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  • 特開-化粧シート及び化粧材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124369
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】化粧シート及び化粧材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20230830BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20230830BHJP
   E04F 13/07 20060101ALI20230830BHJP
   B27M 3/00 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
B32B27/00 E
E04F13/08 G
E04F13/07 B
E04F13/07 C
B27M3/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028098
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】折原 隆史
(72)【発明者】
【氏名】桑村 健介
(72)【発明者】
【氏名】明石 彩
(72)【発明者】
【氏名】野口 祥太
【テーマコード(参考)】
2B250
2E110
4F100
【Fターム(参考)】
2B250FA31
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2E110BA05
2E110BB22
2E110BC02
2E110GA32Y
2E110GB05W
2E110GB17W
2E110GB35W
2E110GB43W
4F100AA01A
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4F100AA17A
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4F100AL05A
4F100AL07C
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4F100BA03
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4F100JC00A
4F100JL10A
4F100JL11B
4F100JN01C
(57)【要約】
【課題】植物由来の材料を用いて形成した場合であっても、隠蔽性の低下を抑制することが可能な化粧シート及び化粧材を提供する。
【解決手段】本実施形態に係る化粧シート1は、着色基材層2と、接着性樹脂層4と、透明樹脂層5とをこの順に備え、着色基材層は、バイオマス由来のオレフィンを含むモノマーが重合したバイオマス由来のポリオレフィンを含む樹脂組成物で形成されており、さらに着色基材層2は無機物を含み、着色基材層2の比重が、0.97以上1.5以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色熱可塑性樹脂層と、接着性樹脂層と、透明熱可塑性樹脂層とをこの順に備え、
前記着色熱可塑性樹脂層は、バイオマス由来のオレフィンを含むモノマーが重合したバイオマス由来のポリオレフィンを含む樹脂組成物で形成された樹脂層であり、
前記着色熱可塑性樹脂層はさらに無機物を含み、当該着色熱可塑性樹脂層の比重が、0.97以上1.5以下であることを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記無機物は、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、シリカ、クロム、アンチモン、チタン複合物、及びその他の酸化物のうちのいずれか一つ又は複数であることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
全体でバイオマス由来の材料を5質量%以上含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化粧シート。
【請求項4】
全体の比重が、0.97以上1.5以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の化粧シート。
【請求項5】
基材と、
前記基材の少なくとも一方の面に積層された請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の化粧シートと、を備えることを特徴とする化粧材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シート及び化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビニル製の化粧シートに代わる化粧シートとして、例えば、特許文献1に開示されているように、オレフィン系樹脂を使用した化粧シートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-188941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、環境問題の背景から、化粧シートの材料を、従来の材料である石油由来の材料から、植物由来の材料へ代える要求がある。