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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124470
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】作業用車両
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/34 20060101AFI20230830BHJP
   H02J 9/08 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
H02J7/34 H
H02J9/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028244
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000215822
【氏名又は名称】帝国繊維株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149870
【弁理士】
【氏名又は名称】芦北 智晴
(72)【発明者】
【氏名】多田 洋一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 光彦
【テーマコード(参考)】
5G015
5G503
【Fターム(参考)】
5G015GA01
5G015GA17
5G015GB01
5G015GB05
5G015JA05
5G015JA21
5G015JA52
5G015JA66
5G015KA08
5G503AA04
5G503AA07
5G503BA02
5G503BB02
5G503CA01
5G503DA05
5G503DA17
5G503FA06
5G503GB03
5G503GD03
5G503GD04
5G503GD06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】専用の発電機を備えず、作業用照明装置およびその他の架装電気機器全体で消費電力が大きい場合であっても電力供給を安定して適切に行い得る作業用車両を提供する。
【解決手段】防災用車両の電気回路は、走行用エンジン9の動力によって駆動されるシャシ付属のオルタネータ15と、オルタネータ15又は外部電源によって充電される架装物専用バッテリ19と、架装物専用バッテリ19の電力により作動する作業用照明装置5及び第2架装電気機器43と、作業用照明装置5及び第2架装電気機器43に対する架装物専用バッテリ19の電力供給を制御する架装物制御部50と、を備える。架装物制御部50は、第2架装電気機器43への供給電流値を監視し、当該供給電流値が所定の供給閾値以上になった場合に、架装物専用バッテリ19から第2架装電気機器43への電力供給を停止して作業用照明装置5に優先的に電力供給する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用エンジンと、前記走行用エンジンの動力によって駆動されるシャシ付属のオルタネータと、前記オルタネータまたは外部電源によって充電される架装物専用バッテリと、前記架装物専用バッテリの電力により作動する作業用照明装置と、前記架装物専用バッテリの電力により作動する架装電気機器と、前記作業用照明装置および前記架装電気機器に対する前記架装物専用バッテリの電力供給を制御する架装物制御部と、を備え、
前記架装物制御部は、前記架装電気機器への供給電流値を監視し、前記供給電流値が所定の供給閾値以上になった場合に、前記架装物専用バッテリから前記架装電気機器への電力供給を停止して前記作業用照明装置に優先的に電力供給するように構成されたことを特徴とする作業用車両。
【請求項2】
前記架装物専用バッテリは、リチウムイオンバッテリであることを特徴とする請求項1に記載の作業用車両。
【請求項3】
前記オルタネータと前記架装物専用バッテリとは、電力供給ラインにより接続され、
前記電力供給ラインには、通電リレーが介設され、
前記架装物制御部は、前記オルタネータの始動から所定の遅れ時間に達するまで、前記通電リレーによって、前記オルタネータから前記架装物専用バッテリへの電力供給を遮断するように構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の作業用車両。
【請求項4】
前記オルタネータによって充電される補機用バッテリと、前記補機用バッテリから前記架装電気機器への電力供給または前記架装物専用バッテリから前記架装電気機器への電力供給に切り換える切換リレーと、を備え、
前記架装物制御部は、前記供給電流値が前記供給閾値以上になった場合に、前記切換リレーを作動させて前記補機用バッテリから前記架装電気機器への電力供給に切換えるように構成されたことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の作業用車両。
【請求項5】
前記架装物制御部は、前記架装物専用バッテリのバッテリ残量を取得するバッテリ残量取得部を有するとともに、前記走行用エンジンのエンジン制御部と接続されており、
前記バッテリ残量取得部によって取得された前記バッテリ残量の減少に対応させて、前記エンジン制御部を介して前記走行用エンジンのエンジン回転数を上昇制御するように構成されたことを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の作業用車両。
【請求項6】
前記走行用エンジンから取り出された動力により駆動される油圧ポンプと、前記油圧ポンプの動力により駆動される油圧作業装置と、前記油圧作業装置が作動中であることを検知するための油圧センサと、を備え、
