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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012439
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】クリーンルームシステム
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/06 20060101AFI20230118BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20230118BHJP
   F24F 3/044 20060101ALI20230118BHJP
   F24F 13/28 20060101ALI20230118BHJP
   F24F 3/167 20210101ALI20230118BHJP
   B01D 46/00 20220101ALI20230118BHJP
【FI】
F24F7/06 C
F24F5/00 K
F24F3/044
F24F13/28
F24F3/167
B01D46/00 F
B01D46/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108568
(22)【出願日】2022-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2021115414
(32)【優先日】2021-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000222956
【氏名又は名称】東洋熱工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】中野 恭一
(72)【発明者】
【氏名】石野 貴広
(72)【発明者】
【氏名】平田 英士
【テーマコード(参考)】
3L053
3L058
4D058
【Fターム(参考)】
3L053BD04
3L058BF00
4D058JA01
4D058KB02
4D058QA01
4D058QA21
4D058QA25
4D058SA04
4D058UA08
4D058UA25
4D058UA30
(57)【要約】
【課題】室内の塵埃を効率的に排出可能なクリーンルームシステムを提供する。
【解決手段】クリーンルームシステム1は、床2、側壁3及び天井4を備えるクリーンルームに適用されるものである。クリーンルームシステム1は、床2に設けられ、床下5に繋がる開口6と、室内7における天井高の半分以上の高さに設けられて室外に繋がる吸込口9と、開口6、室内7、吸込口9、室外8の縦空間10及び床下5を通る空気の循環経路11と、床下5に設けられたファンフィルタユニット12と、を備える。ファンフィルタユニット12は、ファンとフィルタとを含んで構成されており、開口6を介して室内7に下から上への空気の流れを形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床、側壁及び天井を備えるクリーンルームに適用されるクリーンルームシステムであって、
前記床に設けられ、床下に繋がる開口と、
室内における天井高の半分以上の高さに設けられて室外に繋がる吸込口と、
前記開口、前記室内、前記吸込口、室外の縦空間及び前記床下を通る空気の循環経路と、
前記床下に設けられたファンフィルタユニットと、を備え、
前記ファンフィルタユニットは、ファンとフィルタとを含んで構成されており、前記開口を介して前記室内に下から上への前記空気の流れを形成することを特徴とするクリーンルームシステム。
【請求項2】
前記ファンフィルタユニットの前記ファンは、第1ファンであり、
前記第1ファンとは別の第2ファンが前記循環経路上に設けられており、
前記第2ファンは、前記ファンフィルタユニットの前記空気の取込口側に向かう空気の流れを形成している請求項1に記載のクリーンルームシステム。
【請求項3】
前記床下に設けられた床スラブを備え、
前記第2ファンは、前記床スラブに向けて前記空気を送り出すように配設されている請求項2に記載のクリーンルームシステム。
【請求項4】
コイルを含むファンコイルユニットを更に備え、
前記第2ファンは、前記ファンコイルユニット内に設けられている請求項2又は3に記載のクリーンルームシステム。
【請求項5】
前記ファンフィルタユニットを構成する前記ファンと前記フィルタは、横並びに配置されており、前記ファンは、前記フィルタに対して横向きに前記空気を通す請求項4に記載のクリーンルームシステム。
【請求項6】
前記ファンフィルタユニットよりも下流側にあって、前記開口の下方に、液体及び/又は前記塵埃を貯留する貯留部が設けられている請求項5に記載のクリーンルームシステム。
