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特開2023-124345電気化学セル及び電気化学セルモジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124345
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】電気化学セル及び電気化学セルモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/562 20210101AFI20230830BHJP
   H01M 50/109 20210101ALI20230830BHJP
   H01M 50/119 20210101ALI20230830BHJP
   H01M 50/124 20210101ALI20230830BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20230830BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20230830BHJP
   H01M 50/548 20210101ALI20230830BHJP
   H01M 50/559 20210101ALI20230830BHJP
   H01M 50/555 20210101ALI20230830BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20230830BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20230830BHJP
   H01G 11/68 20130101ALI20230830BHJP
   H01G 11/74 20130101ALI20230830BHJP
   H01M 10/0525 20100101ALI20230830BHJP
【FI】
H01M50/562
H01M50/109
H01M50/119
H01M50/124
H01M50/121
H01M4/66 A
H01M50/548 201
H01M50/559
H01M50/555
H01M10/0585
H01G11/78
H01G11/68
H01G11/74
H01M10/0525
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028061
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】田中 和美
(72)【発明者】
【氏名】木村 長幸
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
5H017
5H029
5H043
【Fターム(参考)】
5E078AB02
5E078AB06
5E078AB12
5E078BA26
5E078BA27
5E078BA44
5E078BA53
5E078CA06
5E078DA02
5E078FA02
5E078FA12
5E078FA13
5E078HA02
5E078HA03
5E078HA12
5E078HA13
5E078HA21
5E078HA23
5E078KA04
5E078KA05
5E078KA06
5H011AA09
5H011BB04
5H011CC02
5H011CC06
5H011CC10
5H011DD18
5H011EE01
5H011FF04
5H017AA07
5H017AS10
5H017CC20
5H017EE01
5H017EE05
5H029AJ02
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL18
5H029AM02
5H029AM07
5H029BJ03
5H029BJ12
5H029CJ24
5H029DJ02
5H029DJ03
5H029DJ06
5H029EJ01
5H029HJ12
5H043AA05
5H043AA10
5H043AA19
5H043BA19
5H043CA03
5H043CA07
5H043DA14
5H043DA15
5H043HA23D
5H043JA02D
5H043KA06D
5H043KA07D
5H043LA21D
(57)【要約】
【課題】部品点数を増加させることなく、シンプルな構成で磁場の影響を効果的に抑制でき、生産性に優れ、小型且つ軽量であって安価な構成で急速充電が可能な電気化学セル及び電気化学セルモジュールを提供する。
【解決手段】正極電極4と負極電極3とが積層されてなる電極体2と、有底筒状の第1容器17及び第2容器18が重ね合わせられ、内部が密封されることで電極体2を収容する収容部12が内部に形成された、外周12a並びに第1底壁部21及び第2底壁部31を有する偏平円筒状の外装体10とを備え、さらに、外装体10の第1底壁部21の第1貫通孔23及び第2底壁部31の第2貫通孔35を塞ぐように配置されるとともに、第1貫通孔23及び第2底壁部31に溶着され、電極体2と電気的に接続する正極板39及び負極板26を有し、正極板39及び負極板26が、少なくとも一方の面がNiメッキされたオーステナイト系ステンレス鋼板からなる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム集電体上に正極活物質が固定された正極電極と、銅集電体上に負極活物質が固定された負極電極とが積層されてなる電極体と、
アルミニウム薄膜と樹脂薄膜とが積層されたラミネートフィルムからなる、有底筒状とされた第1部材及び第2部材が重ね合わせられ、前記第1部材と前記第2部材とで内部が密封されることで、前記電極体を収容する収容部が内部に形成された、外周部及び底部を有する偏平円筒状の外装体と、を備え、
さらに、前記外装体の前記底部を貫通して設けられる開口部を塞ぐように配置されるとともに、前記開口部を封止するように溶着され、前記電極体と電気的に接続する一対の電極板を有し、
前記一対の電極板が、少なくとも一方の面がNiメッキされたオーステナイト系ステンレス鋼板からなることを特徴とする電気化学セル。
【請求項2】
前記一対の電極板は、少なくとも前記外装体側に配置される面に前記Niメッキが施されていることを特徴とする請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項3】
前記一対の電極板が正極板及び負極板からなり、
前記正極板は、前記外装体側に配置される片面に前記Niメッキが施されており、
