(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124359
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】免疫測定方法及び洗浄剤
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20230830BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20230830BHJP
G01N 33/553 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
G01N33/53 D
G01N33/543 501A
G01N33/543 541A
G01N33/553
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028084
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高橋 志郎
(72)【発明者】
【氏名】北川 隆啓
(57)【要約】
【課題】 本発明は、抗サイログロブリン抗体の干渉の影響を低減し、簡便な操作で正確なサイログロブリン量を測定可能な、サイログロブリンの免疫測定方法及び洗浄剤を提供することを目的とする。
【解決手段】 試料中のサイログロブリンの濃度を測定する免疫測定方法であって、
前記免疫測定方法が、
前記試料と固相担体(a)を混合して、前記固相担体(a)とサイログロブリンとの複合体(J1)を含有する混合物を得た後、洗浄剤(C)で前記複合体(J1)を洗浄する工程等を含み、
前記固相担体(a)が、特定の粒子径の超常磁性金属酸化物を60~95重量%含有する磁性粒子であり、
前記洗浄剤(C)が、アルカリ金属のハロゲン化物及び/又はアルカリ土類金属のハロゲン化物並びにノニオン性界面活性剤を特定の濃度で含有し、
前記洗浄剤(C)のpHが6.5~8.0である免疫測定方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中のサイログロブリンの濃度を測定する免疫測定方法であって、
前記免疫測定方法が、
前記試料と固相担体(a)を混合して、前記固相担体(a)とサイログロブリンとの複合体(J1)を含有する混合物を得た後、洗浄剤(C)で前記複合体(J1)を洗浄する工程、及び、
前記複合体(J1)と、標識物質(b)により標識された物質であってサイログロブリンと特異的に結合する物質(F)とを混合し、固相担体(a)とサイログロブリンと物質(F)との複合体(J2)を得る工程をこの順序で含み、
前記固相担体(a)が、体積平均粒子径が1~20nmの超常磁性金属酸化物を含有する磁性粒子であり、
前記超常磁性金属酸化物の重量割合が、前記固相担体(a)の重量を基準として60~95重量%であり、
前記洗浄剤(C)が、アルカリ金属のハロゲン化物及び/又はアルカリ土類金属のハロゲン化物並びにノニオン性界面活性剤を含有し、
前記アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物の合計重量の割合が、前記洗浄剤(C)の重量を基準として、0.010~0.50重量%であり、
前記ノニオン性界面活性剤の重量割合が、前記洗浄剤(C)の重量を基準として、0.001~1重量%であり、
前記洗浄剤(C)のpHが6.5~8.0である免疫測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の免疫測定方法に用いられる洗浄剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫測定方法及び洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
サイログロブリン(以降、「Tg」と略記することがある)は、甲状腺濾胞細胞のみでつくられる分子量66万の糖蛋白である。生合成されたTgは濾胞腔へ放出される。この経過中に、ペルオキシダーゼの作用によって、Tg分子中のチロシン基にヨード分子が結合して、甲状腺ホルモンの合成が行われる。濾胞腔のTgは再度濾胞細胞にとりこまれ、濾胞細胞内で分解され、甲状腺ホルモンの放出が起こる。またこの過程は、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の働きにより活性化される。
従って、正常時では、Tgそのものの血中への放出はごくわずか起こるのみであり、Tgの血中放出は甲状腺の何らかの異常を示していることが知られている。
Tgは、臓器特異性が高く、様々な甲状腺疾患に有用なマーカーとして知られている。特に、血中Tgは、甲状腺分化癌の手術後評価、及び、術後の再発・転移の有無を知るマーカーとして使用される。また、バセドウ病での治療の効果、寛解の指標、先天性甲状腺機能低下症の病型の決定等にも有用である。また、画像診断との組合せにより、結節性甲状腺腫の術前診断や良性の甲状腺疾患と悪性腫瘍とを鑑別する可能性も示唆されている。
【0003】
しかし、被験者が抗サイログロブリン抗体(以降、「TgAb」と略記することがある)陽性の場合、実際はTg濃度が高値であったとしても、測定上の問題で低値になることがある。
例えば、TgAb陽性である可能性がある甲状腺癌、橋本病及び他の自己免疫性疾患(バセドウ病)の患者の検体においては、Tgの量を正確に測定することが困難であるという問題があった。
上記の課題を解決するために、測定試料を前処理する技術が知られている(特許文献1)。
一方、測定を迅速かつ簡便に測定するために、前処理工程を実施しない測定方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、抗サイログロブリン抗体の干渉の影響を低減し、簡便な操作で正確なサイログロブリン量を測定可能な、サイログロブリンの免疫測定方法及び洗浄剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち、本発明は、
試料中のサイログロブリンの濃度を測定する免疫測定方法であって、
前記免疫測定方法が、
前記試料と固相担体(a)を混合して、前記固相担体(a)とサイログロブリンとの複合体(J1)を含有する混合物を得た後、洗浄剤(C)で前記複合体(J1)を洗浄する工程、及び、
前記複合体(J1)と、標識物質(b)により標識された物質であってサイログロブリンと特異的に結合する物質(F)とを混合し、固相担体(a)とサイログロブリンと物質(F)との複合体(J2)を得る工程をこの順序で含み、
前記固相担体(a)が、体積平均粒子径が1~20nmの超常磁性金属酸化物を含有する磁性粒子であり、
前記超常磁性金属酸化物の重量割合が、前記固相担体(a)の重量を基準として60~95重量%であり、
前記洗浄剤(C)が、アルカリ金属のハロゲン化物及び/又はアルカリ土類金属のハロゲン化物並びにノニオン性界面活性剤を含有し、
前記アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物の合計重量の割合が、前記洗浄剤(C)の重量を基準として、0.010~0.50重量%であり、
前記ノニオン性界面活性剤の重量割合が、前記洗浄剤(C)の重量を基準として、0.001~1重量%であり、