前記架装物制御部は、前記油圧センサからの信号に基づいて前記油圧作業装置が作動中であると判断した場合には、前記バッテリ残量の減少に対応させた前記走行用エンジンの前記エンジン回転数の上昇制御を行わないように構成したことを特徴とする請求項5に記載の作業用車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業用照明装置およびその他の架装電気機器を搭載した作業用車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災やその他の災害時において、消防活動や救助活動を円滑に支援するための作業用車両が用いられている。作業用車両としては、クレーン装置やウインチ装置等の油圧作業装置と、作業用照明装置およびその他の架装電気機器と、作業用照明装置およびその他の架装電気機器への電力供給用の発電機とを備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。その他の架装電気機器としては、車両に設けたAC100Vのコンセントを利用するものがある。また、発電機としては、架装物の一部として搭載され、動力取出装置により取り出された走行用エンジンの動力により駆動されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-078924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような従来の作業用車両は、活動支援に必要な資機材を積載するための積載庫を備えている。近年、作業用照明装置のLED化、シャシ重量増加、積載資機材増加により、発電機を備えない車両の要求が多い。動力取出装置により取り出された走行用エンジンの動力により駆動される発電機は大掛かりであり、車載すると積載スペースと積載重量の両方が犠牲になるからである。
【0005】
しかしながら、発電機を備えない作業用車両では、シャシに付属している補機用の鉛バッテリが作業用照明装置やその他の架装電気機器の電源となっている。そのため、鉛バッテリの負担が大きく、鉛バッテリのバッテリ残量を一定レベルに維持するのが難しいという問題点があった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、架装物専用の発電機を備えず、作業用照明装置およびその他の架装電気機器全体で消費電力が大きい場合であっても、電力供給を安定して適切に行い得る作業用車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。すなわち、第1の発明は、走行用エンジンと、前記走行用エンジンの動力によって駆動されるシャシ付属のオルタネータと、前記オルタネータまたは外部電源によって充電される架装物専用バッテリと、前記架装物専用バッテリの電力により作動する作業用照明装置と、前記架装物専用バッテリの電力により作動する架装電気機器と、前記作業用照明装置および前記架装電気機器に対する前記架装物専用バッテリの電力供給を制御する架装物制御部と、を備え、
前記架装物制御部は、前記架装電気機器への供給電流値を監視し、前記供給電流値が所定の供給閾値以上になった場合に、前記架装物専用バッテリから前記架装電気機器への電力供給を停止して前記作業用照明装置に優先的に電力供給するように構成されたことを特徴とする。
【0008】
第1の発明によれば、作業用照明装置および架装電気機器について、シャシメーカーによって設けられたシャシ付属の補機用バッテリからの電力ではなく、新たに設けられた架装物専用バッテリからの電力によって作動できるようになる。シャシ付属の補機用バッテリは走行関連機器へ電力供給を主な目的としているので、そのバッテリ容量だけでは、作業用照明装置や多くの架装電気機器全体の電力を賄うには不十分である。これに対し、補機用バッテリに加えて設けられる架装物専用バッテリは、作業用照明装置や架装電気機器に対し十分電力供給が行えるバッテリ容量に設定することができる。これにより、補機用バッテリのバッテリ残量不足により電力が走行関連機器に供給できなくなるおそれもなく、作業用照明装置や架装電気機器に対し安定して電力供給を行うことができる。
【0009】
また、架装物制御部が、架装電気機器への供給電流値が所定の供給閾値以上になった場合に、架装物専用バッテリから前記架装電気機器への電力供給を停止して作業用照明装置に優先的に電力供給するように構成したことにより、活動中の隊員の視界確保のために重要な作業用照明装置が活動途中に電力不足によって消灯してしまうことを確実に抑制できる。これにより、電力供給を適切に行うことが可能な作業用車両にできる。
【0010】
第2の発明では、第1の発明において、前記架装物専用バッテリは、リチウムイオンバッテリであることを特徴とする。
【0011】
第2の発明によれば、補機用バッテリに使用される鉛バッテリと比較して、軽量かつコンパクトで大容量なリチウムイオンバッテリを採用するので、架装物専用バッテリの取付スペースを小さくして積載資機材を収納するためのスペースと積載重量を確保しつつ、架装電気機器全体で消費電力が大きい場合に対応することができる。
【0012】
第3の発明では、第1または第2の発明において、前記オルタネータと前記架装物専用バッテリとは、電力供給ラインにより接続され、前記電力供給ラインには、通電リレーが介設され、前記架装物制御部は、前記オルタネータの始動から所定の遅れ時間に達するまで、前記通電リレーによって、前記オルタネータから前記架装物専用バッテリへの電力供給を遮断するように構成されたことを特徴とする。
【0013】
