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特開2023-124539積層鉄心の製造方法及び積層鉄心の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124539
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】積層鉄心の製造方法及び積層鉄心の製造装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20230830BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
H02K15/02 H
H01F41/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028353
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100153969
【弁理士】
【氏名又は名称】松澤 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】服部 翔
(72)【発明者】
【氏名】坂口 貴哉
(72)【発明者】
【氏名】松林 敏
【テーマコード(参考)】
5E062
5H615
【Fターム(参考)】
5E062AA06
5E062AC01
5E062AC05
5E062AC11
5H615AA01
5H615PP02
5H615PP06
5H615SS03
5H615SS05
5H615SS07
(57)【要約】
【課題】本開示は、プレス加工装置内において積層されていく途中の積層体の積厚を高精度に取得することが可能な積層鉄心の製造方法及び積層鉄心の製造装置を説明する。
【解決手段】積層鉄心の製造方法は、外形抜き用のダイ孔が設けられたダイに外形抜き用のパンチを挿入して、金属板をパンチによって所定形状に打ち抜きつつダイの下方に位置するシリンダに向けて押しつけることを繰り返すことにより、金属板から打ち抜かれた複数の打抜部材をダイ内において積層し、積層体を形成することと、打抜部材が金属板から打ち抜かれる過程においてパンチが下死点付近に到達したときの、パンチとシリンダとの離隔距離をセンサによって取得することと、センサによって取得された離隔距離に基づいて、ダイ内において積層されている複数の打抜部材の積厚を算出することとを含む。
【選択図】図9

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外形抜き用のダイ孔が設けられたダイに外形抜き用のパンチを挿入して、金属板を前記パンチによって所定形状に打ち抜きつつ前記ダイの下方に位置するシリンダに向けて押しつけることを繰り返すことにより、前記金属板から打ち抜かれた複数の打抜部材を前記ダイ内において積層し、積層体を形成することと、
前記打抜部材が前記金属板から打ち抜かれる過程において前記パンチが下死点付近に到達したときの、前記パンチと前記シリンダとの離隔距離をセンサによって取得することと、
前記センサによって取得された前記離隔距離に基づいて、前記ダイ内において積層されている前記複数の打抜部材の積厚を算出することとを含む、積層鉄心の製造方法。
【請求項2】
前記センサは前記パンチ内又は前記シリンダ内に設けられている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記センサによって取得された前記離隔距離の所定期間における時間変化量を算出することと、
前記時間変化量に基づいて、前記ダイ内において積層されている前記複数の打抜部材の積厚が所定の目標積厚に到達するまでの、前記パンチ及び前記ダイによる前記金属板の打抜回数を算出することとをさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記時間変化量を算出することは、
前記センサによって取得された前記離隔距離の過去の所定期間における時間変化量に基づいて、現在の前記離隔距離の予測値を算出することと、
