(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124399
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 1/16 20060101AFI20230830BHJP
【FI】
H04B1/16 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028138
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140958
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137888
【弁理士】
【氏名又は名称】大山 夏子
(74)【代理人】
【識別番号】100190942
【弁理士】
【氏名又は名称】風間 竜司
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 高徳
【テーマコード(参考)】
5K061
【Fターム(参考)】
5K061BB12
5K061CC02
5K061CC08
5K061CC14
5K061CC25
5K061CC52
5K061CD04
(57)【要約】
【課題】可変増幅器の利得制御を行うことにより、異なるレベルの受信信号を安定して復調させることが望まれる。
【解決手段】可変増幅器の利得制御が動作していないときに、第1の受信信号の大きさが所定の閾値を連続して上回る第1の時間が第1の閾値を上回るか否かを判定する判定部と、前記第1の時間が前記第1の閾値を上回ると判定されたことに基づいて、前記可変増幅器の利得制御を動作させる利得制御部と、を備える、情報処理装置が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変増幅器の利得制御が動作していないときに、第1の受信信号の大きさが所定の閾値を連続して上回る第1の時間が第1の閾値を上回るか否かを判定する判定部と、
前記第1の時間が前記第1の閾値を上回ると判定されたことに基づいて、前記可変増幅器の利得制御を動作させる利得制御部と、
を備える、情報処理装置。
【請求項2】
前記利得制御部は、前記第1の時間が前記第1の閾値以下であると判定された場合は、前記第1の受信信号の利得制御を動作させない、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記判定部は、第2の受信信号の利得制御が動作しているときに、前記第2の受信信号の大きさが連続して前記所定の閾値以下となる第2の時間が第2の閾値以下であるか否かを判定し、
前記利得制御部は、前記第2の時間が前記第2の閾値を上回ると判定されたことに基づいて、前記第2の受信信号の利得制御を動作させない、
請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記利得制御部は、前記第2の時間が前記第2の閾値以下であると判定されたことに基づいて、前記第2の受信信号の利得制御を継続させる、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記情報処理装置は、
前記第1の受信信号の復調データに対して特定のパターンを有するデータ列で置き換えるマスクを施す処理部を備える、
請求項3または4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記処理部は、前記第2の受信信号の復調データに対して前記マスクを施さない、
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
可変増幅器の利得制御が動作していないときに、第1の受信信号の大きさが所定の閾値を連続して上回る第1の時間が第1の閾値を上回るか否かを判定することと、
前記第1の時間が前記第1の閾値を上回ると判定されたことに基づいて、前記可変増幅器の利得制御を動作させることと、
を備える、情報処理方法。
【請求項8】
コンピュータを、
可変増幅器の利得制御が動作していないときに、第1の受信信号の大きさが所定の閾値を連続して上回る第1の時間が第1の閾値を上回るか否かを判定する判定部と、
前記第1の時間が前記第1の閾値を上回ると判定されたことに基づいて、前記可変増幅器の利得制御を動作させる利得制御部と、
