(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124499
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】偏平型ボタン電池
(51)【国際特許分類】
H01M 6/12 20060101AFI20230830BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20230830BHJP
【FI】
H01M6/12 A
H01M10/0585
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028290
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】堰合 順弥
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 英晴
(72)【発明者】
【氏名】田中 和美
【テーマコード(参考)】
5H024
5H029
【Fターム(参考)】
5H024AA02
5H024AA14
5H024CC03
5H024CC07
5H024FF07
5H024HH15
5H029AJ02
5H029AJ06
5H029AK01
5H029AK02
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL11
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029BJ03
5H029HJ12
(57)【要約】
【課題】電池の内部抵抗を増加させることなく、正極側における電解液の含浸量を増量させることができ、特に、大電流で放電した場合の放電時間を顕著に増大させることが可能な偏平型ボタン電池を提供する。
【解決手段】有底円筒状の正極缶12と、正極缶12の開口部12aの内側にガスケット40を介在し固定され、正極缶12との間に収容空間を形成する負極缶22とを備え、正極缶12の開口部12aを負極缶22側にかしめたかしめ部を設けることで収容空間が密封され、収容空間に、正極10A、負極20、セパレータ30及び電解液50が収容された偏平型ボタン電池1であり、正極缶12に収容される正極10Aがペレット層からなり、該ペレット層における正極缶12の外周壁12cの近傍に、電解液収容部11Aが配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底円筒状の正極缶と、
前記正極缶の開口部内側にガスケットを介在し固定され、前記正極缶との間に収容空間を形成する負極缶とを備え、
前記正極缶の開口部を前記負極缶側にかしめたかしめ部を設けることで前記収容空間が密封され、前記収容空間に、正極、負極、セパレータ及び電解液が収容された偏平型ボタン電池であって、
前記正極缶に収容される正極がペレット層からなり、該ペレット層における前記正極缶の外周壁の近傍に、電解液収容部が配置されていることを特徴とする偏平型ボタン電池。
【請求項2】
前記電解液収容部が、前記ペレット層における、前記ガスケットの内周壁よりも前記正極缶の前記外周壁側の位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の偏平型ボタン電池。
【請求項3】
前記電解液収容部が、前記正極缶の前記外周壁又は底部に沿って円環状に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の偏平型ボタン電池。
【請求項4】
前記電解液収容部が、前記正極缶の前記外周壁に沿って配置され、且つ、前記外周壁側に向けて開口するように設けられていることを特徴とする請求項3に記載の偏平型ボタン電池。
【請求項5】
前記電解液収容部が、前記正極缶の前記底部に沿って配置され、且つ、前記底部側に向けて開口するように設けられていることを特徴とする請求項3に記載の偏平型ボタン電池。
【請求項6】
前記電解液収容部が、前記正極缶の前記外周壁側及び前記底部側に向けて開口するように設けられていることを特徴とする請求項3に記載の偏平型ボタン電池。
【請求項7】
前記電解液収容部が、前記正極缶の前記外周壁及び底部に沿うように、断続的に複数で配置され、且つ、前記外周壁及び前記底部に向けて開口するように設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の偏平型ボタン電池。
【請求項8】
前記電解液収容部に含浸材又は親水性部材が収容されていることを特徴とする請求項1~請求項7の何れか一項に記載の偏平型ボタン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏平型ボタン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
コイン型、あるいは、ボタン型(以下、ボタン型に表現を統一する)の電池は、そのサイズが非常に小さいことから、出力可能な電流も小さい。このため、例えば、ボタン型のアルカリマンガン電池や酸化銀電池は、時計や電卓等のような小型の電子機器における利用を想定し、数μA~数十μAの微少な消費電流で、連続使用で数年程度は使用できるように最適設計されている。
【0003】
上記のようなボタン電池としては、主として、有底円筒状の正極缶と、正極缶の開口部内側にガスケットを介在し固定され、正極缶との間に密封された収容空間を形成する負極缶とを備え、収容空間に、正極、負極、セパレータ及び電解液が収容されたものが用いられている。また、このような小型のボタン電池は偏平型に構成されており、上述したような小型の電子機器において好適に利用されている。
【0004】
一方、従来のボタン電池は、例えば、数十mA以上の大きな電流で放電させると、電池内部の反応が追いつかず、負極活物質や正極活物質の未反応量が多くなり、結果的に放電時間が短くなるという問題があった。
また、十分な電池特性を確保する観点からは、正極側に大量の電解液が含浸されていることが好ましいところ、従来のボタン電池においては、電解液が負極側に漏れ出てしまい、上記同様、放電時間が短くなるという問題があった。
【0005】
上記のような問題を解決するため、正極合剤が圧縮されてなるペレットからなる正極を用いるとともに、正極における正極缶側の中央部に電解液収容部が設けられてなる偏平型ボタン電池が提案されている偏平型ボタン型電池が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1によれば、上記のような構造を採用することにより、正極に含浸される電解液を増量でき、特に大電流で放電した場合の放電時間を増大させることが可能になるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された偏平型ボタン電池によれば、上記のように、正極における正極缶側に電解液収容部が配置され、多量の電解液を収容できるとされている。しかしながら、特許文献1に記載の構造では、正極における平面視で中央部に電解液収容部を設けているため、この部分と負極との間の電極間距離が大きくなることから、電池の内部抵抗が増大し、大電流を流すことが難しく、大電流の放電には向かない構造と考えられる。
【0008】
特許文献1に記載の構造を採用することで、電池の内部抵抗が増大するメカニズムは、決して明らかではないが、一般に、電池においては、対向して配置される正極と負極との間の電極間距離が、電池特性に大きな影響を与えることが知られている。
即ち、特許文献1に記載の偏平型ボタン電池のように、正極における正極缶側の中央部に電解液収容部が配置した場合、正極と負極との間の最短距離の部分が機能し難くなることから、電池特性に劣るものとなる可能性がある。
また、特許文献1に記載の構造では、正極をなすペレット層の中央部に配置された電解液収容部を避けて電流が流れることから、結果として正極と負極との間の距離が実質的に遠くなり、内部抵抗が増大する要因になっていると考えられる。
さらに、特許文献1のように、ペレット層の中央部に電解液収容部を配置した場合、正極と電解液との接触面積を大きく確保することが難しく、この点も内部抵抗が増大する要因になっていると考えられる。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、電池の内部抵抗を増加させることなく、正極側における電解液の含浸量を増量させることができ、特に、大電流で放電した場合の放電時間を顕著に増大させることが可能な偏平型ボタン電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は上記課題を解決するために鋭意検討を行い、偏平型ボタン電池において、内部抵抗が増大するのを抑制しながら、正極側における電解液の含浸量を増量させ、大電流で長時間にわたって放電するための実験を繰り返した。この結果、正極を構成するペレットにおいて、電解液収容部の位置を最適化することにより、内部抵抗が低減され、放電特性が顕著に高められることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
