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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124496
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】床暖房用の置き畳
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/02 20060101AFI20230830BHJP
【FI】
E04F15/02 102R
E04F15/02 102E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028287
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】599095953
【氏名又は名称】株式会社カネハ
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 益由
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AA04
2E220AA26
2E220AB09
2E220AC01
2E220AD06
2E220AD13
2E220BA01
2E220BB03
2E220CA07
2E220EA03
2E220GA22X
2E220GA24X
2E220GA25X
2E220GA27X
2E220GB33X
2E220GB43X
2E220GB45X
2E220GB46X
2E220GB47X
(57)【要約】
【課題】
厚みが薄く、加工しやすく、加熱による反りが生じにくい床暖房用の置き畳を提供する。
【解決手段】
第1クッション材と、基材と、第2クッション材とからなる芯材を含む置き畳であり、基材の一方の面に第1クッション材が接面するように固定され、基材の他方の面に第2クッション材が接面するように固定され、第1クッション材及び第2クッション材は、発泡合成樹脂で構成されており、基材は、厚みが0.8~3.0mmの木質原料を含有する板を含んで構成されており、置き畳全体の厚みが4.0~20.0mmであり、第1クッション材から28.0cm離れた位置に100℃にしたヒーターを配置し、第1クッション材の上方から芯材を60分間加熱した後における置き畳の反りは、0~1.0mmの範囲内である床暖房用の置き畳である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1クッション材と、基材と、第2クッション材とからなる芯材を含む置き畳であり、
基材の一方の面に第1クッション材が接面するように固定され、
基材の他方の面に第2クッション材が接面するように固定され、
第1クッション材及び第2クッション材は、発泡合成樹脂で構成されており、
基材は、厚みが0.8~3.0mmの木質原料を含有する板を含んで構成されており、
置き畳全体の厚みが4.0~20.0mmであり、
第1クッション材から28.0cm離れた位置に100℃にしたヒーターを配置し、第1クッション材の上方から芯材を60分間加熱した後における置き畳の反りは、0~1.0mmの範囲内である床暖房用の置き畳。
【請求項2】
第1クッション材、基材、及び第2クッション材からなる芯材の少なくとも一部を被覆する畳表をさらに備えており、
畳表は、天然藺草若しくは人工の素材で構成した茣蓙、人工皮革、又は任意の色若しくは模様を付したシートで構成される請求項1に記載の床暖房用の置き畳。
【請求項3】
置き畳の同一方向における、第1のクッション材と第2のクッション材との加熱による寸法変化率の差は、0.1~3%である請求項1又は2に記載の床暖房用の置き畳。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床暖房用の置き畳に関する。
【背景技術】
【0002】
部屋の好みの場所に、好みの範囲に応じて、敷設して使用する置き畳が広く用いられている。
【0003】
本畳の厚みは55mm程度が一般的であるのに対して、置き畳の厚みは、15mmから30mm程度のものが一般的である。
【0004】
