(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124519
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】アクチュエータ、ステージ装置、露光装置、検査装置
(51)【国際特許分類】
F15B 15/14 20060101AFI20230830BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20230830BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
F15B15/14 330
G03F7/20 501
G03F7/20 521
H01L21/68 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028320
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】吉田 達矢
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 遥
【テーマコード(参考)】
2H197
3H081
5F131
【Fターム(参考)】
2H197CD12
2H197CD41
2H197FB02
2H197HA03
3H081AA02
3H081AA03
3H081BB03
3H081CC14
3H081DD12
3H081HH10
5F131AA02
5F131AA03
5F131BA01
5F131BA11
5F131BA21
5F131BA31
5F131BA41
5F131CA17
5F131DA02
5F131DA22
5F131DA42
5F131DB86
(57)【要約】
【課題】ガイドの変形を抑制できるアクチュエータ等を提供する。
【解決手段】アクチュエータ10は、移動方向(X方向)に沿った可動域内を駆動されるスライダ20と、X方向に延在してスライダ20を案内するガイド12であって、X方向に垂直な断面において、スライダ20の外周を包囲すると共に、その少なくとも一部が開放された開口部40を含む包囲構造を備えるガイド12と、スライダ20とガイド12の間に圧縮空気を供給するエアパッド30と、開口部40を貫通して包囲構造内のスライダ20と包囲構造外のテーブル200を連結するスライダ連結部材44と、開口部40の縁同士を連結するガイド連結部材45であって、スライダ20が可動域内を移動する際にスライダ連結部材44が接触しない位置に設けられるガイド連結部材45と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の移動方向に沿った可動域内を駆動されるスライダと、
前記移動方向に延在して前記スライダを案内するガイドであって、前記移動方向に垂直な断面において、前記スライダの外周を包囲すると共に、その少なくとも一部が開放された開口部を含む包囲構造を備えるガイドと、
前記スライダと前記ガイドの間に流体を供給する流体供給部と、
前記開口部を貫通して前記包囲構造内の前記スライダと前記包囲構造外の被駆動体を連結するスライダ連結部材と、
前記開口部の縁同士を連結するガイド連結部材であって、前記スライダが前記可動域内を移動する際に前記スライダ連結部材が接触しない位置に設けられるガイド連結部材と、
を備えるアクチュエータ。
【請求項2】
前記スライダ連結部材は、前記移動方向に沿って前記可動域の幅以上の間隔で設けられた第1スライダ連結部材および第2スライダ連結部材を備え、
前記ガイド連結部材は、前記第1スライダ連結部材および前記第2スライダ連結部材の間に設けられる、
請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記ガイド連結部材は前記可動域内に設けられる、請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記ガイド連結部材は、前記可動域の両端より前記移動方向に沿った外側に設けられる第1端ガイド連結部材および第2端ガイド連結部材を備える、請求項1から3のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記ガイド連結部材は、変形することによって応力を緩和する応力緩和部を備える、請求項1から4のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記ガイド連結部材は、前記開口部を広げる変形に対して抵抗を付与する抵抗付与部を備える、請求項1から5のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記スライダ連結部材が前記スライダと前記被駆動体を連結する方向と、前記ガイド連結部材が前記開口部の縁同士を連結する方向は互いに略直交する、請求項1から6のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項8】