前記洗浄剤(C)のpHが6.5~8.0である免疫測定方法;前記免疫測定方法に用いられる洗浄剤である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の洗浄剤を用いる免疫測定方法は、測定対象物質が、抗サイログロブリン抗体を含有する測定試料であっても、簡便な操作で正確なサイログロブリン量を測定可能であるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、試料中のサイログロブリンの濃度を測定する免疫測定方法であって、
前記の免疫測定方法は、
前記試料と固相担体を混合して、前記固相担体(a)とサイログロブリンとの複合体(J1)を含有する混合物を得た後、洗浄剤(C)で前記複合体(J1)を洗浄する工程、及び、
前記複合体(J1)と、標識物質(b)により標識された物質であってサイログロブリンと特異的に結合する物質(F)とを混合し、固相担体(a)とサイログロブリンと物質(F)との複合体(J2)を得る工程をこの順序で含む。
【0009】
本発明の免疫測定方法は、
前記試料と固相担体(a)を混合して、前記固相担体(a)とサイログロブリンとの複合体(J1)を含有する混合物を得る工程、及び、
前記複合体(J1)と、標識物質(b)により標識された物質であってサイログロブリンと特異的に結合する物質(F)とを混合し、固相担体(a)とサイログロブリンと物質(F)との複合体(J2)を得る工程をこの順序で含む方法であり、
試料中の測定対象物質としてのサイログロブリンを定量する免疫測定方法として免疫測定の分野で一般的に行われる方法に用いることができる。
具体的には、文献[例えば、酵素免疫測定法第2版(石川栄治ら編集、医学書院)1982年]記載のサンドイッチ法等に用いることができる。
【0010】
本発明における免疫測定方法の内、固相担体(a)を含有する固相担体試薬(A)を使用し、かつ、固相担体(a)として、測定対象物質(サイログロブリン)と特異的に結合する物質(D)を有する磁性粒子(H)を使用する方法としては、具体的には以下のサンドイッチ法が含まれる。
【0011】
<サンドイッチ法>
本発明の免疫測定方法をサンドイッチ法に適用する具体例としては以下の方法が挙げられる。
即ち、測定対象物質としてのサイログロブリンを含む試料と、サイログロブリンと特異的に結合する物質(D)[サイログロブリンに対する抗体等]を有する磁性粒子(H){固相担体試薬(A)中の固相担体(a)}とを接触させて、磁性粒子(H)表面にサイログロブリンと特異的に結合する物質(D)とサイログロブリンとの複合体[即ち、固相担体(a)とサイログロブリンとの複合体(J1)]を形成させる。
その後、複合体(J1)を後に詳述する洗浄剤(C)で洗浄する。
なお、洗浄中は、磁力等により、前記の複合体(J1)を保持し、複合体(J1)の損失を防ぐことが好ましい。
その後、前記複合体(J1)に、標識物質(b)により標識された物質であってサイログロブリンと特異的に結合する物質(F){標識試薬(B)中の(F)}を接触させて、磁性粒子(H)に固定化されたサイログロブリンと特異的に結合する物質(D)と、サイログロブリンと、標識された物質であってサイログロブリンと特異的に結合する物質(F)との標識複合体[即ち、固相担体(a)とサイログロブリンと物質(F)との複合体(J2)]を形成させ、標識複合体(J2)をB/F分離して、複合体(J2)中の標識物質(b)量を測定し、その結果に基づいて試料中の測定対象物質(サイログロブリン)量が測定される。
なお、上記サンドイッチ法におけるB/F分離とは、上記複合体(J2)と、複合体(J2)の形成に関与しなかった物質(F)との分離を意味し、具体的には、複合体(J2)、複合体(J1)、及び、物質(D)を固定化した磁性粒子(H)と、他の成分[試料中のサイログロブリン以外の成分、複合体(J2)の形成に関与しなかった物質(F)等]との分離を意味する。
【0012】
本発明における洗浄剤(C)は、アルカリ金属のハロゲン化物及び/又はアルカリ土類金属のハロゲン化物並びにノニオン性界面活性剤を含有する。
【0013】
アルカリ金属のハロゲン化物として、好ましいものとしては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ヨウ化ナトリウム等が挙げられる。
アルカリ土類金属のハロゲン化物として、好ましいものとしては、塩化マグネシウム、塩化カルシウム等が挙げられる。
【0014】
洗浄剤(C)が含有するノニオン性界面活性剤としては、水溶性の非イオン界面活性剤が好ましい。
尚、水溶性とは、25℃の水100gに10g溶解することを意味する。
水溶性の非イオン界面活性剤として、具体的には、HLBが12以上(好ましくはHLBが12~16)のポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(ポリオキシエチレンオクチルエーテル等)及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪族エステル等が挙げられる。
なお、本発明において、HLB(Hydrophile-Lipophile Balance)値とは、グリフィン法[「界面活性剤入門」(2007年三洋化成工業株式会社発行、藤本武彦著)142頁に記載されているグリフィン法。なお、本願におけるHLBの計算においては、オキシプロピレン基は、親水基として扱い、計算する。]で測定できるHLB値を意味する。
抗サイログロブリン抗体の影響の低減の観点から好ましいのは、以下の一般式(1)で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテルである。
R1O-[(A1O)x/(A2O)y]-H (1)
【0015】
一般式(1)において、A1は、エチレン基である。
一般式(1)において、A2は、プロピレン基である。
一般式(1)において、R1は、炭素数8~30のアルキル基である。
一般式(1)において、xは1~50の整数である。
一般式(1)において、yは0~10の整数である。
また、一般式(1)において、[(A1O)x/(A2O)y]は、x個ある2価の基である(A1O)単位及びy個ある2価の基である(A2O)単位の結合順序が、任意であることを示す。
【0016】
前記の洗浄剤(C)が含有する前記アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物の合計重量の割合は、前記洗浄剤(C)の重量を基準として、0.010~0.50重量%である。
上記の合計重量の割合が、0.50重量%を超えると、試料中の抗サイログロブリン抗体の影響を低減できないという問題がある。
【0017】
洗浄剤(C)は、緩衝液であることが好ましく、緩衝成分を含有することが好ましい。
緩衝液としては、一般的に免疫測定の分野で用いられている、トリス緩衝液、リン酸緩衝液、ベロナール緩衝液、ホウ酸緩衝液及びグッド緩衝液等が挙げられる。
例えばリン酸緩衝液とする場合は、緩衝成分としてリン酸二水素カリウム及びリン酸水素二カリウムを使用する緩衝液が挙げられる。
洗浄剤(C)における緩衝成分の合計モル濃度は、0.1~20mMであることが好ましく、0.1~5mMであることが更に好ましい。
【0018】
洗浄剤(C)は、上記の成分以外に防腐剤及び水を含有していても良い。
防腐剤としては、メチルイソチアゾリノン、アジ化ナトリウム、5-ブロモ-5-ニトロ-1,3-ジオキサン及びイミダゾリジニルウレア等が挙げられる。
防腐剤の重量割合は、洗浄剤(C)の重量を基準として、0.05~0.5重量%であることが好ましい。
【0019】