前記負極板は、前記外装体側及び前記電極体側の両面に前記Niメッキが施されていることを特徴とする請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか一項に記載の電化化学セルを備えることを特徴とする電気化学セルモジュール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学セル及び電気化学セルモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解質二次電池や電気二重層キャパシタ、イオンキャパシタ等の電気化学セルとしては、例えば、密封された容器状の外装体の内部に、一対の正極電極及び負極電極からなる電極体と、この電極体に含浸された非水電解質とを含む構成のものが挙げられる。このような電気化学セルは、例えば、スマートフォン、ウエアラブル機器、補聴器等の小型機器の電源として使用されており、特に、ラミネート型、円筒状(シリンダ型)、有底の矩形形状、ボタン(コイン)型のもの等が多用されている。
【0003】
上記のような電気化学セルの一形態として、より小型で形状の自由度が高く、且つ、高容量の電池を得るために、例えば、アルミニウム等の金属薄膜と樹脂薄膜とが積層されてなるラミネートフィルムを外装体に用い、外装体の一部に貫通させて形成した開口部から電極板を外部に露出させた構成のボタン型電池が提案されている。
【0004】
また、近年における小型電子機器のコードレス化、ワイヤレス化に伴い、内蔵された電池をワイヤレスで充電する小型電子機器も商品化されている。このようなニーズを満たす小型電池として、ワイヤレスで急速充電することが可能な、コンパクトな電池ユニットが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に記載の電池ユニットによれば、コイン形状の偏平型電池、基板、接続端子、ワイヤレス給電用コイル、及び防磁シートを備えてなり、これらの各構成部材がホルダーによって保持された構成が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-046022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、上述したようなワイヤレスで急速充電するアプリケーションの領域が拡大し、携帯電話(スマートフォン)等、小型電子機器への適用が期待されており、また、これらのアプリケーションにおける電池について、さらなる小型化や軽量化が期待されている。また、ジャイロセンサ等の磁気を利用する小型電子機器も盛んに利用されるようになっている。一方、上記のようなワイヤレス充電機能やジャイロセンサ機能を各種小型電子機器に適用するにあたっては、電池に対する磁場の影響を最小限に抑制する必要がある。例えば、特許文献1に記載の電池ユニットにおいては、電池に対する磁場の影響を抑制するための防磁シートが備えられている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された電池ユニットは、金属材料が用いられた外装缶を有するコイン形状の電池を使用し、さらに、上記のような防磁シートを備えた構成なので、各部材の重量が大きくなるとともに、部品点数も多くなる。このため、特許文献1に記載の技術では、電池の重量、ひいては電池が内蔵される各種小型電子機器の重量が大きくなるという問題がある。また、特許文献1に記載の電池ユニットは、防磁シートを備えることで部品点数が多くなることから、部品増加に伴うコストアップ、並びに、工程の増加によるコストアップが乗じるという問題もあった。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、部品点数を増加させることなく、シンプルな構成で磁場の影響を効果的に抑制でき、生産性に優れるとともに、小型且つ軽量であって安価な構成で急速充電が可能な電気化学セル、及び、それが用いられてなる電気化学セルモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意実験検討を積み重ねた。この結果、電極板として、非磁性金属であるオーステナイト系ステンレス鋼を用い、さらに、この表面にNiメッキを施すことで、防磁シート等のような別部材を用いることなく、磁場の影響を効果的に抑制できることを知見した。これにより、電気化学セルを、例えば、ジャイロセンサを用いるスマートウォッチや、ワイヤレス充電機能を有するスマートフォン等の小型電子機器に内蔵した場合であっても、磁場の大きな影響を受けることなく優れたセル特性を発揮できることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、本発明の電気化学セルは、アルミニウム集電体上に正極活物質が固定された正極電極と、銅集電体上に負極活物質が固定された負極電極とが積層されてなる電極体と、アルミニウム薄膜と樹脂薄膜とが積層されたラミネートフィルムからなる、有底筒状とされた第1部材及び第2部材が重ね合わせられ、前記第1部材と前記第2部材とで内部が密封されることで、前記電極体を収容する収容部が内部に形成された、外周部及び底部を有する偏平円筒状の外装体と、を備え、さらに、前記外装体の前記底部を貫通して設けられる開口部を塞ぐように配置されるとともに、前記開口部を封止するように溶着され、前記電極体と電気的に接続する一対の電極板を有し、前記一対の電極板が、少なくとも一方の面がNiメッキされたオーステナイト系ステンレス鋼板からなることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、上記のように、一対の電極板が、少なくとも一方の面がNiメッキされたオーステナイト系ステンレス鋼板からなり、電極板全体が非磁性金属を含む構成であることで、電気化学セル内部への磁場の影響を効果的に抑制できる。これにより、セル構造を磁場から遮蔽する防磁シートのような磁気シールド部材を用いる必要がないので、部品点数を削減することができる。また、外装体のサイズに対して大きな内容積を確保することができるとともに、小型化及び軽量化を図ることが可能となる。加えて、電極板の少なくとも一方の面がNiメッキされていることで、発熱等の磁場による影響を抑制しつつ、電極板と外部機器との間の接触抵抗を低減できるので、電極体の構成と合わせて、低抵抗で急速充電が可能なセルを構成することが可能になる。
また、上記構成を採用することで、本発明に係る電気化学セルを、例えば、ジャイロセンサを用いるスマートウォッチや、ワイヤレス充電機能を有するスマートフォン等のような、磁場を発生する小型電子機器に適用することも可能となる。
【0012】
また、上記構成の電気化学セルにおいて、前記一対の電極板は、少なくとも前記外装体側に配置される面に前記Niメッキが施されている構成を採用してもよい。
【0013】
本発明によれば、電極板における外装体側の面にNiメッキが施されていることで、上記同様、電極板と外部機器との間の接触抵抗を低減できるとともに、内部に収容された電解液にNiメッキ成分が溶出するのを防止できる。これにより、電極体の構成と合わせて、低抵抗で急速充電が可能なセルを構成できるとともに、長期間にわたって使用した場合であっても、優れたセル特性を維持することが可能となる。
【0014】
また、上記構成の電気化学セルにおいて、前記一対の電極板が正極板及び負極板からなり、前記正極板は、前記外装体側に配置される片面に前記Niメッキが施されており、前記負極板は、前記外装体側及び前記電極体側の両面に前記Niメッキが施されていることがより好ましい。