を備える情報処理装置として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、受信信号の増幅率(以下、「利得」とも言う。)を制御することが一般的に行われる。かかる利得制御を安定して動作させる技術として多くの技術が知られている。利得制御は、AGC(Automatic Gain Control)とも言われる。例えば、受信信号のレベルと受信信号の受信終了から一定時間後のノイズレベルとの差分を算出し、算出した差分とあらかじめ設定された閾値との大小関係に基づいて利得制御を行う技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
受信信号レベルに応じて、可変増幅器の利得制御を行うことにより、受信信号レベルを調整して、受信信号を安定して復調させることが望まれる。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、可変増幅器の利得を制御することにより異なるレベルの受信信号を安定して復調することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明のある観点によれば、可変増幅器の利得制御が動作していないときに、第1の受信信号の大きさが所定の閾値を連続して上回る第1の時間が第1の閾値を上回るか否かを判定する判定部と、前記第1の時間が前記第1の閾値を上回ると判定されたことに基づいて、前記可変増幅器の利得制御を動作させる利得制御部と、を備える、情報処理装置が提供される。
【0007】
前記利得制御部は、前記第1の時間が前記第1の閾値以下であると判定された場合は、受信信号の利得制御を動作させない。
【0008】
前記判定部は、第2の受信信号の利得制御が動作しているときに、前記第2の受信信号の大きさが連続して前記所定の閾値以下となる第2の時間が第2の閾値以下であるか否かを判定し、前記利得制御部は、前記第2の時間が前記第2の閾値を上回ると判定されたことに基づいて、前記第2の受信信号の利得制御を動作させない。
【0009】
前記利得制御部は、前記第2の時間が前記第2の閾値以下であると判定されたことに基づいて、前記第2の受信信号の利得制御を継続させてもよい。
【0010】
前記情報処理装置は、前記第1の受信信号の復調データに対して特定のパターンを有するデータ列で置き換える処理を施す処理部を備えてもよい。
【0011】
前記処理部は、前記第2の受信信号の復調データに対して前記処理を施さなくてもよい。
【0012】
また、本発明のある観点によれば、可変増幅器の利得制御が動作していないときに、第1の受信信号の大きさが所定の閾値を連続して上回る第1の時間が第1の閾値を上回るか否かを判定することと、前記第1の時間が前記第1の閾値を上回ると判定されたことに基づいて、前記可変増幅器の利得制御を動作させることと、を備える、情報処理方法が提供される。
【0013】
また、本発明のある観点によれば、コンピュータを、可変増幅器の利得制御が動作していないときに、第1の受信信号の大きさが所定の閾値を連続して上回る第1の時間が第1の閾値を上回るか否かを判定する判定部と、前記第1の時間が前記第1の閾値を上回ると判定されたことに基づいて、前記可変増幅器の利得制御を動作させる利得制御部と、を備える情報処理装置として機能させるプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明によれば、受信信号の利得の制御をより安定して動作させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る受信装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図2】FPGAの詳細構成例を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る利得制御の一例について説明するための図である。
【
図4】正常動作時について説明するための図である。
【
図5】ノイズ発生時について説明するための図である。
【
図6】キャリアオフ判定の例について説明するための図である。
【
図7】マスク処理の例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0017】
また、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素を、同一の符号の後に異なる数字を付して区別する。また、異なる実施形態の類似する構成要素については、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素等の各々を特に区別する必要がない場合、同一符号のみを付する。