前記センサによって取得された現在の前記離隔距離と前記予測値との差分が所定の範囲外であるときに、前記センサによって取得された現在の前記離隔距離を除外して前記時間変化量を算出することとを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記時間変化量を算出することは、前記センサによって取得された前記離隔距離の所定期間における移動平均値を算出することを含む、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の打抜部材の積厚を算出することは、前記センサによって取得された前記離隔距離を順次加算することにより、前記ダイ内において積層されている前記複数の打抜部材の積厚を算出することを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ダイから排出された前記積層体の積厚を測定装置によって測定することをさらに含み、
前記複数の打抜部材の積厚を算出することは、前記測定装置によって測定された前記積層体の積厚と、前記センサによって取得された前記離隔距離とに基づいて、前記ダイ内において積層されている前記複数の打抜部材の積厚を算出することを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
金属板を所定形状に打ち抜くように構成された外形抜き用のダイ孔が設けられたダイと、
前記ダイ孔に対して挿抜可能に構成された外形抜き用のパンチと、
前記ダイの下方に配置されたシリンダと、
前記パンチと前記シリンダとの離隔距離を取得するように構成されたセンサと、
制御部とを備え、
前記制御部は、
前記ダイに前記パンチが挿入するように前記パンチを制御して、前記金属板を前記パンチによって所定形状に打ち抜きつつ前記シリンダに向けて押しつけることを繰り返すことにより、前記金属板から打ち抜かれた複数の打抜部材を前記ダイ内において積層し、積層体を形成する処理と、
前記打抜部材が前記金属板から打ち抜かれる過程において前記パンチが下死点付近に到達したときの、前記パンチと前記シリンダとの離隔距離を前記センサによって取得する処理と、
前記センサによって取得された前記離隔距離に基づいて、前記ダイ内において積層されている前記複数の打抜部材の積厚を算出する処理とを実行するように構成されている、積層鉄心の製造装置。
【請求項9】
前記センサは、放熱機構を介して前記パンチ内又は前記シリンダ内に設けられている、請求項8に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層鉄心の製造方法及び積層鉄心の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
積層鉄心は、通常、金属板(例えば、電磁鋼板)がプレス加工装置で所定形状に打ち抜かれた複数の打抜部材を積層することにより得られる。一般に、金属板の厚さは、完全に均一ではなく、わずかに変動している。これを、「板厚偏差」という。そのため、一定枚数の打抜部材を積層して積層鉄心を形成すると、得られた積層鉄心ごとにその高さ(積層鉄心の「積厚」ともいう。)が異なるという事態が生じうる。そこで、特許文献1は、プレス加工装置に搬送される金属板の厚さをプレス加工装置の上流側においてセンサで測定し、得られる積層鉄心の積厚が目標値に到達するように、打抜部材の積層枚数を調節する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭59-037659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、プレス加工装置内において積層されていく途中の積層体の積厚を高精度に取得することが可能な積層鉄心の製造方法及び積層鉄心の製造装置を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
積層鉄心の製造方法の一例は、外形抜き用のダイ孔が設けられたダイに外形抜き用のパンチを挿入して、金属板をパンチによって所定形状に打ち抜きつつダイの下方に位置するシリンダに向けて押しつけることを繰り返すことにより、金属板から打ち抜かれた複数の打抜部材をダイ内において積層し、積層体を形成することと、打抜部材が金属板から打ち抜かれる過程においてパンチが下死点付近に到達したときの、パンチとシリンダとの離隔距離をセンサによって取得することと、センサによって取得された離隔距離に基づいて、ダイ内において積層されている複数の打抜部材の積厚を算出することとを含む。
【0006】