しかしながら、化粧シートに用いることが可能な植物由来の材料として、バイオマスポリエチレン等のバイオマスポリオレフィンを用いると、化粧シートとして用いるには、隠蔽性が不充分であるという課題があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を鑑み、植物由来の材料を用いて形成した場合であっても、隠蔽性の低下を抑制することが可能な化粧シート及び化粧材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、着色熱可塑性樹脂層と、接着性樹脂層と、透明熱可塑性樹脂層とをこの順に備え、前記着色熱可塑性樹脂層は、バイオマス由来のオレフィン含むモノマーが重合したバイオマス由来のポリオレフィンを含む樹脂組成物で形成された樹脂層であり、前記着色熱可塑性樹脂層はさらに無機物を含み、当該着色熱可塑性樹脂層の比重が、0.97以上1.5以下となる化粧シートである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、植物由来の材料であるバイオマス由来のポリオレフィンを用いて形成した場合であっても、隠蔽性の低下を抑制することが可能な化粧シート及び化粧材を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態における化粧シート及び化粧材の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本技術の実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる場合が含まれる。以下に示す実施形態は、本技術の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本技術の技術的思想は、下記の実施形態に例示した装置や方法に特定するものでない。本技術の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」になり、「右」が「左」になることは勿論である。
【0010】
以下、図1を参照して、化粧材10の構成について説明する。
化粧材10は、図1に示すように、化粧シート1と、基材9を備える。なお、化粧シート1の具体的な構成については、後述する。
基材9は、例えば、木質ボード類、無機質ボード類、金属板等を用いて板状に形成されており、一方の面(図1では、上側の面)に、化粧シート1が積層されている。すなわち、化粧材10は、基材9と、基材9の一方の面に積層された化粧シート1を備える。
【0011】
(化粧シートの構成)
化粧シート1は、図1に示すように、着色基材層(着色熱可塑性樹脂層)2と、絵柄層3と、接着性樹脂層4と、透明樹脂層(透明熱可塑性樹脂層)5と、表面保護層6と、凹凸部7と、プライマー層8とを備える。
【0012】
<着色基材層>
着色基材層2は、熱可塑性樹脂を用いて形成された樹脂層であって、バイオマス由来(植物由来)のポリエチレンを含む樹脂組成物で形成された着色樹脂層であり、さらにこの着色樹脂層は無機物を含んでいる。
以下、着色基材層2の組成について詳しく説明する。
(バイオマス由来のポリエチレン)
本実施形態において、バイオマス由来のポリエチレンは、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるものである。バイオマス由来のエチレンは、特に限定されず、従来公知の方法により製造されたエチレンを用いることができる。原料であるモノマーとしてバイオマス由来のエチレンを用いているため、重合されてなるポリエチレンはバイオマス由来となる。
なお、ポリエチレンの原料モノマーは、バイオマス由来のエチレンを100質量%含むものでなくてもよい。
【0013】
バイオマス由来のポリエチレンの原料であるモノマーは、化石燃料由来のエチレンおよび化石燃料由来のα-オレフィンの少なくとも一種をさらに含んでもよいし、バイオマス由来のα-オレフィンをさらに含んでもよい。
【0014】
上記のα-オレフィンは、炭素数は特に限定されないが、通常、炭素数3~20のものを用いることができ、ブチレン、ヘキセン、またはオクテンであることが好ましい。ブチレン、ヘキセン、またはオクテンであれば、バイオマス由来の原料であるエチレンの重合により製造することが可能となるからである。また、このようなα-オレフィンを含むことで、重合されてなるポリエチレンはアルキル基を分岐構造として有するため、単純な直鎖状のものよりも柔軟性に富むものとすることができる。
【0015】
バイオマス由来の原料であるエチレンを用いることで、理論上100%バイオマス由来の成分により製造することが可能となる。
【0016】
上記のポリエチレン中のバイオマス由来のエチレン濃度(以下、「バイオマス度」ということがある)は、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量を測定した値である。大気中の二酸化炭素には、C14が一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物、例えばトウモロコシ中のC14含有量も105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中にはC14が殆ど含まれていないことも知られている。したがって、ポリエチレン中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。本実施形態においては、ポリエチレン中のC14の含有量をPC14とした場合の、バイオマス由来の炭素の含有量Pbioは、以下のようにして求めることができる。