第3の発明によれば、電力供給が不安定となるオルタネータの始動時には、オルタネータからの電力が架装物専用バッテリへ供給されないようにできるので、架装物専用バッテリが異常な電圧や電流の入力によって故障することを防ぐことができる。
【0014】
第4の発明では、第1~第3のいずれか1つの発明において、前記オルタネータによって充電される補機用バッテリと、前記補機用バッテリから前記架装電気機器への電力供給または前記架装物専用バッテリから前記架装電気機器への電力供給に切り換える切換リレーと、を備え、前記架装物制御部は、前記供給電流値が前記供給閾値以上になった場合に、前記切換リレーを作動させて前記補機用バッテリから前記架装電気機器への電力供給に切換えるように構成されたことを特徴とする。
【0015】
第4の発明によれば、架装電気機器への供給電流値が所定の供給閾値以上になった場合に、架装物専用バッテリから架装電気機器への電力供給は停止されるが、架装電気機器は補機用バッテリから電力供給が行われるようになる。これにより、架装物専用バッテリと補機用バッテリの2種類のバッテリを使用して、作業用照明装置と架装電気機器の両方に電力供給を行うことができる。また、活動中の隊員の視界確保のために重要な作業用照明装置は、補機用バッテリよりも大容量の架装物専用バッテリから電力供給を行うことになる。そのため、電力供給をより適切に行うことができる。
【0016】
第5の発明では、第1~第4のいずれか1つの発明において、前記架装物制御部は、前記架装物専用バッテリのバッテリ残量を取得するバッテリ残量取得部を有するとともに、前記走行用エンジンのエンジン制御部と接続されており、前記バッテリ残量取得部によって取得された前記バッテリ残量の減少に対応させて、前記エンジン制御部を介して前記走行用エンジンの回転数を上昇制御するように構成されたことを特徴とする。
【0017】
第5の発明によれば、バッテリ残量が少なくなった場合、エンジン回転数を上昇させてオルタネータの単位時間あたりの発電量を増加させることにより、バッテリ残量を短時間で十分な量に回復させることができる。
【0018】
第6の発明では、第1~第5のいずれか1つの発明において、前記走行用エンジンから取り出された動力により駆動される油圧ポンプと、前記油圧ポンプの動力により駆動される油圧作業装置と、前記油圧作業装置が作動中であることを検知するための油圧センサと、を備え、前記架装物制御部は、前記油圧センサからの信号に基づいて前記油圧作業装置が作動中であると判断した場合には、前記バッテリ残量の減少に対応させた前記走行用エンジンの前記エンジン回転数の上昇制御を行わないように構成したことを特徴とする。
【0019】
第6の発明によれば、油圧作業装置が作動中に急にエンジン回転数が上昇することによって油圧ポンプの作動油吐出流量が変化し、油圧作業装置の動作が不安定になる、ということを防ぐことができ、安全である。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る作業用車両によれば、補機用バッテリのバッテリ残量不足により電力が走行関連機器に供給できなくなるおそれもなく、作業用照明装置や架装電気機器に対し安定して電力供給を行うことができる。また、活動中の隊員の視界確保のために重要な作業用照明装置が活動途中で電力不足によって消灯してしまうことを確実に抑制できる。これにより、電力供給を適切に行うことが可能な作業用車両にできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る防災用車両の側面図である。
図2】本実施形態に係る防災用車両の作業用照明装置とその他の架装電気機器への電力供給のための構成を示す電気回路図である。
図3】本実施形態に係る防災用車両の制御ブロック図である。
図4】本実施形態に係る防災用車両の油圧作業装置の油圧駆動のための構成を示す模式図である。
図5】本実施形態に係る防災用車両の充電・電力供給制御を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態に係る防災用車両について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
図1には、本発明の一実施形態に係る作業用車両として防災用車両1が示されている。図1において、本実施形態の防災用車両1は、車両前部に設けられたキャブ2と、キャブ2の後方に設けられ、活動支援に必要な資機材を積載するための積載庫3と、積載庫3の後方に設けられたクレーンである油圧作業装置60と、積載庫3の上部に設けられた作業用照明装置5と、を備えている。
【0024】
キャブ2はダブルキャブとなっており、前列には運転席が設けられ、後列には複数の隊員が座る後部座席が設けられている(図示省略)。キャブ2内の後部座席の上方には、隊員の快適性を向上させるためのエアコン7が設けられている。運転席および後部座席の床下には、走行用エンジン9と、走行用エンジン9の動力によって駆動されるシャシ付属のオルタネータ15と、走行用エンジン9の後端に連設されるクラッチ・トランスミッション部11とが設けられている。オルタネータ15は、オルタネータベルト14によって走行用エンジン9から動力が伝達されるようになっている。
【0025】
クラッチ・トランスミッション部11には、走行用エンジン9の動力を取り出すための動力取出装置12が設けられている。動力取出装置12の動力取出口には、PTOシャフト13の一端部が連結され、PTOシャフト13の他端部には、油圧ポンプ17が連結されている。
【0026】
