(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012448
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】負荷変調プッシュプル電力増幅器
(51)【国際特許分類】
H03F 1/02 20060101AFI20230118BHJP
H03F 3/26 20060101ALI20230118BHJP
H03F 3/24 20060101ALI20230118BHJP
H03F 1/32 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
H03F1/02
H03F3/26
H03F3/24
H03F1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022111480
(22)【出願日】2022-07-12
(31)【優先権主張番号】63/221085
(32)【優先日】2021-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503031330
【氏名又は名称】スカイワークス ソリューションズ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SKYWORKS SOLUTIONS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】レフトラ、 フィリップ ジョン
(72)【発明者】
【氏名】パン、 ボ
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA15
5J500AA41
5J500AC22
5J500AC36
5J500AF12
5J500AF15
5J500AH06
5J500AH10
5J500AH12
5J500AH18
5J500AH24
5J500AH26
5J500AH29
5J500AH35
5J500AH39
5J500AK53
5J500AM08
5J500AM17
5J500AM20
5J500AS14
5J500AT01
5J500AT05
5J500LV06
5J500LV07
5J500LV08
5J500MU00
5J500MU06
5J500NG01
5J500NH14
5J500NH15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】AMAM性能及び/又は効率を改善するプッシュプル電力増幅器を提供する。
【解決手段】電力増幅器400は、入力信号を受信する入力部202と、増幅出力信号を与える出力部214と、当該入力部と当該出力部との間に結合されるバラン210と、当該バランに結合される少なくとも一つのキャパシタ212と、当該少なくとも一つのキャパシタに結合されて、当該少なくとも一つのキャパシタとともに、可変インピーダンスを当該バランに提示する負荷変調器402と、を含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力増幅器であって、
入力信号を受信する入力部と、
増幅出力信号を与える出力部と、
前記入力部と前記出力部との間に結合されるバランと、
前記バランに結合される少なくとも一つのキャパシタと、
前記少なくとも一つのキャパシタに結合される制御可能負荷と
を含み、
前記制御可能負荷は、前記少なくとも一つのキャパシタとともに、可変インピーダンスを前記バランに提示するように構成される、電力増幅器。
【請求項2】
前記制御可能負荷はスイッチを含む、請求項1の電力増幅器。
【請求項3】
前記スイッチはヘテロ接合バイポーラトランジスタを含む、請求項2の電力増幅器。
【請求項4】
前記入力信号を平衡信号に変換するべく構成される入力分割器と、
前記入力部と前記入力分割器との間に結合される入力駆動器と、
前記入力駆動器と前記バランとの間に結合される出力駆動器と
をさらに含む、請求項1の電力増幅器。
【請求項5】
前記入力駆動器と前記出力駆動器の間において前記入力駆動器のコレクタインピーダンスと前記出力駆動器のコレクタインピーダンスとが位相不一致となるように構成される段間整合器をさらに含む、請求項4の電力増幅器。
【請求項6】
前記制御可能負荷を増加させることによって前記電力増幅器の利得及び飽和電力が増加する、請求項5の電力増幅器。
【請求項7】
前記制御可能負荷を増加させることによって前記入力駆動器のコレクタインピーダンスが増加し、前記出力駆動器のコレクタインピーダンスが減少する、請求項6の電力増幅器。
【請求項8】
前記制御可能負荷は可変抵抗である、請求項7の電力増幅器。
【請求項9】
前記入力駆動器はカスコード増幅器を含む、請求項4の電力増幅器。
【請求項10】
前記入力駆動器はエミッタ接地増幅器を含む、請求項4の電力増幅器。
【請求項11】
前記出力駆動器はエミッタ接地増幅器を含む、請求項4の電力増幅器。
【請求項12】
前記制御可能負荷は可変抵抗である、請求項1の電力増幅器。
【請求項13】
電力増幅器を制御する方法であって、
バラン、前記バランに結合される少なくとも一つのキャパシタ、及び前記少なくとも一つのキャパシタに結合される制御可能負荷を有する電力増幅器を与えることと、
前記バランの効率を改善するべく前記制御可能負荷を変化させることと
を含む、方法。
【請求項14】
前記制御可能負荷はスイッチを含み、
前記制御可能負荷を変化させることは、前記スイッチの制御接続部に与えられる制御信号を変化させることを含む、請求項13の方法。
【請求項15】
前記制御可能負荷は可変抵抗器を含み、
前記制御可能負荷を変化させることは、前記可変抵抗器の抵抗を変化させることを含む、請求項14の方法。