即ち、本発明の偏平型ボタン電池は、有底円筒状の正極缶と、前記正極缶の開口部内側にガスケットを介在し固定され、前記正極缶との間に収容空間を形成する負極缶とを備え、前記正極缶の開口部を前記負極缶側にかしめたかしめ部を設けることで前記収容空間が密封され、前記収容空間に、正極、負極、セパレータ及び電解液が収容された偏平型ボタン電池であって、前記正極缶に収容される正極がペレット層からなり、該ペレット層における前記正極缶の外周壁の近傍に電解液収容部が配置されていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、上記のように、正極を構成するペレット層において、正極缶の外周壁の近傍に電解液収容部が配置されていることにより、電解液の収容量を増量できるので、特に、正極側における電解液の含浸量を増大させることが可能となる。
また、電解液収容部を正極缶の外周壁側に配置することにより、特に電池特性に影響を与える、電池中央部における電極間距離を短く構成できるので、内部抵抗が低減され、放電特性が高められる。
また、ペレット層の中央部に電解液収容部を配置した場合に比べて、正極と電解液との接触面積を大きく確保できるので、内部抵抗を効果的に低減できる。
さらに、正極を構成するペレット層のセパレータ側には電解液収容部を設けず、ペレット層とセパレータとの接触面積を最大限に確保することができることから、正負極間の対向面積を減少させることがないので、内部抵抗の上昇を引き起こすことがない。
加えて、正極を構成するペレット層の中央部に電解液収容部を配置した場合と異なり、ペレット層の中央部が正極缶と接しているので、偏平型ボタン電池を製造する際、正極缶の底部における中央部近傍の位置に、パンチ治具からの圧力に対する耐久性を確保させることができる。これにより、偏平型ボタン電池の組立時に、正極缶に凹み等の変形が生じるのを確実に防止できる。
【0013】
また、本発明の偏平型ボタン電池は、上記構成において、前記電解液収容部が、前記ペレット層における、前記ガスケットの内周壁よりも前記正極缶の前記外周壁側の位置に配置されていることがより好ましい。
【0014】
本発明によれば、上記のように、正極をなすペレット層において、ガスケットの内周壁、即ち、ガスケットによる封止位置よりも正極缶の外周壁側の位置に電解液収容部が配置されていることで、上記同様、正極側における電解液の含浸量を増量できる。また、上記同様、電池中央部における電極間距離を短く構成できるとともに、正極と電解液との接触面積を大きく確保でき、さらに、ペレット層とセパレータとの接触面積を最大限に確保できるので、内部抵抗が低減され、放電特性に優れた偏平型ボタン電池が実現できる。
【0015】
また、本発明の偏平型ボタン電池は、上記構成において、前記電解液収容部が、前記正極缶の前記外周壁又は底部に沿って円環状に設けられている構成を採用してもよい。
【0016】
本発明によれば、上記のように、電解液収容部が、正極缶の外周壁又は底部に沿って円環状に設けられていることで、上記同様、電池中央部における電極間距離を短く構成できるとともに、正極と電解液との接触面積を大きく確保でき、さらに、ペレット層とセパレータとの接触面積を最大限に確保できる。これにより、内部抵抗が効果的に低減され、放電特性に優れた偏平型ボタン電池が実現できる。
【0017】
また、本発明の偏平型ボタン電池は、上記のような、電解液収容部が円環状に設けられた構成において、前記電解液収容部が、前記正極缶の前記外周壁に沿って配置され、且つ、前記外周壁側に向けて開口するように設けられた構成を採用してもよい。
【0018】
本発明によれば、上記のように、電解液収容部が、正極缶の外周壁に沿って配置され、且つ、外周壁側に向けて開口するように設けられていることで、上記同様、電池中央部における電極間距離を短く構成できるとともに、正極と電解液との接触面積を大きく確保でき、さらに、ペレット層とセパレータとの接触面積を最大限に確保できる。これにより、内部抵抗がより効果的に低減され、放電特性により優れた偏平型ボタン電池が実現できる。
【0019】
また、本発明の偏平型ボタン電池は、上記のような、電解液収容部が円環状に設けられた構成において、前記電解液収容部が、前記正極缶の前記底部に沿って配置され、且つ、前記底部側に向けて開口するように設けられた構成を採用してもよい。
【0020】
本発明によれば、上記のように、電解液収容部が、正極缶の底部に沿って配置され、且つ、底部側に向けて開口するように設けられていることで、上記同様、電池中央部における電極間距離を短く構成できるとともに、正極と電解液との接触面積を大きく確保でき、さらに、ペレット層とセパレータとの接触面積を最大限に確保できる。これにより、内部抵抗がより効果的に低減され、放電特性により優れた偏平型ボタン電池が実現できる。
【0021】
また、本発明の偏平型ボタン電池は、上記のような、電解液収容部が円環状に設けられた構成において、前記電解液収容部が、前記正極缶の前記外周壁側及び前記底部側に向けて開口するように設けられた構成を採用してもよい。
【0022】
本発明によれば、上記のように、電解液収容部が、正極缶の外周壁側及び底部側に向けて開口するように設けられていることで、上記同様、電池中央部における電極間距離を短く構成できるとともに、正極と電解液との接触面積を大きく確保でき、さらに、ペレット層とセパレータとの接触面積を最大限に確保できる。これにより、内部抵抗がより効果的に低減され、放電特性により優れた偏平型ボタン電池が実現できる。
【0023】
また、本発明の偏平型ボタン電池は、上記構成において、前記電解液収容部が、前記正極缶の前記外周壁及び底部に沿うように、断続的に複数で配置され、且つ、前記外周壁及び前記底部に向けて開口するように設けられた構成を採用してもよい。
【0024】
本発明によれば、上記のように、電解液収容部が、正極缶の外周壁及び底部に沿うように、断続的に複数で配置され、且つ、外周壁及び底部に向けて開口するように設けられていることで、正極と電解液との接触面積をより大きく確保できるので、内部抵抗をさらに効果的に低減できる。また、上記同様、電池中央部における電極間距離を短く構成できるとともに、ペレット層とセパレータとの接触面積を最大限に確保できるので、内部抵抗がより効果的に低減され、放電特性により優れた偏平型ボタン電池が実現できる。
【0025】
また、本発明の偏平型ボタン電池は、上記構成において、さらに、前記電解液収容部に含浸材又は親水性部材が収容された構成を採用することも可能である。
【0026】
本発明によれば、上記のように、電解液収容部に含浸材又は親水性部材が収容されていることで、電解液を含浸材に染み込ませるか、あるいは、水系の溶媒を用いた電解液を容易に親水性部材に収容し、保持できる。これにより、特に、正極側における電解液の含浸量を増大させることができるので、大電流で放電することが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の偏平型ボタン電池によれば、上記のように、正極缶に収容される正極がペレット層からなり、該ペレット層における正極缶の外周壁の近傍に電解液収容部が配置された構成を採用している。これにより、電解液の収容量を増量でき、特に、正極側における電解液の含浸量を増大させることが可能となるので、内部抵抗を低減でき、大電流で放電させることが可能となる。
また、本発明の偏平型ボタン電池によれば、電解液収容部を正極缶の外周壁側に配置することで、特に電池特性に影響を与えると考えられる、電池中央部における電極間距離を短く構成できるので、内部抵抗を低減できる。また、ペレット層の中央部に電解液収容部を配置した場合に比べて、正極と電解液との接触面積を大きく確保できるので、内部抵抗を効果的に低減でき、大電流による放電が可能になる。
