(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012444
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】立坑の構築装置及び立坑の構築方法
(51)【国際特許分類】
E21D 1/08 20060101AFI20230118BHJP
E21D 5/08 20060101ALI20230118BHJP
E21D 11/00 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
E21D1/08
E21D5/08
E21D11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111038
(22)【出願日】2022-07-11
(31)【優先権主張番号】P 2021115743
(32)【優先日】2021-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000216025
【氏名又は名称】鉄建建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521309949
【氏名又は名称】株式会社忠武建基
(71)【出願人】
【識別番号】512105598
【氏名又は名称】日立建機日本株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】金田 淳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 保祐
(72)【発明者】
【氏名】八柳 由花
(72)【発明者】
【氏名】大野 啓介
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 聡
(72)【発明者】
【氏名】和田 旭弘
(72)【発明者】
【氏名】野本 将太
(72)【発明者】
【氏名】堀内 愛
(72)【発明者】
【氏名】竹田 茂嗣
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 隆
(72)【発明者】
【氏名】山田 宣彦
(72)【発明者】
【氏名】岩城 圭介
(72)【発明者】
【氏名】酒井 亨
(72)【発明者】
【氏名】中村 征史
(72)【発明者】
【氏名】湊 憲二
(72)【発明者】
【氏名】蘆 海洋
(72)【発明者】
【氏名】磯上 武章
(72)【発明者】
【氏名】磯上 章太
(72)【発明者】
【氏名】奥田 一晶
(72)【発明者】
【氏名】石井 基寛
(72)【発明者】
【氏名】大高 範寛
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健
(72)【発明者】
【氏名】藤本 雄充
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155BB01
2D155JA00
2D155KB04
(57)【要約】
【課題】孔壁が露出することなく、安全に掘削することができる立坑の構築装置及び立坑の構築方法を提供することを目的とする。
【解決手段】環状のライナープレート70を高さ方向に組み付けて、地盤100の内部に杭孔を構築する掘削ユニット1に、既設のライナープレート70のうち最下段リング70Aの下方の少なくとも一部を外嵌するとともに、下方に延びる筒状の刃口10と、刃口10の内部における孔底部112を掘削する掘削部30と、刃口内面10aから掘削部30を吊り下げ支持する支持フレーム20とを備え、支持フレーム20は、最下段リング70Aの下端より下方の位置において、刃口内面10aに複数箇所で固定され、支持フレーム20の上面側にステージ40を構成した。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のライナープレートを高さ方向に組み付けて、地中に立坑を構築する立坑の構築装置であって、
既設の組付済ライナープレートの下方の少なくとも一部を外嵌するとともに、下方に延びる筒状の刃口と、
前記刃口の内部における孔底部を掘削する掘削部と、
前記刃口の内面から前記掘削部を吊り下げ支持する支持部とが備えられ、
前記支持部は、
最下段の前記組付済ライナープレートの下端より下方の位置において、前記刃口の内面に複数箇所で固定され、
前記支持部の上面側に作業床が構成された
立坑の構築装置。
【請求項2】
前記支持部は、
環状の中央に前記掘削部を支持する中央支持部と、
前記中央支持部から前記刃口の内面に向かって延びる複数のフレーム部とで構成されるとともに、
前記掘削部は、前記中央支持部に回転自在に支持された
請求項1に記載の立坑の構築装置。
【請求項3】
前記掘削部によって前記孔底部が掘削された掘削土を孔外に排出する排出部が設けられ、
前記排出部は、
前記掘削土を積み込むバケツと、
前記バケツを開口部まで案内する、前記高さ方向に延びるレールとで構成され、
前記レールは、前記フレーム部同士の間に配置され、
前記作業床に、前記レールに案内される前記バケツの通過を許容する通過口が設けられた
請求項2に記載の立坑の構築装置。
【請求項4】
前記刃口に、
前記組付済ライナープレートを反力として、前記刃口を下方に押し付ける伸縮装置が設けられた
請求項1乃至請求項3のうちいずれかに記載の立坑の構築装置。
【請求項5】
前記伸縮装置が、環状方向に所定間隔を隔てて複数設けられた
請求項4に記載の立坑の構築装置。
【請求項6】
前記刃口の外面と孔壁との間と、前記組付済ライナープレートの外面と前記孔壁との間とを遮断する遮断材が設けられるとともに、
既設の前記組付済ライナープレートの下端と、外嵌する前記刃口との間を埋める間詰部が脱着可能に設けられた
請求項1に記載の立坑の構築装置。
【請求項7】
前記掘削部を遠隔操作する遠隔操作部が設けられた
請求項1に記載の立坑の構築装置。
【請求項8】
少なくとも前記掘削部を制御する制御部と、
前記掘削部で掘削する掘削箇所の状況を検出する検出部とが設けられ、
前記制御部が、
前記検出部の検出結果に基づいて少なくとも前記掘削部の掘削を制御する
請求項1に記載の立坑の構築装置。
【請求項9】
環状のライナープレートを高さ方向に組み付けて、地中に立坑を構築する立坑の構築方法であって、
地中に組み付けられた既設の組付済ライナープレートの下方の少なくとも一部を外嵌するとともに、下方に延びるように筒状の刃口が配置されるとともに、
前記刃口の内部における孔底部を掘削する掘削部が、最下段の前記組付済ライナープレートの下端より下方の位置において、前記刃口の内面に複数箇所で固定された支持部によって吊り下げ支持され、
前記支持部で吊り下げ支持された前記掘削部で前記刃口の内部における前記孔底部を掘削する掘削工程と、
前記孔底部の掘削によって前記ライナープレートの少なくとも一段分下降した刃口内部において最下段の前記組付済ライナープレートの下端に前記ライナープレートを、前記支持部の上面側に構成された作業床で組み付ける組み付け工程とを繰り返す
立坑の構築方法。
【請求項10】
前記支持部は、
環状の中央に前記掘削部を支持する中央支持部と、
前記中央支持部から前記刃口の内面に向かって延びる複数のフレーム部とで構成されるとともに、
前記掘削部は、前記中央支持部に回転自在に支持され、
前記掘削部によって前記孔底部が掘削された掘削土を孔外に排出する排出部が設けられ、
前記排出部は、
前記掘削土を積み込むバケツと、
前記バケツを開口部まで案内する、前記高さ方向に延びるレールとで構成されるとともに、
前記レールは前記フレーム部同士の間に配置され、
前記作業床に、前記レールに案内される前記バケツの通過を許容する通過口が設けられ、
掘削した前記掘削土を前記掘削部で前記バケツに積み込み、
前記掘削土が積み込まれた前記バケツを、前記レールに沿って前記通過口を通過させるととともに前記開口部まで案内して孔外に排出する
請求項9に記載の立坑の構築方法。
【請求項11】
前記バケツが前記レールに沿って移動する際に、
前記掘削部を、前記通過口から隠れる待避位置に待避させる
請求項10に記載の立坑の構築方法。
【請求項12】
前記刃口に、
前記組付済ライナープレートを反力として、前記刃口を下方に押し付ける伸縮装置が設けられ、
前記組付済ライナープレートを反力として、前記刃口を下方に押し付けて前記刃口を下降させる
請求項9乃至請求項11のうちいずれかに記載の立坑の構築方法。
【請求項13】
前記刃口の外面と孔壁との間と、前記組付済ライナープレートの外面と前記孔壁との間とを遮断する遮断材が設けられるとともに、
前記組み付け工程で組み付けられた既設の前記組付済ライナープレートの下端と、外嵌する前記刃口との間を埋める間詰部が設けられ、
前記刃口の下降後、且つ前記組み付け工程の前に、最下段の前記組付済ライナープレートの外面と前記孔壁との間に裏込め材を充填する充填工程を行う
請求項12に記載の立坑の構築方法。
【請求項14】
前記間詰部は、前記組付済ライナープレートの下端に対して脱着可能に設けられ、
前記刃口の下降後、且つ前記充填工程の前に、前記間詰部を最下段の前記組付済ライナープレートの下端に取り付ける
請求項13に記載の立坑の構築方法。
【請求項15】
前記掘削部を遠隔操作部で遠隔操作する
請求項9に記載の立坑の構築方法。
【請求項16】
前記掘削部で掘削する掘削箇所の状況を検出部で検出し、
前記検出部の検出結果に基づいて少なくとも前記掘削部の掘削を制御部で制御する
請求項9に記載の立坑の構築方法。
【請求項17】
環状のライナープレートを高さ方向に組み付けて、地中に立坑を構築する立坑の構築装置であって、
既設の組付済ライナープレートの下方の少なくとも一部を外嵌するとともに、下方に延びる筒状の刃口と、
前記刃口の内部における孔底部を掘削する掘削部と、
前記刃口の内面から前記掘削部を吊り下げ支持する支持部とが備えられ、
前記支持部は、
最下段の前記組付済ライナープレートの下端より下方の位置において、前記刃口の内面に複数箇所で固定され、
前記支持部の上面側に作業床が構成され、
該作業床に連結された下端から上方へ延びる支柱部と、
該支柱部の上部に設けられ、前記作業床を覆う屋根部とが備えられた
立坑の構築装置。
【請求項18】
前記支柱部が、内部中空の筒状体であり、
少なくとも前記掘削部にエネルギーを伝達する伝達部材が、前記支柱部の内部に挿通された
請求項17に記載の立坑の構築装置。
【請求項19】
前記支柱部が、前記作業床における平面視略中央に1つ配置された
請求項17に記載の立坑の構築装置。
【請求項20】
前記屋根部は、
前記支柱部から延びる複数の梁部と、
該梁部に敷設される屋根本体とが備えられ、
該屋根本体が、網目を有するメッシュ部材で構成された
請求項17に記載の立坑の構築装置。
【請求項21】