積層鉄心の製造装置の一例は、金属板を所定形状に打ち抜くように構成された外形抜き用のダイ孔が設けられたダイと、ダイ孔に対して挿抜可能に構成された外形抜き用のパンチと、ダイの下方に配置されたシリンダと、パンチとシリンダとの離隔距離を取得するように構成されたセンサと、制御部とを備える。制御部は、ダイにパンチが挿入するようにパンチを制御して、金属板をパンチによって所定形状に打ち抜きつつシリンダに向けて押しつけることを繰り返すことにより、金属板から打ち抜かれた複数の打抜部材をダイ内において積層し、積層体を形成する処理と、打抜部材が金属板から打ち抜かれる過程においてパンチが下死点付近に到達したときの、パンチとシリンダとの離隔距離をセンサによって取得する処理と、センサによって取得された離隔距離に基づいて、ダイ内において積層されている複数の打抜部材の積厚を算出する処理とを実行するように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る積層鉄心の製造方法及び積層鉄心の製造装置によれば、プレス加工装置内において積層されていく途中の積層体の積厚を高精度に取得することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1(a)は、回転子積層鉄心の一例を示す斜視図であり、図1(b)は、図1(a)のB-B線断面図である。
図2図2は、回転子積層鉄心の製造装置の一例を示す概略図である。
図3図3は、プレス加工装置の一例を示す概略断面図である。
図4図4は、第4の打抜ユニットの一例を示す概略断面図である。
図5図5は、金属板から複数の打抜部材を打ち抜いてダイ内で積層する様子を説明するための概略断面図である。
図6図6は、金属板から複数の打抜部材を打ち抜いてダイ内で積層する様子を説明するための概略断面図である。
図7図7は、金属板から複数の打抜部材を打ち抜いてダイ内で積層する様子を説明するための概略断面図である。
図8図8は、金属板から複数の打抜部材を打ち抜いてダイ内で積層する様子を説明するための概略断面図である。
図9図9は、センサによって取得される離隔距離の時間変化の様子を例示する図である。
図10図10は、図9における極小値の近傍を拡大して示す図である。
図11図11は、第4の打抜ユニットの他の例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。なお、本明細書において、図の上、下、右、左というときは、図中の符号の向きを基準とすることとする。
【0010】
[回転子積層鉄心の構成]
まず、図1を参照して、積層鉄心の一例である回転子積層鉄心1の構成について説明する。回転子積層鉄心1は、回転子(ロータ)の一部である。回転子は、回転子積層鉄心1と、回転子積層鉄心1に取り付けられたシャフト(図示せず)とを含む。回転子は、回転子積層鉄心1の少なくとも一方の端面に配置される端面板をさらに含んでいてもよい。
【0011】
回転子積層鉄心1は、積層体2と、カシメ部3とを備える。積層体2は、円筒形状を呈している。すなわち、積層体2の中央部分には、図1(a)に例示されるように、中心軸Axに沿って延びる貫通孔2a(中心孔)が設けられている。貫通孔2a内には、シャフトが配置可能である。なお、図示していないが、積層体2を貫通するように中心軸Axに沿って延びる複数の磁石挿入孔が、積層体2に設けられていてもよい。
【0012】
積層体2は、複数の打抜部材Wが積み重ねられて構成されている。打抜部材Wは、金属板(例えば、電磁鋼板)が所定形状に打ち抜かれた板状体である。積層体2は、打抜部材W同士の角度を相対的にずらしながら複数の打抜部材Wを積層する、いわゆる転積によって構成されていてもよい。転積の角度は、任意の大きさに設定してもよい。
【0013】
複数の打抜部材Wの積層方向(積層体2の高さ方向であり、積層体2の上下方向でもある)において隣り合う打抜部材W同士は、カシメ部3によって締結されている。具体的には、カシメ部3は、図1(b)に示されるように、積層体2の最下層以外をなす打抜部材Wに形成されたカシメ3aと、積層体2の最下層をなす打抜部材Wに形成された貫通孔3bとを有する。カシメ3aは、打抜部材Wの表面側に形成された凹部と、打抜部材Wの裏面側に形成された凸部とで構成されている。一の打抜部材Wのカシメ3aの凹部は、当該一の打抜部材Wの表面側に隣り合う他の打抜部材Wのカシメ3aの凸部と接合される。一の打抜部材Wのカシメ3aの凸部は、当該一の打抜部材Wの裏面側において隣り合う更に他の打抜部材Wのカシメ3aの凹部と接合される。貫通孔3bには、積層体2の最下層に隣接する打抜部材Wのカシメ3aの凸部が接合される。貫通孔3bは、後述するプレス加工装置100において積層体2を連続して製造する際、既に製造された積層体2に対し、続いて形成された打抜部材Wがカシメ3aによって締結されるのを防ぐ機能を有する。