【請求項7】
前記吸込口は天井に設けられている請求項6に記載のクリーンルームシステム。
【請求項8】
前記開口は、第1開口であり、
前記床には、前記ファンフィルタユニットによって形成された下から上への前記空気の流路とは異なる位置に第2開口が形成されており、
前記床又は前記床下には、前記第2開口に連通して塵埃を収容可能な収容部が形成されている請求項7に記載のクリーンルームシステム。
【請求項9】
前記ファンフィルタユニットは、前記ファンフィルタユニットと前記床とを連結する連結構造を有する請求項8に記載のクリーンルームシステム。
【請求項10】
前記連結構造は、前記ファンフィルタユニット又は床の一方に設けられた吊ボルトと、前記ファンフィルタユニット又は床の他方に設けられた前記吊ボルトを通すステーと、前記吊ボルトに締め込まれることによって前記ステーの位置を前記一方に近づけるナットと、によって構成されている請求項9に記載のクリーンルームシステム。
【請求項11】
前記ファンフィルタユニットは、前記床より下に設けられた床スラブに置かれている請求項8に記載のクリーンルームシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンルームシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
室内の清浄度を高く保つために、室内の空気を循環させて、室内の塵埃をフィルタで捕集することが行われている。従来から高い清浄度が必要なクリーンルームにおいては、塵埃は重力で下方に降下するため、天井側から給気して、床側に排気するダウンフローが好適であるものとされていた。逆に、床側から給気して、天井側に排気するアップフローは不適当であるものとされていた。
例えば、特許文献1には、高度清浄域においてダウンフローで空気を流し、非高度清浄域においてはアップフローで空気を流すようにして、循環経路を形成することが記載されている。
また、クリーンルームにおける空気の流し方としては、ダウンフロー方式以外にも、側壁の開口から給気し、同一又は異なる側壁の他の開口から排気する水平一方向流方式や、天井の一部に設けられた開口から給気し、他の一部に設けられた開口から排気する方式(天井吹・吸込方式)等もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-90547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ダウンフロー方式においては、部屋全体で下降気流となることが理想だが、発熱体(装置や人)の影響で、一部で上昇気流が発生してしまい、塵埃が滞留してしまうことがあった。
【0005】
水平一方向流方式では、水平方向に温度ムラと清浄度ムラが発生してしまうことがあった。特に下流側に向かうほど、上流側のコイルによる熱交換の影響が低くなり、高温となってしまい、塵埃が空気中に蓄積することにより清浄度も低くなっていた。
【0006】
天井吹・吸込方式では、水平方向に移動する移動体(人等)による影響を受けやすく、発熱体である装置のレイアウトが変更されると、吹出口と吸込口の位置を大幅に変更しなければならなかった。また、仕切が無い場合は吹出流と吸込流で混合が生じてしまい、装置に供給する空気質が悪くなっていた(温度上昇、清浄度低下)。
【0007】
そして、直径約10μm以上の大きな塵埃については重力の影響を受けて降下しやすいが、それよりも小さな粒子についてはほぼ気流にのせて流すことができる。一般的にクリーンルームで問題になるのは0.5μm以下の小さな粒子が多い。このことを考慮すると、室内から塵埃を除去することに関して改善の余地があった。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであり、室内の塵埃を効率的に排出可能なクリーンルームシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のクリーンルームシステムは、床、側壁及び天井を備えるクリーンルームに適用されるクリーンルームシステムであって、前記床に設けられ、床下に繋がる開口と、室内における天井高の半分以上の高さに設けられて室外に繋がる吸込口と、前記開口、前記室内、前記吸込口、室外の縦空間及び前記床下を通る空気の循環経路と、前記床下に設けられたファンフィルタユニットと、を備え、前記ファンフィルタユニットは、ファンとフィルタとを含んで構成されており、前記開口を介して前記室内に下から上への前記空気の流れを形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のクリーンルームシステムによれば、室内から塵埃を効率的に除去して、クリーンルームの清浄度を好適に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係るクリールームシステムの模式図である。