積載庫3の下部には、補機用バッテリ18と、オルタネータ15または外部電源によって充電される架装物専用バッテリ19とが設けられている。補機用バッテリ18は、鉛バッテリからなり、主にシャシ電気機器46(図2参照)に電力供給を行うためのシャシ付属品である。シャシ電気機器46としては、例えば、キャブ2に設けられたヘッドライト6がある。また、架装物専用バッテリ19には、リチウムイオンバッテリが採用されている。リチウムイオンバッテリは、補機用バッテリ18に使用される鉛バッテリと比較して大容量であり、その容量と比較して軽量かつコンパクトとなっている。架装物専用バッテリ19には、バッテリ残量を監視するためのバッテリ制御部27が設けられている(図2参照)。また、架装物専用バッテリ19は、作業用照明装置5に電力供給を行って作動させるようになっている。
【0027】
図2は、本実施形態に係る防災用車両1の作業用照明装置5とその他の架装電気機器への電力供給のための構成を示す電気回路図である。図2において、オルタネータ15は、第1電力供給ライン71により第1架装電気機器44と接続されている。第1架装電気機器44としては、例えば、積載庫3の側面に設けられた赤色灯8(図1参照)がある。第1電力供給ライン71には、補機用バッテリ18が介設されている。補機用バッテリ18は、オルタネータ15によって充電されるようになっている。第1電力供給ライン71上におけるオルタネータ15と補機用バッテリ18との間には、入力監視用電流センサ23が介設されている。入力監視用電流センサ23は、オルタネータ15から補機用バッテリ18に入力される電流値を監視するものである。また、第1電力供給ライン71上における補機用バッテリ18と第1架装電気機器44との間には、出力監視用電流センサ24が介設されている。出力監視用電流センサ24は、補機用バッテリ18から出力される電流値を監視するものである。
【0028】
第1電力供給ライン71上におけるオルタネータ15と入力監視用電流センサ23との間からは、第2電力供給ライン72が分岐されている。第2電力供給ライン72は、ヘッドライト6等のシャシ電気機器46と接続されている。また、第1電力供給ライン71上における出力監視用電流センサ24と第1架装電気機器44との間からは、第3電力供給ライン73が分岐されている。第3電力供給ライン73は、通電リレー21の入力側に接続されている。通電リレー21は、OFFの状態において電力供給を遮断し、ONの状態において電力供給を許容するようになっている。通電リレー21の出力側は、第4電力供給ライン74により架装物専用バッテリ19の入力側と接続されている。第4電力供給ライン74には、第4ダイオード41が介設されており、通電リレー21の出力側から架装物専用バッテリ19に流れる方向の電流のみを許容する。また、第4電力供給ライン74には、外部電源からの通電ラインが、第5ダイオード42を介して接続されている。これにより、オルタネータ15と架装物専用バッテリ19とは、第1電力供給ライン71、第3電力供給ライン73および第4電力供給ライン74により接続されている。
【0029】
第3電力供給ライン73上における第1電力供給ライン71との分岐点と通電リレー21との間からは、第5電力供給ライン75が分岐されている。第5電力供給ライン75の先端は作業用照明装置5と接続されている。第5電力供給ライン75上における第3電力供給ライン73との分岐点と作業用照明装置5との間には、第2DC-DCコンバータ33および第2ダイオード38が設けられている。第2ダイオード38は、第2DC-DCコンバータ33の出力側から作業用照明装置5に流れる方向の電流のみ許容する。
【0030】
第5電力供給ライン75上における第3電力供給ライン73との分岐点と第2DC-DCコンバータ33の入力側との間からは、第6電力供給ライン76が分岐されている。第6電力供給ライン76の先端は、切換リレー22に接続されている。第6電力供給ライン76上における第5電力供給ライン75との分岐点と切換リレー22の入力側との間からは、第7電力供給ライン77が分岐され、その先端は第5電力供給ライン75上における第2ダイオード38と作業用照明装置5との間に接続されている。第7電力供給ライン77には、第1DC-DCコンバータ32と、第1DC-DCコンバータ32の出力側に位置する第1ダイオード37とが介設されている。第1ダイオード37は、第1DC-DCコンバータ32の出力側から作業用照明装置5に流れる方向の電流のみ許容する。
【0031】
架装物専用バッテリ19の出力側と第5電力供給ライン75とは、第8電力供給ライン78により接続されている。第8電力供給ライン78上には、第3DC-DCコンバータ34と、第3DC-DCコンバータ34の出力側に位置する第3ダイオード39とが介設されている。第3ダイオード39は、第3DC-DCコンバータ34の出力側から作業用照明装置5へ流れる方向の電流のみ許容する。第5電力供給ライン75上における、第7電力供給ライン77との接続点および第8電力供給ライン78との接続点よりも作業用照明装置5側からは、第9電力供給ライン79が分岐されている。第9電力供給ライン79の先端は切換リレー22に接続されている。
【0032】
第6電力供給ライン76と第9電力供給ライン79とが入力側に接続された切換リレー22の出力側には、第10電力供給ライン80が接続されている。第10電力供給ライン80の先端には、第2架装電気機器43が接続されている。切換リレー22がOFFの場合には、第6電力供給ライン76と第10電力供給ライン80とは接続される一方、第9電力供給ライン79と第10電力供給ライン80とは遮断されるようになっている。また、切換リレー22がONの場合には、第6電力供給ライン76と第10電力供給ライン80とは遮断される一方、第9電力供給ライン79と第10電力供給ライン80とは接続されるようになっている。
【0033】