【0014】
複数の打抜部材W同士は、カシメ部3に代えて、種々の公知の方法にて締結されてもよい。例えば、打抜部材Wに仮カシメを設け、仮カシメを介して複数の打抜部材Wを締結して仮積層体を得た後、仮カシメを当該仮積層体から除去することによって、積層体2を得てもよい。なお、「仮カシメ」とは、複数の打抜部材Wを一時的に一体化させるのに使用され且つ製品(積層体2)を製造する過程において取り除かれるカシメを意味する。
【0015】
[回転子積層鉄心の製造装置]
続いて、図2を参照して、回転子積層鉄心の製造装置10について説明する。製造装置10は、帯状の金属板MSから回転子積層鉄心1を製造するように構成されている。製造装置10は、アンコイラー20と、送出装置30と、プレス加工装置100と、積厚測定装置200(測定装置)と、コントローラCtr(制御部)とを備える。
【0016】
アンコイラー20は、コイル材21を回転自在に保持するように構成されている。コイル材21は、金属板MSがコイル状(渦巻状)に巻回されたものである。送出装置30は、金属板MSを上下から挟み込む一対のローラ31,32を含む。一対のローラ31,32は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて回転及び停止し、金属板MSをプレス加工装置100に向けて間欠的に順次送り出すように構成されている。
【0017】
プレス加工装置100は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作するように構成されている。プレス加工装置100は、例えば、送出装置30によって送り出される金属板MSを複数のパンチ及びダイにより順次、切り曲げ加工または打ち抜き加工して、複数の打抜部材Wを形成するように構成されている。プレス加工装置100は、打ち抜き加工によって得られた複数の打抜部材Wを順次積層して積層体2を形成するように構成されていてもよい。プレス加工装置100によって形成された積層体2は、例えば、コンベアCvによって積厚測定装置200に搬送されてもよいし、人手によって積厚測定装置200に搬送されてもよい。プレス加工装置100の詳細については、後述する。
【0018】
積厚測定装置200は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作し、積層体2の積厚(積層体2の高さ)を測定するように構成されている。積厚測定装置200は、積層方向から所定の荷重Lを積層体2に付与した状態で積層体2の積厚を測定する。荷重Lは、積層体2のサイズによって種々の大きさとなりうるが、例えば、加圧後の積層体2の高さHが、加圧前の積層体2の厚さHの99.9%以上で且つ厚さH未満(0.999H≦H<H)を満たす大きさであってもよい。
【0019】
積厚測定装置200は、一対の挟持部材201,202と、昇降機構203と、距離センサ204とを含む。一対の挟持部材201,202は、例えば、矩形状を呈する平板であってもよい。一対の挟持部材201,202は、上下方向に並ぶように位置している。下側に位置する挟持部材201の上面には、挟持部材202を上下方向に案内するように構成された案内シャフトが設けられていてもよい。
【0020】
昇降機構203は、挟持部材202に接続されている。昇降機構203は、コントローラCtrからの指示に基づいて動作し、挟持部材202を上下方向において往復動させるように構成されている。昇降機構203は、挟持部材202を上下動させるのであれば、特に限定されるものではなく、例えば、アクチュエータ、エアシリンダ等であってもよい。
【0021】
距離センサ204は、挟持部材201と挟持部材202との離隔距離を測定するように構成されている。挟持部材201,202が積層体2を挟持した状態で、距離センサ204が当該離隔距離を測定することにより、積層体2の積厚が間接的に測定される。距離センサ204は、例えば挟持部材202に設けられていてもよい。距離センサ204によって測定された積層体2の積厚のデータは、コントローラCtrに送信される。