図2】ファンフィルタユニットのファンボックスの正面図である。
図3】ファンフィルタユニットのファンボックスの底面図である。
図4】ファンボックスにフィルタボックスが取り付けられたファンフィルタユニットをパンチングパネルに取り付けた状態を示す正面図である。
図5】室内を上方から模式的に示す平面図である。
図6】アップフローとダウンフローの塵埃量と高さの関係を示す図である。
図7】粒子径ごとのアップフローとダウンフローの塵埃量を比較した図である。
図8】室外の縦空間にファンコイルユニットを配設した例を示す模式図である。
図9】床下の床スラブにファンフィルタユニットを配設した例を示す模式図である。
図10】(a)は、蓋が取り付けられた状態の収容部を示す模式図、(b)は、蓋が外された状態の収容部を示す模式図である。
図11】ダクトの横配管にファンフィルタユニットを設け、縦配管の下部に貯留部を設けた例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係るクリーンルームシステム1について、図面を用いて説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明するシステム、機器の種類、個数等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
また、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。なお、図面は、本発明を説明するためのものであり、図面に示された各部の寸法、比率、形状等は、本発明の趣旨の範囲で適宜変更可能である。
【0013】
<本発明の概要>
まず、図1から図4を主に参照して、本発明の概要について説明する。図1は、本実施形態に係るクリーンルームシステム1の模式図である。図2は、ファンフィルタユニット12のファンボックス19の正面図、図3は、ファンフィルタユニット12のファンボックス19の底面図である。図4は、ファンボックス19にフィルタボックス18が取り付けられたファンフィルタユニット12をパンチングパネル2aに取り付けた状態を示す正面図である。
【0014】
本実施形態に係るクリーンルームシステム1は、図1に示すように、床2、側壁3及び天井4を備えるクリーンルームに適用されるものである。クリーンルームシステム1は、床2に設けられ、床下5に繋がる開口6と、室内7における天井高の半分以上の高さ(本実施形態においては、天井4)に設けられて室外に繋がる吸込口9と、開口6、室内7、吸込口9、室外8の縦空間10及び床下5を通る空気の循環経路11と、床下5に設けられたファンフィルタユニット12と、を備える。図1においては、循環経路11をブロック矢印で示している。
ファンフィルタユニット12は、図2に示すファン(ターボファン13)と図4に示すフィルタ18aとを含んで構成されており、開口6を介して室内7に下から上への空気の流れを形成することを特徴とする。
【0015】
本書において、「天井高」とは、吸込口9が設けられている側壁の高さではなく、クリーンルーム全体で見た床面と天井との間の平均高さをいうものとする。
また、本書における「室内7における天井高の半分以上の高さ」とは、吸込口9が側壁に設けられている場合、当該吸込口9の高さ中央位置が、天井高の半分高さ又はそれ以上の高さであることをいう。
【0016】
本実施形態における開口6及び吸込口9は、複数の丸穴状であり、床2又は天井4の一部を構成して着脱可能なパンチングパネル2aに設けられている。このように着脱可能なパンチングパネル2aに開口6及び吸込口9が形成されていることで、負荷30(図5参照)や、人50の位置に応じて、パンチングパネル2aごと開口6及び吸込口9の配置を変更することができる点で好適である。
しかしながら、このような構成に限定されず、床2に開口6、天井4に吸込口9が形成されていればよく、パンチングパネル2aではなく、例えば方形の開口が形成されている網目状の不図示のグレーチングであってもよい。
【0017】
また、開口6又は吸込口9が形成されたパンチングパネル2aは、床2又は天井4の他の部位に対して着脱可能に構成されるものに形成されていると、負荷30(図5参照)の配置に応じた開口6又は吸込口9の位置調整が容易であるため好適である。しかしながら、このような構成に限定されず、開口6又は吸込口9は、床2又は天井4に直接設けられていてもよい。
【0018】
上記構成によれば、床下5から室内7に空気を送り込んで塵埃を噴き上げることで、水平一方向流方式及び天井吹・吸込方式と比較して、水平方向における温度及び清浄度のバラつきが生じることを抑制できる。
