(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124509
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】肘関節用サポーター
(51)【国際特許分類】
A41D 13/08 20060101AFI20230830BHJP
A41D 13/05 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
A41D13/08
A41D13/05 162
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028307
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000163006
【氏名又は名称】興和株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】510201562
【氏名又は名称】ディーエムチェーン協同組合
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】小野 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】▲かせ▼野 英憲
【テーマコード(参考)】
3B011
【Fターム(参考)】
3B011AA11
3B011AB09
3B011AB18
3B011AC04
3B011AC17
3B011AC20
3B011AC22
(57)【要約】
【課題】過伸展やテニス肘、ゴルフ肘といった肘関節及びその周辺部位の症状に対し、肘関節及びその周辺部位を安定化させて保護することのできる肘関節用サポーターを提供する。
【解決手段】肘関節用サポーター1は、着用者の上腕にて締着可能な円筒状の生地で形成され、当該生地の表面側に面ファスナーのループ面を有する上アンカー部10と、帯状の生地で形成され、着用者の前腕の背面側に配置される下アンカー領域21、下アンカー領域21から一側方に延在する第1テーピング領域22、及び下アンカー領域21から他側方に延在し、着用時に正面側で第1テーピング領域22と交差する第2テーピング領域23、を有する緊締部20と、円筒状の生地で形成され、上アンカー部10及び緊締部20に固着されて、上アンカー部10及び緊締部20を一体化する装着補助部30とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の上腕にて締着可能な円筒状の生地で形成され、当該生地の表面側に面ファスナーのループ面を有する上アンカー部と、
帯状の生地で形成され、着用者の前腕の背面側に配置される下アンカー領域、前記下アンカー領域から一側方に延在する第1テーピング領域、及び前記下アンカー領域から他側方に延在し、着用時に正面側で前記第1テーピング領域と交差する第2テーピング領域、を有する緊締部と、
円筒状の生地で形成され、前記上アンカー部及び前記緊締部に固着されて、前記上アンカー部及び前記緊締部を一体化する装着補助部と、
前記第1テーピング領域の端部に接合され、前記上アンカー部のループ面に脱着可能な面ファスナーのフック面を有する第1係着部と、
前記第2テーピング領域の端部に接合され、前記上アンカー部のループ面に脱着可能な面ファスナーのフック面を有する第2係着部とを備えることを
特徴とする肘関節用サポーター。
【請求項2】
前記請求項1に記載の肘関節用サポーターにおいて、
前記上アンカー部が、周方向に、面ファスナーのループ面を有するループ部と、前記ループ部の両側端部に縫着され、前記ループ部よりも周方向への伸縮率が大きい伸縮部とを備えることを
特徴とする肘関節用サポーター。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の肘関節用サポーターにおいて、
前記装着補助部が、着用者の前腕に対応する部分に袋状部分を備え、
前記袋状部分が、着用者の上腕骨における外側上顆及び内側上顆に対応する位置に、衝撃吸収材を内包することを
特徴とする肘関節用サポーター。
【請求項4】
前記請求項1ないし3のいずれか一項に記載の肘関節用サポーターにおいて、
前記緊締部及び前記装着補助部が、前記第1テーピング領域及び前記第2テーピング領域の牽引方向にそれぞれ平行な縫着線に沿って互いに縫着されることを
特徴とする肘関節用サポーター。
【請求項5】
前記請求項1ないし4のいずれか一項に記載の肘関節用サポーターにおいて、
前記装着補助部が、着用者の肘を固定するための切欠部分を備えることを
特徴とする肘関節用サポーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過伸展やテニス肘、ゴルフ肘といった肘関節及びその周辺部位の症状に対し、肘関節及びその周辺部位を安定化させて保護することのできる肘関節用サポーターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手関節、足関節若しくは膝関節の捻挫などの外傷予防、これらの外傷を受傷したときの応急処置、受傷後から完全回復までのリハビリテーションの補助、又は、外傷等の再発予防などの医療用の目的に対応するために、帯状のテーピングテープ(身体の任意の部分に貼着して使用する伸縮性又は非伸縮性粘着布テープ)やバンデージ、丸編で編成された略筒状のサポーターなどが使用されている。