【0022】
コントローラCtrは、例えば、記録媒体(図示せず)に記録されているプログラム又はオペレータからの操作入力等に基づいて、送出装置30、プレス加工装置100、積厚測定装置200及びコンベアCvを動作させるための信号を生成するように構成されている。コントローラCtrは、送出装置30、プレス加工装置100、積厚測定装置200及びコンベアCvに当該信号をそれぞれ送信するように構成されている。
【0023】
[プレス加工装置の詳細]
続いて、図3及び図4を参照して、プレス加工装置100の詳細について説明する。プレス加工装置100は、図3に示されるように、下型110と、上型120と、プレス機130とを含む。下型110は、ベース111と、ダイホルダ112と、ダイプレート113と、複数のガイドポスト114とを含んでいてもよい。
【0024】
ベース111は、例えば床面上に固定されており、プレス加工装置100全体の土台として機能する。ダイホルダ112は、ベース111上に支持されている。ダイホルダ112には、複数の排出孔C1~C4と、後述するスクイズリングEが収容される凹部C5とが形成されている。排出孔C1~C4は、ダイホルダ112の内部を上下方向に延びていてもよい。排出孔C1~C4には、金属板MSから打ち抜かれた材料(例えば、打抜部材W、廃材等)が排出される。
【0025】
ダイプレート113は、ダイホルダ112上に設置されている。ダイプレート113は、複数のダイD1~D4を含む。ダイD1~D4はそれぞれ、パンチP1~P4に対応する位置に配置されており、対応するパンチP1~P4が挿通可能なダイ孔を含む。ダイD1~D4は、金属板MSの搬送方向において、上流側から下流側に向けてこの順に並んでいる。
【0026】
ダイD1は、パンチP1と共に、金属板MSを打抜加工するための第1の打抜ユニットを構成している。第1の打抜ユニットによって金属板MSから打ち抜かれた金属片は、排出孔C1を通じてプレス加工装置100の外部に排出される。ダイD2は、パンチP2と共に、金属板MSを選択的に打抜加工するための第2の打抜ユニットを構成している。第2の打抜ユニットによって金属板MSから打ち抜かれた金属片は、排出孔C2を通じてプレス加工装置100の外部に排出される。
【0027】
ダイD3は、パンチP3と共に、金属板MSをプレス加工(例えば、切り曲げ加工、半抜き加工など)するための第3の打抜ユニットを構成している。ダイD4は、パンチP4と共に、金属板MSを打抜加工するための第4の打抜ユニットを構成している。第4の打抜ユニットによって金属板MSから打ち抜かれた打抜部材Wは、排出孔C4を通じてプレス加工装置100の外部に排出される。第4の打抜ユニットの詳細については後述する。
【0028】
複数のガイドポスト114は、ダイホルダ112から上方に向けて直線状に延びている。複数のガイドポスト114は、後述のガイドブッシュ121aと共に、上型120を上下方向に案内するように構成されている。なお、複数のガイドポスト114は、上型120から下方に向けて延びるように上型120に取り付けられていてもよい。
【0029】
上型120は、パンチホルダ121と、ストリッパ122と、複数のパンチP1~P4と、切替装置123とを含む。上型120は、金属板MSの打抜加工に際して金属板MSを位置決めするためのパイロットピン(図示せず)をさらに含んでいてもよい。
【0030】
パンチホルダ121は、ダイホルダ112及びダイプレート113と向かい合うように、これらの上方に配置されている。パンチホルダ121は、複数のパンチP1~P4を保持するように構成されている。パンチホルダ121に保持されている複数のパンチP1~P4は、パンチホルダ121の下面側から下方に向けて突出している。
【0031】
パンチホルダ121には、筒状を呈する複数のガイドブッシュ121aが設けられている。複数のガイドブッシュ121aはそれぞれ、複数のガイドポスト114に対応するように位置している。各ガイドポスト114は、対応するガイドブッシュ121a内を挿通可能である。なお、ガイドポスト114が上型120に取り付けられている場合には、ガイドブッシュ121aが下型110に設けられていてもよい。
【0032】
ストリッパ122は、パンチP1~P4で金属板MSをプレス加工する際にパンチP1~P4に食いついた金属板MSをパンチP1~P4から取り除くように構成されている。ストリッパ122は、ダイD1~D4とパンチホルダ121との間に配置されている。
