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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124478
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】実負荷特性推定方法及びその装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20230830BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20230830BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/38 130
H02J13/00 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028262
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000222037
【氏名又は名称】東北電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】坂内 容子
(72)【発明者】
【氏名】村上 好樹
(72)【発明者】
【氏名】塚田 徹
(72)【発明者】
【氏名】樺澤 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】英 洋平
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AC09
5G064CB08
5G064DA01
5G066AA09
5G066HB06
(57)【要約】
【課題】推定結果の誤差原因となる異常値を効率よく判定し、異常値を除去することにより、優れた精度で実負荷特性を推定することが可能な実負荷特性推定方法及びその装置を提供する。
【解決手段】欠測データ及び予め想定された範囲を逸脱したデータの影響を受けた異常値がPQ平面にプロットしたデータ点に含まれる場合に、予め設定された閾値又は系統状態に基づいたエラーフラグを用いることにより異常値判定を行うステップ(S04,S06,S10,S12)と、データ点から異常値を除いて実負荷特性を推定するステップ(S08,S11)と、をコンピュータが実行する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電が連系した配電系統の任意区間の潮流計測値に基づくデータ点を、有効電力Pと無効電力Qを座標軸とするPQ平面にプロットして、プロットした前記データ点から前記任意区間における実負荷特性を推定する方法であって、
欠測データ及び予め想定された範囲を逸脱したデータの影響を受けた異常値が前記データ点に含まれている場合に、予め設定された閾値又は系統状態に基づいたエラーフラグを用いることにより異常値判定を行うステップと、
前記データ点から前記異常値を除去して前記実負荷特性を推定するステップと、
をコンピュータが実行する実負荷特性推定方法。
【請求項2】
前記異常値判定を行うステップでは、少なくとも、
前記潮流計測値の有効電力Pが負荷連系量を超過しているか否かを確認して、前記潮流計測値の有効電力Pが負荷連系量を超過していれば異常値判定とする超過判定ステップ、
前記潮流計測値の有効電力P及び無効電力Qが共にゼロかどうかを確認して、前記潮流計測値の有効電力P及び無効電力Qが共にゼロであれば異常値判定とする欠測判定ステップ、
太陽光発電が稼働しない夜間時間帯での前記潮流計測値の有効電力Pの正負を確認して、当該夜間時間帯での前記潮流計測値の有効電力Pが負であれば異常値判定とする時間帯判定ステップ、
系統切替の有無を確認して、系統切替ありの場合には異常値判定とする切替判定ステップ、
のいずれかをコンピュータが実行する請求項1に記載の実負荷特性推定方法。
【請求項3】
前記実負荷特性を推定するステップでは、
推定結果の一次式の傾きである推定負荷力率を推定するステップと、
前記推定負荷力率が負の値または無限大であるか否かを確認して、前記推定負荷力率が負の値または無限大であった場合、当該推定負荷力率を異常値判定とするステップと、