【請求項16】
前記電力増幅器はさらに入力駆動器及び出力駆動器を含み、
前記方法はさらに、前記入力駆動器と前記出力駆動器との間に段間整合器を、前記入力駆動器のコレクタインピーダンスと前記出力駆動器のコレクタインピーダンスとが位相不一致となるように実装することを含む、請求項14の方法。
【請求項17】
前記制御可能負荷を増加させることによって前記入力駆動器のコレクタインピーダンスが増加し、前記出力駆動器のコレクタインピーダンスが減少する、請求項16の方法。
【請求項18】
前記制御可能負荷を増加させることは、前記制御可能負荷の抵抗を増加させることを含む、請求項17の方法。
【請求項19】
電力増幅器システムであって、
入力信号を受信する入力部と、
増幅出力信号を与える出力部と、
前記入力部と前記出力部との間に結合されるバランと、
前記バランに結合される少なくとも一つのキャパシタと、
前記少なくとも一つのキャパシタに結合される負荷を変化させる手段と
を含む、電力増幅器システム。
【請求項20】
前記電力増幅器システムの利得と前記電力増幅器システムの飽和電力ポイントとを同時に増加させる手段をさらに含む、請求項19の電力増幅器システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年7月13日に出願された「負荷変調プッシュプル電力増幅器」との名称の米国仮出願第63/221,085号の、米国特許法第119条(e)による優先権を主張し、その全体が参照によりここに組み入れられる。
【0002】
本開示に係る少なくとも一つ例は一般に、電力増幅器に関する。
【背景技術】
【0003】
移動セルラーデバイスのような電子デバイスが、他の電子デバイスと情報を交換し得る。移動セルラーデバイスは、信号を送受信するアンテナを含み得る。移動セルラーデバイスは、アンテナを介して送受信される信号を処理するべく付加的なコンポーネント及び回路を含み得る。例えば、移動セルラーデバイスは、アンテナを介して送受信される信号を増幅する一以上の電力増幅器を含み得る。
【発明の概要】
【0004】
本開示の少なくとも一つの側面によれば、入力信号を受信する入力部と、増幅出力信号を与える出力部と、当該入力部と当該出力部との間に結合されるバランと、当該バランに結合される少なくとも一つのキャパシタと、当該少なくとも一つのキャパシタに結合されて、当該少なくとも一つのキャパシタとともに、可変インピーダンスを当該バランに提示するべく構成される制御可能負荷とを含む電力増幅器が与えられる。
【0005】
様々な例において、制御可能負荷はスイッチを含む。少なくとも一つの例において、スイッチはヘテロ接合バイポーラトランジスタを含む。いくつかの例において、電力増幅器は、入力信号を平衡信号に変換するべく構成される入力分割器と、入力部と入力分割器との間に結合される入力駆動器と、入力駆動器とバランとの間に結合される出力駆動器とを含む。様々な例において、電力増幅器は、入力駆動器と出力駆動器との間において当該入力駆動器のコレクタインピーダンスと当該出力駆動器のコレクタインピーダンスとが位相不一致となるように構成される段間整合器を含む。
【0006】
少なくとも一つの例において、制御可能負荷を増加させることによって電力増幅器の利得及び飽和電力が増加する。いくつかの例において、制御可能負荷を増加させることによって入力駆動器のコレクタインピーダンスが増加し、出力駆動器のコレクタインピーダンスが減少する。様々な例において、制御可能負荷は可変抵抗である。少なくとも一つの例において、入力駆動器はカスコード増幅器を含む。いくつかの例において、入力駆動器は共通エミッタ増幅器を含む。様々な例において、出力駆動器はエミッタ接地増幅器を含む。少なくとも一つの例において、制御可能負荷は可変抵抗である。
【0007】
本開示の少なくとも一つの側面によれば、電力増幅器を制御する方法が与えられ、この方法は、バラン、当該バランに結合される少なくとも一つのキャパシタ、及び当該少なくとも一つのキャパシタに結合される制御可能負荷を有する電力増幅器を与えることと、当該制御可能負荷を変化させて当該バランの効率を改善することとを含む。
【0008】
少なくとも一つの例において、制御可能負荷はスイッチを含み、当該制御可能負荷を変化させることは、当該スイッチの制御接続部に与えられる制御信号を変化させることを含む。いくつかの例において、制御可能負荷は可変抵抗器を含み、制御可能負荷を変化させることは、可変抵抗器の抵抗を変化させることを含む。様々な例において、電力増幅器はさらに入力駆動器及び出力駆動器を含み、方法はさらに、当該入力駆動器と当該出力駆動器との間に段間整合器を、当該入力駆動器のコレクタインピーダンスと当該出力駆動器のコレクタインピーダンスとが位相不一致となるように実装することを含む。少なくとも一つ例において、制御可能負荷を増加させることによって入力駆動器のコレクタインピーダンスが増加し、出力駆動器のコレクタインピーダンスが減少する。いくつかの例において、制御可能負荷を増加させることは、制御可能負荷の抵抗を増加させることを含む。
【0009】
本開示の少なくとも一つの側面によれば、入力信号を受信する入力部と、増幅出力信号を与える出力部と、当該入力部と当該出力部との間に結合されるバランと、当該バランに結合される少なくとも一つのキャパシタと、当該少なくとも一つキャパシタに結合される負荷を変化させる手段とを含む電力増幅器システムが与えられる。
【0010】
少なくとも一つの例において、電力増幅器システムは、当該電力増幅器システムの利得と当該電力増幅器システムの飽和電力ポイントとを同時に増加させる手段を含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
