(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124512
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】ポリオール組成物の製造方法、硬質ポリウレタンフォーム用組成物の製造方法及び硬質ポリウレタンフォームの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 63/91 20060101AFI20230830BHJP
C08G 18/42 20060101ALI20230830BHJP
C08G 63/06 20060101ALI20230830BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20230830BHJP
【FI】
C08G63/91
C08G18/42 083
C08G63/06
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028311
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000165000
【氏名又は名称】群栄化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】孫 吟
(72)【発明者】
【氏名】後藤 敏晴
【テーマコード(参考)】
4J029
4J034
【Fターム(参考)】
4J029AA02
4J029AB01
4J029AD01
4J029AD03
4J029AE17
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4J034QB14
4J034QB16
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4J034RA15
(57)【要約】
【課題】植物由来の原料を用い、フォーム特性の良好な硬質ポリウレタンフォームが得られるポリオール組成物が得られる製造方法を提供する。
【解決手段】ポリ乳酸樹脂を、前記ポリ乳酸樹脂の乳酸単位1モルに対して0.2モル以上のトリオールで加溶媒分解する工程を含む、ポリエステルポリオールを含むポリオール組成物の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸樹脂を、前記ポリ乳酸樹脂の乳酸単位1モルに対して0.2モル以上のトリオールで加溶媒分解する工程を含む、ポリエステルポリオールを含むポリオール組成物の製造方法。
【請求項2】
前記トリオールがグリセリンを含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記加溶媒分解する工程で得られた反応物を脱水する工程をさらに含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法によってポリオール組成物を製造し、
前記ポリオール組成物と触媒と発泡剤とを混合する、硬質ポリウレタンフォーム用組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法によってポリオール組成物を製造し、
前記ポリオール組成物とポリイソシアネートとを、触媒及び発泡剤の存在下で反応させる、硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオール組成物の製造方法、硬質ポリウレタンフォーム用組成物の製造方法及び硬質ポリウレタンフォームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硬質ポリウレタンフォームは、断熱性、低温での寸法安定性及び施工性等に優れることから、建材や冷蔵庫、冷凍庫等の断熱材、構造材、現場建築施工用スプレー等、幅広い範囲で使用される。硬質ポリウレタンフォームは一般に、ポリオールとポリイソシアネートとを、触媒及び発泡剤の存在下で反応させて製造される。
【0003】
近年、環境への配慮から、石油や石炭等から得た原料の代わりに、再生可能な植物由来の原料で代替することや、プラスチック製品からプラスチックを再生利用することが検討されている。植物由来の原料や再生プラスチックを用いたポリオールとして、例えば以下のものが知られている。
・ヒマシ油、ポリヒマシ油及び水酸基化大豆油からなる群より選ばれる油脂を開始剤として用いて、DL体、L体もしくはD体のラクチドを開環重合させるか、又はDL体、L体もしくはD体の乳酸を脱水縮合重合させるかによって得られる重合物であるポリエステルポリオール(特許文献1)。