異常値と判定された前記推定負荷力率を、1もしくは1に近い値に置き換えるステップと、
をコンピュータが実行する請求項1に記載の実負荷特性推定方法。
【請求項4】
置き換えた負荷力率を1に近い値とするときの範囲は、0.4以上1未満である請求項3に記載の実負荷特性推定方法。
【請求項5】
前記実負荷特性を推定するステップでは、
太陽光発電が稼働する日中時間帯及び太陽光発電が稼働しない夜間時間帯の実負荷推定値を求めるステップと、
前記夜間時間帯における実負荷推定値と前記潮流計測値との比較から当該実負荷推定値の補正量を算出するステップと、
前記日中時間帯の実負荷推定値及び推定した前記実負荷特性の少なくとも一方を、算出した前記補正量を用いて補正するステップと、
をコンピュータが実行する請求項1~4のいずれかに記載の実負荷特性推定方法。
【請求項6】
太陽光発電が連系した配電系統の任意区間の潮流計測値に基づくデータ点を、有効電力Pと無効電力Qを座標軸とするPQ平面にプロットして、プロットした前記データ点から前記任意区間における実負荷特性を推定する装置であって、
欠測データ及び予め想定された範囲を逸脱したデータの影響を受けた異常値が前記データ点に含まれる場合に、予め設定された閾値又は系統状態に基づいたエラーフラグを用いることにより異常値判定を行う判定部と、
前記データ点から前記異常値を除去して前記実負荷特性を推定する推定部と、
を備えた実負荷特性推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電装置が連系された配電系統における実負荷特性を推定する方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
メガソーラなどの太陽光発電装置が連系された配電系統では、配電線事故が発生すると、安全確保のために事故区間の太陽光発電装置を停止する。停止した太陽光発電装置は自動復旧しない。従って、配電線事故復旧時に健全区間から電力供給をする場合には、事故区間内の太陽光発電装置の出力を考慮して区間負荷を推定し、融通や系統切り替えを行う必要がある。
【0003】
しかし、実際に取得可能な物理量は、事故区間上流の開閉器で測定する潮流計測値のみであり、通常、太陽光発電装置の出力は不明である。そのため、取得した潮流計測値を、太陽光発電装置の出力と負荷とに分離した上で、太陽光発電装置の出力を推定しなくてはならない。
【0004】
潮流計測値から太陽光発電装置の出力を推定する際に、配電系統における実負荷特性が必要となる場合が多い。特に、負荷力率の想定値は、太陽光発電装置の出力推定精度を大きく左右する要因となっている。そこで従来より、潮流計測値のみから負荷力率を推定する技術が種々提案されている。
【0005】
既存の負荷力率推定手法としては、潮流計測値のPQ平面(有効電力Pと無効電力Qを座標軸とする平面)にプロットされたデータ点のうち、有効電力Pの最大値と無効電力Qの最小値を与える2点を結んだ直線から負荷特性を求めて推定する手法が存在する。この手法で抽出されるのは夜間の実負荷であり、日中と夜間では負荷の稼動状態は大きく違うと想定される。そのため、実際に求めたい負荷力率からは誤差があると考えられる。
【0006】
また、潮流計測値から快晴時の太陽光発電装置の出力を差し引いて負荷仮定値を算出し、負荷仮定値から負荷力率を推定する手法も提案されている。この手法では、PQ平面にプロットした負荷仮定値から、夜間と快晴時の負荷仮定値が含まれるクラスタを抽出してその傾きを求める。そのため、日中を含む負荷力率を推定することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
特許第6896601号
特開2021-35076公報
【非特許文献】
【0008】
平成30年電気学会全国大会「メガソーラが連系された配電系統における実負荷の力率推定手法」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