【0033】
ストリッパ122は、接続部材124を介してパンチホルダ121と接続されている。接続部材124の上部は、パンチホルダ121に設けられた挿通孔121b内に挿通されている。そのため、接続部材124は、パンチホルダ121に対して上下動可能に構成されている。接続部材124の下部は、ストリッパ122に固定されている。そのため、ストリッパ122は、パンチホルダ121に対して相対的に上下移動可能となるように、接続部材124を介してパンチホルダ121に吊り下げ保持されている。接続部材124の本体部の周囲には、パンチホルダ121とストリッパ122とを離隔させる方向の付勢力をこれらに作用させるように構成された付勢部材125(例えば、圧縮コイルばねなど)が取り付けられていてもよい。
【0034】
ストリッパ122には、パンチP1~P4に対応する位置に貫通孔がそれぞれ設けられている。各貫通孔はそれぞれ、上下方向に延びており、上方から見たときに対応するダイD1~D4のダイ孔と重なり合っている。各貫通孔内にはそれぞれ、パンチP1~P4の下部が挿通されている。パンチP1~P4の下部はそれぞれ、各貫通孔内においてスライド可能である。
【0035】
パンチP1~P4は、プレス加工装置100の上流側から下流側に向けてこの順に並ぶように配置されている。パンチP1の下端部は、ダイD1のダイ孔に対応する形状を呈している。パンチP1とダイD1とで構成される第1の打抜ユニットは、積層体2の貫通孔2aに対応する貫通孔を金属板MSに形成してもよい。
【0036】
パンチP2の下端部は、ダイD2のダイ孔に対応する形状を呈している。パンチP2とダイD2とで構成される第2の打抜ユニットは、カシメ部3の貫通孔3bに対応する貫通孔を金属板MSに選択的に形成してもよい。金属板MSに当該貫通孔を形成するか否かの切り替えは、後述する切替装置123によって実行される。
【0037】
パンチP3の下端部は、ダイD3のダイ孔に対応する形状を呈している。パンチP3とダイD3とで構成される第3の打抜ユニットは、カシメ部3のカシメ3aに対応する凹凸を金属板MSに形成してもよい。なお、第2の打抜ユニットによって金属板MSに貫通孔が形成されている場合には、パンチP3の先端が当該貫通孔を通過するので、金属板MSにはカシメ3aに対応する凹凸が形成されない。
【0038】
パンチP4の下端部は、ダイD4のダイ孔に対応する形状を呈している。パンチP4とダイD4とで構成される第4の打抜ユニットは、金属板MSを所定形状に打ち抜いて打抜部材Wを形成してもよい(「外形抜き」ともいう。)。
【0039】
切替装置123は、パンチP2の上方で且つパンチホルダ121内に配置されていてもよい。プレス加工装置100が複数のパンチP2を含む場合には、複数のパンチP2と同数の切替装置123が個々のパンチP2に対応するようにパンチP2の上方にそれぞれ配置されていてもよい。
【0040】
切替装置123は、例えばカム機構であり、カム部材123aと、アクチュエータ123bとを含む。カム部材123aは、水平方向にスライド可能に構成されている。カム部材123aの下面側には、上方に向けて窪む凹部123cが設けられている。凹部123cは、パンチP2の頭部を収容可能に構成されている。
【0041】
アクチュエータ123bは、コントローラCtrからの指示信号に基づいて、カム部材123aを水平方向において駆動させるように構成されている。アクチュエータ123bは、例えば、パンチP2の頭部が凹部123cの外側に位置し且つカム部材123aの下面と当接する第1の位置と、パンチP2の頭部が凹部123c内に収容される第2の位置との間で、カム部材123aを移動させるように構成されていてもよい。アクチュエータ123bは、パンチホルダ121内ではなく、上型120の外側に配置されていてもよい。
【0042】
プレス機130は、コントローラCtrからの指示に基づいて、上型120を上下動させるように構成されている。プレス機130は、パンチホルダ121に接続されたクランクシャフト131と、クランクシャフト131の主軸を回転させるように構成された駆動機構132とを含む。駆動機構132によってクランクシャフト131の主軸が回転すると、クランクシャフト131の偏心軸が主軸周りを円運動する。これに伴い、パンチホルダ121が上死点と下死点との間で上下に往復運動する。