・再生ポリエチレンテレフタレート(PET)等の芳香族ポリ酸ソースを所定量のグリコールと共に加熱し、得られた消化中間体を、エステル等の官能基を含有する可消化ポリマーと反応させて製造される、約10~約800mgKOH/mの水酸基価を有するポリエステルポリオール(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/029527号
【特許文献2】特表2017-535662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のポリエステルポリオールを用いて硬質ポリウレタンフォームを形成しようとすると、発泡しないか、発泡しても不充分で、断熱性等のフォーム特性が充分に発現しないことがある。
特許文献2のポリエステルポリオールは、芳香族ポリ酸ソースから消化中間体を得る際の反応性が低く、得られるポリエステルポリオール組成物が不均一になることがある。このようなポリエステルポリオールを用いて硬質ポリウレタンフォームを形成しようとすると、イソシアネートとの反応性が不均一となり、硬質ポリウレタンフォームが得られない。また、特許文献2では、芳香族ポリ酸ソースを用いるので、植物由来の原料の比率を高めることに限界がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、植物由来の原料を用い、フォーム特性の良好な硬質ポリウレタンフォームが得られるポリオール組成物が得られるポリオール組成物の製造方法、並びにこれを用いた硬質ポリウレタンフォーム用組成物の製造方法及び硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の態様を有する。
[1]ポリ乳酸樹脂を、前記ポリ乳酸樹脂の乳酸単位1モルに対して0.2モル以上のトリオールで加溶媒分解する工程を含む、ポリエステルポリオールを含むポリオール組成物の製造方法。
[2]前記トリオールがグリセリンを含む、前記[1]の製造方法。
[3]前記加溶媒分解する工程で得られた反応物を脱水する工程をさらに含む、前記[1]又は[2]の製造方法。
[4]前記[1]~[3]のいずれかの製造方法によってポリオール組成物を製造し、
前記ポリオール組成物と触媒と発泡剤とを混合する、硬質ポリウレタンフォーム用組成物の製造方法。
[5]前記[1]~[3]のいずれかの製造方法によってポリオール組成物を製造し、
前記ポリオール組成物とポリイソシアネートとを、触媒及び発泡剤の存在下で反応させる、硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、植物由来の原料を用い、フォーム特性の良好な硬質ポリウレタンフォームが得られるポリオール組成物が得られるポリオール組成物の製造方法、並びにこれを用いた硬質ポリウレタンフォーム用組成物の製造方法及び硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔ポリオール組成物の製造方法〕
本発明の一実施形態は、ポリ乳酸樹脂を、前記ポリ乳酸樹脂の乳酸単位の乳酸単位1モルに対して0.2モル以上のトリオールで加溶媒分解する工程(加溶媒分解工程)を含む、ポリエステルポリオールを含むポリオール組成物の製造方法である。
【0010】
<トリオール>
トリオールは、3価アルコールともいい、アルコール性水酸基を3つ有する化合物である。加溶媒分解工程で用いられるトリオール(以下、「原料トリオール」とも記す。)としては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ヘキサントリオール等の炭素数3~20の脂肪族トリオールが挙げられる。原料トリオールは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0011】
原料トリオールとしては、加溶媒分解工程で得られる反応物を低粘度にできる点から、グリセリンが好ましい。反応物が低粘度であれば、イソシアネートとの混和性が向上し反応しやすくなることからフォームの成形性が良好である。
グリセリンと他のトリオールとを併用してもよい。
原料トリオールの総質量に対するグリセリンの割合は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、100質量%であってもよい。
【0012】
<ポリ乳酸樹脂>
ポリ乳酸樹脂としては、乳酸単位からなるポリ乳酸、乳酸単位と他の単位とからなる共重合体等が挙げられる。
ポリ乳酸樹脂を構成する乳酸単位は、L-乳酸単位であってもよく、D-乳酸単位であってもよく、それらの両方であってもよい。
他の単位としては、例えばエチレンテレフタラート単位、ブチレンサクシネート単位、カプロラクトン単位、カーボネート単位、エチレンアジペート単位、ブチレンアジペート単位、ヒドロキシアルカン酸単位等が挙げられる。ポリ乳酸樹脂中の他の単位は1種でも2種以上でもよい。