前記の洗浄剤(C)が含有する前記ノニオン性界面活性剤の重量割合は、抗サイログロブリン抗体の影響の低減、及び、洗浄時の泡立ちによる操作性の観点から、前記洗浄剤(C)の重量を基準として、0.001~1重量%である。
【0020】
前記洗浄剤(C)のpHは、測定対象物質の安定性の観点から、6.5~8.0である。
なお、本願においてpHは、25℃下でpHメーターを用いて、測定することができる。
【0021】
洗浄剤(C)を用いた前記の複合体(J1)の洗浄操作としては、上記の通り、磁力等により、前記の複合体(J1)を保持し、試料中のサイログロブリン以外の成分等を除去する操作であることが好ましい。
具体的には、洗浄剤(C)中に複合体(J1)[洗浄前に、磁力によるB/F分離により、複合体(J1)のみを回収しても良い]を分散させた後、磁力等により集磁し、複合体(J1)以外の不用な成分を除去する操作等が挙げられる。
必要に応じて、上記の不用な成分は、アスピレーター等により除去してもよい。
【0022】
前記の洗浄剤(C)で前記複合体(J1)を洗浄する工程において、洗浄時[洗浄剤(C)中に複合体(J1)を分散させる際等]の温度[洗浄剤(C)の温度、複合体(J1)等を含有する混合物の温度]は、抗サイログロブリン抗体の影響の低減の観点から、30~45℃であることが好ましい。
また、洗浄剤(C)の使用重量の割合[後述の通り、2回以上洗浄操作を実施する場合は、1回あたりの洗浄剤(C)の使用重量の割合]は、抗サイログロブリン抗体の影響の低減の観点から、使用する前記の固相担体(a)の重量を基準として、1000~20000重量%であることが好ましい。
前記の洗浄剤(C)で前記複合体(J1)を洗浄する時間[洗浄剤(C)中に複合体(J1)を分散させる時間等]は、抗サイログロブリン抗体の影響の低減の観点から、1秒以上であることが好ましく、2秒以上であることが更に好ましい。
また、洗浄剤(C)で前記複合体(J1)を洗浄する時間は、測定時間を短縮する観点からは、100秒以下であることが好ましく、50秒以下であることが更に好ましく、10秒以下であることが特に好ましい。
上記の洗浄操作は2回以上実施することが好ましく、測定時間を短縮する観点からは、10回以下であることが好ましい。
【0023】
本発明の免疫測定方法の測定の対象となるのは、試料中のサイログロブリンである。
本発明の効果は、測定の対象となるサイログロブリンは、血清又は血漿に含まれるサイログロブリンとすることで、特に効果的に発揮される。
【0024】
本発明の免疫測定方法には、サイログロブリンと特異的に結合する物質(D)を固定化した固相担体(a)を含有する固相担体試薬(A)を用いることが好ましい。
固相担体(a)は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0025】
本発明において、固相担体(a)としては、体積平均粒子径が1~20nmの超常磁性金属酸化物を60~95重量%[固相担体(a)の重量を基準とする重量割合]含有する磁性粒子を用いる。これらの内、免疫測定における測定時間の短時間化及び正確性の観点から、特開2014-210680号公報及び特開2013-019889号公報に記載の金属酸化物を含有するシリカ粒子を用いることが好ましい。
また、磁性粒子は、測定の感度及び測定時間短縮の観点から、サイログロブリンに対する抗体を有する磁性粒子(H)[サイログロブリンと特異的に結合する物質(D)として、サイログロブリンに対する抗体を固定化した磁性粒子等]であることが好ましい。
【0026】
金属酸化物を含有するシリカ粒子としては、シリカのマトリックス中に体積平均粒子径が1~20nmで超常磁性を有する金属酸化物を分散されているものが好ましい。超常磁性とは、外部磁場の存在下で物質の個々の原子磁気モーメントが整列し誘発された一時的な磁場を示し、外部磁場を取り除くと、部分的な整列が損なわれ磁場を示さなくなることをいう。
尚、本発明における金属酸化物及び金属酸化物を含有するシリカ粒子の体積平均粒子径は、任意の200個の粒子について走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製「JSM-7000F」)で観察して測定された粒子径の平均値である。
【0027】
体積平均粒子径が1~20nmで超常磁性を示す超常磁性金属酸化物としては、鉄、コバルト、ニッケル及びこれらの合金等の酸化物が挙げられるが、磁界に対する感応性が優れていることから、酸化鉄が特に好ましい。超常磁性金属酸化物は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0028】
酸化鉄としては、公知の種々の酸化鉄を用いることができる。
酸化鉄の内、特に化学的な安定性に優れることから、マグネタイト、γ-ヘマタイト、マグネタイト-α-ヘマタイト中間酸化鉄及びγ-ヘマタイト-α-ヘマタイト中間酸化鉄からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、大きな飽和磁化を有し、外部磁場に対する感応性が優れていることから、マグネタイトが更に好ましい。
【0029】
金属酸化物を含有するシリカ粒子中の超常磁性金属酸化物の含有量の下限は、金属酸化物を含有するシリカ粒子の重量[即ち、固相担体(a)の重量]を基準として、60重量%であり、好ましくは65重量%である。
また、超常磁性金属酸化物の含有量の上限は、洗浄剤(C)による抗サイログロブリン抗体の影響の低減効果を高める観点から、金属酸化物を含有するシリカ粒子の重量[即ち、固相担体(a)の重量]を基準として、95重量%が好ましく、好ましくは90重量%である。
超常磁性金属酸化物の含有量が60重量%以上であると、得られた金属酸化物を含有するシリカ粒子の磁性が十分であり、実際の用途面における分離操作を短時間で行え、また、洗浄剤(C)による抗サイログロブリン抗体の影響の低減効果が向上する傾向があるので好ましい。また、95重量%以下であると、合成が容易である。
【0030】
超常磁性金属酸化物の製造方法は、特に限定されないが、Massartにより報告されたものをベースとして水溶性鉄塩及びアンモニアを用いる共沈殿法(R.Massart,IEEE Trans.Magn.1981,17,1247)や水溶性鉄塩の水溶液中の酸化反応を用いた方法により合成することができる。
【0031】
金属酸化物を含有するシリカ粒子の体積平均粒子径は、好ましくは1~5μm、更に好ましくは1~3μmである。
体積平均粒子径が1μm以上であると、分離回収を短時間で行える傾向にあり、5μm以下であると、表面積が適度であり、固定化する物質[サイログロブリンと特異的に結合する物質(D)等]の結合量を適度にすることができ、結合効率がよい。
【0032】
金属酸化物を含有するシリカ粒子の体積平均粒子径は、後述の水中油型エマルションを作製する際の混合条件(せん断力等)を調節して水中油型エマルションの粒子径を調整することにより制御することができる。また、金属酸化物を含有するシリカ粒子製造時の水洗工程の条件変更や通常の分級等の方法によっても体積平均粒子径を所望の値とすることができる。
【0033】
本発明における金属酸化物を含有するシリカ粒子は、例えば体積平均粒子径が1~20nmの超常磁性金属酸化物粒子、前記超常磁性金属酸化物粒子の重量に基づいて30~500重量%の(アルキル)アルコキシシラン及び必要に応じて分散剤を含有する分散液と、水、水溶性有機溶媒、非イオン性界面活性剤及び(アルキル)アルコキシシランの加水分解用触媒を含有する溶液とを混合して水中油型エマルションを形成後、(アルキル)アルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応を行い、超常磁性金属酸化物がシリカに包含された磁性粒子の水性分散体を得た後、磁性粒子の水性分散体を遠心分離及び/又は集磁により固液分離し、水又はメタノール等で洗浄することにより得られる。