【0015】
本発明によれば、まず、正極板における外装体側に配置された片面にNiメッキが施されていることで、電気化学セルの外部から正極板側に向かう磁場からの影響を効果的に抑制できるとともに、正極板と外部機器との間の接触抵抗を低減できるので、上記同様、電極体の構成と合わせて、低抵抗で急速充電が可能なセルを構成することが可能になる。また、正極板側から電解液に向かってNiメッキ成分が溶出することが無いので、電気化学セルを長期間にわたって使用した場合であっても、優れたセル特性を維持することが可能となる。
また、負極板における外装体側及び電極体側の両面にNiメッキが施されていることで、電気化学セルの外部から負極板側に向かう磁場からの影響をより効果的に抑制できるとともに、負極板と外部機器との間の接触抵抗を低減できるので、上記同様、電極体の構成と合わせて、低抵抗で急速充電が可能なセルを構成することが可能になる。
【0016】
また、本発明の電気化学セルモジュールは、上記のうちの何れかの本発明に係る電気化学セルを備えることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、上述した本発明に係る電気化学セルが用いられたモジュールなので、例えば、ジャイロセンサを用いるスマートウォッチや、ワイヤレス充電機能を有するスマートフォン等に、本発明に係る電気化学セルを適用して電気化学セルモジュールを構成した場合であっても、上記のモジュール要素から電気化学セル内部に磁場の影響が及ぶのが抑制される。また、本発明に係る電気化学セルを用いることで、低抵抗で急速充電が可能になるとともに、電気化学セルモジュール全体の小型化及び軽量化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の電気化学セルによれば、上記構成により、電気化学セル内部への磁場の影響を効果的に抑制でき、防磁シートのような磁気シールド部材を別途用いる必要がないので、部品点数を削減することができ、生産性も高められる。また、外装体のサイズに対して大きな内容積を確保することができるとともに、小型化及び軽量化、並びにコストダウンを図ることが可能となる。さらに、電極板に施されたNiメッキにより、発熱等の磁場による影響を抑制しつつ、電極板と外部機器との間の接触抵抗を低減できるので、電極体の構成と合わせて、低抵抗で急速充電が可能なセルを構成することが可能になる。
【0019】
また、本発明の電気化学セルモジュールによれば、上述した本発明に係る電気化学セルが用いられたモジュールなので、例えば、ジャイロセンサ機能やワイヤレス充電機能を有する小型電子機器に本発明に係る電気化学セルを適用して電気化学セルモジュールを構成することで、電気化学セル内部に磁場の影響が及ぶのが抑制される。また、低抵抗で急速充電が可能になるとともに、電気化学セルモジュール全体の小型化及び軽量化、並びにコストダウンを図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明に係る電気化学セルの実施形態であるボタン型のリチウムイオン二次電池を模式的に説明する図であり、電池全体を示す斜視図である。
図2図2は、本発明に係る電気化学セルの実施形態であるボタン型のリチウムイオン二次電池を模式的に説明する図であり、図1に示すボタン型電池の断面図である。
図3A図3Aは、本発明に係る電気化学セルの実施形態であるボタン型のリチウムイオン二次電池を製造する方法について模式的に説明する図であり、外装体を成形加工して図1及び図2に示すボタン型のリチウムイオン二次電池を得る前の状態を斜め上方からみた斜視図である。
図3B図3Bは、本発明に係る電気化学セルの実施形態であるボタン型のリチウムイオン二次電池を製造する方法について模式的に説明する図であり、外装体を成形加工して図1及び図2に示すボタン型のリチウムイオン二次電池を得る前の状態を斜め下方からみた斜視図である。
図4A図4Aは、本発明に係る電気化学セルの実施形態であるボタン型のリチウムイオン二次電池を製造する方法について模式的に説明する図であり、外装体を成形する前の電気化学セルを成形型に配置した状態を示す断面図である。
図4B図4Bは、本発明に係る電気化学セルの実施形態であるボタン型のリチウムイオン二次電池を製造する方法について模式的に説明する図であり、外装体を成形する前の電気化学セルを成形型で固定した状態を示す断面図である。
図5A図5Aは、本発明に係る電気化学セルの実施形態であるボタン型のリチウムイオン二次電池を製造する方法について模式的に説明する図であり、外装体を成形する前の電気化学セルに対してパンチを移動する状態を示す断面図である。
図5B図5Bは、本発明に係る電気化学セルの実施形態であるボタン型のリチウムイオン二次電池を製造する方法について模式的に説明する図であり、外装体を成形した状態を示す断面図である。
図6図6は、本発明に係る電気化学セルの実施形態であるボタン型のリチウムイオン二次電池を製造する方法について模式的に説明する図であり、外装体を成形して得られた電気化学セルを成形型から取り出した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る電気化学セル及びそれを用いた電気化学セルモジュールの実施形態を挙げ、その構成について図1図6を参照しながら詳述する。
なお、以下に説明する実施形態においては、円柱状に形成されたボタン形、コイン形又はシリンダ形の電気化学セルの実施形態として、非水電解質二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池を例に挙げて説明する。
本発明で説明するリチウムイオン二次電池とは、具体的には、密封された容器状の外装体の内部に、一対の正極電極及び負極電極からなる電極体と、この電極体と電気的に接続された一対の電極板と、電極体に含浸された非水電解質とを含む構成の電池である。
【0022】
本実施形態のリチウムイオン二次電池(以下、単に「二次電池」と略称する場合がある。)は、正極電極と負極電極の一方から他方へリチウムイオンが移動することで、電荷を蓄積(充電)したり電荷を放出(放電)したりすることができるものである。
【0023】
また、本発明に係る電気化学セルは、本実施形態において説明するリチウムイオン二次電池の他、電気二重層キャパシタや、リチウムイオンキャパシタ等のキャパシタにも適用可能なものである。
【0024】
また、本発明に係る電気化学セルモジュールは、本実施形態の電気化学セルである二次電池が用いられてなるものであり、例えば、ジャイロセンサを用いるスマートウォッチや、ワイヤレス充電機能を有するスマートフォン等のような、磁場を発生する小型電子機器の他、種々の小型電子機器が挙げられる。
【0025】
<電気化学セル>
[電気化学セルの構成]
図1~3は、本発明に係る電気化学セルの実施形態であるリチウムイオン二次電池1について説明する図であり、図1は二次電池1の全体を示す斜視図、図2は断面図である。