少なくとも一つの実施形態の様々な側面が、縮尺どおりに描かれることを意図いない添付図面を参照して以下に説明される。図面は、様々な側面及び実施形態の例示及びさらなる理解を与えるべく含まれており、本明細書に組み入れられて本明細書の一部を構成するが、いずれかの特定の実施形態の限界の画定として意図されるわけではない。図面は、本明細書の残りの部分とともに、記載され及び請求される側面及び実施形態の原理及び動作を説明する助けとなる。図面において、様々な図面に示される同一又はほぼ同一のコンポーネントはそれぞれが同じ番号によって表される。明確性を目的として、すべての図面にすべてのコンポーネントが標識されるわけではない。
【0012】
【
図1】一例に係る無線デバイスのブロック図を示す。
【
図3】一例に係る
図2の電力増幅器の高レベル模式図を示す。
【
図5】一例に係るキャパシタに結合される負荷変調器の模式図を示す。
【
図6】一例に係る
図4の電力増幅器の模式図を示す。
【
図7】一例に係る
図4の電力増幅器のコンポーネントに与えられる制御信号の変調の効果を描くグラフを示す。
【
図8】出力電力の所与の値に対する
図4の電力増幅器の最高利得を描くグラフを示す。
【
図10】一例に係る
図9の電力増幅器の模式図を示す。
【
図11】一例に係る
図9の電力増幅器のコンポーネントに対応するスミスチャートを示す。
【
図12】一例に係る様々な制御信号値における
図9の電力増幅器の各性能を示すグラフを示す。
【
図13】一例に係る変化した制御信号に対する
図9の電力増幅器の全体的な性能を示すグラフを示す。
【
図14】一例に係る
図9の電力増幅器の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここに記載される方法及びシステムの例は、その適用において、以下の説明に記載され又は添付図面に示される構成及び配列の詳細に限定されない。これらの方法及びシステムは、他の実施形態で実装することができ、様々な態様で実施し又は実行することができる。特定の実装例が単なる例示目的でここに与えられ、限定を意図しない。詳しくは、任意の一以上の例に関連して説明される作用、コンポーネント、要素及び特徴が、任意の他の例における同様の役割から除外されることを意図しない。
【0014】
また、本明細書中で使用する表現及び用語は、説明のためのものであって、限定するものとみなすべきではない。ここで単数形において言及されるシステム及び方法の例、実施形態、コンポーネント、要素又は作用へのいかなる参照も、複数を含む実施形態を包含し、ここでの任意の実施形態、コンポーネント、要素又は作用への複数の参照も、特異点のみを含む実施形態を包含し得る。単数形又は複数形での参照は、ここで開示されるシステム又は方法、これらのコンポーネント、作用又は要素を限定することを意図しない。ここでの「含む」、「備える」、「有する」、「包含する」、及びこれらのバリエーションの使用は、これらよりも後に列記される項目及び均等物並びに付加的な項目を包括することを意味する。
【0015】
「又は」及び「若しくは」への言及は包括的に解釈され、「又は」及び「若しくは」を使用して記載される任意の項目が、記載される項目のうち一つ、一を超えるもの、及びすべてのもののいずれかを示し得る。加えて、本文書と参照によりここに組み込まれる文書との間で用語の使用に矛盾がある場合、組み込まれる特徴における用語の使用は、本文書の用語の使用を補足し、調整できない差異については、本文書の用語の使用が支配的となる。
【0016】
電気デバイスは電力増幅器を含み得る。電力増幅器は、入力信号を受信し、利得値に基づいて当該入力信号を増幅し、当該入力信号及び当該利得値に基づいて増幅出力信号を出力する。電力増幅器の性能は、様々なメトリックによって特徴付けられる。例示的な性能メトリックは、電力増幅器利得が1dB/dBにどれだけ近いのかを示し得る入力振幅変化当たりの出力振幅変化(AMAM)性能、及び電力付加効率(PAE)のような効率を含み得る。
【0017】
いくつかの例において、「理想的」とみなされる電力増幅器は、一定の利得、すなわち入力電力の程度が変化しても変化することのない利得、を示し得る。この例において、利得は、一定であるがゆえに、完全に線形とみなすことができる。非線形電力増幅器は、線形ではない利得を示し得る。例えば、非理想的な電力増幅器の利得は、飽和電力(PSAT)と称される所定の入力電力以上で急激に減少し得る。所定の動作ポイントで又は動作レンジ内で実質的に線形の利得を有する電力増幅器は、好ましいAMAM性能を示すとみなすことができる。したがって、AMAM性能は、電力増幅器性能の一つのメトリックである。
【0018】
非理想的な電力増幅器は、電力増幅器における意図しない損失ゆえに完全に効率的とはいえない。プッシュプル電力増幅器のようないくつかの電力増幅器が、バランのような変圧器を含み得る。バランは、漏洩インダクタンスを有し得る。漏洩インダクタンスは、バランに非効率性を導入し得る。電力増幅器は、バランの非効率性を軽減又は排除するフィルタを含み得る。例えば、電力増幅器は、バランの漏洩インダクタンスを平衡させるように構成される一以上のキャパシタを含み得る。漏洩インダクタンスを平衡させることは、漏洩インダクタンスの損失を軽減又は排除することを含み得る。したがって、効率が、電力増幅器性能の他のメトリックとなる。
【0019】
ここに与えられる例は、プッシュプル電力増幅器のような電力増幅器におけるAMAM性能及び/又は効率を改善する。一例において、バランの漏洩インダクタンスを平衡させるべく、少なくとも一つのキャパシタがバランに結合される。少なくとも一つのキャパシタは、可変電圧制御信号を有するスイッチに結合されてよい。制御信号を変化させることは、有利なことに、利得及び効率のような電力増幅器特性の変調を可能にする。