既存の実負荷特性推定手法を実系統へ適用した場合、推定結果に誤差が発生することがある。これは、欠測データや、予め想定された範囲を逸脱したデータの影響を受けて異常値が発生し、これらの異常値がPQ平面にプロットしたデータ点の中に混在するためと考えられる。つまり、異常値が推定結果の誤差原因となっていた。そのため、測定したデータの中から、誤差原因となる異常値を取り除いて、配電系統における実負荷特性の推定精度を高めることを課題となっている。
【0010】
本発明では、太陽光発電装置が連系された配電系統における実負荷特性を推定する手法において、推定結果の誤差原因となる異常値を効率よく判定し、異常値を除去することにより、優れた精度で実負荷特性を推定することが可能な実負荷特性推定方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するために、本発明は、太陽光発電が連系した配電系統の任意区間の潮流計測値に基づくデータ点を、有効電力Pと無効電力Qを座標軸とするPQ平面にプロットして、プロットした前記データ点から前記任意区間における実負荷特性を推定する方法であって、下記のステップをコンピュータが実行する。
(1)欠測データ及び予め想定された範囲を逸脱したデータの影響を受けた異常値が前記データ点に含まれる場合に、予め設定された閾値又は系統状態に基づいたエラーフラグを用いることにより異常値判定を行うステップ。
(2)前記データ点から前記異常値を除去して前記実負荷特性を推定するステップ。
また、本発明は、上記ステップを実行する構成要素を備えた実負荷特性推定装置としても捉えることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、PQ平面にプロットしたデータ点に対して異常値判定を行い、潮流計測値に含まれる異常値を効率強く除去してから実負荷特性推定を行うことにより、実負荷特性の推定精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態の概要を示すブロック図
図2】第1の実施形態のフローチャート
図3】潮流計測値のPQ平面上のプロット点の個数密度を示す図
図4】潮流計測値のPQ平面上のデータ数の等高線を示す図(推定負荷力率の置き換え前)
図5】潮流計測値のPQ平面上のデータ数の等高線を示す図(推定負荷力率の置き換え後)
図6】第2の実施形態の概要を示すブロック図
図7】第2の実施形態のフローチャート
図8】第3の実施形態の概要を示すブロック図
図9】第3の実施形態を説明するためのグラフ
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について、図1図5を参照して具体的に説明する。第1の実施形態は、各ステップをコンピュータが実行することで、太陽光発電装置、例えばメガソーラが連系された配電系統の任意区間における実負荷特性を、潮流計測値のみから推定する方法である。第1の実施形態は、各ステップを実行する構成要素を備えた実負荷特性推定装置としても捉えることができる。また、実施形態の態様としては、実負荷特性の推定方法及びその装置に加えて、各ステップをコンピュータに実行させる実負荷特性推定プログラムや、当該プログラムを記録した記録媒体として捉えることも可能である。
【0015】
(構成)
図1は、第1の実施形態の概要を示すブロック図である。実負荷特性推定装置10は、メガソーラ9が連系した配電系統の任意区間に設置されている。実負荷特性推定装置10は、配電系統の任意区間における潮流計測値に基づいたデータ点を、有効電力Pと無効電力Qを座標軸とするPQ平面にプロットし、プロットしたデータ点から、任意区間における実負荷特性を推定する装置である。
【0016】
図1に示すように、第1の実施形態に係る実負荷特性推定装置10には、潮流計測値取得部1と、データベース2と、判定部31~34と、推定部4と、が設けられている。潮流計測値取得部1は、任意区間の潮流計測値を取得する。潮流計測値取得部1は、例えば、開閉器や配電線センサーなどからなる。データベース2は、潮流計測値取得部1が取得したデータや、判定部31~34が異常値を判定するための閾値のデータ等を格納する。
【0017】