ポリ乳酸樹脂を構成する全単位の合計に対する乳酸単位の割合は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。
ポリ乳酸樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
ポリ乳酸樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1000000以下が好ましく、100000以下がより好ましい。Mwの下限は特に限定されないが、例えば1000である。ポリ乳酸樹脂のMwが前記上限値以下であれば、反応時の粘度が低下することから均一に反応が進行し、トリオールとの反応性が良好となる。
Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」とも記す。)により測定される、標準ポリスチレン換算の値である。
【0014】
<加溶媒分解工程>
加溶媒分解工程は、公知の方法により実施できる。例えば、アルカリ触媒の存在下でポリ乳酸樹脂及び原料トリオールを加熱することで、加溶媒分解反応が進行する。
【0015】
加溶媒分解工程での原料トリオールの使用量は、ポリ乳酸樹脂の乳酸単位1モルに対して0.2モル以上であり、0.3モル以上が好ましく、0.5モル以上がより好ましく、0.8モル%以上がさらに好ましい。また、100モル以下が好ましく、50モル以下がより好ましく、10モル以下がさらに好ましい。
原料トリオールの使用量が前記下限値以上であれば、得られるポリオール組成物を硬質ポリウレタンフォームの製造に用いたときに、ポリオール組成物が良好に発泡し、フォーム特性の良好な硬質ポリウレタンフォームが得られる。原料トリオールの使用量が前記上限値以下であれば、反応時の粘度が低下し、反応性が良好となる。
【0016】
アルカリ触媒としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウム、アンモニア等が挙げられる。これらのアルカリ触媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アルカリ触媒の使用量は、反応が進行すればよく特に限定されないが、例えばポリ乳酸100質量部に対して0.01~10質量部である。
【0017】
加熱温度は、160~200℃が好ましく、170~190℃がより好ましい。
加熱時間は、加熱温度によっても異なるが、2~6時間が好ましく、3~4時間がより好ましい。
ポリ乳酸樹脂及び原料トリオールを反応させた後、必要に応じて、アルカリ触媒を中和する。中和に用いる酸としては、ギ酸、酢酸、乳酸、クエン酸、塩酸、硝酸、硫酸等が挙げられる。
【0018】
加溶媒分解工程で得られる反応物は、ポリ乳酸樹脂の原料トリオールによる加溶媒分解物であるポリエステルポリオール(以下、「ポリエステルポリオール(a)」とも記す。)を含む。反応物は、典型的には、ポリエステルポリオール(a)の他に、水及び未反応の原料トリオールを含む。反応物は、これらの他に、ポリエステルポリオール(a)以外のポリエステルポリオールやポリエーテルポリオール等のポリオール成分や、エチレングリコールやプロピレングリコール等の溶剤成分を含んでいてもよい。
反応物は、そのままポリオール組成物としてもよく、必要に応じて、以下の脱水工程又はポリオール添加工程に供してもよい。
【0019】
<脱水工程>
本製造方法は、加溶媒分解工程で得られた反応物を脱水する工程(脱水工程)をさらに含むことが好ましい。
水は、硬質ポリウレタンフォームの製造において発泡剤として機能する。ポリオール組成物中の水によって、硬質ポリウレタンフォームの製造に用いられる発泡剤の総量が変動し、硬質ポリウレタンフォーム製造時に発泡倍率が変動するおそれがある。脱水工程によってポリオール組成物の水分量を少なくすることで、発泡倍率の変動を抑制できる。
脱水方法としては、特に制限は無く、減圧乾燥等の公知の方法を用いることができる。
脱水後の反応物の水分量は、脱水後の反応物の総質量に対し、3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。
脱水後の反応物は、そのままポリオール組成物としてもよく、必要に応じて、以下のポリオール添加工程に供してもよい。
【0020】
<ポリオール添加工程>
本製造方法は、必要に応じて、加溶媒分解工程で得られた反応物(又はその後の脱水工程で脱水した反応物)にポリオールを添加する工程(ポリオール添加工程)をさらに含んでいてもよい。