【0018】
[概要の説明]
続いて、本発明の実施形態の概要を説明する。本発明の実施形態に係る技術は、無線基板受信回路におけるAGCに関する。より詳細に、本発明の実施形態に係る技術は、互いに異なる周波数を使用するシステムがある環境において、他システムの影響またはノイズの影響を低減させながら、受信信号のレベルが所望信号を復調可能なレベルとなるように可変増幅器(以下、VGAという)の利得を制御する技術に関する。受信信号のレベルは、受信信号の大きさまたは、電界強度とも換言される。
【0019】
なお、本発明の実施形態に係る技術が適用されるプロトコルは限定されない。しかし、DSRC(Dedicated Short Range Communication)規格としてARIB STD-T75が標準化されている。そこで、以下では、一例として、本発明の実施形態に係る技術が、ARIB STD-T75に適用される場合を主に想定する。ARIB STD-T75は、5.8GHz付近の周波数帯をベースとしたプロトコルである。
【0020】
近年、同じ周波数帯が複数のシステムに用いられることがあり得る。一例として、5.8GHz付近の周波数帯は、ETC(Electronic Toll Collection)システムなどといった交通系システム以外にも無線LAN(Local Area Network)などといった多くのシステムに用いられている。このように同じ周波数帯が複数のシステムに用いられる場合には、他システムによって用いられる電波が干渉波となり得る。
【0021】
さらに、電波を発したシステムが自システムであるか、他システムであるかに関わらず、電源回路または周辺環境において突発的に発生するスパイクノイズの周波数帯は、予測するのが困難である。このような他システムの影響またはノイズの影響を受けやすい環境下において、AGCを安定して動作させるために、多くの技術が知られている。
【0022】
例えば、受信信号のレベルと受信信号の受信終了から一定時間後のノイズレベルとの差分を算出し、算出した差分とあらかじめ設定された閾値との大小関係に基づいて利得制御を行う技術(以下、単に「先行技術」とも言う。)が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0023】
しかし、受信信号の利得の制御をより安定して動作させることが望まれる。そこで、本発明の実施形態では、受信信号の利得の制御をより安定して動作させることが可能な技術について主に説明する。より詳細に、上記した先行技術には、課題が主に3つある。以下に先行技術が有する課題1~3を示す。
【0024】
(課題1)
先行技術が有する課題1は、1番目の受信パケットを復調することができない可能性があることである。先行技術では、受信待ち状態において、1番目の受信パケットのレベルを予測できない。そのため、受信待ち状態における利得設定が適切でない場合、1パケット目のデータを復調できない可能性がある。
【0025】
(課題2)
先行技術が有する課題2は、時定数の影響を受ける可能性があることである。先行技術では、時定数の影響により、受信信号の波形がなまり、本来のノイズのレベルよりも高いレベルを検出する可能性がある。この時定数の影響によって適切な利得設定が行われない可能性がある。
【0026】
(課題3)
先行技術が有する課題3は、ノイズレベル検出時に干渉波などの影響を受ける可能性があることである。先行技術では、干渉波の影響または本来のノイズ以外のノイズ(例えば、突発的に生じるノイズ、温度によるノイズなど)の影響によって、検出されるノイズレベルが上昇してしまい、本来のノイズのレベルが正確に検出されない可能性がある。
【0027】
以上、本発明の実施形態の概要を説明した。
【0028】
[実施形態の詳細]
続いて、本発明の実施形態の詳細について説明する。
【0029】
(構成の説明)
図1は、本発明の実施形態に係る受信装置の機能構成例を示すブロック図である。
図1に示されるように、本発明の実施形態に係る受信装置10は、アンテナ110と、LNA(Low Noise Amplifier)120と、BPF(Band Pass Filter)130とを備える。
【0030】
また、受信装置10は、LO(Local Oscillator)141と、ミキサ142と、coupler151と、DET(Detector)152と、ADC(Analog-Digital Converter)153とを備える。
【0031】