【0043】
ここで、上述した第4の打抜ユニットの構成について、図4を参照してより詳しく説明する。ダイD4は、ダイホルダ112の凹部C5内に収容されたスクイズリングE上に載置されていてもよいし、スクイズリングEと離隔した状態でスクイズリングEの上方に位置していてもよい。ダイD4のダイ孔は、スクイズリングEに設けられている貫通孔と連通している。上方から見たときに、ダイD4のダイ孔の外形及びスクイズリングEの貫通孔の外形は、打抜部材Wの外形と略同一形状であってもよい。
【0044】
スクイズリングEの貫通孔の外形は、ダイD4のダイ孔の外形よりもわずかに小さく設定されていてもよい。この場合、ダイD4において打ち抜かれた打抜部材WがダイD4を通過してスクイズリングEに到達すると、打抜部材Wの外周側から内側に向かう側圧が打抜部材Wに作用する。そのため、打抜部材WがスクイズリングEに保持されて下方に落下し難くなるので、後続の打抜部材Wとの間でカシメ部3を介した締結がより確実に行えるようになる。すなわち、スクイズリングE内において、所定枚数の打抜部材Wがカシメ部3によって相互に締結されることで、積層体2が形成される。
【0045】
排出孔C4内には、駆動機構141と、シリンダ142と、プッシャ143とが配置されている。駆動機構141は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて、シリンダ142を上下方向に駆動するように構成されている。
【0046】
シリンダ142は、ダイD4及びスクイズリングEの下方に位置している。シリンダ142は、パンチP4によって金属板MSから打ち抜かれてスクイズリングEから下方に露出した打抜部材Wを弾性的に支持するように構成されている。これにより、打ち抜かれた打抜部材Wの落下が防止される。すなわち、シリンダ142は、金属板MSの打ち抜きの際にパンチP4からの衝撃力を緩和するように、シリンダ本体を所定の圧力で支持する緩衝機構を含んでいてもよい。シリンダ142は、例えば、油圧シリンダで構成されていてもよい。
【0047】
シリンダ142は、例えば、シリンダ142上に打抜部材Wが載置されている状態で金属板MSからパンチP4によって打抜部材Wが打ち抜かれるごとに、間欠的に下方に移動するように、駆動機構141によって駆動されてもよい。なお、シリンダ142の外形は、スクイズリングEの貫通孔の外形よりも大きく設定されていてもよい。すなわち、シリンダ142は、その先端部がスクイズリングEの貫通孔内に入らないように構成されていてもよい。
【0048】
プッシャ143は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて、シリンダ142上の積層体2をコンベアCvに払い出すように構成されている。コンベアCvに払い出された積層体2は、積厚測定装置200に搬送されて、その積厚が測定される。
【0049】
パンチP4の下端部(先端部)には、パンチP4の上端部(基端部)に向けて窪む凹部P4aが設けられている。下方から見たときに、凹部P4aは、パンチP4の中央部分に位置していてもよい。凹部P4a内には、放熱板151(放熱機構)を介してセンサSEが取り付けられている。
【0050】
センサSEは、パンチP4の下端面とシリンダ142の上端面との離隔距離(以下、単に「離隔距離」という。)を測定するように構成されている。センサSEにおいて測定された離隔距離のデータは、コントローラCtrに送信される。
【0051】
センサSEは、例えば、レーザ変位計であってもよい。この場合、センサSEの投光部及び受光部がパンチP4の下端面と略同一高さに配置されていてもよい。あるいは、センサSEの投光部及び受光部がパンチP4の下端面よりも凹部P4aの内側に位置している場合には、センサSEの投光部及び受光部とパンチP4の下端面との差を測定結果から減算する処理をコントローラCtrが実行ことで、離隔距離を取得するようにしてもよい。
【0052】
放熱板151は、センサSEを挟持するように、センサSEの周囲に配置されている。放熱板151は、センサSEよりも熱伝導率の高い材質(例えば、金属板)で構成されていてもよい。
【0053】
[回転子積層鉄心の製造方法]
続いて、図2図4を参照して、回転子積層鉄心1の製造方法について説明する。
【0054】