前記屋根部は、前記作業床に対して平面視略相似形の形状に形成された
請求項17に記載の立坑の構築装置。
【請求項22】
環状のライナープレートを高さ方向に組み付けて、地中に立坑を構築する立坑の構築方法であって、
地中に組み付けられた既設の組付済ライナープレートの下方の少なくとも一部を外嵌するとともに、下方に延びるように筒状の刃口が配置されるとともに、
前記刃口の内部における孔底部を掘削する掘削部が、最下段の前記組付済ライナープレートの下端より下方の位置において、前記刃口の内面に複数箇所で固定された支持部によって吊り下げ支持され、
前記支持部で吊り下げ支持された前記掘削部で前記刃口の内部における前記孔底部を掘削する掘削工程と、
前記孔底部の掘削によって前記ライナープレートの少なくとも一段分下降した刃口内部において最下段の前記組付済ライナープレートの下端に前記ライナープレートを、前記支持部の上面側に構成された作業床で組み付ける組み付け工程とを繰り返し、
前記作業床には、
該作業床に連結された下端から上方へ延びる支柱部と、
該支柱部の上部に設けられ、前記作業床を覆う屋根部とが備えられた
立坑の構築方法。
【請求項23】
環状のライナープレートを高さ方向に組み付けて、地中に立坑を構築する立坑の構築装置であって、
前記ライナープレートの外寸より大きい内寸を有して下方に延びる筒状の刃口と、
前記刃口の内部における孔底部を掘削する掘削部と、
前記刃口の内面から前記掘削部を吊り下げ支持する支持部とが備えられ、
前記支持部は、
最下段の組付済ライナープレートの下端より下方の位置において、前記刃口の内面に複数箇所で固定され、
前記支持部の上面側に作業床が構成され、
前記刃口が既設の前記組付済ライナープレートの下端より下方に位置する状態において、既設の前記組付済ライナープレートの下端と、孔壁との間を埋める間詰部が脱着可能に設けられた
立坑の構築装置。
【請求項24】
環状のライナープレートを高さ方向に組み付けて、地中に立坑を構築する立坑の構築方法であって、
前記ライナープレートの外寸より大きい内寸を有して下方に延びる筒状の刃口が配置されるとともに、
前記刃口の内部における孔底部を掘削する掘削部が、最下段の組付済ライナープレートの下端より下方の位置において、前記刃口の内面に複数箇所で固定された支持部によって吊り下げ支持され、
前記支持部で吊り下げ支持された前記掘削部で前記刃口の内部における前記孔底部を掘削する掘削工程と、
前記孔底部の掘削によって前記ライナープレートの少なくとも一段分下降した刃口内部において最下段の前記組付済ライナープレートの下端に前記ライナープレートを、前記支持部の上面側に構成された作業床で組み付ける組み付け工程と、
前記刃口が既設の前記組付済ライナープレートの下端より下方に下降後、且つ前記組み付け工程の前に、既設の前記組付済ライナープレートの下端と孔壁との間を埋める間詰部を、最下段の前記組付済ライナープレートの下端に取り付けたのち、最下段の前記組付済ライナープレートの外面と前記孔壁との間に裏込め材を充填する充填工程とを繰り返す
立坑の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に環状のライナープレートを高さ方向に組み付けて立坑を構築する立坑の構築装置及び立坑の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、地中に環状のライナープレートを高さ方向に組み付けて立坑を構築する深礎工法などがある。
具体的には、孔底部を掘削するとともに、掘削された孔壁を環状のライナープレートで保護することを所定深さまで繰り返して、立坑を構築する工法であり、特許文献1に記載の工法もそのひとつである。
【0003】
特許文献1では、リング状に組み付けたライナープレートの内部に掘削装置を配置するとともに、裏込め材を充填したライナープレートに対してジャッキで押付けて掘削装置の支持反力を確保して孔底部を掘削する。そして、1リングに対応する深さの掘削が完了すると、組み付け済みのライナープレートの下方にさらにライナープレートを組み付ける。これを所定深さまで繰り返して所定深さの立坑を拘置する。
【0004】
しかしながら、特許文献1で記載するように、掘削装置でライナープレートの下方の孔底部を掘削すると、孔壁が露出することとなる。つまり、組み付け済みのライナープレートの下方の孔壁が露出した状態で孔底部を掘削するため、孔壁が崩れるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明では、孔壁が露出することなく、安全に掘削することができる立坑の構築装置及び立坑の構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、環状のライナープレートを高さ方向に組み付けて、地中に立坑を構築する立坑の構築装置であって、既設の組付済ライナープレートの下方の少なくとも一部を外嵌するとともに、下方に延びる筒状の刃口と、前記刃口の内部における孔底部を掘削する掘削部と、前記刃口の内面から前記掘削部を吊り下げ支持する支持部とが備えられ、前記支持部は、最下段の前記組付済ライナープレートの下端より下方の位置において、前記刃口の内面に複数箇所で固定され、前記支持部の上面側に作業床が構成されたことを特徴とする。
【0008】
この発明により、孔壁が露出することなく、安全に孔底部を掘削して、立坑を構築することができる。
詳述すると、既設の組付済ライナープレートの下方の少なくとも一部を外嵌するとともに、下方に延びる筒状の刃口の内面から支持部で、前記刃口の内部における孔底部を掘削する掘削部を支持している。
【0009】
そのため、既設の組付済ライナープレートの下方の少なくとも一部を外嵌するとともに、下方に延びる筒状の刃口によって組付済ライナープレートの下方の孔壁が露出することなく、孔底部を掘削することができる。
【0010】
また、掘削部を支持する前記支持部は、最下段の前記組付済ライナープレートの下端より下方の位置において、前記刃口の内面に複数箇所で固定されているため、支持部を介して刃口で掘削部を支持している。
【0011】
そのため、掘削部の重量は支持部を介して刃口に作用し、掘削部の孔底部の掘削によって刃口が下降する際に、刃口の自重に加え、掘削部の重量も作用して、確実に刃口を下降させることができる。
また、前記刃口の内面に複数箇所で固定された前記支持部の上面側に作業床が構成されているため、ライナープレートの組付け等の作業を作業床で安全に行うことができる。
【0012】
なお、上述の刃口の下降とは、自重によって沈下することや、自重による沈下に加えて下向きの負荷を作用させて下向きに移動させることをいい、沈降ともいう。
【0013】
この発明の態様として、前記支持部は、環状の中央に前記掘削部を支持する中央支持部と、前記中央支持部から前記刃口の内面に向かって延びる複数のフレーム部とで構成されるとともに、前記掘削部は、前記中央支持部に回転自在に支持されてもよい。
【0014】
上述の前記中央支持部から前記刃口の内面に向かって延びる複数のフレーム部は、中央支持部から刃口内面に向かって放射状に延びてもよいし、中央支持部を囲む井形状や格子状に設けられてもよい。
この発明により、前記刃口の内面から延びる複数のフレーム部で支持された中央支持部に回転可能に支持された掘削部を回転させながら効率よく孔底部を掘削することができる。
【0015】
またこの発明の態様として、前記掘削部によって前記孔底部が掘削された掘削土を孔外に排出する排出部が設けられ、前記排出部は、前記掘削土を積み込むバケツと、前記バケツを開口部まで案内する、前記高さ方向に延びるレールとで構成され、前記レールは、前記フレーム部同士の間に配置され、前記作業床に、前記レールに案内される前記バケツの通過を許容する通過口が設けられてもよい。
上記孔外は立坑の外を意味する。上記開口部は孔の上端であり、最上段の組付済ライナープレートの上端の開口を意味し、坑口ともいう。
【0016】
この発明により、掘削部で掘削した掘削土を効率よく、孔外に排出することができる。
詳述すると、前記掘削土を積み込むバケツと、前記バケツを開口部まで案内する、前記高さ方向に延びるレールとで構成された排出部において、前記レールは、前記フレーム部同士の間に配置され、前記作業床に、前記レールに案内される前記バケツの通過を許容する通過口が設けられているため、狭隘な空間である孔内であっても効率よく掘削土を排出することができる。
【0017】
またこの発明の態様として、前記刃口に、前記組付済ライナープレートを反力として、前記刃口を下方に押し付ける伸縮装置が設けられてもよい。
この発明により、掘削部の孔底部の掘削によって刃口が下降する際に、刃口の自重及び掘削部の重量に加え、伸縮装置による下方への押付け力を作用させて、より確実に刃口を下降させることができる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記伸縮装置が、環状方向に所定間隔を隔てて複数設けられてもよい。
この発明により、複数の伸縮装置の押付け力によって、さらに確実に刃口を下降させることができる。また、より確実に刃口を下降させるための押付け力を複数の伸縮装置によって作用させることができればよいため、各伸縮装置を小型化することができる。そのため、押付け力によるライナープレートや刃口に作用する負荷を低減することができる。
【0019】
なお、所定間隔を隔てて複数設けられた伸縮装置が環状方向において略等間隔に配置すると、環状方向において略均等に押付け力を作用させることができるため、偏ることなく刃口を下降させることができる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記刃口の外面と孔壁との間と、前記組付済ライナープレートの外面と前記孔壁との間とを遮断する遮断材が設けられるとともに、既設の前記組付済ライナープレートの下端と、外嵌する前記刃口との間を埋める間詰部が脱着可能に設けられてもよい。
【0021】
この発明により、裏込め材が刃口と孔壁との間に侵入したり、刃口の内部に漏出したりすることなく、孔壁と既設の前記組付済ライナープレートとの間に裏込め材を充填することができる。
なお、間詰部の外形を刃口の内面に合わせて形成することで、刃口と組付済ライナープレートとの平面方向の中心がずれた場合であっても、既設の前記組付済ライナープレートの下端に対する間詰部の取付位置を調整することで、孔内側への裏込め材の漏出を防止することができる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記掘削部を遠隔操作する遠隔操作部が設けられてもよい。
この発明により、作業員の孔内作業を減らすことができるため、作業環境を向上することができる。
【0023】