ポリオール添加工程で添加されるポリオールとしては、硬質ポリウレタンフォームに用いられるポリオールとして公知のものを使用でき、例えばトリオール等の多価アルコール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールが挙げられる。トリオールとしては、前記と同様のものが挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、例えば上記多価アルコール及び/又は上記ポリエーテルポリオールとポリカルボン酸との縮合反応物、上記多価アルコール及び/又は上記ポリエーテルポリオールとカルボン酸無水物との反応物、並びにこれらのAO付加物が挙げられる。これらのポリオールは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
<ポリオール組成物>
上記のようにして、ポリエステルポリオール(a)を含むポリオール組成物が得られる。
ポリエステルポリオール(a)の一例として、下記式(1)又は(2)で表されるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0022】
【0023】
ただし、Rはトリオール残基であり、mは1~10の整数であり、nは1又は2である。
トリオール残基は、原料トリオールから3つの水酸基を除いた部分である。
mは、乳酸単位の繰り返し数である。mが10以下であれば、粘度が低くなり、イソシアネートとの相溶性に優れる。mは、1~5の整数が好ましく、1~3の整数がより好ましい。
式(1)中の3個のmの値は同一でも異なっていてもよい。
nが2の場合、式(2)中の2個のmの値は同一でも異なっていてもよい。
ポリオール組成物に含まれるポリエステルポリオール(a)は1種でも2種以上でもよい。
【0024】
ポリエステルポリオール(a)の重量平均分子量(Mw)は、30000以下が好ましく、10000以下がより好ましく、1000以下がさらに好ましい。Mwの下限は特に限定されないが、例えば100である。ポリエステルポリオール(a)のMwが前記上限値以下であれば、粘度が低く、イソシアネートとの反応性がより優れる。
【0025】
ポリオール組成物は、ポリエステルポリオール(a)以外の他のポリオールをさらに含んでいてもよく、典型的には、ポリエステルポリオール(a)以外の他のトリオールを含む。
ポリオール組成物が他のトリオール(例えばグリセリン)を含む場合、ポリオール組成物中の他のトリオールは、加溶媒分解工程で用いられた原料トリオールが反応せずに残ったものでもよく、ポリオール添加工程でポリオールとして添加されたものでもよく、それらの両方でもよい。
ポリオール組成物は、ポリオール組成物を低粘度にできる点から、グリセリンを含むことが好ましい。
【0026】
ポリオール組成物中のポリエステルポリオール(a)の含有量は、1%以上が好ましく、20%以上がより好ましい。ポリエステルポリオール(a)の含有量の上限は特に限定されず、100%であってもよいが、例えば98%、さらには90%である。
ここで、ポリエステルポリオール(a)の含有量は、ガスクロマトグラフィー(GC)にて測定したトリオールの含有量(%)を100%から差し引いた値である。
トリオールの含有量は、ガスクロマトグラフィー(GC)のクロマトグラムにおける全ピーク面積に対するトリオールのピーク面積の割合である。
【0027】
ポリオール組成物がグリセリンを含む場合、ポリオール組成物中のグリセリンの含有量は、2~99%が好ましく、10~80%がより好ましい。グリセリンの含有量が前記下限値以上であれば、ポリオール組成物の粘度を充分に低くできる。
グリセリンの含有量は、ガスクロマトグラフィー(GC)のクロマトグラムにおける全ピーク面積に対するグリセリンのピーク面積の割合である。
【0028】
ポリオール組成物の25℃における粘度は、10~50000mPa・sが好ましく、50~20000 mPa・sがより好ましく、100~10000mPa・sがさらに好ましい。粘度が前記下限値以上であれば、硬質ポリウレタンフォームとして充分な硬さが得られやすく、前記上限値以下であれば、他の材料(ポリイソシアネート等)と混合しやすい。
粘度は、E型粘度計により測定される。
【0029】
ポリオール組成物の水分量は、ポリオール組成物の総質量に対し、3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0質量%であってもよい。水分量が前記上限値以下であれば、硬質ポリウレタンフォーム製造時の発泡倍率の変動を抑制できる。
粘度を低くできる。
水分量は、カールフィッシャー法により(例えば、(株)HIRANUMA製のAQV-2200」、測定試薬「Honeywell製 Hydranal Composite 5」を用いて)測定される。
【0030】
ポリオール組成物の水酸基価は、200~600mgKOH/gが好ましく、300~600mgKOH/gがより好ましく、400~600mgKOH/gがさらに好ましい。水酸基価が前記下限値以上であれば、硬質ポリウレタンフォームとして充分な硬さが得られやすく、前記上限値以下であれば、粘度を低くできる。