さらに、ペレット層のセパレータ側には電解液収容部を設けず、ペレット層とセパレータとの接触面積を最大限に確保することで、正負極間の対向面積が大きく確保されるので、内部抵抗が上昇するのを防止でき、より大きな電流による放電が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る偏平型ボタン電池を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る偏平型ボタン電池を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第3の実施形態に係る偏平型ボタン電池を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第4の実施形態に係る偏平型ボタン電池に備えられる正極を模式的に示す斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の第5の実施形態に係る偏平型ボタン電池に備えられる正極を模式的に示す斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明の第6の実施形態に係る偏平型ボタン電池に備えられる正極を模式的に示す斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の他の実施形態に係る偏平型ボタン電池に備えられる正極を模式的に示す側面図である。
【
図8】
図8は、本発明の他の実施形態に係る偏平型ボタン電池に備えられる正極を模式的に示す側面図である。
【
図9】
図9は、本発明の他の実施形態に係る偏平型ボタン電池に備えられる正極を模式的に示す側面図である。
【
図10】
図10は、本発明の第1の実施形態に係る偏平型ボタン電池の変形例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の偏平型ボタン電池の実施形態を挙げ、その各構成について
図1~
図10を適宜参照しながら詳述する。なお、本発明で説明する偏平型ボタン電池は、具体的には、正極又は負極として用いる活物質、セパレータ及び電解液が容器内に収容されてなる一次電池又は二次電池である。
【0030】
なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料や形状等はあくまで一例であり、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0031】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態に係る偏平型ボタン電池1について、
図1を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態に係る偏平型ボタン電池1を模式的に示す断面図である。
【0032】
図1に示す第1の実施形態の偏平型ボタン電池1は、いわゆるボタン(コイン)型の電池である。この偏平型ボタン電池1は、収容容器2内に、正極活物質を含む正極10Aと、負極活物質を含む負極20と、正極10Aと負極20との間に配置されたセパレータ30と、収容容器2の収容空間を密封するためのガスケット40と、電解液50とを備え、概略構成される。
【0033】
より具体的には、本実施形態の偏平型ボタン電池1は、有底円筒状の正極缶12と、正極缶12の開口部12aにガスケット40を介在して固定され、正極缶12との間に収容空間を形成する有蓋円筒状(ハット状)の負極缶22とを有している。また、偏平型ボタン電池1においては、
図1中に示した正極缶12の開口部12aの周縁を内側、即ち、負極缶22側にかしめることで、ガスケット40によって収容空間が密封された構造の収容容器2が構成されている。
【0034】
図1中に示した収容容器2によって密封された収容空間には、正極缶12の内底面側に設けられる正極10Aと、負極缶22側に設けられる負極20とがセパレータ30を介して対向配置されている。
また、
図1に示すように、ガスケット40は、ガスケット40は、負極缶22の外周縁部をその内周側と外周側から包み込むように配置され、ガスケット40の外周縁が正極缶12の周縁部12bに取り囲まれている。
また、本実施形態の偏平型ボタン電池1においては、ガスケット40の底面に添って収容容器2の収容空間を上下に2分するようにセパレータ30が設けられており、セパレータ30と正極缶12の底面との間に正極10Aが収容され、セパレータ30と負極缶22との間に負極20が収容されている。
【0035】
なお、
図1に示す例の偏平型ボタン電池1においては、正極缶12が正極集電体を兼ねるとともに、負極缶22が負極集電体を兼ねた構成を採用しているが、これには限定されない。例えば、正極10Aが、図示略の正極集電体を介して正極缶12の内面に電気的に接続され、負極20が、図示略の負極集電体を介して負極缶22の内面に電気的に接続された構成を採用しても構わない。
【0036】
(正極缶及び負極缶)
図1に示すように、本実施形態の偏平型ボタン電池1に用いられる収容容器2は、有底円筒状の正極缶12と、正極缶12の開口部12aに、詳細を後述するガスケット40を介在して固定され、正極缶12との間に収容空間を形成する負極缶22とを備える。収容容器2は、上述したように、正極缶12の開口部12aを負極缶22側にかしめることで収容空間が密封されてなる、概略コイン型(ボタン型)の容器とされているため、正極缶12の最大内径は、負極缶22の最大外径よりも大きい寸法とされている。
【0037】
収容容器2を構成する正極缶12は、上述したように、有底円筒状に構成され、平面視で円形の開口部12aを有する。このような正極缶12の材質としては、従来公知のものを何ら制限無く用いることができ、例えば、SUS304、SUS316L、SUS329J4L、NAS64等のステンレス鋼の他、冷間圧延鋼等を採用できる。また、正極缶12の表面には、メッキあるいは圧接によりニッケル層が形成されていることが好ましい。
【0038】
また、負極缶22は、上述したように、有蓋円筒状(ハット状)に構成され、その先端部22aが、開口部12aから正極缶12に若干入り込むように構成される。このような負極缶22の材質としては、正極缶12の材質と同様、従来公知のステンレス鋼や冷間圧延鋼等が挙げられ、正極缶12と同じ材料を採用できる。また、負極缶22には、例えば、ステンレス鋼に銅やニッケル等が圧接されてなるクラッド材を用いることもできる。
【0039】
正極缶12や負極缶22に用いられる金属板材の板厚は、一般に0.1~0.3mm程度であり、例えば、正極缶12や負極缶22の全体における平均板厚で0.20mm程度として構成することができる。
【0040】
また、
図1に示す例においては、負極缶22の先端部22aが、負極缶22の外側面に沿って折り返した形状とされているが、これには限定されない。例えば、金属板材の端面が先端部22aとされた、上記の折り返し形状を有していない負極缶22を用いる場合においても、本発明を適用することが可能である。
【0041】
図1中に示すように、正極缶12と負極缶22とは、ガスケット40を介在させた状態で、正極缶12の周縁部12bを負極缶22側にかしめ加工してかしめ封止部を形成することで封口され、収容空間を形成した状態の偏平型ボタン電池1が密封構造とされている。
【0042】
また、本実施形態で詳述する構成を適用可能な偏平型ボタン電池としては、例えば、一次電池では、アルカリ電池、マンガン電池、酸化銀電池等の各種のボタン電池が挙げられる。また二次電池としては、例えば、後述するボタン(コイン)型の非水電解質二次電池といった各種の電池を挙げることができる。これらの各種偏平型ボタン電池は、公知の各種サイズとすることができる。
【0043】
(ガスケット)
ガスケット40は、
図1に示すように、正極缶12の内周面に沿って円環状に形成され、その環状溝41の内部に負極缶22の先端部22aが配置される。
ガスケット40は、正極缶12の開口部内周側に隙間無く挿入される外径を有するリング状の外縁部と、リング状の内縁部と、これら外縁部及び内縁部の下端部同士を接続した底壁部とからなる。従って、ガスケット40の外周縁上面側には、負極缶22の先端部22aを挿入可能な、上記の環状溝41が形成されている。
【0044】
ガスケット40の材質としては、ボタン電池に好適に用いられる従来公知の材料を何ら制限無く使用することができ、例えば、偏平型ボタン電池が、一次電池の一種であるアルカリ一次電池からなる場合には、ナイロン等のポリアミドを挙げることができる。