またこの発明の態様として、少なくとも前記掘削部を制御する制御部と、前記掘削部で掘削する掘削箇所の状況を検出する検出部とが設けられ、前記制御部が、前記検出部の検出結果に基づいて少なくとも前記掘削部の掘削を制御してもよい。
この発明により、自動運転制御した掘削部で掘削箇所を掘削することができる。そのため、作業員の孔内作業を減らして作業環境を向上するとともに、高効率化を図ることができる。
【0024】
またこの発明は、環状のライナープレートを高さ方向に組み付けて、地中に立坑を構築する立坑の構築方法であって、地中に組み付けられた既設の組付済ライナープレートの下方の少なくとも一部を外嵌するとともに、下方に延びるように筒状の刃口が配置されるとともに、前記刃口の内部における孔底部を掘削する掘削部が、最下段の前記組付済ライナープレートの下端より下方の位置において、前記刃口の内面に複数箇所で固定された支持部によって吊り下げ支持され、前記支持部で吊り下げ支持された前記掘削部で前記刃口の内部における前記孔底部を掘削する掘削工程と、前記孔底部の掘削によって前記ライナープレートの少なくとも一段分下降した刃口内部において最下段の前記組付済ライナープレートの下端に前記ライナープレートを、前記支持部の上面側に構成された作業床で組み付ける組み付け工程とを繰り返すことを特徴とする。
【0025】
この発明により、孔壁が露出することなく、安全に孔底部を掘削して、立坑を構築することができる。
詳述すると、既設の組付済ライナープレートの下方の少なくとも一部を外嵌するとともに、下方に延びる筒状の刃口の内面から支持部で、前記刃口の内部における孔底部を掘削する掘削部を支持している。
【0026】
そのため、既設の組付済ライナープレートの下方の少なくとも一部を外嵌するとともに、下方に延びる筒状の刃口によって組付済ライナープレートの下方の孔壁が露出することなく、孔底部を掘削することができる。
【0027】
また、掘削部を支持する前記支持部は、最下段の前記組付済ライナープレートの下端より下方の位置において、前記刃口の内面に複数箇所で固定されているため、支持部を介して刃口で掘削部を支持している。
【0028】
そのため、掘削部の重量は支持部を介して刃口に作用し、掘削部の孔底部の掘削によって刃口が下降する際に、刃口の自重に加え、掘削部の重量も作用して、確実に刃口を下降させることができる。
また、前記刃口の内面に複数箇所で固定された前記支持部の上面側に作業床が構成されているため、作業床で安全にライナープレートの組付け等の作業を安全に行うことができる。
【0029】
またこの発明の態様として、前記支持部は、環状の中央に前記掘削部を支持する中央支持部と、前記中央支持部から前記刃口の内面に向かって延びる複数のフレーム部とで構成されるとともに、前記掘削部は、前記中央支持部に回転自在に支持され、前記掘削部によって前記孔底部が掘削された掘削土を孔外に排出する排出部が設けられ、前記排出部は、前記掘削土を積み込むバケツと、前記バケツを開口部まで案内する、前記高さ方向に延びるレールとで構成されるとともに、前記レールは前記フレーム部同士の間に配置され、前記作業床に、前記レールに案内される前記バケツの通過を許容する通過口が設けられ、掘削した前記掘削土を前記掘削部で前記バケツに積み込み、前記掘削土が積み込まれた前記バケツを、前記レールに沿って前記通過口を通過させるととともに前記開口部まで案内して孔外に排出してもよい。
【0030】
この発明により、前記刃口の内面から延びる複数のフレーム部で支持された中央支持部に回転可能に支持された掘削部を回転させながら効率よく孔底部を掘削することができるとともに、掘削部で掘削した掘削土を効率よく、孔外に排出することができる。
【0031】
詳述すると、中央支持部に回転可能に支持された掘削部を回転させながら効率よく孔底部を掘削した前記掘削土を積み込むバケツと、前記バケツを開口部まで案内する、前記高さ方向に延びるレールとで構成された排出部において、前記レールは、前記フレーム部同士の間に配置され、前記作業床に、前記レールに案内される前記バケツの通過を許容する通過口が設けられているため、狭隘な空間である孔内であっても効率よく掘削土を排出することができる。
【0032】
またこの発明の態様として、前記バケツが前記レールに沿って移動する際に、前記掘削部を、前記通過口から隠れる待避位置に待避させてもよい。
この発明により、通過口を通過し、レールに沿って開口部まで搬出されるバケツの下方から掘削部を退避位置に退避させることで、狭隘な作業空間である孔内であっても安全に施工することができる。
【0033】
またこの発明の態様として、前記刃口に、前記組付済ライナープレートを反力として、前記刃口を下方に押し付ける伸縮装置が設けられ、前記組付済ライナープレートを反力として、前記刃口を下方に押し付けて前記刃口を下降させてもよい。
【0034】
この発明により、掘削部の孔底部の掘削によって刃口が下降する際に、刃口の自重及び掘削部の重量に加え、前記組付済ライナープレートを反力とした伸縮装置による下方への押付け力を作用させて、より確実に刃口を下降させることができる。
【0035】
またこの発明の態様として、前記刃口の外面と孔壁との間と、前記組付済ライナープレートの外面と前記孔壁との間とを遮断する遮断材が設けられるとともに、前記組み付け工程で組み付けられた既設の前記組付済ライナープレートの下端と、外嵌する前記刃口との間を埋める間詰部が設けられ、前記刃口の下降後、且つ前記組み付け工程の前に、最下段の前記組付済ライナープレートの外面と前記孔壁との間に裏込め材を充填する充填工程を行ってもよい。
この発明により、裏込め材が刃口と孔壁との間に侵入することなく、孔壁と既設の前記組付済ライナープレートとの間に裏込め材を充填することができる。
【0036】
またこの発明の態様として、前記間詰部は、前記組付済ライナープレートの下端に対して脱着可能に設けられ、前記刃口の下降後、且つ前記充填工程の前に、前記間詰部を最下段の前記組付済ライナープレートの下端に取り付けてもよい。
この発明により、硬化前の裏込め材の孔内側への漏出を防止する間詰部が掘削部による掘削や伸縮装置の伸縮に支障することなく、施工することができる。
【0037】
またこの発明の態様として前記掘削部を遠隔操作部で遠隔操作してもよい。
この発明により、作業員の孔内作業を減らすことができるため、作業環境を向上することができる。
【0038】
またこの発明の態様として前記掘削部で掘削する掘削箇所の状況を検出部で検出し、前記検出部の検出結果に基づいて少なくとも前記掘削部の掘削を制御部で制御してもよい。
この発明により、自動運転制御した掘削部で掘削箇所を掘削することができる。そのため、作業員の孔内作業を減らして作業環境を向上するとともに、高効率化を図ることができる。
【0039】
またこの発明は、環状のライナープレートを高さ方向に組み付けて、地中に立坑を構築する立坑の構築装置であって、既設の組付済ライナープレートの下方の少なくとも一部を外嵌するとともに、下方に延びる筒状の刃口と、前記刃口の内部における孔底部を掘削する掘削部と、前記刃口の内面から前記掘削部を吊り下げ支持する支持部とが備えられ、前記支持部は、最下段の前記組付済ライナープレートの下端より下方の位置において、前記刃口の内面に複数箇所で固定され、前記支持部の上面側に作業床が構成され、前記作業床に連結された下端から上方へ延びる支柱部と、該支柱部の上部に設けられ、前記作業床を覆う屋根部とが備えられたことを特徴とする。
【0040】
この発明により、孔壁が露出することなく、安全に孔底部を掘削して、立坑を構築することができる。
さらに、作業床の上方に屋根部が備えられているため、立坑の構築装置は、例えば孔外からの落下物が作業床に落下することを阻止できる。このため、立坑の構築装置は、ライナープレートの組付け等の作業を作業床で行う作業員の安全性をより確保することができる。
【0041】
またこの発明の態様として、前記支柱部が、内部中空の筒状体であり、少なくとも前記掘削部にエネルギーを伝達する伝達部材が、前記支柱部の内部に挿通されてよい。
上記エネルギーを伝達する伝達部材とは、例えば油圧エネルギーを伝達するホース、電力を伝達する電線、あるいは圧縮空気を伝達するホースなどのことをいう。
【0042】
この発明によれば、少なくとも掘削部にエネルギーを伝達する伝達部材が支柱部の内部に挿通されるため、孔外から作業床の下方へ配索される伝達部材を、作業床の上を這わせることなく配置することができる。
【0043】
さらに、支柱部の内部に伝達部材を挿通するため、立坑の構築装置は、伝達部材の配索経路を位置規制する部材を不要にできるだけでなく、支柱部の内部空間を有効活用して、伝達部材の配索経路をコンパクトに位置規制することができる。
【0044】
加えて、外力によって伝達部材が揺動した際、立坑の構築装置は、伝達部材が作業員に接触することを支柱部によって阻止できる。
これにより、立坑の構築装置は、作業床上の作業環境と、作業床上で作業する作業員の安全性とを両立して向上できるため、ライナープレートの組付け等の作業を安全に行わせることができる。
【0045】
さらにまた、伝達部材が支柱部の内部に挿通されるため、立坑の構築装置は、作業員と伝達部材との接触、あるいは作業員が保持する工具と伝達部材との接触によって、伝達部材に意図しない不具合が生じることを防止できる。
【0046】
またこの発明の態様として、前記支柱部が、前記作業床における平面視略中央に1つ配置されてもよい。
この発明によれば、1つの支柱部が作業床に立設されているため、複数の支柱部を設けた場合に比べて、作業床上のスペースを大きく確保することができる。これにより、立坑の構築装置は、作業床上の作業環境を向上できるため、ライナープレートの組付け等の作業を安全に行わせることができる。
【0047】
またこの発明の態様として、前記屋根部は、前記支柱部から延びる複数の梁部と、該梁部に敷設される屋根本体とが備えられ、該屋根本体が、網目を有するメッシュ部材で構成されてもよい。
この発明によれば、作業員の上方の空間がメッシュ部材で覆われているため、孔内と孔外との間の換気を容易にするとともに、作業床で作業する作業員を孔外から確認可能にすることができる。
【0048】
この際、例えば半透明で平板状の屋根本体に比べて孔外からの明かりが作業床に届きやすいため、立坑の構築装置は、作業床で作業する作業員の確認をより容易にすることができる。
これにより、立坑の構築装置は、通気性及び孔外からの視認性を損なうことなく、作業員の頭上を屋根部で保護できるため、ライナープレートの組付け等の作業をより安全に行わせることができる。
【0049】
またこの発明の態様として、前記屋根部は、前記作業床に対して平面視略相似形の形状に形成されてもよい。
この発明によれば、作業床に対して屋根部が平面視略相似形に形成されているため、作業床の作業スペースの上方を屋根部によって確実に覆うことができる。このため、立坑の構築装置は、例えば孔外からの落下物から作業員を確実に保護することができる。