前記ガイドの両端部は閉塞されている、請求項1から7のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項9】
処理対象の位置を制御するステージ装置であって、
前記処理対象を保持するテーブルと、
前記テーブルを変位させる請求項1から8のいずれかに記載のアクチュエータと、
を備えるステージ装置。
【請求項10】
前記テーブルによって保持される露光対象の位置を制御する請求項9に記載のステージ装置を備える露光装置。
【請求項11】
前記テーブルによって保持される検査対象の位置を制御する請求項9に記載のステージ装置を備える検査装置。
【請求項12】
所定の移動方向に沿った可動域内を駆動されるスライダと、
前記移動方向に延在して前記スライダを案内するガイドであって、前記移動方向に垂直な断面において、前記スライダの外周を包囲すると共に、その少なくとも一部が開放された開口部を含む包囲構造を備えるガイドと、
前記スライダと前記ガイドの間に気体を供給する気体供給部と、
前記気体供給部が供給した気体を、前記スライダの外周と前記包囲構造の内周の間から排出する気体排出部と、
前記開口部を貫通して前記包囲構造内の前記スライダと前記包囲構造外の被駆動体を連結するスライダ連結部材と、
前記開口部の縁同士を連結するガイド連結部材であって、前記スライダが前記可動域内を移動する際に前記スライダ連結部材が接触しない位置に設けられるガイド連結部材と、
前記スライダ、前記ガイド、前記気体供給部、前記気体排出部、前記スライダ連結部材、前記ガイド連結部材を真空状態の内部に収容する真空チャンバと、
を備えるステージ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータ、ステージ装置、露光装置、検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、真空環境で使用される気体圧アクチュエータとして、気体圧によって所定の移動方向に沿って駆動されるスライダと、当該移動方向に延在してスライダを案内するガイドを備えるものが開示されている。エアパッドを通じてスライダの外周とガイドの内周の間に供給される圧縮空気が形成するエアベアリングによって、スライダはガイドから浮上して円滑に移動できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の気体圧アクチュエータでは、ガイドがスライダの外周の全体(全周)を包囲するのではなく、その頂面の中央が開放された開口部を備える。ここで、エアパッドを通じてスライダの外周とガイドの内周の間に供給される圧縮空気は、ガイドを内側から押し広げる圧力を加える。この結果、剛性が比較的低い開口部が押し広げられてしまう恐れがある。特に、真空環境ではガイドの外周に加わる圧力が低いため、ガイドの内周に加わる高い圧力との大きな圧力差によって、ガイドが開口部を通じて大きく変形してしまう恐れがある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、ガイドの変形を抑制できるアクチュエータ等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のアクチュエータは、所定の移動方向に沿った可動域内を駆動されるスライダと、移動方向に延在してスライダを案内するガイドであって、移動方向に垂直な断面において、スライダの外周を包囲すると共に、その少なくとも一部が開放された開口部を含む包囲構造を備えるガイドと、スライダとガイドの間に流体を供給する流体供給部と、開口部を貫通して包囲構造内のスライダと包囲構造外の被駆動体を連結するスライダ連結部材と、開口部の縁同士を連結するガイド連結部材であって、スライダが可動域内を移動する際にスライダ連結部材が接触しない位置に設けられるガイド連結部材と、を備える。
【0007】
この態様では、ガイドの開口部の縁同士を連結するガイド連結部材によって剛性が高められるため、流体供給部がスライダとガイドの間に供給する流体の圧力によるガイドの変形を抑制できる。なお、ガイド連結部材は、スライダが可動域内を移動する際にスライダ連結部材が接触しない位置に設けられるため、スライダの通常の駆動を阻害することもない。
