(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124443
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】釣竿
(51)【国際特許分類】
A01K 87/00 20060101AFI20230830BHJP
【FI】
A01K87/00 640B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028203
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】牛之濱 幸佑
(72)【発明者】
【氏名】中畑 美徳
(72)【発明者】
【氏名】加藤 好尚
(72)【発明者】
【氏名】瀬在 宏
【テーマコード(参考)】
2B019
【Fターム(参考)】
2B019AA05
2B019AG03
(57)【要約】
【課題】仕舞寸法を短くすることが可能な釣竿において、バッグ類に収容しても、その中で動き難くなる構造の釣竿を提供する。
【解決手段】本発明の釣竿1は、複数の竿杆を収納する元竿杆3に対して、複数の竿杆が突出しないように被着される筒状のカバー部材20を備える。カバー部材20は、元竿杆3に着脱される後方グリップを構成することが可能であり、元竿杆3とカバー部材20には、カバー部材20を元竿杆3に被着する際、カバー部材20の被着位置を変更して仕舞寸法を調整可能にする調整機構50が設けられている、
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の竿杆を収納する元竿杆に対して、前記複数の竿杆が突出しないように被着される筒状のカバー部材を備え、前記カバー部材は、前記元竿杆に対して着脱される後方グリップを構成することが可能な釣竿であって、
前記元竿杆とカバー部材には、カバー部材を元竿杆に被着する際、カバー部材の被着位置を変更して仕舞寸法を調整可能にする調整機構が設けられている、
ことを特徴とする釣竿。
【請求項2】
前記調整機構は、前記カバー部材の開口領域の内面に形成された雌螺子部と、魚釣用リールのリール脚を固定する移動フードの操作ナットが配設される雄螺子部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の釣竿。
【請求項3】
前記カバー部材の開口端縁が、前記操作ナットの先端縁に当て付くことで、カバー部材の軸方向位置が固定されることを特徴とする請求項2に記載の釣竿。
【請求項4】
前記カバー部材の開口端縁、及び、前記操作ナットの先端縁の少なくとも一方には、両者の間に介在される軟質部材が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の釣竿。
【請求項5】
前記元竿杆の移動フードの操作ナットが配設される雄螺子部には、リングナットが配設されていることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の釣竿。
【請求項6】
前記元竿杆は、リール脚を固定する部位より後方側に、軸方向に突出する突出部を備えており、
前記突出部には、前記カバー部材の開口領域の内面に形成された雌螺子部が螺合する後方グリップ用の雄螺子部が形成されている、
ことを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の釣竿。
【請求項7】
前記調整機構は、前記カバー部材の開口領域に形成された雄螺子部と、魚釣用リールのリール脚を固定する固定フードに隣接して配設される雌螺子部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の釣竿。
【請求項8】
魚釣用リールのリール脚を固定するリール脚載置部と、前記リール脚載置部の前方側及び後方側に設けられ、前記リール脚を締め付け固定する一対のフードと、を備えたリールシートと、
前記リールシートと一体化され、複数の竿杆を収納する元竿杆と、
前記複数の竿杆が突出しないように被着される筒状のカバー部材と、を有し、
前記カバー部材は、前記リールシート又は元竿杆に対して着脱される後方グリップを構成することが可能な釣竿であって、
前記リールシート又は元竿杆と、前記カバー部材には、カバー部材の被着位置を変更して仕舞寸法を調整可能にする調整機構が設けられている、
ことを特徴とする釣竿。
【請求項9】
前記一対のフードの内、前方側のフード領域には、雄螺子部又は雌螺子部が設けられており、