【0050】
またこの発明は、環状のライナープレートを高さ方向に組み付けて、地中に立坑を構築する立坑の構築方法であって、地中に組み付けられた既設の組付済ライナープレートの下方の少なくとも一部を外嵌するとともに、下方に延びるように筒状の刃口が配置されるとともに、前記刃口の内部における孔底部を掘削する掘削部が、最下段の前記組付済ライナープレートの下端より下方の位置において、前記刃口の内面に複数箇所で固定された支持部によって吊り下げ支持され、前記支持部で吊り下げ支持された前記掘削部で前記刃口の内部における前記孔底部を掘削する掘削工程と、前記孔底部の掘削によって前記ライナープレートの少なくとも一段分下降した刃口内部において最下段の前記組付済ライナープレートの下端に前記ライナープレートを、前記支持部の上面側に構成された作業床で組み付ける組み付け工程とを繰り返し、前記作業床には、該作業床に連結された下端から上方へ延びる支柱部と、該支柱部の上部に設けられ、前記作業床を覆う屋根部とが備えられたことを特徴とする。
この発明によれば、孔壁が露出することなく、安全に孔底部を掘削して、立坑を構築することができる。
【0051】
さらに、作業床に連結された下端から上方へ延びる支柱部と、支柱部の上部に設けられ、作業床を覆う屋根部とにより、例えば孔外からの落下物から作業員を保護できるため、立坑の構築方法は、組み付け工程において、ライナープレートの組付け等の作業を安全に行わせることができる。
【0052】
またこの発明は、環状のライナープレートを高さ方向に組み付けて、地中に立坑を構築する立坑の構築装置であって、前記ライナープレートの外寸より大きい内寸を有して下方に延びる筒状の刃口と、前記刃口の内部における孔底部を掘削する掘削部と、前記刃口の内面から前記掘削部を吊り下げ支持する支持部とが備えられ、前記支持部は、最下段の組付済ライナープレートの下端より下方の位置において、前記刃口の内面に複数箇所で固定され、前記支持部の上面側に作業床が構成され、前記刃口が既設の前記組付済ライナープレートの下端より下方に位置する状態において、既設の前記組付済ライナープレートの下端と、孔壁との間を埋める間詰部が脱着可能に設けられたことを特徴とする。
【0053】
またこの発明は、環状のライナープレートを高さ方向に組み付けて、地中に立坑を構築する立坑の構築方法であって、前記ライナープレートの外寸より大きい内寸を有して下方に延びる筒状の刃口が配置されるとともに、前記刃口の内部における孔底部を掘削する掘削部が、最下段の組付済ライナープレートの下端より下方の位置において、前記刃口の内面に複数箇所で固定された支持部によって吊り下げ支持され、前記支持部で吊り下げ支持された前記掘削部で前記刃口の内部における前記孔底部を掘削する掘削工程と、前記孔底部の掘削によって前記ライナープレートの少なくとも一段分下降した刃口内部において最下段の前記組付済ライナープレートの下端に前記ライナープレートを、前記支持部の上面側に構成された作業床で組み付ける組み付け工程と、前記刃口が既設の前記組付済ライナープレートの下端より下方に下降後、且つ前記組み付け工程の前に、既設の前記組付済ライナープレートの下端と孔壁との間を埋める間詰部を、最下段の前記組付済ライナープレートの下端に取り付けたのち、最下段の前記組付済ライナープレートの外面と前記孔壁との間に裏込め材を充填する充填工程とを繰り返すことを特徴とする。
【0054】
この発明により、孔壁が露出することなく、安全に孔底部を掘削して、立坑を構築することができる。
さらに、既設の前記組付済ライナープレートの下端と、前記孔壁との間を埋める間詰部が脱着可能に設けられているため、立坑の構築装置及び立坑の構築方法は、裏込め材が刃口と孔壁との間に侵入したり、刃口の内部に漏出したりすることなく、孔壁と既設の前記組付済ライナープレートとの間に裏込め材を充填することができる。
【発明の効果】
【0055】
本発明により、孔壁が露出することなく、安全に掘削することができる立坑の構築装置及び立坑の構築方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図11】変形例における機械式深礎工法の概略断面斜視図。
【
図12】
図11中のB-B矢視における機械式深礎工法の概略断面図。
【
図13】斜め上方から見たヘッドガードの外観斜視図。
【
図15】斜め下方から見たヘッドガードの外観斜視図。
【
図16】変形例における裏込め箇所の拡大断面図による説明図。
【発明を実施するための形態】
【0057】
掘削ユニット1を用いた機械式深礎工法の一実施形態を以下図面とともに説明する。
図1は機械式深礎工法の概略断面斜視図を示し、
図2は機械式深礎工法の概略断面図を示し、
図3は掘削ユニット1の底面図を示し、
図4は掘削ユニット1の概略構成図を示し、
図5及び
図6は機械式深礎工法のフロー図を示している。
【0058】
なお、
図1において掘削ユニット1及びライナープレート70の手前側を透過状態で図示している。また、
図2では、
図1におけるA-A矢視方向の断面図を示し、
図3では、掘削ユニット1単体での底面図を示している。
【0059】
また、
図7乃至
図9は機械式深礎工法の概略断面図による説明図を示し、
図10は裏込め箇所の拡大断面図による説明図を示している。
詳しくは、
図7(a)は口元管90を設置した状態の断面図を示し、
図7(b)は刃口10及び反力枠93を設置した状態の断面図を示し、
図7(c)は地表リング70Bを設置した状態の断面図を示し、
図7(d)は地表リング70Bを反力として刃口10を沈降させた状態の断面図を示している。
【0060】
図8(a)は第1リング71を組付けた状態の断面図を示し、
図8(b)は掘削部30を退避させた状態の断面図を示し、
図8(c)は第1リング71を反力として刃口10を沈降させた状態の断面図を示している。
【0061】
図9(a)は第2リング72を組付けた状態の断面図を示し、
図9(b)は第2リング72を反力として刃口10を沈降させ、裏込め工(ステップs11)を行う状態の断面図を示し、
図9(c)は裏込め工(ステップs11)完了後に第3リング73を組付けた状態の断面図を示している。
【0062】
図10は裏込め工(ステップs11)における裏込め箇所の拡大断面図による説明図を示している。
詳しくは、
図10(a)は最下段リング70Aと孔壁111との間に裏込め材80を充填する前の拡大断面図を示し、
図10(b)は最下段リング70Aと孔壁111との間に裏込め材80を充填した状態の拡大断面図を示している。
【0063】
掘削ユニット1は、刃口10、支持フレーム20、掘削部30、ステージ40、ジャッキ50及び排土ユニット60を備え、地盤100を掘削し、掘削した掘削孔110にライナープレート70を組み付けて地盤100の内部に所定の杭孔を形成するものである。
【0064】
まず、ライナープレート70について説明する。ライナープレート70は、波付けされた薄鋼板の四辺に組立用のフランジを設けた円弧状のライナープレートセクションを、複数組み付けてリング状を構成し、掘削孔110の内部に設置するものであり、掘削孔110よりひとまわり小さな径で形成している。
【0065】
そして、掘削孔110の進行に沿って、既設のライナープレート70における最下段のライナープレート70(以下において、最下段リング70Aという)の下側にライナープレートセクションを組み付けてリング状に構成させる。そして、リング状に組み付けられたライナープレート70が最下段リング70Aとなる。
【0066】
なお、最下段リング70Aと、組み付けるライナープレート70とは、ライナープレートセクション同士の周方向の連結位置が上下方向に一致しないように、周方向にずらして組み付けている。
また、ライナープレートセクションにおける幅方向中央には、後述するジャッキ50の軸力に抗するための補強リブ(図示省略する)を縦方向に設けている。
【0067】
また、組付けたライナープレート70のうち地表面101より上方に突出するライナープレート70を地表リング70Bとし、地表リング70Bの下方に組付けられた地盤100の内部における最上段のライナープレート70を第1リング71とし、第1リング71の下方に組付けられたライナープレート70を第2リング72とし、第2リング72の下方に組付けられたライナープレート70を第3リング73としている。なお、nリング目のライナープレート70を第nリング70nとする。
【0068】
掘削ユニット1を構成する刃口10は、鋼製の円筒体であり、リング状のライナープレート70よりひとまわり大きな径で形成している。なお、刃口10は、ライナープレート70の5リング分ぐらいの高さで形成されている。
【0069】
また、刃口10の上端部は、
図10に示す外方シール81を備えている。外方シール81は、刃口10の内面(以下において刃口内面10aという)の上端に固定される固定部811と、刃口10の上端から上方かつ径外側に突出し、先端が孔壁111に当接する突出部812とで断面へ字状に構成されている。また、固定部811の内面には、後述する間詰先端部822と密着する密着部84を設けており、外方シール81及び密着部84は、刃口10における周方向に連続して円環状に形成されている。
【0070】
支持フレーム20は、刃口内面10aに取付けられ、掘削部30を支持するものである。詳しくは、支持フレーム20は、平面視中央に掘削部30を回転自在に支持する中央支持部21と、中央支持部21から刃口内面10aに向かって延びる3本の支持ビーム22とで構成している。
中央支持部21は、刃口10に対して1/3程度の径で形成した平面視略円形状であり、周方向において等間隔な位置から放射方向に延びる支持ビーム22を3本備えている。
【0071】
支持ビーム22は、中央支持部21から等間隔で三方向に延びており、その端部が刃口内面10aに固定されている。
なお、中央支持部21と支持ビーム22とで構成された支持フレーム20は、刃口10の上端からライナープレート70の1リングの高さ分下側の位置より少し下方に配置されている。
【0072】
掘削部30は、支持フレーム20の中央支持部21の下方に回転自在に吊下げ支持されており、刃口10の内部における孔底部112を掘削するものである。
詳しくは、掘削部30は、中央支持部21の下方に回転自在に吊下げ支持される掘削部本体31と、掘削部本体31に対して枢動可能な第1アーム32と、第1アーム32に対した枢動可能な第2アーム33と、第2アーム33の先端に枢動可能に設けられた掘削バケツ34とが備えられている。
【0073】
このように構成された掘削部30は、第1アーム32、第2アーム33及び掘削バケツ34を枢動させるとともに、掘削部本体31を中央支持部21に対して回転させて、刃口10の内部の孔底部112の全体を掘削することができる。