例えば、以下の特許文献1には、裏面側クッション材と、基材と、表面側クッション材と、畳表とからなる薄畳が記載されている。薄畳の実施例として、厚みが15mmから30mmの畳が記載されている。基材として、ガラス繊維を配合したポリプロピレン製のプレスボードが記載されている。裏面側クッション材及び裏面側クッション材としてポリエチレン発泡体が記載されている。特許文献1の薄畳では、表面側クッション材が基材よりも厚く、基材が裏面側クッション材よりも厚く構成されている。このような構成の薄畳では、遮音性能、歩行感、使用感に優れており、湿度の変化及び温度の変化で反りが発生しがたいとされている。
【0005】
以下の特許文献2には、厚さ7mmのミディアムデンシティファイバーボードからなる芯材と、芯材の両面に配される不織布と、厚さ2mmの畳表と、厚さ1.5mmの滑り止め材とからなる薄畳が記載されている。それぞれの不織布の厚みは、2mmであるとされている。薄畳の厚みは、13mmとなる。
【0006】
以下の特許文献3には、第1クッション層と、基材層と、第2クッション層とを含む置き畳が記載されている。第1クッション層及び第2クッション層は、発泡合成樹脂で構成されており、基材層は、厚みが0.8~3.0mmの木質原料を含有する板を含んで構成されており、置き畳全体の厚みが3.0~11.0mmであるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-104898号公報
【特許文献2】特開2010-236220号公報
【特許文献3】特開2021-173061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1又は特許文献2の薄畳は、本畳に比べて、厚みが薄い。しかしながら、厚みを小さくした置き畳と床暖房とを併用すると、置き畳の端部が上方に反りかえりやすくなる。
【0009】
特許文献1に記載のように、ポリプロピレン製のプレスボードにガラス繊維を配合したものを基材とすれば、置き畳の反りの問題を解消できる可能性がある。しかしながら、上記素材で構成した基材は、重量が大きくなりやすい。また、上記素材で構成した基材は、硬く加工しにくい。
【0010】
特許文献3の置き畳は、厚みが薄く、足触りがよく、適度なコシを有しており、敷設する際の作業性においても優れる。しかしながら、床暖房と併用した際に、置き畳に反りが生じることがあった。
【0011】
本発明は、厚みが薄く、加工しやすく、加熱による反りが生じにくい床暖房用の置き畳を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1クッション材と、基材と、第2クッション材とからなる芯材を含む置き畳であり、基材の一方の面に第1クッション材が接面するように固定され、基材の他方の面に第2クッション材が接面するように固定され、第1クッション材及び第2クッション材は、発泡合成樹脂で構成されており、基材は、厚みが0.8~3.0mmの木質原料を含有する板を含んで構成されており、置き畳全体の厚みが4.0~20.0mmであり、第1クッション材から28.0cm離れた位置に100℃にしたヒーターを配置し、第1クッション材の上方から芯材を60分間加熱した後における置き畳の反りは、0~1.0mmの範囲内である床暖房用の置き畳により、上記の課題を解決する。
【0013】
上記の床暖房用の置き畳は、第1クッション材、基材、及び第2クッション材からなる芯材の少なくとも一部を被覆する畳表をさらに備えており、畳表は、天然藺草若しくは人工の素材で構成した茣蓙、人工皮革、又は任意の色若しくは模様を付したシートで構成することができる。
【0014】
上記の床暖房用の置き畳においては、置き畳の同一方向における、第1のクッション材と第2のクッション材との加熱による寸法変化率の差は、0.1~3%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、厚みが薄く、加工しやすく、加熱による反りが生じにくい床暖房用の置き畳を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】床暖房用の置き畳の一実施形態を示す断面図である。
図2図1の置き畳の平面図である。
図3図1の置き畳を脚で踏んだ状態を示す断面図である。
図4】従来の置き畳を足で踏んだ状態を示す断面図である。
図5】比較例1に係る置き畳を示す断面図である。
図6】比較例2に係る置き畳を示す断面図である。
図7】実施例1、比較例1、又は比較例2に係る置き畳の加熱方法を示す説明図である。