また、ダウンフロー方式と比較して、室内における上昇気流と下降気流とが混在することを低減でき、塵埃が滞留することを抑制できる。
特に、クリーンルームシステム1は、ファンフィルタユニット12を備えることで、塵埃を除去した空気を室内に送りこむことができるためクリーンルームの清浄度を好適に高めることができる。
【0019】
<各部の構成>
本実施形態に係るクリーンルームシステム1の循環経路11は、図1に示すように、床下5、室内7を通って、天井4の上方に向かう流れと、この流れに連続しているが、この流れが形成される空間とは水平方向にズレた位置にある上下に延在する縦空間10を通る流れと、を含んで形成されている。この縦空間10には、コイル20が配設されている。
【0020】
室内7に給気された空気は、天井4の吸込口9(パンチングパネル2a)を通過して、縦空間10内にあるコイル20を通って循環し、本実施形態においては、コイル20で高温空気の温度が下げられることになる。
ファンフィルタユニット12からの給気は、床2のパンチングパネル2aを通過して室内7に流入する。
【0021】
本実施形態における吸込口9は、上記のように天井4に設けられている。
このような構成によれば、床下5に設けられたファンフィルタユニット12からストレートに上方に流れる気流を生じさせやすくなる。吸込口9は、ファンフィルタユニット12に必ずしも対向する位置に設けられる必要はない。
【0022】
しかし、天井4のファンフィルタユニット12の対向する直上に吸込口9が設けられていれば、ストレートに上方に流れる気流をより生じさせやすくなる。このため、気流に乗った塵埃が水平方向に逸れて拡散することを抑制できる。
【0023】
しかしながら、本発明は、このような構成に限定されず、例えば、吸込口9は、上記のように、天井高の半分以上の高さに設けられていれば、クリーンルームの側壁3に設けられていてもよい。このような構成であっても、ファンフィルタユニット12により、清浄度を高く保つ必要がある室内7の下側領域においてアップフローを形成することができる。
【0024】
[ファンフィルタユニット]
ファンフィルタユニット12は、図2に破線で示すターボファン13で送風し、図4に示すフィルタ18aで清浄空気にして室内7に給気するものである。つまり、循環経路11内の開口6の下方にファンフィルタユニット12が設けられていることで、塵埃を除去したうえで、室内7に空気を導入することができる。
ファンフィルタユニット12は、図4に示すように、フィルタ18aを内蔵するフィルタボックス18と、ターボファン13及びターボファン13を駆動するモーター15を内蔵するファンボックス19と、ファンボックス19にパンチングパネル2aを連結する連結構造16と、ターボファン13の運転を制御する制御ボックス14と、を備える床吊り式のものである。
【0025】
図4に示すように、ファンフィルタユニット12は、ファンフィルタユニット12と床2(パンチングパネル2a)とを連結する連結構造16を有する。
具体的には、連結構造16は、ファンフィルタユニット12又は床2の一方に設けられた吊ボルト16bと、ファンフィルタユニット12又は床2の他方に設けられた吊ボルト16bを通すステー16aと、吊ボルト16bに締め込まれることによってステー16aの位置を一方に近づけるナット16cと、によって構成されている。
【0026】
図4に示すように、本実施形態における吊ボルト16bは、床2(パンチングパネル2a)の下面に、下方に延在するように4本取り付けられている。吊ボルト16bの延在先の位置にL字状のプレートであるステー16aが4つ設けられており、ステー16aの各々が2本のビスでファンボックス19(ファンフィルタユニット12)の上端部の側面に取り付けられている。ステー16aには吊ボルト16bを通す鉛直方向に延在する貫通孔が形成されており、吊ボルト16bは、この貫通孔に通された先で、ナット16cに締結されている。
【0027】
なお、吊ボルト16bがファンフィルタユニット12側に上方に延在するように取り付けられ、ステー16aが床2(パンチングパネル2a)の吊ボルト16bの延在先の位置に取り付けられていてもよい。
このような構成により、ナット16cを吊ボルト16bに締め込むことによって、ファンフィルタユニット12をパンチングパネル2aに取り付けることができる。
【0028】
パンチングパネル2aとフィルタボックス18(ファンフィルタユニット12)との間には不図示のパッキンその他の柔軟材が設けられている。このパッキンその他の柔軟材により、ファンフィルタユニット12とパンチングパネル2aとの間の気密性を高めつつ、ファンフィルタユニット12からパンチングパネル2aに振動が伝播することを低減している。
【0029】