また、必要に応じて、更に、上記の操作で得た磁性粒子、(アルキル)アルコキシシラン、水、水溶性有機溶媒、非イオン性界面活性剤及び(アルキル)アルコキシシランの加水分解用触媒を混合し、(アルキル)アルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応を実施し、コア-シェル構造を有するシリカ粒子としても良い。
上記及び以下において、(アルキル)アルコキシシランとは、アルキルアルコキシシラン又はアルコキシシランを意味する。
【0034】
金属酸化物を含有するシリカ粒子は、超常磁性金属酸化物がシリカに包含され、粒子表面での存在量が比較的少ないことから、多くのサイログロブリンと特異的に結合する物質(D)等をその表面に固定化することができる。
【0035】
本発明において、物質(D)としては、サイログロブリンに対する抗体(抗サイログロブリン抗体)等が挙げられる。
サイログロブリンに対する抗体としては、一般的この分野で測定されるものであれば特に限定はされない。
尚、本発明において用いられる抗体には、パパインやペプシン等の蛋白質分解酵素、或いは化学的分解により生じるFab、F(ab’)2フラグメント等の分解産物も包含される。
【0036】
本発明において、磁性粒子にサイログロブリンに対する抗体を固定化[サイログロブリンと特異的に結合する物質(D)として固定化]して磁性粒子(H)とする方法としては、上述の磁性粒子に、サイログロブリンに対する抗体を物理吸着させる方法が挙げられるが、より効率良く測定対象物質等を固定化させる観点から、グルタルアルデヒド、アルブミン、カルボジイミド、ストレプトアビジン、ビオチン及び官能基を有するアルキルアルコキシシランからなる群から選ばれる少なくとも1種の有機化合物を磁性粒子の表面に結合させ、それらを介して、サイログロブリンに対する抗体を磁性粒子に固定化させるのが好ましく、更に好ましくは官能基(エチレン性不飽和基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基及びイソシアネート基等)を有するアルキルアルコキシシランを介して固定化させる方法である。
このような官能基を有するアルキルアルコキシシランとしては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0037】
固相担体試薬(A)中の固相担体(a)の含有量は、固相担体の洗浄性の観点から、0.001~10重量%が好ましく、更に好ましくは0.01~1重量%である。
【0038】
固相担体試薬(A)中には、固相担体(a)以外に、ゼラチン、ゼラチン以外のタンパク質、血清(マウス血清等)、糖類、界面活性剤、無機塩、エチレンジアミン四酢酸及び水を含有してもよい。
【0039】
ゼラチンとしては、公知のゼラチンが含まれ、分子量及び性状に限定はなく、いかなる動物(ホ乳類、鳥類及び魚類等)から取得したものであってもよい。
ゼラチンとしては、例えばコラーゲンを酸又はアルカリによる化学処理後、加熱処理して製造した酸処理ゼラチン及びアルカリ処理ゼラチン等が挙げられる。更にこのゼラチンをアミノ基、イミノ基、カルボキシル基、メルカプト基及び水酸基等の官能基を周知の方法を利用し導入し、化学的に修飾したゼラチン誘導体を用いることもできる。
ゼラチンの含有量は、固相担体試薬(A)の保存安定性の観点から、固相担体試薬(A)の重量を基準として、1~8重量%が好ましく、更に好ましくは2~5重量%である。
【0040】
ゼラチン以外のタンパク質としては、一般的に免疫測定の分野で使用されるものであれば特に限定はされず、例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン及びスキムミルク等が挙げられる。タンパク質は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
タンパク質の含有量は、固相担体試薬(A)の保存安定性の観点から、固相担体試薬(A)の重量を基準として、0~15重量%が好ましく、更に好ましくは0.1~15重量%である。
また、血清の含有量は、固相担体試薬(A)の重量を基準として、0~15重量%が好ましく、更に好ましくは0.1~10重量%である。
【0041】
糖類としては、単糖類、二糖類及び多糖類が含まれる。
単糖類としては、トリオース(ケトトリオース等)、テトロース(ケトテトロース等)、ペントース(ケトペントース、アルドペントース及びデオキシ糖類等)、ヘキソース[ケトヘキソース(プシコース、フルクトース、ソルボース及びタガトース等)、アルドヘキソース(アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース及びタロース等)及びデオキシ糖(フコース、フクロース及びラムノース等)等]並びにヘプトース(セドヘプツロース等)等が挙げられる。
二糖類としては、上記単糖類の内、2分子が脱水縮合してグリコシド結合を形成したものが含まれ、具体的には、スクロース、ラクトース、マルトース及びセロビオース等が挙げられる。
多糖類としては、上記単糖類の内、3分子以上が脱水縮合してグリコシド結合を形成したものが含まれ、具体的には、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲン、セルロース、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸及びヘパリン等が挙げられる。
糖類は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
糖類としては、固相担体試薬(A)の保存安定性の観点から、二糖類が好ましく、更に好ましくはスクロース及びラクトースである。
糖類の含有量は、固相担体試薬(A)の保存安定性の観点から、固相担体試薬(A)の重量を基準として、5~40重量%が好ましく、更に好ましくは10~20重量%である。
【0042】
界面活性剤としては、後に詳述する(B)の説明で例示する界面活性剤等が挙げられ、好ましいものも同様である。
また、界面活性剤の含有量は、固相担体試薬(A)の重量を基準として、0~2重量%が好ましく、更に好ましくは0.01~1重量%である。
【0043】
無機塩としては、アルカリ金属塩[ハロゲン化物(塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム及びフッ化ナトリウム等)、硫酸塩(硫酸ナトリウム及び硫酸カリウム等)、硝酸塩(硝酸ナトリウム及び硝酸カリウム等)及びリン酸塩(リン酸ナトリウム及びリン酸カリウム等)]、アルカリ土類金属塩[ハロゲン化物(塩化カルシウム及び塩化マグネシウム等)及び硫酸塩(硫酸マグネシウム等)]等が挙げられる。
無機塩は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
これらの内、固相担体試薬(A)の保存安定性の観点から、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、リン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硝酸ナトリウム及び硝酸カリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