図8】置き畳に生じた反り量を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の床暖房用置き畳(以下、単に置き畳と称する。)の一実施形態について説明する。本発明の技術的範囲は以下に示す実施形態に限定されるものではない。
【0018】
図1ないし図3に置き畳の一実施形態を示す。図1の置き畳1は、第1クッション材11と、基材13と、第2クッション材12とからなる芯材を含む。基材13の一方の面に第1クッション材11が接面するように固定され、基材13の他方の面に第2クッション材12が接面するように固定される。
【0019】
第1クッション材11及び第2クッション材12は、発泡合成樹脂で構成されている。第1クッション材11及び第2クッション材12は、基材13の一方の面又は基材13の他方の面を覆う形状であればよい。本実施形態の置き畳1では、第1クッション材11及び第2クッション材12は、シート状とされる。
【0020】
第1クッション材11又は第2クッション材12は、図3のように足2で置き畳1を踏んだときに撓み、足2の荷重が抜けると元の形状に復帰できる程度の弾性と自己復元性を備える発泡合成樹脂を使用することが好ましい。
【0021】
発泡樹脂を構成する合成樹脂は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン系の共重合体、ポリプロピレン系の共重体、ポリエチレン系のグラフト重合体、又はポリプロピレン系のグラフト重合体などのオレフィン系合成樹脂;又はエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂などの合成樹脂が例示される。このような合成樹脂を発泡、固化させたものを使用することができる。
【0022】
第1クッション材11又は第2クッション材12の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.5~3.9mm、又は1.5~2.5mmにすることができる。
【0023】
第1のクッション材11と第2のクッション材とは、後述する加熱による寸法変化率の差が、置き畳1の同一方向において、0.1~3%となるようにすることが好ましい。なお、置き畳1の同一方向とは、例えば、図2におけるx方向、又はy方向のことである。これにより、床暖房により置き畳1が加熱された際において、置き畳の反りがより効果的に防止される。上述の寸法変化率の差は、0.1~1%であることがより好ましく、0.1~0.5%であることがさらに好ましい。
【0024】
第1のクッション材11、又は第2のクッション材12は、シート状であり、その製造工程において、シート状に成形したクッション材を複数のローラーで搬送してロール状に巻回することで製造される。第1のクッション材11、又は第2のクッション材12には、その製造工程において、ローラーで搬送される方向、すなわち生地の長手方向と、当該方向に交差する方向、すなわち生地の短手方向とにおいて、異なる引張応力にさらされる。クッション材を使用する際の方向によって、加熱による寸法変化率が異なることがある。
【0025】
例えば、第1クッション材と第2クッション材との両方について、図2のx方向に生地の長手方向が沿うように生地を取って使用する、又は図2のy方向に生地の長手方向が沿うように生地を取って使用するなど、第1のクッション材11の方向と、第2のクッション材12の方向とを一致させる、換言すると第1のクッション材11と第2のクッション材12の生地を取る方向を一致させることで、第1のクッション材11と第2のクッション材12との加熱による寸法変化率との差が小さくなるように調節しやすくなる。また、第1のクッション材11の素材と、第2のクッション材12の素材とを一致させることで、第1のクッション材11と第2のクッション材12との加熱による寸法変化率との差が小さくなるように調節しやすくなる。また、第1のクッション材11の厚みと、第2のクッション材12の厚みとを一致させることで、第1のクッション材11と第2のクッション材12との加熱による寸法変化率との差が小さくなるように調節しやすくなる。
【0026】
第1クッション材の加熱による寸法変化率は、第1クッション材から、横30mm、縦10mmの方形の試験片を切り出して、25℃の温度で試験片の長手方向の長さL1を測定する。次に、試験片を70℃の温度下に60分間置いて、試験片の長手方向の長さL2を測定する。そして次式により、寸法変化率を求める。試験片の厚みは、第1クッション材の厚みとする。
第1クッション材の加熱による寸法変化率(Y1)(%)=