【0020】
いくつかの例において、電力増幅器はさらに、電力増幅器のAMAM性能を改善する駆動器段を含む。駆動器段は、バランを駆動するべく構成される最終段(又は「出力段」)に結合され得る。駆動器段と最終段との段間整合により、駆動器段と最終段との間の位相が互いに位相不一致となるように調整され得る。少なくとも位相差ゆえに、可変電圧制御信号を増加させることにより、最終段のコレクタインピーダンスが減少するにつれて駆動器段のベースインピーダンスの増加がもたらされ、駆動器段のベースインピーダンスの増加するにつれて最終段のコレクタインピーダンスの減少がもたらされる。この位相不一致関係により、有利なことに、PSATが増加するにつれて電力増幅器の利得が増加する。電力増幅器のAMAM性能は、それゆえ、インピーダンスが反対方向に変化することによって増加し得る。
【0021】
例示的な電力増幅器が、様々な構成に従って実装され得る。説明のみを目的として、プッシュプル電力増幅器に関する複数の例が与えられる。しかしながら、本開示の原理が、プッシュプル電力増幅器に限られないことを理解すべきである。さらに、本開示に係る電力増幅器は、消費者電子機器、自動車、電化製品、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、産業機器等のような様々な電子デバイスのいずれに実装されてもよい。説明のみを目的として、電力増幅器がスマートフォンのような無線セルラーデバイスに実装される複数の例が与えられてよい。例えば、例示的な電力増幅器が、
図1を参照して後述される無線デバイスに実装されてよい。
【0022】
図1は、一例に係る無線デバイス100のブロック図を示す。無線デバイス100は、音声及び/又はデータ通信のために構成されるセルラー電話機、スマートフォン、タブレット、モデム、通信ネットワーク、又は任意の他の携帯デバイス若しくは非携帯デバイスとしてよい。無線デバイス100は、ユーザインタフェイス102、メモリ及び/又はストレージ104、ベース帯域サブシステム106、送受信器108、電力管理システム110、電力増幅器(PA)モジュール112、結合器114、低雑音増幅器(LNA)116、スイッチング回路118(アンテナスイッチモジュール[ASM]とも称する)、アンテナ120、並びに少なくとも一つのセンサ122を含む。
【0023】
アンテナ120は、無線デバイス100がアンテナ120を介して一以上の外部デバイスと通信し得るように、一以上の信号を送信及び/又は受信するべく構成される。送受信器108は、送信のための信号を生成し及び/又は受信信号を処理するように構成される。いくつかの実施形態において、送信機能及び受信機能は、別個のコンポーネント(例えば送信モジュール及び受信モジュール)に実装することができ、又は同じモジュールに実装することもできる。
【0024】
送信のために生成された信号は、送受信器108からPAモジュール112へ与えられる。PAモジュール112は、送受信器108からの生成された信号を増幅する。当業者であればわかることだが、PAモジュール112は、一以上の電力増幅器を含み得る。PAモジュール112は、多種多様な無線周波数(RF)又は他の周波数帯域の送信信号を増幅するべく使用され得る。例えば、PAモジュール112は、電力増幅器の出力をパルス化するべく使用することができる有効信号を受信することができる。これにより、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)信号又は任意の他の適切なパルス信号の送信が支援される。PAモジュール112は、例えば、5G信号、グローバルシステムフォーモバイル(GSM(登録商標))信号、符号分割多重アクセス(CDMA)信号、W-CDMA信号、ロングタームエボリューション(LTE)信号、又はEDGE信号を含む様々なタイプの信号のいずれかを増幅するべく構成することができる。所定の実施形態において、PAモジュール112、及びスイッチ等を含む関連コンポーネントを、例えばpHEMT若しくはBiFETトランジスタを使用してGaAs基板上に、又はCMOSトランジスタを使用してシリコン基板上に、作製することができる。無線デバイス100はまたLNA116も含む。LNA116は、PAモジュール112の電力増幅器と同じ又は異なる態様で受信信号を増幅するべく構成される一以上の電力増幅器を含んでよい。
【0025】
無線デバイス100はまた、異なる帯域間及び/又はモード間でスイッチングするべく構成されるスイッチング回路118も含む。例えば、スイッチング回路118は、受信動作モードにおいてLNA116をアンテナ120に結合するべく構成され、送信動作モードにおいてLNA116をアンテナ120から結合解除するべく構成される。同様に、PAモジュール112がアンテナ120に結合されることにより、送信動作モードにおいてPAモジュール112からアンテナ120へ与えられる信号が、無線デバイス100の受信経路(及びスイッチング回路118)をバイパスする。いくつかの例において、スイッチング回路118は、LNA116及び/又はPAモジュール112を、アンテナ120に含まれてよい数個のアンテナのうち一以上に対して結合及び/又は結合解除するように構成され得る。
【0026】
したがって、所定の実施形態において、アンテナ120は、送受信器108に与えられる信号を、スイッチング回路118及びLNA116を介して受信することと、送受信器108、PAモジュール112及び結合器114を介して無線デバイス100から信号を送信することとの双方を行うことができる。しかしながら、他例において、異なる動作モードに対して多数のアンテナを使用することもできる。
【0027】