【0003】
これらのうち、テーピングテープは、使い切りで経済的ではなく、使用者の体質によっては粘着剤で使用者の皮膚にかぶれを生じさせるうえに、高齢者などの皮膚の弱い使用者にとってはテーピングテープを剥がす際に表皮剥離を生じさせるおそれがあるという問題がある。
また、丸編のサポーターは、テーピングテープと比較して患部の固定力に劣るという問題がある。
【0004】
これに対し、バンデージは、長手方向に伸縮性を有する帯状体を任意のアンカー部に一端を固定して患部に巻回等しているため、患部に追従しやすく、着用者自身で固定力を調整しながら巻回させることができ、着用者の体の動きに対して無理な力が掛からず、安定した支持固定力が得られるとともに、反復使用が可能なために経済的であるという点において優れている。
【0005】
例えば、従来の肘関節に装着可能なサポーターは、伸縮性素材で構成され、かつ筒状に形成されたサポーター本体と、サポーター本体の外周面における長さ方向の一側及び他側にそれぞれ一端部が固定された二つの伸縮ベルトとを備え、二つの伸縮ベルトを弾性力に抗しながらサポーター本体の周方向へそれぞれ伸ばしてサポーター本体に巻いた状態として使用され、これにより、サポート力を調節できる範囲を大きくし、サポート力を適宜調節できるものとする(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のサポーターでは、二つの伸縮ベルトすべてを周方向の同じ向きへ巻回しただけであるため、従来から問題となっている、周方向とは直交する向きの動作である、肩関節と協調した肘関節の過度の伸展動作(過伸展)や、前腕の回旋動作に起因するテニス肘やゴルフ肘に対して、肘関節やその周辺部位を安定化することはできないという課題を有していた。
【0008】
本発明は、上記課題を解消するためになされたものであり、過伸展やテニス肘、ゴルフ肘といった肘関節及びその周辺部位の症状に対し、肘関節及びその周辺部位を安定化させて保護することのできる肘関節用サポーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る肘関節用サポーターは、着用者の上腕にて締着可能な円筒状の生地で形成され、当該生地の表面側に面ファスナーのループ面を有する上アンカー部と、帯状の生地で形成され、着用者の前腕の背面側に配置される下アンカー領域、下アンカー領域から一側方に延在する第1テーピング領域、及び下アンカー領域から他側方に延在し、着用時に正面側で第1テーピング領域と交差する第2テーピング領域、を有する緊締部と、円筒状の生地で形成され、上アンカー部及び緊締部に固着されて、上アンカー部及び緊締部を一体化する装着補助部と、第1テーピング領域の端部に接合され、上アンカー部のループ面に脱着可能な面ファスナーのフック面を有する第1係着部と、第2テーピング領域の端部に接合され、上アンカー部のループ面に脱着可能な面ファスナーのフック面を有する第2係着部とを備える。
【0010】
このように本発明においては、上アンカー部と、下アンカー領域、第1テーピング領域、及び着用時に正面側で第1テーピング領域と交差する第2テーピング領域とを有する緊締部と、これらを一体化する装着補助部とを備えることから、上アンカー部と下アンカー領域との間で、X字状に配される第1テーピング領域及び第2テーピング領域間に作用する伸縮力によって、肘関節の可動域を超えた過伸展を抑制し、肘関節を安定化することができる。
また、前腕の外側(尺骨側)下方から上腕骨に対応する部分の内側まで伸長される第1テーピング領域と、前腕の内側(橈骨側)下方から上腕骨に対応する部分の外側まで伸長される第2テーピング領域により、テニス肘やゴルフ肘の原因となる回旋動作を適度に制限することとなり、外側上顆炎及び内側上顆炎による痛みの発症を低減することができる。
【0011】
本発明に係る肘関節用サポーターは、必要に応じて、上アンカー部が、周方向に、面ファスナーのループ面を有するループ部と、ループ部の両側端部に縫着され、ループ部よりも周方向への伸縮率が大きい伸縮部とを備える。
【0012】
このように本発明においては、上アンカー部が、ループ部と、ループ部よりも周方向への伸縮率が大きい伸縮部とを備えることから、伸縮部の周方向への伸びによって、上アンカー部を径方向に拡げて上アンカー部の開口部分を大きくすることができることとなり、個々の着用者において、上腕の太さの違いに対応して、アンカーとしての機能を有しつつ、肘関節用サポーターの装着を容易にすることができる。
【0013】
本発明に係る肘関節用サポーターは、必要に応じて、装着補助部が、着用者の前腕に対応する部分に袋状部分を備え、袋状部分が、着用者の上腕骨における外側上顆及び内側上顆に対応する位置に、衝撃吸収材を内包する。
【0014】
このように本発明においては、着用者の上腕骨における外側上顆及び内側上顆に対応する位置に衝撃吸収材が内包された袋状部分を有することから、装着時に、第1テーピング領域及び第2テーピング領域によって衝撃吸収材を押圧することによって、前腕伸筋群を圧迫するとともに、肘関節への衝撃を衝撃吸収材によって吸収、分散することができることとなり、より肘関節及びその周辺部位を安定化して保護することができる。