無機塩の含有量は、固相担体試薬(A)の保存安定性の観点から、固相担体試薬(A)の重量を基準として、0.1~2重量%が好ましく、更に好ましくは0.5~1重量%である。
また、エチレンジアミン四酢酸の含有量は、固相担体試薬(A)の重量を基準として、0~2重量%が好ましく、更に好ましくは0.01~1重量%である。
【0044】
本発明の免疫測定方法には、具体的な免疫測定方法(サンドイッチ法及び競合法等)の説明でも述べたように、標識物質(b)により標識された物質であってサイログロブリンと特異的に結合する物質(F)を含有する標識試薬(B)を用いることが好ましい。
【0045】
標識物質(b)により標識された物質であってサイログロブリンと特異的に結合する物質(F)に用いられるサイログロブリンと特異的に結合する物質としては、上述のサイログロブリンと特異的に結合する物質(D)と同様のものが挙げられ、好ましいものも同様である。
【0046】
標識するために用いられる標識物質(b)としては、
例えば酵素免疫測定法(EIA)において用いられるアルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、ペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース-6-リン酸脱水素酵素、リンゴ酸脱水素酵素、ルシフェラーゼ、チロシナーゼ、酸性ホスファターゼ等の酵素類;
例えば放射免疫測定法(RIA)において用いられる99mTc、131I、125I、14C、3H、32P等の放射性同位元素;
例えば蛍光免疫測定法(FIA)において用いられるフルオレセイン、ダンシル、フルオレスカミン、クマリン、ナフチルアミン又はこれらの誘導体、グリーン蛍光タンパク質(GFP)等の蛍光性物質;
例えばルシフェリン、イソルミノール、ルミノール、ビス(2,4,6-トリフロロフェニル)オキザレート等の発光性物質;
例えばフェノール、ナフトール、アントラセン又はこれらの誘導体等の紫外部に吸収を有する物質;
例えば4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、3-アミノ-2,2,5,5-テトラメチルピロリジン-1-オキシル、2,6-ジ-t-ブチル-α-(3,5-ジ-t-ブチル-4-オキソ-2,5-シクロヘキサジエン-1-イリデン)-p-トリオキシル等のオキシル基を有する化合物に代表されるスピンラベル化剤としての性質を有する物質等が挙げられる。
これらの内、感度等の観点から、酵素、蛍光性物質が好ましく、更に好ましいのはアルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ及びグルコースオキシダーゼであり、特に好ましいのはペルオキシダーゼである。
【0047】
標識物質(b)を、サイログロブリンと特異的に結合する物質に結合させるには、一般的に免疫測定の分野で用いられる方法、例えば公知のEIA、RIA及びFIA等において一般に行われている公知の標識方法[例えば、医化学実験講座、第8巻、山村雄一監修、第1版、中山書店、1971;図説 蛍光抗体、川生明著、第1版、(株)ソフトサイエンス社、1983;酵素免疫測定法、石川栄治、河合忠、室井潔編、第2版、医学書院、1982等]等を利用すればよい。
【0048】
標識物質(b)の使用量は、用いる標識物質(b)の種類により異なるため一概には言えないが、例えばペルオキシダーゼ(以降、PODと略記する)を標識物質(b)として使用する場合には、サイログロブリンと特異的に結合する物質と標識物質(b)とを、例えば好ましくは1:1~20(更に好ましくは1:1~10、特に好ましくは1:1~2)のモル比となるように、緩衝液中に含有させて用いればよい。
緩衝液としては、一般的に免疫測定の分野で用いられている、例えばトリス緩衝液、リン酸緩衝液、ベロナール緩衝液、ホウ酸緩衝液及びグッド緩衝液等が挙げられ、そのpHは、抗原抗体反応を抑制しない範囲であればよく、5~9が好ましい。
また、このような緩衝液中には、目的の抗原抗体反応を阻害しないものであれば、例えばアルブミン、グロブリン、水溶性ゼラチン、ポリエチレングリコール等の安定化剤、界面活性剤及び糖類等を含有させておいてもよい。
【0049】
標識試薬(B)中の標識物質(b)により標識された物質であってサイログロブリンと特異的に結合する物質(F)の含有量は、感度の観点から、それぞれ0.01~40μg/mLが好ましく、更に好ましくは0.1~20μg/mLである。
【0050】
標識試薬(B)は、上記以外に、タンパク質、界面活性剤及び高分子化合物を含んでいてもよい。
タンパク質としては、一般的に免疫測定の分野で測定されるものであれば特に限定はされず、例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、スキムミルク等が挙げられる。タンパク質は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
タンパク質の含有量は、感度及び試薬の保存安定性の観点から、標識試薬(B)の重量を基準として、0.001~8重量%が好ましい。
【0051】
界面活性剤としては、公知の非イオン界面活性剤、両性界面活性剤及びアニオン界面活性剤等が挙げられるが、界面活性剤としては、非特異的吸着の低減の観点から、水溶性の非イオン界面活性剤が好ましい。
尚、水溶性とは、25℃の水100gに10g溶解することを意味する。
水溶性の非イオン界面活性剤として、具体的には、HLBが12以上のポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(ポリオキシエチレンオクチルエーテル等)及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪族エステル等が挙げられる。
界面活性剤の含有量は、粒子の洗浄性の観点から、標識試薬(B)の重量を基準として、0.001~4重量%である。
【0052】
高分子化合物としては、一般的に免疫測定の分野で使用されるものであれば特に限定はされず、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、Blockmaster(JSR(株)製)及びLipidure(日油(株)製)が挙げられる。
高分子化合物は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
高分子化合物の含有量は、非特異的吸着の抑制の観点から、標識試薬(B)の重量を基準として、高分子化合物の純分が、0.001~3重量%であることが好ましく、更に好ましくは0.5~1重量%である。
【0053】
標識物質(b)の量の測定方法としては、放射免疫測定法(RIA)、酵素免疫測定法(EIA)、蛍光免疫測定法(FIA)及び化学発光免疫測定法(CLIA及びCLEIA)が挙げられ、短時間での免疫測定における感度の観点から好ましいのはEIA、CLIA及びCLEIAであり、更に好ましいのはCLEIAである。
【0054】
例えば、標識物質量の測定を化学発光法により行う場合、化学発光試薬(E)を用いる。
化学発光試薬(E)は、上記の標識物質(b)に基づき選択され、例えば、標識物質(b)がペルオキシダーゼである場合、2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン化合物及び化学発光増強剤を必須構成成分とする化学発光試薬第1液と、酸化剤及び水を必須構成成分とする化学発光試薬第2液とを含む。