前記カバー部材の端部には、前記フード領域に形成された雄螺子部又は雌螺子部と螺合する雌螺子部又は雄螺子部が形成されている、
ことを特徴とする請求項8に記載の釣竿。
【請求項10】
前記カバー部材には、前記複数の竿杆の収納状態において、各竿杆の先端が当て付く柔軟部材が設けられていることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の釣竿。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣竿に関し、詳細には、仕舞寸法を短くすることが可能な釣竿に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の魚釣りでは、長尺竿の持ち運びが大変なことや、運搬が運送会社の制限によって運送できない、更には、運送費が高騰している等の理由から、運搬時に短い仕舞寸法にできる釣竿(モバイルロッドとも称する)が注目を浴びている。このようなモバイルロッドとして、例えば、特許文献1には、多数本の振り出し竿杆を順次収納する元竿杆を短くすると共に、この元竿杆に筒状のカバー部材を被着した構成が開示されている。前記カバー部材は、各竿杆の釣糸ガイドと竿全体を覆うように配設されると共に、使用時には取り外して、元竿杆の後端に接続してグリップにすることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1に開示されている釣竿は、鞄やリュックサック等(以下、バッグ類と総称する)に収容して持ち運ぶ際、竿杆との間に隙間が生じていると、釣竿自体がバッグ類の中で動いてしまい、傷が付いたり破損する可能性がある。
【0005】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、仕舞寸法を短くすることが可能な釣竿において、バッグ類に収容しても、その中で動き難くなる構造の釣竿を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、本発明に係る釣竿は、複数の竿杆を収納する元竿杆に対して、前記複数の竿杆が突出しないように被着される筒状のカバー部材を備え、前記カバー部材は、前記元竿杆に対して着脱される後方グリップを構成することが可能であり、前記元竿杆とカバー部材には、カバー部材を元竿杆に被着する際、カバー部材の被着位置を変更して仕舞寸法を調整可能にする調整機構が設けられていることを特徴とする。
【0007】
上記した構成の釣竿によれば、筒状のカバー部材を、元竿杆に対して被着することで、元竿杆に収納されている複数本の竿杆の突出を防止すると共に、使用時には、カバー部材を取り外して元竿杆に装着して後方グリップにすることができるので、使用時の操作性の向上及び仕舞寸法を短くすることが可能となる。また、元竿杆とカバー部材には、カバー部材を元竿杆に被着する際、前記調整機構によってカバー部材の被着位置を変更して仕舞寸法を調整することが可能となっており、バッグ類の収容部の大きさに応じて、軸方向の寸法調整を行ない、釣竿が動かないようにすることができる。
【0008】
また、本発明に係る釣竿は、魚釣用リールのリール脚を固定するリール脚載置部と、前記リール脚載置部の前方側及び後方側に設けられ、前記リール脚を締め付け固定する一対のフードと、を備えたリールシートと、前記リールシートと一体化され、複数の竿杆を収納する元竿杆と、前記複数の竿杆が突出しないように被着される筒状のカバー部材と、を有し、前記カバー部材は、前記リールシート又は元竿杆に対して着脱される後方グリップを構成することが可能であって、前記リールシート又は元竿杆と、前記カバー部材には、カバー部材の被着位置を変更して仕舞寸法を調整可能にする調整機構が設けられている、
ことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る釣竿の調整機構は、上記のように、前記リールシート又は元竿杆と、前記カバー部材に設けられる構成であっても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、仕舞寸法を短くすることが可能であり、バッグ類に収容しても、その中で動き難くなる構造の釣竿が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る釣竿の第1の実施形態を示す図であり、(a)は元竿杆からカバー部材を外した状態を示す図、(b)はカバー部材を被着した状態を示す図。