(L2-L1)÷L1×100
【0027】
第2クッション材の加熱による寸法変化率は、第2クッション材から、横30mm、縦10mmの方形の試験片を切り出して、25℃の温度で試験片の長手方向の長さL3を測定する。次に、試験片を70℃の温度下に60分間置いて、試験片の長手方向の長さL4を測定する。そして次式により、寸法変化率を求める。試験片の厚みは、第2クッション材の厚みとする。
第2クッション材の加熱による寸法変化率(Y2)(%)=
(L4-L3)÷L3×100
【0028】
第1クッション材の加熱による寸法変化率と、第2クッション材の加熱による寸法変化率との差は、上記で求めた第1クッション材の加熱による寸法変化率の値から、第2クッション材の加熱による寸法変化率の値を差し引いて求めた値の絶対値として求められる。すなわち、Y1-Y2の絶対値である。なお、長手方向の長さL3とL4とは、例えば、図2のy方向に沿うようにするなど、置き畳の同一方向となるように、試験片を採取する。
【0029】
第1のクッション材11又は第2クッション材12は、特に限定されないが、後述する方法で測定した独立気泡率が、80~100%であるものを使用することが好ましい。このようなクッション材を使用することにより、床暖房により置き畳1が加熱された際における基材の変形をより効果的に防止することができる。詳細な機構は不明であるが、クッション材を、独立気泡を主体とする素材とすることで、基材の含水率の変化が小さくなり、置き畳1がより反りにくくなるものと推測される。
【0030】
上記の独立気泡率は、以下の方法により求められる。得られた発泡成形体から試験片を切り出し、ASTM D2856‐70(1976年再認定)の(手順C)によりVxを求め、次式により算出する。なお、気泡の潰れた部分は測定の対象から除くこととする。
独立気泡率(%)=(Vx-Va(ρf/ρs))×100/(Va-Va(ρf/ρs))
Vx;試験片の実容積(独立気泡部分の容積と基材樹脂部分の体積との和)(cm
Va;試験片の外形寸法から求められる試験片の見掛けの体積(cm
ρf;試験片の見掛け密度(g/cm
ρs;試験片の基材樹脂の密度(g/cm
【0031】
基材13は、厚みが0.8~3.0mmの木質原料を含有する板で構成されている。木質原料を含有する板としては、例えば、べニア板、インシュレーションボード、MDF、又はハードボードなどのファイバーボードが挙げられる。ファイバーボードは、例えば、木材の繊維を集めて乾燥又は加圧成型することによって製造される。また、木質原料を含有する板としては、パーティクルボードを使用することができる。パーティクルボードは、木材の破片と接着剤とを加熱及び圧縮することにより製造される。
【0032】
基材13の素材として、ハードボードを好適に使用することができる。ハードボードは、曲げ応力を加えた際に、比較的に割れにくい性質を有しており、価格も安価であり、好適に使用することができる。
【0033】
基材は、木質原料を含有する板と、線維を接着剤で板状に成形したフェルトボードとから構成してもよい。フェルトボードは、置き畳を床暖房設備と併用した際に、床暖房設備から発せられる熱を遮断しにくく、また、置き畳にクッション性を付与して、足触りを向上させることができるので好ましい。フェルトボードの厚みは、特に限定されないが、1~14mmにすることができる。
【0034】
基材13は、特に限定されないが、上記のような素材であり、含水率が特に5~13質量%のものを好適に使用することができる。含水率は、5~8質量%のものを使用することがより好ましい。含水率が低い基材を使用することで、基材がより反りにくくなる。基材は、含水率が前記範囲となるように基材の原料を乾燥等の操作によって、含水率を調節して使用してもよい。なお、含水率は、JIS A 5905:2014の含水率試験の方法に準拠して求める。
【0035】
置き畳1は、基材として、木質原料を含有する板を使用しているので、基材を所定の寸法に裁断する際などには、既存の畳用の裁断機を利用して、基材を簡単に加工することが可能である。
【0036】
基材13の厚みを0.8~3.0mmとごく薄くすることで、第1クッション材11、第2クッション材、及び畳表を合わせても、置き畳全体の厚みを4.0~20.0mmの範囲に収めることができる。係る置き畳は、従来の置き畳に比して厚みが薄いので、例えば、クローゼットの開き戸と床との間の隙間に置き畳を敷設するなど、限られた隙間に置き畳を敷設して使用することが可能である。また、前記置き畳は、床暖房設備と併用した際に、厚みがごく薄いので、床暖房設備から発生される熱が置き畳の表面にまで到達しやすい。置き畳の全体の厚みは、4.0~16.0mmとすることが好ましく、4.0~11mmとすることが好ましい。
