(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124418
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】顔料分散剤
(51)【国際特許分類】
C08G 16/06 20060101AFI20230830BHJP
C09K 23/52 20220101ALI20230830BHJP
C09D 17/00 20060101ALI20230830BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
C08G16/06
C09K23/52
C09D17/00
C09D201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028160
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000221797
【氏名又は名称】東邦化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小久江 侑樹
(72)【発明者】
【氏名】日下 潤一
(72)【発明者】
【氏名】對馬 大郎
(72)【発明者】
【氏名】菅 彰
【テーマコード(参考)】
4J033
4J037
4J038
【Fターム(参考)】
4J033GA05
4J033HA02
4J033HA07
4J033HA14
4J033HA28
4J033HB08
4J037AA02
4J037AA22
4J037CC21
4J037CC23
4J037EE28
4J037FF23
4J038DB072
4J038HA026
4J038HA166
4J038KA08
4J038KA09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】配合処方が異なる場合においても、長時間、水硬性組成物に適切な流動性と空気連行性とを付与できる、水硬性組成物用添加剤を提供すること。
【解決手段】下記式(A)~式(C)で表される化合物を含む単量体混合物の重縮合物を含有し、前記重縮合物がノボラック構造を有し、且つ、10.0~19.5のHLB値を有する、顔料分散剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(A)で表される化合物A、式(B)で表される化合物B及び式(C)で表される一種以上のアルデヒド化合物Cを含む単量体混合物の重縮合物を含有し、
前記重縮合物がノボラック構造を有し、且つ、10.0~19.5のHLB値を有する、顔料分散剤。
【化1】
(式中、nは1又は2を表し、
nが1を表す場合、
R
1は、水素原子又は炭素原子数1乃至24の炭化水素基を表し、
A
1Oは、炭素原子数2乃至4のアルキレンオキシ基を表し、
mはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって1乃至200の数を表し、
R
2は水素原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基、又は炭素原子数2乃至24のアシル基を表し、
nが2を表す場合、
R
1は、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、又は-SO
2-を表し、
A
1Oは、炭素原子数2乃至4のアルキレンオキシ基を表し、
mはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって1乃至200の数を表し、
R
2は水素原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基、又は炭素原子数2乃至24のアシル基を表す。)
【化2】
(式中、qは1又は2を表し、
qが1を表す場合、
R
3は水素原子又は炭素原子数1乃至24の炭化水素基を表し、
A
2Oは、炭素原子数2乃至4のアルキレンオキシ基を表し、
pはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって1乃至200の数を表し、
X
1はリン酸エステル基又は硫酸エステル基を表し、
qが2を表す場合、
R
3は、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、又は-SO
2-を表し、
A
2Oは、炭素原子数2乃至4のアルキレンオキシ基を表し、
pはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって1乃至200の数を表し、
X
1はリン酸エステル基又は硫酸エステル基を表す。)
【化3】
(式中、R
4は水素原子、カルボキシル基、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数2乃至10のアルケニル基、フェニル基、ナフチル基又はヘテロ環式基を表し、
rは1乃至100の数を表す。)
【請求項2】
前記式(A)で表される化合物において、(A1O)基中、エチレンオキシ基の割合が20モル%~100モル%である、
請求項1に記載の顔料分散剤。
【請求項3】
前記単量体混合物が、
前記化合物A及び化合物Bをモル比にて、化合物A:化合物B=0.5~1.3:1の割合にて含み、且つ、
前記化合物A及び化合物Bの合計モル量に対して、化合物Cをモル比にて、(化合物A+化合物B):化合物C=10:4~18の割合にて含む、
請求項1又は請求項2に記載の顔料分散剤。
【請求項4】
前記式(A)中、nが1であり、且つ、
前記式(B)中、pが4未満である、
請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載の顔料分散剤。
【請求項5】
前記式(A)中、nが2である、
請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載の顔料分散剤。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のうちいずれか一項に記載の顔料分散剤、顔料及び水を含む顔料分散液。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のうちいずれか一項に記載の顔料分散剤、顔料、樹脂及び水を含む塗料組成物。
【請求項8】
請求項1乃至請求項5のうちいずれか一項に記載の顔料分散剤と顔料とを分散機にて混合する工程を含む、顔料の分散方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフェノール系重縮合物を含有する顔料分散剤及び顔料分散液に関する。より詳しくは、親水性顔料及び疎水性顔料の何れにおいても良好な分散性を実現するだけでなく、親水性顔料と疎水性顔料の混合系においても良好な分散性を実現し、色別れ抑制や調色安定性に優れる分散液を提供できる、顔料分散剤及び顔料分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への取り組みや安全上の理由から、インクや塗料の水性化が進んでいる。しかしながら、これら塗料等に使用される無機顔料や有機顔料は、いずれも水に対する親和性が低く、水に分散させることは容易ではない。このような背景から、インクや塗料などの顔料分散体組成物において、顔料分散性の向上を図った分散剤が提案されている(特許文献1~4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59-47267号公報
【特許文献2】特開平6-296849号公報
【特許文献3】特開平8-34953号公報
【特許文献4】特表2010-514864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、顔料分散剤は、被分散物である顔料の表面状態に合わせて、顔料に吸着する部位と、分散媒である溶媒に親和性の高い部位のバランスを考慮して設計される。そのため、例えば酸化チタンなどの親水性顔料向け、あるいは、カーボンブラックなどの疎水性顔料向けなど、特定の種類の顔料に対して有用である顔料分散剤が数多く提案されている。
一方で、表面状態の異なる親水性顔料と疎水性顔料の双方に対して有用な分散剤の設計は難しく、これらいずれに対しても十分な分散性と分散安定性を付与できる顔料分散剤の提供には至っていない。