Pbio(%)=PC14/105.5×100
【0017】
本実施形態においては、理論上、ポリエチレンの原料として、全てバイオマス由来のエチレンを用いれば、バイオマス由来のエチレン濃度は100%であり、バイオマス由来のポリエチレンのバイオマス度は100となる。また、化石燃料由来の原料のみで製造された化石燃料由来のポリエチレン中のバイオマス由来のエチレン濃度は0%であり、化石燃料由来のポリエチレンのバイオマス度は0となる。
【0018】
本実施形態において、バイオマス由来のポリエチレンやそのポリエチレンを含んで構成された化粧シートは、バイオマス度が100である必要はない。
【0019】
本実施形態において、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合方法は、特に限定されず、従来公知の方法により行うことができる。重合温度や重合圧力は、重合方法や重合装置に応じて、適宜調節するのがよい。重合装置についても特に限定されず、従来公知の装置を用いることができる。以下、エチレンを含むモノマーの重合方法の一例を説明する。
【0020】
エチレン重合体やエチレンとα-オレフィンの共重合体の重合方法は、目的とするポリエチレンの種類、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、および直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等の密度や分岐の違いにより、適宜選択することができる。例えば、重合触媒として、チーグラー・ナッタ触媒等のマルチサイト触媒や、メタロセン系触媒等のシングルサイト触媒を用いて、気相重合、スラリー重合、溶液重合、および高圧イオン重合のいずれかの方法により、1段または2段以上の多段で行うことが好ましい。
【0021】
また、バイオマス由来のポリエチレンとして、エチレンの重合体やエチレンとα-オレフィンの共重合体を、単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
【0022】
(バイオマス由来のポリエチレンを含む樹脂組成物)
本実施形態において、樹脂組成物は、上記のポリエチレンを主成分として含むものである。樹脂組成物は、バイオマス由来のエチレンを樹脂組成物全体に対して5質量%以上、好ましくは5~95質量%、より好ましくは25~75質量%含んでなるものである。樹脂組成物中のバイオマス由来のエチレンの濃度が5質量%以上であれば、従来の化石燃料を用いる場合に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルな化粧シートを実現できる。
【0023】
上記の樹脂組成物は、異なるバイオマス度のポリエチレンを2種以上含むものであってもよく、樹脂組成物全体として、バイオマス由来のエチレンの濃度が、上記範囲内であればよい。
【0024】
上記の樹脂組成物は、化石燃料由来のエチレンと、化石燃料由来のエチレンおよびα-オレフィンの少なくとも一方とを含むモノマーが重合してなる化石燃料由来のポリエチレンをさらに含んでもよい。つまり、本実施形態においては、樹脂組成物は、バイオマス由来のポリエチレンと、化石燃料由来のポリエチレンとの混合物であってもよい。混合方法は、特に限定されず、従来公知の方法で混合することができる。例えば、ドライブレンドでもよいし、メルトブレンドでもよい。
【0025】
本実施形態によれば、樹脂組成物は、5質量%以上好ましくは5~90質量%、より好ましくは25~75質量%のバイオマス由来のポリエチレンを含むものである。樹脂組成物は、バイオマス由来のポリエチレンと、例えば化石燃料由来のポリエチレンとの混合物を含んでいてもよく、このような混合物の樹脂組成物を用いた場合でも、樹脂組成物全体として、バイオマス由来のエチレンの濃度が、5質量%以上好ましくは5~90質量%、より好ましくは25~75質量%の範囲内であればよい。
【0026】
上記の樹脂組成物の製造工程において製造された樹脂組成物には、その特性が損なわれない範囲において、主成分であるポリエチレン以外に、各種の添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、スリップ剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、および着色顔料等を添加することができる。これら添加剤は、樹脂組成物全体に対して、好ましくは1~20質量%、好ましくは1~10質量%の範囲で添加される。
(無機物)
着色基材層2は無機物を含み、着色基材層2の比重は0.97以上1.5以下である。
無機物としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、シリカ、クロム、アンチモン、チタン複合物、及びその他酸化物等のうちのいずれか一つ又は複数を適用することができる。
【0027】