【0074】
また、掘削部30は、
図4に示すように、制御部200、記憶部201、操作部202、表示部203、カメラ204、及びセンサ205等が接続されている。
制御部200は、CPU、ROM、及びRAMで構成されている。
【0075】
記憶部201は、HDDやSSDで構成され、各種処理を行うプログラム等を格納している。
操作部202は、掘削部30の動作を操作入力する入力装置である。
【0076】
表示部203は、液晶ディスプレイなどで構成され、掘削部30の状況を表示したり、カメラ204で撮像した動画データを表示する。
カメラ204は、CCDカメラ等で構成され、撮像箇所の動画データを撮像することができる。本実施形態においては、刃口10の内部における孔底部112を撮像するように配置されている。なお、カメラ204は複数台配置してもよい。また、操作部202で操作して、カメラ204の撮像方向を制御するように構成してもよい。
【0077】
センサ205は、刃口10の内部における孔底部112の掘削状況を非接触で検出するよう構成されている。
上述のように構成された記憶部201、操作部202、表示部203、カメラ204、センサ205及び掘削部30は制御部200に接続され、制御部200の制御によって動作するように構成している。
【0078】
具体的には、制御部200の制御によって刃口10の内部における孔底部112をカメラ204で撮像し、カメラ204の撮像データを表示部203に表示する。そして、表示部203の表示を見ながら作業員Mは操作部202を操作して掘削部30で孔底部112を掘削する。
なお、本実施形態において、操作部202を地上に配置し、地上から遠隔で掘削部30を操作するように構成している。
【0079】
また、後述するステージ40上で作業する作業員Mによって操作できるように操作部202をステージ40に配置してもよい。さらに、施工現場から離れた管理事務所等に操作部202と表示部203を配置するとともに、制御部200とを無線や有線で接続し、施工現場から離れた管理事務所等から掘削部30を操作できるように構成してもよい。
【0080】
ステージ40は、中央支持部21と支持ビーム22とで構成する支持フレーム20の上面に形成された平面視円形の作業床であり、後述する排土ユニット60の排土バケツ62が通過する通過孔41が設けられている。なお、通過孔41は中央支持部21から三方向に延びる支持ビーム22のうち2本の支持ビーム22の間に形成されている。
【0081】
ジャッキ50は、既設のライナープレート70を反力として、刃口10を下方に押付けるための伸縮装置であり、刃口内面10aに固定されたジャッキ本体51と、ジャッキ本体51から上方に向かって伸び縮みするインナーチューブの先端に設けられたスプレッダ52とで構成されている。
【0082】
なお、ジャッキ50は、刃口内面10aに対して周方向に等間隔で4本設けている。そして、各ジャッキ50は、中央支持部21から等間隔で三方向に延びる支持ビーム22と周方向において異なる位置に配置されている。
【0083】
排土ユニット60は、掘削部30で孔底部112を掘削した掘削土を掘削孔110から排出するためのユニットであり、刃口10の下方から上方に向かって地表リング70Bの上方までの延びるレール61と、レール61に沿って走行する排土バケツ62とで構成している。
なお、排土バケツ62は、地上に設けた吊上げウインチによってレール61に沿って上下方向に移動可能に構成されている。
【0084】
このように構成された排土ユニット60は、ステージ40において通過孔41が設けられた、中央支持部21から三方向に延びる支持ビーム22のうち2本の支持ビーム22の間に配置され、レール61の下方は刃口内面10aに固定され、レール61の上方はライナープレート70に固定されている。なお、刃口10の沈降によって、レール61は延長可能に構成されている。
【0085】
各要素が上述のように構成された掘削ユニット1を用いて、地盤100の内部に所定の杭孔を形成する施工方法について、
図5及び
図6のフロー図に沿って以下で説明する。なお、
図7乃至
図10において排土ユニット60の図示を省略する。
まず、地盤100の内部に杭孔を形成するためには、
図7(a)に示すように、所定箇所に口元管90を設置する(口元管設置工:ステップs1)。
【0086】
口元管90は、ライナープレート70よりひとまわり大径であるライナープレート91を地表面101から掘り下げて設置し、ライナープレート91の径外側に固定コンクリート92を打設して構成している。
【0087】
そして、
図7(b)に示すように口元管90におけるライナープレート91の径内側に刃口10を配置するとともに、その上部に反力枠93を設置する(刃口・反力枠設置工:ステップs2)。
具体的には、刃口内面10aから支持フレーム20を介して掘削部30が吊り下げ支持されるとともに、ジャッキ50が装着された刃口10を、口元管90のライナープレート91の径内側に設置する。
【0088】
そして、柱の下端が口元管90の固定コンクリート92に固定された櫓形状の反力枠93を刃口10の上方に組み付ける。このとき、反力枠93の梁部材が刃口10に固定されたジャッキ50の上方に位置するように組み付ける。
【0089】
そして、掘削部30で孔底部112を掘削しながら刃口10を沈降させる(孔底部掘削・刃口沈降工:ステップs3)。このとき、反力枠93を反力としてジャッキ50を伸張させて刃口10の沈降を促進させてもよい。
【0090】
地表面101から刃口10の上端までの高さがライナープレート70の1リング分の高さより低くなるまで刃口10を沈降させると、
図7(c)に示すように、反力枠93の高さを下げて、地表面101の高さに下端が位置するようにライナープレート70を組み付けて、地表リング70Bとする(地表リング組付工:ステップs4)。
【0091】
図7(d)に示すように、地表リング組付工(ステップs4)で組み付けた地表リング70Bの下方に1リング分の組付け空間が形成されるまで、掘削部30で孔底部112を掘削しながら刃口10を沈降させる(孔底部掘削・刃口沈降工:ステップs5)。
【0092】
そして、
図8(a)に示すように、地表リング70Bの下端に対してライナープレートセクションを、ステージ40の作業員Mが組み付けてリング状のライナープレート70を構成する(第1リング組付工:ステップs6)。このとき、刃口10の沈降を促進するために、地表リング70Bの下端にスプレッダ52を当接させてジャッキ本体51を伸張していた場合はジャッキ本体51を短縮して、ライナープレート70を組み付ける組付け空間を形成してから行う。なお、地表リング70Bに連結されて構成されたライナープレート70は第1リング71となる。また、第1リング71の組付け完了後に、口元管90のライナープレート91と第1リング71との間を裏込め材80やコンクリートで充填する。
【0093】
以降は、掘削部30による孔底部112の掘削及び刃口10の沈降を行い、ライナープレート70の1リングの高さ分を刃口10が沈降するとライナープレート70を組み付ける。これを繰り返して所定深さの掘削孔110を構築することとなるが、掘削部30による孔底部112の掘削によって掘削孔110の内部に溜まる掘削土を孔外に排出する必要がある。
【0094】
そのため、掘削部30による孔底部112の掘削(孔底部掘削工:ステップs7)では、排土ユニット60の排土バケツ62に積み込まれる。排土バケツ62が掘削土でいっぱいになると(ステップs8:Yes)、さらなる掘削部30による孔底部112の掘削ができなくなるので、排土バケツ62に積み込んだ掘削土を孔外に排出する(ステップs9)。
【0095】
排土バケツ62に積み込んだ掘削土を孔外に排出するには、レール61に沿って排土バケツ62を上方に移動させる。具体的には、上方にセットした吊上げウインチ(図示省略)で排土バケツ62を巻上げる。
吊上げウインチで巻き上げられた排土バケツ62はレール61に沿って上方移動する。そして、支持フレーム20の支持ビーム22同士の間を通り、ステージ40の通過孔41を通過させて、地表リング70Bより上方まで巻上げ、孔外に排土バケツ62を排出する。
【0096】
そして、空になった排土バケツ62は、吊上げウインチでレール61に沿って降下させる。このとき、レール61に沿って降下する排土バケツ62は、通過孔41を通過し、支持ビーム22同士の間を通り、孔底部112まで降下させる。
【0097】
上述のように、掘削土の排出のため、レール61に沿って排土バケツ62を移動させるが、掘削部30が通過孔41の下方に位置すると、上下移動する排土バケツ62の下方に掘削部30が位置することとなる。そのため、
図8(b)に示すように、掘削部30において、第1アーム32に対して第2アーム33を近接方向に枢動させるとともに、掘削バケツ34を第2アーム33に近接する方向に枢動させてコンパクト化し、掘削部本体31を中央支持部21に対して回転させて、通過孔41の下方位置から待避させる。このように、通過孔41の下方位置から待避する掘削部30の位置を待避位置とする。
そして、排土ユニット60による排土が完了すると、掘削部30は通常の掘削位置、掘削姿勢に復帰し、孔底部112の掘削を再開する。
【0098】
ライナープレート70の1リング分の高さ相当分を刃口10が沈降するだけの掘削ができるまで(ステップs10:No)、孔底部掘削工(ステップs7)に戻って孔底部112の掘削を続ける。
図8(c)に示すように、掘削部30による孔底部112の掘削を続け、ライナープレート70の1リング分の高さ相当分を刃口10が沈降するだけの掘削ができると(ステップs10:Yes)、最下段リング70Aの外面と孔壁111との間に裏込め材80を充填する裏込め工(ステップs11)を行う。
【0099】
具体的には、
図9(a)に示す状態から、
図9(b)に示すように、最下段リング70Aである第2リング72に対して第3リング73を組み付ける高さ分の掘削が完了すると(ステップs10:Yes)、最下段リング70Aである第2リング72の外面と孔壁111との間に裏込め材80を充填する裏込め工(ステップs11)を行う。
裏込め工(ステップs11)では、
図10(a)に示すように、最下段リング70Aの下端に間詰部材82をクランプ83で取り付ける(間詰部材取付工:ステップs111)。
【0100】
間詰部材82は、外径が刃口10の内径に一致する所定幅を有する平面視リング状の板材である間詰リング821と、間詰リング821の外縁に沿って装着する間詰先端部822とで構成している。
【0101】
間詰部材取付工(ステップs111)では、外縁に間詰先端部822が装着された間詰リング821を、間詰先端部822が刃口10の上端に設けた密着部84に密着するように、ライナープレート70の下フランジに対してクランプ83で固定する。