また、偏平型ボタン電池が、詳細を後述する非水電解質を用いた電池である場合には、ガスケット40の材質として、例えば、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリフェニルサルファイド(PPS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド、液晶ポリマー(LCP)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリエーテルニトリル樹脂(PEN)、ポリエーテルケトン樹脂(PEK)、ポリアリレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)、ポリアミノビスマレイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フッ素樹脂等のプラスチック樹脂を用いることができる。
【0045】
また、ガスケット40の環状溝41の内側面には、さらに、シール剤を塗布してもよい。このようなシール剤としては、例えば、アスファルト、エポキシ樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチルゴム系接着剤等を用いることができる。また、シール剤は、環状溝41の内部に塗布した後、乾燥させて用いる。ことができる。
【0046】
なお、ガスケット40は、正極缶12と負極缶22との間に挟まれ、その少なくとも一部が圧縮された状態となるが、この際の圧縮率等は特に限定されず、偏平型ボタン電池1の内部を確実に封止でき、且つ、ガスケット40に破断が生じない範囲とすればよい。
【0047】
[偏平型ボタン電池がアルカリ一次電池である場合]
偏平型ボタン電池がアルカリ一次電池である場合の、正極10A、負極20及び電解液50の構成(組成)について以下に説明する。
【0048】
(正極)
偏平型ボタン電池がアルカリ一次電池である場合、正極10Aは、二酸化マンガン粒子と酸化銀粒子等の混合粒子からなる円板状のペレット層から構成されることが好ましい。
この正極(ペレット層)10は、例えば、後述する正極活物質の粒子に導電助剤粒子や添加材粒子を必要量で混合した正極合剤である原料混合粒子を圧粉し、円柱状に成型した成型体からなる。この成型体の密度は、例えば、4.5~6.0g/cm3程度とすることができる。
【0049】
本実施形態においては、例えば、二酸化マンガン(MnO2)粒子と、酸化銀(Ag2O、AgO)粒子と、銀ニッケライト等の粒子とに加え、グラファイト(Gr)粒子や黒鉛粒子等の導電助剤粒子と、水素吸蔵合金粒子とを添加材として混合し、この合剤を原料混合粒子として適用することができる。
【0050】
また、正極10Aに含まれる添加剤としては、上記の導電助剤や水素吸蔵合金に加えて、必要に応じて、粒子同士の結着性を高めるための結着剤を用いることもできる。このような結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)等が挙げられ、これらの1種又は2種以上の組合せで適宜用いることができる。
【0051】
円板状の正極10Aは、該正極10Aにおける正極缶12の外周壁12cの近傍に電解液収容部11Aが形成されている。
図1等に示す例では、電解液収容部11Aが、正極10Aにおける、ガスケット40の内周壁40aよりも正極缶12の外周壁12c寄りの位置に形成されている。ここで、
図1中に示す二点鎖線Lは、ガスケット40の内周壁40aの位置を示すラインである。
また、図示例の電解液収容部11Aは、正極10Aにおける、正極缶12の底部12dに接する底面10b側から、正極10Aの厚さの半分程度の位置で、内角部を段差状として、平面視で円環状に切り欠かれた形状とされている。これにより、電解液収容部11Aと正極缶12との間に空間が確保されている。
なお、正極10Aの上面10aは、セパレータ30と接している。
【0052】
本実施形態の偏平型ボタン電池1によれば、上記のように、正極10Aを構成するペレット層において、正極缶12の外周壁12cの近傍に電解液収容部11Aが形成されていることにより、電解液の収容量を増量できる。これにより、特に、正極10A側における電解液の含浸量を増大させることができるので、大電流による放電が可能となる。
また、電解液収容部11Aを正極缶12の外周壁12c側に配置することにより、特に電池特性に影響を与える、電池中央部における電極間距離を短く構成できる。これにより、電池全体の内部抵抗が低減され、大電流で放電させることが可能になるので、放電特性が高められる効果が得られる。
また、上記のような電解液収容部11Aを備えた構成を採用することで、例えば、正極を構成するペレット層の中央部に電解液収容部を配置した場合に比べて、正極10Aと電解液との接触面積を大きく確保できる。これにより、電池全体の内部抵抗をより効果的に低減できるので、より大きな電流で放電させることが可能となり、放電特性がより高められる。
また、正極10Aを構成するペレット層のセパレータ30側には電解液収容部を設けない構成なので、正極(ペレット層)10とセパレータ30との接触面積を最大限に確保することができる。これにより、正負極間の対向面積を減少させることがないので、内部抵抗の上昇が引き起こされるのを防止できる。
加えて、正極を構成するペレット層の中央部に電解液収容部を配置した場合と異なり、ペレット層の中央部が正極缶12と接しているので、偏平型ボタン電池1を製造する際、正極缶12の底部12dにおける中央部近傍の位置に、図示略のパンチ治具からの圧力に対する耐久性を確保させることができる。これにより、偏平型ボタン電池1の組立時に、正極缶12に凹み等の変形が生じるのを確実に防止できる。
【0053】
さらに、
図1に示す例のように、正極10Aをなすペレット層において、ガスケット40の内周壁40a、即ち、ガスケット40による封止位置よりも正極缶12の外周壁12c側の位置に電解液収容部11Aが形成されている場合には、正極10A側における電解液の含浸量をさらに増量できる。また、上記同様、電池中央部における電極間距離を短く構成できるとともに、正極10Aと電解液との接触面積を大きく確保でき、さらに、正極10Aとセパレータ30との接触面積を最大限に確保できるので、内部抵抗が効果的に低減され、放電特性により優れた偏平型ボタン電池1が実現できる。
【0054】
電解液収容部11Aは、
図1に示す例では、正極10Aの底面10bと側面10cとにわたって平面視で円環状に形成された段差状の切欠きにより、その空間が確保されているが、本実施形態では、これには限定されない。例えば、
図10中に示す例の電解液収容部11Kのように、正極10Aの底面10bと側面10cとにわたって均一にコーナーカットされた形状の面取り部10dにより、その空間が確保されている構成を採用してもよい。このような場合、面取り部10dのコーナーカット形状は、正極10Aの厚さに対する比率を小さくする等、全体的に不均一な形状であってもよいし、若干の段差を含む形状であっても構わない。
さらに、後述の他の実施形態で詳述するように、電解液収容部の形状や形成位置は、適宜設定することが可能である。
【0055】
電解液収容部11Aの内部には、電解液に加え、例えば、図示略の含浸材や親水性部材を配置した構成を採用しても良い。
含浸材としては、電解液を含浸させることが可能な材質ものであればよく、特に限定されないが、例えば、水溶性高分子(カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム(PAS)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、)等からなる増粘剤を用いることができる。
また、親水性部材としては、例えば、親水性を付与したフュームシリカ等の無機化合物、セルロース繊維やガラス繊維からなる不織布等を用いることができる。
但し、偏平型ボタン電池1がアルカリ一次電池の場合には、アルカリ電解液に反応・溶解する可能性のある含浸材や親水性部材は使用を避けることが望ましい。
また、上記の含浸材や親水性部材を電解液収容部11Aに収容し、後述する電解液をこれらに含浸させた構造としても良い。
【0056】
上記のように、電解液収容部11Aに含浸材又は親水性部材が収容されていることで、電解液を含浸材に染み込ませるか、あるいは、水系の溶媒を用いた電解液を容易に親水性部材に収容して保持できる。これにより、特に、正極10A側における電解液の含浸量を増大させることができるので、より大きな電流で放電することが可能となる。
【0057】
(負極)
負極20としては、例えば、亜鉛粉末、亜鉛合金粉末等の負極活物質粉末と、酸化亜鉛(ZnO)等の伝導度安定剤と、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸(PAS)等のゲル化剤と、樹脂粉末、PP(ポリプロピレン)、ポリエチレン(PE)等の粘弾性調整剤とを混合し、これらに電解液を加えたものが用いられた電極構造が挙げられる。