【0026】
図1及び図2に示すように、本実施形態の二次電池1は、所謂ボタン(コイン)型の電池である。この二次電池1は、電極体2と、電極体2と電気的に接続された一対の電極板(図2中に示す正極板39及び負極板26を参照)と、電極体2に含浸される図示略の電解質溶液と、電極体2が収容された外装体10とを備え、概略構成されている。
【0027】
また、本実施形態の二次電池1は、外装体10の底部(図1又は図2中に示す第1底壁部21及び第2底壁部31を参照)を貫通して設けられる開口部(図1又は図2中に示す第1貫通孔23及び第2貫通孔35を参照)を塞ぐように配置されるとともに、上記の開口部を封止するように溶着され、電極体2と電気的に接続する一対の電極板(図1又は図2中に示す正極板39及び負極板26を参照)を有する。
そして、本実施形態の二次電池1は、上述した一対の電極板が、少なくとも一方の面がNiメッキされたオーステナイト系ステンレス鋼板からなる。
【0028】
電極体2は、負極電極3及び正極電極4を備えている。図2中に示すように、負極電極3は、つづら折り形状に折り畳まれている。また、正極電極4も、負極電極3と交互に積層されるように、負極電極3と交差する方向でつづら折り形状に折り畳まれている。即ち、電極体2は、負極電極3と正極電極4とが交互に積層するように折り畳まれて捲回された、積層タイプの電極体である。
【0029】
本実施形態の二次電池1に備えられる電極体2は、例えば、アルミニウム集電体上に正極活物質が固定された正極電極4と、銅集電体上に負極活物質が固定された負極電極3とが積層されてなるものである。
また、図2等においては図示を省略しているが、負極電極3と正極電極4との間にはセパレータが介装されている。これにより、電極体2は、負極電極3と、図示略のセパレータと、正極電極4とが、この順で積層されてなる。
【0030】
本実施形態の二次電池1において、電極体2を構成する負極電極3としては、特に限定されないが、例えば、シリコンやシリコン酸化物、グラファイト、ハードカーボン、チタン酸リチウム等の単体又は混合物である負極活物質と、導電助材(例えば、アセチレンブラック等)、バインダ(例えば、ポリフッ化ビニリデンやスチレンブタジエンゴム(SBR)のディスパージョン等)、及び増粘剤(例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)等)を含むものを用いることができる。
また、正極電極4としても、特に限定されないが、例えば、コバルト酸リチウムやチタン酸リチウム、マンガン酸リチウム等のような、リチウムと遷移金属とを含む複合酸化物等の正極活物質に加え、導電助剤(例えば、アセチレンブラック等)、及びバインダ(例えば、ポリフッ化ビニリデン等)を含むものを用いることができる。
さらに、これら負極電極3及び正極電極4に含浸される図視略の電解質溶液としても、特に限定されないが、例えば、支持塩を有機溶媒等の非水溶媒に溶解させた電解液を用いることができ、その組成としても、電解液に求められる耐熱性や粘度等を勘案しながら適宜採用できる。
【0031】
図示略のセパレータとしても、特に限定されず、例えば、大きなイオン透過度を有するとともに耐熱性に優れ、かつ、所定の機械的強度を有する絶縁膜が用いられる。このようなセパレータとしては、例えば、ポリオレフィン製の樹脂ポーラスフィルムやガラス製不織布、樹脂製不織布、又はセルロース繊維の積層体等から形成されたものを用いることができる。
【0032】
なお、本実施形態においては、電極体2に用いられるセパレータとして、上述したように、負極電極3と正極電極4との間に図示略のセパレータを配置した構成の他、例えば、正極電極4の表面全体がセパレータで覆われた構成を採用してもよい。このような構成を採用した場合であっても、負極電極3と正極電極4との間にセパレータが均一に配置されるので、セパレータとしての十分な機能が得られる。
【0033】
一対の電極板は、上述したように、正極板39及び負極板26から構成される。図示例においては、正極板39が、収容部12内における第2容器18の第2底壁部31側に配置され、負極板26が、収容部12内における第1容器17の第1底壁部21側に配置されている。正極板39及び負極板26は、上述したように、少なくとも一方の面がNiメッキされたオーステナイト系ステンレス鋼板からなる。本実施形態では、正極板39が、正極電極4における一方の端部付近と電気的に接続されているとともに、負極板26が、負極電極3における一方の端部付近と電気的に接続されており、これら正極板39及び負極板26によって電極体2から集電することが可能な構成とされている。
【0034】
正極板39及び負極板26は、上記のように、非磁性鋼であるオーステナイト系ステンレス鋼板からなる。より具体的には、正極板39として、例えば、SUS316Lを用い、負極板26として、例えば、SUS304を用いる。このように、正極板39及び負極板26の材質に、非磁性鋼であるオーステナイト系ステンレス鋼板を用い、これら電極板全体を非磁性金属から構成することで、二次電池1内部への磁場の影響を効果的に抑制できる。これにより、電池構造を磁場から遮蔽する防磁シートのような磁気シールド部材を用いる必要がないので、部品点数を削減することが可能となり、生産性も高められる。また、外装体10のサイズに対して大きな内容積を確保することができるとともに、二次電池1全体の小型化及び軽量化、並びにコストダウンを図ることが可能となる。
【0035】
また、正極板39及び負極板26における少なくとも一方の面がNiメッキされていることで、発熱等の磁場による影響を抑制しつつ、正極板39及び負極板26と外部機器との間の接触抵抗を低減できる。これにより、上述した電極体2の構成と合わせて、低抵抗で急速充電が可能な二次電池1を構成することが可能になる。
【0036】
さらに、正極板39及び負極板26における少なくとも一方の面がNiメッキされていることで、従来の二次電池に設けられていたニッケルプレート等のような、外部機器と接続するための端子部材を省略できる。これにより、二次電池1のさらなる小型化及び軽量化、並びにコストダウンを図ることが可能となる。
【0037】
本実施形態の二次電池1によれば、上記構成の正極板39及び負極板26からなる一対の電極板を備えることで、この二次電池1を、例えば、ジャイロセンサを用いるスマートウォッチや、ワイヤレス充電機能を有するスマートフォン等のような、磁場を発生する小型電子機器に適用することが可能となる。
【0038】
なお、本実施形態においては、一対の電極板を構成する正極板39及び負極板26が、少なくとも外装体10側に配置される面、即ち、第2底壁部31又は第1底壁部21側に配置される面にNiメッキが施されている構成を採用してもよい。このように、正極板39及び負極板26における外装体10側の面にNiメッキが施されていることで、正極板39及び負極板26と外部機器との間の接触抵抗を低減できるとともに、内部に収容された図示略の電解液にNiメッキ成分が溶出するのを防止できる。これにより、電極体2の構成と合わせて、低抵抗で急速充電が可能な二次電池1を構成できるとともに、長期間にわたって使用した場合であっても、優れたセル特性を維持することが可能となる。