水酸基価は、試料1g中の水酸基と当量の水酸化カリウムのミリグラム(mg)数である。水酸基価は、JIS K 1557-1に記載のB法により測定される。
【0031】
以上説明したポリオール組成物の製造方法にあっては、ポリ乳酸樹脂を特定量の原料トリオールで加溶媒分解するので、得られるポリオール組成物を硬質ポリウレタンフォームの製造に用いたときに、植物由来原料であるポリ乳酸樹脂を用いていながら、ポリオール組成物が良好に発泡し、気泡が均一で、断熱性、寸法安定性、圧縮強さ等のフォーム特性の良好な硬質ポリウレタンフォームが得られる。
本製造方法で生成するポリエステルポリオールは、ポリ乳酸樹脂の分解物であるので比較的Mwが低い。また、加溶媒分解にトリオールを用いているので、ジオールを用いる場合に比べ、得られるポリエステルポリオールの1分子当たりの水酸基の数が多い。そのため、ポリイソシアネートとの反応点となる水酸基の密度が高くなり、また、ポリイソシアネートと反応させたときに3次元網目構造が形成される。これらによって上記効果を奏すると考えられる。
したがって、本製造方法により得られるポリオール組成物は、硬質ポリウレタンフォームの製造に好適に用いられる。
【0032】
〔硬質ポリウレタンフォーム用組成物の製造方法〕
本発明の他の一実施形態は、上述の製造方法によってポリオール組成物を製造し、前記ポリオール組成物と触媒と発泡剤とを混合する、硬質ポリウレタンフォーム用組成物の製造方法である。
なお、本発明において、硬質ポリウレタンフォーム用組成物は、ポリイソシアネートは含まないものとする。硬質ポリウレタンフォーム用組成物は、硬質ポリウレタンフォームの製造時にポリイソシアネートと混合される。
【0033】
触媒としては、硬質ポリウレタンフォームの製造に用いられる公知の触媒を使用でき、例えばイソシアヌレート化触媒、ウレタン化触媒等が挙げられる。触媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
触媒の含有量は、触媒の種類やウレタン化反応の速度、硬質ポリウレタンフォームの密度を考慮して適宜設定できる。
【0034】
発泡剤としては、硬質ポリウレタンフォームの製造に用いられる公知の発泡剤を使用でき、例えば水、液化炭酸ガス、低沸点炭化水素、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)等が挙げられる。低沸点炭化水素としては、ブタン、ペンタン、シクロペンタン等が挙げられる。発泡剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
発泡剤としては、硬質ポリウレタンフォームの成形性の点から、水が好ましい。
【0035】
発泡剤の含有量は、発泡剤の種類、硬質ポリウレタンフォームの密度を考慮して適宜設定できる。例えば、発泡剤として水を用いる場合、発泡剤の含有量は、ポリオール組成物100質量%に対し、1~30質量%が好ましく、10~20質量%がより好ましい。
【0036】
各成分の混合方法に特に制限は無く、公知の方法を適宜採用できる。
ポリオール組成物と触媒と発泡剤とを混合する際に、必要に応じて、それらと共に他の成分を混合してもよい。他の成分としては、例えば、整泡剤、難燃剤、上記以外の他の添加剤が挙げられる。
【0037】
難燃剤としては、特に制限はなく、一般的な難燃剤を使用できる。具体例としては、リン酸エステル系化合物〔トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート、モノブチルホスフェート、ジブチルホスフェート等の非ハロゲンリン酸エステル類や非ハロゲン縮合リン酸エステル類〕、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート等の含ハロゲンリン酸エステル類、含ハロゲン縮合リン酸エステル類、ホウ素化合物、塩素化合物、水酸化アルミニウム、酸化アンチモンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
難燃剤の含有量は、ポリオール組成物100質量部に対し、5~100質量部が好ましく、10~50質量部がより好ましい。難燃剤の含有量が上記下限値以上であれば、難燃性に優れ、上限値以下であれば、フォームの強度、成形性に優れる。
【0039】
〔硬質ポリウレタンフォームの製造方法〕
本発明の他の一実施形態は、上述の製造方法によってポリオール組成物を製造し、前記ポリオール組成物とポリイソシアネートとを触媒及び発泡剤の存在下で反応させる、硬質ポリウレタンフォームの製造方法である。
ポリオール組成物とポリイソシアネートとを触媒及び発泡剤の存在下で反応させる工程(フォーム形成工程)においては、触媒及び発泡剤と共に他の成分を併存させてもよい。