電力管理システム110は、送受信器108に接続されて無線デバイス100の動作のための電力を管理するように構成される。電力管理システム110はまた、例えば、PAモジュール112及び/又はLNA116の電力増幅器の制御コンポーネントによって、無線デバイス100の動作を制御することもできる。電力管理システム110は、無線デバイス100の様々なコンポーネントのために電力を供給する電池を含んでよく、又は当該電池に接続されてよい。電力管理システム110はさらに一以上のプロセッサ又はコントローラを含む。この一以上のプロセッサ又はコントローラは、信号の送信を制御することができ、さらに、例えば送信又は受信される信号の周波数に基づいて無線デバイス100のコンポーネントを構成することができる。加えて、電力管理システム110のプロセッサ又はコントローラは、後述されるPAモジュール112及び/又はLNA116のコンポーネントのような、無線デバイス100の、スイッチを作動させ、コンポーネントをチューニングし、又はそれ以外にコンポーネントを構成するべく制御信号を与えることができる。少なくとも一つの実施形態において、電力管理システム110のプロセッサ又はコントローラはまた、スイッチング回路118を送信モード又は受信モードで動作するように制御するべく制御信号を与えることもできる。
【0028】
一実施形態において、ベース帯域サブシステム106は、ユーザに与えられ及びユーザから受信される音声及び/又はデータの入出力を処理するべく、ユーザインタフェイス102に接続される。ベース帯域サブシステム106はまた、無線デバイスの動作を制御する及び/又はユーザのために情報の格納を与えるデータ及び/又は命令を格納するように構成されるメモリ及び/又はストレージ104に接続され得る。
【0029】
無線デバイス100はまた、PAモジュール112からの送信電力信号を測定するための、かつ、一以上の結合信号を少なくとも一つのセンサ122に与えるための、一以上の結合器セクションを有する結合器114も含む。いくつかの例において、結合器114はさらに、LNA116からの送信電力信号を測定するように構成される。様々な例において、無線デバイス100は、LNA116からの送信電力信号を測定するべく、結合器114に加えて又は結合器114の代わりに一以上の結合器を含む。
【0030】
少なくとも一つのセンサ122は情報を、送受信器108、電力管理システム110に、及び/又は、PAモジュール112及び/又はLNA116の電力レベルを調節する調整用フィードバックとしてPAモジュール112及び/又はLNA116に直接、送信することができる。このようにして、結合器114を使用して、相対的に低い/高い電力を有する送信信号の電力をブーストし/減少させることができる。しかしながら、結合器114が、様々な他の実装例において使用できることもわかる。
【0031】
例えば、無線デバイス100が時分割多重アクセス(TDMA)アーキテクチャを有する移動電話機である所定の実施形態において、結合器114は、有利なことに、PAモジュール112及び/又はLNA116からのRF送信電力信号の増幅を管理することができる。GSM、CDMA及びW-CDMAのシステムにおいて見出されるもののようなTDMAアーキテクチャを有する移動電話機において、PAモジュール112は、電力包絡線を、電力対時間の所定限界内で上下にシフトさせるように使用することができる。例えば、特定の移動電話機に、特定の周波数チャネルのための送信タイムスロットを割り当てることができる。この場合、PAモジュール112及び/又はLNA116は、一以上のRF電力信号の電力レベルを経時的に調節することを支援するように用いることができる。これにより、割り当てられた受信タイムスロットの中での送信からの信号干渉を回避して電力消費を低減することができる。かかるシステムにおいて、結合器114は、上述したようにPAモジュール112及び/又はLNA116の制御を支援するべく、電力増幅器出力信号の電力を測定するように使用することができる。
図1に示される実装例は例示であって非限定的である。例えば、
図1の実装例が、RF信号の送信とともに使用される結合器114を示すにもかかわらず、ここに説明される結合器114の様々な例はまた、受信されるRF信号又は他の信号にも同様に使用することもできることがわかる。
【0032】
上述したように、PAモジュール112及び/又はLNA116はそれぞれが、一以上の電力増幅器を含み得る。例えば、少なくともPAモジュール112が、RF入力信号を受信し、RF入力信号を増幅し、及び増幅済みRF出力信号を出力に与えるように構成される一以上のプッシュプル電力増幅器を含み得る。
【0033】
図2は、一例に係る電力増幅器200のブロック図を示す。様々な例において、電力増幅器200は、プッシュプル電力増幅器を含み得る。電力増幅器200は、RF信号入力部202、入力分割器204、A側信号経路206、B側信号経路208、バラン210、一以上のキャパシタ212「キャパシタ212」)、及びRF信号出力部214を含む。
【0034】
RF信号入力部202は入力分割器204に結合される。RF信号入力部202は、送受信器108のようなRF信号のソースに結合されるように構成される。入力分割器204は、RF信号入力部202、A側信号経路206及びB側信号経路208に結合される。A側信号経路206は、入力分割器204に及びバラン210に結合される。B側信号経路208は、入力分割器204に及びバラン210に結合される。バラン210は、A側信号経路206、B側信号経路208、キャパシタ212に、及びRF信号出力部214に結合される。キャパシタ212はバラン210に結合される。RF信号出力部214はバラン210に結合される。RF信号出力部214は、増幅済みRF信号を受信するように構成されるコンポーネント、例えば結合器114、に結合されるように構成される。