【0039】
また、本実施形態においては、一対の電極板のうち、正極板39における、外装体10側に配置される片面にNiメッキが施され、負極板26における、外装体10側及び電極体2側の両面にNiメッキが施されていることがより好ましい。
【0040】
このように、まず、正極板39における外装体10側に配置された片面にNiメッキが施されていることで、二次電池1の外部から正極板39側に向かう磁場からの影響を効果的に抑制できるとともに、正極板39と外部機器との間の接触抵抗を低減できる。これにより、電極体2の構成と合わせて、低抵抗で急速充電が可能な二次電池1を構成することが可能になる。また、正極板39側から電解液に向かってNiメッキ成分が溶出することが無いので、二次電池1を長期間にわたって使用した場合であっても、優れた電池特性を維持することが可能となる。
【0041】
また、負極板26における外装体10側及び電極体2側の両面にNiメッキが施されていることで、正極板39と同様に、二次電池1の外部から負極側に向かう磁場からの影響を効果的に抑制できる。これとともに、負極板26と外部機器との間の接触抵抗をより低減できるので、上記同様、電極体2の構成と合わせて、低抵抗で急速充電が可能な二次電池1を構成することが可能になる。
【0042】
ここで、図2に示す例においては、正極板39が、その両面側から一対の第2シーラントリング37,37によって狭持されており、負極板26が、その両面側から一対の第1シーラントリング24,24に狭持されている。即ち、正極板39は、一方の第2シーラントリング37を介して第2容器18の第2底壁部31に接しており、負極板26は、一方の第1シーラントリング24を介して第1容器17の第1底壁部21に接している。
【0043】
第1シーラントリング24は、ポリオレフィンのポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を用いて形成された、シーラントフィルムをリング状に加工したものであり、例えば、不織布とポリプロピレンとが積層されたフィルムが用いられる。また、第1シーラントリング24には、中心軸Oと同軸に形成された貫通孔24bが設けられている。これにより、負極板26における平面視で概略中央付近が貫通孔24bから露出するので、負極板26の一方の面における貫通孔24bからの露出部が、第1容器17の第1底壁部21に形成される後述の第1貫通孔(開口部)23から露出して、二次電池1における負極側の外部電極端子として機能し、外部機器と電気的に接続可能に構成される。また、負極板26の他方の面における第1シーラントリング24の貫通孔24bからの露出部は、電極体2を構成する負極電極3の端部付近と電気的に接続される。
【0044】
また、第2シーラントリング37も、第1シーラントリング24と同様に、熱可塑性樹脂によってリング状に形成されており、例えば、不織布とポリプロピレンとが積層されたフィルムが用いられる。また、第2シーラントリング37にも、第1シーラントリング24と同様、中心軸Oと同軸に形成された貫通孔37bが設けられている。これにより、正極板39における平面視で概略中央付近が貫通孔37bから露出するので、正極板39の一方の面における貫通孔37bからの露出部が、第2容器18の第2底壁部31に形成される後述の第2貫通孔(開口部)35から露出して、二次電池1における正極側の外部電極端子として機能し、外部機器と電気的に接続可能に構成される。また、正極板39の他方の面における第2シーラントリング37の貫通孔37bからの露出部は、電極体2を構成する正極電極4の端部付近と電気的に接続される。
【0045】
外装体10は、電極体2が収容される収容部12と、収容部12の外周12aに沿って折り曲げられた封止部15とを有する。封止部15は、絞り成形によって収容部12の外周12aに沿って折り曲げられている。本実施形態の二次電池1を構成する外装体10は、外周(外周部)12a及び底部(図1又は図2中に示す第1底壁部21及び第2底壁部31を参照)を有した偏平円筒状に構成されている。
【0046】
また、外装体10は、有底筒状の第1容器(第1部材)17と、有底筒状の第2容器(第2部材)18とを備え、これらが重ね合わせられて内部が密封されることで、上述した電極体2が収容される収容部12が形成されている。第1容器17及び第2容器18は、それぞれの中心軸が同軸となるように配置されている。以下の説明においては、第1容器17及び第2容器18の中心軸を中心軸Oとし、中心軸Oに沿う方向を軸方向といい、中心軸Oに直交する方向を径方向という。なお、中心軸Oは収容部12の中心軸となる。
【0047】
第1容器17は、例えば、ラミネート部材(ラミネートフィルム)によって形成された容器状部材である。詳細な図示は省略するが、第1容器17を構成するラミネート部材は、例えば、金属シートと、第1容器17における内面側に配置される樹脂薄膜からなる融着層と、外側面を構成する樹脂薄膜からなる保護層とが積層されたものである。
金属シートは、例えば、アルミニウム薄膜やステンレス材料等を用いて形成される。
融着層は、例えば、ポリオレフィンのポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂からなる樹脂薄膜を用いて形成される。ポリオレフィンとしては、例えば、高圧法低密度ポリエチレンや低圧法高密度ポリエチレン、インフレーションポリプロピレンフィルム、無延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、直鎖状短鎖分岐ポリエチレン等の材質が挙げられる。
保護層は、上述のポリオレフィンや、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ナイロン等からなる樹脂薄膜を用いて形成される。
融着層及び保護層は、それぞれ、金属シートとの間に接合層を介して、熱融着又は接着剤によって接合される。
即ち、本実施形態においては、第1容器17に用いるラミネート部材として、例えば、アルミニウム薄膜からなる金属シートを用い、このアルミニウム薄膜の各々の面に、ポリエチレンからなる融着層及びナイロンからなる保護層が、それぞれ接合層を介して接合されたものを用いることができる。
【0048】
第1容器17は、第1底壁部(底部)21及び第1周壁部(外周部)22を有する。第1底壁部21には、中心軸Oと同軸に形成された第1貫通孔(開口部)23が設けられている。上述したように、第1貫通孔23からは、第1シーラントリング24の貫通孔24bを介して負極板26の平面視略中央部付近が露出し、負極側の外部電極端子として機能する。
【0049】
第2容器18は、第1容器17と同様に、例えば、ラミネート部材によって形成された容器状部材である。詳細な図示は省略するが、第2容器18を構成するラミネート部材は、第1容器17と同様、金属シートと、第2容器18内面側に配置される樹脂薄膜からなる融着層と、外側面を構成する樹脂薄膜からなる保護層とが積層されたものである。