【0005】
また、塗料等は複数種の顔料を混合使用されることも多く、例えば、カラー塗料の製造において、目標とする色彩の塗料を効率よく得るために、白色顔料を主体とした白塗料を製造し、ここに着色顔料のスラリーを添加して、目標色に調色される。複数種の顔料の混合使用は、顔料の凝集や沈降の発生を容易に引き起こし得るだけでなく、色浮き(色むら)や色分かれ等の外観異常が発生しやすいという問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、親水性顔料と疎水性顔料のいずれに対しても優れた分散性と分散安定性を付与し、またそれらの顔料を混合した場合においても凝集することなく調色性に優れる顔料分散剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は鋭意検討した結果、顔料分散剤としてフェノール系重縮合物の採用を検討し、このとき、ノボラック構造を有する上記縮合物のHLB値に着目することで、親水性顔料と疎水性顔料の双方、並びにこれら顔料の混合系の何れにおいても良好な分散性を付与できる顔料分散剤を提供できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち本発明は、以下の[1]~[8]を対象とする。
[1]
下記式(A)で表される化合物A、式(B)で表される化合物B及び式(C)で表される一種以上のアルデヒド化合物Cを含む単量体混合物の重縮合物を含有し、
前記重縮合物がノボラック構造を有し、且つ、10.0~19.5のHLB値を有する、顔料分散剤。
【化1】
(式中、nは1又は2を表し、
nが1を表す場合、
R
1は、水素原子又は炭素原子数1乃至24の炭化水素基を表し、
A
1Oは、炭素原子数2乃至4のアルキレンオキシ基を表し、
mはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって1乃至200の数を表し、
R
2は水素原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基、又は炭素原子数2乃至24のアシル基を表し、
nが2を表す場合、
R
1は、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、又は-SO
2-を表し、
A
1Oは、炭素原子数2乃至4のアルキレンオキシ基を表し、
mはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって1乃至200の数を表し、
R
2は水素原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基、又は炭素原子数2乃至24のアシル基を表す。)
【化2】
(式中、qは1又は2を表し、
qが1を表す場合、
R
3は水素原子又は炭素原子数1乃至24の炭化水素基を表し、
A
2Oは、炭素原子数2乃至4のアルキレンオキシ基を表し、
pはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって1乃至200の数を表し、
X
1はリン酸エステル基又は硫酸エステル基を表し、
qが2を表す場合、
R
3は、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、又は-SO
2-を表し、
A
2Oは、炭素原子数2乃至4のアルキレンオキシ基を表し、
pはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって1乃至200の数を表し、
X
1はリン酸エステル基又は硫酸エステル基を表す。)
【化3】
(式中、R
4は水素原子、カルボキシル基、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数2乃至10のアルケニル基、フェニル基、ナフチル基又はヘテロ環式基を表し、
rは1乃至100の数を表す。)
[2]
前記式(A)で表される化合物において、(A
1O)基中、エチレンオキシ基の割合が20モル%~100モル%である、[1]に記載の顔料分散剤。
[3]
前記単量体混合物が、
前記化合物A及び化合物Bをモル比にて、化合物A:化合物B=0.5~1.3:1の割合にて含み、且つ、前記化合物A及び化合物Bの合計モル量に対して、化合物Cをモル比にて、(化合物A+化合物B):化合物C=10:4~18の割合にて含む、[1]又は[2]に記載の顔料分散剤。
[4]
前記式(A)中、nが1であり、且つ、前記式(B)中、pが4未満である、[1]乃至[3]のうちいずれか一項に記載の顔料分散剤。
[5]
前記式(A)中、nが2である、[1]乃至[3]のうちいずれか一項に記載の顔料分散剤。
[6]
[1]乃至[5]のうちいずれか一項に記載の顔料分散剤、顔料及び水を含む顔料分散液。
[7]
[1]乃至[5]のうちいずれか一項に記載の顔料分散剤、顔料、樹脂及び水を含む塗料組成物。
[8]
[1]乃至[5]のうちいずれか一項に記載の顔料分散剤と顔料とを分散機にて混合する工程を含む、顔料の分散方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の顔料分散剤は、親水性顔料及び疎水性顔料のいずれに対しても、これを配合することによって凝集や沈殿が抑制された分散液を形成することができ、良好な分散性能を発揮することができる。
特に本発明の顔料分散剤は、親水性顔料と疎水性顔料の混合系に対して添加した場合において、これら顔料が凝集することがなく、また色分かれ(上下層に分離)や色浮き(部分的な濃度分布)発生を抑制し、調色安定性に優れた分散液を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
塗料は、一般に顔料と樹脂、溶媒(水等)、そして顔料分散剤を始めとする添加剤によって構成され、前述したように目標の色彩の塗料を得るには、通常、まず白塗料を製造し、後から別の顔料スラリーを添加し調色がなされ、目的とするカラー塗料を得る。
親水性顔料に適用される顔料分散剤と、疎水性顔料に適用される顔料分散剤は異なることが殆どであり、これら顔料を混合して調色する際、2種の顔料分散剤の相性は必ずしも良いとは限らない。
また塗料は、顔料分散剤以外にも消泡剤等のその他添加剤も配合され得、これらその他添加剤と顔料分散剤との相性も考慮を要し、添加剤の種類が増えるほど、顔料の分散性や色分かれ・色浮きの抑制、調色安定性の実現が難しくなることは想像に難くない。
本発明者らは、上記塗料製造における難点を念頭におき、親水性顔料、疎水性顔料、さらには親水性顔料/疎水性顔料の混合系においても一剤で対応できる顔料分散剤の構築を検討した。そして、各顔料に対する配向性、電荷や立体障害による反発等も含め、顔料分散剤について種々検討を進める中、フェノール系化合物の重縮合物、特にノボラック構造を有する前記重縮合物が特定のHLB値範囲を有するとき、上記課題を解決できる顔料分散剤となること、また製造時の泡立ち等が抑制された顔料分散剤となることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
なお上述の通り、本発明に係る顔料分散剤の適用対象である顔料は特に限定されず、例えば炭酸カルシウム、タルク、シリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化鉄などの親水性顔料、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、カーボンブラック、黒鉛、疎水性樹脂などの疎水性顔料のいずれも対象とするものであり、さらには親水性顔料と疎水性顔料の混合系においても良好な分散性を付与できる。
以下、本発明の重縮合物及びそれを含む水硬性組成物用添加剤について詳述する。
【0012】
<顔料分散剤>
本発明の顔料分散剤は、フェノールやビスフェノールA等のフェノール系化合物のアルキレンオキサイド付加物又はその誘導体(式(A)で表される化合物A)、フェノール系化合物のアルキレンオキサイド付加物のリン酸エステル又は硫酸エステル誘導体(式(B)で表される化合物B)、並びに、アルデヒド類(式(C)で表される一種以上のアルデヒド化合物C)を含み、所望によりリグニン等のその他単量体化合物Dや、ヒドロキシエチルフェノールのアルキレンオキサイド付加物又はその誘導体等のその他単量体成分を含む、単量体混合物の重縮合物を含み、すなわちこれら単量体混合物を重縮合させた共重合体を含む。