【
図2】
図1に示す釣竿において、(a)は元竿杆に対してカバー部材を後方グリップとして使用する状態を示す図、(b)は元竿杆に対してカバー部材を装着し、後方グリップにした状態を示す図。
【
図4】釣竿の仕舞寸法について説明する図であり、(a-1、a-2)は最短の仕舞状態を示す図、(b-1、b-2)は最長の仕舞状態を示す図。
【
図5】本発明に係る釣竿の第2の実施形態を示す図であり、釣竿として使用する状態を示す図。
【
図6】
図5に示す釣竿において、(a)は短い仕舞状態を示す図、(b)は長い仕舞状態を示す図。
【
図7】本発明に係る釣竿の第3の実施形態を示す図であり、(a)は釣竿として使用する状態を示す図、(b)は仕舞状態を示す図。
【
図8】本発明に係る釣竿の第4の実施形態を示す図であり、釣竿として使用する状態を示す図。
【
図9】本発明に係る釣竿の第5の実施形態を示す図であり、釣竿として使用する状態を示す図。
【
図10】本発明に係る釣竿の第6の実施形態を示す図であり、(a)は釣竿として使用する状態を示す図、(b)は仕舞状態を示す図。
【
図11】本発明に係る釣竿の第7の実施形態を示す図であり、仕舞状態を示す図。
【
図12】本発明に係る釣竿の第8の実施形態を示す図であり、仕舞状態を示す図。
【
図13】本発明に係る釣竿の第9の実施形態を示す図であり、(a)は釣竿として使用する状態を示す図、(b)は仕舞状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1から
図3は、本発明に係る釣竿(モバイルロッド)の第1の実施形態を示す図である。
図に示す釣竿1は、元竿杆3に、複数の竿杆5A,5B,5C,5D,5Eを収納し、これを順次振り出して継合される振出式に構成されている。前記元竿杆3の内部に収納される竿杆の本数(継合本数)については任意であり、図に示す構成では、最も小径の竿杆5Eが穂先竿杆となっている。
【0013】
前記元竿杆3及び複数の竿杆5A,5B,5C,5D,5Eには、釣糸を案内する釣糸ガイド8A、8B、8Cが装着されている。本実施形態の釣竿は、各種の魚釣用リールの内、スピニングリールの使用を予定しており、ガイド脚が高くなることから、最も基端側に配設される釣糸ガイド8Aについては、倒伏式に構成されている。また、釣糸ガイド8Bについては、竿杆の先端に糸止め等によって固定されるもの、及び、竿杆に沿って摺動し、所定の位置で固定されるもの(遊動ガイド)が含まれている。更に、釣糸ガイド8Cは、竿杆(穂先竿杆)5Eの先端に固定されるトップガイドである。
【0014】
前記元竿杆3の基端側には、リール脚載置部9aを有するリールシート9が配設されている。このリールシート9の軸方向の前後には、リール脚載置部9aに載置されるリール脚を締め付け固定する一対のフードが設けられている。本実施形態の一対のフードは、リール脚載置部9aの軸方向後方に設けられる固定フード11と、軸方向前方に設けられ、軸方向に移動する移動フード12とで構成されている。
なお、前記元竿杆3とリールシート9は一体形成されていても良いし、別体として構成され、一体化した構成であっても良い。また、元竿杆3の移動フード部分からの突出量については任意である。さらに、後述するように、移動フードはリール脚載置部9aの後方に設けられる構成であっても良いし、リール脚載置部9aの両側に移動フードを配設しても良い。
【0015】
前記固定フード11は、元竿杆3の基端側の外周面に固定されており、リール脚載置部9aに向けて開口する受入穴11aを備えている。前記移動フード12は、リール脚載置部9aに向けて開口する12aを備えている。前記移動フード12は、元竿杆3の移動フード12の前方(フード領域)に設けられた雄螺子部3Aに対して螺合する雌螺子部が形成された操作ナット12Aを備えている。この場合、操作ナット12Aと移動フード12は、公知の係合構造によって連結されており、操作ナット12Aを回転操作して軸方向に移動させた際、移動フード12を連れ回りさせることなく、移動フード12を固定フード11に対して、接近/離反させるようになっている。
【0016】
これにより、リール脚載置部9aにリール脚(図示せず)を載置して後方側を固定フード11の受入穴11aに嵌入し、操作ナット12Aを回転操作することで、リール脚は、移動フード12と固定フード11とで締め付け固定される。なお、前記操作ナット12Aと螺合する雄螺子部3Aは、元竿杆3の外周面に形成されているが、元竿杆3の外周面に管状のリールシート(筒状のシート本体)を外嵌し、そのリールシートの外周面に形成したものであっても良い。
