水洗により除去することができる。水洗では、冷水、温水、湯等、どのような温度の水を用いてもよい。
【0065】
前述の通り、皮膚保護剤は、手及び指に対しての適用に特に適する。このように手指に利用する場合、皮膚染色を避けるために、手指に塗って利用することから塗る手袋であるともいえる。前述の通り、従来、手袋様の形態の染毛補助具は知られているが、このような補助具は、手先を覆ってしまうため、手先の感覚が阻害されるという課題を生じる。この点、本皮膚保護剤は、指先や爪先等の手先の感覚を阻害しないため、染毛時の良好な操作性を得ることができる。加えて、従来の補助具は、染毛のたびに洗浄して再利用するか、或は、染毛のたびに新調して利用することになるため、利用の手軽さ及びコスト面でのデメリットがあるのに対して、本皮膚保護剤は、染毛前に手指に塗布して被膜形成し、使用後は、水洗により容易に除去できるため、再利用や新調の必要がないため、従来品である補助具に比べて、利用の手軽さ及びコスト面でのメリットが大きい。
【0066】
更に、本皮膚保護剤は、前述の通り、液媒と被膜形成剤とをベースに構成されており、油性成分を含まなくてよい。このため、使用感(べたつきがない)に優れ、更に、洗浄性にも優れる。特に形成される被膜は水洗によって容易に除去でき、石鹸などの洗剤を利用する必要がない。このため、塗布、使用及び除去のいずれの工程においても皮膚へのダメージは抑えられ、利用の手軽さも得ることができる。
【0067】
尚、皮膚保護剤は、皮膚だけでなく、染毛作業を行う洗面所や、浴室などの表面に塗布して利用することができる。これらの表面は、通常、水との接触を生じることが予定されて防水性が付与されているため、被膜形成に適するとともに、使用後には水洗により容易に除去することができる。このように、皮膚以外の箇所へ塗布することを目的とする場合には、特に制限されるものではないが、手指等への塗布よりも広範囲に塗布しやすい点からミスト状に塗布することができる剤型とすることができる。
【実施例0068】
以下、本発明を実施例に則して更に詳細に説明するが、これらの実施例はあくまでも説明のために便宜的に示す例に過ぎず、本発明はいかなる意味でもこれらの実施例に限定されるものではない。
【0069】
[1]皮膚保護剤の調製
下記に示す成分を、表1~2に示す質量割合(質量%)で混合することにより、実施例1~22及び比較例1~2の皮膚保護剤を調製した。調製方法は以下の通りである。
【0070】
(1)調製方法
実施例1~22及び比較例1~2の皮膚保護剤は、いずれも全成分を一括した1剤式の皮膚保護剤であり、以下の手順(1)~(3)により得た。即ち、(1)高分子化合物を揮発性溶媒に分散させて1次分散液を得る。その後、(2)得られた1次分散液に被膜形成用成分を更に分散させて2次分散液を得る。次いで、(3)得られた2次分散液に水を加えてペースト状の皮膚保護剤を得る。
【0071】
(2)成分の詳細
表1~2に示す各成分は以下の通りである。
[被膜形成用成分]
・ポリウレタン-1(性状/溶液、純度30質量%)
・ポリウレタン-10(性状/溶液、純度30質量%)
・ポリウレタン-48(性状/溶液、純度20質量%)
・ポリビニルブチラール(性状/溶液、純度30質量%)
・ケイ酸(Li/Mg/Na)(性状/溶液、純度30質量%)
・アクリレーツコポリマー(性状/溶液、純度30質量%)
・ポリビニルアルコール(性状/溶液、純度30質量%)
・架橋型メチルシロキサン(性状/溶液、純度30質量%)
[液媒]
・エタノール(揮発性溶媒、純度95質量%)
・水(精製水)
[高分子化合物]
・メチルセルロース(性状/固体、純度95質量%)
[油分]
・ワセリン
[界面活性剤]
・ラウリル硫酸Na(性状/固体、純度95質量%)
【0072】
[2]皮膚保護剤の評価
以下の要領により、操作性、使用感(べたつき)、皮膚染色抑制、染毛阻害、除去性及び粘度の各評価を行った。