【0015】
本発明に係る肘関節用サポーターは、必要に応じて、緊締部及び装着補助部が、第1テーピング領域及び第2テーピング領域の牽引方向にそれぞれ平行な縫着線に沿って互いに縫着される。
【0016】
このように本発明においては、第1テーピング領域及び第2テーピング領域の牽引方向にそれぞれ平行な縫着線に沿って、緊締部及び装着補助部が互いに縫着されることから、第1テーピング領域及び第2テーピング領域による緊締力を無駄に分散させることなく、X字状に沿って作用させることができることとなり、着用者に不要な負荷をかけることなく、肘関節及びその周辺部位を安定化して保護することができる。
【0017】
本発明に係る肘関節用サポーターは、必要に応じて、装着補助部が、着用者の肘を固定するための切欠部分を備える。
【0018】
このように本発明においては、切欠部分を装着補助部が備えることから、切欠部分において着用者の肘関節を露出、固定して位置決めできることとなり、上アンカー部の上腕への締着による位置決めと協同して、より安定して肘関節用サポーターを着用者の適切な位置に装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る肘関節用サポーターの概略構成を示す図であって、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は側面図である。
【
図2】肘関節及び前腕の可動域を示す概略図である。
【
図3】(a)は
図1に示す上アンカー部におけるループ面の織物組織を示す概略図であり、(b)は(a)におけるA-A線断面図である。
【
図4】(a)は
図1に示す緊締部におけるループ面の織物組織を示す概略図であり、(b)は(a)におけるB-B線断面図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る肘関節用サポーターにおける装着補助部下端の要部拡大図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る肘関節用サポーターの着用方法を示す概略図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係る肘関節用サポーターの概略構成を示す正面図である。
【
図8】本発明の第3の実施形態に係る肘関節用サポーターの概略構成を示す側面図である。
【
図9】肘関節及び前腕の内部構造を模式的に示した模式図である。
【
図10】本発明の第4の実施形態に係る肘関節用サポーターにおける装着補助部下端の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る肘関節用サポーターについて、
図1ないし
図6を用いて説明する。本実施形態の全体を通して、同じ要素には同じ符号を付している。
なお、以下の説明において、肘関節を地面側に向けた状態で、肘関節側を背面側、肘関節と反対側を正面側、身体側を内側、身体とは反対側を外側と称することとする。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係る肘関節用サポーター1は、生地表面側に面ファスナーのループ面を有する織地で織成され、着用者の上腕にて締着される無底円筒状の上アンカー部10と、帯状の織地で織成され、着用者の前腕の背面側に配置される下アンカー領域21、下アンカー領域21から一側方に延在する第1テーピング領域22、及び下アンカー領域21から他側方に延在し、着用時に正面側で第1テーピング領域22と交差する第2テーピング領域23、を有する緊締部20と、円筒状に織成され、上アンカー部10及び緊締部20に固着されて、上アンカー部10及び緊締部20を一体化する装着補助部30とを備える。装着補助部30の固着方法としては、縫着、ホットメルト、超音波溶着、熱融着等があるが、製造性の観点から、縫着が好ましい。
上アンカー部10、緊締部20及び装着補助部30は、編地として構成することもできるが、本明細書においては、織地である場合を例にとって説明する。
【0022】
また、肘関節用サポーター1は、緊締部20の一端である第1テーピング領域22の端部に接合され、上アンカー部10のループ面に脱着する面ファスナーのフック面を有する第1係着部40と、緊締部20の他端である第2テーピング領域23の端部に接合され、上アンカー部10のループ面に脱着する面ファスナーのフック面を有する第2係着部41とを備える。第1係着部40及び第2係着部41の緊締部20への接合方法としては、縫着、ホットメルト、超音波溶着、熱融着等があるが、製造性の観点から、縫着が好ましい。
【0023】
以下、本実施形態に係る肘関節用サポーター1の構成について詳細に説明する前に、肘関節の可動域、痛みの症状などについて説明する。
【0024】
肘関節の動きとしては、
図2(a)に示すように、肩関節と協調した伸展(肘を伸ばす)、屈曲(肘を曲げる)が挙げられる。また、前腕の動きとしては、
図2(b)及び
図2(c)に示すような回旋運動がある。回旋運動は、手掌を身体内側に向けた状態から、手掌を身体内側に回転させて手掌を下方向に向ける動作である回内と、手掌を身体外側に回転させて手掌を上方向に向ける動作である回外とがある。
各動作における可動域は、伸展5度、屈曲145度、回内90度、回外90度とされる。