【0055】
2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン化合物としては、例えば、特開平2-291299号公報、特開平10-319015号公報及び特開2000-279196号公報等に記載の公知の2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン化合物及びこれらの混合物等が使用できる。
これらの内、ルミノール、イソルミノール、N-アミノヘキシル-N-エチルイソルミノール(AHEI)、N-アミノブチル-N-エチルイソルミノール(ABEI)及びこれらの金属塩(アルカリ金属塩等)が好ましく、更に好ましいのはルミノール及びその金属塩、特に好ましいのはルミノールのナトリウム塩である。
【0056】
化学発光増強剤としては、例えば、特開昭59-500252号公報、特開昭59-171839号公報及び特開平2-291299号公報等に記載の公知の化学発光増強剤及びこれらの混合物等が使用できる。これらの内、化学発光増強効果等の観点から、フェノールが好ましく、更に好ましいのはp-ヨードフェノール、4-(シアノメチルチオ)フェノール及び4-シアノメチルチオ-2-クロロフェノール、特に好ましいのは4-(シアノメチルチオ)フェノールである。
【0057】
化学発光試薬第1液は、酵素の蛍光強度の観点からはアルカリ性であることが好ましく、第1液のpHは、7~11が好ましく、更に好ましくは8~10である。
尚、pHは、JIS K0400-12-10:2000に準拠して測定温度25℃で測定される。
【0058】
化学発光試薬第2液が含有する酸化剤としては、例えば、特開平8-261943号公報及び特開2000-279196号公報等に記載の公知の酸化剤等[無機の過酸化物(過酸化水素、過ホウ酸ナトリウム及び過ホウ酸カリウム等)、有機過酸化物(過酸化ジアルキル及び過酸化アシル等)、ペルオクソ酸化合物(ペルオクソ硫酸及びペルオクソリン酸等)等]が挙げられる。
これらの内、保存安定性等の観点から、過酸化水素、過ホウ酸ナトリウム及び過ホウ酸カリウムが好ましく、更に好ましいのは過酸化水素である。
【0059】
本発明の免疫測定用キットは、固相担体試薬(A)と、標識試薬(B)と、免疫測定用緩衝液(W)と、洗浄剤(C)を含む免疫測定用キットである。
本発明の免疫測定用キットにおける固相担体試薬(A)としては、上述の固相担体試薬(A)を用いることができ、標識試薬(B)としては、上述の標識試薬(B)を用いることができ、洗浄剤(C)としては、上述の洗浄剤(C)を用いることができる。
【0060】
本発明の免疫測定用キットに用いる免疫測定用緩衝液(W)が含有する緩衝液としては、一般的に免疫測定の分野で用いられている、トリス緩衝液、リン酸緩衝液、ベロナール緩衝液、ホウ酸緩衝液及びグッド緩衝液等が挙げられ、そのpHは、本発明の効果を阻害しない範囲であればよく、5~9が好ましい。
また、このような緩衝液中には、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、塩(塩化ナトリウム及びエチレンジアミン四酢酸等)、アルブミン(ウシ血清アルブミン等)、グロブリン、タンパク質(カゼイン加水分解物)、水溶性ゼラチン、ポリエチレングリコール等の安定化剤、界面活性剤[上記の標識試薬(B)の説明で例示した界面活性剤等]及び糖類[上記の固相担体試薬(A)の説明で例示した糖類等]等を含有させておいてもよい。
【0061】
本発明の免疫測定用キットは、更に化学発光試薬(E)を含むことが好ましい。
また、本発明の免疫測定用キットは、ルミノール発光試薬(E1)[2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン化合物がルミノール及び/又はその金属塩である化学発光試薬第1液]及び過酸化水素液(E2)[酸化剤が過酸化水素である化学発光試薬第2液]を含む化学発光試薬(E)を構成品として含み、標識試薬(B)中の標識物質(b)がペルオキシダーゼである免疫測定用キットであることが好ましい。
【0062】
本発明の免疫測定用キットにおける固相担体試薬(A)、標識試薬(B)、洗浄剤(C)及び化学発光試薬(E)の各構成成分の組成、含有量及びこれらの好ましい範囲等は上述の免疫測定方法で説明したものと同様である。
【実施例0063】
以下、実施例により、本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において部は重量部を示す。
【0064】
<実施例1>
以下に示す方法により、固相担体試薬(A-1)、標識試薬(B-1)、免疫反応緩衝液(W)、ルミノール発光試薬(E1)及び過酸化水素液(E2)から構成される本発明の免疫測定用キット(S-1)を得た。
【0065】
磁性粒子(PH-1)の作製:
<磁性金属酸化物粒子の作製>
反応容器に塩化鉄(III)6水和物186部、塩化鉄(II)4水和物68部及び水1288部を仕込んで溶解させて50℃に昇温し、撹拌下温度を50~55℃に保持しながら、25重量%アンモニア水280部を1時間かけて滴下し、水中にマグネタイト粒子を得た。得られたマグネタイト粒子に分散剤であるオレイン酸64部を加え、2時間撹拌を継続した。室温に冷却後、デカンテーションにより固液分離して得られたオレイン酸が吸着したマグネタイト粒子を水1000部で洗浄する操作を3回行い、さらにアセトン1000部で洗浄する操作を2回行い、40℃で2日間乾燥させることで、体積平均粒子径が15nmの超常磁性金属酸化物粒子を得た。
【0066】
<コア層の作製>
超常磁性金属酸化物粒子80部をテトラエトキシシラン240部に加えて分散し、分散液(1)を調製した。
次に、反応容器に水5050部、25重量%アンモニア水溶液3500部、非イオン界面活性剤(「NSA-17」、三洋化成工業(株)製)400部を加えてクリアミックス(エムテクニック(株)製)を用いて混合し溶液(2)を得た。50℃に昇温後、クリアミックスの回転数6,000rpmで攪拌しながら、上記分散液(1)を溶液(2)に1時間かけて滴下後、50℃で1時間反応させた。反応後、2,000rpmで20分間遠心分離して微粒子の存在する上清を除き、コア層を得た。
【0067】
<磁性粒子の作製>
反応容器にコア層80部、脱イオン水2500部、25重量%アンモニア水溶液260部、エタノール2500部、テトラエトキシシラン1200部を加えてクリアミックス(エムテクニック(株)製)を用いて混合し、クリアミックスの回転数6,000rpmで攪拌しながら2時間反応させた。反応後、2,000rpmで20分間遠心分離して微粒子の存在する上清を除去した。遠心分離後沈殿した粒子に脱イオン水を4000部加えて粒子を再分散させ、分散した粒子を、磁石を用いて粒子を集磁し上清を除く操作を10回行った。
次に、得られた固相に水5000部を加えて粒子を分散させて600rpmで10分間遠心分離後、微粒子の存在する上清を除く操作を20回行い、続いて得られた固相に水5000部を加えて粒子を分散させて300rpmで10分間遠心分離することにより、大きな粒子径の粒子を沈降させて除去することで分級を行った。
さらに、磁石を用いて粒子を集磁し上澄み液を除去した。その後、水5000部を加えてコアシェル粒子を分散させた後に、磁石を用いて粒子を集磁し上清を除く操作を10回行い、目的とする体積平均粒子径2.0μmの磁性粒子(PH-1)を得た。得られた磁性粒子(PH-1)中の超常磁性金属酸化物粒子の含有量を測定した結果、含有量は81重量%であった。