以上のように、着色基材層2は、バイオマス由来のエチレンを着色基材層2全体に対して5質量%以上含んでなるものである。着色基材層2中のバイオマス由来のエチレンの濃度が5質量%以上であれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルな化粧シートを実現できる。
【0028】
さらに、着色基材層2は、比重が0.97以上1.5以下となるように無機物が添加されている。比重が0.97以上1.5以下となるように、着色基材層2に無機物を添加することによって、着色基材層2の隠蔽性を高めることができる。
【0029】
着色基材層2は、バイオマス由来のポリエチレンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、バイオマス由来の低密度ポリエチレンとを含むもの、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと化石燃料由来のポリエチレンとを含むもの、化石燃料由来の高密度ポリエチレンとバイオマス由来の低密度ポリエチレンとを含むもののうちのいずれであっても良く、また、着色基材層2全体のバイオマス度が10%以上90%以下の範囲内であってもよい。
なお、バイオマス由来の高密度ポリエチレンとは、密度が0.94を超えるポリエチレンをいう。また、バイオマス由来の低密度ポリエチレンとは、密度が0.94以下のポリエチレンをいう。
着色基材層2は、バイオマス由来のポリエチレンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレン(バイオマス由来のものであっても、化石燃料由来のものであってもよい)を、95:5~70:30の範囲内でブレントしたものが良い。低密度ポリエチレンの含有量が少ないと製膜安定性が悪く、低密度ポリエチレンの含有量が多いと柔らかくなりすぎてしまうという問題がある。
【0030】
着色基材層2の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法により製造することができる。本実施形態においては、カレンダー成形で形成することが好ましい。
【0031】
また、着色基材層2には、必要に応じて、例えば、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上の添加剤を添加してもよい。
着色基材層2の厚さは、40μm以上200μm以下の範囲内であることが好ましく、51μm以上200μm以下であることがより好ましく、55μm以上100μm以下であることがさらに好ましい。これは、着色基材層2の厚さが40μm以上である場合、下地となる床材等の凹凸や段差等を吸収して化粧シート1の施工仕上がりを良好にすることが可能であることに起因する。また、着色基材層2の厚さが200μm以下である場合、着色基材層2を必要以上に厚く形成することがなく、化粧シート1の製造コストを削減することが可能であることに起因する。
【0032】
なお、本実施形態では、着色基材層2を構成するバイオマス由来の樹脂として、バイオマス由来のポリエチレンについて説明したが、本発明はこれに限定させるものではない。例えば、上述したバイオマス由来のポリエチレンに代えて、バイオマス由来のポリプロピレンやバイオマス由来のポリブチレン等を用いてもよい。つまり、本実施形態においては、着色基材層2を構成するバイオマス由来の樹脂として、広くバイオマス由来のポリオレフィンを用いることができる。
【0033】
<絵柄層>
絵柄層3は、着色基材層2の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、意匠性を付与するための絵柄を付加するための層である。なお、絵柄層3は、着色基材層2の着色で代用することが可能である場合には、省略も可能である。
また、絵柄層3は、印刷インキ又は塗料等を用いて形成される。絵柄層3を形成する印刷インキ又は塗料等は、例えば、染料又は顔料等の着色剤を、適当なバインダ樹脂とともに適当な希釈溶媒中に溶解又は分散させて形成される。
【0034】
絵柄層3を形成する印刷インキ又は塗料等は、例えば、グラビア印刷法又はオフセット印刷法等の各種印刷法や、グラビアコート法又はロールコート法等の各種塗工法等を用いて塗布される。
バインダ樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化酢酸ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、硝化綿等、又はそれらの混合物等を用いることが可能であるが、これらに限定されるものではない。
絵柄としては、任意の絵柄を用いることが可能であり、例えば、木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様、文字、記号、単色無地等、又はそれらの組み合わせ等を用いること可能である。また、化粧シート1の隠蔽性を向上するために、絵柄層3と着色基材層2との間に、隠蔽層を設けてもよい。隠蔽層は、例えば、二酸化チタンや酸化鉄等の不透明顔料を多く含む不透明な印刷インキや塗料を用いて形成する。
【0035】
絵柄層3の厚さは、1μm以上10μm以下の範囲内であることが好ましい。これは、絵柄層3の厚さが1μm以上である場合、印刷を明瞭にすることが可能であることに起因する。また、絵柄層3の厚さが10μm以下である場合、化粧シート1を製造する際の印刷作業性が向上し、且つ製造コストを抑制することが可能であることに起因する。