触媒、発泡剤、他の成分はそれぞれ、前記と同様のものが挙げられる。
【0040】
<ポリイソシアネート>
ポリイソシアネートとしては、イソシアネート基を分子内に2個以上有する化合物であればよく、硬質ポリウレタンフォームの製造に使用される公知のものを使用できる。例えば、エチルイソシアネート、ブチルイソシアネート、フェニルイソシアネート、クロルフェニルイソシアネート、ジクロルフェニルイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、トリフェニルメタンイソシアネート等のモノイソシアネート化合物、ジイソシアネート化合物、トリイソシアネート化合物、及びこれらの誘導体からなるイソシアネート末端を有するポリマー等が挙げられる。
【0041】
ポリイソシアネートの含有量は、イソシアネート指数(NCO INDEX)[(NCO基/活性水素原子含有基)の当量比×100]を考慮して設定される。
イソシアネート指数は、例えば70以上、さらには100~800である。
【0042】
<フォーム形成工程>
フォーム形成工程は、ポリオール成分として上述のポリオール組成物を用いる以外は、公知の方法により実施できる。
以下に、フォーム形成工程の具体的な一例を示す。
まず、ポリオール組成物、触媒、発泡剤、必要に応じて他の成分を混合して硬質ポリウレタンフォーム用組成物を調製する。次いで、硬質ポリウレタンフォーム用組成物とポリイソシアネートとを混合し、得られた混合液(発泡原液)を型に流し入れ、硬化させる。その後、脱型して硬質ポリウレタンフォームを得る。
【0043】
<硬質ポリウレタンフォーム>
上記のようにして、ポリオール組成物とポリイソシアネートとの反応物を含む硬質ポリウレタンフォームが得られる。
【0044】
硬質ポリウレタンフォームの密度は、10~60kg/m3が好ましく、15~50kg/m3がより好ましく、20~40kg/m3がさらに好ましい。
密度は発泡剤の含有量によって調整が可能であり、発泡剤量が多いほど密度は低くなる。一方で発泡剤量が多くなりすぎるとフォームの強度や成形性が悪化する。
密度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0045】
硬質ポリウレタンフォームの熱伝導率は、0.08W/m・K以下が好ましく、0.06W/m・K以下がより好ましく、0.05W/m・K以下がさらに好ましい。下限は特に限定されないが、例えば0.04W/m・Kである。
熱伝導率は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0046】
硬質ポリウレタンフォームの圧縮強さは、0.1N/cm2以上が好ましく、0.5N/cm2以上がより好ましい。上限は特に限定されないが、例えば1N/cm2である。
圧縮強さは、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0047】
硬質ポリウレタンフォームの寸法安定性は、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。上限は特に限定されないが、例えば99%である。
寸法安定性は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【実施例0048】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。以下において「部」、「%」はそれぞれ、特に言及がない場合は、「質量部」、「質量%」を示す。
【0049】
<使用材料>
Gly:グリセリン。
PLA:ポリ乳酸、重量平均分子量(Mw)86000。
TCPP:大八化学(株)製、難燃剤、トリス(クロロプロピル)ホスフェート。
触媒:花王(株)製「カオーライザーNo.120」、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール。
整泡剤:ダウ・東レ(株)製「SH-193」、ポリエーテルシロキサン重合体。
発泡剤:水。
ポリイソシアネート:東ソー(株)製「MR-200」、粗製MDI、NCO%=31.3。
【0050】
<実施例1~11、比較例1>
(ポリオール組成物の製造)
表1に従って、撹拌装置を備えた反応容器内に、PLA、Gly、アルカリ触媒として炭酸ナトリウムを仕込んだ後、撹拌混合しながら180℃で4時間反応させた。次いで、76%ギ酸水溶液を用いて中和を行った後、減圧下で水分を留去した。これにより、ポリオール組成物を得た。
表1中、「Gly/PLA」は、PLAの乳酸単位1モルに対するGlyの割合(モル)を示す。触媒量の「PHP」は、PLA100部に対する触媒の割合(部)を示す。
【0051】
各例のポリオール組成物の物性(ポリエステルポリオールのMw、水分、粘度、水酸基価、水酸基等量、残留モノマー量)を表1に示す。各物性の測定方法を以下に示す。