【0035】
入力分割器204は、入力信号を受信し、入力信号を分割して2つの平衡信号にし、並びに2つの平衡信号をA側信号経路206及びB側信号経路208に与えるように構成される。信号経路206、208は、平衡信号をバラン210に送信するように構成される。バラン210は、平衡信号を不平衡信号に変換して当該不平衡信号をRF信号出力部214に与えるように構成される。キャパシタ212は、バラン210の性能を改善するように構成される。例えば、キャパシタ212は、バラン210の漏洩インダクタンスによって引き起こされる損失を軽減又は排除し得る。
【0036】
図3は、一例に係る電力増幅器200の高レベル模式図を示す。図示のように、入力分割器204は、不平衡RF入力信号を平衡信号に変換して当該平衡信号を信号経路206、208に与えるように構成される変圧器を含み得る。A側信号経路206は第1駆動器300を含み、B側信号経路208は第2駆動器302を含み、これらはそれぞれが、平衡信号をバラン210に与えるように構成される。駆動器300、302はまとめて、電力増幅器200の最終段304として識別される。最終段304は、代替的に「出力段」と称してよい。バラン210は、平衡信号を不平衡信号に変換して当該平衡信号をRF信号出力部214に与えるように構成される変圧器を含み得る。上述したキャパシタ212は、バラン210を平衡させることによって電力増幅器200の効率を増加させることができる。
【0037】
様々な例において、電力増幅器200の負荷線路を、負荷変調器をキャパシタ212に結合することによって制御することができる。負荷変調器は、電力増幅器200の、PAE、利得、PSAT等のようなパラメータを制御可能にし得る。これらのパラメータを制御する能力によって、有利なことに、電力増幅器200が特定の動作条件セットに対して所望の特性を示すようにすることができる。
【0038】
図4は、一例に係る電力増幅器400のブロック図を示す。電力増幅器400は電力増幅器200と同様であり、同様のコンポーネントがそれに応じて標識される。電力増幅器400は、RF信号入力部202、入力分割器204、A側信号経路206、B側信号経路208、バラン210、キャパシタ212及びRF信号出力部214を含む。電力増幅器400はまた、負荷変調器402も含む。負荷変調器402はキャパシタ212に結合される。負荷変調器402は代替的に、「可変負荷」、「制御可能負荷」、「可変抵抗」、「制御可能抵抗」等と称してよい。
【0039】
負荷変調器402は、可変抵抗をキャパシタ212に与えることができる。一例において、負荷変調器402は、可変抵抗器として動作するべく構成されるスイッチ(例えばヘテロ接合バイポーラトランジスタ[HBT])を含む。例えば、
図5は、一例に係るキャパシタ212に結合される負荷変調器402の模式図を示す。この例において、負荷変調器402は、キャパシタ212と基準ノード(例えばグランドノード)との間に直列に結合されるスイッチ500を含む。いくつかの例において、スイッチ500はnpnHBTとしてよい。ただし、他例において、スイッチ500は、BJT、MOSFET等のような他のタイプのスイッチにしてよい。スイッチ500の状態は、制御信号ソース502が与える制御信号を変化させることによって制御され得る。制御信号ソース502は、制御信号をスイッチ500の制御接続部(例えばベース)に与え得る。制御信号ソース502は、制御信号ソース502が与える制御信号を制御するべく構成される少なくとも一つのコントローラを含んでよく、又は当該少なくとも一つのコントローラに結合されてよい。例えば、無線デバイス100は、少なくとも一つのコントローラを含み得る。
【0040】
様々な例において、電力増幅器400の負荷線路は、制御信号ソース502が(例えば制御信号の電圧及び/又は電流の振幅を減少させることにより)スイッチ500を完全開にすることによって最大にすることができるので、キャパシタ212を開回路に結合することができる。電力増幅器400の負荷線路は、制御信号ソース502が(例えば制御信号の電圧及び/又は電流の振幅を増加させることにより)スイッチ500を完全閉にすることによって最小にすることができるので、スイッチ500が抵抗器として振る舞うこととなる。これは、高いピーク対平均比波形の変調効率にとって有益となり得る。損失は最高負荷線路において、すなわち制御信号ソース502がスイッチ500を完全開にする場合に、最小にすることができる。
【0041】
図6は、一例に係る電力増幅器400の模式図を示す。電力増幅器400は、RF信号入力部202、入力分割器204、A側信号経路206、B側信号経路208、バラン210、キャパシタ212、RF信号出力部214、並びにスイッチ500及び制御信号ソース502を含む負荷変調器402を含む。上述したように、制御信号ソース502がスイッチ500に出力する制御信号が、電力増幅器400の様々なパラメータを制御するべく変調される。
【0042】
例えば、
図7が、第1グラフ700、第2グラフ702、第3グラフ704及び第4グラフ706を示し、これらは、一例に係る制御信号ソース502が与える制御信号を変調することの効果を描く。第1グラフ700は、複数のトレース708を含む。各トレースは、制御信号ソース502が与える制御信号の各値に対応する。複数のトレース708は、電力増幅器400の利得(GAIN)を出力電力(POUT)の関数として示す。複数のトレース708により示されるように、制御信号の各値に対し、出力電力が各PSAT値(利得が有意に降下するポイント)に到達するまで利得は近似的に線形となり得る。制御信号(Vcontrol)の値を減少させることにより各PSATが増加し得るが、利得は一般に、ほとんどの出力電力値において、制御信号の値を増加させることと比べて低くなる。