【0068】
<粒子(超常磁性金属酸化物粒子及び磁性粒子)の体積平均粒子径の測定方法>
走査型電子顕微鏡(型番:JSM-7000F、メーカー名:日本電子株式会社)を用いて、任意の200個の超常磁性金属酸化物粒子を観察して粒子径を測定し、体積平均粒子径を求めた。
磁性粒子についても同様の方法で、体積平均粒子径を求めた。
【0069】
<超常磁性金属酸化物粒子の含有量の測定方法>
磁性粒子の任意の20個について、走査型電子顕微鏡(型番JSM-7000F、メーカー名日本電子株式会社)で観察し、エネルギー分散型X線分光装置(型番INCA Wave/Energy、メーカー名オックスフォード社)により超常磁性金属酸化物粒子の含有量を測定し、その平均値を含有量Sとした。また、同測定にてシリカの含有量を測定し、その平均値を含有量Tとした。以下の計算式(1)にて、超常磁性金属酸化物粒子の含有量を求めた。
超常磁性金属酸化物粒子の含有量(重量%)=(S)/(S+T)×100・・・(1)
【0070】
磁性粒子(H1-1)及び固相担体試薬(PA-1)の作製:
1重量%γ-アミノプロピルトリエトキシシラン含有アセトン溶液40mLの入った蓋付きポリエチレン瓶に製造した磁性粒子(PH-1)40mgを加え、25℃で1時間反応させ、ネオジウム磁石で磁性粒子を集磁後、液をアスピレーターで吸引除去した。次いで脱イオン水40mLを加えて蓋をし、ポリスチレン瓶をゆっくりと2回倒置攪拌した後、ネオジウム磁石で磁性粒子を集磁後、液をアスピレーターで吸引除去して磁性粒子を洗浄した。この洗浄操作を5回行った。次いで、この洗浄後の磁性粒子を2重量%グルタルアルデヒド含有水溶液40mLの入った蓋付きポリエチレン瓶に加え、25℃で1時間反応させた。そして、脱イオン水40mLを加えて蓋をし、ポリスチレン瓶をゆっくりと2回倒置攪拌したのち、ネオジウム磁石で磁性粒子を集磁後、液をアスピレーターで吸引除去して磁性粒子を洗浄した。この洗浄操作を10回行った。
更にこの洗浄後の磁性粒子を、抗Tgモノクローナル抗体(マウス)(Monoclonal mouse anti-human thyroglobulin 5F9cc、Hytest社製)を10μg/mLの濃度で含む0.02Mリン酸緩衝液(pH8.7)120mLの入った蓋付きポリエチレン瓶に加え、25℃で1時間反応させた。反応後、ネオジウム磁石で磁性粒子を集磁後、抗Tgモノクローナル抗体含有リン酸緩衝液を除去することで、抗Tgモノクローナル抗体が結合してなる磁性粒子(H1-1)を得た。[なお、磁性粒子(H1-1)の重量は、磁性粒子(PH-1)と同等であり、磁性粒子(H1-1)中の超常磁性金属酸化物粒子の含有量は81重量%である。]
次に、磁性粒子(H1-1)の濃度が0.01重量%になるように、後述の希釈液で希釈し、磁性粒子(H1-1)を含有する固相担体試薬(PA-1)を調製した。
【0071】
磁性粒子(H1-2)及び固相担体試薬(PA-2)の作製:
上記の「磁性粒子(H1-1)及び固相担体試薬(PA-1)の作製」において、「抗Tgモノクローナル抗体(マウス)(Monoclonal mouse anti-human thyroglobulin 5F9cc、Hytest社製)を10μg/mLの濃度で含む0.02Mリン酸緩衝液(pH8.7)120mLの入った蓋付きポリエチレン瓶」に代えて、「抗Tgモノクローナル抗体(マウス)(Monoclonal Antibody to Human Thyrogloblin、E01326M、meridian社製)を10μg/mLの濃度で含む0.02Mリン酸緩衝液(pH8.7)120mLの入った蓋付きポリエチレン瓶」を用いた以外は、「磁性粒子(H1-1)及び固相担体試薬(PA-1)の作製」と同様に実施して、抗Tgモノクローナル抗体が結合してなる磁性粒子(H1-2)を含有する固相担体試薬(PA-2)を調製した。[なお、磁性粒子(H1-2)の重量は、磁性粒子(PH-1)と同等であり、磁性粒子(H1-2)中の超常磁性金属酸化物粒子の含有量は81重量%である。]
【0072】
固相担体試薬(A-1)の作製:
固相担体試薬(PA-1)と、固相担体試薬(PA-2)とを重量比1:1で混合し、磁性粒子(H1-1)及び磁性粒子(H1-2)を含有する固相担体試薬(A-1)を調製した。
【0073】
希釈液の作製:
10重量%のBSA、0.1重量%のナロアクティーCL-100[ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、三洋化成工業(株)製]、0.1重量%のEDTA(エチレンジアミン-N,N,N’,N’-四酢酸二ナトリウム塩二水和物、(株)同仁化学研究所製)、5重量%のマウス血清[コスモ・バイオ(株)製]及び0.02Mリン酸ナトリウム(pH7.0)を含有する希釈液を調整し、冷蔵(2~10℃)で保存した。
【0074】
免疫測定用緩衝液(W)の作製:
ウシ血清アルブミン(Boval Campany製)を0.1重量%、エマルミンL-90-S(三洋化成工業(株)製)を1重量%、塩化ナトリウム(富士フイルム和光純薬(株)製)を0.85重量%含有した0.02Mリン酸緩衝液(pH7.0)を調製し、冷蔵(2~10℃)で保管した。
【0075】
標識試薬(B-1)の作製:
抗Tgモノクローナル抗体(マウス)(Monoclonal mouse anti-human thyroglobulin 5F6cc、Hytest社製)を用い、文献(エス・ヨシタケ、エム・イマガワ、イー・イシカワ、エトール;ジェイ.バイオケム,Vol.92,1982,1413-1424)に記載の方法でPOD標識抗Tgモノクローナル抗体(マウス)(F)を調製した。これを0.5重量%の牛血清アルブミン及び界面活性剤として1重量%ナロアクティーCL-100を含有する0.02Mリン酸緩衝液(pH7.0)で、POD標識抗Tgモノクローナル抗体(マウス)(F)濃度として100nMの濃度に希釈し、標識試薬(B-1)を調製し、冷蔵(2~10℃)で保存した。
【0076】
ルミノール発光試薬(E1)の調製:
ルミノールのナトリウム塩[シグマ アルドリッチ ジャパン(株)製]0.7g及び4-(シアノメチルチオ)フェノール0.1gを1,000mLメスフラスコに仕込んだ。3-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]プロパンスルホン酸/水酸化ナトリウム緩衝液(10mM、pH=8.6)を溶液の容量が1,000mLになるように仕込み、25℃で均一混合してルミノール発光試薬(E1)を調製した。測定に用いるまで冷蔵(2~10℃)保存した。
【0077】
過酸化水素液(E2)の調製:
過酸化水素[和光純薬工業(株)製、試薬特級、濃度30重量%]6.6gを1,000mLメスフラスコに仕込んだ。脱イオン水を溶液の容量が1,000mLになるように仕込み、25℃で均一混合して過酸化水素液(E2)を調製した。測定に用いるまで冷蔵(2~10℃)保存した。
【0078】
洗浄剤(C-1)の作製:
表1に記載の、ノニオン性界面活性剤、緩衝成分、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、イオン交換水を、表1に記載の重量部混合し、洗浄剤(C-1)を得た。
【0079】
<実施例2~13及び比較例1~2>