PQ平面にプロットしたデータ点に異常値が存在する場合がある。ここで、異常値とは、欠測データや予め想定された範囲を逸脱したデータの影響を受けたデータ点である。実負荷特性推定装置10では、このような異常値がPQ平面上のデータ点に含まれていることを、判定部31~34が判定する。判定部31~34は、予め設定された閾値又は系統状態に基づいたエラーフラグを用いることによって、異常値判定を行うように構成されている。第1の実施形態には、判定部31~34として、超過判定部31、欠測判定部32、時間帯判定部33、切替判定部34が設けられている。
【0018】
超過判定部31は、潮流計測値の有効電力Pが負荷連系量を超過しているか否かを確認し、潮流計測値の有効電力Pが負荷連系量を超過していれば、当該潮流計測値を異常値判定とする。欠測判定部32は、潮流計測値の有効電力P及び無効電力Qが共にゼロかどうかを確認し、潮流計測値の有効電力P及び無効電力Qが共にゼロであれば、当該潮流計測値を異常値判定とする。
【0019】
時間帯判定部33は、メガソーラ9が稼働を停止する時間帯つまり夜間時間帯での潮流計測値の有効電力Pの正負を確認し、夜間時間帯での前記潮流計測値の有効電力Pが負であれば、当該潮流計測値を異常値判定とする。これは、夜間時間帯での潮流計測値の有効電力Pは、メガソーラ9が稼働停止中であることから、正常であれば、正となるからである。
【0020】
第1の実施形態に係る実負荷特性推定装置10においては、系統切替を行った場合、系統切替ありのフラグが立つように設定されている。例えば、系統切替により無効電力Qが変動するので、Q切片の変動を判定することで、系統切替の有無を検知することが可能である。切替判定部34は、前記フラグに基づいて系統切替の有無を確認するようになっている。そして切替判定部34は、系統切替ありのフラグを持つ潮流計測値に対して異常値判定を下す。つまり、系統切替の有無を示すフラグが、切替判定部34が異常値判定に用いる「系統状態に基づいたエラーフラグ」となる。
【0021】
以上のように判定部31~34が異常値判定を行った潮流計測値のデータ点が異常値となる。推定部4は、PQ平面上のデータ点から、判定部31~34が異常値判定を行った異常値を除去し、残ったデータ点に基づいて実負荷特性を推定するように構成されている。
【0022】
(作用)
図2は、潮流計測値の異常値判定のフローチャートの一例である。図2に示すように、潮流計測値取得部1が任意区間の潮流計測値を取得する(ステップS01)。ステップS01にて取得される潮流計測値には、有効電力P、無効電力Q、任意区間に付随する区間情報、データ取得時の日時データなどが含まれる。これらの潮流計測値は、事故区間上流に設置された開閉器や配電線センサーなどによって測定される。
【0023】
ステップS02では、超過判定部31が、潮流計測値の有効電力Pが負荷連系量以内であるかを超過しているか否かを確認し、負荷連系量以内であれば(ステップS02のYes)、次のステップS03へと移行する。一方、負荷連系量を超過していれば(ステップS02のNo)、超過判定部31は確認対象となった潮流計測値は異常値であると判定する(ステップS04)。
【0024】
ステップS03では、欠測判定部32が、潮流計測値の有効電力Pと無効電力Qがともに0かどうかを確認する。有効電力Pと無効電力Qがともに0ではない、つまり有効電力Pと無効電力Qのいずれか一方もしくは両方が0以外である場合には(ステップS03のNo)、次のステップS05に進む。一方、潮流計測値の有効電力Pと無効電力Qがともに0である場合は(ステップS03のYes)、確認対象となった潮流計測値は欠測データであるとして、欠測判定部32は異常値判定を行う(ステップS06)。
【0025】
メガソーラ9が連系された系統では、メガソーラ9が稼働可能な時間帯によって、有効電力Pと無効電力Qの異常値判定の閾値が異なる。ステップS05では、時間帯判定部33が潮流計測値を取得した時間帯が、メガソーラ9が稼働しない夜間時間帯なのか、メガソーラ9が稼働する日中時間帯なのかを判定する。夜間時間帯の場合には(ステップS05のYes)、次のステップS07へ移行し、日中時間帯の場合には(ステップS05のNo)、そのまま実負荷特性推定ステップへ移行する(ステップS08)。
【0026】