なお本明細書において上記重縮合物、すなわち上記「単量体混合物を重縮合させた共重合体を含む、重縮合物」とは、
(1)前記単量体混合物のうち、化合物A乃至化合物Cの全てが重縮合した共重合体(共重合体1)を含む態様、
(2)前記単量体混合物のうち、化合物A乃至化合物Cとその他の単量体成分(その他単量体化合物D等の少なくとも1種)の全てが重縮合した共重合体(共重合体2)を含む態様、
(3)前記単量体混合物のうち、化合物A乃至化合物Cのうちの二種が重縮合した共重合体(共重合体3)を含む態様、
(4)前記単量体混合物のうち、化合物A乃至化合物Cのうちの一種又は二種とその他の単量体成分が重縮合した共重合体(共重合体4)を含む態様、
(5)前記(1)乃至(4)のうち二種以上の共重合体を含む態様
(6)前記(1)乃至(4)のうち一種以上の共重合体に加え、未反応の化合物A~C及びその他単量体成分のうちの少なくとも一種を含む態様、
のいずれをも包含するとともに、一般に、各々の重合工程、各成分(化合物A乃至化合物C、さらにはその他単量体成分)の調製工程、例えばアルキレンオキサイド付加工程等で発生した未反応成分、副反応物も含めた成分も包含されている。
以下、単量体混合物に含まれる化合物A乃至化合物C、さらにはその他の単量体成分について詳述する。
【0013】
《式(A)で表される化合物A》
化合物AはフェノールやビスフェノールA等のフェノール系化合物又はその置換体のアルキレンオキサイド付加物又はその誘導体であって、下記式(A)で表される構造を有する。
【化4】
上記式中、nは1又は2を表し、R
1は、nが1を表す場合には水素原子、又は炭素原子数1乃至24の炭化水素基を表し、nが2を表す場合には、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、又は-SO
2-を表す。
A
1Oは、炭素原子数2乃至4のアルキレンオキシ基を表し、mはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって1乃至200の数を表し、R
2は水素原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基、又は炭素原子数2乃至24のアシル基を表す。
【0014】
上記化合物Aは、フェノールやビスフェノールA等のフェノール系化合物又はその置換体に対して炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイドが付加した化合物であり、また該アルキレンオキサイド付加物の誘導体(アルキルエステル又は脂肪酸エステル)も化合物Aに包含される。
上記炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドが挙げられ、これらアルキレンオキサイドは単独付加又は混合付加することができ、二種以上のアルキレンオキサイドを用いる場合にはブロック付加、ランダム付加何れの形態であってもよい。
【0015】
すなわち上記A1Oにおける炭素原子数2乃至4のアルキレンオキシ基としては、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基及びブチレンオキシ基が挙げられる。A1Oは、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基又はブチレンオキシ基のみから構成されていてもよいし、これら二種以上の基を含んでいてもよい。二種以上の基を含む場合、それらの付加形態はランダム付加、ブロック付加のいずれであってもよい。
またmはアルキレンオキシ基の平均付加モル数であって、1乃至200、好ましくは1乃至150の数、例えば5乃至100の数を表す。
【0016】
nが1である場合の上記R1における炭素原子数1乃至24の炭化水素基としては、炭素原子数1乃至24のアルキル基、炭素原子数2乃至24のアルケニル基、炭素原子数4乃至24の不飽和結合を2個以上有する不飽和脂肪族炭化水素基、炭素原子数6乃至20のアリール基、炭素原子数3乃至24のアラルキル基等が挙げられる。
炭素原子数1乃至24のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基(ラウリル基)、テトラデシル基(ミリスチル基)、ヘキサデシル基(パルミチル基)、オクタデシル基(ステアリル基)、イコシル基、ドコシル基(ベヘニル基)、テトラコシル基等が挙げられ、これらは分岐構造(例えばイソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基等)及び/又は環状構造(例えばシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-アダマンチル基等)を有していてもよい。
炭素原子数2乃至24のアルケニル基としては、上記アルキル基として挙げた炭素原子数2乃至24のアルキル基において、炭素-炭素二重結合を一個有する基が挙げられる。具体的には、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、エイコセニル基、ドコセニル基、テトラコセニル基等が挙げられ、これらは分岐構造及び/又は環状構造を有していてもよい。
また、炭素原子数4乃至24の不飽和結合を2個以上有する不飽和脂肪族炭化水素基としては、デカジエニル基、ウンデカジエニル基、ドデカジエニル基、トリデカジエニル基、テトラデカジエニル基、ペンタデカジエニル基、ヘキサデカジエニル基、ヘプタデカジエニル基、オクタデカジエニル基、ノナデカジエニル基、イコサジエニル基、ヘンイコサジエニル基、ドコサジエニル基、トリコサジエニル基、テトラコサジエニル基、デカトリエニル基、ウンデカトリエニル基、ドデカトリエニル基、トリデカトリエニル基、テトラデカトリエニル基、ペンタデカトリエニル基、ヘキサデカトリエニル基、ヘプタデカトリエニル基、オクタデカトリエニル基、ノナデカトリエニル基、イコサトリエニル基、ヘンイコサトリエニル基、ドコサトリエニル基、トリコサトリエニル基、テトラコサトリエニル基等が挙げられる。
また、炭素原子数6乃至20のアリール基としては、一例としてフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
アラルキル基は、アリール基が置換したアルキル基であり、このようなアリール基及びアルキル基の具体例としては、上述したものと同じものが挙げられる。炭素原子数7乃至20のアラルキル基の具体例としては、フェニルメチル基(ベンジル基)、α-メチルベンジル基、2-フェニルエチル基、1-メチル-1-フェニルエチル基(クミル基)、3-フェニル-プロピル基、2-フェニル-2-プロピル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
nが2である場合、上記R1は-CH2-、-C(CH3)2-、又は-SO2-を表す。
なお、nが1である場合及びnが2である場合ともに、式(A)におけるR1の結合位置は特に限定されないが、芳香環に結合する酸素原子に対してパラ位に結合していることが、本発明の効果を発揮しやすい点で好ましい。
【0017】
上記R2における炭素原子数1乃至10のアルキル基としては、分岐構造及び/又は環状構造を有していてもよく、具体的には上記R1における炭素原子数1乃至24のアルキル基の具体例として挙げた基のうち、炭素原子数1乃至10のアルキル基を挙げることができる。具体的にはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基、1-アダマンチル基等が挙げられる。