【0037】
上記のように厚みを極端に薄くした一般的な置き畳では、環境の変化によって、図8に示したように、置き畳の端部に反りが生じやすい。図8の例では、置き畳の端部に矢印で示した反り量の反りが生じている。なお、置き畳の反り量は、置き畳を水平な面に置いた際に、畳の端部に生じた反りのうち最も大きい反りの大きさ(mm)である。本実施形態の置き畳1では、このような反りが極めて生じにくい。具体的には、後述するように、第1クッション材11から28.0cm離れた位置に100℃にしたヒーターを配置し、第1クッション材の上方から芯材を60分間加熱した後における置き畳の反りは、0~1.0mmの範囲内である。
【0038】
上記のように厚みを極端に薄くした一般的な置き畳では、畳の上を歩いた際にクッション性が不足して足触りが悪化する傾向がある。例えば、図4に示したように、基材にグラスファイバーを配合した硬質な板材を使用した厚みの薄い置き畳では、置き畳の上に足を置いた際に、体重によって、第1クッション材は撓むものの、基材はほとんど撓まないので、畳の上を歩いた際に、硬い感じがして、足触りが悪化する。
【0039】
本実施形態の置き畳1では、基材13を、厚みを0.8~3.0mmの木質原料を含有する板で構成する。この構成の板で基材を構成すれば、図3のように置き畳1の上に足2を置いた際に、体重によって、第1クッション材11、基材13、及び第2クッション材12が、全て撓む。このため、畳の上を歩いた際に、良好なクッション性が得られる。これにより、置き畳1の足触りが向上する。
【0040】
基材の厚みが極端に薄いと、置き畳を運搬する際に置き畳が撓んで運搬の作業性が悪化することがある。本実施形態の置き畳1では、基材13を、厚みを0.8~3.0mmの木質原料を含有する板で構成する。このような記載を有する置き畳1では、適度な剛性と良好なクッション性とを両立することができる。
【0041】
置き畳の裏面には、防滑剤を適用した不織布、その他の滑り止め材、又はシート状の裏打材若しくは保護材などのその他の層を配してもよい。
【0042】
置き畳は、図1に記載のように、第1クッション材11、基材13、及び第2クッション材12からなる芯材の少なくも一部を被覆する畳表14を備える。畳表14は、天然藺草若しくは人工の素材で構成した茣蓙、人工皮革、又は任意の色若しくは模様を付したシート等で構成される。人工の素材で構成した茣蓙には、中空の糸状に成形した紙を藺草に見立てて織成した茣蓙等が含まれる。また、人工皮革には、起毛処理を施したスエードが含まれる。
【0043】
基材層と第1クッション材11又は第2クッション材12の固定方法は特に限定されない。例えば、基材層13と第1クッション材11又は第2クッション材12とは、粘着剤や接着剤により固定してもよいし、縫合により固定してもよい。粘着剤又は接着剤により固定すれば、基材が割れたり、第1クッション材11、又は第2クッション材12が破損したりにくいので特に好ましい。なお、接着剤には、ホットメルト接着剤が含まれるものとする。
【0044】
畳表14と芯材との固定方法は、公知の方法によればよい。例えば、畳表14と芯材との固定は、芯材に畳表を被せて、畳表14の端部と芯材とを、ホットメルト接着剤により固定してもよいし、縫合により固定してもよいし、ステープルにより固定してもよい。
【実施例0045】
以下、本発明の置き畳の実施例を挙げてより具体的に説明する。以下に示す実施例は例示に過ぎず、本発明の技術的範囲は以下に示す実施例により限定されるものではない。
【0046】
[実施例1]
次の素材を使用して、図1に示したのと同様の構成を有する置き畳を作製した。
第1クッション材としては、厚みが2.0mmの発泡合成樹脂のシートを使用した。当該シートは、発泡ポリエチレンのシートであり、独立気泡を有しており、ヒトの体重に相当する程度の圧力が加わると圧縮されシートの厚みが小さくなり、前記圧力が除去されると元の形状に復元する性質を有する。
【0047】
第2クッション材は、上記の第1クッション材と同様の素材からなる厚み2.0mmの発泡合成樹脂のシートを使用した。第1クッション材、及び第2クッション材を構成する発泡合成樹脂のシートは、同一の素材を使用した。第1クッション材、第2クッション材は、共に、上述の方法で求めた独立気泡率が100%である。