また、連結構造16は、床2(パンチングパネル2a)に連結できればよく、このような構成に限定されない。例えば、連結構造16は、ボルト・ナットとフランジとで構成される構造であってもよい。
【0030】
上記構成によれば、連結構造16により、ファンフィルタユニット12と床2との連結を強固にすることができる。
さらに、吊ボルト16b、ステー16a及びナット16cによって構成される連結構造16によって、ファンフィルタユニット12と床2との密着性を高めることができる。
【0031】
<塵埃量について>
次に、図5図6及び図7を参照して、本実施形態に係るアップフローと比較例に係るダウンフローとの塵埃量を比較して説明する。図5は、室内7を上方から模式的に示す平面図、図6は、アップフローとダウンフローの塵埃量と高さの関係を示す図、図7は、粒子径ごとのアップフローとダウンフローの塵埃量を比較した図である。
図7は、細かな粒子(5μm未満)を、床2から1.5m、大きい粒子(5μm以上)を、床面で採取した実験結果を示すものである。
【0032】
図5に示すように、天井4に吸込口9、及び床2(パンチングパネル2a)に開口6が形成されており、負荷30が3箇所に配設されている。そして、パンチングパネル2aは、床2にまばらに配置されていることで、床2の全面積の約20%の割合で形成されている。吸込口9は、床2の全面積の約10%の割合で形成されている。
【0033】
本実施形態においては、空調した外気を不図示の開口から循環経路11に導入している。この外気導入分の空気は、不図示の排気ダクトや壁の隙間から排出されている。
本実施形態における一時間当たりの換気回数は、約70回であり、負荷30の熱負荷は、床2の1mあたり約700Wとした。
【0034】
実験の結果、図6に示すように、クリーンルーム内において、アップフローにおける平均径約0.3μm塵埃量が、ダウンフローにおける平均径約0.3μm塵埃量に対して、約50%低減した。
【0035】
また、図7に示すように、粒子径が大きい場合でも、アップフローの方がダウンフローよりも塵埃量が多いという結果はでなかった。また、いずれの空調方式でも粒子径の大きい塵埃は床面に沈着することになるので、これらの塵埃については、清拭や吸引などで除去することになる。
【0036】
<第1変形例>
次に、図8を参照して、第1変形例に係るクリーンルームシステム1Xについて説明する。図8は、室外8の縦空間10にファンコイルユニット32を配設した例を示す模式図である。
【0037】
本例に係るクリーンルームシステム1Xは、図8に示すように、コイル34を含むファンコイルユニット32を縦空間10に備えるものである。本例に係るクリーンルームシステム1Xは、図1のコイル20を、ターボファン33を有するファンコイルユニット32に変更したものである。
ファンコイルユニット32は、コイル34で高温空気の温度を下げて(又は低温空気の温度を上げて)、ターボファン33で送風するものである。ファンコイルユニット32から送り出された空気は、ファンフィルタユニット12で清浄空気となって、室内7に給気される。
本例におけるファンコイルユニット32は、図8の奥行き方向に2台設けられているが、このような構成に限定されず、1台のみであってもよく、更に複数設けられていてもよい。
【0038】
ファンフィルタユニット12のファン(ターボファン13)は、第1ファンであり、第1ファンとは別の第2ファン(ターボファン33)が循環経路11上に設けられており、ターボファン33は、ファンフィルタユニット12の空気の取込口17側に向かう空気の流れを形成している。
【0039】
本例においては、ターボファン33は、上記のようにファンコイルユニット32内に設けられており、コイル34よりも下流側に配設されている。
しかしながらこのような構成に限定されず、ターボファン33は、コイル34よりも上流側に配設されていてもよい。
また、本例においては、ファンコイルユニット32内にターボファン33が設けられているものとして説明したが、コイル34は必ずしもユニットとして設けられている必要はなく、ターボファン33のみが設けられていてもよい。
【0040】
上記構成によれば、ファンフィルタユニット12の動作によって圧力が低下する取込口17側の床下5に、ターボファン33により空気を送り込むことで、室内7と床下5の間で大きな差圧が生じることを抑制できる。このため、床下5から室内7に送り込んだ空気が床2の隙間を通って床下5にショートサーキットして、縦空間10を通らずに床下5に戻ることを防止できる。
【0041】
また、ファンフィルタユニット12の送風能力をフィルタ18aの圧力損失を解消できる程度に抑制したとしても、ターボファン33による追加的の動力により室内7に空気を送り込むことができる。このため、フィルタ18aの送風能力を抑制して、フィルタ18aを有するファンフィルタユニット12が床2に取り付けられているときに床2に振動が伝わることを抑制できる。