【0008】
本発明の別の態様は、ステージ装置である。この装置は、処理対象の位置を制御するステージ装置であって、処理対象を保持するテーブルと、テーブルを変位させる上記のアクチュエータと、を備える。
【0009】
本発明の更に別の態様も、ステージ装置である。この装置は、所定の移動方向に沿った可動域内を駆動されるスライダと、移動方向に延在してスライダを案内するガイドであって、移動方向に垂直な断面において、スライダの外周を包囲すると共に、その少なくとも一部が開放された開口部を含む包囲構造を備えるガイドと、スライダとガイドの間に気体を供給する気体供給部と、気体供給部が供給した気体を、スライダの外周と包囲構造の内周の間から排出する気体排出部と、開口部を貫通して包囲構造内のスライダと包囲構造外の被駆動体を連結するスライダ連結部材と、開口部の縁同士を連結するガイド連結部材であって、スライダが可動域内を移動する際にスライダ連結部材が接触しない位置に設けられるガイド連結部材と、スライダ、ガイド、気体供給部、気体排出部、スライダ連結部材、ガイド連結部材を真空状態の内部に収容する真空チャンバと、を備える。
【0010】
本発明の更に別の態様は、露光装置である。この装置は、テーブルによって保持される露光対象の位置を制御する上記のステージ装置を備える。
【0011】
本発明の更に別の態様は、検査装置である。この装置は、テーブルによって保持される検査対象の位置を制御する上記のステージ装置を備える。
【0012】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アクチュエータにおけるガイドの変形を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】アクチュエータを模式的に示す斜視図である。
【
図2】スライダの移動方向(X方向)に垂直なYZ平面の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明または図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限りは限定的に解釈されるものではない。実施形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施形態に記載される全ての特徴やそれらの組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係るステージ装置またはアクチュエータ10を模式的に示す斜視図である。アクチュエータ10は、真空チャンバ内等の真空環境で使用される気体圧アクチュエータであり、気体圧によって所定の移動方向に沿って駆動または変位されるスライダ20と、当該移動方向に延在してスライダ20を案内するガイド12を備える。以下ではスライダ20の移動方向およびガイド12の延在方向をX方向ともいう。また、X方向に直交し、かつ、互いに直交する二つの方向をY方向およびZ方向ともいう。典型的には、X方向およびY方向は水平面内で直交する方向であり、Z方向は鉛直方向である。
【0017】
スライダ20は移動方向に長尺の略直方体形状をしており、ガイド12はスライダ20を移動可能に収容する略直方体形状の内部空間を有する。スライダ20がガイド12の内部空間を移動方向に沿って移動できるように、当該内部空間のX方向の長さはスライダ20のX方向の長さより大きい。ここで、ガイド12の内部空間のX方向の長さとスライダ20のX方向の長さの差が、スライダ20の可動域の幅の最大値となる。ガイド12のX方向の両端部は第1エンドプレート41および第2エンドプレート42によって閉塞されており、これらの内周面の間の距離がガイド12の内部空間のX方向の長さとなる。
【0018】
後述する
図2にも示されるように、ガイド12は、移動方向(X方向)に垂直な断面(YZ平面)において、スライダ20の矩形状の外周を包囲すると共に、その少なくとも一部が開放された開口部40を含む包囲構造を備える。
図1の例では、ガイド12の頂面43または上面に開口部40が設けられる。開口部40はスライダ20の移動方向に長尺の矩形状の孔であり、第1エンドプレート41および第2エンドプレート42で終端するためX方向の長さはガイド12の内部空間と等しく、Y方向の幅は
図2に示されるようにスライダ連結部材44が通過できる大きさになっている。スライダ連結部材44は、開口部40をZ方向に貫通してガイド12の包囲構造内のスライダ20の頂部と、ガイド12の包囲構造外の被駆動体としてのステージまたはテーブル200の底部を連結する。なお、スライダ20の断面形状は矩形に限らず、特許文献1に開示されている台形その他の多角形や、円形、楕円形等の任意の形状でよい。