【0017】
元竿杆3は、リール脚を固定する部位(固定フード11)より後方側に、軸方向に突出する突出部3Bが形成されている。この突出部3B内には、前記複数の竿杆5A~5Eが収納されることから、軸方向に所定の長さを有している。また、突出部3Bの基端には、下栓(尻栓)15が着脱可能にされており、収納される前記竿杆5A~5Eの抜けを防止している。なお、この下栓15を取り外すことで、各竿杆をメンテナンスすることが可能となる。
【0018】
また、本実施形態では、突出部3Bの外周面に雄螺子部(後方グリップ用の雄螺子部)3Cが形成されている。この雄螺子部3Cは、前記固定フード11に隣接して形成(フード領域に形成)されており、以下のカバー部材20の雌螺子部が螺合することで、カバー部材20によって後方グリップが構成される。
【0019】
前記元竿杆3に対しては、
図1に示すように、元竿杆内に収納された複数の竿杆5A~5Eの突出を防止する機能を果たす筒状のカバー部材20が軸方向に沿って着脱可能に被着されている。本実施形態のカバー部材20は、円筒形状で先端に移行するにつれて太径になるように形成されており、複数の竿杆が突出することのないように先端部分が閉じた状態(着脱可能な蓋体21が装着されている)となっている。また、カバー部材20は、繊維強化樹脂、木材、金属等、硬質な材料で形成することで、竿杆を保護することが可能となる。
【0020】
前記蓋体21は、竿杆5A~5Eが当て付いても、釣糸ガイドや各竿杆の先端が破損等しないように、EVA等の柔軟部材で形成しておくことが好ましい。また、蓋体21は、カバー部材20に対して、圧入、螺子結合などによって着脱可能であっても良いし、接着等によって固定される構成であっても良い。或いは、蓋体21は、カバー部材20と共に一体化された構成であっても良い。
【0021】
前記カバー部材20は、上記のように、複数の竿杆5A~5Eの突出を防止する機能に加え、元竿杆3の突出部3Bに装着されて後方グリップとしての機能を兼ね備えており、元竿杆3に対して、前方側及び後方側で固定できるように構成されている。すなわち、
図1に示すように、カバー部材20を前方側で固定することで、竿杆の突出を防止する仕舞状態となり、
図2,3に示すように、カバー部材20を後方側で固定することで、後方グリップ状態となる。
【0022】
前記元竿杆3とカバー部材20には、カバー部材20を元竿杆3に被着する際、カバー部材20の被着位置(軸方向に対して固定される位置)を変更して仕舞寸法を調整可能にする調整機構50が設けられている。すなわち、
図1(b)に示すような仕舞状態にする際、カバー部材20の固定位置を軸方向で調整できるように構成されており、これにより、バッグ類に収容した際、バッグ類の内面との間で隙間を生じさせないようにしている。
【0023】
前記カバー部材20の前方側及び後方側の固定手段は、限定されることはないが、本実施形態では、カバー部材20の開口領域の内面に雌螺子部20Aを形成し、この雌螺子部20Aを、前記元竿杆3の雄螺子部3A,3Cに螺合させることで固定するよう構成されている。すなわち、固定手段については、圧入等によって構成しても良いが、螺合結合にすることで、固定状態を、ガタ付くことなく確実に維持することが可能となる。
【0024】
前記カバー部材20の元竿杆に対する前方側及び後方側の固定手段を上記した螺合構造にしたことで、調整機構50は、カバー部材20に形成された雌螺子部20Aと、リール脚を固定する移動フード12の操作ナット12Aが配設される雄螺子部3Aとで構成することが可能である。すなわち、カバー部材20の固定位置は、雄螺子部3Aの軸方向長さの範囲内で調整することが可能であり、これにより、仕舞寸法を調整することが可能となる。また、本実施形態では、カバー部材20の開口端縁を、操作ナット12Aの先端縁に当て付けるように構成しており、カバー部材20が軸方向の基端側に移動することなく、その固定状態を維持するようにしている。
【0025】
次に、
図1~
図4を参照して、上記した釣竿の使用方法について説明する。
釣竿1の非使用時(仕舞時)には、カバー部材20は、
図1に示すように、雌螺子部20Aを元竿杆3の前方側の雄螺子部3Aに螺合することで、元竿杆3の雄螺子部3Aから前方側を覆っている(被着されている)。これにより、元竿杆3に収容された複数の竿杆は飛び出すことはなく、各竿杆の先端部分に位置している釣糸ガイド8A~8C及び各竿杆の先端は、柔軟部材で構成された蓋体21によって保護される。また、この状態では、下栓15によって、各竿杆は後方へ抜けないようになっている。