【0042】
「ターボファン33は、・・・取込口17側に向かう空気の流れを形成している。」とは、ターボファン33が直接取込口17に向けて空気を送り出すものに限定されない。
例えば、図8に示す本実施形態においては、クリーンルームシステム1Xが床下5に設けられた床スラブ5aを備え、第2ファン(ターボファン33)は、床スラブ5aに向けて空気を送り出すように配設されている。そして、空気は床スラブ5a(又は床スラブ5a及び縦空間10の側壁)に当たることによって向きが変わって取込口17に向かって間接的に空気が流れ込んでいる。
【0043】
上記構成によれば、第2ファン(ターボファン33)が床スラブ5aに空気を送り出し、床スラブ5aに当接させることで、ファンフィルタユニット12に向けて空気を直接送り込む場合と比較して、ターボファン33の送風方向に直交する方向に分散させてファンフィルタユニット12に空気を送り込むことができる。このため、図8の紙面に直交する方向に、ファンフィルタユニット12を複数個設けずとも、この方向に広く空気を行き渡らせることができる。
【0044】
ファンフィルタユニット12のターボファン13(図2参照。)のファン出力は、フィルタ18aの圧力損失分だけを担うものとしてもよい。このようにすれば、室内7と床下5内の差圧を小さく抑えることができ、ショートサーキットしてしまうことを抑制できる。さらに、ファンフィルタユニット12のファン出力を低く抑えることができるので、ファンフィルタユニット12から床2に振動が伝播することを抑えることもできる。
【0045】
第2ファン(ターボファン33)は、上記のようにファンコイルユニット32内に設けられている。このような構成によれば、ファンコイルユニット32により、温度調整を行ったうえで送風することができる。
【0046】
なお、室内7から室外8への塵埃の排出をより効果的にするため、追加的に不図示のファンを設けるようにしてもよい。例えば、天井4の吸込口9の近傍に追加的な不図示のファンを設けるようにして、室内7から室外8への塵埃の移動を促進するようにしてもよい。
【0047】
<第2変形例>
次に、図9を主に参照して、第2変形例に係るクリーンルームシステム1Yについて説明する。図9は、床下5の床スラブ5aにファンフィルタユニット31を配設した例を示す模式図である。
【0048】
本例に係るファンフィルタユニット31は、床2より下に設けられた床スラブ5aに置かれている。具体的には、ファンフィルタユニット31は、500mm角の中心間隔で4本配置された支柱31aを備え、支柱31aが床スラブ5aに固定されている。ファンフィルタユニット31は、床2のパンチングパネル2aの開口6に向けて給気するように、開口6に対向する位置に配設されている。
【0049】
上記構成によれば、ファンフィルタユニット31が床スラブ5aに置かれている、つまり、床2に取り付けられていないことで、ファンフィルタユニット31が動作することによって生じる振動が床2に伝わることを抑制できる。
【0050】
特に、上記のようにファンフィルタユニット31の支柱31aが床スラブ5aに固定されていることで、ファンフィルタユニット31と床スラブ5aとの間に空間が形成され、下方から上方への空気の流れを形成することが可能となる。
【0051】
なお、上記のように、図9においては、ファンフィルタユニット31と床2(パンチングパネル2a)とが離間しているが、このような構成に限定されない。
例えば、ファンフィルタユニット31と床2との間に不図示のパッキンが挟み込まれているとより好適である。このような構成によれば、ファンフィルタユニット31と床2との間の気密性をパッキンにより高めることができ、ファンフィルタユニット31の給気を漏れなく室内7に送り込むことができる。さらに、パッキンによりファンフィルタユニット31からパンチングパネル2aに振動が伝播することを低減できる。
また、ファンフィルタユニット31は、直接的の他、他の部材を介して間接的に床スラブ5aに置かれているものを含むものとする。
【0052】
<第3変形例>
次に、図10を参照して、第3変形例に係る収容ケース41について説明する。図10(a)は、蓋(パンチングパネル2a)が取り付けられた状態の収容部(収容ケース41)を示す模式図、図10(b)は、パンチングパネル2aが外された状態の収容ケース41を示す模式図である。
【0053】
図1に示した開口6は、第1開口であり、床2には、ファンフィルタユニット12(31)によって形成された下から上への空気の流路とは異なる位置(給気の吹出面とならない位置)に第2開口(開口46)が形成されている。床2又は床下5には、開口46に連通して塵埃を収容可能な収容部(収容ケース41)が形成されている。
【0054】
