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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124431
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】磁気吸着装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 7/02 20060101AFI20230830BHJP
【FI】
H01F7/02 F
H01F7/02 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028182
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000189154
【氏名又は名称】カネテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 優
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰正
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡易な構成で小型でも十分な磁力が得られ、かつ、回転操作性が良く吸着部と反対面から磁束の漏洩がない使い勝手の良い磁気吸着装置を提供する。
【解決手段】装置本体2の収容部2aに収容され、希土類磁石ブロック5aを中心としてN極又はS極に着磁された一対のヨーク5b、5cが磁気筐体2bの収容部内面と各々対向するように回転可能に支持された永久磁石回転体5と、永久磁石回転体の長手方向一端側の軸部と連結されたハンドル部6を備える磁気吸着装置であって、ハンドル部の回転操作により永久磁石回転体を所定角度回転させて、複数の磁気回路M1、M2が形成されてベース部4が吸着部2eと対向する磁性部材8に吸着する第一位置と、装置本体と永久磁石回転体との間でセパレータ2c、2dにより分離された複数の磁気閉回路M1´、M2´が各々形成されてベース部が吸着部と対向する磁性部材との吸着を解除する第二位置と、を切り換える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性ブロックの内部に断面円形の収容部を有し前記磁性ブロックに設けられた複数のセパレータにより複数の磁気回路が形成され、いずれかのセパレータを跨いで対向する磁性部材と吸着する吸着部が形成される装置本体と、前記装置本体の収容部開口を閉止する蓋部と、を有するベース部と、
前記装置本体の収容部に収容され、希土類磁石ブロックを中心としてN極又はS極に着磁された一対のヨークが前記磁性ブロックの収容部内面と各々対向して回転可能に支持される永久磁石回転体と、
前記永久磁石回転体の長手方向一端側の軸部と連結され、操作部が前記蓋部より露出して組み付けられたハンドル部と、を備え、
前記ハンドル部の回転操作により前記永久磁石回転体を中心角で90°より小さい所定角度回転させて、前記装置本体より磁束を前記複数のセパレータの外方に漏洩させる複数の磁気回路が各々形成されて前記ベース部が前記吸着部と対向する磁性部材に吸着する第一位置と、前記装置本体と前記永久磁石回転体との間で前記複数のセパレータにより分離された複数の磁気閉回路が各々形成されて前記ベース部が前記吸着部と対向する磁性部材との吸着を解除する第二位置とで切り換えられる磁気吸着装置。
【請求項2】
前記一対のヨークは、磁性筐体の収容部内面と対向する円弧面が面取りされた面取り部が各々形成されており、前記ハンドル部が第一位置にあるとき、希土類磁石ブロックの着磁境界部が前記吸着部に設けられた第一セパレータと対向配置され、いずれかの面取り部が第二セパレータと対向配置されて磁束を前記装置本体外へ漏洩させる複数の磁気回路が各々形成される請求項1記載の磁気吸着装置。
【請求項3】
前記ハンドル部が第二位置にあるとき、前記一対のヨークの円弧面が前記磁性筐体に設けられた第一セパレータ又は第二セパレータと各々対向配置されて前記磁性筐体と前記永久磁石回転体との間で磁束が漏洩しない複数の磁気閉回路が各々形成される請求項2記載の磁気吸着装置。
【請求項4】
前記磁性筐体を磁気的に分割する第一セパレータと第二セパレータが中心角で180°より小さい所定角度で配置され、前記磁性筐体の隣り合う側面に板厚が薄肉となる薄肉部が各々形成されている請求項2又は請求項3記載の磁気吸着装置。
【請求項5】
前記薄肉部を形成する空隙部は、前記装置本体の収容部開口を閉止する蓋体のボス部が挿入される位置決め孔を兼用している請求項4記載の磁気吸着装置。
【請求項6】
前記磁気筐体の側面には前記第二セパレータを形成する薄肉部に連続して曲面が形成されている請求項4又は請求項5記載の磁気吸着装置。
【請求項7】
前記磁性筐体を磁気的に分割する第一セパレータと第二セパレータが中心角で180°より小さい所定角度で配置され、前記磁性筐体の隣り合う側面に非磁性材を各々介在させている請求項2又は請求項3記載の磁気吸着装置。
【請求項8】
前記永久磁石回転体に連結されたハンドル部は、中心角で60°~70°の範囲で回動可能に設けられている請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の磁気吸着装置。
【請求項9】
前記ベース部は前記装置本体の一面に磁性部材に吸着する吸着部が形成され、吸着部と反対面が被取付部材の取付面となる請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の磁気吸着装置。
【請求項10】
前記一対のヨークは、磁性筒体の収容部内面と対向する円弧面が面取りされた面取り部が各々形成されており、前記ハンドル部が第一位置にあるとき、希土類磁石ブロックの着磁境界部が前記吸着部に設けられた第一セパレータと対向配置され、いずれかの面取り部が第二セパレータと対向配置されて磁束を前記磁性筒体の端面より漏洩させる複数の磁気回路が各々形成される請求項1記載の磁気吸着装置。
【請求項11】
前記ハンドル部が第二位置にあるとき、前記一対のヨークの円弧面が磁性筒体に設けられた第一セパレータ又は第二セパレータと各々対向配置されて前記磁性筒体と永久磁石回転体との間で磁束が漏洩しない複数の磁気閉回路が各々形成される請求項10記載の磁気吸着装置。