【0026】
このような仕舞時には、前記調整機構50によって、カバー部材20の被着位置(軸方向に対する固定位置)を変更して仕舞寸法を調整可能することが可能となっている。
【0027】
図4(a-1、a-2)は最短の仕舞状態を示す図である。
この例では、操作ナット12Aを矢印方向に回転して、移動フード12を最も固定フード11側に移動させておくことで、雄螺子部3Aの露出長さを長くすることができる。この状態で、カバー部材20を最も基端側となるように回転操作して、カバー部材の開口端縁を操作ナット12Aの先端縁に当て付けることで、カバー部材20の軸方向の固定位置は元竿杆の基端側にシフトし、仕舞寸法を短くすることができる(リール脚載置部9aの軸方向長さAが最も短い)。
【0028】
図4(b-1、b-2)は最長の仕舞状態を示す図である。
この例では、操作ナット12Aを矢印方向に回転して、移動フード12を固定フード11から離反する側に移動させておくことで、雄螺子部3Aの露出長さを短くすることができる。この露出長さについては、カバー部材20の雌螺子部20Aが螺合、固定できる程度であれば良く、この状態で、カバー部材20を回転操作して、カバー部材の開口端縁を操作ナット12Aの先端縁に当て付けることで、カバー部材20の軸方向の固定位置は元竿杆の先側にシフトし、仕舞寸法を長くすることができる(リール脚載置部9aの軸方向長さBが最も長い)。
【0029】
このように、本実施形態の調整機構50は、移動フード12の雄ネジ部3Aと、カバー部材20の雌螺子部20Aを利用する構造であるため、簡略化が図れると共に、カバー部材20の開口端縁を操作ナット12Aの先端縁に当て付けてその位置を固定するようにしているため、カバー部材が軸方向に移動することなく、安定した固定状態が得られる。
【0030】
なお、カバー部材20と操作ナット12Aは、固定状態で略面一状になるように形成することが好ましい。
このようにカバー部材20と操作ナット12Aが面一状になることで、バッグ類に収容した際、他物が引っ掛かり難くすることが可能となる。
【0031】
また、カバー部材12の開口端縁、及び、操作ナット12Aの先端縁の少なくとも一方には、両者の間に介在される軟質部材40を設けておくことが好ましい。軟質部材40は、例えば、プラスチック、ゴム等によって形成することが可能であり、図に示すように、カバー部材20の開口端縁に取着しておくことで、仕舞状態にした際、操作ナット12Aの先端縁にしっかりと当て付いてガタ付くことが防止され、カバー部材の開口縁の割れ等を防止することができる。
【0032】
なお、上記した構成では、操作ナット12Aが配設される雄螺子部3Aに、別途、リングナット(後述する
図8、
図9参照)を配設しておいても良い。このようなリングナットを配設することで、雄螺子部3Aに螺合したカバー部材20の開口端縁に当て付けることができるので、リール脚載置部9aにリール脚を固定したまま(操作ナット12Aの位置を変ない)、カバー部材20の位置を固定することができる。すなわち、固定フード11と移動フード12との間にリールを固定した状態のまま、リングナットをカバー部材20の開口端縁に当て付けることで、仕舞寸法を調整することが可能となる。
【0033】
上記した構成において、釣竿1を使用する場合、操作ナット12Aが配設される雄螺子部3Aからカバー部材20を軸方向に取り出す。そして、
図2に示すように、カバー部材20を反対側にして突出部3Bに被せ、カバー部材20の雌螺子部20Aを突出部3Bに形成された雄螺子部3Cに螺合させる。この状態では、カバー部材20の開口端縁に取着された軟質部材40が固定フード11の後端縁にしっかりと当て付いてガタ付くことが防止され、カバー部材の開口縁の割れ等を防止することができる。
【0034】
これにより、
図2(b)、
図3に示すように、カバー部材20は、後方グリップとしての機能を発揮することができる。また、本実施形態のカバー部材20は、軸方向に沿って径が変化するように形成されているので、グリップとして使用する場合、後方側に向けて太径化することとなり、握持性の向上を図ることが可能となる。
【0035】
なお、上記した構成において、突出部3Bに対して雄螺子部3Cを設ける位置(カバー部材20の固定位置)は任意である。例えば、突出部3Bの基端側に形成することで、釣竿として使用する場合の後方グリップの長さを長くすることも可能である。
【0036】
次に、本発明の別の実施形態について説明する。