さらに、受信装置10は、FPGA(field-programmable gate array)160と、DAC(Digital-Analog Converter)171と、VGA(Variable Gain Amplifier)172と、復調回路180とを備える。
【0032】
(アンテナ110)
アンテナ110は、空中を伝わってくる信号を受信する装置である。アンテナ110によって受け取られる信号には、自システムによって用いられる信号(所望波)の他、他システムによって用いられる信号(干渉波)、ノイズなどが含まれ得る。以下では、所望波を「キャリア」とも称する。アンテナ110は、受信した信号をLNA120に出力する。
【0033】
(LNA120)
LNA120は、アンテナ110から入力された信号に含まれる微弱な信号を増幅する。そして、LNA120は、微弱な信号が増幅された後の信号をBPF130に出力する。BPF130は、LNA120から入力された信号から特定の周波数の信号を通過させ、ミキサ142に出力する。
【0034】
(LO141)
LO141は、受信装置10が受信したい周波数に応じて周波数を変化させるための信号を発振し、ミキサ142に出力する。ミキサ142は、BPF130から入力された特定の周波数の信号と、LO141から入力された信号との差の絶対値の周波数を有する信号をcoupler151に出力する。
【0035】
(coupler151)
coupler151は、ミキサ142から入力された信号を分岐させる。すなわち、coupler151は、ミキサ142から入力された信号を、DET152およびVGA172それぞれに出力する。DET152は、coupler151から入力された信号を検波したのち、ADC153に出力する。ADC153は、DET152から入力されたアナログ形式の信号をデジタル形式の信号に変換し、FPGA160に出力する。
【0036】
(FPGA160)
FPGA160は、メモリにより記憶されている回路構成データがLSI(Large Scale Integrated Circuit)によって実行されることにより、その機能が実現され得る。あるいは、FPGA160は、専用のハードウェアにより構成されていてもよいし、複数のハードウェアの組み合わせにより構成されてもよい。
【0037】
FPGA160は、制御部の一例に該当し得る。したがって、FPGA160の代わりに、他の制御部が用いられてもよい。このとき、制御部は、演算装置(プロセッサ)を含み、メモリにより記憶されているプログラムが演算装置により実行されることにより、その機能が実現され得る。このとき、当該プログラムを記録した、コンピュータに読み取り可能な記録媒体も提供され得る。
【0038】
FPGA160は、ADC153から入力されたデジタル形式のレベルに基づいて、利得を制御のためのデジタル形式の信号(以下、「利得制御信号」とも言う。)をデジタル形式にてDAC171に出力する。DAC171は、FPGA160から入力されたデジタル形式の利得制御信号をアナログ形式の利得制御信号をVGA172に出力する。なお、VGA172が、デジタル形式の利得制御信号に従って利得を調整する場合には、受信装置10は、DAC171を備えていなくてもよい。
【0039】
さらに、FPGA160は、復調回路180から入力されたデータ(以下、「復調データ」とも言う。)に応じた処理を実行する。例えば、FPGA160は、復調回路180から入力された復調データを解析することによって、実行すべき処理を特定する。そして、FPGA160は、特定した処理を実行する。なお、FPGA160によって実行される処理の種類は限定されない。例えば、FPGA160によって実行される処理は、アプリケーションによる処理であってもよい。
【0040】
図2は、FPGA160の詳細構成例を示すブロック図である。
図2に示されるように、FPGA160は、取得部161と、判定部162と、利得制御部163と、処理部164とを備える。なお、これらのブロックについては後に詳細に説明する。
図1に戻って説明を続ける。
【0041】
(VGA172)
VGA172は、DAC171から入力されるアナログ形式の利得制御信号に従って、coupler151から入力される信号のレベルを調整する。VGA172は、利得調整後の信号を復調回路180に出力する。
【0042】
(復調回路180)
復調回路180は、VGA172から入力される信号を復調することによって復調データを得る。復調回路180は、復調データをFPGA160に出力する。なお、上記したように、FPGA160によって復調データに応じた処理が実行される。
【0043】