また炭素原子数2乃至24のアシル基としては、飽和又は不飽和のアシル基(R’(CO)-基、R’は炭素原子数1乃至23の炭化水素基)が挙げられる。例えば炭素原子数2乃至24の、飽和のアシル基としては、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸(カプロン酸)、ヘプタン酸、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸、デカン酸(カプリン酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ペンタデカン酸(ペンタデシル酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸(マルガリン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、ノナデカン酸、エイコサン酸(アラキジン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)及びテトラコサン酸(リグノセリン酸)等のカルボン酸及び脂肪酸由来のアシル基が、モノ不飽和のアシル基としては、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸等のモノ不飽和脂肪酸由来のアシル基が、ジ不飽和のアシル基としては、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸等のジ不飽和脂肪酸由来のアシル基が、そして、トリ不飽和のアシル基としては、リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ-γ-リノレン酸、エイコサトリエン酸等のトリ不飽和脂肪酸由来のアシル基が挙げられる。
【0018】
上記式(A)で表される化合物Aは、一種を単独で、また二種以上を組み合わせて使用できる。
【0019】
なお本発明に係る重縮合物の一態様では、化合物Aにおいて、特にn=1であるとき、上記A1Oとして少なくともエチレンオキシ基を含むことが好ましい。例えば、式(A)で表される化合物中、(A1O)におけるエチレンオキシ基の割合が20モル%~100モル%、また50モル%~100モル%、あるいは80モル%~100モル%であることが好ましい。
n=1であるとき(A1O)におけるエチレンオキシ基の割合を上記範囲とすること、さらにはその割合を高めることにより、得られる重縮合物を含む顔料分散剤を、疎水性顔料を含む分散液に配合した際、分散液の経時での粘度上昇を抑制することが期待できる。
【0020】
また、本発明に係る重縮合物の一態様では、化合物Aにおいてn=2であるとき、得ら
れる重縮合物を含む顔料分散剤を、親水性顔料を含む分散液に配合した際には該分散液の低粘度化にさらに効果を発揮することが期待できる。
そして本態様の上記顔料分散剤を、疎水性顔料を含む分散液に配合した際には該分散液の初期粘度の低減効果を発揮することが期待できる。
【0021】
《式(B)で表される化合物B》
化合物BはフェノールやビスフェノールA等のフェノール系化合物のアルキレンオキサイド付加物のリン酸エステル誘導体又は硫酸エステル誘導体であって、下記式(B)で表される構造を有する。
【化5】
上記式中、qは1又は2を表し、R
3は、qが1を表す場合には水素原子又は炭素原子数1乃至24の炭化水素基を表し、qが2を表す場合には、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、又は-SO
2-を表す。
A
2Oは、炭素原子数2乃至4のアルキレンオキシ基を表し、pはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって1乃至200の数を表し、X
1はリン酸エステル基又は硫酸エステル基を表す。
【0022】
上記化合物Bは、フェノール又やビスフェノールA等のフェノール系化合物はその置換体に対して炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイドが付加した化合物のリン酸エステル誘導体又は硫酸エステル誘導体である。
上記炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドが挙げられ、これらアルキレンオキサイドは単独付加又は混合付加することができ、二種以上のアルキレンオキサイドを用いる場合にはブロック付加、ランダム付加何れの形態であってもよい。
【0023】
すなわち上記A2Oにおける炭素原子数2乃至4のアルキレンオキシ基としては、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基及びブチレンオキシ基が挙げられる。A2Oは、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基又はブチレンオキシ基のみから構成されていてもよいし、これら二種以上の基を含んでいてもよい。二種以上の基を含む場合、それらの付加形態はランダム付加、ブロック付加のいずれであってもよい。
またpはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって、1乃至200、好ましくは1乃至100、例えば1乃至10の数を表す。
【0024】
なお本発明の重縮合物の一態様では、前記化合物Aにおいてn=1とし、化合物Bにおいてアルキレンキサイドの平均付加モル数pを4未満とし、これら化合物から得られる重縮合物を含む顔料分散剤を、疎水性顔料を含む分散液に配合することにより、分散媒に対する疎水性顔料の濡れ性(親和性)の向上が期待できる。
【0025】
qが1である場合の上記R3における炭素原子数1乃至24の炭化水素基としては、炭素原子数1乃至24のアルキル基、炭素原子数2乃至24のアルケニル基、炭素原子数4乃至24の不飽和結合を2個以上有する不飽和脂肪族炭化水素基、炭素原子数6乃至20のアリール基、炭素原子数3乃至24のアラルキル基等が挙げられる。
またqが2である場合、上記R3は-CH2-、-C(CH3)2-、又は-SO2-を表す。
これらの具体例としては、R1と同じものが挙げられる。
なお、qが1である場合及びqが2である場合ともに、式(B)におけるR3の結合位置は特に限定されないが、芳香環に結合する酸素原子に対してパラ位に結合していることが、本発明の効果を発揮しやすい点で好ましい。
【0026】
またX1がリン酸エステル基を表す場合、それらはリン酸モノエステル及び/又はその塩、リン酸ジエステル及び/又はその塩、若しくはリン酸トリエステル、又はその混合物であり、またX1が硫酸エステル基を表す場合、それらは硫酸モノエステル及び/又はその塩、若しくは硫酸ジエステル、又はその混合物である。
上記リン酸エステル塩又は硫酸エステル塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム又はマグネシウム等の第2族金属塩;アンモニウム塩;アルキルアンモニウム又はアルカノールアンモニウム等の有機アンモニウム塩等が挙げられる。
上記化合物Bは、(ポリ)オキシアルキレンアルキルフェノールにリン酸化剤又は硫酸化剤を用い、公知の方法で合成したものを用いてもよい。リン酸化剤としては、無水リン酸、リン酸、ポリリン酸、オキシ塩化リンなどが挙げられ、硫酸化剤としては、クロロスルホン酸、スルファミン酸、硫黄を用いた直接硫酸化などが挙げられる。
【0027】
上記式(B)で表される化合物Bとして、例えばqが1の場合の化合物Bとしては以下の式で表される化合物を挙げることができる。
なお式中、R3、A2O、nは上記式(B)の定義されたものと同じものを表し、Phはフェニレン基を表す。またMは、水素原子;ナトリウム又はカリウム等のアルカリ金属原子;カルシウム又はマグネシウム等のアルカリ土類金属原子;アンモニウム基;アルキルアンモニウム基又はアルカノールアンモニウム基等の有機アンモニウム基を表す。
またZは、式:R”-O-(A’O)w-で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル残基(式中、R”は炭素原子数1乃至24のアルキル基を表し、A’Oは炭素原子数2乃至3のアルキレンオキシ基を表し、すなわちエチレンオキシ基又はプロピレンオキシ基を表し、wはアルキレンオキシ基A’Oの平均付加モル数であって1乃至100を表す。)を表し、Zが複数存在する場合、互いに同じ基であっても異なる基であってもよい。
・リン酸モノエステル及びその塩
R3-Ph-O-[A2O]p-P(=O)(-OM)2
・リン酸ジエステル及びその塩
[R3-Ph-O-[A2O]p-]2P(=O)(-OM)
[R3-Ph-O-[A2O]p-](Z-)P(=O)(-OM)
・リン酸トリエステル
[R3-Ph-O-[A2O]p-]3P(=O)
[R3-Ph-O-[A2O]p-]2(Z-)P(=O)
[R3-Ph-O-[A2O]p-](Z-)2P(=O)
・硫酸モノエステル及びその塩
R3-Ph-O-[A2O]p-S(=O)2(-OM)
・硫酸ジエステル