【請求項12】
前記永久磁石回転体の長手方向一端側の軸部と回転板が連結されて磁性筒体の一端側に回転可能に配置され、前記回転板に重ねて蓋部が磁性筒体の端部と連結されている請求項10又は請求項11記載の磁気吸着装置。
【請求項13】
前記蓋部は磁性筒体の他端側吸着部と反対面に配置され、被取付部材の取付面となる請求項12記載の磁気吸着装置。
【請求項14】
前記永久磁石回転体は、前記装置本体の収容部内において少なくとも一端側に設けられた軸受を介して回転可能に支持されている請求項1乃至請求項13のいずれかに記載の磁気吸着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石から発生した磁束が形成する磁気回路により磁性部材に磁気的に吸着する磁気吸着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気吸着装置は、磁性筐体内に断面円形の収容部を備える装置本体と、収容部内に回転可能に支持された永久磁石回転体とを備えている。装置本体は、磁性筐体に設けられた一対のスペーサにより磁気的に一対の磁極部材に分割されている。永久磁石回転体は、N極又はS極に着磁された永久磁石及びヨークを一体に備えている。装置本体の一面には、工作物、鉄板、鋼材等の磁性体を吸着する吸着部を有している。
【0003】
図15(a)(b)に磁気吸着装置の一例を示す。磁性筐体状の装置本体101は、内部に断面円形の収容部102が設けられている。装置本体101は、対向位置に配置された一対のセパレータ103(例えばアルミ材)により磁気的に一対の磁極部材に2分割されている。装置本体101の一面(底面)には、工作物、鉄板、鋼材等の磁性体を吸着する吸着部101aを有している。また、吸着部101aと反対面部101bに設けられたセパレータ103には、取付用のタップ穴が設けられる。
【0004】
永久磁石回転体104は、フェライト磁石、希土類磁石等の板状の永久磁石105の両面(N極面及びS極面)にヨーク106を重ねて一体にねじ止めされたものが用いられる。ヨーク106の収容部対向面は円弧面に形成されている。永久磁石回転体104は、装置本体101の外側に延設された図示しないレバーにより第一位置と第二位置との間を回転操作可能になっている。永久磁石回転体104の回転角は中心角で90°~100°範囲に設計されている。
【0005】
図15(a)は永久磁石回転体104が第一位置にある場合を示す。N極側ヨーク106から発生した磁束は対向する装置本体101を経て吸着部101a及び反対面部101bに設けられたセパレータ103の外側を通過して装置本体101を経てS極側ヨーク106に戻る磁気回路Mが各々形成される。このとき、吸着部101aに対向配置された磁性体(図示せず)に対して装置本体101が吸着保持される。
【0006】
図15(b)は永久磁石回転体104が第二位置にある場合を示す。N極側ヨーク106から発生した磁束は、対向する装置本体101を経て永久磁石105の側面を内側に見ながらS極側ヨーク106に戻る複数の磁気閉回路M´が各々形成される。このとき、吸着部101aの外方に磁力線が漏洩せず、吸着部101aに対向配置された磁性体(図示せず)に対して装置本体101は吸着されない。
【0007】
また、本件出願人は、永久磁石回転体の回転角度をより90°より小角度の回転操作で吸着力を作用させる磁気吸着装置も提案している(特許文献1;特開2005-19551号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005―19551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した特許文献1の磁気吸着装置は、磁気回路ブロックの長手方向に貫通して設けられた断面円形の内腔に永久磁石組立体を備え、磁気回路ブロックの一部を面取りされた取付面に一対の座を溶接やボルトにより固定された磁気吸着面が形成されている。
また、永久磁石組立体は円柱状の磁極部材の外周面に磁極部材と同じ曲率の内側面となる弧状に形成された一対の永久磁石が貼り付けられている。また磁極部材の長手方向一端部に棒状のハンドルを結合して、磁気回路ブロックの両端に設けられた端板の第一凹所と第二凹所に90°未満の角度で回転させて吸着、吸着解放を切り替えるようになっている。
このように、磁気回路ブロックの磁気吸着面として面取りや座の溶接等の工数がかかるうえに、永久磁石は磁極部材の外周に貼るため、径方向に大型化し易いうえに、ハンドルとその回転位置を固定する構造を要するため、部品点数や加工数が多くなり生産コストが嵩む。
【0010】
また、図15(a)(b)に示す磁気吸着装置は、永久磁石回転体104に希土類磁石を用いる場合、レバーの回転操作角度が中心角で90°乃至100°であるため、回転操作量が大きく回転力を要するため操作性が良くない。また、永久磁石105とその両面にヨーク106を重ねてねじ止めするため、部品点数が増えてねじ孔加工も要するうえに永久磁石105の磁力も低下する。
また、図15(a)に示すように、装置本体101の吸着部101aを磁性部材に吸着させる場合、吸着部101aの反対面部101b側にも磁束が外部に漏洩する磁気回路Mが形成されるため、反対面部101bが測定機器など計器類等の取付部として利用する場合には、磁気対策を講じる必要がある。
更には、構造的に弱いセパレータ103にタップ穴が設けられているため、強度が低下するおそれもあった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、簡易な構成で小型でも十分な磁力が得られ、しかも回転操作性が良く吸着部と反対面部から磁束の漏洩がない使い勝手の良い磁気吸着装置を提供することにある。
【0012】
本発明は上記目的を達成するため、磁気吸着装置は次の構成を備える。