【0073】
(1)操作性の評価
20名のパネリストが、実施例1~22及び比較例1~2の皮膚保護剤を、直径20mmの半球状に手のひらに吐出した後、手首より先端側の手全体(指先、爪先を含む)に剤をゆきわたらせた。1分経過後、染毛料組成物(シエロカラートリートメント ナチュラルブラック)を直径20mmの半球状に、手のひらに吐出し、各パネリストが、自身の頭髪に対して塗布操作を行い、その際の操作性(具体的には、頭髪の根本まで染毛剤組成物をゆきわたらせる際の操作性、頭髪10~20本程度をピックアップしてメッシュ様に染毛剤組成物を塗布する際の操作性、を含む)について評価を行った。操作性の評価基準は、下記に示す「良い」、「普通」、「悪い」の3段階に従った。
【0074】
「良い」:皮膚保護剤を塗布していない手で染毛操作を行った場合に等しい操作感(指先、爪先の感覚阻害がない)である。
「普通」:指先、爪先に違和感はあるものの、実際の染毛操作に影響を及ぼさない操作感である。
「悪い」:指先、爪先の感覚阻害があり、実際の染毛操作に影響を及ぼす操作感である。
【0075】
各パネリストは、自らの感覚に最も近い操作感を上記3段階の評価基準から1つ選択した。この結果を集計し、以下の5段階の評点に当てはめ、表1~2に当該評点を示した。
5点:「良い」の選択人数が17名以上(大変優れる)
4点:「良い」の選択人数が12~16名(優れる)
3点:「良い」の選択人数が8~11名(やや優れる)
2点:「良い」の選択人数が3~7名(劣る)
1点:「良い」の選択人数が0~2名(大変劣る)
【0076】
(2)使用感の評価
20名のパネリストが、実施例1~22及び比較例1~2の皮膚保護剤を、直径20mmの半球状に手のひらに吐出した後、手首より先端側の手全体(指先、爪先を含む)に剤をゆきわたらせた後、1分経過後の皮膚保護剤の状態について、「べたつきが少ない」(ワセリンのみを手に塗った場合のべたつき感を「べたつきが強い」とし、ワセリンのみの被膜のべたつき感よりも明らかにべたつきが低減されていると認識されたものを「べたつきが少ない」と評価するものとして標準化)と評価したパネリストの人数に応じて以下の5段階の評点に当てはめ、表1~2に当該評点を示した。
5点:「べたつきが少ない」と回答した人数が17名以上(極めて良好)
4点:「べたつきが少ない」と回答した人数が12~16名(良好)
3点:「べたつきが少ない」と回答した人数が8~11名(やや良好)
2点:「べたつきが少ない」と回答した人数が3~7名(悪い)
1点:「べたつきが少ない」と回答した人数が0~2名(極めて悪い)
【0077】
(3)皮膚染色抑制の評価
実施例1~22及び比較例1~2の皮膚保護剤を、直径15mm半球状に人差し指の先に吐出した後、人差し指の全体(指先、爪先を含む)に剤をゆきわたらせた。その後、染毛料組成物(シエロカラートリートメント ナチュラルブラック)を直径20mmの半球状に、皮膚保護剤で施した人差し指に吐出し、この人差し指の全体(指先、爪先を含む)に染毛料組成物をゆきわたらせた。同時に、染毛料組成物(シエロカラートリートメント ナチュラルブラック)を直径20mmの半球状に、皮膚保護剤で施していない中指に吐出し、この中指の全体(指先、爪先を含む)に染毛料組成物をゆきわたらせた。この状態で、人差し指と中指とを5分間放置し、5分経過後に、各々の指を流水により洗浄し、皮膚保護剤と染毛料組成物とを洗い落とした。
その後、染毛料組成物を塗布した人差し指爪の付け根部分(保護区)と、染毛料組成物を塗布した中指の爪付け根部分(染色区)と、皮膚保護剤及び染毛料組成物の両方を塗布していない薬指の爪付け根部分(基準区)と、を比較して、染着の程度を以下の基準に従って評価し、表1~2に当該評点を示した。
【0078】
5点:基準区と比較しても保護区染着は認識不能