実施例1における免疫測定用キット(S-1)の製造において、使用する洗浄剤(C-1)に代えて、以下の方法で得られる洗浄剤(C-2)~(C-13)及び(C’-1)~(C’-2)をそれぞれ使用したこと以外は実施例1と同様にして、免疫測定用キット(S-2)~(S-13)及び(S’-1)~(S’-2)を得た。
<洗浄剤(C-2)~(C-13)及び(C’-1)~(C’-2)の作製>
表1又は表2に示した各成分を表1又は表2に記載の重量部混合し、免疫測定用緩衝液(C-2)~(C-13)及び(C’-1)~(C’-2)を得た。
【0080】
表1又は表2に記載のノニオン界面活性剤としては、以下のものを使用した。
・ナロアクティーCL-100[ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、HLB=13.3、三洋化成工業(株)製]
・ナロアクティーCL-200[ポリオキシエチレンアルキルエーテル、HLB=16.0、三洋化成工業(株)製]
・ナロアクティーCL-85[ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、HLB=12.6、三洋化成工業(株)製]
・エマルミンLS-90[ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB=13.6、三洋化成工業(株)製]
【0081】
<実施例14>
実施例1における磁性粒子(PH-1)の作製中の<コア層の作製>において、超常磁性金属酸化物粒子の投入量を80部から63部に変更した以外は、実施例1における磁性粒子(PH-1)の作製と同様に実施し、体積平均粒子径2.0μmの磁性粒子(PH-2)を得た。得られた磁性粒子(PH-2)中の超常磁性金属酸化物粒子の含有量を測定した結果、含有量は61重量%であった。
実施例1の以降の操作において、磁性粒子(PH-1)に代えて、磁性粒子(PH-2)を用いた以外は同様にして実施し、磁性粒子(H1-1)に代えて、磁性粒子(H2-1)を含有し、磁性粒子(H1-2)に代えて、磁性粒子(H2-2)を含有する固相担体試薬(A-2)を作製したこと以外は、実施例1と同様に実施して、本発明の免疫測定用キット(S-14)を得た。
なお、磁性粒子(H2-1)の重量は、磁性粒子(PH-2)と同等であり、磁性粒子(H2-1)中の超常磁性金属酸化物粒子の含有量は61重量%である。また、磁性粒子(H2-2)の重量は、磁性粒子(PH-2)と同等であり、磁性粒子(H2-2)中の超常磁性金属酸化物粒子の含有量は61重量%である。
【0082】
<実施例15>
実施例1における磁性粒子(PH-1)の作製中の<コア層の作製>において、超常磁性金属酸化物粒子の投入量を80部から92部に変更した以外は、実施例1における磁性粒子(PH-1)の作製と同様に実施し、体積平均粒子径2.0μmの磁性粒子(PH-3)を得た。得られた磁性粒子(PH-3)中の超常磁性金属酸化物粒子の含有量を測定した結果、含有量は90重量%であった。
実施例1の以降の操作において、磁性粒子(PH-1)に代えて、磁性粒子(PH-3)を用いた以外は同様にして実施し、磁性粒子(H1-1)に代えて、磁性粒子(H3-1)を含有し、磁性粒子(H1-2)に代えて、磁性粒子(H3-2)を含有する固相担体試薬(A-3)を作製したこと以外は、実施例1と同様に実施して、本発明の免疫測定用キット(S-15)を得た。
なお、磁性粒子(H3-1)の重量は、磁性粒子(PH-3)と同等であり、磁性粒子(H3-1)中の超常磁性金属酸化物粒子の含有量は90重量%である。また、磁性粒子(H3-2)の重量は、磁性粒子(PH-3)と同等であり、磁性粒子(H3-2)中の超常磁性金属酸化物粒子の含有量は90重量%である。
【0083】
<実施例16~36及び比較例3~4>
表1、表2又は表3に記載した免疫測定用キット(S-1)~(S-15)又は免疫測定用キット(S’-1)~(S’-2)を用いて、以下の方法(サンドイッチ法)で免疫測定を実施し、試料中のサイログロブリン濃度を測定した。
【0084】
<感度の評価>
免疫測定用キットの固相担体試薬(A)をそれぞれ0.5mL、試験管に入れ、試験管の外側からネオジウム磁石で磁性粒子を10秒間集め、試験管中の液をアスピレーターで除き、ネオジウム磁石を側面から十分に離した。
次に、試験管に、免疫測定用緩衝液(W)0.2mLと、血清検体[あらかじめアキュラシードTgAbで、TgAb濃度を測定したTgAb陽性検体1~5及びTgAb陰性検体6~10]0.05mLとを注入し、試験管中で37℃3分間反応させ、複合体[抗Tgモノクローナル抗体を固定化した磁性粒子/Tg複合体]を形成させた。
反応後、試験管の外側からネオジウム磁石で磁性粒子を10秒間集め、試験管中の液をアスピレーターで除き、ネオジウム磁石を側面から十分に離した。その後、表1、表2又は表3に記載の温度で、洗浄剤(C)を表1、表2又は表3に記載の量加えて、磁性粒子を表1、表2又は表3に記載の時間分散させて集磁後、アスピレーターで液を除く洗浄操作を2回行った。
【0085】
続いて、各免疫測定用キットに対応する標識試薬(B)0.05mLを試験管に注入し、試験管中で37℃3分間反応させ、複合体[抗Tgモノクローナル抗体を固定化した磁性粒子/Tg/POD標識抗Tgマウスモノクローナル抗体複合体]を形成させた。
反応後、試験管の外側からネオジウム磁石で磁性粒子を10秒間集め、試験管中の液をアスピレーターで除き、ネオジウム磁石を側面から十分に離した。その後、生理食塩水0.5mLを加えて磁性粒子を分散させて集磁後、アスピレーターで液を除く洗浄操作を2回行った。
最後に、化学発光試薬第1液(E1)0.07mLと化学発光試薬第2液(E2)0.07mLとを同時に加え、37℃で45秒間発光反応させ、化学発光試薬を添加後43~45秒の平均発光量をルミノメーター[ベルトールドジャパン社製「Lumat LB9507」]で測定した。この時の平均発光量を平均発光量(Z)とした。
【0086】
また、上記の操作において、血清検体に代えて下記の標準液を用いる以外は同様にして、平均発光量をルミノメーターで測定し、発光量とTgの濃度との関係を示す検量線を作製した。得られた検量線から、上記免疫測定方法における測定濃度(ng/mL)を求めた。結果を表1、表2及び表3に示す。
標準液:Tgの濃度を0、5、30、50、100、500又は1000ng/mLに調整したプール血清
【0087】
また、上記の操作において、洗浄剤(C)に代えて、生理食塩水を用いた以外は、同様にして比較実験を実施し、上記免疫測定方法における測定濃度を求めた。結果を表1、表2及び表3に示す。
【0088】
実施例1~36においては、測定試料がTgAb陽性検体であったとしても、それぞれの比較実験と比較して、サイログロブリンの測定濃度が高かった。実施例1~36においては、洗浄剤(C)による洗浄により、試料中に含まれるTgAbの影響を低減できていることが分かる。
一方、洗浄剤におけるアルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物の合計濃度が本発明の範囲外である比較例1~2においては、測定試料がTgAb陽性検体であった場合、サイログロブリンの測定濃度は、それぞれの比較実験と同等の低値であった。比較例1~2においては、試料中に含まれるTgAbの影響を低減できていないことが分かる。
【0089】
【0090】
【0091】
本発明の洗浄剤を用いる免疫測定方法は、簡便な操作で正確性に優れることから、放射免疫測定法、酵素免疫測定法、蛍光免疫測定法及び化学発光免疫測定法等の臨床検査に幅広く適用できる。