磁性ブロックの内部に断面円形の収容部を有し前記磁性ブロックに設けられた複数のセパレータにより複数の磁気回路が形成され、いずれかのセパレータを跨いで対向する磁性部材と吸着する吸着部が形成される装置本体と、前記装置本体の収容部開口を閉止する蓋部と、を有するベース部と、前記装置本体の収容部に収容され、希土類磁石ブロックを中心としてN極又はS極に着磁された一対のヨークが前記磁性ブロックの収容部内面と各々対向して回転可能に支持される永久磁石回転体と、前記永久磁石回転体の長手方向一端側の軸部と連結され、操作部が前記蓋部より露出して組み付けられたハンドル部と、を備え、前記ハンドル部の回転操作により前記永久磁石回転体を中心角で90°より小さい所定角度回転させて、前記装置本体より磁束を前記複数のセパレータの外方に漏洩させる複数の磁気回路が各々形成されて前記ベース部が前記吸着部と対向する磁性部材に吸着する第一位置と、前記装置本体と前記永久磁石回転体との間で前記複数のセパレータにより分離された複数の磁気閉回路が各々形成されて前記ベース部が前記吸着部と対向する磁性部材との吸着を解除する第二位置とで切り換えられることを特徴とする。
【0013】
このように、装置本体は複数の磁気回路が形成される磁性ブロックの一部に吸着部を備え、磁性ブロックの内部に断面円形の収容部を有し、複数のセパレータにより複数の磁極部材に磁気的に分割されているので、部品点数や加工工数を減らして簡易な構成とすることができる。
また、希土類磁石ブロックを中心としてN極又はS極に着磁された一対のヨークが磁性ブロックの収容部内面と各々対向するように回転可能に支持される永久磁石回転体を用いることで、小径であっても十分な磁力が得られる。
永久磁石回転体の長手方向一端側の軸部と連結され、操作部が蓋部より露出したハンドル部を設けたことで、装置本体内に収容された永久磁石回転体を90°未満の所定角度範囲で回転操作してベース部が吸着部と対向する磁性部材との吸着・吸着解除を切り替えることができ、回転操作性が向上する。
【0014】
前記一対のヨークは、前記磁性筐体の収容部内面と対向する円弧面が面取りされた面取り部が各々形成されており、前記ハンドル部が第一位置にあるとき、希土類磁石ブロックの着磁境界部が前記吸着部に設けられた第一セパレータと対向配置され、いずれかの面取り部が第二セパレータと対向配置されて磁束を前記装置本体外へ漏洩させる複数の磁気回路が各々形成されるようにしてもよい。
これにより、ハンドル部が第一位置にあるとき、N極側ヨークから発生した磁束が対向する磁性筐体を経て第一セパレータの外側を通過して磁性筐体を経てS極側ヨークに戻る磁気回路が形成される。このとき、ベース部を吸着部と対向する磁性体に吸着保持させることができる。また、N極側ヨークから発生した磁束が対向する磁性筐体を経て第二セパレータの外側を通過して磁性筐体を経てS極側ヨークに戻る磁気回路が形成される。また、第一セパレータと第二セパレータの配置を180°未満の所定角度とすることで、装置本体の吸着部とは反対面部より磁束が装置本体外へ漏洩することを防ぐことができる。
【0015】
前記ハンドル部が第二位置にあるとき、前記一対のヨークの円弧面が前記磁性筐体に設けられた第一セパレータ又は第二セパレータと各々対向配置されて前記磁性筐体と前記永久磁石回転体との間で磁束が漏洩しない複数の磁気閉回路が各々形成されることが好ましい。
これにより、ハンドル部が第二位置にあるとき、N極側ヨークから発生した磁束が対向する磁性筐体を経てS極側磁性ブロックに戻る複数の磁気閉回路が各々形成されて、ベース部が吸着部と対向する磁性体に吸着することはない。
【0016】
前記磁性筐体を磁気的に分割する第一セパレータと第二セパレータが中心角で180°より小さい所定角度で配置され、前記磁性筐体の隣り合う側面に板厚が薄肉となる薄肉部が各々形成されていてもよい。このように、磁性筐体を磁気的に分割する第一,第二セパレータどうしの配置を中心角で180°より小さい所定角度とすることで、装置本体の吸着部とは反対面部より磁束が装置本体外へ漏洩することを防ぐことができ、セパレータ以外の構造的に強い磁性筐体に取付用のタップ穴加工が可能となるため、取付強度も向上する。また、第一セパレータ、第二セパレータを磁性筐体の収容部や吸着部を形成する際に切削や成形等の加工により一体に加工することが可能であり、部品点数を減らして簡易な構造にすることができる。
【0017】
前記薄肉部を形成する空隙部は、前記磁性筐体の収容部を閉止する蓋部のボスが挿入される位置決め孔を兼用していてもよい。
これにより、装置本体に蓋部を固定するねじ孔を省略することができ、組み立て性が向上し磁性筐体を通過する磁束数も増やすことができる。
【0018】
前記磁気筐体の側面には前記第二セパレータを形成する薄肉部に連続して曲面が形成されていてもよい。
これにより、仮に磁性体ワークが磁気筐体の側面に隣接して配置されても、曲面により逃げ空間を設けることで、意図しない磁性体ワークの吸着面以外への吸着を阻止することができる。
【0019】
前記磁性筐体を磁気的に分割する第一セパレータと第二セパレータが中心角で180°より小さい所定角度で配置され、前記磁性筐体の隣り合う側面に非磁性材を各々介在させてもよい。このように、磁性筐体の隣り合う側面に非磁性材(例えばアルミ材)を介在させることで、磁性筐体を薄肉部と同様に複数の磁極部材に分割することができる。この場合も、装置本体の吸着部とは反対面部より磁束が装置本体外へ漏洩することを防ぐことができ、セパレータ以外の構造的に強い磁性筐体に取付用のタップ穴加工が可能となるため、取付強度も向上する。
【0020】
前記永久磁石回転体に連結されたハンドル部は、中心角で60°~70°の角度範囲で回動可能(正逆回転可能)に設けられていてもよい。
これにより、永久磁石回転体に希土類磁石ブロックを用いても、作業者によるハンドル部の回転操作性が向上する。
【0021】
前記ベース部は前記装置本体の一面に磁性部材に吸着する吸着部が形成され、吸着部と反対面部が被取付部材の取付部となるようにしてもよい。
これにより、磁性筐体である装置本体の吸着部と反対面部に機器を取り付ける際に漏れ磁束が生じないため、取付に際して格別な磁気対策は不要となり使い勝手がよく汎用性が広がる。
【0022】
前記一対のヨークは、磁性筒体の収容部内面と対向する円弧面が面取りされた面取り部が各々形成されており、前記ハンドル部が第一位置にあるとき、希土類磁石ブロックの着磁境界部が前記吸着部に設けられた第一セパレータと対向配置され、いずれかの面取り部が第二セパレータと対向配置されて磁束を前記磁性筒体の端面より漏洩させる複数の磁気回路が各々形成されるようにしてもよい。