第10電力供給ライン80における、切換リレー22と第2架装電気機器43との間には、切換リレー22側から順に供給監視用電流センサ25とDC-ACコンバータ35とが介設されている。第2架装電気機器43は、DC-ACコンバータ35によって直流からAC100Vの交流に変換された補機用バッテリ18または架装物専用バッテリ19の電力によって作動する機器である。第2架装電気機器43としては、例えば上述のエアコン7が含まれる。切換リレー22は、補機用バッテリ18から第2架装電気機器43への電力供給または架装物専用バッテリ19から第2架装電気機器43への電力供給に切り換えることが可能となっている。
【0034】
上述のように、本実施形態の防災用車両1では、3個備わっている。これは、出力電圧が異なる補機用バッテリ18と架装物専用バッテリ19、およびそれら出力電圧と異なる入力電圧である作業用照明装置5との間の電圧差を調整するために設けられているものである。
【0035】
図3は、本実施形態に係る防災用車両1の制御ブロック図である。図2および図3において、本実施形態の防災用車両1は、作業用照明装置5および第2架装電気機器43に対する架装物専用バッテリ19の電力供給を制御する架装物制御部50を備えている。架装物制御部50は、第2架装電気機器43への供給電流値を監視し、当該供給電流値が所定の供給閾値以上になった場合に、架装物専用バッテリ19から第2架装電気機器43への電力供給を停止して作業用照明装置5に優先的に電力供給するように構成されている。そのため、架装物制御部50には、各種センサからの情報が入力されるようになっている。具体的には、架装物制御部50は、入力監視用電流センサ23、出力監視用電流センサ24、供給監視用電流センサ25および油圧センサ26と電気的に接続されている。また、架装物制御部50は、バッテリ制御部27、架装メインスイッチ28およびイグニッションスイッチ29とも電気的に接続され、それらから情報を受け取るようになっている。油圧センサ26は、油圧作業装置60が作動中であることを検知するために設けられたセンサである。
【0036】
架装物制御部50は、入力された情報に基づいて、電力供給についての判断を行う。架装物制御部50は、バッテリ残量取得部51とエンジン回転設定部52と油圧作動判定部53とを有している。バッテリ残量取得部51は、バッテリ制御部27からの情報に基づいて、現在の架装物専用バッテリ19のバッテリ残量を取得する。また、油圧作動判定部53は、油圧センサ26からの情報に基づいて、油圧作業装置60が作動しているかどうかを判断する。また、エンジン回転設定部52は、各種センサから入力された情報に基づいて適切な走行用エンジン9のエンジン回転数を設定する。
【0037】
架装物制御部50は、電力供給についての判断を行った後、その判断に基づいて各部の制御を行うように構成されている。具体的には、架装物制御部50は、通電リレー21、切換リレー22、エンジン制御部としてのエンジンECU45、作業用照明装置5および第3DC-DCコンバータ34と電気的に接続されている。そして、それらを制御するように構成されている。架装物制御部50は、オルタネータ15の始動から所定の遅れ時間に達するまで、通電リレー21によって、オルタネータ15から架装物専用バッテリ19への電力供給を遮断するように構成されている。また、架装物制御部50は、架装物専用バッテリ19の供給電流値が供給閾値以上になった場合に、切換リレー22を作動させて補機用バッテリ18から第2架装電気機器43への電力供給に切換えるように構成されている。また、架装物制御部50は、バッテリ残量取得部51によって取得された架装物専用バッテリ19のバッテリ残量の減少に対応させて、エンジンECU45を介して走行用エンジン9のエンジン回転数を上昇制御するように構成されている。また、架装物制御部50は、バッテリ残量取得部51によって取得された架装物専用バッテリ19のバッテリ残量の増加に対応させて、エンジンECU45を介して走行用エンジン9のエンジン回転数を下降制御するように構成されている。
【0038】
図4は、本実施形態に係る防災用車両1の油圧作業装置60の油圧駆動のための構成を示す模式図である。図4において、油圧ポンプ17は、走行用エンジン9から動力取出装置12によって取り出された動力により駆動される。油圧作業装置60は、この油圧ポンプ17の動力により駆動されるようになっている。油圧作業装置60は、作動油タンク61と、油圧アクチュエータ62と、油圧アクチュエータ62の動作を制御するコントロールバルブ63とを有している。油圧ポンプ17、コントロールバルブ63、油圧アクチュエータ62および作動油タンク61は、油圧ラインによって作動油の循環流路が形成されるように接続されている。本実施形態では、油圧ポンプ17とコントロールバルブ63とをつなぐ油圧ライン上に油圧センサ26が介設されている。架装物制御部50は、油圧センサ26からの信号に基づいて油圧作業装置60が作動中であると判断した場合には、バッテリ残量の減少に対応させた走行用エンジン9のエンジン回転数の上昇制御を行わないように構成されている。
【0039】
次に、上記構成の防災用車両1について、作業用照明装置5および第2架装電気機器43への電力供給の制御について説明する。図5は、本実施形態に係る防災用車両1の充電・電力供給制御を説明するためのフロー図である。
【0040】
現場で停車中の防災用車両1において、隊員は、図3および図5に示すように、架装メインスイッチ28をONにする(ステップS01)。続いて、隊員は、イグニッションスイッチ29により走行用エンジン9を始動させる(ステップS02)。走行用エンジン9が始動されると、それに伴ってオルタネータ15も始動する。
【0041】