以上、本発明の実施形態に係る受信装置10の機能構成例について説明した。
【0044】
(動作の説明)
続いて、本発明の実施形態に係る受信装置10の動作例について説明する。
【0045】
(利得制御の一例)
図3は、本発明の実施形態に係る利得制御の一例について説明するための図である。
図3を参照すると、時刻(横軸)と受信信号のレベル(縦軸)との対応関係の例がグラフW1として示されている。ここでは、キャリアのデータ表現方式として、ASK(Amplitude Shift Keying)方式が用いられる場合を主に想定する。しかし、キャリアのデータ表現方式は、ASK方式に限定されない。
【0046】
以下では、受信信号からキャリアが検出された区間を「キャリア検出区間」とも言う。一方、受信信号からキャリアが検出されない区間を「キャリア不検出区間」とも言う。
図3を参照すると、キャリア検出区間Tcおよびキャリア不検出区間Tgが示されている。また、受信信号からキャリアを検出するために用いられる閾値を「キャリア検出閾値」とも言う。
図3を参照すると、キャリア検出閾値Th0が示されている。
【0047】
図3に示されるように、任意の時間がサンプル区間Tsとしてあらかじめ設定されている。DET152は、キャリア検出区間Tcの開始時からサンプル区間Tsが経過するまで、受信信号のレベルを測定する。取得部161は、ADC153からサンプル区間Tsにおける受信信号のレベルを取得する。そして、利得制御部163は、サンプル区間Tsにおける受信信号のレベルの最大値(例えば、移動平均の最大値)を算出する。
【0048】
利得制御部163は、算出した最大値がキャリア検出閾値Th0を上回る場合には、受信信号の利得を下げるようにVGA172を制御する。例えば、利得制御部163は、受信信号のレベルが大きいほど、利得を大きく下げるようにVGA172を制御してもよい。一方、最大値がキャリア検出閾値Th0以下である場合には、キャリア検出区間Tcからキャリア不検出区間Tgに区間が移行する。利得制御部163は、キャリア不検出区間Tgには、利得が調整可能な範囲内における最大値となるようにVGA172を制御する。
【0049】
以上、本発明の実施形態に係る利得制御の一例について説明した。
【0050】
(キャリアオン判定)
以下では、キャリア不検出区間Tgからキャリア検出区間Tcへの変化を「キャリアオン」とも言う。キャリアオンが生じたことの判定(以下、「キャリアオン判定」とも言う。)は、判定部162によって行われる。ここでは、
図4および
図5を参照しながら、キャリアオン判定の例について説明する。
【0051】
図4は、正常動作時について説明するための図である。
図4を参照すると、正常動作時における時刻(横軸)と受信信号のレベル(縦軸)との対応関係の例がグラフW2として示されている。
図4に示されたように、正常動作時においては、キャリア不検出区間Tgにおいて、突発的なノイズが発生していない。
【0052】
図5は、ノイズ発生時について説明するための図である。
図5を参照すると、ノイズ発生時における(横軸)と受信信号のレベル(縦軸)との対応関係の例がグラフW3として示されている。
図5に示されたように、ノイズ発生時においては、キャリア不検出区間Tgにおいて、突発的なノイズNsが発生し得る。
【0053】
このとき、
図5に示されるように、突発的なノイズNsのレベルは、キャリア検出閾値Th0を上回る可能性がある。そのため、仮に受信信号のレベルだけに基づいてキャリアオン判定が行われてしまうと、誤ってキャリアオン判定がなされてしまう可能性がある。
【0054】
そこで、判定部162は、キャリア不検出区間Tgにおいて、取得部161によって取得された受信信号(第1の受信信号)のレベルに基づいて、受信信号のレベルがキャリア検出閾値Th0を連続して上回る第1の時間(以下、「高レベル継続時間」とも言う。)が第1の閾値(以下、「キャリアオン判定時間)とも言う。)を上回るか否かを判定する。なお、受信信号のレベルは、
図4に示したサンプル区間Tsにおける受信信号のレベルの最大値であってよい。
【0055】
判定部162は、キャリア不検出区間Tgにおいて、高レベル継続時間がキャリアオン判定時間を上回る場合には、キャリアオン判定を行う。利得制御部163は、判定部162によってキャリアオン判定が行われたことに基づいて、受信信号の利得制御(AGC)を動作させる。利得制御は、受信信号のレベルに応じた利得の制御である。より詳細に、利得制御部163は、判定部162によってキャリアオン判定が行われたことに基づいて、受信信号のレベルを下げるようにVGA172を制御する。例えば、利得制御部163は、受信信号のレベルが大きいほど、利得を大きく下げるようにVGA172を制御してもよい。