【0043】
第2グラフ702は、電力増幅器400のピークPAEを、制御信号ソース502が与える制御信号の値の関数として示すトレース710を含む。トレース710により示されるように、ピークPAEは、制御信号(VCTRL)の値が増加するにつれて減少し得る。したがって、ピークPAEは、スイッチ500が開かつ非導通位置にあることを示し得る制御信号の値が最小となるところで最大となり得る。
【0044】
第3グラフ704は複数のトレース712を含み、これらはそれぞれが、制御信号(Vcontrol)の各値に対応する。複数のトレース712は、電力増幅器400のPAEを出力電力(POUT)の関数として示す。複数のトレース712により示されるように、ピークPAEは、制御信号の値が増加するにつれて減少する。しかしながら、ピークPAEは、制御信号が増加するにつれて出力電力(POUT)の高い値に対応し得る。したがって、制御信号の値を最小にすることによって高いPAEが達成され得るにもかかわらず、制御信号の値を増加させることにより、高い出力電力値に対して高いPAE値を有効にすることができる。
【0045】
第4グラフ706は、電力増幅器400のPSATを、制御信号ソース502が与える制御信号の値の関数として示すトレース714を含む。トレース714により示されるように、PSATは、制御信号(VCTRL)の値が増加するにつれて増加し得る。したがって、電力増幅器400のチューニング範囲を、制御信号の値を増加させることによって、ひいてはPSATを増加させることによって、広げることができ、例えば、第4グラフ706により示されるように、電力増幅器400のチューニング範囲は、1Vの制御信号値と2Vの制御信号値との間で近似的に4dBだけ増加し得る。
【0046】
いくつかの例において、電力増幅器400が与える出力電力に基づいて制御信号の値を変化させることが有利となり得る。出力電力がPSATにおける飽和ポイントに近づくにつれて、制御信号が増加してPSAT値を増加させる。しかしながら、上述したように、制御信号を増加させることにより、電力増幅器400の利得及びPAEが減少し得る。例えば、
図8は、出力電力の所与の値に対する電力増幅器400の最高利得を追跡するトレース800を含む第1グラフ700を示す。トレース800により示されるように、制御信号の最低値に対応するPSATを超えるように出力電力を増加させることが、制御信号の値を増加させることによって達成され得る。しかしながら、利得は、制御信号が増加するにつれて相対的に大きくかつ不均一な量だけ低下することがあり、それによって、トレース800が完全に線形(すなわち水平)というわけではないという事実によって証明されるように、電力増幅器40のAMAM性能が悪影響を受ける。したがって、AMAM応答は、少なくとも部分的には、制御信号が変調されるときのPSATと利得との間の逆相関ゆえに、出力電力のトップ4dBにおいて圧縮され得る。
【0047】
例示的な電力増幅器のAMAM応答は、第2段を付加することによって向上させることができる。例えば、第2段は、電力増幅器の入力に結合される駆動器段としてよい。駆動器段により、PSATが増加するにつれて電力増幅器の複合利得の増加がもたらされ得る。その結果、制御信号を変調することによってAMAM応答が悪影響を受けることがない。
【0048】
図9は、一例に係る電力増幅器900のブロック図を示す。電力増幅器900は、電力増幅器400と同様であり、同じコンポーネントがそれに応じて標識される。電力増幅器900は、RF信号入力部202、入力分割器204、A側信号経路206、B側信号経路208、バラン210、キャパシタ212、RF信号出力部402、及び負荷変調器402を含む。電力増幅器900はまた、入力駆動器902も含む。入力駆動器902は、RF信号入力部202に結合され、入力分割器204に結合される。
【0049】
図10は、一例に係る電力増幅器900の模式図を示す。図示のように、入力駆動器902は、入力信号をRF信号入力部202から受信して入力駆動器902のコレクタにおいて出力信号を入力分割器204に与えるように構成される。入力分割器204は入力信号を分割して平衡信号にし、当該平衡信号を駆動器300、302の各ベースに(すなわち最終段304のベースに)与える。駆動器300、302は、駆動器300、302それぞれの各コレクタにおいて(すなわち最終段304のコレクタにおいて)バラン210への出力信号を出力する。バラン210は、出力信号をRF信号出力部214に与える。キャパシタ212及び負荷変調器402によって、上述したようにバラン210の性能が改善される。
【0050】
入力駆動器902のコレクタと最終段304のベースとの段間整合を、電力増幅器900のPSATが増加するにつれて入力駆動器902のコレクタのインピーダンスが増加するように調整することができる。PSATが増加するにつれて入力駆動器902のコレクタのインピーダンスを増加させることにより、有利なことに、PSATが増加するにつれて電力増幅器900の複合利得が増加するようになる。
【0051】
入力駆動器902と最終段304との段間整合は、入力駆動器902と最終段304とが位相不一致となるように選択することができる。上記を説明するべく、
図11は、第1スミスチャート1100、第2スミスチャート1102及び第3スミスチャート1104を含む。第1スミスチャート1100は、制御信号ソース502が与える制御信号の値が増加するときの駆動器段902のコレクタのインピーダンスを示す。第2スミスチャート1102は、制御信号ソース502が与える制御信号の値が増加するときの最終段304のベースのインピーダンスを示す。第3スミスチャート1104は、制御信号ソース502が与える制御信号の値が増加するときの最終段304のコレクタのインピーダンスを示す。