夜間時間帯の潮流計測値の有効電力Pは、メガソーラ9が連系された系統では、正の値を取るはずなので、時間帯判定部33は夜間時間帯の有効電力Pの正負を確認する(ステップS07)。ステップS07において、夜間時間帯の有効電力Pが正の場合には(ステップS07のYes)、次のステップS09へと進む。また、正であるはずの夜間時間帯の有効電力Pが負の場合には(ステップS07のNo)、時間帯判定部33は確認対象となった潮流計測値を異常値判定とする(ステップS10)。
【0027】
ステップS09では、切替判定部34が系統切替の有無を確認する。系統切替なしの場合には(ステップS09のNo)、そのまま実負荷特性推定ステップへと移行する(ステップS11)。系統切替ありの場合には(ステップS09のYes)、確認対象となった潮流計測値を異常値判定とする(ステップS12)。
【0028】
上記のようにして判定部31~34は異常値判定を行い(ステップS04,S06,S10,S12)、推定部4は、PQ平面上のデータ点から判定部31~34が判定した異常値を除去してから、任意区間における実負荷特性を推定する(ステップS08,S11)。
【0029】
(効果)
第1の実施形態では、欠測データ及び予め想定された範囲を逸脱したデータの影響を受けた異常値がPQ平面にプロットしたデータ点に含まれている場合に、予め設定された閾値又は系統状態に基づいたエラーフラグを用いることにより異常値判定を行うステップと、データ点から異常値を除去して実負荷特性を推定するステップと、をコンピュータが実行する。第1の実施形態における異常値判定を行うステップには、超過判定ステップ(S04)と、欠測判定ステップ(S06)と、時間帯判定ステップ(S10)と、切替判定ステップ(S12)とが含まれている。
【0030】
そのため、第1の実施形態では、異常値判定を行う各ステップ(S04,S06,S10,S12)により、推定結果の誤差原因となる異常値の種類が多くとも、多岐にわたって異常値を判定することができる。そして、推定部4による実負荷特性推定ステップ(S08,S11)において、潮流計測値に含まれる異常値を効率良く除外することができ、推定誤差を軽減して、実負荷特性推定を高い精度で行うことが可能となる。
【0031】
上記の効果について図3図5を用いて具体的に説明する。図3は潮流計測値のPQ平面上のプロット点の個数密度を示す図、図4は潮流計測値のPQ平面上のデータ数の等高線を示す図(第1の実施形態による修正前)、図7は潮流計測値のPQ平面上のデータ数の等高線を示す図(第1の実施形態による修正後)である。
【0032】
図3に示した例では、潮流計測値のデータ点の中に異常値の集まりとして、想定していない個数密度のピークが発生したことを表している(図3中の円内部分)。この場合、潮流計測値のデータ点の中に異常値が混在したまま、推定部4が推定負荷力率を推定すると、図4中の点線にて示すように、推定負荷力率は負の値(右肩下がり)となってしまい、負荷力率の推定精度が低下する懸念がある。
【0033】
そこで第1の実施形態によって潮流計測値に含まれる異常値を除外することで、図5中の点線にて示すように、推定負荷力率は正の値(右肩上がり)となる。このように、第1の実施形態における推定部4においては、推定誤差が軽減して、実負荷特性推定を高い精度で行うことが可能となる。
【0034】
以上述べたように、第1の実施形態によれば、実系統へ適用した場合であっても、潮流計測値のみから実負荷特性を高い精度で推定することが可能となる。これにより第1の実施形態では、推定誤差の軽減化を図ることができ、実負荷特性の推定精度向上に寄与することができる。これにより第1の実施形態においては、潮流計測値のみにて事故区間内のメガソーラの出力推定が可能となり、配電線事故復旧時の電力供給に際して融通や系統切替を、より安定して行うことができる。
【0035】
(第2の実施形態)
(構成と作用)
第2の実施形態について、図6図7を参照して具体的に説明する。第2の実施形態の基本的な構成は上記第1の実施形態と同様である。そのため、同一の構成要素に関しては同一符号を付して説明は省略する。図6は第2の実施形態の概要を示すブロック図、図7は第2の実施形態のフローチャートである。
【0036】