[R3-Ph-O-[A2O]p-]2S(=O)2
[R3-Ph-O-[A2O]p-](Z-)S(=O)2
【0028】
上記式(B)で表される化合物Bは、一種を単独で、また二種以上を組み合わせて使用できる。
【0029】
《式(C)で表される化合物C》
化合物Cはアルデヒド類であって、下記式(C)で表される構造を有する。
【化6】
式中、R
4は水素原子、カルボキシル基、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数2乃至10のアルケニル基、フェニル基、ナフチル基又はヘテロ環式基を表し、rは1乃至100の数を表す。
なおこれらアルキル基、アルケニル基、フェニル基、ナフチル基及びヘテロ環式基は、炭素原子数1乃至10のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;スルホ基、スルホン酸塩基等のスルホン酸官能基;アセチル基等のアシル基;ヒドロキシ基;アミノ基;カルボキシル基等の任意の置換基で置換されていてもよい。
上記R
4における炭素原子数1乃至10のアルキル基、及び炭素原子数2乃至10のアルケニル基は、分岐構造、環状構造を有していてもよく、その具体例としては、上記化合物A(式(A))中のR
1における炭素原子数1乃至24のアルキル基及び炭素原子数2乃至24のアルケニル基の具体例として挙げた基のうち、炭素原子数1乃至10のアルキル基、及び炭素原子数2乃至10のアルケニル基を挙げることができる。
さらに、ヘテロ環式基としては、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピペリジル基、モルホリノ基等が挙げられる。
またrは、好ましくは2乃至100の数を表す。
【0030】
化合物C(アルデヒド類)は、例えばホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、グリオキシル酸、アセトアルデヒド、トリクロロアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプタナール、オクチルアルデヒド、ノニルアルデヒド、イソノニルアルデヒド、デシルアルデヒド、ドデカナール、アクロレイン、クロトンアルデヒド、ペンテナール、ヘキセナール、ヘプテナール、オクテナール、シンナムアルデヒド、ベンズアルデヒド、ベンズアルデヒドスルホン酸、ベンズアルデヒドジスルホン酸、アニスアルデヒド、サリチルアルデヒド、ベンジルアルデヒド[(C6H5)2C(OH)-CHO]、ナフトアルデヒド、フルフラール等が挙げられるが、中でも、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド又はそれらの二種以上の任意の混合物からなる群より選択され得る。
化合物Cは純粋な結晶若しくは粉状物質、又はそれらの水和物としての使用も可能であり、また、ホルマリン等の水溶液の形態でも使用され得、この場合、成分の計量又は混合を簡素化させることができる。
【0031】
上記式(C)で表される化合物Cは、一種を単独で、また二種以上を組み合わせて使用できる。
【0032】
《単量体混合物》
本発明で使用する重縮合物に用いる上記化合物A乃至化合物C含む単量体混合物において、その混合割合は特に限定されないが、例えば前記化合物A及び化合物Bをモル比にて、化合物A:化合物B=0.5~1.3:0.3~3.5の割合にて含み、且つ、前記化合物A及び化合物Bの合計モル量に対して、化合物Cをモル比にて、(化合物A+化合物B):化合物C=10:1~1:10の割合にて含む。
より好ましくは、化合物A:化合物B=0.5~1.3:0.5~1.5(モル比)、あるいは好ましくは化合物A:化合物B=0.5~1.3:1(モル比)とすることができ、(化合物A+化合物B):化合物C=10:4~18(モル比)である。
重縮合物において、上記化合物A~化合物Cの割合を上記数値範囲とすることにより、後述する重縮合物のHLB値を好適な範囲とすることができる。
【0033】
《重縮合物》
本発明で使用する重縮合物は、上記化合物A乃至化合物Cを含む単量体混合物、そして化合物A乃至化合物Cに加えて所望により後述するその他単量体成分をさらに含む単量体混合物を重縮合させて得られる共重合体を含みてなる。
上記共重合体を得るにあたり、化合物A乃至化合物C及び後述するその他単量体成分の製造方法、及び共重合体を得る重合方法は特に限定されない。
また重縮合に際し、上記化合物A、化合物B及び化合物C、さらにその他単量体成分の添加順序や添加方法についても特に限定されず、例えば、重縮合反応前に化合物A~化合物C(及びさらにその他単量体成分)の全量を一括添加する、重縮合反応前に化合物A~化合物C(及びさらにその他単量体成分)のうち一部を添加し、その後残りを滴下により分割添加する、或いは、重縮合反応前に化合物A~化合物C(及びさらにその他単量体成分)のうち一部を添加し、一定の反応時間経過後の残りを追加添加する、など何れであってよい。
【0034】
重縮合物は、例えば化合物A、化合物B、及び化合物C(並びに所望によりその他単量体成分)を脱水触媒の存在下にて、無溶媒下或いは溶媒下で、反応温度:80℃~150℃、常圧~加圧下、例えば0.001~1MPaにて重縮合させることにより得られる。
上記脱水触媒としては、塩酸、過塩素酸、硝酸、ギ酸、メタンスルホン酸、オクチルスルホン酸、ドデシルスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、フェノールスルホン酸、酢酸、硫酸、硫酸ジエチル、硫酸ジメチル、リン酸、シュウ酸、ホウ酸、安息香酸、フタル酸、サリチル酸、ピルビン酸、マレイン酸、マロン酸、ニトロ安息香酸、ニトロサリチル酸、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、フルオロ酢酸、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、活性白土等が挙げられ、これら脱水触媒は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる
また溶媒下で重縮合反応を実施する場合、該溶媒としては水、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)等のグリコールエーテル系化合物、トルエン、キシレン等の芳香族化合物、メチルシクロヘキサン等の環式脂肪族化合物等を用いることができ、更に上記脱水触媒(酸触媒)として適用可能なもの、例えば酢酸を溶媒として用いることも可能である。
反応温度は、たとえば95℃~130℃の温度下で実施され得、また3~25時間程度反応させることにより重縮合反応を完結させることができる。
重縮合反応は酸性条件にて実施することが好ましく、好ましくは反応系のpHを4以下とすることが望ましい。
【0035】
《その他単量体成分》
本発明の重縮合物において、上記単量体混合物は、上記化合物A、化合物B、及び化合物Cに加え、本発明の効果を損なわない範囲において、これら化合物と重縮合可能なその他単量体成分を含んでいてもよい。
その他単量体成分として、例えば、リグニン、ロジン、安息香酸、フェノール、ビスフェノールA、フェノールスルホン酸、ヒドロキシエチルフェノール等の単量体化合物Dを挙げることができる。
【0036】
また、上記単量体化合物D以外のその他単量体成分としては、クレゾール、カテコール、レソルシノール、ノニルフェノール、メトキシフェノール、ナフトール、メチルナフトール、ブチルナフトール、アニリン、メチルアニリン、ヒドロキシアニリン、メトキシアニリン及び/又はサリチル酸と、1~300molのアルキレンオキシドとの付加物;フェノキシ酢酸、メトキシフェノール、レソルシノール、クレゾール、ノニルフェノール、アニリン、メチルアニリン、N-フェニルジエタノールアミン、N,N-ジ(カルボキシエチル)アニリン、N,N-ジ(カルボキシメチル)アニリン、アントラニル酸等を挙げ
ることができる。
【0037】
さらにその他単量体成分として、例えば下記式(E)で表される構造を有するヒドロキシエチルフェノールのアルキレンオキサイド付加物又はその誘導体(化合物E)を挙げることができる。
【化7】
式中、A
3O及びA
4Oは、それぞれ独立して炭素原子数2乃至4のアルキレンオキシ基を表し、t及びuは、アルキレンオキサイドの平均付加モル数であって、それぞれ独立して0乃至200の数を表し且つt+u≧1であり、X