次に、ステップS03において、架装物制御部50は、架装メインスイッチ28がONになり、かつ、イグニッションスイッチ29がONになったことの信号が入力されたことに基づいて、所定の遅れ時間(数秒程度)が経過するまで、通電リレー21をOFFの状態に保つ。これにより、電力供給が不安定となるオルタネータ15の始動時に、オルタネータ15からの電力が架装物専用バッテリ19へ供給されないようにする。架装物制御部50は、遅れ時間が経過すれば、通電リレー21をONにして、オルタネータ15から架装物専用バッテリ19への電力供給を許容する。
【0042】
ステップS04において、架装物制御部50は、補機用バッテリ18における電流の入力と出力の収支について、入力が出力以上であるかどうかを判断する。この際、入力については、架装物制御部50は、入力監視用電流センサ23からの情報に基づいて判断する。また、出力については、架装物制御部50は、出力監視用電流センサ24からの情報に基づいて判断する。入力が出力以上であると架装物制御部50が判断した場合にはステップS05に進む。一方、入力が出力未満であると架装物制御部50が判断した場合にはステップS07に進む。
【0043】
ステップS05において、架装物制御部50は、第3DC-DCコンバータ34の出力をOFFにする。これにより、架装物専用バッテリ19から作業用照明装置5への電力供給は遮断される。一方、作業用照明装置5への電力供給は、図2に示す第1電力供給ライン71、第3電力供給ライン73、第5電力供給ライン75および第7電力供給ライン77を通じて補機用バッテリ18のみから行われる。補機用バッテリ18からの電力は、第1DC-DCコンバータ32および第2DC-DCコンバータ33によって電圧調整されて作業用照明装置5に供給される。ステップS05では、補機用バッテリ18の出力よりも入力の方が大きいことにより、補機用バッテリ18は、そのバッテリ残量が増えるように常時充電が行われる状態である。この際、切換リレー22はON状態となっており、第3電力供給ライン73、第5電力供給ライン75、第6電力供給ライン76を通じて第2架装電気機器43へも電力供給が行われている。第2架装電気機器43と作業用照明装置5への電力供給が、補機用バッテリ18によって十分に賄えている状態である。また、この際、オルタネータ15からの電力は、第1電力供給ライン71、第3電力供給ライン73、第4電力供給ライン74を通じて架装物専用バッテリ19に供給されて、架装物専用バッテリ19の充電が行われるようになっている。
【0044】
ステップS07において、架装物制御部50は、第3DC-DCコンバータ34の出力をONにする。これにより、架装物専用バッテリ19から第8電力供給ライン78および第5電力供給ライン75を通じて作業用照明装置5への電力供給が行われるようになる。ステップS07では、補機用バッテリ18の入力よりも出力の方が大きいことにより、補機用バッテリ18は常時充電が行われているにもかかわらず、そのバッテリ残量が減少していく状態である。そこで、架装物専用バッテリ19から作業用照明装置5への電力供給を行うことにより、補機用バッテリ18の負荷を減らす。これにより、補機用バッテリ18からの出力電流は減少し、補機用バッテリ18に対する入力と出力のバランスが適切な関係になるように調整することができる。
【0045】
次に、ステップS08において、架装物制御部50は、供給監視用電流センサ25によって第2架装電気機器43への供給電流を監視し、その供給電流値が供給閾値より小さいかどうかを判断する。供給閾値としては、例えば70Aが用いられる。供給電流値が供給閾値未満であればステップS09に進み、供給電流値が供給閾値以上であればステップS10に進む。
【0046】
ステップS09において、架装物制御部50は、切換リレー22をONにする。これにより、第6電力供給ライン76と第10電力供給ライン80とは遮断される一方、第9電力供給ライン79と第10電力供給ライン80とは接続される。補機用バッテリ18からの電力は、第1電力供給ライン71、第3電力供給ライン73、第5電力供給ライン75、第9電力供給ライン79および第10電力供給ライン80を通じて第2架装電気機器43へ供給される。また、架装物専用バッテリ19からの電力は、第8電力供給ライン78、第9電力供給ライン79および第10電力供給ライン80を通じて第2架装電気機器43へ供給される。また、補機用バッテリ18からの電力は、第1電力供給ライン71、第3電力供給ライン73および第5電力供給ライン75を通じて作業用照明装置5へ供給される。また、架装物専用バッテリ19からの電力は、第8電力供給ライン78および第5電力供給ライン75を通じて作業用照明装置5へ供給される。すなわち、ステップS09においては、補機用バッテリ18と架装物専用バッテリ19の両方から、第2架装電気機器43および作業用照明装置5へ電力供給が行われる。架装物制御部50によって切換リレー22がONになれば、ステップS11へ進む。
【0047】
ステップS10において、架装物制御部50は、切換リレー22をOFFにする。これにより、第6電力供給ライン76と第10電力供給ライン80とは接続される一方、第9電力供給ライン79と第10電力供給ライン80とは遮断される。ステップS10の場合は、第2架装電気機器43の消費電力が大きくなると生じる。この場合、架装物専用バッテリ19からの電力供給は、活動中の隊員の視界確保のために重要な作業用照明装置5のみ行われるようにする。一方で、第2架装電気機器43への電力供給は、補機用バッテリ18のみから行われるようにする。具体的には、補機用バッテリ18からの電力は、第1電力供給ライン71、第3電力供給ライン73、第5電力供給ライン75、第6電力供給ライン76および第10電力供給ライン80を通じて第2架装電気機器43へ供給される。また、架装物専用バッテリ19からの電力は、第8電力供給ライン78および第5電力供給ライン75を通じて作業用照明装置5へ供給される。架装物制御部50によって切換リレー22がOFFになれば、ステップS11へ進む。