また、絵柄層3には、各種機能を付与するために、例えば、体質顔料、可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着付与剤、接着助剤、乾燥剤、硬化剤、硬化促進剤及び硬化遅延剤等の機能性添加剤を添加してもよい。
また、絵柄層3は、例えば、化粧シート1が貼りつけられる下地の色・模様を隠蔽するために、ベタ塗りされた着色基材層と、意匠性を付与するための絵柄を付加するための絵柄模様層とを有する構成としてもよい。
【0036】
<接着性樹脂層>
接着性樹脂層4は、絵柄層3の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、絵柄層3と透明樹脂層5との接着に用いられる層である。
接着性樹脂層4の材料としては、例えば、ウレタン系、アクリル系、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系、ポリエステル、ポリオレフィン系等を用いることが可能である。特に透明樹脂層5との接着性からポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0037】
<透明樹脂層>
透明樹脂層5は、接着性樹脂層4の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、上述したバイオマス由来(植物由来)のポリエチレンを含む樹脂組成物、もしくは化石燃料由来のポリエチレンを含む樹脂組成物で形成された透明樹脂層である。より詳しくは、透明樹脂層5は、上述したバイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合したバイオマス由来のポリエチレンを含む樹脂組成物で形成された樹脂層である。つまり、透明樹脂層5では、着色基材層2で用いたバイオマス由来のポリエチレンを含む樹脂組成物において、無機物が添加されていない樹脂組成物を用いてもよい。言い替えれば、着色基材層2及び透明樹脂層5は共に、バイオマス由来(植物由来)のポリエチレンを含む樹脂組成物で形成され、着色基材層2にはさらに無機物が添加されているが、透明樹脂層5には無機物が添加されていない。絵柄層3の上層にある透明樹脂層5には無機物を添加せず、絵柄層3の下層にある着色基材層2のみに無機物を添加しているため、透明樹脂層5の透明性を保つことで絵柄層3が隠蔽されることを抑制しつつ、着色基材層2の隠蔽性を高めることで、化粧シート1が貼り付けられる下地の色・模様を隠蔽することができる。
【0038】
透明樹脂層5は、上述したバイオマス由来のエチレンを透明樹脂層5全体に対して5質量%以上、好ましくは5~90質量%、より好ましくは25~75質量%、最も好ましくは40~75%含んでなるものであってもよい。透明樹脂層5中のバイオマス由来のエチレンの濃度が5質量%以上であれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルな化粧シートを実現できる。
【0039】
透明樹脂層5は、バイオマス由来のポリエチレンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンを含んでもよい。
また、透明樹脂層5は、バイオマス由来のポリエチレンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、バイオマス由来の低密度ポリエチレンとを、100:0~20:80の範囲内でブレントされたポリエチレンを含んでもよい。
また、透明樹脂層5は、透明樹脂層5全体のバイオマス度が10%以上90%以下の範囲内であってもよい。
【0040】
透明樹脂層5の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法により製造することができる。本実施形態においては、押出成形で形成することが好ましく、押出成形が、Tダイ法またはインフレーション法により行われることがより好ましい。
【0041】
透明樹脂層5を形成するバイオマス由来のポリエチレンには、核剤(例えば、理研ビタミン株式会社製の「リケマスターCN-002」)が添加されていてもよい。
核剤は、ポリエチレンの質量を基準として、500ppm以上2000ppm以下の範囲内で、ポリエチレンに添加されていれば好ましく、1500ppm以上2000ppm以下の範囲内で、ポリエチレンに添加されていればさらに好ましい。
【0042】
透明樹脂層5には、必要に応じて、例えば、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上を添加してもよい。
なお、透明樹脂層5は、化粧シート1の表面(上面)から絵柄層3の絵柄を透視することが可能な程度の透明性(無色透明、有色透明、半透明)を有することが好ましい。
【0043】
<表面保護層>
表面保護層6は、透明樹脂層5の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、化粧シート1に対して、耐候性、耐傷性、耐汚染性、意匠性等の機能を付与するために設けられた層である。
また、表面保護層6は、例えば、アクリル系樹脂組成物を用いて形成されている。
