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  • 特開-歯車製造方法および歯車製造装置 図1
  • 特開-歯車製造方法および歯車製造装置 図2
  • 特開-歯車製造方法および歯車製造装置 図3
  • 特開-歯車製造方法および歯車製造装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124365
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】歯車製造方法および歯車製造装置
(51)【国際特許分類】
   B23F 5/16 20060101AFI20230830BHJP
   B23F 19/06 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
B23F5/16
B23F19/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028090
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】清水 巌真
【テーマコード(参考)】
3C025
【Fターム(参考)】
3C025AA03
3C025DD12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】スカイビング加工においてワークの歯筋方向に歯形を変化させる場合に所望の歯形精度を得ることが可能な歯車製造方法および歯車製造装置を提供する。
【解決手段】本発明にかかる歯車製造方法の構成は、ワークを切削加工して歯車を製造する歯車製造方法であって、第1カッタ210を用いて隣接する両側の歯面を同時に第1圧力角となるように切削加工する第1加工工程と、第1カッタよりも歯厚が薄く加工された第2カッタ220を用いて、第1加工工程の交差角およびねじれ角を変更して第1圧力角よりも大きな第2圧力角となるように歯面の歯先近傍を片面ずつ切削加工する第2加工工程と、第1カッタよりも歯厚が薄く加工された第3カッタ230を用いて、第1加工工程の交差角およびねじれ角を変更して第1圧力角よりも小さな第3圧力角となるように歯面の歯元近傍を片面ずつ切削加工する第3加工工程と、を有することを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスカイビングカッタを用いてワークを切削加工して歯車を製造する歯車製造方法であって、
第1カッタを用いて隣接する両側の歯面を同時に第1圧力角となるように切削加工する第1加工工程と、
前記第1カッタよりも歯厚が薄く加工された第2カッタを用いて、前記第1加工工程の交差角およびねじれ角を変更して前記第1圧力角よりも大きな第2圧力角となるように前記歯面の歯先近傍を片面ずつ切削加工する第2加工工程と、
前記第1カッタよりも歯厚が薄く加工された第3カッタを用いて、前記第1加工工程の交差角およびねじれ角を変更して前記第1圧力角よりも小さな第3圧力角となるように前記歯面の歯元近傍を片面ずつ切削加工する第3加工工程と、
を有することを特徴とする歯車製造方法。
【請求項2】
複数のスカイビングカッタを用いてワークを切削加工する歯車製造装置であって、
当該歯車製造装置の動作を制御する制御部と、
第1カッタと、前記第1カッタより歯厚が薄い第2カッタと、前記第1カッタより歯厚が薄い第3カッタとを含む前記スカイビングカッタと、
を備え、
前記制御部は、
前記第1カッタを用いて隣接する両側の歯面を同時に第1圧力角となるように切削加工し、
前記第2カッタを用いて交差角およびねじれ角を変更して前記第1圧力角よりも大きな第2圧力角となるように前記歯面の歯先近傍を片面ずつ切削加工し、
前記第3カッタを用いて交差角およびねじれ角を変更して前記第1圧力角よりも小さな第3圧力角となるように前記歯面の歯元近傍を片面ずつ切削加工することを特徴とする歯車製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のスカイビングカッタを用いてワークを切削加工して歯車を製造する歯車製造方法および歯車製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯車の製造方法の1つとして、スカイビングカッタを用いたスカイビング加工が周知である。特許文献1には、スカイビング加工における工作物(ワークの)加工を支援する加工支援装置が開示されている。特許文献1の加工支援装置は、「歯車の歯の歯面形状の修整要素であるクラウニング、バイアス、ねじれ角、圧力角及び歯形丸みの少なくとも2つ目標修整量を記憶する目標修整量記憶部」と、「修整要素のうち少なくとも2つが目標修整量記憶部に記憶されている前記目標修整量に近似するように、加工動作中における加工制御要素の補正量を決定する補正量決定部」を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-11011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スカイビング加工においてワークの歯筋方向に歯形を変化させる場合、特許文献1のようにスカイビング切削送り(加工動作)を行いつつねじれ角やオフセット角を変更する、すなわち加工動作を変更する必要がある。