【0102】
これにより、最下段リング70Aの下端と、刃口10の上端との間の隙間を間詰部材82で塞ぐことができる。
なお、最下段リング70Aと孔壁111との間の空間は、最下段リング70Aが連結された上のライナープレート70の径外側に充填された裏込め材80で塞がれており、その下端は外方シール81によって、刃口10の外面側と孔壁111との間の空間と遮断されている。
【0103】
このようにして、上方と下方が塞がれ、間詰部材82によってライナープレート70と刃口10との間の隙間が塞がれた最下段リング70Aと孔壁111との間の空間に、ライナープレート70に設けた充填口85から裏込め材80を充填する(裏込め材充填工:ステップs112)。
【0104】
最下段リング70Aと孔壁111との間の空間は、上述したように、その下方のライナープレート70と刃口10との間の隙間が間詰部材82によって塞がれるとともに、刃口10と孔壁111との間の空間と外方シール81によって遮断されているため、充填口85から充填された裏込め材80が、刃口10やライナープレート70の内部や、刃口10と孔壁111との間の空間に漏出することなく、
図10(b)に示すように、裏込め材80を最下段リング70Aと孔壁111との間の空間にしっかりと充填することができる。
【0105】
そして、最下段リング70Aと孔壁111との間の空間に充填した裏込め材80の硬化後、クランプ83でライナープレート70の下フランジに取り付けた間詰部材82を取り外して(間詰め部材取外し工:ステップs113)、裏込め工(ステップs11)を完了する。
【0106】
裏込め工(ステップs11)の後、次のライナープレート70を組み付ける(ライナープレート組付工:ステップs12)。そして、組み付けられたライナープレート70が最下段リング70Aとなる。
これを所定深さになるまで繰り返し(ステップs13:No)、所定深さの掘削が完了すると(ステップs13:Yes)、刃口10に設けた支持フレーム20、掘削部30、ステージ40、ジャッキ50及び排土ユニット60の撤去や、孔底部112やライナープレート70の内面への吹きつけなど、杭孔に求められる仕様に応じた後処理工(ステップs14)を行い、本施工は完了する。
【0107】
上述のように、環状のライナープレート70を高さ方向に組み付けて、地盤100の内部に杭孔を構築する掘削ユニット1は、既設のライナープレート70のうち最下段リング70Aの下方の少なくとも一部を外嵌するとともに、下方に延びる筒状の刃口10と、刃口10の内部における孔底部112を掘削する掘削部30と、刃口内面10aから掘削部30を吊り下げ支持する支持フレーム20とが備えられ、支持フレーム20は、最下段リング70Aの下端より下方の位置において、刃口内面10aに複数箇所で固定され、支持フレーム20の上面側にステージ40が構成されているため、孔壁111が露出することなく、安全に孔底部112を掘削して、杭孔を構築することができる。
【0108】
また、環状のライナープレート70を高さ方向に組み付けて、地盤100の内部に杭孔を構築する機械式深礎工法として、地盤100の内部に組み付けられた既設のライナープレート70のうち最下段リング70Aの下方の少なくとも一部を外嵌するとともに、下方に延びるように筒状の刃口10が配置されるとともに、刃口10の内部における孔底部112を掘削する掘削部30が、最下段リング70Aの下端より下方の位置において、刃口内面10aに複数箇所で固定された支持フレーム20によって吊り下げ支持され、支持フレーム20で吊り下げ支持された掘削部30で刃口10の内部における孔底部112を掘削する孔底部掘削工(ステップs7)と、孔底部112の掘削によってライナープレート70の少なくとも一段分下降した刃口10の内部において最下段リング70Aの下端にライナープレート70を、支持フレーム20の上面側に構成されたステージ40で組み付けるライナープレート組付工(ステップs12)とを繰り返すため、孔壁111が露出することなく、安全に孔底部112を掘削して、杭孔を構築することができる。
【0109】
詳述すると、既設のライナープレート70のうち最下段リング70Aの下方の少なくとも一部を外嵌するとともに、下方に延びる筒状の刃口内面10aから支持フレーム20で、刃口10の内部における孔底部112を掘削する掘削部30を支持している。
【0110】
そのため、既設のライナープレート70のうち最下段リング70Aの下方の少なくとも一部を外嵌するとともに、下方に延びる筒状の刃口10によって最下段リング70Aの下方の孔壁111が露出することなく、孔底部112を掘削することができる。
【0111】
また、掘削部30を支持する支持フレーム20は、最下段リング70Aの下端より下方の位置において、刃口内面10aに複数箇所で固定されているため、支持フレーム20を介して刃口10で掘削部30を支持している。
【0112】
そのため、掘削部30の重量は支持フレーム20を介して刃口10に作用し、掘削部30の孔底部112の掘削によって刃口10が下降する際に、刃口10の自重に加え、掘削部30の重量も作用して、確実に刃口10を下降させることができる。
また、刃口内面10aに複数箇所で固定された支持フレーム20の上面側にステージ40が構成されているため、ライナープレート70の組付け等の作業をステージ40で安全に行うことができる。
【0113】
また、支持フレーム20は、環状の中央に掘削部30を支持する中央支持部21と、中央支持部21から刃口内面10aに向かって延びる複数の支持ビーム22とで構成されるとともに、掘削部30は、中央支持部21に回転自在に支持されているため、刃口内面10aから延びる複数の支持ビーム22で支持された中央支持部21に回転可能に支持された掘削部30を回転させながら効率よく孔底部112を掘削することができる。
また、掘削部30を遠隔操作する操作部202を設けているため、作業員Mの孔内作業を減らすことができるため、作業環境を向上することができる。
【0114】
また、掘削部30によって孔底部112が掘削された掘削土を孔外に排出する排土ユニット60が設けられ、排土ユニット60は、掘削土を積み込む排土バケツ62と、排土バケツ62を地表リング70Bまで案内する、高さ方向に延びるレール61とで構成され、レール61は、支持ビーム22同士の間に配置され、ステージ40に、レール61に案内される排土バケツ62の通過を許容する通過孔41が設けられているため、掘削部30で掘削した掘削土を効率よく、孔外に排出することができる。
【0115】
詳述すると、掘削土を積み込む排土バケツ62と、排土バケツ62を地表リング70Bまで案内する、高さ方向に延びるレール61とで構成された排土ユニット60において、レール61は、支持ビーム22同士の間に配置され、ステージ40に、レール61に案内される排土バケツ62の通過を許容する通過孔41が設けられているため、狭隘な空間である孔内であっても効率よく掘削土を排出することができる。
【0116】
また、排土バケツ62がレール61に沿って移動する際に、掘削部30を、通過孔41から隠れる待避位置に待避させるため、通過孔41を通過し、レール61に沿って地表リング70Bまで搬出される排土バケツ62の下方から掘削部30を退避位置に退避させて、狭隘な作業空間である孔内であっても安全に施工することができる。
【0117】
また、刃口10に、既設のライナープレート70を反力として、刃口10を下方に押し付けるジャッキ50が設けられているため、掘削部30の孔底部112の掘削によって刃口10が下降する際に、刃口10の自重及び掘削部30の重量に加え、ジャッキ50による下方への押付け力を作用させて、より確実に刃口10を下降させることができる。
【0118】
また、ジャッキ50が、環状方向に所定間隔を隔てて複数設けられているため、複数のジャッキ50の押付け力によって、さらに確実に刃口10を下降させることができる。また、より確実に刃口10を下降させるための押付け力を複数のジャッキ50によって作用させるため、各ジャッキ50を小型化することができる。そのため、押付け力によるライナープレート70や刃口10に作用する負荷を低減することができる。
【0119】
なお、所定間隔を隔てて複数設けられたジャッキ50が環状方向において略等間隔に配置しているため、環状方向において略均等に押付け力を作用させることができるため、偏ることなく刃口10を下降させることができる。
【0120】
また、刃口10の外面と孔壁111との間と、最下段リング70Aの外面と孔壁111との間とを遮断する外方シール81が設けられるとともに、既設のライナープレート70のうち最下段リング70Aの下端と、外嵌する刃口10との間を埋める間詰部材82が脱着可能に設けられている。
【0121】
また、刃口10の外面と孔壁111との間と、最下段リング70Aの外面と孔壁111との間とを遮断する外方シール81が設けられるとともに、ライナープレート組付工(ステップs12)で組み付けられた既設のライナープレート70のうち最下段リング70Aの下端と、外嵌する刃口10との間を埋める間詰部材82が設けられ、刃口10の下降後、且つライナープレート組付工(ステップs12)の前に、最下段リング70Aの外面と孔壁111との間に裏込め材80を充填する裏込め工(ステップs11)を行う。
【0122】
さらに、間詰部材82は、最下段リング70Aの下端に対して脱着可能に設けられ、刃口10の下降後、且つ裏込め工(ステップs11)の前に、間詰部材82を最下段リング70Aの下端に取り付ける。
【0123】
そのため、裏込め材80が刃口10と孔壁111との間に侵入したり、刃口10の内部に漏出したりすることなく、孔壁111と既設のライナープレート70のうち最下段リング70Aとの間に裏込め材80を充填することができる。
【0124】
なお、間詰部材82の外形を刃口内面10aに合わせて形成しているため、刃口10と最下段リング70Aとの平面方向の中心がずれた場合であっても、既設のライナープレート70のうち最下段リング70Aの下端に対する間詰部材82の取付位置を調整することで、孔内側への裏込め材80の漏出を防止することができる。
【0125】
上述した実施形態における掘削ユニット1の変形例として、ステージ40上で作業する作業員を頭上からの落下物から保護するヘッドガード150を備えた掘削ユニット1について、
図11から
図15を用いて説明する。
【0126】
なお、
図11は変形例における機械式深礎工法の概略断面斜視図を示し、
図12は
図11中のB-B矢視における機械式深礎工法の概略断面図を示し、
図13は斜め上方から見たヘッドガード150の外観斜視図を示している。
【0127】
さらに、
図14はヘッドガード150の平面図を示し、
図15は斜め下方から見たヘッドガード150の外観斜視図を示している。
また、
図14中において、図示を明確にするため、掘削部30、ジャッキ50及び排土ユニット60の図示を省略している。