金属シートは、第1容器17における金属シートと同じ金属材料を用いて形成される。
融着層は、第1容器17における融着層と同じ熱可塑性樹脂を用いて形成される。
保護層は、第1容器17における保護層と同じ熱可塑性樹脂を用いて形成される。
即ち、第2容器18に用いるラミネート部材としても、第1容器17の場合と同様、例えば、アルミニウム薄膜からなる金属シートを用い、このアルミニウム薄膜の各々の面に、ポリエチレンからなる融着層及びナイロンからなる保護層が、それぞれ接合層を介して接合されたものを用いることができる。
【0050】
第2容器18は、第2底壁部(底部)31、第2周壁部(外周部)32、及び折曲部33を有する。
第2周壁部32は、収容部12の外周12aを形成する。
第2底壁部31には、中心軸Oと同軸に形成された第2貫通孔35が設けられている。
上述したように、第2貫通孔35からは、第2シーラントリング37の貫通孔37bを介して正極板39の平面視略中央部付近が露出し、正極側の外部電極端子として機能する。
【0051】
本実施形態においては、第1容器17及び第2容器18をラミネート部材とし、第1容器17及び第2容器18から露出するように正極板39及び負極板26を設けることにより、外装体10よりも外部側に端子部等を突出させる必要が無いので、二次電池1を小型に構成できる。
【0052】
第2周壁部32は、第2底壁部31の外周31aから第1容器17の第1底壁部21に向けて筒状に折り曲げられている。折曲部33は、第2周壁部32のうち、第1底壁部21側の端部32aから第2周壁部32に沿って第2底壁部31側へ円筒状に折り曲げられている。また、折曲部33は、第2周壁部32に対して径方向外側に間隔をおいて配置されている。図2に示す例では、折曲部33及び第2周壁部32は、断面U字状に形成されている。
【0053】
第2周壁部32は、第1周壁部22の内側で、且つ、折曲部33の内側に配置されている。また、折曲部33は、第1周壁部22の内側に配置されている。そして、折曲部33の融着層18aと第1周壁部22の融着層とは熱融着されている。
【0054】
折曲部33の融着層18aと第1周壁部22の融着層とが熱融着されることにより、封止部15が形成される。即ち、収容部12の外周が封止部15で封止されることにより、第1容器17及び第2容器18が重ね合わされて外装体10が形成される。
折曲部33の融着層18aと第1周壁部22の融着層とを熱融着する手段としては、例えば、ヒータやレーザ等の熱源を用いる熱融着が挙げられる。また、折曲部33の融着層18aと第1周壁部22との融着層とは、熱融着の他、例えば、超音波溶接等を用いて融着することが可能である。
【0055】
封止部15は、収容部12の外側に円筒状に形成され、且つ、収容部12の外周12aに沿って折り曲げられている。収容部12の外周12aは、第2周壁部32によって形成される。また、封止部15は、平面視で円形に形成され、湾曲した曲部を有する。
【0056】
封止部15を収容部12の外周12aに沿って折り曲げることにより、封止部15を収容部12の外周12aに近づけることができる。この場合、封止部15は、収容部12の中心軸Oに対して直交する方向への張出が小さく抑えられる。これにより、特に、小形の二次電池1において、体積当たりの容量を高めることが可能になる。
【0057】
また、封止部15は、例えば、絞り成形等の方法によって収容部12の外周12aに沿って折り曲げられる。これにより、封止部15は、第1容器17及び第2容器18の他の部位に比べて薄肉に形成されるので、収容部12の中心軸Oに対して直交する方向への封止部15の張出が一層小さく抑えられる。
【0058】
また、第1容器17及び第2容器18との間の融着層を薄肉に形成した場合には、第1容器17及び第2容器18の金属シート間の隙間を小さく抑制できるので、密封性が高められ、封止部15から外装体10の内部に水が浸入するのをより効果的に抑制できる。これにより、小型サイズで充分な放電容量を得ることが可能になる。
【0059】
収容部12は、第1容器17と第2容器18とが重ね合されることにより、密封空間として形成される。具体的には、収容部12は、第1底壁部21、第2底壁部31、及び第2周壁部32によって形成されている。本実施形態の二次電池1においては、このような収容部12内に、上述した電極体2、負極板26及び正極板39、及び電解液等の全ての電池要素が収容される。
【0060】
上記構成を有する本実施形態の二次電池1によれば、一対の電極板を構成する正極板39及び負極板26が、少なくとも一方の面がNiメッキされたオーステナイト系ステンレス鋼板からなり、電極板全体が非磁性金属から構成されていることで、上述したように、二次電池1の内部への磁場の影響を効果的に抑制できる効果が得られる。これにより、まず、電池構造を磁場から遮蔽する磁気シールド部材が不要となり、部品点数の削減が可能となる。また、外装体10のサイズに対して大きな内容積を確保することができるとともに、電池全体の小型化及び軽量化、並びにコストダウンを図ることが可能となる。
【0061】
さらに、正極板39及び負極板26における少なくとも一方の面がNiメッキされていることで、発熱等の磁場による影響を抑制しつつ、正極板39及び負極板26の各々と外部機器との間の接触抵抗を低減できる。これにより、上述したような電極体2の構成と合わせて、低抵抗で急速充電が可能なセルを構成することが可能になる。これにより、例えば、ジャイロセンサを用いるスマートウォッチや、ワイヤレス充電機能を有するスマートフォン等の小型電子機器に本実施形態の二次電池1を内蔵した場合であっても、磁場の大きな影響を受けることなく優れた電池特性を発揮できる。
【0062】
また、本実施形態の二次電池1においては、第1容器17の第1底壁部21に第1貫通孔23が設けられ、第1シーラントリング24にも第1貫通孔23と同軸に形成された貫通孔24bが設けられていることで、外部電極端子を構成する負極板26を外部に露出させている。また、第2容器18の第2底壁部31に第2貫通孔35が設けられ、第2シーラントリング37にも第2貫通孔35と同軸に形成された貫通孔37bが設けられていることで、外部電極端子を構成する正極板39を外部に露出させている。このような構成を採用することで、第1シーラントリング24及び第2シーラントリング37の何れにも位置ずれ等が生じることなく、負極板26及び正極板39と外部との電気的接続を確実に維持できる。
【0063】
なお、本発明に係る電気化学セルは、上述したように、上記構成を備えるリチウムイオン二次電池1に限定されるものではない。本実施形態のリチウムイオン二次電池(電気化学セル)に係る構成は、例えば、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等のキャパシタにも適用可能である。
【0064】
[電気化学セルの製造方法]