すると、交差角やオフセット角の変化に伴って加工点の変化や切削抵抗の変化が生じるため、所望の歯形精度を得ることが困難である。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑み、スカイビング加工においてワークの歯筋方向に歯形を変化させる場合に所望の歯形精度を得ることが可能な歯車製造方法および歯車製造装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明にかかる歯車製造方法の代表的な構成は、複数のスカイビングカッタを用いてワークを切削加工して歯車を製造する歯車製造方法であって、第1カッタを用いて隣接する両側の歯面を同時に第1圧力角となるように切削加工する第1加工工程と、第1カッタよりも歯厚が薄く加工された第2カッタを用いて、第1加工工程の交差角およびねじれ角を変更して第1圧力角よりも大きな第2圧力角となるように歯面の歯先近傍を片面ずつ切削加工する第2加工工程と、第1カッタよりも歯厚が薄く加工された第3カッタを用いて、第1加工工程の交差角およびねじれ角を変更して第1圧力角よりも小さな第3圧力角となるように歯面の歯元近傍を片面ずつ切削加工する第3加工工程と、を有することを特徴とする。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる歯車製造装置の代表的な構成は、複数のスカイビングカッタを用いてワークを切削加工する歯車製造装置であって、当該歯車製造装置の動作を制御する制御部と、第1カッタと、第1カッタより歯厚が薄い第2カッタと、第1カッタより歯厚が薄い第3カッタとを含むスカイビングカッタと、を備え、制御部は、第1カッタを用いて隣接する両側の歯面を同時に第1圧力角となるように切削加工し、第2カッタを用いて交差角およびねじれ角を変更して第1圧力角よりも大きな第2圧力角となるように歯面の歯先近傍を片面ずつ切削加工し、第3カッタを用いて交差角およびねじれ角を変更して第1圧力角よりも小さな第3圧力角となるように歯面の歯元近傍を片面ずつ切削加工することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スカイビング加工においてワークの歯筋方向に歯形を変化させる場合に所望の歯形精度を得ることが可能な歯車製造方法および歯車製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態にかかる歯車製造装置の稼働の際の姿勢を説明する図である。
図2図1の歯車製造装置を用いた歯車製造方法において用いられるスカイビングカッタの諸元を説明する図である。
図3図1の歯車製造装置を用いた歯車製造方法を説明する図である。
図4図1のワークの歯面切削加工位置を説明する模式的な部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示または説明を省略する。
【0011】
図1は、本実施形態にかかる歯車製造装置100の稼働の際の姿勢を説明する図である。以下、図1に示す歯車製造装置100について詳述しつつ、本実施形態の歯車製造方法についても併せて説明する。本実施形態の歯車製造装置100およびそれを用いた歯車製造方法では、複数のスカイビングカッタ200を用いてワークを切削加工することによりバイアスイン歯車(歯幅方向で圧力角が変化する歯車)を製造する。
【0012】
図1に示すように歯車製造装置100では、スカイビングカッタ200はホルダ102を介して工具主軸(不図示)に取り付けられている。ワーク300は、チャック104に保持され、スカイビングカッタ200に同期して回転しながら切削加工が施される。本実施形態の歯車製造装置100では、スカイビングカッタ200およびチャック104は制御部110によって動作が制御される。尚、実際は、後述する図2図3に示すように、複数のスカイビングカッタには、符号210、220、230を付して示すが、図1においては、説明を簡略化するため、スカイビングカッタ200として示している。
【0013】
特に図1では、歯車製造装置100の稼働の際の姿勢を例示している。切削加工を行う際には、制御部110は、スカイビングカッタ200およびチャック104を制御し、ワーク300は回転軸A1(回転軸A1はワーク軸ともいう)を中心として所定の回転数で回転し、且つスカイビングカッタ200も回転軸A2(回転軸A2は工具軸ともいう)を中心として所定の回転数で回転する。そして2つの回転軸A1、A2が成す角度である交差角γ(後述する第1加工工程の場合)を保持した状態で、スカイビングカッタ200を図1に示す上方向から下方向へ移動することでワーク300が切削加工されて歯車が製造される。
【0014】
図2は、図1の歯車製造装置100を用いた歯車製造方法において用いられるスカイビングカッタ200の諸元を説明する図である。図2(a)に示すように、本実施形態の歯車製造方法では、両側の歯面を同時に切削加工する第1加工工程(通常の歯切りと同様の工程)と、歯先近傍を片面ずつ切削加工する第2加工工程と、歯元近傍を片面ずつ切削加工する第3加工工程を行う。第2加工工程と第3加工工程とはカッタを逆向きに付け替えて片面ずつ切削するため、細かく分ければ全部で5つの加工工程と捉えることもできる。なお、図2(a)においてα、β、γ、およびa~hは所定の正の値であり、基準値にプラス(+)している場合は値が大きくなることを示し、基準値にマイナス(-)している場合は値が小さくなることを示している。