第2の実施形態における実負荷特性の推定部4では、推定結果の一次式の傾きである負荷力率を推定するようになっている。ここでは、推定部4が推定した負荷力率を推定負荷力率と呼ぶものとする。また、図6に示すように、第2の実施形態に係る推定部4には、推定負荷力率判定部5と、推定負荷力率置き換え部6とが、設けられている。
【0037】
推定負荷力率判定部5は、推定部4が推定した推定負荷力率に対して、負の値または無限大であるか否かを確認する。推定負荷力率判定部5は、推定負荷力率が負の値または無限大である場合、当該推定負荷力率を異常値判定とする。推定負荷力率判定部5が推定負荷力率に対し異常値判定を行った場合、推定負荷力率置き換え部6は、負の値または無限大であった推定負荷力率を、1もしくは1に近い値に置き換えるように構成されている。置き換えた負荷力率を1に近い値とするときの範囲は、0.4以上1未満が好適であり、基本的に、1を目標値とする値、つまり1に近ければ近いほうが望ましい。
【0038】
第2の実施形態では、図7のフローチャートに示すように、ステップS13にて推定部4が負荷力率を推定した後、ステップS14に移行する。ステップS14では、推定負荷力率判定部5が、推定部4の推定した推定負荷力率が負の値または無限大であるか否かを確認する(ステップS14)。
【0039】
推定負荷力率判定部5が推定負荷力率は負の値または無限大であるとした場合(ステップ14のYes)、推定負荷力率置き換え部6が当該推定負荷力率を1もしくは1に近い値に置き換える(ステップS15)。推定負荷力率判定部5が推定負荷力率は負の値及び無限大ではないとした場合には(ステップ14のNo)、次のステップS16へと移行し、推定部4の推定した推定負荷力率の置き換えを行うことなく、推定負荷力率を確定させる。
【0040】
(効果)
第2の実施形態では、推定部4の推定した推定負荷力率が負の値または無限大であるか否かを判定するステップ(ステップ14)と、推定負荷力率が負の値または無限大であった場合、当該推定負荷力率を1もしくは1に近い値に置き換えるステップ(ステップS15)と、をコンピュータが実行する。そのため、第2の実施形態では、推定負荷力率が負の値や∞(無限大)などの異常値となったとしても、負荷力率の最大値である1、もしくは1に近い値に置き換えるので、異常値である負の値や∞(無限大)などを、そのまま推定負荷力率として用いることを回避できる。
【0041】
従って、負荷力率の推定精度が低下する懸念を払拭することができ、実負荷特性推定結果の誤差を改善することが可能である。しかも第2の実施形態では、異常値となった推定負荷力率の負の値などを、予め設定された負荷力率1、もしくは負荷力率を1に近い値に置き換えるだけなので、異常値を補正するための計算などが不要である。そのため、異常値の除去を迅速に行うことができ、適切な推定負荷力率を所望のタイミングで得ることが可能である。
【0042】
(第3の実施形態)
(構成と作用)
第3の実施形態について、図8図9を参照して具体的に説明する。第3の実施形態の基本的な構成は上記第1の実施形態と同様である。そのため、同一の構成要素に関しては同一符号を付して説明は省略する。図8は第3の実施形態の概要を示すブロック図、図9は第3の実施形態を説明するためのグラフである。
【0043】
第3の実施形態における実負荷特性の推定部4では、日中時間帯及び夜間時間帯の実負荷推定値を求めるようになっている。また、図8に示すように、第3の実施形態に係る実負荷特性推定装置12の推定部4には、補正量算出部7と、補正部8とが設けられている。補正量算出部7は、夜間時間帯における実負荷推定値と潮流計測値との比較から当該実負荷推定値の補正量を算出する(補正量算出ステップ)。また、補正部8は、補正量算出部7の算出した補正量を用いて、日中時間帯の実負荷推定値及び推定部4が推定した実負荷特性の少なくとも一方を補正する(補正ステップ)。
【0044】
図9には、実負荷推定値と潮流計測値の関係を示す。夜間の潮流計測値は、太陽光発電が連系している系統では、実負荷と等しくなる。そこで、図9のグラフに示すように、夜間の実負荷推定点と夜間の潮流計測点の差分ΔPΔQを算出することができる。つまり、補正量算出部7は、夜間時間帯における実負荷推定値と潮流計測値とを比較して、比較結果から実負荷推定値の補正量ΔPΔQを算出する。そして、補正部8は、実負荷推定値の補正量ΔPΔQを用いて日中時間帯の実負荷推定値を補正する。