これにより、ハンドル部が第一位置にあるとき、N極側ヨークから発生した磁束が対向する磁性筒体の端面を経て第一セパレータ又は第二セパレータを跨いでS極側ヨークに戻る複数の磁気回路が形成される。このとき、ベース部を磁性筒体の端面に対向する磁性部材に吸着固定することができる。このように磁性筒体の長手方向一端側を吸着部とし、長手方向他端側にハンドル部を配置することで、吸着領域が狭い箇所にも設置することができる。
【0023】
前記ハンドル部が第二位置にあるとき、前記希土類磁石ブロックの磁極が第一セパレータ又は第二セパレータと各々対向配置されて前記磁性筒体と前記永久磁石回転体との間で磁束が漏洩しない複数の磁気閉回路が各々形成されるようにしてもよい。
これにより、ハンドル部が第二位置にあるとき、N極側ヨークから発生した磁束が対向する磁性筒体を経てS極側ヨークに戻る複数の磁気閉回路が各々形成される。このとき、磁性筒体より磁束が漏洩しないため磁性筒体の端面に対向する磁性部材に吸着することはない。
【0024】
前記永久磁石回転体の長手方向一端側の軸部と回転板が連結されて磁性筒体の一端側に回転可能に配置され、前記回転板に重ねて蓋部が磁性筒体の端部と連結されていてもよい。
これにより、磁性筒体の一端に回転板を永久磁石回転体と連結して配置され、回転板に重ねて蓋部が磁性筒体に組み付けられるので、操作部となる回転板の設置面積を要さずにコンパクトに配置することができる。
【0025】
前記蓋部は磁性筒体の他端側吸着部と反対面に配置され、被取付部材の取付面となっていてもよい。
この場合、蓋部が被取付部材の取付面を兼用するため、磁気吸着装置の設置面積を取らずに配置することができるうえに、比較的強度の高い蓋部にタップ孔を設けて取付面とすることができる。
【0026】
前記永久磁石回転体は、前記装置本体の収容部内において少なくとも一端側に設けられた軸受を介して回転可能に支持されていることが望ましい。
永久磁石回転体は希土類磁石ブロックの両側にヨークを配置しており、磁気吸引力がフェライト磁石等に比べて大きく回転操作性が低下し易いが、少なくとも一端側に軸受を介在させることで回転操作性が改善する。
【発明の効果】
【0027】
簡易な構成で小型でも十分な磁力が得られ、しかも回転操作性が良く吸着部と反対面部から磁束の漏洩がない使い勝手の良い磁気吸着装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施例1に係る磁気吸着装置の正面図、平面図、矢印A-A方向断面図である。
図2図1の磁気吸着装置において永久磁石回転体の回転位置に応じた装置本体に形成される磁気回路の説明図である。
図3図1の磁気吸着装置に用いられる装置本体の正面図及び平面図である。
図4図1の磁気吸着装置に用いられるヨークの正面図及び平面図である。
図5図1の磁気吸着装置の分解斜視図である。
図6】実施例2に係る磁気吸着装置の正面図、平面図、矢印B-B方向断面図である。
図7図6の磁気吸着装置に用いられる装置本体の正面図及び平面図である。
図8図6の磁気吸着装置に用いられるヨークの正面図及び平面図である。
図9図6の磁気吸着装置の分解斜視図である。
図10】実施例1,2に用いられる装置本体の変形例を示す説明図である。
図11】実施例3に係る磁気吸着装置に用いられる永久磁石回転体の回転位置に応じた装置本体に形成される磁気回路の説明図である。
図12】実施例4に係る磁気吸着装置の斜視図、分解斜視図である。
図13図12の磁気吸着装置に用いられる装置本体の正面図、平面図及び背面図、ハンドル部の正面図及び平面図、蓋体の正面図及び平面図である。
図14図12の磁気吸着装置の正面図、底面図、水平断面図であって、永久磁石回転体の回転位置に応じた装置本体に形成される磁気回路の説明図である。
図15】現行の磁気吸着装置の永久磁石回転体の回転位置に応じた装置本体に形成される磁気回路の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[実施例1]
以下、実施例1に係る磁気吸着装置の概略構成について図1乃至図5を参照して説明する。図1(a)~(c)において、磁気吸着装置1は、磁性筐体2b(磁性ブロック)の内部に断面円形の収容部2aを有する装置本体2と、装置本体2の収容部2a開口を閉止する蓋部3とを有するベース部4と、希土類磁石ブロック5aを中心としてN極又はS極に着磁された一対のヨークが装置本体の収容部内面と各々対向するように設けられた永久磁石回転体5と、永久磁石回転体5の長手方向一端側の軸部と連結され、レバー6a(操作部)が蓋部3の外面に延設されたハンドル部6と、を備えている。
【0030】
以下、各部の構成を説明する。図2(a)(b)に示すように、装置本体2は、例えば鉄製などの磁性筐体2bが用いられる。磁性筐体2bは、複数のセパレータ(第一セパレータ2c,第二セパレータ2d)により複数の磁極部材に分割されて複数の磁気回路が形成されるようになっている。装置本体2には、第一セパレータ2cを跨いで、対向する磁性部材8に吸着する吸着部2eが形成されている(図2(a)参照)。吸着部2eは、収容部2aに隣接する薄肉の第一セパレータ2cを挟んで両側がハの字状に面取りされた傾斜面に連続する平坦面に形成されている。
【0031】
図3(b)に示すように第一セパレータ2c,第二セパレータ2dは、装置本体2を構成する磁性筐体2bの隣り合う側面の板厚が薄肉となる薄肉部によって形成されている。第一セパレータ2c,第二セパレータ2dは、磁性筐体2bの隣り合う側面に丸孔、凹部等の空隙部を形成することで形成される。この場合、装置本体2の収容部2aや吸着部2eを切削や成形などにより形成する際に第一セパレータ2c,第二セパレータ2dを一体に加工することが可能であり、部品点数を減らして簡易な構造とすることができる。また、後述するように第一セパレータ2cと第二セパレータ2dの配置を180°未満の所定角度(例えば中心角で145°~150°範囲)とすることで、装置本体2の吸着部2eとは反対面部(取付部2f)より磁束が漏洩することを防ぐことができる。
また、吸着部2eと反対面部である取付部2fには、ねじ孔2g(タップ孔)が穿孔されている。これは、例えば取付部2fにダイヤルゲージ等を保持する保持具を取り付ける場合、保持具のシャフトをねじ孔2gとねじ嵌合させて取り付けることができる。尚、他の取付方法を採用する場合にはねじ孔2gは省略されていてもよい。このように、装置本体2においてセパレータ以外の構造的に強い磁性筐体2bに取付用のタップ穴加工が可能となるため、取付強度も向上する。