なお、負極20に添加する粘弾性調整剤は、必要に応じ添加するものなので、省略しても構わない。
【0058】
(電解液)
電解液としては、特に限定されないが、粘性の高い電解液を用いることが好ましく、偏平型ボタン電池1がアルカリ一次電池である場合には、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液や水酸化カリウム(KOH)水溶液を用いることができる。また、大電流出力用途向けの電池である場合には、水酸化カリウム水溶液が特に好適に用いられる。
【0059】
図1に例示した偏平型ボタン電池1においては、電解液が正極(ペレット層)10に含浸されるとともに、電解液収容部11Aにも電解液50が満たされている。このように、電解液50を電解液収容部11Aに収容した分だけ、電解液収容部11Aがない構造に比べて、電池内部、特に正極10A側における電解液の保持量が増加する。また、電解液収容部11Aに、上述したような含浸材あるいは親水性部材が収容された構造を採用した場合には、これらに含浸された状態で電解液が電解液収容部11A内に収容される。
【0060】
図1に例示した構造によれば、電解液収容部11Aが存在することにより、電解液収容部11Aを有していない構造の偏平型ボタン電池に比べて、電解液の保持量を多くすることができる。また、正極10Aにおけるセパレータ30側の部位には電解液収容部を設けていないので、正極10Aとセパレータ30との間の接触面積を最大限に確保できるので、正負極間の対向面積を犠牲にすることがなく、また、電池としての内部抵抗の上昇を引き起こすこともない。
【0061】
なお、
図1中に示した構造を有する偏平型ボタン電池1を製造する場合、電解液収容部11Aに空気を巻き込まないように電解液を収容することが望ましい。
【0062】
[偏平型ボタン電池が非水電解質二次電池である場合の一例]
図1に例示した構造を有する偏平型ボタン電池1は、上述したアルカリ1次電池に限定されるものではなく、その他の構成の電池に適用することも可能である。
以下に、偏平型ボタン電池1が非水電解質二次電池である場合の、正極10A、負極20及び電解液50の構成(組成)の一例について説明する。
【0063】
(正極)
偏平型ボタン電池1が非水電解質二次電池である場合には、正極活物質として、リチウムマンガン酸化物粒子を用いることができる。正極に用いられる正極活物質は、リチウムマンガン酸化物粒子に加え、さらに他の正極活物質を含有していても良く、例えば、モリブデン酸化物粒子、リチウム鉄リン酸化合物粒子、リチウムコバルト酸化物粒子、リチウムニッケル酸化物粒子、バナジウム酸化物粒子等、他の酸化物粒子の何れか1種以上を含有したペレット層からなる構成を採用してもよい。
【0064】
(負極)
偏平型ボタン電池1が非水電解質二次電池である場合、負極20における負極活物質の種類は特に限定されないが、例えば、負極活物質としてシリコン酸化物粒子又はアルミニウム合金粒子を含有することが好ましい。
また、負極20において、負極活物質としてSiOx(0≦x<2)で表されるシリコン酸化物粒子を用いることも可能である。
【0065】
(電解液)
偏平型ボタン電池1が非水電解質二次電池である場合、電解液は、通常、支持塩を非水溶媒に溶解させたものを用いる。
偏平型ボタン電池1が非水電解質二次電池の場合は、例えば、電解液をなす非水溶媒が、テトラグライム(TEG)を主溶媒とし、ジエトキシエタン(DEE)を副溶媒とし、さらにエチレンカーボネート(EC)及びビニレンカーボネート(VC)を添加剤として含有するものを用いることができる。
グライム系溶媒を構成するための主溶媒としては、例えば、テトラグライム、トリグライム、ペンタグライム、ジグライム等を用いることができる。
【0066】
本実施形態においては、電解液として、エチレンカーボネート(EC)、テトラグライム(TEG)及びジエトキシエタン(DEE)を含有する非水溶媒を用いたものを採用できる。このような構成を採用することで、支持塩をなすLiイオンに、DEE及びTEGが溶媒和する。
このとき、DEEがTEGよりもドナーナンバーが高いため、DEEが選択的にLiイオンと溶媒和する。このように、支持塩をなすLiイオンにDEE及びTEGが溶媒和することで、Liイオンを保護する。これにより、仮に、高温高湿環境下において非水電解質二次電池の内部に水分が侵入した場合であっても、水分とLiとが反応するのを防止できるので、放電容量が低下するのを抑制し、保存特性が向上する効果が得られる。
【0067】
偏平型ボタン電池1が非水電解質二次電池である場合においても、上述したアルカリ1次電池の例と同様、電解液の収容量を増量でき、特に、正極10A側における電解液の含浸量を増大させることができるので、大電流による放電が可能となる。また、上記同様、電池中央部における電極間距離を短く構成できるので、電池全体の内部抵抗が低減され、大電流で放電させることが可能になり、放電特性が高められる。また、正極10Aと電解液との接触面積を大きく確保できることから、電池全体の内部抵抗をより効果的に低減できるので、より大きな電流で放電させることが可能となり、放電特性がより高められる。また、正極10Aにおけるセパレータ30側には電解液収容部を設けず、正極10Aとセパレータ30との接触面積を最大限に確保することができるので、正負極間の対向面積を減少させることがなく、内部抵抗が上昇するのを防止できる。
【0068】
[偏平型ボタン電池が非水電解質二次電池である場合の他の例]
以下に、偏平型ボタン電池1が、上述した非水電解質二次電池とは異なる他の例の非水電解質二次電池である場合の、正極10A、負極20及び電解液50の構成(組成)について説明する。
【0069】
(正極及び負極)
偏平型ボタン電池が非水電解質二次電池の他の例である場合、正極10Aは、コバルト酸リチウム粒子からなる正極活物質と、導電助剤粒子と、バインダ粒子とを含み、また、負極20は、チタン酸リチウム粒子からなる負極活物質と、グラファイト粒子からなる導電助剤と、バインダ粒子とを含むことで、所謂CTL電池として構成される。
そして、偏平型ボタン電池が上記の非水電解質二次電池である場合には、負極20に、導電助剤を、負極20の全質量に対して7質量%以上10質量%未満で含んでいてもよい。
【0070】
(電解液)
偏平型ボタン電池が非水電解質二次電池の他の例である場合、電解液として、少なくとも有機溶媒及び支持塩を含むものを用いることができる。そして、電解液としては、有機溶媒として、環状カーボネート溶媒であるプロピレンカーボネート(PC)、環状カーボネート溶媒であるエチレンカーボネート(EC)、及び、鎖状カーボネート溶媒であるエチルメチルカーボネート(EMC)を含有してなる混合溶媒を用いることができる。
このような電解液は、通常、支持塩を、有機溶媒等の非水溶媒に溶解させたものからなり、電解液に求められる耐熱性や粘度等を勘案して、その特性が決定される。
【0071】
本例では、電解液に用いる有機溶媒を、環状カーボネート溶媒であるPC、EC、及び、鎖状カーボネート溶媒であるEMCを含有してなる混合溶媒とすることができる。これにより、幅広い温度領域において充分な放電容量が得られ、且つ、大きな電流を供給することが可能な非水電解質二次電池が実現できる。
具体的には、まず、環状カーボネート溶媒として、誘電率が高く、支持塩の溶解性が高いPC及びECを用いることにより、大きな放電容量を得ることが可能となる。また、PC及びECは、沸点が高いことから、例えば、高温環境下で使用又は保管した場合でも揮発し難い電解液が得られる。
さらに、環状カーボネート溶媒として、ECよりも融点が低いPCを、ECと混合して用いることにより、低温特性を向上させることが可能となる。
また、鎖状カーボネート溶媒として、融点の低いEMCを用いることにより、低温特性が向上する。
【0072】
上記の環状カーボネート溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、トリフロロエチレンカーボネート(TFPC)、クロロエチレンカーボネート(ClEC)、トリフロロエチレンカーボネート(TFEC)、ジフロロエチレンカーボネート(DFEC)、ビニレンカーボネート(VEC)等が挙げられる。
【0073】
<第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施形態に係る偏平型ボタン電池60について、
図2を参照して説明する。
図2は、第2の実施形態に係る偏平型ボタン電池60を模式的に示す断面図である。
なお、以下の説明において、上述した第1の実施形態に係る偏平型ボタン電池1と共通又は類似する構成については、同じ符号を付与して説明するとともに、その詳細な説明を省略する場合がある。