2及びX
3はそれぞれ独立して水素原子、リン酸エステル基又は硫酸エステル基を表す。
【0038】
上記化合物Eは、ヒドロキシエチルフェノールに対して、詳細にはヒドロキシエチル基或いはフェノール性ヒドロキシ基の少なくとも一方、或いは双方において、炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイドが付加した化合物であり、また該アルキレンオキサイド付加物の誘導体(リン酸エステル、硫酸エステル)も化合物Eに包含される。
前記ヒドロキシエチルフェノールは、o-ヒドロキシエチル-フェノール、m-ヒドロキシエチル-フェノール、p-ヒドロキシエチル-フェノールのいずれであってもよい。化合物Aは、好ましくは、o-ヒドロキシエチル-フェノールに炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイドが付加した化合物(及びそのエステル誘導体)である。
【0039】
上記炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドが挙げられ、これらアルキレンオキサイドは単独付加又は混合付加することができ、二種以上のアルキレンオキサイドを用いる場合にはブロック付加、ランダム付加何れの形態であってもよい。
すなわち上記A3O及びA4Oにおける炭素原子数2乃至4のアルキレンオキシ基としては、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基及びブチレンオキシ基が挙げられる。A3O及びA4Oは、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基又はブチレンオキシ基のみから構成されていてもよいし、これら二種以上の基を含んでいてもよい。二種以上の基を含む場合、それらの付加形態はランダム付加、ブロック付加のいずれであってもよい。
またt及びuはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって、それぞれ独立して0乃至200、好ましくは0乃至60の数を表し且つt+u≧1である。A3O、A4Oの付加モル数を大きくすることにより、減水性の向上が期待できる。
【0040】
またX2、X3がリン酸エステル基を表す場合、それらはリン酸モノエステル及び/又はその塩、リン酸ジエステル及び/又はその塩、若しくはリン酸トリエステル、又はその混合物である。またX2、X3が硫酸エステル基を表す場合、それらは硫酸モノエステル及び/又はその塩、若しくは硫酸ジエステル、又はその混合物である。
またリン酸エステル塩又は硫酸エステル塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム又はマグネシウム等の第2族金属塩;アンモニウム塩;アルキルアンモニウム又はアルカノールアンモニウム等の有機アンモニウム塩等が挙げられる。
【0041】
重縮合反応の完結後、反応系中の未反応アルデヒド成分(化合物C)の含有量を低減させるため、従来公知種々の方法を採用することができる。例えば、反応系のpHをアルカリ性とし、60~140℃に加熱処理を行う方法、反応系を減圧とし(-0.1~-0.001MPa)アルデヒド成分を揮発除去する方法、更には少量の亜硫酸水素ナトリウム
、過酸化水素、エチレン尿素および/またはポリエチレンイミンを添加する方法などが挙げられる。
反応に用いた前記脱水触媒は、反応完結後に中和し、塩の形態としてろ過により除去することもできるが、触媒を除去しない態様であっても、後述する本発明の水硬性組成物用添加剤としての性能が損なわれるものではない。触媒除去の方法は、上記ろ過以外にも、相分離、透析、限外ろ過、イオン交換体の使用などが挙げられる。
なお、反応物を中和および水等により希釈することで、後述する水硬性組成物用添加剤としての使用における計量等の作業性が向上する。この際、中和に用いる塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ水酸化物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類水酸化物、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン類が挙げられ、このうちの1種または2種以上の併用などが採用される。
【0042】
最終的に得られる上記共重合体は、数平均分子量Mn(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(以下「GPC法」と呼ぶ)、ポリエチレングリコール換算)で1,000~30,000の範囲とすることができ、より好ましくは数平均分子量が1,000~20,000の範囲、特に1,500~15,000の範囲とすることができる。
数平均分子量Mnの値を上記数値範囲とすることにより、後述する重縮合物のHLB値を好適な範囲とすることができる。
なお前述したように本発明における「重縮合物」とは、化合物A乃至化合物C(及び所望によりその他単量体成分)を含む単量体混合物を重縮合させて得られる共重合体のみからなるものでもよいが、一般に、各々の重合工程、アルキレンオキサイド付加工程等で発生した未反応成分、副反応物も含めた成分も包含されている。
【0043】
本発明の重縮合物に含まれる共重合体は、例えば下記式(1)で表される構造単位A、式(2)で表される構造単位Bを有するものとすることができる。
【化8】
上記式(1)中、R
1、A
1、m及びR
2は上記式(A)で挙げた基(nが1である場合)と同義であり、式(2)中、R
3、A
2、p及びX
1は上記式(B)で挙げた基(qが1である場合)と同義である。
【0044】
[HLB値]
HLB(Hydrophile Lipophile Balance)値は、界面活性剤の疎水性と親水性のバランス(水や油に対する親和性の程度)を表す数値である。
本発明にあっては、顔料分散剤に含まれる重縮合物において、これらを構成する単量体
中の疎水性基/親水性基の割合(フェニル基の置換基の有無/種類、アルキレンオキシ基の付加モル数等)が後述する好適なHLB値に影響を与えると考えられ、さらには単量体中の置換基の種類やその割合(該置換基の嵩高さによる立体障害)、これら単量体中の吸着性基や中和塩構造の割合(リン酸エステル塩又は硫酸エステル塩の選択)などもHLB値に影響を与えると考えられる。
【0045】
本発明において、HLB値はグリフィン法[HLB=20×{親水部の式量の総和/分子量}]に基づき算出された値をいう。
具体的には、上記重縮合物のNMR測定を実施し、得られたスペクトルに対し、疎水部と親水部のプロトン数より、重縮合物のHLBを算出する。
[HLB算出式]
HLB値={親水部のプロトン数/(親水部のプロトン数+疎水部のプロトン数)}×20
疎水部のプロトン数:0.5~1.6ppmの積分値と6.1~7.5ppmの積分値の総和
親水部のプロトン数:2.8~4.3ppmの積分値
【0046】
本発明は、上記重縮合物がノボラック構造を有し、かつHLB値が10~19.5である、上記重縮合物を含む顔料分散剤を対象とする。
HLB値を10以上19.5以下である重縮合物を顔料分散剤の成分として採用することにより、親水性顔料と疎水性顔料の混合系(混合分散液)に配合した際、良好な色別れ防止効果並びに調色安定性を得ることができ、特にHLB値が15.5~19.5の重縮合物の採用により、さらに良好な色別れ防止効果と調色安定性を得ることができる。
またHLB値が10~16である重縮合物を顔料分散剤の成分として採用し、これ親水性顔料を含む分散液に配合することにより、製造時の泡立ち抑制効果を得ることができる。
【0047】
本発明の顔料分散剤は、適用する顔料の種類や組み合わせによってその添加量が変わるが、顔料合計質量に対して、固形分換算で通常0.01~5.0質量%程度添加される。
【0048】
<顔料分散液、塗料組成物>
本発明は、前記顔料分散剤と顔料と水を含む顔料分散液、及び顔料分散剤と顔料と樹脂と水を含む塗料組成物を対象とする。
上記顔料としては、前述の親水性顔料及び疎水性顔料が挙げられ、また別の分類としては無機着色顔料、有機着色顔料、体質顔料、金属製顔料、防食性顔料などとして挙げることができる。
【0049】