【0032】
また、図3(b)に、破線で示すように、収容部2aの周囲には、ボス穴2h,2iが設けられている。ボス穴2h,2iには、後述する蓋部3に設けられたボス部3a,3bが各々嵌め込まれて組み付けられる。
図3(a)に示すように、ボス穴2hは収容部2aに連続して形成されており、第二セパレータ2dを形成するため、磁性筐体2bの正面側から長手方向に沿って背面側近傍まで形成されている。
【0033】
図2(a)(b)に示すように、永久磁石回転体5は、板状の希土類磁石ブロック5aを中心としてN極又はS極に着磁された一対のヨーク5b、5cが装置本体2の収容部2a内面とわずかな隙間を介して回転可能に支持されている。尚、N極側ヨーク5cとS極側ヨーク5bは極性が入れ替わっていてもよい。
図4(a)(b)において、永久磁石回転体5は、磁性体よりなる円柱状ブロックの長手方向中心軸と交差する径方向に挿入孔5dが形成されて左右の半円柱状ブロックに磁気的に分割されている(一対のヨーク5b,5cは機械的には、長手方向両端に設けられた軸受装着部5e,5fで一体に連結されている。)また、一対のヨーク5b,5cの半円柱状ブロックの径方向一端側(図4(a)上端側)は、円弧面が面取りされた面取り部5b1,5c1が各々形成されている。この円柱状ブロックの挿入孔5dに、板状の希土類磁石ブロック5aが挿入されたままN極又はS極に着磁され、一対のヨーク5b,5cは、装置本体2の収容部2a内面と対向するN極側ヨーク5c及びS極側ヨーク5bが面対称に形成されている(図2(a)(b)参照)。
【0034】
また、図4(b)に示すように一対のヨーク5b,5cの長手方向両端部には、小径円柱状の軸受装着部5e,5fが延設されている。軸受装着部5e,5fの外周には、後述するように転がり軸受7a,7bが各々嵌め込まれる。
また、図4(a)に示すように一方側(正面側)の軸受装着部5eには後述するハンドル部6の嵌合凸部6bと嵌合する嵌合穴5gが穿孔されている。
【0035】
図5において、転がり軸受7a,7b(ベアリング)は、一対のヨーク5b,5cの長手方向端部に設けられた軸受装着部5e,5fの外周に各々組み付けられる。図1(c)に示すように、転がり軸受7a,7bは一対のヨーク5b,5cと共に装置本体2の収容部2a内に嵌め込まれ、永久磁石回転体5を装置本体2に対して回転可能に支持する。
このように、永久磁石回転体5を転がり軸受7a,7bを介して支持することで、希土類磁石ブロック5aを用いた永久磁石回転体5の回転操作性を高めることができる。尚、後述するように、軸受装着部の形状を変更することで一対の転がり軸受7a,7bのうち一方は省略することも可能である。
【0036】
図5において、ハンドル部6は、前面側に作業者が把持するレバー6aが径方向に延設され、背面側に嵌合凸部6bが突設されている。嵌合凸部6bは対向する軸受装着部5eの嵌合穴5gと嵌合するように組み付けられる。また、ハンドル部6の外周縁部には、弧状凸部6cが設けられており、後述する蓋部3の背面側に設けられた嵌合筒部3cの内壁面に周方向に設けられた切欠き凹部3dに沿って所定範囲で回転可能に嵌め合わされる。すなわち、ハンドル部6の回転範囲は、弧状凸部6cが周方向に設けられた切欠き凹部3dの範囲内(中心角θ:60°~70°範囲)で回転動作するように組み付けられる。
【0037】
蓋部3の中央部には抜孔3eが設けられており、蓋部3はハンドル部6の前面側より組み付けられるが、図1(a)(b)に示すように、レバー6aが蓋部3の抜孔3eより外側に露出して配置される。また、蓋部3の背面側の対角位置に設けられたボス部3a,3bが、装置本体2の収容部2aの周囲に設けられたボス穴2h,2iに嵌め込まれて組み付けられる。
このように、第二セパレータ2dを形成するボス穴2hが、磁性筐体2bの収容部2aを閉止する蓋部3のボス部3aが挿入される位置決め孔を兼用することで、装置本体2に蓋部3を固定するねじ孔を省略することができ、組み立て性が向上し、磁性筐体2bを通過する磁束数を増やすことができる。
【0038】
本実施例では、図1(a)に示すように、永久磁石回転体5に連結されたハンドル部6は、レバー6aが中心角θとすると60°~70°の範囲で回動可能に設けられている。これにより、作業者によるハンドル部6の回転操作性が向上する。作業者が、レバー6aを把持してハンドル部6を回転操作して図1(a)の実線で示す第一位置にあるとき、図2(a)において希土類磁石ブロック5aの着磁境界部(端面)が第一セパレータ2cと対向配置され、ヨーク5bの面取り部5b1が装置本体2に設けられた第二セパレータ2dと対向配置される。
このとき、N極側ヨーク5cより対向する磁性筐体2bを経て第一セパレータ2cを跨いで吸着部2eより磁束を装置本体2外へ漏洩させ、磁性筐体2bを通じてS極側ヨーク5bに戻る第一の磁気回路M1と、N極側ヨーク5cより対向する磁性筐体2bを経て第二セパレータ2dを跨いで磁束を装置本体2外へ漏洩させ、磁性筐体2bを通じてS極側ヨーク5bに戻る第二の磁気回路M2が各々形成される。吸着部2eに対向配置された磁性部材8には第一の磁気回路M1が形成されてベース部4が磁性部材8に吸着保持される。
【0039】
また、作業者が、レバー6aを介してハンドル部6を回転操作して図1(b)の一点鎖線で示す第二位置にあるとき、図2(b)においてN極側ヨーク5cの円弧面が第一セパレータ2cと対向配置され、S極側ヨーク5bの円弧面が第二セパレータ2dと対向配置される。
このとき、N極側ヨーク5cより対向する磁性筐体2bを経て面取り部5c1,5b1を内方に見ながらS極側ヨーク5bに戻る第一の磁気閉回路M1´と、N極側ヨーク5cより対向する磁性筐体2bを経て希土類磁石ブロック5aの着磁境界部(端面)を内方に見ながらS極側ヨーク5bに戻る第二の磁気閉回路M2´が各々形成される。
これにより、ハンドル部6が第二位置にあるとき、吸着部2eより装置本体2外へ漏洩する磁束は発生しないため、ベース部4が対向する磁性部材8に吸着することはない。
【0040】