換言すると、開口46(第2開口46が設けられているパンチングパネル2a)は、ファンフィルタユニット12(31)の鉛直上方とは異なる床2の一部に設けられている。
本実施形態においては、図10に示すように、収容ケース41は、床2(パンチングパネル2a)よりも下方に設けられている。
【0055】
特に、本実施形態に係る収容ケース41は、4本の支柱41aを介して床スラブ5aに固定されている。
しかしながら、このような構成に限定されず、床面よりも下方に収容ケース41が設けられていればよく、例えば、床2がある程度厚みがあれば、床2の厚み空間内に、収容ケース41が形成されていてもよい。
【0056】
上記構成によれば、収容部(収容ケース41)により、塵埃(特に粒子径が大きく、降下しやすい塵埃)を好適に収容することができる。特に、塵埃は、床面に沈着してしまうと人50がその上を歩いた拍子で巻き上がってしまうことがある。これを防ぐため、人50が歩く床面よりも下方に設けられた収容ケース41とすることで、通常、人50に触れない位置に、塵埃を位置させることができる。
【0057】
特に、本実施形態において、収容ケース41の蓋として機能するパンチングパネル2aは、収容ケース41内に物を落とした場合や、収容ケース41内に溜まった塵埃を除去する掃除をするために、収容ケース41に対して、着脱可能に取り付けられている。
【0058】
本例において、収容ケース41の蓋として機能するものは、複数の丸穴状の開口6が形成されているパンチングパネル2aを例に説明したが、開口6が形成されていればよく、方形の開口が形成されている網目状のグレーチングであってもよい。
【0059】
<第4変形例>
次に、第4変形例に係るクリーンルームシステム1Zについて、図11を主に参照して説明する。図11は、ダクト53の横配管にファンフィルタユニット52を設け、縦配管の下部に貯留部53aを設けた例を示す模式図である。
【0060】
本例に係るファンフィルタユニット52を構成するファン52aとフィルタ52bは、横並びに配置されており、ファン52aは、フィルタ52bに対して横向きに空気を通す。
【0061】
上記の「横並び」とは、水平方向に並んで配置されていることを意味する。
本例に係るファンフィルタユニット52においては、フィルタ52bがファン52aよりも下流側(室内7側)に配置されている。このような構成によれば、室内7側に送り出す空気の塵埃を排除しやすいため好適である。
しかしながらこのような構成に限定されず、フィルタ52bがファン52aよりも上流側に設けられていてもよい。
【0062】
つまり、上記の「ファン52aは、フィルタ52bに対して横向きに空気を通す」とは、ファン52aがフィルタ52bに対して上流側から空気の流れを形成するものであっても、下流側から空気の流れを形成するものであってもよい。
【0063】
上記のように、ファン52aとフィルタ52bとが、横並びに配置され、フィルタ52bに対して横向きに空気が流れることで、重力により降下する塵埃、及び/又は滴下される液体がフィルタ52bに付着することを抑制できる。したがって、フィルタ52bの劣化を抑制することができる。
【0064】
さらに、ファンフィルタユニット52よりも下流側にあって、開口6の下方に、液体及び/又は塵埃を貯留する貯留部53aが設けられていると好適である。
【0065】
具体的には、貯留部53aは、横向きT型のダクト53における、開口6の下方に延在する縦配管の下部に設けられている。
このダクト53は、上部が開口6に接続されており、ファンフィルタユニット52からの横向きの空気の流れを、開口6がある方向である上向きに変更する機能を有し、ダクト53の縦配管の下部が、塵埃及び/又は液体を貯留する貯留部53aとなるという機能を有する。
【0066】
ダクト53における、ファンコイルユニット32側に延在する横配管に、ファンフィルタユニット52が取り付けられている。そして、貯留部53aは、ファンフィルタユニット52よりも下方に設けられている。
【0067】
具体的には、ダクト53は、ファンフィルタユニット52に対向して配置され、鉛直上方(鉛直上方成分を有する向き)に延在する起立面を有することで、ファンフィルタユニット52から送り込まれる気流を上向きに転向する。この起立面の下部、かつファンフィルタユニット52の接地面よりも低位に空洞部があり、この空洞部が貯留部53aとして機能する。
【0068】
このように構成されていることで、開口6から落ちてくる塵埃(粗大粒子を含む)及び/又は液体をファンフィルタユニット52にかけることなく、貯留部53aで貯留でき、これらを取り除くことが容易となる。
なお、本例においては、開口6、ファンフィルタユニット52及びダクト53は、それぞれ1つのみの構成を例示しているが、これらは当然複数設けられていてもよい。
さらに、ダクト53は、図11の奥行方向に延在して、複数の開口6に繋がる構成であってもよい。