4点:保護区単独で染着認識不能であり、基準区比較で保護区染着が僅かに認識できる
3点:保護区単独で染着認識不能であり、基準区比較で保護区染着が認識できる
2点:保護区単独で染着認識でき、染色区より保護区の染着が少ない
1点:保護区単独で染着認識でき、染色区と保護区との染着差は認識不能
【0079】
(4)染毛阻害の評価
(4-1)基準区となる染毛処理毛束の作成
直径20mmの半球状を手のひらに吐出した染毛料組成物(シエロカラートリートメント ナチュラルブラック)を、長さ10cmの評価用の白毛の毛束サンプル(ビューラックス社製)へ1分間掛けてまんべんなく塗り込む操作を行った。その後、毛束サンプルを5分間放置した後、付着した染毛料組成物を流水で洗い落とした。その後、シャンプー(ビゲントリートメントシャンプー)を用いて毛束サンプルを1回洗浄し、次いで、流水洗浄した後、温風乾燥して1種の染毛処理毛束(基準区)を得た。
【0080】
(4-2)保護区となる染毛処理毛束の作成
実施例1~22及び比較例1~2の皮膚保護剤を、直径20mmの半球状に手のひらに吐出した後、手首より先端側の手全体(指先、爪先を含む)に剤をゆきわたらせた。その後、上記(4-1)と同じ操作により、保護区である24種(実施例1~22及び比較例1~2の皮膚保護剤の各々を使用)の染毛処理毛束を作成した。
即ち、直径20mmの半球状を手のひらに吐出した染毛料組成物(シエロカラートリートメント ナチュラルブラック)を、長さ10cmの評価用の白毛の毛束サンプル(ビューラックス社製)へ1分間掛けてまんべんなく塗り込む操作を行った。その後、毛束サンプルを5分間放置した後、付着した染毛料組成物を流水で洗い落とした。その後、シャンプー(ビゲントリートメントシャンプー)を用いて毛束サンプルを1回洗浄し、次いで、流水洗浄した後、温風乾燥して、15種の染毛処理毛束(保護区)を得た。
【0081】
10名のパネリストが、基準区の染毛処理毛束と、保護区の染毛処理毛束(実施例1~22又は比較例1~2のいずれかの皮膚保護剤を利用)と、を比較して、染毛差(染毛度及び/又は色調の差異)を認識できるかを評価した。
5点:基準区と保護区とを比較しても染毛差は認識不能
4点:基準区と保護区とを比較してもほとんど染毛差を認識できない
3点:基準区と保護区とを比較してもあまり染毛差を認識できない
2点:基準区と保護区とを比較してやや染毛差が認識される
1点:基準区と保護区とを比較してかなりの染毛差が認識される
【0082】
その後、10名のパネリストの採点結果の平均値を算出し、以下の基準に当てはめ、表1~2に当該評点を示した。
5点:平均値が4.6点以上(優れる)
4点:平均値が3.6点以上4.6点未満(良好)
3点:平均値が2.6点以上3.6点未満(可)
2点:平均値が1.6点以上2.6点未満(やや不良)
1点:平均値が1.6点未満(不良)
【0083】
尚、本実施例において使用した染毛料組成物(シエロカラートリートメント ナチュラルブラック)には、毛髪用着色料として以下の成分が含まれる。
・HC青2(ノニオン性染料)
・HC黄4(ノニオン性染料)
・塩基性青75(カチオン性染料)
・塩基性茶16(カチオン性染料)
【0084】
(5)粘度の評価
粘度の測定は、B型粘度計を用いて25℃で行った。尚、実施例1、2及び3については、7号ローターを使用し、回転速度10rpm且つ30秒間の測定条件とした。また、実施例13については2号ローターを使用し、回転速度12rpm且つ60秒間の測定条件とした。その結果、各実施例及び比較例の皮膚保護剤の粘度は、以下の通りであった。
実施例1:204,000mPa・s
実施例2:31,900mPa・s
実施例3:3,190mPa・s
実施例13:40mPa・s
【0085】
【0086】
【0087】
[3]実施例の効果