【0056】
一方、判定部162は、キャリア不検出区間Tgにおいて、高レベル継続時間がキャリアオン判定時間以下である場合には、キャリアオン判定を行わない。すなわち、利得制御部163は、判定部162によってキャリアオン判定が行われない場合には、利得制御(AGC)を動作させず、引き続きキャリア不検出区間Tgにおいて、VGA172によって利得が調整可能な範囲内における最大値に維持される。
【0057】
以上に説明したように、受信信号のレベルがキャリア検出閾値Th0を連続して上回る時間も考慮して、キャリアオン判定が行われることによって、誤ってキャリアオン判定がなされてしまう可能性が低減され得る。一例として、キャリア不検出区間Tgに突発的なノイズNsが発生した場合であっても、突発的なノイズNsをキャリアであると誤判定してしまう可能性が低減され得る。
【0058】
(キャリアオフ判定)
以下では、キャリア検出区間Tcからキャリア不検出区間Tgへの変化を「キャリアオフ」とも言う。キャリアオフが生じたことの判定(以下、「キャリアオフ判定」とも言う。)は、判定部162によって行われる。ここでは、
図6を参照しながら、キャリアオフ判定の例について説明する。
【0059】
図6は、キャリアオフ判定の例について説明するための図である。
図6を参照すると、正常動作時における時刻(横軸)と受信信号のレベル(縦軸)との対応関係の例がグラフW4として示されている。
【0060】
図6に示されたように、オン時のレベルとオフ時のレベルとの差が大きい変調方式(例えば、ASK変調方式)が用いられる場合には、オン時のレベルはキャリア検出閾値Th0を上回る一方、オフ時のレベル(
図6には、例としてオフ時のレベルD1~D7が示されている。)はキャリア検出閾値Th0以下となり得る。そのため、仮に受信信号のレベルだけに基づいてキャリアオフ判定が行われてしまうと、誤ってキャリアオフ判定がなされてしまう可能性がある。
【0061】
そこで、判定部162は、キャリア検出区間Tcにおいて、取得部161によって取得された受信信号(第2の受信信号)のレベルに基づいて、受信信号のレベルがキャリア検出閾値Th0を連続して下回る第2の時間(以下、「低レベル継続時間」とも言う。)が第2の閾値(以下、「キャリアオフ判定時間)とも言う。)以下であるか否かを判定する。なお、受信信号のレベルは、
図4に示したサンプル区間Tsにおける受信信号のレベルの最大値であってよい。
【0062】
キャリアオフ判定時間は、あらかじめシステム設計時に設定されてよい。例えば、ARIB STD-T75では、伝送速度が1024kbpsと規定されているため、シンボル間隔は約1.9usである。そこで、
図6に示された例では、キャリアオフ判定時間として、1.9usがあらかじめ設定されている。しかし、シンボル間隔は規格などによって変化し得るため、キャリアオフ判定時間は、システム設計時に規格などに応じて適切な時間が設定されればよい。
【0063】
判定部162は、キャリア検出区間Tcにおいて、低レベル継続時間がキャリアオフ判定時間以下である場合には、キャリアオフ判定を行わない。すなわち、キャリア検出区間Tcが継続するため、利得制御部163は、受信信号の利得制御を継続させる。より詳細に、利得制御部163は、判定部162によってキャリアオフ判定が行われなかったことに基づいて、受信信号のレベルを下げるようにVGA172を制御する動作を継続する。例えば、利得制御部163は、受信信号のレベルが大きいほど、利得を大きく下げるようにVGA172を制御してもよい。
【0064】
一方、判定部162は、キャリア検出区間Tcにおいて、低レベル継続時間がキャリアオフ判定時間を上回る場合には、キャリアオフ判定を行う。すなわち、判定部162によってキャリアオフ判定が行われた場合には、利得制御部163は、利得制御(AGC)を停止させ、キャリア不検出区間Tgにおいて、VGA172によって利得が調整可能な範囲内における最大値に維持される。
【0065】
以上に説明したように、受信信号のレベルがキャリア検出閾値Th0を連続して下回る時間も考慮して、キャリアオフ判定が行われることによって、誤ってキャリアオフ判定がなされてしまう可能性が低減され得る。一例として、オン時のレベルとオフ時のレベルとの差が大きい変調方式(例えば、ASK変調方式)が用いられる場合であっても、オフ時の信号をキャリア以外の信号であると誤判定してしまう可能性が低減され得る。
【0066】
(マスク処理)