【0074】
本実施形態の偏平型ボタン電池60は、
図2においては側方から見た断面のみを示しているが、正極10Bに設けられる電解液収容部11Bが、正極缶12の外周壁12cに沿って円環状に形成されている点のみ、
図1に示した第1の実施形態の偏平型ボタン電池1とは異なる。
【0075】
具体的には、偏平型ボタン電池60の正極10Bに設けられる電解液収容部11Bは、
図2中に示す例のように、側面10cの厚み方向における概略中央部に、側面10c全体にわたって環状に形成されている。また、図示例の電解液収容部11Bは、正極10Bの側面10cにおいて、断面矩形状の凹部となるように形成されている。
【0076】
第2の実施形態の偏平型ボタン電池60における他の構成は、
図1に示した第1の実施形態の偏平型ボタン電池1と同様である。
【0077】
本実施形態の偏平型ボタン電池60によれば、上記のように、正極10Bを構成するペレット層において、電解液収容部11Bが、正極缶12の外周壁12cに沿って円環状に形成されていることにより、上記同様、電解液の収容量を増量できる。これにより、特に、正極10B側における電解液の含浸量を増大させることができるので、大電流による放電が可能となる。
また、電解液収容部11Bを正極缶12の外周壁12c側に配置することで、特に電池特性に影響を与える、電池中央部における電極間距離を短く構成できるので、上記同様、電池全体の内部抵抗が低減され、大電流で放電させることが可能となり、放電特性が高められる。
また、電解液収容部11Bを備えることで、正極の中央部に電解液収容部を配置した場合に比べて、正極10Bと電解液との接触面積を大きく確保できるので、上記同様、電池全体の内部抵抗をより効果的に低減できることから、より大きな電流で放電させることが可能となり、放電特性がより高められる。
また、正極10Bにおけるセパレータ30側、即ち、正極10Bの上面10aには電解液収容部を設けず、正極10Bとセパレータ30との接触面積を最大限に確保することで、正負極間の対向面積を減少させることがないので、内部抵抗の上昇が生じるのを防止できる。
【0078】
さらに、本実施形態においても、
図2に示す例のように、正極10Bにおいて、ガスケット40の内周壁40aよりも正極缶12の外周壁12c側の位置に電解液収容部11Bが形成されている場合には、正極10B側における電解液の含浸量をさらに増量できる。また、上記同様、電池中央部における電極間距離を短く構成できるとともに、正極10Bと電解液との接触面積を大きく確保でき、さらに、正極10Bとセパレータ30との接触面積を最大限に確保できるので、内部抵抗が効果的に低減され、放電特性により優れた偏平型ボタン電池60が実現できる。
【0079】
なお、本実施形態の偏平型ボタン電池60に設けられる電解液収容部11Bは、
図2に示す例では、全体的に均一とされた断面矩形状の凹部により、その空間が確保されているが、本実施形態では、これには限定されない。例えば、電解液収容部11Bは、正極10Bの側面10cに形成された断面台形状、断面三角形状、又は断面半円状等の凹部によって空間が確保されたものであってもよく、また、若干の段差を含む形状であっても構わない。
【0080】
<第3の実施形態>
以下、本発明の第3の実施形態に係る偏平型ボタン電池61について、
図3を参照して説明する。
図3は、第3の実施形態に係る偏平型ボタン電池61を模式的に示す断面図である。
なお、以下の説明において、上述した第1,2の実施形態に係る偏平型ボタン電池1,60と共通又は類似する構成については、同じ符号を付与して説明するとともに、その詳細な説明を省略する場合がある。
【0081】
本実施形態の偏平型ボタン電池61は、
図3においては側方から見た断面のみを示しているが、正極10Cに設けられる電解液収容部11Cが、正極缶12の底部12dに沿って円環状に形成されている点のみ、
図2に示した第2の実施形態の偏平型ボタン電池60とは異なる。
【0082】
具体的には、偏平型ボタン電池61の正極10Cに備えられる電解液収容部11Cは、
図3中に示す例のように、底面10bにおける正極缶12の外周壁12c寄りの位置に、平面視で環状に形成されている。また、図示例の電解液収容部11Cは、正極10Cの底面10bにおいて、断面矩形状の凹部となるように形成されている。
【0083】
第3の実施形態の偏平型ボタン電池61における他の構成は、
図1に示した第1の実施形態の偏平型ボタン電池1や、
図2に示した第2の実施形態の偏平型ボタン電池60と同様である。
【0084】
本実施形態の偏平型ボタン電池61によれば、上記のように、正極10Cにおいて、電解液収容部11Cが、正極缶12の底部12dに沿って平面視で円環状に形成されていることにより、上記同様、電池中央部における電極間距離を短く構成できるとともに、正極と電解液との接触面積を大きく確保でき、さらに、ペレット層とセパレータとの接触面積を最大限に確保できる。これにより、第1及び第2の実施形態の偏平型ボタン電池1,60の場合と同様、電池全体の内部抵抗が低減され、大電流で放電させることが可能になり、また、電解液の収容量を増量できるので、特に、正極10C側における電解液の含浸量を増大させることができるので、より大きな電流による放電が可能となる。
【0085】
さらに、本実施形態においても、
図3に示す例のように、正極10Cにおいて、ガスケット40の内周壁40aよりも正極缶12の外周壁12c寄りの位置に電解液収容部11Cが形成されている場合には、上記同様の理由により、内部抵抗がより効果的に低減され、放電特性により優れた偏平型ボタン電池61が実現できる。
【0086】
なお、本実施形態の偏平型ボタン電池61に設けられる電解液収容部11Cは、
図3に示す例では、全体的に均一とされた断面矩形状の凹部により、その空間が確保されているが、本実施形態においても、これに限定されるものではない。電解液収容部11Cは、第2の実施形態の偏平型ボタン電池60に備えられる電解液収容部11Bの場合と同様、例えば、正極10Cの側面10cに形成された断面台形状、断面三角形状、又は断面半円状等の凹部によって空間が確保されたものであってもよく、また、若干の段差を含む形状であっても構わない。
【0087】
<第4の実施形態>
以下、本発明の第4の実施形態に係る偏平型ボタン電池について、主に
図4を参照して説明する。
図4は、第4の実施形態に係る偏平型ボタン電池に備えられる正極10Dを模式的に示す斜視図である。
【0088】
以下の説明においては、上述した第1~3の実施形態に係る偏平型ボタン電池1,60,61と共通又は類似する構成については、同じ符号を付与して説明するとともに、その詳細な説明を省略する。また、本実施形態の偏平型ボタン電池は、正極における電解液収容部の構造以外の構成は、上述した偏平型ボタン電池1,60,61と同様の構成なので、
図4においては正極10Dのみを示しており、その他の構成については
図1~
図3を適宜参照して説明する。
【0089】
本実施形態の偏平型ボタン電池に備えられる正極10Dは、電解液収容部11Dが、正極缶12の外周壁12cに沿って配置され、且つ、外周壁12c側に向けて開口するように、円環状に形成されている(
図1~
図3に示した偏平型ボタン電池1,60,61も参照)。また、
図4に示す例の正極10Dに備えられる電解液収容部11Dは、さらに、正極缶12の底部12dにも沿うように配置され、底部12d側にも開口するように形成されている。即ち、
図4に示す例の正極10Dは、電解液収容部11Dが、正極缶12の外周壁12c側及び底部12d側の両方に向けて開口するように形成されている。
さらに、図示例の正極10Dに設けられる電解液収容部11Dは、正極缶12の外周壁12c及び底部12dに沿うように、断続的に複数で配置されている。
即ち、正極10Dに設けられる電解液収容部11Dは、正極10Dの側面10c側と底面10b側とにわたって開口するように形成され、且つ、円環状で断続的に複数配置されるように設けられている。図示例では、電解液収容部11Dが、正極10Dの周方向に沿って、合計6箇所で、均等間隔で配置されている。
【0090】
本実施形態の偏平型ボタン電池によれば、上記のように、電解液収容部11Dが、正極缶12の外周壁12c又は底部12d、あるいは両方に向けて開口した構成を採用することにより、上記同様、電池中央部における電極間距離を短く構成できるとともに、正極10Dと電解液との接触面積を大きく確保でき、さらに、正極10Dとセパレータ30との接触面積を最大限に確保できる。これにより、内部抵抗がより効果的に低減され、大電流による放電が可能になり、放電特性により優れた偏平型ボタン電池が実現できる。