さらにまた、上述した実施形態と同じ構成は、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0128】
変形例の掘削ユニット1は、
図11及び
図12に示すように、上述した刃口10、支持フレーム20、掘削部30、ステージ40、ジャッキ50及び排土ユニット60に加えて、ステージ40上で作業する作業員を頭上からの落下物から保護するヘッドガード150を備えている。
【0129】
このヘッドガード150は、
図12及び
図13に示すように、ステージ40の平面視略中央で上下方向に延びる支柱部160と、ステージ40から上方に所定間隔を隔てた位置で支柱部160に支持された屋根部170とで構成されている。
【0130】
詳述すると、支柱部160は、
図12から
図15に示すように、上下方向に延びる略円形の筒状体であって、その下端がステージ40を貫通して、支持フレーム20の上方に位置するようにステージ40に固定されている。
この支柱部160は、ライナープレート70の4リング分ぐらいの高さで形成されている。
【0131】
このような支柱部160の内部空間160aには、
図12及び
図14に示すように、孔外に設置した油圧ポンプ(図示省略)からの油圧エネルギーを、ステージ40の下方に位置する掘削部30に伝達する2本の油圧ホース35が挿通されている。
【0132】
つまり、支柱部160は、後述する屋根部170を支持するだけでなく、掘削部30に接続される油圧ホース35の配索経路を位置規制している。
なお、油圧ホース35は、孔外から支柱部160の内部空間160aに挿通され、さらに支持フレーム20における中央支持部21の内部を通って掘削部30に接続されている。
【0133】
また、屋根部170は、
図12及び
図13に示すように、図示を省略した作業員の頭上に位置するように、ステージ40の上面から上方に所定間隔を隔てた支柱部160の上部に支持されている。
【0134】
この屋根部170は、
図13及び
図14に示すように、ステージ40を覆う屋根形状であって、ライナープレート70の内径及びステージ40の外径よりも小径、かつ平面視略円形のステージ40に対して平面視略相似形の略円形状に形成されている。
【0135】
さらに、屋根部170には、平面視において、ステージ40の通過孔41に対向する部分に、排土ユニット60の排土バケツ62が通過する平面視略扇状の通過孔170aが設けられている。
なお、屋根部170の通過孔170aは、平面視において、ステージ40の通過孔170aに略同幅で形成されている。
【0136】
より詳しくは、屋根部170は、
図15に示すように、支柱部160の上端に設けた平板部161から放射状に延びる複数の梁部171と、複数の梁部171を水平方向に連結する2つの桁部(第1桁部172及び第2桁部173)とを備えている。
さらに、屋根部170は、一方の桁部(第2桁部173)を下方から支持する補強部174と、梁部171及び2つの桁部の上面に載置固定された屋根本体175とを備えている。
【0137】
2つの桁部は、
図15に示すように、支柱部160を中心とする平面視略円弧状であって、小径の第1桁部172と大径の第2桁部173とで構成されている。
また、補強部174は、
図15に示すように、平板部161よりも下方の位置で支柱部160と第2桁部173とを斜めに連結している。
【0138】
また、屋根本体175は、作業員を孔外から確認可能な大きさの網目を有するエキスパンドメタルで構成され、ステージ40で作業する作業員を例えば孔外からの落下物から保護可能な強度を有している。
【0139】
この屋根本体175は、
図14及び
図15に示すように、第2桁部173よりも僅かに大径の平面視略扇状に形成されている。
このような構成のヘッドガード150により、変形例1の掘削ユニット1は、ステージ40上で作業する作業員を頭上からの落下物から保護している。
【0140】
以上のように、環状のライナープレート70を高さ方向に組み付けて、地盤100の内部に杭孔を構築する変形例の掘削ユニット1は、既設のライナープレート70のうち最下段リング70Aの下方の少なくとも一部を外嵌するとともに、下方に延びる筒状の刃口10と、刃口10の内部における孔底部112を掘削する掘削部30と、刃口内面10aから掘削部30を吊り下げ支持する支持フレーム20とが備えられ、支持フレーム20は、最下段リング70Aの下端より下方の位置において、刃口内面10aに複数箇所で固定され、支持フレーム20の上面側にステージ40が構成されているため、孔壁111が露出することなく、安全に孔底部112を掘削して、杭孔を構築することができる。
【0141】
さらに、変形例の掘削ユニット1は、ステージ40に連結された下端から上方へ延びる支柱部160と、支柱部160の上部に設けられ、ステージ40を覆う屋根部170とが備えられているため、例えば孔外からの落下物がステージ40に落下することを阻止できる。このため、掘削ユニット1は、ライナープレート70の組付け等の作業をステージ40で行う作業員の安全性をより確保することができる。
【0142】
また、掘削部30にエネルギーを伝達する油圧ホース35が、支柱部160の内部空間160aに挿通されるため、掘削ユニット1は、孔外からステージ40の下方へ配索される油圧ホース35を、ステージ40上を這わせることなく配置することができる。
【0143】
さらに、支柱部160の内部空間160aに油圧ホース35を挿通するため、掘削ユニット1は、油圧ホース35の配索経路を位置規制する部材を不要にできるだけでなく、支柱部160の内部空間160aを有効活用して、油圧ホース35の配索経路をコンパクトに位置規制することができる。
【0144】
加えて、外力によって油圧ホース35が揺動した際、掘削ユニット1は、油圧ホース35が作業員に接触することを支柱部160によって阻止できる。
これにより、掘削ユニット1は、ステージ40上の作業環境と、ステージ40上で作業する作業員の安全性とを両立して向上できるため、ライナープレート70の組付け等の作業を安全に行わせることができる。
【0145】
さらにまた、油圧ホース35が支柱部160の内部空間160aに挿通されるため、掘削ユニット1は、作業員と油圧ホース35との接触、あるいは作業員が保持する工具と油圧ホース35との接触によって、油圧ホース35に意図しない不具合が生じることを防止できる。
【0146】
また、支柱部160が、ステージ40における平面視略中央に1つ配置されるため、掘削ユニット1は、複数の支柱部を設けた場合に比べて、ステージ40上のスペースを大きく確保することができる。これにより、掘削ユニット1は、ステージ40上の作業環境を向上できるため、ライナープレート70の組付け等の作業を安全に行わせることができる。
【0147】
また、屋根部170が、支柱部160から延びる複数の梁部171と、梁部171に敷設される屋根本体175とを備え、屋根本体175が、網目を有するパンチングメタルで構成されているため、掘削ユニット1は、孔内と孔外との間の換気を容易にするとともに、ステージ40で作業する作業員を孔外から確認可能にすることができる。
【0148】
この際、例えば半透明で平板状の屋根本体に比べて孔外からの明かりがステージ40に届きやすいため、掘削ユニット1は、ステージ40で作業する作業員の確認をより容易にすることができる。
【0149】
これにより、掘削ユニット1は、通気性及び孔外からの視認性を損なうことなく、作業員の頭上を屋根部170で保護できるため、ライナープレート70の組付け等の作業をより安全に行わせることができる。
【0150】
また、屋根部170がステージ40に対して平面視略相似形の形状に形成されているため、掘削ユニット1は、ステージ40の作業スペースの上方を屋根部170によって確実に覆うことができる。このため、掘削ユニット1は、例えば孔外からの落下物から作業員を確実に保護することができる。
【0151】
また、環状のライナープレート70を高さ方向に組み付けて、地盤100の内部に杭孔を構築する変形例の機械式深礎工法として、地盤100の内部に組み付けられた既設のライナープレート70のうち最下段リング70Aの下方の少なくとも一部を外嵌するとともに、下方に延びるように筒状の刃口10が配置されるとともに、刃口10の内部における孔底部112を掘削する掘削部30が、最下段リング70Aの下端より下方の位置において、刃口内面10aに複数箇所で固定された支持フレーム20によって吊り下げ支持され、支持フレーム20で吊り下げ支持された掘削部30で刃口10の内部における孔底部112を掘削する孔底部掘削工(ステップs7)と、孔底部112の掘削によってライナープレート70の少なくとも一段分下降した刃口10の内部において最下段リング70Aの下端にライナープレート70を、支持フレーム20の上面側に構成されたステージ40で組み付けるライナープレート組付工(ステップs12)とを繰り返すため、孔壁111が露出することなく、安全に孔底部112を掘削して、杭孔を構築することができる。
【0152】
さらに、ステージ40に連結された下端から上方へ延びる支柱部160と、支柱部160の上部に設けられ、ステージ40を覆う屋根部170とにより、例えば孔外からの落下物から作業員を保護できるため、変形例の機械式深礎工法は、ライナープレート組付工(ステップs12)において、ライナープレート70の組付け等の作業を安全に行わせることができる。
【0153】
加えて、支柱部160がライナープレート70の4リング分ぐらいの高さで形成され、屋根部170が支柱部160の上端に設けられているため、変形例の掘削ユニット1及び変形例の機械式深礎工法は、最下段リング70Aの下端へのライナープレートセクションの組付け作業が、屋根部170によって阻害されることを防止できる。
【0154】
上述した実施形態の裏込め工(ステップs11)において、最下段リング70Aと孔壁111との隙間を外方シール81及び間詰部材82とで埋めた掘削ユニット1の変形例として、最下段リング70Aと孔壁111との隙間を埋める間詰部材86を備えた掘削ユニット1について、変形例における裏込め箇所の拡大断面図による説明図を示す
図16を用いて説明する。
【0155】
具体的には、変形例の間詰部材86は、
図16に示すように、最下段リング70Aの下端と掘削孔110の孔壁111との間に生じた開口を閉塞する部材であって、最下段リング70Aの下フランジに着脱自在に構成されている。
なお、間詰部材86は、最下段リング70Aの下フランジに対して、周方向に所定間隔を隔てて配置したクランプ83で固定されている。
【0156】
具体的には、間詰部材86は、ライナープレート70の外径よりも小さい内径、及び刃口10の外径よりも大きい外径を有する円環状の平板である間詰リング861と、間詰リング861の外周縁に装着され、孔壁111に当接する円環状の間詰先端部862とで構成している。