キャリア検出区間Tcにおいては、受信信号(第2の受信信号)が復調回路180によって復調された後のデータが復調データとしてFPGA160に出力される。システムや復調回路で使用するデバイスによっては、キャリア不検出区間Tgにおいても、受信信号(第1の受信信号)が復調回路180によって復調された後のデータが復調データとしてFPGA160に出力される。または、干渉波やノイズなど影響で、復調回路180から意図しないデータが出力されることがある。このとき、意図しないデータがFPGA160に出力されてしまう可能性がある。
【0067】
意図しないデータがFPGA160に出力されてしまった場合には、その意図しないデータが、処理に対応するデータ列と一致してしまい、意図しない処理が実行されてしまう可能性、すなわち誤動作を引き起こす可能性がある。したがって、処理部164は、キャリア不検出区間Tgにおける復調データにマスクを施すのがよい。これによって、誤動作が引き起こされる可能性が低減され得る。ここでは、
図7を参照しながら、マスク処理について説明する。
【0068】
図7は、マスク処理の例について説明するための図である。
図7を参照すると、時刻(横軸)と受信信号のレベル(縦軸)との対応関係の例がグラフW5として示されている。
【0069】
図7を参照すると、キャリア検出区間Tcが示されている。キャリア検出区間Tcにおいては、処理部164は、復調回路180から出力される復調データに対してマスクを施さない。そして、処理部164は、復調データが処理に対応するデータ列と一致する場合に、復調データが一致するデータ列に対応する処理を実行する。
【0070】
また、
図7を参照するとキャリア不検出区間Tg1およびキャリア不検出区間Tg2が示されている。キャリア不検出区間Tg1およびキャリア不検出区間Tg2においては、処理部164は、復調回路180から出力される復調データに対してマスクを施す。なお、マスクは、特定のパターンを有するデータ列(例えば、実行される処理に対応するデータ列とは異なるデータ列など)に該当し得る。また、マスクを施すことは、復調データを特定のパターンを有するデータ列に置き換えることに該当し得る。
【0071】
[効果の説明]
以上に説明したように、本発明の実施形態によれば、キャリア不検出区間において、受信信号のレベルがキャリア検出閾値を連続して上回る時間がキャリアオン判定時間以下である場合には、キャリアオン判定がなされない。これによって、突発的なノイズ(例えば、スパイクノイズなど)が生じた場合であっても、利得制御が誤動作してしまう可能性が低減され得る。
【0072】
さらに、本発明の実施形態によれば、キャリア検出区間において、受信信号のレベルが連続してキャリア検出閾値以下となる時間がキャリアオフ判定時間以下である場合に、キャリアオフ判定がなされない。これによって、オン時のレベルとオフ時のレベルとの差が大きい変調方式が用いられる場合であっても、パケット受信中に利得制御(AGC)が停止してしまう可能性が低減され得る。
【0073】
さらに、本発明の実施形態によれば、キャリア不検出区間における復調データにマスクが施される。これによって、受信信号に不要な信号(例えば、ノイズなど)が含まれ、意図しないデータが復調回路180からFPGA160に出力されてしまう場合であっても、マスクが施された後の復調データが、処理に対応するデータ列と一致する可能性が低減され得る。これによって、誤動作が引き起こされる可能性が低減され得る。
【0074】
[変形例の説明]
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0075】
例えば、本発明の実施形態に係る受信装置は、DSRC(Dedicated Short-Range Communications)無線通信装置に適用され得る。DSRC無線通信装置としては、ETC(electronic Toll Collection System)、VICS(登録商標)(Vehicle Information and Communication System)、RSU(Road Side Unit)などが挙げられる。しかし、本発明の実施形態に係る受信装置が適用される装置の種類は限定されない。
【符号の説明】
【0076】
10 受信装置
110 アンテナ
120 LNA
130 BPF
141 LO
142 ミキサ
151 coupler
152 DET
153 ADC
160 FPGA
161 取得部
162 判定部
163 利得制御部
164 処理部
171 DAC
172 VGA
180 復調回路