なお、以下に説明する実施形態では、上記した第1の実施形態と同様な機能を有する部分については、同一の参照符号を付し、詳細な説明については省略する。
【0037】
図5及び
図6は、第2の実施形態を示す図であり、
図5は釣竿として使用する状態を示す図、
図6(a)は短い仕舞状態を示す図、
図6(b)は長い仕舞状態を示す図である。
【0038】
この実施形態では、リール脚載置部9aの前方側(竿先側)に固定フード11を設け、その後方側(基端側)に移動フード12を設けている。
移動フード12の操作ナット12Aは、元竿杆3の突出部3Bに形成された雄螺子部3Aに螺合しており、操作ナット12Aを回転操作することで移動フード12を軸方向に移動させる。
【0039】
カバー部材20の先端の開口部分の内面には、雌螺子部26が形成されており、前記雄螺子部3Aと螺合するように構成されている。カバー部材20の開口部分には、更に、雌螺子部26が形成されている領域から前方に突出して雄螺子部25が形成されている。この雄螺子部25は、元竿杆3の前方に被着して仕舞状態にする際に用いられ、調整機構50を構成する。なお、雄螺子部25については、前記雌螺子部26と軸方向に並設されているが、雌螺子部26と重合するように、カバー部材20の外表面に直接、形成しても良い。
【0040】
前記固定フード11には、別体の接合部品70が取り付けられている。この接合部品70は、固定フード11の径方向内側に固定されると共に、固定フード11の前方側で拡径した円筒部71を備え、その円筒部71の内面に調整機構50を構成する雌螺子部72が形成されている。すなわち、雌螺子部72は、フード領域に形成されており、前記カバー部材20の前記雄螺子部25と螺合するように構成されている。
【0041】
上記した構成によれば、操作ナット12Aを回転操作して移動フード12を軸方向に移動させてリール脚載置部9aにリールを固定し、露出している雄螺子部3Aにカバー部材20の雌螺子部26を螺合することで、カバー部材20を後方グリップとして機能させることができる(
図5参照)。また、カバー部材20を取り外して反対側に向け、雄螺子部25を接合部品70の雌螺子部72に螺合することで仕舞状態にすることができる。この場合、カバー部材20の雄螺子部25と、接合部品70の雌螺子部72との螺合位置を軸方向にずらすことで、
図6(a)(b)に示すように、仕舞寸法を調整することができる。なお、
図6(a)はカバー部材20を最も締め込んだ短い仕舞状態を示す図、(b)は端部側で螺合させた長い仕舞状態を示す図である。
【0042】
図7は、第3の実施形態を示す図であり、(a)は釣竿として使用する状態を示す図、(b)は仕舞状態を示す図である。
【0043】
この実施形態では、カバー部材20の両側に、釣竿として使用する場合の接続構造、及び、仕舞状態にする場合の接続構造が設けられている。
具体的には、カバー部材20の一端側(上記した実施形態の開口側)には雌螺子部26が形成されている。この雌螺子部26は、カバー部材20の開口側の内周面に直接形成しても良いし、図に示すように、別部材となる螺子形成部品20Fの内面に雌螺子部26を形成し、この螺子形成部品20Fをカバー部材20の一端側に圧入、接着しても良い。また、カバー部材20の他端側には接合部品70Aが圧入、固定されている。この接合部品70Aの突出側には、雄螺子部70aが形成されている。そして、リール脚載置部9aの前方側(竿先側)に設けられた固定フード11の内側には、リールシート9のリール脚載置部9aの前方に一体形成された雌螺子部9Cが設けられている。
【0044】
上記した構成によれば、操作ナット12Aを回転操作して移動フード12を軸方向に移動させてリール脚載置部9aにリールを固定し、露出している雄螺子部3Aにカバー部材20の一端側の雌螺子部26を螺合することで、カバー部材20を後方グリップとして機能させることができる(
図7(a)参照)。また、カバー部材20を取り外し、反対側に向けることなく、そのまま他端側の接合部品70Aの雄螺子部70aを前記雌螺子部9Cに螺合することで仕舞状態にすることができる(
図7(b)参照)。この場合、カバー部材20の雄螺子部70aと、雌螺子部9Cとの螺合位置を軸方向にずらすことで、仕舞寸法を調整することができる。
【0045】
なお、上記した構成では、仕舞状態のときにカバー部材20の一端側が開口するため、別途、別部品となるキャップ部材80を装着しても良い。また、このキャップ部材80は、釣竿使用時にカバー部材20の他端側に装着できるように構成しても良い。この場合、カバー部材の一端側と他端側の外径寸法が異なっていれば、径方向が変位可能な柔軟部材製で構成しても良いし、複数の外径に装着可能な接合構造を形成しておいても良い。