【0025】
以上の肘関節等の可動域を踏まえた上で、肘関節及びその周辺部位に見られる痛みの症状について説明する。
【0026】
まず、第1に、長時間重いものを持ち上げているときの痛みや、肘関節を伸ばした状態で手をついたときの痛みである。肘関節を伸ばした状態で手をついたときの痛みの原因としては、伸展の可動域を超えて過度に肘が伸ばされて(以下、過伸展と称する)、肘関節の側副靭帯が損傷(捻挫)することである。肘関節には、内側側副靭帯、外側側副靭帯、橈骨輪状靭帯と三つの靭帯があり、このうち、内側側副靭帯と外側側副靭帯とで肘関節の内外側を補強することで肘関節を安定化しているが、これらの側副靭帯が損傷することで過伸展による痛みが発症する。
【0027】
第2に、物の持ち上げ動作やドアノブの捻り動作、タオルの絞り動作、テニスのバックハンド動作のときに生じる肘の外側(親指側)の痛み(テニス肘)、第3に、手首の曲げや捻り動作、テニスのフォアハンド動作、ゴルフクラブの不適切なスイング動作のときの肘の内側(小指側)の痛み(ゴルフ肘)が挙げられる。テニス肘の痛みの原因は、上腕骨下部の外側の隆起部分である外側上顆の炎症である。また、ゴルフ肘の痛みの原因は、上腕骨下部の内側の隆起部分である内側上顆の炎症である。上述したように、これらテニス肘及びゴルフ肘の痛みの原因の一つとして、前腕の捻り動作が挙げられる。
【0028】
本実施形態に係る肘関節用サポーター1は、上記過伸展やテニス肘・ゴルフ肘に起因する痛みに対し、肘関節及びその周辺部位を安定化させて保護するものである。
【0029】
続けて、本実施形態に係る肘関節用サポーター1の構成について、詳細に説明する。
【0030】
第1係着部40は、長方形と等脚台形とを組み合わせた平面形状であり、長方形部分40aが緊締部20の一の面(裏地面)に縫製され、等脚台形部分40bが緊締部20の一端から突出している。
同様に、第2係着部41は、長方形と等脚台形とを組み合わせた平面形状であり、長方形部分41aが緊締部20の一の面(裏地面)に縫製され、等脚台形部分41bが緊締部20の他端から突出している。
このように、第1係着部40(第2係着部41)の等脚台形部分40b(等脚台形部分41b)が、緊締部20の一端(緊締部20の他端)から突出していることにより、緊締部20と重畳しない分だけ薄くなり、等脚台形部分40b(等脚台形部分41b)を着用者の手の指で把持しやすくし、上アンカー部10のループ面に対して第1係着部40のフック面(第2係着部41のフック面)を容易に脱着することができる。
【0031】
肘関節用サポーター1は、着用者の左腕又は右腕の肘関節に着用可能な左右兼用である。
【0032】
上アンカー部10は、無底円筒状であって、ニードル織機やジャカードニードル織機などの力織機により、経糸50及び緯糸51を組み合わせて織成され、経糸方向(周方向、着用者の上腕回り)に伸縮性を有し、緯糸方向(幅方向)の伸縮性を抑制した伸縮織物からなる。
【0033】
上アンカー部10は、着用者の上腕にて締着されることにより、着用者の肘関節に対して肘関節用サポーター1を位置決めするとともに、上アンカー部10に係着される緊締部20の上部アンカーとなる。
【0034】
緊締部20は、帯状であって、ニードル織機やジャカードニードル織機などの力織機により、経糸50及び緯糸51を組み合わせて織成され、上アンカー部10と同様に、経糸方向(長手方向、着用者の前腕周り)に伸縮性を有し、緯糸方向(幅方向)の伸縮性を抑制した伸縮織物からなる。
【0035】
緊締部20の幅としては、2ないし8cmが好ましく、4ないし6cmが更に好ましい。緊締部20の幅を2ないし8cmとすることで、着用者の前腕から上腕にかけて緊締部20を巻回しやすくなり、また、十分な肘関節の固定力が得られる。
【0036】
緊締部20は、着用者の前腕の背面側に配置される下アンカー領域21と、下アンカー領域21から一側方に延在する第1テーピング領域22と、下アンカー領域21から他側方に延在し、着用時に正面側で第1テーピング領域22と交差する第2テーピング領域23とを備える。下アンカー領域21、第1テーピング領域22及び第2テーピング領域23は同幅で直線状に配置される。
【0037】
上アンカー部10の経糸50は、
図3に示すように、緯糸51とともに織物の一の面を構成する経地糸50aと、経糸方向で隣り合う複数の緯糸51上に浮いて織物の他の面にループを形成するパイル糸50bと、経糸方向に伸縮性を付与する弾性糸50cとを備える。以後、上アンカー部10のループ面を有する面を「表地面」と称し、その裏面を「裏地面」と称する。
【0038】
経地糸50aとしてポリエステル、ナイロン等の繊維を、パイル糸50bとしてポリエステル、ナイロン等の繊維を、弾性糸50cとしてポリウレタン等の繊維を用いることができる。
【0039】
緯糸51は、経地糸50aとともに織物の裏地面を構成する緯地糸51aと、緯地糸51aに並設される熱融着性を有する融着糸51bとを備え、1本の緯地糸51a及び1本の融着糸51bを並設して1本の緯糸51として構成される。
図3においては、1本の緯地糸51a及び1本の融着糸51bを1本の緯糸51として図示している。また、
図3(b)においては、並設される緯糸51を基準にして、上側が表地面となり、下側が裏地面となる。
【0040】