図5に示すように、磁気吸着装置1を組み立てるには、面取り部5b1,5c1が設けられたヨーク5b,5c間の挿入孔5dに、板状の希土類磁石ブロック5aを挿入してN極又はS極に着磁された永久磁石回転体5を用意する。この永久磁石回転体5を用意する。この長手方向両端に延設された軸受装着部5e,5fに転がり軸受8a,8bを嵌め合わせ、これらを装置本体2の収容部2aに挿入して組み付ける。また、軸受装着部5eの嵌合穴5gに、ハンドル部6の嵌合凸部6bを嵌合させて一体に組み付けられる。最後に蓋部3の抜孔3eよりレバー6aを挿通させて外面側に露出させた状態でボス部3a,3bを、装置本体2のボス穴2h,2iに嵌め合わせることで組み立てられる。
このように部品どうしの組み付けにねじを極力使用しないことで、組み立て性を向上させ、磁気的な損失が生ずるのを防止している。
【0041】
以上説明したように、ハンドル部6が第一位置にあるとき、N極側ヨーク5cから発生した磁束が対向する装置本体2を経て第一セパレータ2cの外側を通過して装置本体2を経てS極側ヨーク5bに戻る第一の磁気回路M1が形成されて、ベース部4を吸着部2eと対向する磁性部材8に吸着させることができる。また、N極側ヨーク5cより対向する磁性筐体2bを経て第二セパレータ2dを跨いで磁束を装置本体2外へ漏洩させ、磁性筐体2bを通じてS極側ヨーク5bに戻る第二の磁気回路M2が形成されるが、吸着部2eとは反対面部である取付部2fからの磁束漏れがないため、測定機器等を取り付ける際に格別な磁気対策は不要となり使い勝手がよく汎用性が広がる。
永久磁石回転体5は希土類磁石ブロック5aの両側に一対のヨーク5b,5cを配置しており、磁気吸引力がフェライト磁石等に比べて大きく回転操作性が低下し易いが、転がり軸受7a,7bを介することで回転操作性が改善する。またレバー6aの回転操作角度も中心角θが60°~70°範囲であるため回転操作性がよい。
【0042】
[実施例2]
以下、実施例2に係る磁気吸着装置の概略構成について図6乃至図9を参照して説明する。実施例1と同一部材には同一番号を付して説明を援用するものとし、以下では異なる構成を中心に説明する。
図6(a)~(c)において、磁気吸着装置1は、磁性筐体2bの内部に断面円形の収容部2aを有する装置本体2と、装置本体2の収容部2a開口を閉止する蓋部3とを有するベース部4と、希土類磁石ブロック5aを中心としてN極又はS極に着磁された一対のヨーク5b,5cが装置本体2の収容部2a内面と各々対向するように回転可能に支持された永久磁石回転体5と、永久磁石回転体5の長手方向一端側の軸部と連結され、レバー6aが蓋部3の外面に延設されたハンドル部6を備えている構成は実施例1と同様である。本実施例は、実施例1に比べて一対の軸受のうち転がり軸受7bが省略されており、永久磁石回転体5とこれを回転可能に支持する装置本体2の構造が異なっている。
【0043】
また、図6(c)に示すように、永久磁石回転体5は、円柱状ブロックの挿入孔5dに、板状の希土類磁石ブロック5aが挿入されたままN極又はS極に着磁されて円弧面が面取りされた面取り部5b1,5c1を有する一対のヨーク5b,5cが面対称に形成されている構成は実施例1と同様である。
【0044】
図8(a)(b)において、ヨーク5b、5cを構成する円柱状ブロックの長手方向一端部には、小径円柱状の軸受装着部5eが延設されている。この軸受装着部5eの外周には、後述するように転がり軸受7aが嵌め込まれる。また、ヨーク5b、5cを構成する円柱状ブロックの長手方向他端中央部にはテーパー面を有する円錐状軸部5hが突設されている。尚、円錐状軸部5hは先端が先鋭状に尖っていなくてもよく、円錐台状に面取りされていても良い。
【0045】
図7(a)に示すように、装置本体2は、例えば鉄製などの磁性筐体2bが用いられる。磁性筐体2bは第一セパレータ2c,第二セパレータ2dにより複数の磁極部材に分割されて複数の磁気回路が形成されるようになっている。装置本体2には、第一セパレータ2cを跨いで、対向する磁性体(図示せず)を吸着する吸着部2eが形成される。第一セパレータ2c,第二セパレータ2dは、装置本体2を構成する磁性筐体2bの隣り合う側面の板厚が薄肉となる薄肉部によって形成されている。第一セパレータ2cと第二セパレータ2dは180°未満の所定角度(例えば中心角で145°~150°範囲)で配置されている点も実施例1と同様である。
【0046】
また、図7(b)に、破線で示すように、収容部2aの周囲には、ボス穴2h,2iが設けられている。ボス穴2h,2iには、蓋部3に設けられたボス部3a,3bが各々嵌め込まれて組み付けられる。収容部2aの後面内壁の中央部には、軸受凹部2jが設けられている。軸受凹部2jは、永久磁石回転体5の円錐状軸部5hを受け入れるため逆円錐孔に形成されている。図6(c)示すように装置本体2の収容部2aに永久磁石回転体5が長手方向奥側で円錐状軸部5hを軸受凹部2jに嵌め合わせてセンタリングされて収容され、長手方向手前側で転がり軸受7aを介して回転可能に支持される。
【0047】
図9に示すように、磁気吸着装置1を組み立てるには、面取り部5b1,5c1が設けられたヨーク5b,5c間の挿入孔5dに、板状の希土類磁石ブロック5aを挿入してN極又はS極に着磁された永久磁石回転体5を用意する。この永久磁石回転体5の長手方向一端に延設された軸受装着部5eに転がり軸受7aを嵌め合わせ、円錐状軸部5h側から装置本体2の収容部2aに挿入して軸受凹部2jに嵌め合わせて組み付ける。また、軸受装着部5eの嵌合穴5gに、ハンドル部6の嵌合凸部6bを嵌合させて一体に組み付けられる。最後に蓋部3の抜孔3eよりレバー6aを挿通させて外面側に露出させた状態でボス部3a,3bを、装置本体2のボス穴2h,2iに嵌め合わせることで組み立てられる。
【0048】
ここで実施例1,2に用いられる装置本体の変形例について図10を参照して説明する。前述した図2(a)に示すように、ハンドル部6が第一位置にあるとき、N極側ヨーク5cより対向する磁性筐体2bを経て第一セパレータ2cを跨いで吸着部2eより磁束を装置本体2外へ漏洩させ、磁性筐体2bを通じてS極側ヨーク5bに戻る第一の磁気回路M1と、N極側ヨーク5cより対向する磁性筐体2bを経て第二セパレータ2dを跨いで磁束を装置本体2外へ漏洩させ、磁性筐体2bを通じてS極側ヨーク5bに戻る第二の磁気回路M2が各々形成される。このとき、磁性筐体2bの吸着面2eに隣接する側面2kに磁性体ワークWが配置された場合、当該ワークWが第二の磁気回路M2を形成して側面2kに吸着される場合も想定される。これを回避するため、磁気筐体2bの側面2kには第二セパレータ2dを形成する薄肉部に連続して曲面2mが形成されている。