【0019】
本実施形態のアクチュエータ10は、例えば、露光装置、イオン注入装置、熱処理装置、アッシング装置、スパッタリング装置、ダイシング装置、検査装置、洗浄装置等の半導体製造装置やFPD(Flat Panel Display)製造装置に適用できるが、この場合のテーブル200は、処理対象(露光装置の場合は露光対象、検査装置の場合は検査対象ともいう)の半導体ウエハ等を保持する、または、処理対象の半導体ウエハ等が載置される。後述するように気体圧によってスライダ20をX方向に駆動すると、スライダ連結部材によってスライダ20と連結されたテーブル200がX方向に移動する。このため、テーブル200に載置された処理対象の半導体ウエハ等の位置を精密に制御しながら、その各部に所望の処理を正確に実行できる。なお、
図1では説明の簡素化のためにX方向の駆動または変位を担うアクチュエータ10のみを例示したが、これに加えてY方向やZ方向等の他の並進方向の駆動または変位を担うアクチュエータを同様に構成して併設してもよい。
【0020】
図2は、スライダ20の移動方向(X方向)に垂直なYZ平面の断面図であり、
図3は、開口部40を含むZX平面の断面図である。
図2および
図3の断面は、後述するガイド連結部材45が示されるように選択されている。
図2は
図3のII-II断面図であり、
図3は
図2のIII-III断面図である。
【0021】
図2に示されるように、ガイド12は、スライダ20の矩形状の外周を包囲する包囲構造を備える。この包囲構造は、スライダ20の底部22に対向する底板37と、スライダ20の第1側部24に対向する第1側板38と、スライダ20の第2側部26に対向する第2側板39と、スライダ20の頂部に対向する頂板38b、39bによって構成される。ガイド12の頂板は、Y方向の中央をX方向に延在または横断する開口部40によって、二つの略等しい部分38b、39bに分断されているともいえる。このように、ガイド12は、底板37、第1側板38、第2側板39の三面によってスライダ20の底部22、第1側部24、第2側部26を全体的に拘束(三面拘束)し、開口部40で二分された頂板38b、39bによってスライダ20の頂部を部分的に拘束する。
【0022】
ガイド12の包囲構造によって四方から拘束されたスライダ20は、ガイド12に案内されてX方向に移動可能である。スライダ20の底部22、第1側部24、第2側部26、頂部には、スライダ20の外周とガイド12の包囲構造の内周の間に流体または気体を供給する流体供給部または気体供給部としての複数のエアパッド30が設けられる。具体的には、各エアパッド30は、不図示の給排気系から供給される圧縮空気等の高圧の気体を噴出してエアベアリングを形成し、スライダ20をガイド12から浮上させる。スライダ20の外周とガイド12の包囲構造の内周の間に形成される圧縮空気等の微小な隙間または層を介して、スライダ20はガイド12と実質的に非接触で滑らかにX方向に移動できる。
【0023】
本実施形態のアクチュエータ10は真空チャンバ内等の真空環境で使用されるため、エアパッド30の噴出した圧縮空気が開口部40等を通じて真空環境に漏出してはいけない。このため、スライダ20には、各エアパッド30を取り囲むように、差動排気用の排気溝32、34、36が設けられる。各排気溝32、34、36は、流体供給部または気体供給部としての各エアパッド30が供給した流体または気体を、スライダ20の外周とガイド12の包囲構造の内周の間からアクチュエータ10外に排出する流体排出部または気体排出部を構成する。各排気溝32、34、36は、スライダ20のX方向の略全長に亘って形成される長尺の溝である。
【0024】
全てのエアパッド30の両隣に設けられる各排気溝32は大気開放されている。各排気溝32と大気の間には排気ポンプを設けてもよい。排気溝34、36は、開口部40に隣接または近接する位置に設けられ、開口部40を通じた真空環境への圧縮空気の漏出を確実に防止する。排気溝34は、低真空圧力(100 kPa~100 Pa)を生成する低真空排気ポンプに接続され、開口部40により近い排気溝36は、排気溝34より高い真空レベル(低い圧力レベル)、例えば中真空(100 Pa~0.1 Pa)の圧力を生成する中真空排気ポンプに接続される。
【0025】