緯糸地51aとしてポリエステル、ナイロン等の繊維を、また、緯糸地51bとしてポリエステル、ナイロン等の繊維を用いることができる。
【0041】
次に、本実施形態に係る上アンカー部10の織物組織の一例を
図3を用いて説明する。
【0042】
ループ面をなす経地糸50aは、1本の緯糸51(緯地糸51a、融着糸51b)に対して上側を通って浮き、隣り合う3本の緯糸51(緯地糸51a、融着糸51b)に対して下側を通って沈む、緯糸51(緯地糸51a、融着糸51b)との1-3の交差浮沈を繰り返して、織物組織を構成する。
また、ループ面をなすパイル糸50bは、隣り合う6本の緯糸51(緯地糸51a、融着糸51b)に対して上側を通って浮き、隣り合う2本の緯糸51(緯地糸51a、融着糸51b)に対して下側を通って沈み、隣り合う2本の緯糸51(緯地糸51a、融着糸51b)に対して上側を通って浮き、隣り合う2本の緯糸51(緯地糸51a、融着糸51b)に対して下側を通って沈む、緯糸51(緯地糸51a、融着糸51b)との6-2-2-2の交差浮沈を繰り返して、織物組織を構成する。
また、ループ面をなす弾性糸50cは、1本の緯糸51(緯地糸51a、融着糸51b)に対して上側を通って浮き、1本の緯糸51(緯地糸51a、融着糸51b)に対して下側を通って沈む、緯糸51(緯地糸51a、融着糸51b)との1-1の交差浮沈を繰り返して、織物組織を構成する。
なお、
図3に示す経地糸50a、パイル糸50b及び弾性糸50cによる織物組織は一例であり、表地面にループ(ループ面)を有することができれば、この織物組織に限られるものではない。
【0043】
緊締部20は、上アンカー部10の編成糸において、経糸50を構成するパイル糸50bの替わりに、前述の経地糸50a(以下、緊締部20の経地糸50aを「第1経地糸50a」と称する)に対して、緯糸51との交差浮沈を逆に対応させた経地糸50a(以下、第2経地糸50dと称する)を用いている。
【0044】
すなわち、経糸50は、
図4に示すように、緯糸51とともに織物の一の面(例えば、裏地面)を構成する第1経地糸50aと、経糸方向に伸縮性を与える弾性糸50cと、緯糸51とともに織物の他の面(例えば、表地面)を構成する第2経地糸50dと、を備える。
また、緯糸51は、第1経地糸50aとともに織物の裏地面を構成する緯地糸51aを備える。
図4(b)においては、並設される緯糸51を基準にして、上側が表地面となり、下側が裏地面となる。
【0045】
次に、
図4を用いて本実施形態に係る緊締部20の織物組織の一例を説明する。
【0046】
第1経地糸50aは、1本の緯糸51(緯地糸51a)に対して上側を通って浮き、隣り合う3本の緯糸51(緯地糸51a)に対して下側を通って沈む、緯糸51(緯地糸51a)との1-3の交差浮沈を繰り返して、織物組織を構成する。
また、弾性糸50cは、1本の緯糸51(緯地糸51a)に対して上側を通って浮き、1本の緯糸51(緯地糸51a)に対して下側を通って沈む、緯糸51(緯地糸51a)との1-1の交差浮沈を繰り返して、織物組織を構成する。
また、第2経地糸50dは、隣り合う3本の緯糸51(緯地糸51a)に対して上側を通って浮き、1本の緯糸51(緯地糸51a)に対して下側を通って沈む、緯糸51(緯地糸51a)との3-1の交差浮沈を繰り返して、織物組織を構成する。
なお、
図4に示す第1経地糸50a、弾性糸50c及び第2経地糸50dによる織物組織は一例であって、この織物組織に限られるものではない。
【0047】
なお、上アンカー部10(又は緊締部20)は、ジャカードニードル織機を用いることにより、経糸方向で隣り合う複数の緯糸51に対して、経糸50の経地糸50a(又は第1経地糸50a)を表地面側に浮かせ、経糸50のパイル糸50b(又は第2経地糸50d)を裏地面側に沈ませて、自由に開口するジャガード組織にて、文字、図形若しくは記号又はこれらの結合からなる紋様を表地面に部分的に形成することができる。
この場合、上アンカー部10は、紋様の領域を除き、表地面の略全面にループ(ループ面)を有することになる。また、紋様を形成しない場合には、上アンカー部10及び緊締部20は、ニードル織機により織成されることとなる。
【0048】
また、上アンカー部10及び緊締部20は、経糸50及び緯糸51の材質(特に、弾性糸50c及び緯地糸51aの太さ)並びに緯糸51の打込み回数(本数)により、経糸方向の最大伸度を自在に調整することが可能である。
ここで、最大伸度とは、「巾7.0cmの試験片を用意し、巾方向の全幅をつかみ、引張試験機(島津製作所製、EZ-TEST EZ-L)にセットした後、10cm間隔(L0)に印を付け、54.4Nの荷重を加え、1分間保持後の印間の長さ(L1)を、L0で除した値」をいう。
【0049】
緊締部20の経糸方向の最大伸度は、1.1ないし5であることが好ましく、1.5ないし3であることがより好ましく、1.7ないし2であることが更に好ましい。
また、上アンカー部10の経糸方向の最大伸度は、緊締部20の経糸方向の最大伸度よりも大きいことが好ましく、1.3ないし6であることがより好ましく、1.7ないし4であることがより好ましく、2ないし2.4の範囲内であることが更に好ましい。
【0050】