【0046】
図8は、第4の実施形態を示す図であり、釣竿として使用する状態を示す図である。
この実施形態では、リール脚載置部9aの前方側(竿先側)に固定フード11を設け、その後方側(基端側)に移動フード12を設けている。
【0047】
この実施形態では、移動フード12の操作ナット12Aは、元竿杆3の突出部3Bに形成された雄螺子部3Aに螺合しており、操作ナット12Aを回転操作することで移動フード12を軸方向に移動させるようになっている。前記カバー部材20の先端の開口部分の内面には、雌螺子部20Aが形成されており、使用状態では、前記雄螺子部3Aと螺合するように構成されている。また、固定フード11の前方には、雄螺子部3Cが形成されており、仕舞状態では、前記カバー部材20の雌螺子部20Aが螺合するように構成されている。
【0048】
前記雄螺子部3Cには、別途、リングナット30が配設されている。このようなリングナット30を配設したことで、仕舞寸法を調整する際に、雄螺子部3Cに螺合したカバー部材20の開口端縁に当て付けることができるので、その位置でカバー部材20をガタ付くことなく固定することが可能となる。
【0049】
図9は、第5の実施形態を示す図であり、釣竿として使用する状態を示す図である。
この実施形態では、リール脚載置部9aの前方側及び後方側に移動フード12を設けている。各移動フード12を移動するための操作ナット12Aが螺合する雄螺子部3A,3A´には、それぞれリングナット30,30´が配設されている。
このような構成によれば、使用時にカバー部材20をガタ付くことなく固定できると共に、仕舞状態においても、雄螺子部3A´に螺合したカバー部材20の開口端縁に当て付けることができるので、リール脚載置部9aにリール脚を固定したまま、カバー部材20の位置をガタ付くことなく固定することができる。また、仕舞状態では、螺合位置を変えることで、仕舞寸法を調整することが可能となる。
【0050】
図10は、第6の実施形態を示す図であり、(a)は釣竿として使用する状態を示す図、(b)は仕舞状態を示す図である。
【0051】
この実施形態では、筒状に形成されたリールシート9の内部に複数の竿杆を収納した元竿杆3が取り付けられている。前記リールシート9のリール脚載置部9aの前方側(竿先側)には移動フード12が設けられ、その後方側(基端側)には固定フード11が設けられている。また、固定フード11の後方側には、上述した実施形態のような突出部3Bを形成することなく、別体の接合部品70が取り付けられている。この接合部品70は、固定フード11の径方向内側に固定されると共に、固定フード11の後方側で拡径した円筒部71を備え、その円筒部71の内面に雌螺子部72が形成されている。
なお、雌螺子部72の奥側に、コイン溝91が形成された皿形状の捩じ込み式の下栓90を螺入、結合しておくことで、仕舞状態で元竿杆3等が飛び出すことを確実に防止することができる。
【0052】
前記元竿杆3は、リールシート9の後端から突出しない長さに構成されていることが好ましく、その前方側が、リールシート9に配設された移動フード12の操作ナット12Aが螺合する雄螺子部3Aから突出した状態で固定されている。
【0053】
前記カバー部材20は、上記した第2の実施形態と同様(
図5、
図6参照)、その先端の開口部分の内面に雌螺子部26が形成されると共に、雌螺子部26が形成される領域から前方に突出して雄螺子部25が形成されている。この雄螺子部25は、
図10(a)に示すように、釣竿として使用する場合、前記接合部品70の雌螺子部72と螺合するように構成されている。また、
図10(b)に示すように、露出している雄螺子部3Aにカバー部材20の雌螺子部26を螺合することで、仕舞状態にすることができる。この場合、カバー部材20の雌螺子部26と、雄螺子部3Aとの螺合位置を軸方向にずらすことで、仕舞寸法を調整することができる。
上記した構成によれば、リールシート9の後方側に突出部を形成しないことから、釣竿の仕舞寸法を短くすることが可能となる。
【0054】
図11は、第7の実施形態を示す図である。
この実施形態では、リール脚載置部9aの前方側に固定フード11を設け、後方側に移動フード12を設けている。移動フード12の後方側は、第6の実施形態と同様、突出部を形成することなく、そのまま操作ナット12Aが螺合する雄螺子部3Aによって終端している。この雄螺子部3Aには、カバー部材20の雌螺子部20Aが螺合することで釣竿の使用状態となる。なお、元竿杆3の長さは、雄螺子部3Aの後端から突出しない長さに構成されていることが好ましい。