【0069】
さらには、本例の構成については、ダクト53にファンコイルユニット32が取り付けられる構成を説明したが、このような構成に限定されない。つまり、各種実施形態(及び変形例)を任意に組み合わせるようにしてもよく、例えば、ファンフィルタユニット52は、上記の実施形態に記載の吊ボルト、ステー及びナットによって床に取り付けられていてもよい。また、第4変形例に記載の開口6の他に第3変形例に記載の第2開口(開口46)を設けるようにしてもよい。
【0070】
なお、本発明のクリーンルームシステム1に係る各種構成要素は、個々に独立した存在である必要はない。複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【0071】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)
床、側壁及び天井を備えるクリーンルームに適用されるクリーンルームシステムであって、
前記床に設けられ、床下に繋がる開口と、
室内における天井高の半分以上の高さに設けられて室外に繋がる吸込口と、
前記開口、前記室内、前記吸込口、室外の縦空間及び前記床下を通る空気の循環経路と、
前記床下に設けられたファンフィルタユニットと、を備え、
前記ファンフィルタユニットは、ファンとフィルタとを含んで構成されており、前記開口を介して前記室内に下から上への前記空気の流れを形成することを特徴とするクリーンルームシステム。
(2)
前記ファンフィルタユニットの前記ファンは、第1ファンであり、
前記第1ファンとは別の第2ファンが前記循環経路上に設けられており、
前記第2ファンは、前記ファンフィルタユニットの前記空気の取込口側に向かう空気の流れを形成している(1)に記載のクリーンルームシステム。
(3)
前記床下に設けられた床スラブを備え、
前記第2ファンは、前記床スラブに向けて前記空気を送り出すように配設されている(2)に記載のクリーンルームシステム。
(4)
コイルを含むファンコイルユニットを更に備え、
前記第2ファンは、前記ファンコイルユニット内に設けられている(2)又は(3)に記載のクリーンルームシステム。
(5)
前記ファンフィルタユニットを構成する前記ファンと前記フィルタは、横並びに配置されており、前記ファンは、前記フィルタに対して横向きに前記空気を通す(1)から(4)のいずれか一項に記載のクリーンルームシステム。
(6)
前記ファンフィルタユニットよりも下流側にあって、前記開口の下方に、液体及び/又は塵埃を貯留する貯留部が設けられている(5)に記載のクリーンルームシステム。
(7)
前記吸込口は天井に設けられている(1)から(6)のいずれか一項に記載のクリーンルームシステム。
(8)
前記開口は、第1開口であり、
前記床には、前記ファンフィルタユニットによって形成された下から上への前記空気の流路とは異なる位置に第2開口が形成されており、
前記床又は前記床下には、前記第2開口に連通して塵埃を収容可能な収容部が形成されている(1)から(7)のいずれか一項に記載のクリーンルームシステム。
(9)
前記ファンフィルタユニットは、前記ファンフィルタユニットと前記床とを連結する連結構造を有する(1)から(8)のいずれか一項に記載のクリーンルームシステム。
(10)
前記連結構造は、前記ファンフィルタユニット又は床の一方に設けられた吊ボルトと、前記ファンフィルタユニット又は床の他方に設けられた前記吊ボルトを通すステーと、前記吊ボルトに締め込まれることによって前記ステーの位置を前記一方に近づけるナットと、によって構成されている(9)に記載のクリーンルームシステム。
(11)
前記ファンフィルタユニットは、前記床より下に設けられた床スラブに置かれている(1)から(8)のいずれか一項に記載のクリーンルームシステム。
【符号の説明】
【0072】
1、1X、1Y、1Z クリーンルームシステム
2 床
2a パンチングパネル
3 側壁
4 天井
5 床下
5a 床スラブ
6 開口(第1開口)
7 室内
8 室外
9 吸込口
10 縦空間
11 循環経路
12 ファンフィルタユニット
13 ターボファン(ファン、第1ファン)
14 制御ボックス
15 モーター
16 連結構造
16a ステー
16b 吊ボルト
16c ナット
17 取込口
18 フィルタボックス
18a フィルタ
19 ファンボックス
20 コイル
30 負荷
31 ファンフィルタユニット
31a 支柱
32 ファンコイルユニット
33 ターボファン(第2ファン)
34 コイル
41 収容ケース(収容部)
41a 支柱
46 開口(第2開口)
50 人
52 ファンフィルタユニット
52a ファン
52b フィルタ
53 ダクト
53a 貯留部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11