次に、本発明の電気化学セルの一実施形態であるリチウムイオン二次電池1を製造する方法について、図3A及び図3B図6を参照しながら説明する(図1及び図2も適宜参照)。
【0065】
図3A及び図3B図6は、図1に示したリチウムイオン二次電池1を製造する方法について説明する図であり、図3Aは、外装体10を成形加工して図1及び図2に示すボタン型の二次電池1を得る前の状態を斜め上方からみた斜視図で、図3Bは斜め下方からみた斜視図である。また、図4Aは、外装体10を成形する前の半製品である二次電池1を成形型50に配置した状態を示す断面図であり、図4Bは、外装体10を成形する前の二次電池1を成形型50に配置に固定した状態を示す断面図である。また、図5Aは、外装体10を成形する前の二次電池1に対してパンチ56を移動する状態を示す断面図であり、図5Bは、外装体10を成形した状態を示す断面図である。また、図6は、外装体10を成形して得られた二次電池1を成形型50から取り出した状態を示す断面図である。
【0066】
なお、以下の説明においては、成形前の第1容器17を第1容器素材17A、成形前の第2容器18を第2容器素材18Aとして説明する。
【0067】
本実施形態の二次電池1は、少なくとも、以下に示すような「(1)封止工程」、「(2)固定工程」、「(3)成型工程」及び「(4)切断工程」を備える方法によって製造することが可能である。
【0068】
(1)封止工程
図3A及び図3Bに示すように、封止工程においては、まず、第1容器素材17Aの内面における第1底壁部21に、例えば溶接等の方法により、第1シーラントリング24を介して負極板26を溶着する。
また、第2容器素材18Aの内面における第2底壁部31に、上記同様、溶接等の方法により、第2シーラントリング37を介して正極板39を溶着する。
【0069】
次いで、負極板26上に、さらに、第1シーラントリング24を積層し、一対の第1シーラントリング24によって負極板26を狭持した状態とする。
また、正極板39上に、さらに、第2シーラントリング37を積層し、一対の第2シーラントリング37によって正極板39を狭持した状態とする。
【0070】
次いで、第2容器素材18Aの収容部12に電極体2及び図示略の電解液を収容した後、第2容器素材18Aに第1容器素材17Aを重ね合わせる。この際、電極体2を構成する正極電極4と正極板39とを重ね合わせるとともに、負極電極3と負極板26とを重ね合わせることで、正極板39及び負極板26と一対の電極板との間を電気的に接続する。
次いで、第1容器素材17Aの第1フランジ44と、第2容器素材18Aの第2フランジ45とを熱融着して封止する。このとき、封止された熱融着部46が環状に形成される。
【0071】
(2)固定工程
図4Aに示すように、固定工程においては、まず、第1容器素材17A及び第2容器素材18Aを組み付けた状態のワークを成形型50に配置する。具体的には、熱融着部46の外周縁46aを、成形型50を構成する下型51の載置部51aに載置する。この際、第1容器素材17Aは、成形型50を構成する上型52側に向けられる。また、熱融着部46は、下型51の下貫通孔53と同軸上に配置される。
【0072】
次いで、図4Bに示すように、固定工程においては、下型51の載置部51a及び上型52の押圧部52aにより、熱融着部46の外周縁46aを挟み込んで固定する。熱融着部46は、下型51の下貫通孔53、及び、上型52の上貫通孔54に対して同軸上に配置される。下貫通孔53及び上貫通孔54は、内径寸法が同一に形成されている。
【0073】
(3)成形工程
次いで、図5Aに示すように、成形工程において、パンチ56を、図中に示した矢印の方向で上昇させる。パンチ56は、下貫通孔53に嵌合可能に形成されたベース57と、ベース57の上部に形成された環状の成形部58とを有する。成形部58の外径寸法は、下貫通孔53及び上貫通孔54の内径寸法よりも小さな寸法とされている。また、下貫通孔53と成形部58との間には間隙が確保される。これと同様に、上貫通孔54と成形部58との間には間隙が確保される(図5Bを参照)。
【0074】
成形工程においては、パンチ56を上昇させて下貫通孔53に嵌合させ、成形部58を熱融着部46の外周縁46aの近傍46bに当接させる。
【0075】
次いで、図5Bに示すように、成形工程においては、パンチ56を、図中に示した矢印の方向で継続して上昇させ、成形部58で外周縁46aの近傍46bを持ち上げる。これにより、上貫通孔54の内面と成形部58の外面とで、熱融着部46の他の部位46cを円筒状に絞り成形する。また、熱融着部46の他の部位46cが収容部12の外周12aに沿って折り曲げられ、封止部15が形成される。
ここで、上述した熱融着部46の他の部位46cとは、熱融着部46の外周縁46aを含まない部位である。
【0076】
(4)切断工程
次いで、切断工程において、熱融着部46を絞り成形した後、パンチ56を図中に示した矢印の方向で継続して上昇させ、ベース57の上端57aを上貫通孔54まで到達させる。
次いで、ベース57の上端57a及び上貫通孔54の下縁54aで、絞り成形した封止部15から余剰の外周縁46aを切断する。この際、収容部12が封止部15で封止される。これにより、外装体10の封止部15が収容部12の外周12aに沿って成形され、二次電池1が得られる。
【0077】
次いで、図6中に示すように、製造された二次電池1を上貫通孔54から取り出す。図示例の二次電池1は、封止部15が収容部12の外周12aに沿って折り曲げられているので、封止部15を収容部12の外周12aに近づけることができる。また、封止部15は、収容部12の中心軸Oに対して直交する方向への張出が小さく抑えられている。これにより、特に、小型の二次電池において、二次電池の体積当たりの容量を高めることが可能となる。
【0078】
また、本実施形態で説明する製造方法によれば、熱融着部46の外周縁46aを切断することにより、収容部12の中心軸Oに対して直交する方向への張出をより一層小さく抑制することができる。
さらに、上述した方法では、封止部15を成形型50で絞り成形した後、切断工程において、成形型50を使用して封止部15から外周縁46aを切断する方法を採用している。これにより、封止部15を絞り成形した後、切断工程において、封止部15から外周縁46aを迅速に切断でき、二次電池1の生産性を高めることが可能となる。
【0079】
なお、本実施形態で説明した方法においては、成形型50を使用して、封止部15から外周縁46aを切断する例を説明しているが、これには限定されない。例えば、封止部15を絞り成形した後、外装体10の成形後の二次電池1を成形型50から取り出し、成形型50とは別の切断装置で封止部15から外周縁46aを切断する方法を採用することも可能である。このような方法を採用することにより、外周縁46aを切断するのに最適な切断装置を選択でき、選択した切断装置を用いて、封止部15から外周縁46aを最適な方法並びに条件で切断できる。このような切断装置としては、例えば、回転可能なカッタを有する装置の他、レーザを用いた装置等が挙げられる。
【0080】
<その他の形態>