【0091】
さらに、本実施形態の偏平型ボタン電池において、図示例のように、電解液収容部11Dが、正極缶12の外周壁12c及び底部12dに沿うように、断続的に複数で配置された構成とした場合には、正極10Dと電解液との接触面積をさらに大きく確保できる。これにより、内部抵抗をさらに効果的に低減できるので、さらに大きな電流による放電が可能になり、さらに放電特性に優れた偏平型ボタン電池が実現できる。
【0092】
なお、
図4に例示した正極10Dに設けられる電解液収容部11Dも、上述した各実施形態における電解液収容部と同様、正極10Dに形成され、且つ、全体的に均一とされた断面矩形状の凹部により、その空間が確保されているが、これには限定されない。電解液収容部11Dは、例えば、正極10Dの側面10c及び底面10bの何れか一方あるいは両方にわたるように形成された、断面台形状、断面三角形状、又は断面半円状等の凹部によって空間が確保されたものであってもよく、また、若干の段差を含む形状であっても構わない。
【0093】
<第5の実施形態>
以下、本発明の第5の実施形態に係る偏平型ボタン電池について、主に
図5を参照して説明する。
図5は、第5の実施形態に係る偏平型ボタン電池に備えられる正極10Eを模式的に示す斜視図である。
【0094】
なお、本実施形態の偏平型ボタン電池も、第4の実施形態と同様、正極における電解液収容部の構造以外の構成は、上述した各実施形態の偏平型ボタン電池と同様の構成なので、
図5においては正極10Eのみを示しており、その他の構成については
図1~
図3を適宜参照して説明する。
【0095】
本実施形態の偏平型ボタン電池に備えられる正極10Eは、電解液収容部11Eが、正極缶12の外周壁12c及び底部12dに沿って配置され、且つ、外周壁12c側及び底部12d側の両方に向けて開口するように、円環状で断続的に形成されている(
図1~
図3も参照)。即ち、正極10Eに設けられる電解液収容部11Eは、正極10Dの側面10c側と底面10b側とにわたって開口するように、断面矩形状の凹部として形成されており、且つ、円環状で断続的に複数配置されるように設けられている点で、
図4に示した第4の実施形態における正極10Dと同様である。
図5に示す例では、電解液収容部11Eが、正極10Eの周方向に沿って、合計6箇所で、均等間隔で配置されている。
【0096】
一方、
図5に例示した正極10Eは、電解液収容部11Eが、正極缶12の底部12d側と開口部12aとの間で貫通している。即ち、図示例の正極10Eは、電解液収容部11Eが、正極10Eの厚さ方向で貫通している点で、
図4に示した正極10Dとは異なる。
【0097】
本実施形態の偏平型ボタン電池によれば、上記のように、電解液収容部11Eが、正極缶12の底部12d側と開口部12aとの間で貫通している構成を採用することにより、正極10Eと電解液との接触面積をさらに大きく確保できるとともに、電解液の収容量をさらに増量させることが可能となる。これにより、内部抵抗がさらに効果的に低減され、大電流による放電が可能になり、放電特性により優れた偏平型ボタン電池が実現できる。
【0098】
一方、電解液収容部11Eが、正極10Eの厚さ方向で貫通するように設けられていることで、セパレータ30側にも電解液収容部11Eが露出する。しかしながら、電解液収容部11Eの露出による、正極10Eとセパレータ30との接触面積の減少は僅かなので、本実施形態の偏平型ボタン電池によって得られる効果への影響も僅かである。このような観点からは、電解液収容部11Eのセパレータ30側への露出面積が可能な限り小さくなるように、正極10Eの形状や寸法を調整することが望ましい。
【0099】
なお、
図5に例示した正極10Eに設けられる電解液収容部11Eも、上述した各実施形態における電解液収容部と同様、正極10Eに形成され、且つ、全体的に均一とされた断面矩形状の凹部によって空間が確保されているが、これには限定されない。電解液収容部11Eは、上記各実施形態における説明と同様、例えば、正極10Eの側面10c及び底面10bの何れか一方あるいは両方にわたるように形成された、断面台形状、断面三角形状、又は断面半円状等の凹部によって空間が確保されたものであってもよく、また、若干の段差を含む形状であっても構わない。
【0100】
<第6の実施形態>
以下、本発明の第6の実施形態に係る偏平型ボタン電池について、主に
図6を参照して説明する。
図6は、第6の実施形態に係る偏平型ボタン電池に備えられる正極10Fを模式的に示す斜視図である。
【0101】
なお、本実施形態の偏平型ボタン電池も、第4,5の実施形態と同様、正極における電解液収容部の構造以外の構成は、上述した各実施形態の偏平型ボタン電池と同様の構成なので、
図6においては正極10Fのみを示しており、その他の構成については
図1~
図3を適宜参照して説明する。
【0102】
本実施形態の偏平型ボタン電池に備えられる正極10Fは、電解液収容部11Fが、正極缶12の外周壁12cに沿って配置され、且つ、外周壁12c側に向けて開口するように配置されている点で、
図2に示した第2の実施形態の偏平型ボタン電池60に備えられる正極10Bと同様である。
一方、
図6に例示した正極10Fは、正極缶12の外周壁12c側に加え、さらに、開口部12a側、即ち、セパレータ30側にも開口している点で、
図2中に示した正極10Bとは異なる。
【0103】
本実施形態の偏平型ボタン電池によれば、上記のように、電解液収容部11Fが、正極缶12の外周壁12c側及び開口部12a側の両方に向けて開口した構成を採用することにより、正極10Fと電解液との接触面積を大きく確保できるとともに、電解液の収容量を増量させることが可能となる。これにより、内部抵抗が効果的に低減され、大電流による放電が可能になり、放電特性に優れた偏平型ボタン電池が実現できる。
【0104】
一方、電解液収容部11Fが、正極缶12の開口部12a側に向けて開口していることで、第5の実施形態の正極10Eの場合と同様、セパレータ30側にも電解液収容部11Fが露出する。しかしながら、第5の実施形態の場合と同様、電解液収容部11Fの露出による、正極10Fとセパレータ30との接触面積の減少は僅かなので、本実施形態の偏平型ボタン電池によって得られる効果への影響も僅かである。このような観点からも、上記同様、電解液収容部11Fのセパレータ30側への露出面積が可能な限り小さくなるように、正極10Fの形状や寸法を調整することが望ましい。
【0105】
なお、
図6に例示した正極10Fに設けられる電解液収容部11Fも、上述した各実施形態における電解液収容部と同様、正極10Fに形成され、且つ、全体的に均一とされた断面矩形状の凹部によって空間が確保されているが、これには限定されない。電解液収容部11Fは、上記同様、例えば、若干の段差部や傾斜部を含む形状であっても構わない。
【0106】
<偏平型ボタン電池の他の実施形態>
以下、本発明の他の実施形態に係る偏平型ボタン電池について説明する。
図7~
図9は、本発明の他の実施形態に係る偏平型ボタン電池に備えられる正極10G,10H,10Jを模式的に示す側面図である。
【0107】
図7に示す正極10Gは、
図2に示した偏平型ボタン電池60に備えられる正極10Bに対し、側面10cに設けられた凹部をさらに大型化することで電解液収容部11Gを大容量としたものである。
このような正極10Gによれば、電解液の収容量の増大を図ることが可能になるとともに、正極10Gと電解液との接触面積を顕著に増大させることが可能になる。これにより、電池の内部抵抗を顕著に低減できるので、大電流による放電が可能となり、放電特性が顕著に高められる。
【0108】
また、
図8に示す正極10Hは、
図1に示した偏平型ボタン電池1に備えられる正極10Aに対し、電解液収容部11Hが正極缶12の開口部12a側、即ちセパレータ30側に向けて開口するとともに、コーナーカットによる面取り部10dを、テーパ角度が緩やかな形状に構成したものである(
図1~
図3も参照)。
このような正極10Hによれば、面取り部10dのテーパ角度が緩やかな形状なので、電解液収容部11Hがセパレータ30側に開口している場合であっても、正極10Hとセパレータ30との接触面積の減少は微々たるものなので、本実施形態の偏平型ボタン電池による効果が十分に得られる。また、面取り部10dが長めになるように構成することで、正極10Hと電解液との間の接触面積も十分に確保できる。これにより、電池の内部抵抗を顕著に低減できるので、大電流による放電が可能となり、放電特性が顕著に高められる。
【0109】
また、
図9に示す正極10Jは、