また、表面保護層6には、必要に応じて、耐候剤、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料等の着色剤、溶剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤および艶調整剤等の各種添加剤等を含有させてもよい。また、表面保護層6には、必要に応じて、抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤等を含有させてもよい。
【0044】
<凹凸部>
凹凸部7は、透明樹脂層5と表面保護層6の複数箇所に設けた凹部によって形成されている。
【0045】
<プライマー層>
プライマー層8は、下地となる層であって、着色基材層2と基材9との密着性・耐食性を向上させるための層である。
また、プライマー層8は、着色基材層2の他方の面(図1では、下側の面)に積層されている。
さらに、プライマー層8は、例えば、ポリエステル系樹脂、有機添加剤、顔料等を用いて形成されている。
なお、プライマー層8には、耐食性を向上させる目的で防錆顔料を配合しても良い。
プライマー層8の厚さは、例えば、1μm以上10μm以下の範囲内である。
<化粧シート中のバイオマス由来のエチレンの濃度>
上述のように、着色基材層2及び透明樹脂層5は、それぞれバイオマス由来のエチレンを5質量%以上含み、化粧シート1全体では、バイオマス由来の材料を、5質量%以上含むことが好ましい。
<化粧シート全体の比重>
化粧シート1全体の比重は、着色熱可塑性樹脂層に無機物を添加することで0.97以上1.5以下であることが好ましい。このようにすることによって、例えば、化石燃料由来のポリエチレンを用いて形成した構成と同等程度の隠蔽性を有する化粧シート1を形成することが可能となる。
【0046】
なお、上述した実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0047】
(本実施形態の効果)
本実施形態の化粧シート1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)着色基材層2は、バイオマス由来のエチレンを含む樹脂組成物で形成された樹脂層であり、バイオマス由来のエチレンを5質量%以上含み、さらに着色基材層2には無機物が添加されており、着色基材層2の比重は0.97以上1.5以下である。
このため、植物由来の材料であるバイオマス由来のポリエチレンを用いた構成であっても、例えば、化石燃料由来のポリエチレン等を用いて形成した構成と同等程度の隠蔽性を有する着色基材層2を形成することが可能となる。
【0048】
その結果、植物由来の材料であるバイオマス由来のポリエチレンを用いて形成した場合であっても、隠蔽性の低下を抑制することが可能な化粧シート1を提供することが可能となる。
【0049】
(2)透明樹脂層5及び着色基材層2の少なくとも一方の層は、バイオマス由来のポリエチレンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、バイオマス由来の低密度ポリエチレンとを含んでいてもよい。
その結果、さらに柔軟性を有する透明樹脂層5及び着色基材層2を形成することが可能となる。
【0050】
(3)透明樹脂層5は、バイオマス由来のポリエチレンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、バイオマス由来の低密度ポリエチレンとを、100:0~20:80の範囲内でブレントされたポリエチレンを含んでいてもよい。
その結果、高い硬度を有する透明樹脂層5を形成することが可能となる。
【0051】
(4)着色基材層2は、バイオマス由来のポリエチレンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、バイオマス由来の低密度ポリエチレンとを含み、且つ、バイオマス度が10%以上90%以下の範囲内であってもよい。
その結果、製膜安定性が良く、化粧シートとして充分な柔らかさを有する着色基材層2を形成することが可能となる。
【0052】
また、本実施形態の化粧材10であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(5)基材9と、基材9の少なくとも一方の面に積層された化粧シート1とを備える。
その結果、植物由来の材料であるバイオマス由来のポリエチレンを用いて形成した場合であっても、隠蔽性の低下を抑制することが可能な化粧材10を提供することが可能となる。
【0053】
<変形例>
(1)実施形態では、化粧材10の構成を、基材9の一方の面に積層された化粧シート1を備える構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、化粧材10の構成を、基材9の一方の面に加え、基材9の他方の面(図1では、下側の面)にも積層された化粧シート1を備える構成としてもよい。
[実施例]
本実施形態を参照しつつ、以下、実施例1から6の化粧シートと、比較例1から3の化粧シートとについて説明する。
【0054】
(実施例1)
基材の一方の面にコロナ放電処理を施した後、基材の一方の面に、ウレタン系印刷インキで印刷された絵柄層と、ウレタン系接着剤層と、無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂層(接着性樹脂層)と、透明樹脂層と、アクリル系樹脂組成物を主成分とする表面保護層とをこの順に積層した。また、基材の他方の面にコロナ放電処理を施した後、基材の他方の面にポリエステルウレタン樹脂からなるプライマー層(厚さ:1~2μm)を形成した。こうして、実施例1の化粧シート(総厚:135μm)を得た。化粧シートのバイオマス度は80%である。