これにより、仮に磁性体ワークWが側面2kに隣接して配置されても、曲面2mにより逃げ空間を設けることで、意図しない磁性体ワークWの吸着面2e以外への吸着を阻止することができる。
【0049】
[実施例3]
以下、実施例3に係る磁気吸着装置の概略構成について図11(a)(b)を参照して説明する。実施例1と同一部材には同一番号を付して説明を援用するものとし、以下では異なる構成を中心に説明する。
【0050】
装置本体2を磁気的に分割する第一セパレータ2cと第二セパレータ2dが中心角で180°より小さい所定角度(例えば中心角で145°~150°範囲)で配置されている点は実施例1と同様であるが、薄肉部に代えて磁性筐体2bの隣り合う側面に非磁性材(アルミ材等)を各々介在させてもよい。非磁性材は磁性筐体2bに溶接或いは接着などにより一体に組み付けられる。
このように、磁性筐体2bの隣り合う側面に非磁性材(例えばアルミ材)を介在させることで、磁性筐体2bを薄肉部と同様に複数の磁極部材に分割することができる。また、装置本体2においてセパレータ以外の構造的に強い磁性筐体2bに取付用のタップ穴加工が可能となるため、取付強度も向上する。
尚、永久磁石回転体5の構成は、実施例1と同様であり、永久磁石回転体5に連結されたハンドル部6の回転角度は、中心角θが60°~70°の範囲で回動可能に設けられている点も同様である。
【0051】
作業者が、ハンドル部6を回転操作して図1(a)の実線で示す第一位置にあるとき、図11(a)において希土類磁石ブロック5aの着磁境界部(端面)が第一セパレータ2cと対向配置され、S極側ヨーク5bの面取り部5b1が装置本体2に設けられた第二セパレータ2dと対向配置される。
このとき、N極側ヨーク5cより対向する磁性筐体2bを経て第一セパレータ2cを跨いで吸着部2eより磁束を装置本体2外へ漏洩させ、磁性筐体2bを通じてS極側ヨーク5bに戻る第一の磁気回路M1と、N極側ヨーク5cより対向する磁性筐体2bを経て第二セパレータ2dを跨いで磁束を装置本体2外へ漏洩させ、磁性筐体2bを通じてS極側ヨーク5bに戻る第二の磁気回路M2が各々形成される。吸着部2eに対向して磁性体(図示せず)が配置されると、第一の磁気回路M1が形成されて磁性筐体2b(ベース部4)が磁性体に吸着保持される。
【0052】
また、作業者が、レバー6aを介してハンドル部6を回転操作して図1(b)の一点鎖線で示す第二位置にあるとき、図11(b)においてN極側ヨーク5cの円弧面が第一セパレータ2cと対向配置され、S極側ヨーク5bの円弧面が第二セパレータ2dと対向配置される。
このとき、N極側ヨーク5cより対向する磁性筐体2bを経て面取り部5c1,5b1を内方に見ながらS極側ヨーク5bに戻る第一の磁気閉回路M1´と、N極側ヨーク5cより対向する磁性筐体2bを経て希土類磁石ブロック5aの着磁境界部(端面)を内方に見ながらS極側ヨーク5bに戻る第二の磁気閉回路M2´が各々形成される。これにより、ハンドル部6が第二位置にあるとき、吸着部2eより装置本体2外へ漏洩する磁束は発生しないため、磁性筐体2b(ベース部4)が対向する磁性体(図示せず)に吸着することはない。
【0053】
以下、実施例4に係る磁気吸着装置の概略構成について図12乃至図14を参照して説明する。実施例1と同一部材には同一番号を付して説明を援用するものとし、以下では異なる構成を中心に説明する。永久磁石回転体5の構成は、実施例1と同様である。図12(a)に示すように、磁性ブロックとして磁性筒体2nを用い、磁性筒体2nの長手方向一端側がハンドル部6を介して蓋部3で閉止され、長手方向他端側に吸着部2eが形成される縦長の仕様となっている。蓋部3の中央部には、ねじ穴3f(タップ穴)が穿孔されており、ダイヤルゲージ等を保持する保持具が取り付けられる。即ち、蓋部3が図示しない保持具のシャフトをねじ穴3fとねじ嵌合させて取り付ける取付面となっている。
【0054】
図13(b)に示すように、磁性筒体2nは中央部に長手方向に延設された筒孔よりなる収容部2aが設けられいる。この収容部2a内に永久磁石回転体5が回転可能に収容される。磁性筒体2aの長手方向一端面にはねじ穴2pが3か所設けられており、後述する蓋部3がねじ止めされて組み付けられる。
また、磁性筒体2nは、周方向に複数箇所に設けられたセパレータ(第一セパレータ2c,第二セパレータ2d)により複数の磁極部材に分割されている。第一セパレータ2c,第二セパレータ2dは、装置本体2を構成する磁性筒体2nの周壁の板厚が薄肉となる薄肉部によって形成されている。第一セパレータ2cと第二セパレータ2dは、180°未満の所定角度(例えば中心角で120°)で配置されている。第一セパレータ2c,第二セパレータ2dは、磁性筒体2nの長手方向一端側から長手方向他端近傍まで形成されている。第一セパレータ2c,第二セパレータ2dは、磁性筒体2nの収容部2aに隣接して丸孔、凹部等の空隙部2qを形成することで形成される。装置本体2の収容部2aを切削や成形などにより形成する際に第一セパレータ2c,第二セパレータ2dを一体に加工することが可能であり、部品点数を減らして簡易な構造とすることができる。尚、磁性筒体2nの長手方向に設けられる空隙部2qは、吸着部2eとなる環状端面まで貫通して形成されていない。尚、薄肉部に代えて磁性筒体2nの周壁に非磁性材(アルミ材等)を各々介在させてもよい。非磁性材は磁性筒体2nに溶接或いは接着などにより一体に組み付けられる。
【0055】
図13(b)に示すようにハンドル部6は、円板状の回転板が用いられる。ハンドル部6の中央部にヨーク5b,5cの軸受装着部5eの嵌合穴5gと嵌合する嵌合凸部6bが突設されている。嵌合凸部6bの反対面は、後述する蓋部3の中心軸3gが嵌合する嵌合凹部6eが形成されている。また、ハンドル部6の外周側には、円弧状に連なる長孔6dが複数箇所(例えば3か所)に設けられている。この長孔6dは後述する蓋部3を磁性筒体2nのねじ穴2pにねじ嵌合する際にボス部3hが挿通して組み付けられる(図12(b)参照)。図13(a)に示すように、ハンドル部6は外周面6fが露出するように装置本体2と蓋部3に挟み込まれて組み付けられる。よって、ハンドル部6の回転量は長孔6dに挿通するボス部3hと長孔6dの両端部に係止する範囲内となる。また、ハンドル部6の外周面6f(操作部)にはローレット加工が施されており、作業者が滑らずに外周面6fを把持して所定方向に回転させることができる。このハンドル部6の回転操作によって、後述する磁性筒体2nの吸着部2eの吸着・吸着解除の切り替えが行えるようになっている。