【0055】
また、固定フード11の前方側には、雄螺子部3Cが形成されており、この部分にカバー部材20の雌螺子部20Aが螺合されて仕舞状態にすることができる。この場合、カバー部材20の雌螺子部20Aと、雄螺子部3Cとの螺合位置を軸方向にずらすことで、仕舞寸法を調整することができる。
上記した構成においても釣竿の仕舞寸法を短くすることが可能となる。
【0056】
図12は、第8の実施形態を示す図である。
この実施形態では、第7の実施形態において、カバー部材20の開口領域に、雌螺子部26を形成すると共に、その奥側に径方向に突出する段差部26aを形成している。
【0057】
前記段差部26aは、仕舞状態にする際、カバー部材20の雌螺子部26を、固定フード11の前方側に形成した雄螺子部3Cに螺合して締め付けた際、雄螺子部3Cの先端縁に圧着して当て付くようになっている。
このような構成によれば、仕舞状態にした際、カバー20がガタ付くことを防止することができると共に、カバー部材の位置を確実に固定することができる。
【0058】
図13は、第9の実施形態を示す図であり、(a)は釣竿として使用する状態を示す図、(b)は仕舞状態を示す図である。
この実施形態では、リール脚載置部9aの前方側に移動フード12を設け、後方側に固定フード11を設けている。
【0059】
固定フード11の径方向内側には、リールシートの開口を閉塞するように栓体75が取り付けられており、その中央部には、雌螺子部75Aが形成されている。また、カバー部材20の開口部分には、接合部品76が圧入、固定されており、その中央部分には、前記栓体75の雌螺子部75Aと螺合するように、雄螺子部76Aが突出形成されている。さらに、カバー部材20の後端側は開口しており、その内面部分には、雌螺子部20Eが形成されている。
【0060】
このような構成によれば、使用時に、カバー部材20の接合部品76の雄螺子部76Aを、前記栓体75の雌螺子部75Aに螺合することでグリップとすることができる(
図13(a)参照)。また、カバー部材20を取り外して、後端側の雌螺子部20Eを、移動フード12の雄螺子部3Aに螺合することで仕舞状態にすることができる。この仕舞状態では、螺合位置を変えることで、仕舞寸法を調整することが可能となる。
なお、カバー部材20に対しては、仕舞状態において、前記接合部品76を露出させないように、カバー部材80を着脱可能に取り付けるようにしても良い。また、
図10に示した実施形態と同様、雌螺子部75Aの奥側に、コイン溝91が形成された皿形状の捩じ込み式の下栓90を螺入、結合しておくことで、仕舞状態で元竿杆3等が飛び出すことを確実に防止することができる。
【0061】
以上のような構成によれば、仕舞寸法を短くすることができると共に、螺合部分を径方向中央部分で接合するようにしたため、細経化することが可能となる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施の形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
上記した実施形態では、リールが装着される釣竿を例示したが、リールシート及び釣糸ガイドを備えていない通常の振出式の釣竿として構成することが可能である。また、両軸受リール専用の釣竿として構成しても良いし、スピニングリール及び両軸リールの両方が装着される釣竿として構成しても良い。この場合、取り付けるリールに応じて釣糸ガイドの構成を変更すれば良い。
【0063】
前記カバー部材20の長さについては、適宜変形することが可能である。また、カバー部材20の元竿杆3に対する固定方法については、螺合構造以外にも、圧入構造、クランプ等による構造等、適宜変形することが可能であり、それに応じて調整機構50の構成も適宜、変形することが可能である。また、上記した各実施形態における種々の構成部材については、他の実施形態に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 釣竿
3 元竿杆(竿杆)
3A 雄螺子部
5A~5D 竿杆
8A,8B,8C 釣糸ガイド
9 リールシート
9a リール脚載置部
11 固定フード
12 移動フード
12A 操作ナット
20 カバー部材
20A 雌螺子部
30,30´ リングナット
50 調整機構