上記樹脂としては、塗料組成物に通常使用される塗膜形成性を有する樹脂であれば特に限定されず、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の熱硬化性樹脂;アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂等の熱可塑性樹脂などを、被塗布対象や目的に応じて適宜選択すればよい。
【0050】
また上記塗料組成物は、各種用途や性能等に応じて、公知公用の塗料組成物用の添加剤を適宜配合可能である。具体的には、界面活性剤(非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤等)、増粘剤(メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセスロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系水溶性高分子、ポリアクリルアミド系水溶性高分子、デュータンガム、ウェランガム、キサンガム等のバイオポリマー系増粘剤、ポリエチレングリコール、ポリアルキレンオキサイド等の非イオン系増粘剤等)、消泡剤(非イオン系消泡剤類、シリコーン系消泡剤類、高級アルコール類
等)、湿潤剤、その他分散剤・色分かれ防止剤などを挙げることができる。
【0051】
上記顔料分散液は、例えば顔料分散剤と所望の顔料と溶媒である水とを、ビーズミルやボールミル、ディスパー等の分散機にて混合すればよい。親水性顔料と疎水性顔料を併用する場合には、親水性顔料を含有する分散液と、疎水性顔料を含有する分散液を夫々製造し、これらを混合すればよい。
また上記塗料組成物は、従来公知の方法で製造され得る。例えば一般的な塗料の製造方法は、大別すると、1)顔料を溶剤(水系塗料の場合には水)に分散させて顔料分散液を調製する分散工程(ミルベース工程)と、2)顔料分散液に樹脂やその他の添加剤(硬化剤等)を投入する配合工程(レットダウン工程)の2工程を含む。このようにして顔料ごとに原色を製造し、必要に応じて、目的とする色相に調整する調色工程を経る。
【実施例0052】
以下実施例により本発明を説明する。ただし本発明は、これらの実施例及び比較例によって何ら制限されるものではない。
【0053】
なお、試料の物性測定は、下記の条件のもとで下記の装置を使用して行った。
(1)GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)
<ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定条件>
カラム:OHpak SB-802.5HQ、OHpak SB-803HQ、OHpak SB-804HQ(昭和電工(株)製)
溶離液:50mM硝酸ナトリウム水溶液とアセトニトリルの混合液(体積比80/20)検出器:示差屈折計、検量線:ポリエチレングリコール
(2)NMR(核磁気共鳴スペクトル)
<リン酸基導入モル数の測定>
日本電子(株)製、JNM-ECZ400S(400MHz)。核種:31P、溶媒:重水、サンプル濃度:15wt%、積算回数:512回。
NMR測定より得られたスペクトルより、リン酸基および重縮合物中のリン酸基のモル比を、積分値の比較により算出する。
<重縮合物のHLB値の算出>
日本電子(株)製、JNM-ECZ400S(400MHz)。核種:1H、溶媒:重水(D2O)、サンプル濃度:10%、積算回数64回。
NMR測定より得られたスペクトルに対し、疎水部と親水部のプロトン数より、重縮合物のHLBを下記式より算出する。
[HLB算出式]
HLB値={親水部のプロトン数/(親水部のプロトン数+疎水部のプロトン数)}×20
疎水部のプロトン数:0.5~1.6ppmの積分値と6.1~7.5ppmの積分値の総和
親水部のプロトン数:2.8~4.3ppmの積分値
<カーボンブラック分散液のRSP値の測定>
Resonance Systems社(独)製、TD-NMR Spectrometer Spin Track。測定条件;CPMGパルスシーケンス法
測定サンプル(カーボンブラック、顔料分散剤及び水含有分散液)又はブランク液(顔料分散剤及び水含有分散液)調製直後に、パルスNMRにて夫々の緩和時間T2を測定し、サンプルのRSP値を下記式より算出する。RSP値はぬれ性の指標であり、数値が大きいほどぬれやすいことを示す。
[RSP値算出式]
RSP値={T2(ブランク)/T2(サンプル)}-1
【0054】
≪重縮合物の製造方法≫
[製造例1:化合物(A)の調製]
温度計、撹拌機、圧力計、窒素導入管を備えたステンレス製高圧反応器にジエチレングリコールモノフェニルエーテル(東邦化学工業(株)製ハイソルブDPH)を80部、96%水酸化カリウム0.2部を仕込み、反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で150℃まで加熱した。そして、安全圧下で150℃を保持したままエチレンオキサイド360部を10時間で反応器内に導入し、その後2時間その温度を保持してアルキレンオキサイド付加反応を完結させ、ポリエチレングリコールモノフェニルエーテル(EOの付加モル数=17)を得た。
なお本手順に倣い、出発物質をビスフェノールA、p-tert-ブチルフェノール、に、またエチレンオキサイド付加モル数を種々変化させ、あるいはエチレンオキサイドに加えてプロピレンオキサイド付加させ、表1に示す種々のポリアルキレングリコールモノフェニルエーテル誘導体を調製した。
【0055】
[製造例2:化合物(B)(リン酸エステル誘導体)の調製]
撹拌機、温度計、窒素導入管を備えたガラス製反応容器にフェノールのEO付加体を3モル仕込み、窒素バブリングを行いながら50℃にて1モルの無水リン酸を4時間かけて仕込み反応せしめた。その後100℃にて3時間の熟成反応を行い、リン酸エステル化反応を終結させ、フェノールのEO付加体リン酸エステルを得た。
またフェノールのEO付加体リン酸エステルと同様にして、表1に示す種々のリン酸エステル体:p-tert-ブチルフェノールのEO付加体リン酸エステル、p-tert-ブチルフェノールのPO付加体リン酸エステル、ビスフェノールAのEO付加体リン酸エステル、ビスフェノールAのPO付加体リン酸エステル、ヒドロキシビフェニルのEO付加体リン酸エステルを得た。
【0056】
[製造例3:重縮合物(No.1~No.8、比1~比2)の調製]
撹拌機、温度計、還流冷却器を備えたガラス製反応容器の中に、化合物A、化合物Bを表1に記載のモル比にて仕込んだ。これを70℃まで昇温し、次いで98%硫酸を化合物AおよびBの合計質量に対し、0.5wt%仕込んだ。次いで化合物C:アルデヒド類を表1に記載のモル比にて反応容器内へ一括にて仕込み、その後105℃まで昇温させた。105℃到達時、反応物のpHは2.3(1%水溶液、20℃)であった。105℃に到達後、2~24時間反応せしめ、反応を終了したのちは、反応容器内に48%苛性ソーダを仕込み、反応物の1%水溶液のpHが4.5~8.0の範囲となるように中和を行った。その後、反応物の固形分が35%となるように適量の水を加え、No.1~No.8、比1~比2の重縮合物の水溶液を得た。
これらの重縮合物の数平均分子量MnをGPC測定にて求め、またこれら重縮合物についてNMR測定を行い、上記手順にてHLB値を求めた。
得られた結果を表1に合わせて示す。
【0057】
【0058】
[顔料分散剤 性能評価]
親水性顔料として酸化チタンを、疎水性顔料としてカーボンブラックをそれぞれ選択し、酸化チタン分散系、カーボンブラック分散系、及び酸化チタン/カーボンブラック混合系における顔料分散剤(No.1~No.8、比1~比2の重縮合物)の性能評価を以下の手順にて実施した。以降の説明において、重縮合物の例番号を、性能評価に用いた分散液の例番号としても扱うものとする。
なお以下の性能評価に使用した顔料の製品名は以下の通りである。
酸化チタン:Ti-Pure R-902(ケマーズ社製)
カーボンブラック:アセチレンブラック(50% compressed) 富士フイルム和光純薬(株)
【0059】
(1)酸化チタン分散系(親水性顔料分散系)(1)
【表2】
ホモディスパー(プライミクス(株)製、LB ホモディスパー1.5型)を使用し、上記表2の配合例に従い、2,000rpm×15分間かけて酸化チタン分散液(1)を調製した。