このように、肘関節用サポーター1は、上アンカー部10の経糸方向の最大伸度が緊締部20の経糸方向の最大伸度よりも大きいことにより、上アンカー部10による着用者の上腕に対する締付力を抑制しつつ(上腕における血流阻害による着用者への不快感を起こさせず)、緊締部20の緊締力により肘関節を固定して肘関節の安定性を向上し、肘関節への負担を軽減することができる。
【0051】
緊締部20は、厚すぎると着用者の前腕から上腕にかけて緊締部20を巻回する際に嵩張り巻きにくくなり、薄すぎると緊締部20の織物自体が折れやすく所望の固定力が得られない。このため、緊締部20の厚さとしては、緊締部20を上腕及び前腕に対して巻回しやすく、所望の固定力を得ることができる厚さに設定することが好ましく、例えば、3mm以下に設定することが好ましく、1ないし2mmに設定することがより好ましく、1.3ないし1.7mmに設定することが更に好ましい。
【0052】
また、上アンカー部10は、厚すぎると着用者の上腕に上アンカー部10を締着する際に嵩張り巻きにくくなり、薄すぎると上アンカー部10の織物自体が折れやすく所望の締結力が得られない。このため、上アンカー部10の厚さとしては、着用者の上腕に上アンカー部10を締結しやすく、所望の締結力を得ることができる厚さに設定することが好ましく、例えば、4mm以下に設定することが好ましく、1ないし3mmに設定することがより好ましく、1.3ないし1.7mmに設定することが更に好ましい。
【0053】
上アンカー部10の幅方向の大きさとしては、4ないし12cmであることが好ましく、5ないし11cmであることがより好ましく、6ないし9cmであることが更に好ましい。
【0054】
装着補助部30は、上端から略半円形状に切り欠かれた切欠部分31を備えた略無底円筒状であって、ニードル織機やジャカードニードル織機などの力織機により、経糸及び緯糸を組み合わせて織成され、経糸方向及び緯糸方向に伸縮性を有する伸縮織物からなる。
経糸は、緯糸とともに織物の一の面(例えば、裏地面)を構成する第1経地糸と、経糸方向に伸縮性を与える弾性糸と、緯糸とともに織物の他の面(例えば、表地面)を構成する第2経地糸とを備える。
また、緯糸は、第1経地糸とともに織物の裏地面を構成する緯地糸と、経糸方向に伸縮性を与える弾性糸とを備える。
【0055】
装着補助部30は、切欠部分31を着用者の肘関節に対応させて、肘関節に対して肘関節用サポーター1を位置決めする。
切欠部分31の大きさとしては、装着補助部30の全面積を1としたとき、0.01ないし0.5であることが好ましく、0.05ないし0.2であることがより好ましく、0.08ないし0.1であることが更に好ましい。
このように、切欠部分31を装着補助部30が備えることから、切欠部分31において着用者の肘関節を露出、固定して位置決めできることとなり、上アンカー部10の上腕への締着による位置決めと協同して、より安定して肘関節用サポーター1を着用者の適切な位置に装着することができる。
【0056】
装着補助部30は、その上端が上アンカー部10の上端に縫着されるとともに、その下端が緊締部20の下端に縫着されて、上アンカー部10と緊締部20とを一体化する。
装着補助部30は、
図5に示すように、緊締部20と下端を平行(一致を含む)とされ、これら下端と平行な縫着線60によって縫着される。
【0057】
次に、本実施形態に係る肘関節用サポーター1の着用方法について、
図6を用いて説明する。以下では、肘関節用サポーター1を着用者の右肘に装着した場合を例にとって説明する。
【0058】
図6(a)に示すように、着用者は、上アンカー部10を左手で把持し、上アンカー部10を右上腕まで引き上げる。この際、上アンカー部10は、装着補助部30の切欠部分31から着用者の右手の肘関節が露出する位置まで引き上げられて、肘関節用サポーター1を着用者の右腕の適切な位置に位置決めする。
【0059】
上アンカー部10と装着補助部30との位置決め後、着用者は、
図6(b)に示すように、左手で緊締部20(第1テーピング領域22)の一端を把持しながら第1テーピング領域22を牽引し、前腕の外側(尺骨側)下方から、肘関節とは反対側の正面側部位をとおって、上腕骨に対応する部分の内側まで第1テーピング領域22を伸長させる。
そして、着用者は、上アンカー部10のループ面に緊締部20の一端に固着された第1係着部40のフック面を係着させる。
【0060】
次に、着用者は、
図6(c)及び
図6(d)に示すように、左手で緊締部20(第2テーピング領域23)の他端を把持しながら第2テーピング領域23を牽引し、前腕の内側(橈骨側)下方から、肘関節とは反対側の正面側部位をとおって、上腕骨に対応する部分の外側まで第2テーピング領域23を伸長させる。このとき、第2テーピング領域23は、第1テーピング領域22とX字状に交差する。
図6(c)に示す例では、第1テーピング領域及び第2テーピング領域23は、肘窩近傍にてX字状に交差している。
そして、着用者は、上アンカー部10のループ面に緊締部20の他端に固着された第2係着部41のフック面を係着させて、肘関節サポーター1の装着を完了する。
【0061】
以上のように、上アンカー部10と、下アンカー領域21、第1テーピング領域22、及び着用時に正面側で第1テーピング領域22と交差する第2テーピング領域23とを有する緊締部20と、これらを一体化する装着補助部30とを備えることから、上アンカー部10と下アンカー領域21との間で、X字状に配される第1テーピング領域22及び第2テーピング領域23間に作用する伸縮力によって、肘関節の可動域を超えた過伸展を抑制し、肘関節を安定化することができる。