比較例1に示す通り、被膜形成用成分としてポリビニルアルコールを利用した例では、優れた皮膚染色抑制効果が得られつつ、染毛阻害が発生し難いことが分かるが、一方で、操作性、使用感及び除去性の点では不十分な結果となることが分かる。また、比較例2に示す通り、被膜形成用成分として架橋型メチルポリシロキサン(シロキサン系ポリマー)を利用した例では、染毛阻害を生じ難いことが分かるものの、一方で、皮膚染色抑制効果は得られ難く、また、操作性、使用感及び除去性の点で不十分な結果となることが分かる。
【0088】
これに対して、実施例1~22では、皮膚染色抑制、染毛阻害抑制及び操作性の良さを並立できることが分かる。特に実施例1、3~8の結果から、被膜形成用成分として各種ポリウレタン及びケイ酸(Li/Mg/Na)(鉱物)の利用が操作性、使用感、皮膚染色抑制、染毛阻害及び除去性のいずれの効果においても優れることが分かる。更に、実施例9、3及び10の比較、並びに、実施例11、4及び12の比較から、被膜形成用成分の質量割合を大きくすることにより皮膚染色抑制効果が増大される傾向があることが分かる。その一方、被膜形成用成分の質量割合を適切な範囲に収めることにより操作性、使用感及び除去性をバランスよく向上させられることが分かる。更に、実施例3と実施例9との比較から、被膜形成用成分の質量割合を大きくすることで、皮膚染色抑制効果を向上させられることが分かる。その一方、被膜形成用成分の質量割合の増大は、操作性、使用感及び除去性においては僅かではあるが低下傾向となる。この点、実施例1と実施例9との比較から、異なる被膜形成用成分の併用、例えば、ポリウレタン-1とアクリレーツコポリマーとの併用により、操作性、使用感及び除去性の低下を防止できることが分かる。
【0089】
また、実施例2、3及び13の比較から、高分子化合物の配合により皮膚染色抑制効果を向上させられることが分かる。一方で、高分子化合物の低減又は非配合により皮膚保護剤の粘度を低減でき、特に非粘稠な液状が得られることが分かる。更に、液媒が水のみからなる実施例14、M1/M2が16.6である実施例15、M1/M2が7.8である実施例16、M1/M2が2.52である実施例3、M1/M2が1.2である実施例17、M1/M2が0.35である実施例18、の各実施例の比較から、M1/M2が小さい程、操作性及び使用感に優れることが分かる。一方で、M1/M2が過度に小さいと、皮膚染色抑制及び除去性が低下する傾向が認められる。従って、皮膚染色抑制、染毛阻害抑制及び操作性に加えて、除去性及び使用感にも優れるという観点からは、M1/M2を1.2~7.8にすることができる。また、実施例3、実施例19及び実施例20の結果から、ワセリン(油性成分)は、含有量が多くなるに連れて、操作性、使用感、染毛阻害及び除去性の効果が低下する傾向があることが分かる。このことから、ワセリンは含まれるとしても少ない方が良いといえる。更に、実施例3、実施例21及び実施例22の結果から、ラウリル硫酸Na(アニオン性界面活性剤)は、含有量が多くなるに連れて染毛阻害抑制の効果が低下する傾向があることが分かる。このことから、ラウリル硫酸Naは含まれるとしても少ない方が良いといえる。
【0090】
また、上述した実施例1の皮膚保護剤を、塗布する箇所を手に替えて頭髪の生え際とした以外、上記[2]の「皮膚保護剤の評価」におけると同様にして、使用感、皮膚染色抑制、染毛阻害及び除去性について評価を行った。その結果、使用感は「5」であり、皮膚染色抑制は「3」であり、染毛阻害は「5」であり、除去性は「5」であった。即ち、実施例1の皮膚保護剤は、手以外の皮膚である頭髪の生え際に対しても有用であることが分かる。その一方、実施例1の皮膚保護剤を手に対して塗布した場合の皮膚染色抑制効果が「5」であったのに対して、頭髪の生え際に対して塗布した場合の皮膚染色抑制効果は「3」へ低下した。このように評価が下がった理由は、皮脂の成分や量が塗布箇所により異なるためであると考えられる。