図6に示した正極10Fに対し、側面10c及び上面10aにわたって開口するように設けられた凹部をさらに大型化することで電解液収容部11Jを大容量としたものである。
このような正極10Jによれば、上記の正極10Gの場合と同様、電解液の収容量の増大を図ることが可能になるとともに、正極10Jと電解液との接触面積を顕著に増大させることが可能になる。これにより、電池の内部抵抗を顕著に低減できるので、大電流による放電が可能となり、放電特性が顕著に高められる。
【0110】
<作用効果>
以上説明したように、本実施形態の偏平型ボタン電池1,60,61によれば、正極缶12に収容される正極10A,10B,10Cがペレット層からなり、該ペレット層における正極缶12の外周壁12cの近傍に電解液収容部11A,11B,11Cが形成された構成を採用している。これにより、電解液の収容量を増量できるので、特に、正極10A,10B,10C側における電解液50の含浸量を増大させることが可能となるので、大電流で放電させることが可能となる。
また、電解液収容部11A,11B,11Cを正極缶12の外周壁12c側に配置することで、特に電池特性に影響を与えると考えられる、電池中央部における電極間距離を短く構成できるので、内部抵抗が低減される。また、正極の中央部に電解液収容部を配置した場合に比べて、正極10A,10B,10Cと電解液50との接触面積を大きく確保できるので、内部抵抗を効果的に低減でき、大電流による放電が可能となる。
さらに、正極10A,10B,10Cのセパレータ30側には電解液収容部を設けず、正極10A,10B,10Cとセパレータ30との接触面積を最大限に確保することで、正負極間の対向面積が大きく確保されるので、内部抵抗が上昇するのを防止でき、より大きな電流による放電が可能となる。
加えて、正極を構成するペレット層の中央部に電解液収容部を配置した場合と異なり、ペレット層の中央部が正極缶12と接しているので、偏平型ボタン電池1,60,61を製造する際、正極缶12の底部12dにおける中央部近傍の位置に、パンチ治具からの圧力に対する耐久性を確保させることができる。これにより、偏平型ボタン電池1,60,61の組立時に、正極缶12に凹み等の変形が生じるのを確実に防止することが可能となる。
【実施例0111】
次に、実施例及び比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお本発明は、本実施例によってその範囲が制限されるものではなく、本発明に係る偏平型ボタン電池は、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0112】
<偏平型ボタン電池の作製>
[実施例]
実施例においては、
図1に示すような、正極缶12の開口部12aの内側にガスケット40を介在させて負極缶22を固定し、これらをかしめて密封することで正極缶12と負極缶22との間に収容空間が形成され、収容空間に、正極10A、負極20、セパレータ30及び電解液50が収容された偏平型ボタン電池1を作製した。また、本実施例においては、正極10Aにおける正極缶12の外周壁12cの近傍に、電解液収容部11Aが形成された、本発明に係る構成を有する偏平型ボタン電池1(実施例:
図1)を作製した。
なお、本実施例においては、n=3で偏平型ボタン電池を作製した。
また、本実施例では、
図1~
図3に示す断面図において、外形がφ11.6mm、厚さが5.4mmである偏平型ボタン電池(44タイプ)を作製した。
【0113】
偏平型ボタン電池1の作製にあたっては、まず、正極10Aに用いる正極合剤として、酸化銀(Ag2O):92質量%、二酸化マンガン:5質量%、グラファイト:2質量%、ランタンニッケル(LaNi5):1質量%を混合したものを調整した。なお、上記の酸化銀の平均粒径は10μmであり、二酸化マンガンの平均粒径は30μm、グラファイトの平均粒径は15μm、ランタンニッケルの平均粒径は35μmである。
【0114】
次いで、上記の混合粒子からなる正極合剤を、円盤状のペレット形状(外径11.0mm、厚み1.8mm)に圧縮成型し、ペレット層からなる正極10Aを作製した。
ここで、正極10Aを圧縮成型によって作製する工程においては、ペレット層の一部を切削して凹部を形成することにより、
図1中に示すような電解液収容部11Aを確保可能な正極10Aを作製した。
この際の成型密度は5.5g/cm
3とした。
また、正極10Aには、それぞれ、電解液を35mg滴下して含浸させた。
【0115】
また、負極20に用いる負極合剤として、亜鉛粉末:64質量%、酸化亜鉛粉末:2.5質量%、ゲル化剤としてCMC(カルボキシメチルセルロース):2.50質量%、電解液として水酸化カリウム水溶液30.99質量%、水酸化リチウム(LiOH):0.01質量%を混合した、343mgの合剤を得た。
【0116】
次いで、上記手順で作製した正極10Aを、ニッケルメッキが施された鉄製の複数の正極缶12に収容し、その上からセパレータ30を敷設し、さらに、正極缶12に、圧入形態となるリング状のガスケット40を挿入した。
次いで、セパレータ30上に負極合剤を載置し、この上にガスケット40を介して負極缶22を被せた。そして、正極缶12の開口部12aをかしめることで、本実施例の偏平型ボタン電池1(偏平型アルカリ一次電池)を作製した。
なお、セパレータ30としては、ポリエチレンフィルム、セロファン及び不織布から構成されたものを用い、ガスケット40としては、ポリアミドから構成されたものを用いた。
【0117】
[比較例1]
正極の作製にあたり、電解液収容部を形成しなかった点を除き、上記実施例と同様の条件及び手順で比較例1の偏平型ボタン電池を作製した。
なお、比較例1においては、n=3で偏平型ボタン電池を作製した。
【0118】
[比較例2]
正極の作製にあたり、電解液収容部を正極の底面側中央に形成するとともに、その外径を6.8mm、深さを0.5mmの凹部状とした点を除き、上記実施例と同様の条件及び手順で比較例2の偏平型ボタン電池を作製した。
なお、比較例2においては、n=3で偏平型ボタン電池を作製した。
【0119】
<偏平型ボタン電池の評価>
上記手順で得られた実施例及び比較例1,2の偏平型ボタン電池の内部抵抗を、市販のLCRメーターを用い、R機能により、交流1kHzにおけるインピーダンス値を測定した。この際、常温(25℃)環境下の温度条件で各例の偏平型ボタン電池の内部抵抗を測定した。
また、偏平型ボタン電池を構成する各部材のオーミック抵抗として、放電電流を100mAとして放電したときの、放電初期の電圧降下に基づくオーム損(IRドロップ)を測定した。
また、放電電流を100mA、終止電圧を0.4Vとして放電容量を測定した。
上記の各条件による、実施例及び比較例1,2の偏平型ボタン電池の評価結果を下記表1に示す。
【0120】
【0121】
<評価結果>
上記条件で実施例及び比較例1,2の偏平型ボタン電池の内部抵抗を測定した結果、表1中に示すように、実施例の偏平型ボタン電池1は、内部抵抗の測定値が、平均で3.35(ohm)であった。また、比較例1及び比較例2における内部抵抗の測定値は、それぞれ、4.26(ohm)、3.33(ohm)であった。この結果より、実施例の偏平型ボタン電池1が、正極に電解液収容部を形成しなかった比較例1の偏平型ボタン電池に比べて、内部抵抗が低く抑制されていることが確認できた。これに対し、実施例の偏平型ボタン電池1と、電解液収容部を正極の底面側中央に形成した比較例2の偏平型ボタン電池との内部抵抗の差は、ほぼ見られなかった。
【0122】
一方、表1中に示すように、放電電流を100mAとしたときの、放電初期の電圧降下に基づくIRドロップについては、実施例の偏平型ボタン電池1は、比較例1、2の何れに対しても小さい値となった。この結果より、実施例の偏平型ボタン電池1は、比較例1、2の偏平型ボタン電池に対し、大電流放電に影響を与える内部抵抗特性が優れていることが確認できた。
なお、放電容量については、実施例と比較例1、2との間で明確な差が見られなかった。
【0123】
以上説明した実施例の結果より、本発明で規定する構造を有した正極を用いることで、内部抵抗が上昇するのを抑制できることが確認できた。これにより、本発明に係る構成を有する偏平型ボタン電池は、大電流による放電が可能となるので、放電特性に優れていることが明らかである。
本発明の偏平型ボタン電池は、電池の内部抵抗を増加させることなく、正極側における電解液の含浸量を増量させることができ、特に、大電流で放電した場合の放電時間を顕著に増大させることが可能なものである。従って、本発明を、例えば、時計や電卓等のような小型の電子機器に用いられる偏平型ボタン電池に適用することで、各種電子機器等の性能向上に貢献できる。