【0048】
ステップS11において、架装物制御部50は、バッテリ残量取得部51で取得された架装物専用バッテリ19のバッテリ残量に基づいて、バッテリ残量が30%以上あるかどうかを判断する。この30%という値は一つの例であって、変更可能である。バッテリ残量が30%以上であればステップS07に戻り、バッテリ残量が30%未満であれば、ステップS12へ進む。
【0049】
ステップS12において、架装物制御部50は、油圧作動判定部53を使用し、油圧センサ26からの信号に基づいて、油圧作業装置60が作動中どうかを判断する。油圧作業装置60が作動中と判断した場合(S12でYES)には、架装物制御部50は、油圧作業装置60が作動停止するまで待機する。一方、油圧作業装置60が作動停止していると判断した場合には、ステップS13へ進む。
【0050】
ステップS13において、架装物制御部50は、エンジン回転設定部52によりエンジンECU45へエンジン回転数の上昇信号を送り、エンジン回転数を上昇させる。例えば、アイドリング状態から1200rpmまで上昇させる。エンジン回転数を上昇させることにより、オルタネータ15の単位時間あたりの発電量が増加する。すなわち、ステップS11~ステップS13によれば、架装物制御部50は、バッテリ残量取得部51によって取得された架装物専用バッテリ19のバッテリ残量の減少に対応させて、エンジンECU45を介して走行用エンジン9のエンジン回転数を上昇制御するようになっている。また、架装物制御部50は、油圧センサ26からの信号に基づいて油圧作業装置60が作動中であると判断した場合には、架装物専用バッテリ19のバッテリ残量の減少に対応させた走行用エンジン9のエンジン回転数の上昇制御を行わないようになっている。
【0051】
次に、ステップS14において、架装物制御部50は、第3DC-DCコンバータ34をOFFにする。これにより、架装物専用バッテリ19から作業用照明装置5への電力供給は遮断される。一方、作業用照明装置5への電力供給は、第1電力供給ライン71、第3電力供給ライン73、第5電力供給ライン75および第7電力供給ライン77を通じて補機用バッテリ18のみから行われる。補機用バッテリ18からの電力は、第1DC-DCコンバータ32および第2DC-DCコンバータ33によって電圧調整されて作業用照明装置5に供給される。ステップS14では、架装物専用バッテリ19のバッテリ残量が少なくなったことにより、架装物専用バッテリ19からの電力供給は行わないようにして架装物専用バッテリ19の充電を優先させるものである。ステップS13によってオルタネータ15の単位時間あたりの発電量が増加しているので、架装物専用バッテリ19は短時間で充電される。
【0052】
次に、ステップS15において、架装物制御部50は、バッテリ残量取得部51で取得された架装物専用バッテリ19のバッテリ残量に基づいて、バッテリ残量が80%以上あるかどうかを判断する。この80%という値は一つの例であって、変更可能である。バッテリ残量が80%未満と判断されればステップS13に戻り、バッテリ残量が80%以上と判断されれば、ステップS16へ進む。
【0053】
ステップS16において、架装物制御部50は、架装物専用バッテリ19のバッテリ残量が十分になったことから、エンジン回転設定部52によりエンジンECU45へエンジン回転数の降下信号を送り、エンジン回転数を降下させる。例えば、1200rpmからアイドリング状態まで降下させる。これにより、一時的に増加していたオルタネータ15の単位時間あたりの発電量が通常に戻る。常時エンジン回転数を上昇させていれば騒音が大きくなったり走行用エンジン9の燃費が悪くなったりするので、架装物専用バッテリ19を短時間で充電させたい場合のみエンジン回転数を上昇させるようにしている。架装物制御部50が架装物専用バッテリ19のエンジン回転数を降下させると、ステップS04に戻る。
【0054】
ステップS04において、補機用バッテリ18における電流の入力と出力の収支について、入力が出力以上であると判断され、ステップS05において、第3DC-DCコンバータ34の出力がOFFにされると、ステップS06に進む。ステップS06において、架装物制御部50は、作業用照明装置5の電源がOFFであり、かつ、第2架装電気機器43の電源がOFFであるかどうかを判断する。作業用照明装置5の電源スイッチと第2架装電気機器43の電源スイッチは、架装メインスイッチ28に統合されていてもよいし、架装メインスイッチ28とは別に設けられていてもよい。架装物制御部50は、作業用照明装置5の電源と第2架装電気機器43の電源のうちいずれか1つ以上がONであると判断した場合には、ステップS04に戻る。一方、架装物制御部50は、作業用照明装置5の電源がOFFであり、かつ、第2架装電気機器43の電源がOFFであると判断すれば、電力供給の制御は終了する。
【0055】
以上のとおり、本実施形態に係る防災用車両1によれば、走行用エンジン9と、走行用エンジン9の動力によって駆動されるシャシ付属のオルタネータ15と、オルタネータ15または外部電源によって充電される架装物専用バッテリ19と、架装物専用バッテリ19の電力により作動する作業用照明装置5と、架装物専用バッテリ19の電力により作動する第2架装電気機器43と、作業用照明装置5および第2架装電気機器43に対する架装物専用バッテリ19の電力供給を制御する架装物制御部50と、を備え、架装物制御部50は、第2架装電気機器43への供給電流値を監視し、当該供給電流値が所定の供給閾値以上になった場合に、架装物専用バッテリ19から第2架装電気機器43への電力供給を停止して作業用照明装置5に優先的に電力供給するように構成されている。
【0056】