【0048】
基材として、厚みが1.5mmのハードボードを使用した。ハードボードの含水率は、6質量%である。畳表としては、厚み2.0mmの紙製の人工藺草を織成したものを使用した。上述の方法で測定した、上述の方法で求めた基材の含水率は、7.5質量%である。
【0049】
第1クッション材、及び第2クッション材は、共に、ローラーで搬送される方向が、図2のy方向となるように、裁断して、基材の表面と裏面とに接着した。上述の方法で求めた第1クッション材の寸法変化率と第2クッション材の寸法変化率の差は、0.3%である。なお、試験片は、図2のy方向が試験片の長手方向となるようにした。
【0050】
接着に際しては、表面及び裏面共に、ホットメルト接着剤で接着して芯材を作製した。ホットメルト接着剤としては、エチレン酢酸ビニルを主成分とするものを使用した。上記の芯材に上記の人工藺草を被せて、畳表と芯材とをホットメルト接着剤で固定して、厚みが7.5mmの置き畳を製造した。
【0051】
[比較例1]
厚みが1.5mmのハードボードに、実施例1で使用した畳表を被せて、図5に示した構成を有する厚み3.5mmの置き畳を作製した。上述の方法で求めたハードボードの含水率は、11質量%であった。
【0052】
[比較例2]
比較例1で使用したのと同様の厚み1.5mmのハードボードの表面に、実施例1で使用したのと同様の厚み2.0mmの第1クッション材を、実施例1で使用したのと同様のホットメルト接着剤で固定して、芯材を作製した。この芯材に実施例1で使用したのと同様の畳表を被せて、図6に示した構成を有する厚み5.5mmの置き畳を作製した。
【0053】
[反りの評価]
上記の実施例1、比較例1、及び比較例2に係る置き畳について、環境の変化によりどの程度置き畳に反りが生じるかについて、以下の方法により評価を実施した。すなわち、図7に示す置き畳用のプレス機を利用して、使用した実施例1の置き畳と、比較例1に係る置き畳と、比較例2に係る置き畳とを加熱して、環境の変化を再現した。プレス機の台(作業台)は、鋼鉄製である。
【0054】
図7のプレス機は、作業台と作業台に対して接近させたり離反させたりすることができるプレス部とを備える。プレス部は、ヒーターを内蔵しており、表面温度を100℃にすることができる。
【0055】
本試験では、プレス部の表面温度を100℃に設定し、プレス部全体の温度が100℃に到達した後に、各畳の表面とプレス部との鉛直方向における距離が28.0cmとなるように、作業台の上に、60cm×60cmの正方形に成形した実施例1の置き畳と、比較例1の置き畳と、比較例2の置き畳とを並べて、各置き畳を上方から60分間加熱した。なお、プレス部は、各置き畳よりも面積が大きいものであり、各置き畳の全体を加熱することができる。
【0056】
上記の方法により、各置き畳を100℃で60分間加熱して、加熱後の各置き畳の端部における反り量を測定した。実施例1の置き畳、比較例1の置き畳、比較例2の置き畳の反り量を以下の表1にまとめた。
【0057】
【表1】
【0058】
表2に示したように、実施例1の置き畳では、端部における反り量が0mmであり、置き畳全体の反りも見られなかった。一方、比較例1の置き畳では、反り量は13mmであり、置き畳の端部が反った状態であった。また、比較例2の置き畳では反り量は3mmであり、置き畳の端部が反った状態であった。
【0059】
上記の実施例1に係る床暖房用の置き畳は、芯材の厚みがごく薄いにも変わらず、温度の変化によって、置き畳の反りが生じないことがわかった。
【0060】
上記の実施例1、比較例1、又は比較例2に係る床暖房用の置き畳を、床暖房と3カ月間併用する試験を実施したところ、比較例1の置き畳と比較例2に係る置き畳では、端部に反りが生じてしまったが、実施例1に係る置き畳では反りは生じなかった。
【0061】
実施例1の置き畳は、反りにくいだけでなく足触りも良好であり、置き畳を設置する際に置き畳が撓むようなこともなく作業性も良好であった。また、実施例1の置き畳を観音開きの戸の前に設置した場合に、開き戸の下端部と置き畳とが干渉することがなかった。
【符号の説明】
【0062】
1 置き畳
11 第1クッション材
12 第2クッション材
13 基材


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8