調製した酸化チタン分散液(1)について、ViscoMETER TVB-10M(東機産業(株)、ローターNo.2)、30rpm、保管温度20℃にて、調製直後の粘度、経時(分散液調製後:1時間、1日、3日、7日経過後)における粘度(mPa・s)を測定した。
得られた結果を表5に示す。
【0060】
(2)酸化チタン分散系(親水性顔料分散系)(2)
調製した酸化チタン分散液(1)の一部を採取し、水を加えて酸化チタン濃度が3質量%となるようにして作製した酸化チタン分散液(2)について、パルスNMR(CPMGパルスシーケンス法)を用いて、分散液の緩和時間を測定した。
【0061】
さらに、酸化チタン分散液(2)50mLを共栓つきメスシリンダーに投入し、振とう幅を30cmとして、上下に30回振とうし、分散液の泡立ちを目視にて確認した。振とう前の液量(50mL)を基準とした際の泡の高さを確認し、以下の判定基準にて泡立ちを判定した。
<泡立ち判定基準>
◎:60秒後の泡高さが5ml未満
〇:60秒後の泡高さが5~50ml
-:未測定
得られた結果を表5に示す。
【0062】
(3)カーボンブラック分散系(疎水性顔料分散系)
【表3】
表3の配合例に従い、各成分をガラス容器に入れ、振動撹拌機(ビーズ充填率75vol%;撹拌機:セイワ技研(株)製、ロッキングシェーカー 型式;RS05W;ジルコニアボール:ASONE社、CZY0200 φ1.90~2.10mm)に設置し、1
5分間処理を行い、カーボンブラック分散液を調製した。同様の手順にて、表3に示す水と分散剤のみにてブランク液を調製した。
上記カーボンブラック分散液とブランク液(いずれも調製直後)について、パルスNMRにて夫々の緩和時間T
2を測定し、得られた値より上記手順にてRSP値を求めた。
また該カーボンブラック分散液について、ViscoMETER TVB-10M(東機産業(株)、ローターNo.2)、30rpm、保管温度20℃にて、経時(分散液調製後:1時間、1日、3日経過後)における粘度(mPa・s)を測定した。また1日経過後と3日経過後の粘度から粘度の増加率を算出した。
得られた結果を表5に示す。
【0063】
(4)酸化チタン/カーボンブラック混合系(親水性顔料/疎水性顔料混合分散系)
【表4】
ホモディスパー(プライミクス(株)製、LB ホモディスパー1.5型)を使用し、上記表4の配合例に従い、2,000rpm×15分間かけて酸化チタンの分散液aを作製した。
次いで、表4の配合例に従い、各成分をガラス容器に入れ、振動撹拌機(ビーズ充填率75vol%;撹拌機:セイワ技研(株)製、ロッキングシェーカー 型式;RS05W;ジルコニアボール:ASONE社、CZY0200 φ1.90~2.10mm)に設置し、15分間処理を行い、カーボンブラック分散液bを調製した。
上記分散液a及び分散液bを、バイアルに分散液a/分散液b=50vol%/50vol%の割合にて採取し、ハンディバイブレーターにて60秒間混合し、混合分散液を得た。
混合分散液調製から1日経過後に、混合液の状態を目視にて観察した。混合液が上下に色分かれした場合、混合液の全体の高さに対して、色分かれ部の長さ(混合液の頂面から色分かれした部分までの長さ)がどの程度の割合であるか算出し、以下の判定基準にて色分かれ性を評価した。
<色別れ性 判定基準>
◎:色分かれ部の長さが混合液の全体の高さに対して5%以内
〇:色分かれ部の長さが混合液の全体の高さに対して20%以内
×:色分かれ部の長さが混合液の全体の高さに対して20%以上
【0064】
また混合分散液の調色安定性を下記ラビング試験にて評価した。
混合分散液調製直後、該分散液を隠ぺい試験紙に塗布し(厚さ50μm)、半乾きの状態の塗膜を指先でこすり、こすった箇所と他の部分との色差を目視にて観察し、以下の判定基準にて調色安定性を評価した。
<調色安定性 判定基準>
◎:こすった箇所とこすっていない箇所との色差の違いがみられない
○:こすった箇所とこすっていない箇所との色差の違いが若干みられる
×:こすった箇所とこすっていない箇所との色差が顕著である
得られた結果を表5に示す。
【0065】
【0066】
表5に示すように、酸化チタン分散系(親水性顔料分散系)(1)では、No.1~No.8の分散液は、比1~比2の分散液と比べ調製直後や初期(1時間後)の粘度が低く、また経時の粘度変化が少ない結果となった。この傾向は、特にNo.6~No.8の分
散液において顕著であった。一方、比1~比2の分散液は1日経過後に大きく粘度が上昇し、3日目以降は粘度測定が困難となった。
また酸化チタン分散系(親水性顔料分散系)(2)では、No.1~No.8の分散液は、比1~比2の分散液と比べ、パルスNMR測定で得られた分散液の緩和時間が上昇した。また泡立ちが抑制された結果となった。
なお、酸化チタン分散系(親水性顔料分散系)(1)及び(2)のNo.1~No.8の分散液は、調製直後から評価時にわたって、目視にて親水性顔料である酸化チタンの凝集や沈殿はみられなかった。
【0067】
本例で分散液の評価に用いたパルスNMRは、励起状態から基底状態にまで要する時間を緩和時間として測定し、非破壊にて分子運動性を評価可能であり、本例のように微粒子分散体の分散性評価にも使用することができる。
パルスNMRの測定では、水の運動性を緩和時間T2として測定する。粒子分散の系において、水は、粒子表面に吸着し動きが拘束される水と、吸着されず系内を自由に動き回る水の2種類に大別される。この拘束された水と自由な状態の水とでは、磁場の変化に対する応答が異なる。拘束された水はエネルギー変換が起こりやすく、緩和時間は短くなり、一方で自由な状態にある水の緩和時間は長くなる。したがって、一般的に、粒子に吸着して運動性が低下する水が多いほど、測定される緩和時間T2は低下(短く)し、粒子界面の化学的な相違への考慮が不要であれば、分散液中で粒子がより分散した状態にあることが示唆される。
しかしながら、本発明が対象とする親水性顔料である酸化チタンを含有する分散液の様態においては、No.1~No.8の分散液は、比1~比2の分散液と比べて粘度が低く、分散性が高いにもかかわらず、緩和時間が長くなっている。これは、本発明の親疎水性が調節された分散剤を用いることで、酸化チタンの表面が疎水化され、それにより水を介した粒子の凝集が抑制されて分散液の低粘度化に繋がっているものと考えられる。
【0068】
カーボンブラック分散系(疎水性顔料分散系)では、No.1~No.8の分散液は、比1~比2の分散液と比べ初期(1時間後)の粘度が低く、経時の粘度変化が少ない結果となった。この傾向は、特にNo.1~No.3の分散液において顕著であった。一方、比1~比2の分散液は1日経過後に大きく粘度が上昇し、粘度測定が困難となった。
また、No.1及びNo.3~No.5の分散液は、他の分散液と比べ、高いRSP値を有していた。RSP値はぬれ性の指標であり、RSP値が高いとはこれら分散液がより優れた分散性を有していることを示すものである。
なお、カーボンブラック分散系(疎水性顔料分散系)のNo.1~No.8の分散液は、調製直後から評価時にわたって、目視にて疎水性顔料であるカーボンブラックの凝集や沈殿はみられなかった。
【0069】
酸化チタン/カーボンブラック混合系(親水性顔料/疎水性顔料混合分散系)では、No.1~No.8の分散液は、色分かれ性及び調色安定性ともに○以上の評価であった。特にNo.1~No.3の分散液では、色分かれ性評価において色分かれ部の長さが短く(色分かれが少ない)、調色安定性評価においてもこすった箇所とこすっていない箇所との色差の違いがみられず、良好な結果を得られた。
一方、比1~比2の分散液は色別れ性評価において色分かれ部が長く(色分かれが多い)、調色安定性評価においてこすった箇所とこすっていない箇所との色差が顕著であった。
なお、酸化チタン/カーボンブラック混合系(親水性顔料/疎水性顔料混合分散系)のNo.1~No.8の分散液は、調製直後から評価時にわたって、目視にて親水性顔料である酸化チタン及び疎水性顔料であるカーボンブラックの凝集や沈殿はみられなかった。
【0070】
以上、本発明の顔料分散剤は、親水性顔料及び疎水性顔料のいずれに対しても、これを
配合することによって凝集や沈殿が抑制された分散液を形成することができ、良好な分散性能を発揮することができるとともに、親水性顔料と疎水性顔料の混合系に対して添加した場合においてはこれら顔料が凝集することがなく、また色分かれ(上下層に分離)や色浮き(部分的な濃度分布)発生を抑制し、調色安定性に優れた分散液を形成することができることが、実施例において確認された。