上記構成によれば、作業用照明装置5および第2架装電気機器43について、シャシメーカーによって設けられたシャシ付属の補機用バッテリ18からの電力ではなく、新たに設けられた架装物専用バッテリ19からの電力によって作動できるようになる。補機用バッテリ18のバッテリ残量不足により電力が走行関連機器に供給できなくなるおそれもなく、作業用照明装置5や第2架装電気機器43に対し安定して電力供給を行うことができる。また、架装物制御部50が、第2架装電気機器43への供給電流値が所定の供給閾値以上になった場合に、架装物専用バッテリ19から第2架装電気機器43への電力供給を停止して作業用照明装置5に優先的に電力供給するように構成したことにより、活動中の隊員の視界確保のために重要な作業用照明装置5が活動途中に電力不足によって消灯してしまうことを確実に抑制できる。これにより、電力供給を適切に行うことが可能な防災用車両1にできる。
【0057】
また、本実施形態において、架装物専用バッテリ19には、リチウムイオンバッテリが採用されている。リチウムイオンバッテリは、補機用バッテリ18に使用される鉛バッテリと比較して、軽量かつコンパクトで大容量なので、架装物専用バッテリ19の取付スペースを小さくして積載資機材を収納するためのスペースと積載重量を確保しつつ、架装電気機器全体で消費電力が大きい場合に対応することができる。
【0058】
また、本実施形態において、オルタネータ15と架装物専用バッテリ19とは、第1電力供給ライン71、第3電力供給ライン73および第4電力供給ライン74により接続され、第3電力供給ライン73には、通電リレー21が介設され、架装物制御部50は、オルタネータ15の始動から所定の遅れ時間に達するまで、通電リレー21によって、オルタネータ15から架装物専用バッテリ19への電力供給を遮断するように構成されている。この構成によれば、電力供給が不安定となるオルタネータ15の始動時には、オルタネータ15からの電力が架装物専用バッテリ19へ供給されないようにできるので、架装物専用バッテリ19が異常な電圧や電流の入力によって故障することを防ぐことができる。
できる。
【0059】
また、本実施形態では、オルタネータ15によって充電される補機用バッテリ18と、補機用バッテリ18から第2架装電気機器43への電力供給または架装物専用バッテリ19から第2架装電気機器43への電力供給に切り換える切換リレー22と、を備え、架装物制御部50は、第2架装電気機器43への供給電流値が供給閾値以上になった場合に、切換リレー22を作動させて補機用バッテリ18から第2架装電気機器43への電力供給に切換えるように構成されている。この構成によれば、第2架装電気機器43への供給電流値が所定の供給閾値以上になった場合に、架装物専用バッテリ19から第2架装電気機器43への電力供給は停止されるが、第2架装電気機器43には補機用バッテリ18から電力供給が行われるようになる。これにより、架装物専用バッテリ19と補機用バッテリ18の2種類のバッテリを使用して、作業用照明装置5と第2架装電気機器43の両方に電力供給を行うことができる。また、活動中の隊員の視界確保のために重要な作業用照明装置5は、補機用バッテリ18よりも大容量の架装物専用バッテリ19から電力供給を行うことになる。そのため、電力供給をより適切に行うことができる。
【0060】
また、本実施形態では、架装物制御部50は、架装物専用バッテリ19のバッテリ残量を取得するバッテリ残量取得部51を有するとともに、走行用エンジン9のエンジンECU45と接続されており、バッテリ残量取得部51によって取得されたバッテリ残量の減少に対応させて、エンジンECU45を介して走行用エンジン9の回転数を上昇制御するように構成されている。この構成によれば、架装物専用バッテリ19のバッテリ残量が少なくなった場合、走行用エンジン9のエンジン回転数を上昇させてオルタネータ15の単位時間あたりの発電量を増加させることにより、架装物専用バッテリ19のバッテリ残量を短時間で十分な量に回復させることができる。
【0061】
また、本実施形態では、走行用エンジン9から取り出された動力により駆動される油圧ポンプ17と、油圧ポンプ17の動力により駆動される油圧作業装置60と、油圧作業装置60が作動中であることを検知するための油圧センサ26と、を備え、架装物制御部50は、油圧センサ26からの信号に基づいて架装物制御部50が作動中であると判断した場合には、架装物専用バッテリ19のバッテリ残量の減少に対応させた走行用エンジン9のエンジン回転数の上昇制御を行わないように構成されている。この構成によれば、油圧作業装置60が作動中に急にエンジン回転数が上昇することによって油圧ポンプ17の作動油吐出流量が変化し、油圧作業装置60の動作が不安定になる、ということを防ぐことができ、安全である。
【0062】
なお、本実施形態として作業用車両を防災用車両1で説明しているが、作業用車両は作業用照明装置およびその他の架装電気機器を搭載した車両であればよく、特に本実施態様に限定するものではない。
【0063】
今回、開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。本発明の技術的範囲は、前記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1 防災用車両
5 作業用照明装置
9 走行用エンジン
15 オルタネータ
17 油圧ポンプ
18 補機用バッテリ
19 架装物専用バッテリ
21 通電リレー
22 切換リレー
25 供給監視用電流センサ
26 油圧センサ
43 第2架装電気機器
45 エンジンECU(エンジン制御部)
50 架装物制御部
60 油圧作業装置
71 第1電力供給ライン
73 第3電力供給ライン
74 第4電力供給ライン
図1
図2
図3
図4
図5