【0052】
スミスチャート1100、1104によって示されるように、入力駆動器902のコレクタのインピーダンスは、制御信号ソース502が与える制御信号の関数として増加し、最終段304のベースのインピーダンスは、制御信号ソース502が与える制御信号の関数として減少する。結果的に、制御信号を変化させることにより、電力増幅器900の利得及びPSATの双方が同時に増加又は減少することが可能となり、これにより良好なAMAM性能が得られる。
【0053】
例えば、
図12は、一例に係る様々な制御信号値における電力増幅器900の各性能を示す第1グラフ1200及び第2グラフ1202を示す。第1グラフ1200は、電力増幅器900の利得を出力電力の関数として示す。第1グラフ1200は複数のトレース1204を示し、各トレースが、制御信号ソース502が与える制御信号の各値に対応する。複数のトレース1204を複数のトレース708と比較すると、電力増幅器900の利得が、制御信号ソース502が与える制御信号が増加するにつれて増加する。目標利得線1206が、出力電力が増加するにつれて制御信号ソース502が制御信号を、制御信号の振幅としての対応値に変調することによって実質的に一定の値で達成され得る利得を、出力電力の関数として示す。目標利得線1206は、電力増幅器900によって達成され得る一例の利得を示すが、異なる利得(例えば高い利得)も電力増幅器900によって達成することができる。目標利得線1206の実質的に水平の性質によって示されるように、電力増幅器900は、例えば、トレース800によって示されるAMAM性能と比較してかなり改善されたAMAM性能を示す。
【0054】
第2グラフ1202は、電力増幅器900のPAEを出力電力の関数として示す。第2グラフ1202は複数のトレース1208を示し、各トレースが、制御信号ソース502が与える制御信号の各値に対応する。目標PAE線1210は、目標利得線1206に対応する制御信号値で達成され得るPAEを、出力電力の関数として示す。目標PAE線1210によって示されるように、PAEは、制御信号ソース502が与える制御信号が増加するにつれて増加する。
【0055】
図13は、一例に係る変化する制御信号に対する電力増幅器900の全体的な性能を示す第1グラフ1300及び第2グラフ1302を示す。第1グラフ1300は、制御信号を変調することによって達成され得る電力増幅器900の全体的な利得を出力電力の関数として示す。第1グラフ1300は、電力増幅器900の出力電力を示すトレース1304を含む。トレース1304によって示されるように、電力増幅器900の利得は、高い出力電力値において(例えば約30dBと約34dBとの間において)実質的に一定であり、有利なことに高いAMAM性能を示す。
【0056】
第2グラフ1302は、制御信号を変調することによって達成され得る電力増幅器900の全体的なPAEを出力電力の関数として示す。第2グラフ1302は、電力増幅器900の出力電力を示すトレース1306を含む。トレース1306によって示されるように、電力増幅器900のPAEは、高い出力電力値において(例えば約28dBと約34dBとの間において)実質的一定であり、制御信号ソース502が与える制御信号が増加するにつれて実質的に悪影響を受けるということがない。
【0057】
図14は、一例に係る電力増幅器900の模式図を示す。電力増幅器900は、RF信号入力部202、入力駆動器902、入力分割器204、信号経路206、208、バラン210、キャパシタ212、RF信号出力部214、及び負荷変調器402を含む。特定コンポーネントの所定構成例が
図14に示されるにもかかわらず、代替的な構成例及び実装例が本開示の範囲内にある。例えば、入力駆動器902がカスコード構成を含むように示されるにもかかわらず、エミッタ接地増幅器のような入力駆動器902の代替構成例も実装し得る。同様に、駆動器300、302がエミッタ接地構成を含むように示されるにもかかわらず、駆動器300、302の代替構成例も実装し得る。
【0058】
上述したように、無線デバイス100は、少なくとも一つのコントローラを含み得る。無線デバイス100に実装され得る様々なコントローラが、上述した様々な動作を実行してよい。関連メモリ及び/又はストレージに格納されたデータを使用して、コントローラはまた、操作されたデータをもたらし得る一以上の非一時的コンピュータ可読媒体に格納された一以上の命令を実行することもできる。いくつかの例において、コントローラは、一以上のプロセッサ又は他のタイプのコントローラを含み得る。一例において、コントローラは少なくとも一つのプロセッサであり、又は少なくとも一つのプロセッサを含む。他例において、コントローラは、汎用プロセッサに加えて又は汎用プロセッサの代わりに特定の動作を実行するようにあつらえられた特定用途向け集積回路(ASIC)を使用して、上述した動作の少なくとも一部分を実行する。これらの例により示されるように、本開示に係る複数の例が、ハードウェア及びソフトウェアの多くの特定の組み合わせを使用して、ここに記載される動作を実行することができ、本開示は、ハードウェア及びソフトウェアのコンポーネントの任意の特定の組み合わせに限られない。
【0059】
すなわち、少なくとも一つの実施形態のいくつかの側面が上述されてきたが、当業者であれば、様々な変更例、修正例、及び改善例を容易に想起するであろうことを理解すべきである。かかる変更、修正及び改善は、本開示の一部であることが意図され、さらに本発明の要旨及び範囲の中に含まれることが意図される。したがって、上記の説明および図面は単なる例示にすぎない。
【外国語明細書】