また、前腕の外側(尺骨側)下方から上腕骨に対応する部分の内側まで伸長される第1テーピング領域22と、前腕の内側(橈骨側)下方から上腕骨に対応する部分の外側まで伸長される第2テーピング領域23により、テニス肘やゴルフ肘の原因となる回旋動作を適度に制限することとなり、外側上顆炎及び内側上顆炎による痛みの発症を低減することができる。
【0062】
(本発明の第2の実施形態)
第1の実施形態に係る肘関節用サポーターにおいては、上腕アンカー部を面ファスナーのループ面を有する織地で織成された無底円筒状とする構成としているが、これに限らず、
図7に示すように、周方向に、面ファスナーのループ面を有するループ部と、当該ループ部よりも周方向への伸縮率が大きい伸縮部とを有する構成とすることもできる。
【0063】
上アンカー部70は、無底円筒状に形成され、面ファスナーのループ面を有する織地で織成されたループ部71と、ループ部71の両側端部に縫着され、ループ部71よりも周方向への伸縮率が大きい織地で織成された伸縮部72とを備える。
【0064】
ループ部71の伸縮率は、1.1ないし4倍であることが好ましく、1.5ないし3倍であることが更に好ましい。また、伸縮部72の伸縮率は1.5ないし6倍であることが好ましく、2ないし4倍であることが更に好ましい。
ここで、伸縮率は、「巾7.0cmの試験片を用意し、巾方向の全幅をつかみ、引張試験機(島津製作所製、EZ-TEST EZ-L)にセットした後、5cm間隔(L0)に印を付け、54.4Nの荷重を加え、1分間保持後の印間の長さ(L1)を、L0で除した値」をいう。
以上のように、伸縮部72の伸縮率を1.5ないし6倍とすることで、伸縮部72の周方向への伸びによって、上アンカー部10を径方向に拡げて上アンカー部10の開口部分を大きくすることができることとなり、個々の着用者において、上腕の太さの違いに対応して、アンカーとしての機能を有しつつ、肘関節用サポーター1の装着を容易にすることができる。
【0065】
また、伸縮部72の伸縮率は、ループ部71の伸縮率を1とした場合、1.1ないし3であることが好ましく、1.3~2であることが更に好ましい。
【0066】
伸縮部72の周方向の大きさとしては、上アンカー部10の周方向の全長を1とした場合、0.2ないし0.6であることが好ましく、0.3ないし0.5であることが更に好ましい。
【0067】
図7において、伸縮部72は、上腕の正面側に配置されているが、第1テーピング領域22及び第2テーピング領域23のX字状の交差による肘関節の固定を阻害しなければこれに限らず、例えば、上腕の背面側に配置することもできる。
【0068】
このように、上アンカー部70が、ループ部71と、ループ部71よりも周方向への伸縮率が大きい伸縮部72とを備えることから、伸縮部72の周方向への伸びによって、上アンカー部70を径方向に拡げて上アンカー部70の開口部分を大きくすることができることとなり、個々の着用者において、上腕の太さの違いに対応して、アンカーとしての機能を有しつつ、肘関節用サポーター1の装着を容易にすることができる。
【0069】
(本発明の第3の実施形態)
第1の実施形態及び第2の実施形態に係る肘関節用サポーターにおいては、装着補助部を上端から略半円形状に切り欠かれた切欠部分を備えた略無底円筒状とする構成としているが、これに限らず、
図8に示すように、切欠部分を備えるとともに、装着補助部の前腕側に袋状部を設け、この袋状部の中に衝撃吸収材を内包、固着する構成とすることもできる。
【0070】
装着補助部80は、上記第1の実施形態及び第2の実施形態における装着補助部30よりも長尺な織地から形成され、下端が折り返されて、着用者の前腕に対応する部分に袋状部分81が形成される。
袋状部分81には、左右一対の衝撃吸収材82が内包されて、装着補助部80に縫着されている。
【0071】
衝撃吸収材82は、上腕骨の内側上顆及び外側上顆に対応する位置であって、着用者が肘関節用サポーター1を装着した際に、伸長した第1テーピング領域22及び第2テーピング領域23と重複する位置に配置される。
外側上顆及び内側上顆は、上腕骨下部の隆起部分であり、例えば、外側上顆は、
図9に示すように、手根伸筋や総指伸筋が重なるようにして付着している部分である。
衝撃吸収材82は、肘関節用サポーター1の装着時に、第1テーピング領域22及び第2テーピング領域23によって押圧されることで、手根伸筋等の前腕伸筋群を圧迫することとなる。
【0072】
衝撃吸収材82の形状としては、特に制限されないが、略長方形又は略楕円形とすることができる。
なお、衝撃吸収材82は、左右いずれか一方のみに内包されていてもよい。
【0073】
衝撃吸収材82の大きさとしては、装着補助部30の全面積を1とした場合、0.01ないし0.1であることが好ましく、0.02ないし0.07であることより好ましく、0.03ないし0.05であることが更に好ましい。
衝撃吸収材82の大きさ(実寸)としては、衝撃吸収材82が略長方形である場合、横幅(周方向)1ないし10cm×縦幅(周方向と直交する方向)1ないし10cmであることが好ましく、横幅2ないし6cm×縦幅2ないし6cmであることがより好ましく、横幅3ないし5cm×縦幅3ないし5cmであることが更に好ましい。また、衝撃吸収材82が略楕円形である場合、長径2ないし11cm×短径1ないし10cmであることが好ましく、長径3ないし7cm×短径2ないし6cmであることがより好ましく、長径4ないし6cm×短径3ないし5cmであることが更に好ましい。