図2に示されるように、スライダ20の側面(第1側部24および/または第2側部26)には、ガイド12の第1側板38および/または第2側板39の内周に対向する位置に差圧駆動空間としてのエアサーボ室28が設けられる。以下では、スライダ20の第1側部24に設けられるエアサーボ室28をエアサーボ室281ともいい、スライダ20の第2側部26に設けられるエアサーボ室28をエアサーボ室282ともいい、両者を区別する必要がない場合はエアサーボ室28と総称する。ガイド12の第1側板38は、エアサーボ室281内に延出する区画部としてのピストンブロック131を備え、ガイド12の第2側板39は、エアサーボ室282内に延出する区画部としてのピストンブロック132を備える。以下では、ピストンブロック131、132をピストンブロック13と総称する。
【0026】
図3に示されるように、各エアサーボ室28内にY方向に挿入された各ピストンブロック13は、当該各エアサーボ室28をX方向に沿って第1圧力室としての第1サーボ室28Aおよび第2圧力室としての第2サーボ室28Bに区画する。
図3に模式的に示されるように、各サーボ室28A、28Bとの間で圧縮空気等の圧力制御流体または圧力制御気体の供給および/または排出を行う差圧駆動部としての給排気系17A、17Bが設けられる。給排気系17A、17Bは、それぞれ、圧縮気体を供給する圧縮気体供給源18A、18Bと、当該圧縮気体の圧力を制御してサーボ室28A、28Bとの間で給排するサーボ弁16A、16Bを備える。給排気系17Aによって制御される第1サーボ室28Aの圧力と、給排気系17Bによって制御される第2サーボ室28Bの圧力の差圧に応じて、スライダ20が移動方向に沿って駆動される。
【0027】
ここで、エアサーボ室28のX方向の範囲が、スライダ20の移動方向(X方向)に沿った可動域を定める。エアサーボ室28(スライダ20)内をX方向に相対移動するピストンブロック13(ガイド12)自体がX方向に有意な長さを持つため、スライダ20が実際に移動できるX方向の距離である可動域の幅(の最大値)は、エアサーボ室28のX方向の長さとピストンブロック13のX方向の長さの差である。換言すれば、差圧駆動空間としてのエアサーボ室28のX方向の長さは、スライダ20の可動域の幅よりピストンブロック13のX方向の長さの分だけ大きい。
【0028】
図3に示されるように、ガイド12の頂面43の開口部40をZ方向に貫通してスライダ20の頂部とテーブル200の底部を連結するスライダ連結部材44は、スライダ20の可動域の幅および/またはエアサーボ室28のX方向の長さ以上の間隔でX方向に沿って設けられた第1スライダ連結部材441および第2スライダ連結部材442を備える。以下では、第1スライダ連結部材441および第2スライダ連結部材442をスライダ連結部材44と総称する。
図2に示されるように、各スライダ連結部材44のY方向の幅は、ガイド12の開口部40のY方向の幅より小さい。各スライダ連結部材44は、X方向に延在する開口部40内を、スライダ20およびテーブル200と一体的にX方向(
図3における左右方向)に移動可能である。
【0029】
図2に示されるように、ガイド連結部材45は、ガイド12の開口部40の縁同士をY方向に連結する柱状または棒状の部材である。ここで、ガイド連結部材45が開口部40の縁同士を連結するY方向は、スライダ連結部材44がスライダ20とテーブル200を連結するZ方向と直交している。また、ガイド連結部材45が開口部40の縁同士を連結するY方向、および、スライダ連結部材44がスライダ20とテーブル200を連結するZ方向は、スライダ20の移動方向であるX方向と直交している。
【0030】
図3に示されるように、ガイド連結部材45は、スライダ20が可動域内を移動する際に第1スライダ連結部材441および第2スライダ連結部材442が接触しない位置に設けられる。具体的には、ガイド連結部材45は、スライダ20の可動域内および/またはエアサーボ室28のX方向の範囲内であって、ピストンブロック13とX方向に沿って重なった位置に設けられる。また、ガイド連結部材45は、X方向に沿って第1スライダ連結部材441および第2スライダ連結部材442の間に設けられる。
【0031】
ガイド連結部材45は、スライダ20が可動域内を移動すると、第1スライダ連結部材441および第2スライダ連結部材442に対してX方向に相対移動するが、第1スライダ連結部材441および第2スライダ連結部材442がX方向においてスライダ20の可動域外および/またはエアサーボ室28の範囲外に設けられるため、第1スライダ連結部材441および第2スライダ連結部材442のいずれとも接触しない。すなわち、ガイド連結部材45は、スライダ20の通常の駆動を阻害しない。
【0032】
本実施形態によれば、