【0056】
図12(a)に示すように、蓋部3は磁性筒体2nの吸着部2eとは反対端面に配置され、ハンドル部6(回転板)に重ねて磁性筒体2nの端部と連結される。図13(c)に示すように、蓋部3は円板状に形成され、中央部にハンドル部6の回転軸となる中心軸3gが突設されている。中心軸3gの反対面にはねじ穴3f(タップ穴)が設けられている。また、蓋部3の外周側にはボス部3hが複数箇所(例えば3箇所)に設けられている。ボス部3hにはスリーブ孔3iが設けられており、後述するねじ9が嵌め込まれる。このように、蓋部3が被取付部材の取付面を兼用するため、磁気吸着装置1の設置面積を取らずに配置することができるうえに、比較的強度の高い中心軸3gを設けた蓋部3にタップ孔を設けて取付面とすることができる。
【0057】
図12(b)に示すように磁気吸着装置1を組み立てるには、面取り部5b1,5c1が設けられたヨーク5b,5c間の挿入孔5dに、板状の希土類磁石ブロック5aを挿入してN極又はS極に着磁された永久磁石回転体5を用意する。この永久磁石回転体5の長手方向両端に延設された軸受装着部5e,5fに転がり軸受7a,7bを各々嵌め合わせ、磁性筒体2nの収容部2aに挿入して組み付ける。また、軸受装着部5eの嵌合穴5gとハンドル部6の嵌合凸部6b(図13(b)参照)を嵌合させて磁性筒体2nの端部にハンドル部6を重ね合わせる。また、蓋部3をハンドル部6に中心軸3gを嵌合凹部6eへ嵌め合わせ、3箇所のボス部3hを対応する長孔6dに挿通させて互いに重ね合わせ、各ボス部3hのスリーブ孔3iを対応する磁性筒体2nのねじ孔2pと位置合わせして各々突き当てる。そして、スリーブ孔3iにねじ9を嵌め込んでねじ孔2pとねじ嵌合させることで、図12(a)に示すようにハンドル部6及び蓋部3が磁性筒体2nの端部に重ねて組み付けられる。ハンドル部6の外周面6f(操作部)は、蓋部3の外周面より外方にせり出すように露出して組み付けられている。ハンドル部6を回転させると永久磁石回転体5が一体となって回転し、装置本体2に形成される磁気回路が切り換えられる。
【0058】
図14(a)~(c)に示すように、ハンドル部6が第一位置にある(ボス部3hが対応する長孔6dの一端に係止している)とき、例えば図14(c)に示すように希土類磁石ブロック5aの着磁境界部(端面)が第一セパレータ2cと対向配置され、ヨーク5bの面取り部5b1が装置本体2に設けられた第二セパレータ2dと対向配置される。このとき、図14(a)(b)に示すようにN極側ヨーク5bより発生した磁束は対向する磁性筒体2nより磁束を装置本体2外へ漏洩させ、吸着部2eにおいて、第一,第二セパレータ2c,2dを各々跨いで磁気的に分離された他方の磁性筒体2nを通じてS極側ヨーク5cに戻る第一、第二の磁気回路M1,M2が形成される。このとき、磁性筒体2nの吸着部2eと対向する磁性部材8を通過する磁束によって、装置本体2が磁性部材8に吸着固定される。尚、磁性筒体2nの外周面より、第一,第二セパレータ2c,2dを各々跨ぐ磁束も漏洩するが、磁性部材8への吸着動作には寄与しない。
【0059】
図14(d)(e)に示すように、ハンドル部6が第二位置にある(ボス部3hが対応する長孔6dの他端に係止している)とき、例えば希土類磁石ブロック5aのS極が第一セパレータ2cと対向配置されN極が第二セパレータ2dと対向配置される。このとき、N極側ヨーク5bより発生した磁束は対向する磁性筒体2n内を通過してS極側ヨークへ戻る第一,第二の磁気閉回路M1´,M2´が各々形成される(図14(e)参照)。このとき、磁性筒体2nの吸着部2eより外部に磁束が漏洩しないため、吸着部2eと対向する磁性部材8との吸着は解除される。尚、希土類磁石ブロック5aの極性(N極・S極)は入れ替わっていてもよい。
【0060】
上述した実施例1~3に用いた装置本体2は磁性筐体2bである場合について説明したが、必ずしも6面部の形状は平面である必要はなく、吸着部2eに傾斜面に形成される他に、他の側面にも凹凸面や傾斜面、曲面などが形成されていてもよい。また、実施例4に用いられる磁性筒体2nは、必ずしも環状形が真円状でなくともよく、楕円形、長円形、曲面を含む矩形状など様々な形状に形成されていてもよい。
また、希土類磁石ブロック5aは板状に形成されて、径方向に設けられた挿入孔5dに挿入されていたが、板状に限らず、例えば柱状に形成され、ヨークに対して軸方向に設けられた挿入孔から挿入されるようにしてもよい。
また、上述した磁気吸着装置1は、構成部品どうしを可能な限り嵌め合いにより組み立てられるが、圧入や接着などを併用して組み立てられるようになっていてもよい。
また、ハンドル部6の操作角度(回転角度)は、中心角で60°~70°を例示したがこれに限らず、第一セパレータ2cと第二セパレータ2dの配置角度を調整することで、例えば中心角で45°~55°のように小さくすることも80°~90°のように大きくすることも可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 磁気吸着装置 2 装置本体 2a 収容部 2b 磁性筐体 2c 第一セパレータ 2d 第二セパレータ 2e 吸着部 2f 取付部 2g ねじ孔 2h,2i ボス穴 2j 軸受凹部 2k 側面 2m 曲面 2p ねじ穴 2q 空隙部 3 蓋部 3a,3b ボス部 3c 嵌合筒部 3d 切欠き凹部 3e 抜孔 3f ねじ穴 4 ベース部 5 永久磁石回転体 5a 希土類磁石ブロック 5b,5c ヨーク 5b1,5c1 面取り部 5d 挿入孔 5e,5f 軸受装着部 5g 嵌合穴 5h 円錐状軸部 6 ハンドル部 6a レバー 6b 嵌合凸部 6c 弧状凸部 6d 長孔 6e 嵌合凹部 6f 外周面 7a,7b 転がり軸受 8 磁性部材 M1 第一の磁気回路 M2 第二の磁気回路 M1´ 第一の磁気閉回路 M2´ 第二の磁気閉回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15