【0157】
なお、間詰部材86は、平面視略扇状に分割構成され、分割された部材をライナープレート70の周方向に沿って並置して、最下段リング70Aの下フランジに固定することで、円環状となるように構成している。
【0158】
このような間詰部材86は、最下段リング70Aの外面と孔壁111との間に裏込め材80を充填する裏込め工(ステップs11)において、最下段リング70Aの下端に対する取付けと取外しとが行われる。
この際、刃口10は、
図16(a)に示すように、最下段リング70Aの下端よりも僅かに下方の位置まで沈降している。
【0159】
具体的には、掘削部30による孔底部112の掘削を続け、ライナープレート70の1リング分の高さ相当分を刃口10が沈降するだけの掘削が完了後(ステップs10:Yes)、裏込め工(ステップs11)において、間詰先端部862が孔壁111に密着するように、間詰部材86の間詰リング861を、ライナープレート70の下フランジに対してクランプ83で固定する(
図16(a)参照)。
【0160】
その後、上方と下方が塞がれ、間詰部材86によってライナープレート70と孔壁111との間の隙間が塞がれた最下段リング70Aと孔壁111との間の空間に、ライナープレート70に設けた充填口85から裏込め材80を充填する(
図16(b)参照)。
【0161】
そして、最下段リング70Aと孔壁111との間の空間に充填した裏込め材80の硬化後、クランプ83でライナープレート70の下フランジに取り付けた間詰部材86を取り外して、裏込め工(ステップs11)を完了する。
【0162】
以上のように、環状のライナープレート70を高さ方向に組み付けて、地盤100の内部に杭孔を構築する変形例の掘削ユニット1は、ライナープレート70の外寸より大きい内寸を有して下方に延びる筒状の刃口10と、刃口10の内部における孔底部112を掘削する掘削部30と、刃口内面10aから掘削部30を吊り下げ支持する支持フレーム20とが備えられ、支持フレーム20は、最下段リング70Aの下端より下方の位置において、刃口内面10aに複数箇所で固定され、支持フレーム20の上面側にステージ40が構成され、刃口10が最下段リング70Aの下端より下方に位置する状態において、最下段リング70Aの下端と孔壁111との間を埋める間詰部材86が脱着可能に設けられているため、孔壁111が露出することなく、安全に孔底部112を掘削して、杭孔を構築することができる。
【0163】
また、環状のライナープレート70を高さ方向に組み付けて、地盤100の内部に杭孔を構築する変形例の機械式深礎工法として、ライナープレート70の外寸より大きい内寸を有して下方に延びる筒状の刃口10が配置されるとともに、刃口10の内部における孔底部112を掘削する掘削部30が、最下段リング70Aの下端より下方の位置において、刃口内面10aに複数箇所で固定された支持フレーム20によって吊り下げ支持され、支持フレーム20で吊り下げ支持された掘削部30で刃口10の内部における孔底部112を掘削する孔底部掘削工(ステップs7)と、孔底部112の掘削によってライナープレート70の少なくとも一段分下降した刃口10の内部において最下段リング70Aの下端にライナープレート70を、支持フレーム20の上面側に構成されたステージ40で組み付けるライナープレート組付工(ステップs12)と、刃口10が最下段リング70Aの下端より下方に下降後、且つライナープレート組付工の前に、最下段リング70Aの下端と孔壁111との間を埋める間詰部材86を、最下段リング70Aの下端に取り付けたのち、最下段リング70Aの外面と孔壁111との間に裏込め材80を充填する裏込め工(ステップs11)とを繰り返すため、孔壁111が露出することなく、安全に孔底部112を掘削して、杭孔を構築することができる。
【0164】
さらに、最下段リング70Aの下端と、孔壁111との間を埋める間詰部材86が脱着可能に設けられているため、変形例の掘削ユニット1及び機械式深礎工法は、裏込め材80が刃口10と孔壁111との間に侵入したり、刃口10の内部に漏出したりすることなく、孔壁111と最下段リング70Aとの間に裏込め材80を充填することができる。
【0165】
以上、本発明の構成と、前述の実施態様との対応において、本発明のライナープレートはライナープレート70に対応し、
以下同様に、
立坑は杭孔に対応し、
立坑の構築装置は掘削ユニット1に対応し、
組付済ライナープレートは既設のライナープレート70や最下段リング70Aに対応し、
刃口は刃口10に対応し、
孔底部は孔底部112に対応し、
掘削部は掘削部30に対応し、
支持部は支持フレーム20に対応し、
作業床はステージ40に対応し、
中央支持部は中央支持部21に対応し、
刃口内面は刃口内面10aに対応し、
フレーム部は支持ビーム22に対応し、
排出部は排土ユニット60に対応し、
バケツは排土バケツ62に対応し、
レールはレール61に対応し、
通過口は通過孔41に対応し、
伸縮装置はジャッキ50に対応し、
孔壁は孔壁111に対応し、
遮断材は外方シール81に対応し、
間詰部は間詰部材82に対応し、
立坑の構築方法は機械式深礎工法に対応し、
掘削工程は孔底部掘削工(ステップs7)に対応し、
組み付け工程はライナープレート組付工(ステップs12)に対応し、
開口部は地表リング70Bに対応し、
裏込め材は裏込め材80に対応し、
充填工程は裏込め工(ステップs11)に対応し、
伝達部材は、油圧ホース35に対応し、
梁部は、梁部171に対応し、
メッシュ部材は、エキスパンドメタルに対応し、
間詰部は、間詰部材86に対応するも、上記実施形態に限定するものではない。
【0166】
例えば、上述説明では、中央支持部21から刃口内面10aに向かって延びる複数の支持ビーム22は、中央支持部21から刃口内面10aに向かって放射状に延びていたが、中央支持部21を囲む井形状や格子状に設けられてもよい。
掘削ユニット1を用いて形成する孔は杭孔だけでなく立坑であってもよい。
【0167】
また、上述の説明では、第1リング71の組付け完了後に、口元管90のライナープレート91と第1リング71との間を裏込め材80で充填したが、第2リング72の組付け完了後の裏込め工(ステップs11)の際に、併せて口元管90のライナープレート91と第1リング71との間を裏込め材80で充填してもよい。
【0168】
さらに、上述の説明では、制御部200の制御によって刃口10の内部における孔底部112をカメラ204で撮像し、カメラ204の撮像データを表示部203に表示する。そして、表示部203の表示を見ながら作業員Mは操作部202を操作して掘削部30で孔底部112を掘削するように、つまり、操作部202を用いて作業員Mによって掘削部30を遠隔操作したが、掘削部30による掘削を制御部200による制御で自動掘削できるように構成してもよい。
【0169】
具体的には、制御部200の制御によって刃口10の内部における孔底部112の掘削状況をセンサ205で検出し、センサ205で検出した掘削状況に応じて制御部200が掘削部30を駆動制御して、掘削部30が孔底部112を掘削するように構成する。なお、排土ユニット60における排土バケツ62の位置を検出できるように位置検出センサを制御部200に接続し、孔底部112の掘削状況のみならず、排土バケツ62の位置情報も考慮して掘削部30の駆動制御を行ってもよい。また、センサ205で孔底部112の掘削状況を検出するだけでなく、複数台のカメラ204で孔底部112を撮像し、孔底部112の掘削状況を画像検出して掘削部30の駆動制御するように構成してもよい。
【0170】
このように掘削部30を制御する制御部200と、掘削部30で掘削する孔底部112の掘削箇所の状況を検出するセンサ205とが設けられ、制御部200が、センサ205の検出結果に基づいて掘削部30の掘削を制御することで、自動運転制御した掘削部30で掘削箇所を掘削することができる。そのため、作業員Mの孔内作業を減らして作業環境を向上するとともに、高効率化を図ることができる。
【0171】
また、上述した実施形態では言及しなかったが、支持フレーム20の上面に形成されたステージ40は、骨組みとなる梁部や桁部の上面に鉄板またはエキスパンドメタルを敷設して構成してもよい。
なお、ステージ40で作業する作業員が、孔底部112の掘削状況を容易に視認できるため、ステージ40は、骨組みとなる梁部や桁部の上面にエキスパンドメタルを敷設する方が望ましい。
【0172】
また、支柱部160に2本の油圧ホース35を挿通させたが、これに限定せず、1本の油圧ホース35、あるいは3本以上の油圧ホース35であってもよい。
さらに、油圧ホース35に限定せず、例えばステージ40に配置した電気機器や作業員が使用する工具に電力を供給する電線、作業員が使用するエアーインパクトレンチに圧縮空気を供給するエアーホース、換気用の空気を圧送するエアーホース、坑内に散水するための散水ホース、あるいは孔底部112の水を排水する排水ホースなどを、適宜に組み合わせて支柱部160の内部空間160aに挿通してもよい。
なお、電線やホースをステージ40よりも上方に配設する場合、支柱部160の適宜の位置に開口を設けて、ステージ40よりも上方に導出させる。
【0173】
また、ヘッドガード150の屋根本体175をエキスパンドメタルで構成したが、これに限定せず、強度を確保できるのであれば、合成樹脂製のメッシュ部材や、透明または半透明のアクリル板などであってもよい。
【0174】
また、最下段リング70Aと孔壁111との隙間を外方シール81と協働して埋めた間詰部材82も、間詰部材86と同様に、平面視略扇状に分割構成し、分割された部材をライナープレート70の周方向に沿って並置して、最下段リング70Aの下フランジに固定することで、円環状となるように構成することが望ましい。
【0175】
また、上述した変形例において、円環状の間詰リング861と、間詰リング861の外周縁に装着された円環状の間詰先端部862とで間詰部材86を構成したが、これに限定せず、例えば孔壁111の直径よりも大径の外径を有する間詰リングのみで構成された間詰部材であってもよい。
【符号の説明】
【0176】
1…掘削ユニット
10…刃口
10a…刃口内面
20…支持フレーム
21…中央支持部
22…支持ビーム
30…掘削部
40…ステージ
41…通過孔
50…ジャッキ
60…排土ユニット
61…レール
62…排土バケツ
70…ライナープレート
70A…最下段リング
70B…地表リング
80…裏込め材
81…外方シール
82…間詰部材
111…孔壁
112…孔底部
ステップs7…孔底部掘削工
ステップs11…裏込め工
ステップs12…ライナープレート組付工
35…油圧ホース
86…間詰部材
160…支柱部
170…屋根部
171…梁部
175…屋根本体