図2に示されるように、ガイド12の開口部40の縁同士を連結するガイド連結部材45によって剛性が高められるため、複数のエアパッド30がスライダ20の外周とガイド12の内周の間に供給する圧縮空気の圧力によるガイド12の変形を抑制できる。
図1に示されるように、開口部40は、第1エンドプレート41および第2エンドプレート42に固定されているX方向の両端部では変形しづらくなっている一方で、中央部ではエアパッド30の圧縮空気の圧力によって押し広げられやすくなっている。本実施形態では、
図3に示されるように、特に変形しやすい開口部40のX方向に沿った中央部にガイド連結部材45を設けることによって、ガイド12の変形を効果的に抑制できる。
【0033】
なお、開口部40のX方向の両端部付近での変形を抑制するために、
図4に示される第1端ガイド連結部材451および第2端ガイド連結部材452を、開口部40の中央部のガイド連結部材45に加えてまたは代えて設けてもよい。開口部40の中央部のガイド連結部材45が設けられない場合は、第1スライダ連結部材441および第2スライダ連結部材442の代わりに、一つのスライダ連結部材44によってスライダ20とテーブル200を連結してもよい。第1端ガイド連結部材451および第2端ガイド連結部材452は、スライダ20の可動域の両端よりX方向に沿った外側に設けられるため、スライダ20が可動域内を移動してもスライダ連結部材44と接触しない。
【0034】
図5は、ガイド連結部材45の構成例を示す。
図5Aの例のガイド連結部材45は、変形することによって応力を緩和する応力緩和部453を備える。ガイド連結部材45をガイド12の開口部40に取り付ける際の応力によって開口部40が押し広げられないように、応力緩和部453が変形して応力を逃がす。応力緩和部453は、
図5Aに示されるように、他の部分より幅等が狭く撓むことができる可撓部または弾性変形部によって構成してもよいし、ヒンジ等の開閉動作や屈曲動作を許容する機械部品によって構成してもよい。
【0035】
ガイド連結部材45は、
図5Bのように単純な柱状または棒状の部材でもよい。この場合、ガイド連結部材45を取り付ける際にガイド12の開口部40に過大な負荷がかからないように、精密加工されたガイド連結部材45を使用するのが好ましい。ガイド連結部材45は、
図5Cのように開口部40を広げる変形に対して抵抗を付与する抵抗付与部454を備えてもよい。
図5Cの例では、筒状のシリンダ455と当該シリンダ455に挿入される柱状のピストン456によって抵抗付与部454が構成される。シリンダ455の内部空間のY方向の長さはピストン456のY方向の長さより大きく、ピストン456の先端(右端)とシリンダ455の基端(右端)の間の空間は真空状態等の低圧力状態とされる。エアパッド30の圧縮空気が開口部40を押し広げる圧力を加えた場合、すなわちシリンダ455とピストン456をY方向に沿って引き離す圧力が加わった場合、低圧力状態のシリンダ455の内部空間が抗力を発生させるため、開口部40が押し広げられることを効果的に防止できる。なお、抵抗付与部454は、シリンダ455、ピストン456のようにガイド12の開口部40をY方向に広げる圧力に応じて受動的に抗力を発生させるものに限らず、能動的または適応的に開口部40の拡大または変形を防止するための抵抗または力を付与する圧電素子等のアクチュエータによって構成されてもよい。
【0036】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0037】
なお、実施形態で説明した各装置の機能構成はハードウェア資源またはソフトウェア資源により、あるいはハードウェア資源とソフトウェア資源の協働により実現できる。ハードウェア資源としてプロセッサ、ROM、RAM、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてオペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【符号の説明】
【0038】
10 アクチュエータ、12 ガイド、13 ピストンブロック、17A 給排気系、17B 給排気系、20 スライダ、28 エアサーボ室、30 エアパッド、32 排気溝、34 排気溝、36 排気溝、40 開口部、41 第1エンドプレート、42 第2エンドプレート、43 頂面、44 スライダ連結部材、45 ガイド連結部材、200 テーブル、441 第1スライダ連結部材、442 第2スライダ連結部材、451 第1端ガイド連結部材、452 第2端ガイド連結部材、453 応力緩和部、454 抵抗付与部。