この化粧シートのプライマー層側に、例えばエバジャパンコーティングレジン社製の接着剤BA-10Lとジャパンコーティングレジン社製硬化剤BA-11Bとを用いて、MDF(Medium density fiberboard:中質繊維板)を張り合わせることで化粧材を得ることができる。
実施例1では、基材として、バイオマス由来のポリエチレン(ブラスケム社製の「グリーンポリエチレン」)を含む樹脂組成物で形成され、無機物が添加された着色基材層(厚さ:55μm)を用いた。このバイオマス由来のポリエチレンは、バイオマス由来の高密度ポリエチレンとバイオマス由来の低密度ポリエチレンとをブレンドした樹脂である。着色基材層の比重が1.2となるように、無機物として炭酸カルシウム及び酸化チタンを配合した。この樹脂をルーダーラミネートすることで着色基材層を得た。こうして形成された着色基材層のバイオマス度は80%である。
透明樹脂層には、着色基材層と同様に、バイオマス由来のポリエチレン(ブラスケム社製の「グリーンポリエチレン」)を含む樹脂組成物で形成された透明樹脂層(厚さ:60μm)ではあるが、無機物が添加されていない透明樹脂層を用いた。このバイオマス由来のポリエチレンは、バイオマス由来の高密度ポリエチレン(SHC7260)とバイオマス由来の低密度ポリエチレン(SPB681)とを、その比率(高密度ポリエチレン/低密度ポリエチレン)が80/20となるようにブレンドした樹脂である。この樹脂をルーダーラミネートすることで透明樹脂層を得た。
【0055】
(実施例2)
着色基材層の比重が0.97となるように、無機物として炭酸カルシウムを配合したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の化粧シートを得た。
【0056】
(実施例3)
着色基材層の比重が1.5となるように、無機物として炭酸カルシウム及び酸化チタンを配合したこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の化粧シートを得た。
【0057】
(実施例4)
着色基材層の比重が1.0となるように、無機物として炭酸カルシウム及び酸化チタンを配合したこと以外は実施例1と同様にして、実施例4の化粧シートを得た。
【0058】
(実施例5)
透明樹脂層を化石燃料由来のポリプロピレンを用いて形成した以外は実施例1と同様にして、実施例5の化粧シートを得た。
【0059】
(実施例6)
バイオマス由来の高密度ポリエチレン(SHC7260)とバイオマス由来の低密度ポリエチレン(SPB681)とを、その比率(高密度ポリエチレン/低密度ポリエチレン)が100/0となるようにブレンドし、その樹脂をルーダーラミネートすることで透明樹脂層を得た以外は実施例1と同様にして、実施例6の化粧シートを得た。
【0060】
(比較例1)
無機物として、比重が0.96となるように炭酸カルシウム及び酸化チタンを配合したこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の化粧シートを得た。
【0061】
(比較例2)
無機物として、比重が0.95となるように酸化チタンを配合したこと以外は実施例1と同様にして、比較例2の化粧シートを得た。
【0062】
(比較例3)
無機物として、比重が1.6となるように炭酸カルシウム及び酸化チタンを配合したこと以外は実施例1と同様にして、比較例3の化粧シートを得た。
【0063】
(性能評価、評価結果)
実施例1から5の化粧シートと、比較例1から3の化粧シートに対し、それぞれ、「隠蔽性」、「着色熱可塑性樹脂層(着色基材層)の生産性」、「印刷適正」を評価した。評価方法としては、以下に記載した方法を用いた。
【0064】
<隠蔽性>
化粧シートに対し、JIS6921壁紙で記載されている隠蔽性試験を行った。
JIS6921の隠蔽性の判定基準に従って判定を行い、4級を「◎」、3級を「○」、2級を「△」とした。
【0065】
<着色熱可塑性樹脂層の生産性>
化粧シートについて、表面状態等の製膜性、フィッシュアイの有無、厚みムラの有無等といった不良度合を目視により判定した。不良がほとんどない場合を「◎」、不良が存在するが、生産には影響がない場合を「○」、生産に影響するほどの不良がある場合を「×」とした。なお、不良個所が平米あたりに1~2個程度である場合には「○」と判定した。
【0066】
<印刷適正>
化粧シートについて、着肉不良の有無、乾燥時の熱ジワの有無などを目視により判定した。現行の化粧シートの印刷適正と遜色がない場合を「◎」、現行の印刷適正よりも劣るが、生産に影響がない場合を「○」、条件によっては生産に影響する場合を「△」とした。
【0067】
【表1】
【0068】
上述した方法を用いて、各種の性能を評価した結果を表1に示す。実施例1から6の化粧シートは、全ての評価試験に対して、ほぼ優れた性能を示した。一方、比較例1から3の化粧シートは、少なくとも一部の評価試験において不十分な性能を示した。
【符号の説明】
【0069】
1…化粧シート、2…着色基材層、3…絵柄層、4…接着性樹脂層、5…透明樹脂層、6…表面保護層、7…凹凸部、8…プライマー層、9…基材、10…化粧材
図1