【0074】
衝撃吸収材82の厚さとしては、0.5ないし10mmであることが好ましく、1ないし7mmであることがより好ましく、3ないし5mmであることが更に好ましい。
【0075】
衝撃吸収材82の見かけ密度としては、50ないし160g/m3が好ましく、70ないし110g/m3が更に好ましい。
【0076】
衝撃吸収材82の25%圧縮応力は、30ないし240kPaであることが好ましく、90ないし110kPaであることが更に好ましい。衝撃吸収材82の25%圧縮応力を30ないし240kPaとすることで、肘関節への衝撃を吸収、分散しやすくすることができる。ここで、25%圧縮時応力は、JIS K 6767:1999に基づいて測定することができる。
【0077】
衝撃吸収材82の材料としては、ポリエチレン、ナイロン、ポリウレタン等の原料を用いることができるが、肘関節への衝撃を吸収、分散する観点から、特にポリエチレンを用いることが好ましい。
【0078】
このように、着用者の上腕骨における外側上顆及び内側上顆に対応する位置に衝撃吸収材82が内包された袋状部分81を有することから、装着時に、第1テーピング領域22及び第2テーピング領域23によって衝撃吸収材82を押圧することによって、前腕伸筋群を圧迫するとともに、肘関節への衝撃を衝撃吸収材82によって吸収、分散することができることとなり、より肘関節及びその周辺部位を安定化して保護することができる。
【0079】
(本発明の第4の実施形態)
第1の実施形態ないし第3の実施形態に係る肘関節用サポーターにおいては、緊締部(下アンカー領域)と装着補助部は、緊締部の下端に平行な縫着線によって縫着される構成としているが、これに限らず、
図10に示すように、緊締部(下アンカー領域)と装着補助部は、第1テーピング領域及び第2テーピング領域の牽引方向と平行な縫着線によって互いに縫着される構成とすることもできる。
【0080】
図10(a)に示すように、緊締部20は、その下アンカー領域21において、第1テーピング領域22の牽引方向と平行な縫着線90と、第2テーピング領域23の牽引方向と平行な縫着線91によって、装着補助部30の下端に縫着される。
図10(a)では、縫着線90、91は、上腕側に拡開したV字状に配置されているが、縫着線90、91とは必ずしも連結されている必要はなく、上腕側に拡開したハの字状であってもよい。
また、装着補助部30の下端は、緊締部20の下端と平行となっているが、
図10(b)に示すように、装着補助部30の下端を縫着線90、91に沿うように屈曲させた状態で緊締部20に縫着させてもよい。これにより、縫着線92、93よりも下方に固着されていない装着補助部30がなく、装着・使用時に生地の捲れが起こらないこととなり、着用者に不快感を与えることがない。
【0081】
縫着線90ないし93と緊締部20とのなす角θとしては、特に制限されないが、緊締部20を一端又は他端側に牽引した場合に、角θが180°に近いほど、上アンカー部10の周方向に力が働いて上アンカー部10が回転することになり、角θが90°に近いほど、緊締部20の幅方向に力が働いて下アンカー領域21が上腕側にずり上がることになる。そのため、角θの範囲は、緊締部20を一端又は他端側に牽引した場合に、上アンカー部10に浮きが生じず、また、下アンカー領域21のずれ上がりを防止するとともに、下アンカー領域21の下端近傍が捩れない状態で、上アンカー部10に対して第1テーピング領域22及び第2テーピング領域23を斜め上方に牽引できるように、肘関節用サポーター1の使用方法の簡便さを考慮して、40°未満に設定することが好ましく、5°ないし30°に設定することがより好ましく、10°ないし20°に設定することが更に好ましい。
【0082】
このように、第1テーピング領域22及び第2テーピング領域23の牽引方向にそれぞれ平行な縫着線90ないし93に沿って、緊締部20及び装着補助部30が互いに縫着されることから、第1テーピング領域22及び第2テーピング領域23による緊締力を無駄に分散させることなく、X字状に沿って作用させることができることとなり、着用者に不要な負荷をかけることなく、肘関節及びその周辺部位を安定化して保護することができる。
【0083】
なお、上記各実施形態は、適宜組み合わせて使用することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 肘関節用サポーター
10 上アンカー部
20 緊締部
21 下アンカー領域
22 第1テーピング領域
23 第2テーピング領域
30 装着補助部
31 切欠部分
40 第1係着部
40a 長方形部分
40b 等脚台形部分
41 第2係着部
41a 長方形部分
41b 等脚台形部分
50 経糸
50a 経地糸(第1経地糸)
50b パイル糸
50c 弾性糸
50d 第2経地糸
51 緯糸
51a 緯地糸
51b 融着糸
60 縫着線
70 上アンカー部
71 ループ部
72 伸縮部
80 装着補助部
81 袋状部分
82 衝撃吸収材
90、91、92、93 縫着線