【0045】
また、補正部8は、この補正量ΔPΔQを用いて、推定部4が推定した実負荷特性の補正も可能である。この点について図9を用いて説明する。図9において、誤った実負荷推定値を与える実負荷特性(一次式F01)と、夜間の潮流計測値から求めた正しい実負荷特性(一次式F02)とを比較する。ここで、補正量ΔPΔQと、F01、F02とQ軸との交点Q1、Q2、計測潮流の力率角Θ、実負荷の力率角φの関係は以下の式で表現でき、ここから補正部8は実負荷特性であるφを補正することが可能である。
【0046】
ΔP=(Q-Q)×1/tanθ+tanφ
ΔQ=(Q-Q)×tanφ/tanθ+tanφ
【0047】
(効果)
第3の実施形態では、夜間時間帯における実負荷推定値と潮流計測値との比較から実負荷推定値の補正量を算出するステップと、日中時間帯の実負荷推定値及び推定した実負荷特性の少なくとも一方を、算出した補正量を用いて補正するステップと、をコンピュータが実行する。このような第3の実施形態では、実負荷推定値の補正量を用いて、日中時間帯の実負荷推定値及び推定した実負荷特性の少なくとも一方を補正することができるので、実負荷特性の推定精度をより向上させることが可能である。
【0048】
(他の実施形態)
本発明のいくつかの複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0049】
例えば、第1の実施形態では、異常値判定を行うステップとして、超過判定ステップ(S04)と、欠測判定ステップ(S06)と、時間帯判定ステップ(S10)と、切替判定ステップ(S12)とを順次行っているが、この順番に限られるものではなく、異常値判定を行うステップの中での順番は適宜変更可能である。また、第1の実施形態における欠測判定部32は、潮流計測値の有効電力P及び無効電力Qが共にゼロであれば異常値判定としているが、欠測データの解析手法などは適宜採用可能である。
【0050】
配電系統の実負荷特性は一日を通して一定なわけではなく、曜日や天候、季節等によって変化すると想定される。また、系統によっては時間帯で特殊な動きをする負荷により、ある時間帯のみ実負荷特性が極端に変化する場合が想定される。上記の実施形態に示した手法は、データ点が極端に少なくなければ実施可能であるので、数ヶ月、1ヶ月、1週間、1日などのさまざまな時間単位での実負荷特性の推定が可能である。そこで、実負荷特の推定期間の時間単位を変更するステップを、コンピュータが実行するようにしてもよい。
【0051】
また、データ点をPQ平面にプロットする場合、任意の時間帯のデータ点をプロットするようにして、その時間帯の実負荷特性を求めるといった使用方法も可能である。これらの実施形態によれば、目的に応じた期間についての負荷力率推定を実施することができる。例えば、PM3:00~PM4:00という時間帯に絞って潮流計測値を半年間集め、この時間帯の実負荷特性を推定することも可能である。
【0052】
さらに、第2の実施形態の推定負荷力率判定部5と、第3の実施形態における補正量算出部7と補正部8とを、推定部4に備えた実施形態も考えられる。この実施形態では、推定負荷力率判定部5が、推定部4が推定した推定負荷力率が異常値であると判定したとき、補正量算出部7の算出した補正量を用いて、補正部8が推定部4の推定負荷力率を補正することができる。従って、この実施形態によれば、推定負荷力率を1もしくは1に近い値に置き換えずに、適切な補正量に基づいた負荷力率の推定が可能である。これにより、誤差原因の更なる軽減化を図ることができ、実負荷特性の推定精度の向上により寄与することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 潮流計測値取得部
2 データベース
31 超過判定部
32 欠測判定部
33 時間帯判定部
34 切替判定部
4 推定部
5 推定負荷力率判定部
6 推定負荷力率置き換え部
7 補正量算出部
8 補正部
9 メガソーラ
10,11,12 実負荷特性推定装置
図1
図2
図3
図4
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図8
図9