【0015】
第1加工工程に使用する第1カッタ210は、図2(b)に示すように、歯厚を基準歯厚t1とする。第1カッタ210は、通常の歯切りに使用するスカイビングカッタと同様の仕様である。
【0016】
第2加工工程に使用する第2カッタ220は、図2(b)に示すように、歯厚t2は基準歯厚t1よりも薄く設定されている(t1>t2)。第1カッタ210の歯たけd1に対して、第2カッタ220の歯たけd2は低い(d1>d2)。また第2カッタ220のカッタ径Dに対して、第2カッタ220のカッタ径は小さい(D-g)。
【0017】
第3加工工程に使用する第3カッタ230は、図2(c)に示すように、歯厚t3は基準歯厚t1よりも薄く設定されている(t1>t3)。第1カッタ210の歯たけd1に対して、第3カッタ230の歯たけd3は高い(d3>d1)。ただし、第2カッタ220のカッタ径Dに対して、第3カッタ230のカッタ径は小さい(D-h)。これはワーク300と第1カッタ210の軸間距離と、ワーク300と第3カッタ230の軸間距離を同じにしたときに、第3カッタ230の先端がワーク300の歯底312に接触しないようにするためである。
【0018】
なお上記説明したように、第2カッタ220の歯厚t2および第3カッタ230の歯厚t3は、第1カッタ210の基準歯厚t1よりも薄ければよく、第2カッタ220の歯厚t2と第3カッタ230の歯厚t3の厚みの関係は任意に定めてよい。
【0019】
図3は、図1の歯車製造装置100を用いた歯車製造方法を説明する図である。図4は、図1のワーク300の歯面切削加工位置を説明する模式的な部分斜視図であり、図4(a)は左側、図4(b)は右側を示している。
【0020】
本実施形態の歯車製造方法では、まず交差角γを保持した状態で、図3(a)に示すように第1カッタ210を用いてワーク300において歯底312および隣接する両側の歯面302a・302bを同時に切削加工する(第1加工工程:通常歯切り工程)。このときの交差角をγとし、狙いねじれ角をβとし、圧力角(圧力角とは、歯面の1点、一般にはピッチ点において、その半径線と歯形の接線とのなす角度)を基準角度αとする(図2参照)。
【0021】
次に図3(b)に示すように第2カッタ220を用いて、歯面302a・302bの歯先近傍を片面ずつ切削加工する(第2加工工程:歯先歯切り工程)。詳細には第2加工工程では、第2カッタ220を用いて、歯面302a・302bの一方の歯先近傍の面304a(図4(a)参照)、および他方の歯先近傍の面304b(図4(b)参照)をそれぞれ切削加工する。
【0022】
上記の第2加工工程では、交差角を第1加工工程より小さいγ-eに変更してそれを保持した状態とし、狙いねじれ角を第1加工工程より小さいβ-cに変更することにより、圧力角が基準角度αよりも大きく(α+a)なるようにする(図2参照)。これにより歯先近傍の面304a、304bが斜めに削られる(歯先310も斜めに切削される)が、図4(a)(b)に示すように、歯面の左右で傾斜方向は逆になる。
【0023】
そして図3(c)に示すように第3カッタ230を用いて、歯面302a・302bの歯元近傍を片面ずつ切削加工する(第3加工工程:歯元歯切り工程)。詳細には第3加工工程では、第3カッタ230を用いて、歯面302a・302bの一方の歯元近傍の面306a(図4(a)参照)、および他方の歯元近傍の面306b(図4(b)参照)をそれぞれ切削加工する。
【0024】
上記の第3加工工程では、交差角を第1加工工程より大きいγ+fに変更してそれを保持した状態とし、狙いねじれ角を第1加工工程より大きいβ+dに変更することにより、圧力角が基準角度αよりも小さく(α-b)なるようにする(図2参照)。これにより歯元近傍の面306a、306bが斜めに削られるが、図4(a)(b)に示すように、歯面の左右で傾斜方向は逆になる。
【0025】
上記説明したように本実施形態の歯車製造装置100および歯車製造方法では、圧力角および歯厚が異なる複数のスカイビングカッタ(第1カッタ210、第2カッタ220および第3カッタ230)を用いてワーク300を切削加工する。これにより、歯幅方向で圧力角が変化するバイアスイン歯車を製造することができる。
【0026】
このとき、第1加工工程、第2加工工程および第3加工工程のいずれの工程においても交差角を一定(それぞれγ、γ-e、γ+f)に保持することにより、交差角の変化に伴う加工点の変化や切削抵抗の変化を抑制することができる。したがって、加工点がワーク軸心上を移動するため、所望の歯形精度を有する歯車を製造することが可能となる。
【0027】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0028】
100…歯車製造装置、102…ホルダ、104…チャック、110…制御部、200…スカイビングカッタ、210…第1カッタ、220…第2カッタ、230…第3カッタ、300…ワーク、302a…歯面、302b…歯面、304a…歯先近傍の面、304b…歯先近傍の面、306a…歯元近傍の面、306b…歯元近傍の面、310…歯先、312…歯底
図1
図2
図3
図4