本発明に係る電気化学セルは、上記各実施形態に示したリチウムイオン二次電池の構成に限定されるものではなく、さらに、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0081】
例えば、上記の実施形態においては、負極電極3と正極電極4とが互い違いに積層するように折り畳まれた積層タイプの電極体2を収容部12に収容した例について説明したが、これに限定されるものではない。本発明において用いられる電極体としては、例えば、捲回タイプやペレットタイプのものも挙げることができ、何ら制限無く採用することが可能である。
【0082】
ここで、捲回タイプの電極体とは、負極電極3と正極電極4とが共に捲回されたものである。また、ペレットタイプの電極体とは、セパレータの両側に負極電極3と正極電極4とを備えたものである。セパレータとしては、例えば、大きなイオン透過度を有するとともに耐熱性に優れ、かつ、所定の機械的強度を有する絶縁膜が用いられ、例えば、ポリプロピレン樹脂のような多孔性高分子材料からなるものが挙げられる。
【0083】
また、本実施形態においては、第1容器17及び第2容器18の両方をラミネート部材から構成した例を説明しているが、例えば、第1容器17及び第2容器18のうちの何れか一方のみをラミネート部材から構成し、他方をステンレス材料等の金属から構成することも可能である。このような場合においても、正極板39及び負極板26の何れもが、一対の第2シーラントリング37又は一対の第1シーラントリング24によって狭持された構成であることで、金属からなる第1容器17及び第2容器18と正極板39及び負極板26との間を確実に絶縁することが可能である。
【0084】
一方、例えば、第1容器17及び第2容器18の何れかを金属から構成し、これに対応する側の電極板を狭持する一対のシーラントリングのうち、外装体10側に配置されたシーラントリングを省略した場合には、金属から構成された側の容器を外部電極端子として使用することが可能である。
【0085】
また、例えば、第1容器17及び第2容器18の両方を金属から構成することも可能である。この場合には、例えば、折曲部33と第1周壁部22との間にプライマーを塗布した状態で、折曲部33及び第1周壁部22を熱融着する。また、正極板39及び負極板26を狭持する一対の第2シーラントリング37又は一対の第1シーラントリング24のうち、それぞれ、外装体10側に配置されたシーラントリングを省略した構成とする。このような構成を採用することにより、第1容器17を負極側の外部接続端子として使用することができるとともに、第2容器18を正極側の外部接続端子として使用することが可能となる。
【0086】
<電気化学セルモジュール>
本実施形態の電気化学セルモジュールは、上述した本実施形態の電気化学セルであるリチウムイオン二次電池1を備えるものである。
このような、本実施形態の二次電池1が適用される電気化学セルモジュールとしては、詳細な図示は省略するが、例えば、ジャイロセンサを用いるスマートウォッチや、ワイヤレス充電機能を有するスマートフォン等、種々の小型電子機器が挙げられる。
【0087】
本実施形態の電気化学セルモジュールによれば、上述した本実施形態の二次電池1のような電気化学セルが用いられたモジュールなので、上記のような、ジャイロセンサを用いるスマートウォッチや、ワイヤレス充電機能を有するスマートフォン等に内蔵した場合であっても、ジャイロセンサや充電用デバイスなどから二次電池1の内部に磁場の影響が及ぶのが抑制される。また、本実施形態の電気化学セルである二次電池1を用いることで、上述したように、低抵抗で急速充電が可能になるとともに、電気化学セルモジュール全体の小型化及び軽量化を図ることが可能となる。
【0088】
<作用効果>
以上説明したように、本発明に係る電気化学セルの実施形態であるリチウムイオン二次電池1によれば、上記構成を採用することにより、二次電池1の内部への磁場の影響を効果的に抑制でき、防磁シートのような磁気シールド部材を別途用いる必要がないので、部品点数を削減することができ、生産性も高められる。また、外装体10のサイズに対して大きな内容積を確保することができるとともに、小型化及び軽量化、並びにコストダウンを図ることが可能となる。さらに、正極板39及び負極板26の表面に施されたNiメッキにより、発熱等の磁場による影響を抑制しつつ、正極板39及び負極板26と外部機器との間の接触抵抗を低減できるので、電極体2の構成と合わせて、低抵抗で急速充電が可能な二次電池を構成することが可能になる。
【0089】
また、本実施形態の電気化学セルモジュールによれば、詳細な図示は省略しているが、上述した本発明に係る電気化学セルが用いられたモジュールである。従って、例えば、ジャイロセンサ機能やワイヤレス充電機能を有する小型電子機器に、本発明に係る電気化学セルの実施形態である二次電池1を適用して電気化学セルモジュールを構成することで、二次電池1の内部に磁場の影響が及ぶのが抑制される。また、低抵抗で急速充電が可能になるとともに、電気化学セルモジュール全体の小型化及び軽量化、並びにコストダウンを図ることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の電気化学セルによれば、上記構成を採用することで、部品点数を増加させることなく、シンプルな構成で磁場の影響を効果的に抑制でき、生産性に優れるとともに、小型且つ軽量であって安価な構成で急速充電が可能となる。従って、本発明の電気化学セルを、例えば、ジャイロセンサを用いるスマートウォッチや、ワイヤレス充電機能を有するスマートフォン等、各種小型電子機器等の分野において用いられる電気化学セルモジュールに適用することで、各種機器類の性能向上や小型化及び軽量化にも貢献できるものである。
【符号の説明】
【0091】
1…リチウムイオン二次電池(二次電池:電気化学セル)
2………電極体
3………負極電極
4………正極電極
10……外装体
17……第1容器(第1部材)
21…第1底壁部(底部)
22…第1周壁部(外周部)
23…第1貫通孔
18……第2容器(第2部材)
31…第2底壁部(底部)
32…第2周壁部(外周部)
32a…端部
35…第2貫通孔
12……収容部
12a…外周
15…封止部
17A…第1容器素材(第1容器:第1部材)
44…第1フランジ
18A…第2容器素材(第2容器:第2部材)
45…第2フランジ
46…熱融着部
46a…熱融着部の外周縁(熱融着部の一部)
46b…外周縁の近傍
46c…熱融着部の他の部位
26…負極板(一対の電極板:負極電極側)
39…正極板(一対の電極板:正極電極側)
24…第1シーラントリング(第1容器側)
24b…貫通孔
37…第2シーラントリング(第2容器側)
37b…貫通孔
O…中心軸
50…成形型
51…下型
51a…載置部
53…下貫通孔
52…上型
52a…押圧部
54…上貫通孔
54a…下縁
56…パンチ
57…ベース
57a…57a
58…成形部
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6