Mw:GPC測定装置として東ソー社製HLC8320GPCを用い、カラムはTSKgel G3000HXL+G2000HKL+G2000HKL(東ソー社製)。スタンダードはポリスチレンを使用して測定を行った。
水分:カールフィッシャー法により(例えば、(株)HIRANUMA製のAQV-2200」、測定試薬「Honeywell製 Hydranal Composite 5」を用いて)測定される。
粘度:E型粘度計を用い、25℃における値を測定した。
水酸基価:JIS K 1557-1のB法に従って測定した。
残留モノマー量(GC):日本電子製Q1000-GCMSにてカラムZB-5を用い、グリセリンにて検量線を作成し残留モノマー量を測定した。
本実施例において残留モノマー量は、Glyの含有量に相当する。100-残留モノマー量(%)をポリエステルポリオールの含有量(%)とみなすことができる。
【0052】
(硬質ポリウレタンフォームの製造)
表2に従って、ポリオール組成物と各添加剤とを混合して硬質ポリウレタンフォーム用組成物を得た。得られた硬質ポリウレタンフォーム用組成物とポリイソシアネートとを、それぞれ25℃に温度調節した後、表2に示すイソシアネート指数(NCO INDEX)となるように混合し、ハンドミキサーを用いて7秒間撹拌した。得られた混合物を、40℃に温度調節した金型(アルミ製、縦×横×高さ=250mm×250mm×50mm)に注入し、4分後に脱型して硬質ポリウレタンフォームを得た。
表2中、「水酸基等量」は、自動滴定装置(平沼産業製COM-1700S)を用い、無水酢酸によるアセチル化法により算出した値である。
【0053】
各例の硬質ポリウレタンフォームのフォーム特性(密度、寸法安定性、熱伝導率、圧縮強さ、LOI)を表3に示す。ただし、比較例1については、フォームのふくらみが悪く、フォーム特性を測定可能なサンプルが得られなかったため、「発泡不可」とし、フォーム特性を測定しなかった。各特性の測定方法を以下に示す。
密度:得られた硬質ポリウレタンフォームから、縦100mm×横100mmのサンプル片(厚みは硬質ポリウレタンフォームの厚みと同じ)を切り出し、サンプル片の質量を体積で除して密度を算出した。
寸法安定性:得られた硬質ポリウレタンフォームから、縦50mm×横50mmのサンプル片(厚みは硬質ポリウレタンフォームの厚みと同じ)を切り出し、サンプルの厚みを計測し、以下の式から求めた。
寸法安定性(%)=サンプルの厚み(mm)÷金型の高さ(50mm)×100
熱伝導率:Hot Disk社製のTPS-1500にて測定を行った。
圧縮強さ:JIS K7220にしたがい、得られた硬質ポリウレタンフォームから、縦50mm×横50mmのサンプル片(厚みは硬質ポリウレタンフォームの厚みと同じ)を切り出した。サンプル片を厚みに対して10%圧縮し圧縮応力を測定した。その後、圧縮応力を断面積で除した値を圧縮強さとした。
限界酸素指数(LOI):JIS K 7201-2に準拠して測定した。
【0054】
<比較例2>
(ポリオール組成物の製造)
国際公開第2008/029527号の実施例6従って、ヒマシ油とL-乳酸からポリエステルポリオールを得た。
【0055】
(硬質ポリウレタンフォームの製造)
ポリオール組成物の代わりに上記で得たポリエステルポリオールを用いた以外は上記と同様にして硬質ポリウレタンフォーム用組成物を調製し、硬質ポリウレタンフォームを製造しようとしたところ、フォームのふくらみが悪く、フォーム特性を測定可能なサンプルが得られなかったため、「発泡不可」とし、フォーム特性を測定しなかった。
【0056】
<比較例3>
(ポリオール組成物の製造)
特表2017-535662号公報の実施例Iに従って、再生ポリエチレンテレフタレート(rPET)ペレットとプロピレングリコール(PG)から消化中間体を得た(PG/rPET=2.8(モル比))。
【0057】
(硬質ポリウレタンフォームの製造)
ポリオール組成物の代わりに上記で得た消化中間体を用いた以外は上記と同様にして硬質ポリウレタンフォーム用組成物を調製し、硬質ポリウレタンフォームを製造しようとしたところ、フォームのふくらみが悪く、フォーム特性を測定可能なサンプルが得られなかったため、「発泡不可」とし、フォーム特性を測定しなかった。
【0058】
<比較例4>
(ポリオール組成物の製造)
PGの代わりにGlyを用い、Gly/rPETのモル比を2.0とした以外は比較例3と同様の操作を行って消化中間体を製造しようとしたところ、反応性が悪く、均一系にならなかった。そのため、硬質ポリウレタンフォームの製造を行わなかった。
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
実施例1~11では、フォーム特性の良好な硬質ポリウレタンフォームが得られた。