まず、図2及び図3に示されるように、金属板MSが送出装置30によって間欠的にプレス加工装置100に送り出され、金属板MSの所定部位が第1の加工ユニットに到達すると、プレス機130が動作して、上型120を下型110に向けて下方に押し出す。ストリッパ122が金属板MSに到達して、ストリッパ122とダイプレート113とで金属板MSが挟持された後も、プレス機130が上型120を下方に向けて押し出す。
【0055】
このとき、ストリッパ122は移動しないが、パンチホルダ121及びパンチP1~P4は引き続き降下する。そのため、パンチP1の先端部は、ストリッパ122の各貫通孔内を下方に移動し、さらにダイD1のダイ孔近傍まで到達する。この過程で、パンチP1が金属板MSをダイD1のダイ孔に沿って打ち抜く。これにより、積層体2の貫通孔2aに対応する貫通孔が金属板MSに形成される。金属板MSから打ち抜かれた廃材は、排出孔C1から排出される。その後、プレス機130が動作して、上型120を上昇させる。
【0056】
次に、金属板MSが送出装置30によって間欠的に送り出され、金属板MSの所定部位が第2の加工ユニットに到達すると、上記と同様に、プレス機130によって上型120が上下動する。この際、切替装置123のカム部材123aがアクチュエータ123bによって第1の位置に位置している場合、パンチP2の下端部がストリッパ122の下面よりも下方に突出している。そのため、パンチP2が金属板MSをダイD2のダイ孔に沿って打ち抜く。これにより、カシメ部3の貫通孔3bに対応する貫通孔が金属板MSに形成される。金属板MSから打ち抜かれた廃材は、排出孔C2から排出される。一方、切替装置123のカム部材123aがアクチュエータ123bによって第2の位置に位置している場合、パンチP2の下端部がストリッパ122の下面から突出していない。そのため、金属板MSはパンチP2によって打ち抜かれない。その後、プレス機130が動作して、上型120を上昇させる。
【0057】
次に、金属板MSが送出装置30によって間欠的に送り出され、金属板MSの所定部位が第3の加工ユニットに到達すると、上記と同様に、プレス機130によって上型120が上下動する。この際、第2の加工ユニットにおいて金属板MSに貫通孔が形成されている場合、パンチP3の下端部が当該貫通孔を通過する。そのため、金属板MSはパンチP3によって打ち抜かれない。一方、第2の加工ユニットにおいて金属板MSに貫通孔が形成されていない場合、パンチP3が金属板MSをプレス加工(例えば、切り曲げ加工、半抜き加工など)する。これにより、カシメ部3のカシメ3aに対応する凹凸が金属板MSに形成される。
【0058】
次に、金属板MSが送出装置30によって間欠的に送り出され、金属板MSの所定部位が第4の加工ユニットに到達すると、上記と同様に、プレス機130によって上型120が上下動する。この過程で、パンチP4が金属板MSをダイD4のダイ孔に沿って打ち抜く。これにより、積層体2の貫通孔2aに対応する貫通孔と、カシメ部3(カシメ3a又は貫通孔3b)とが形成された打抜部材Wが形成される。なお、センサSEは、プレス加工装置100の動作期間中、連続的に離隔距離を測定し、その測定値のデータをコントローラCtrに送信している。
【0059】
ここで、図4に示されるように、金属板MSから打ち抜かれた打抜部材Wは、先行して打ち抜かれた打抜部材Wに対してダイD4のダイ孔内において積層されつつ、カシメ部3によって相互に締結される。このとき、打抜部材Wの転積を行うために、打抜部材Wの打抜前に、図示しない駆動装置がダイD4及びスクイズリングEを所定角度回転させてもよい。
【0060】
上記の処理が繰り返されて、ダイD4及びスクイズリングE内において所定枚数の打抜部材Wが積層されると、積層体2が形成される。積層体2は、プッシャ143によってコンベアCvに払い出され、積厚測定装置200に搬送される。積厚測定装置200において積層体2の積厚が測定されると、その積厚のデータはコントローラCtrに送信される。その後、積層体2にその他の処理(例えば、永久磁石の取り付け、端面板の取り付け、溶接、回転軸の取り付けなど)が実行されると、回転子積層鉄心1が完成する。
【0061】
[積層体の形成過程の詳細]
続いて、図5図9を参照して、プレス加工装置100による積層体2の形成過程について、ダイD4及びスクイズリングEに打抜部材Wが存在していない初期状態(図5(a)参照)を開始時点として、より詳しく説明する。
【0062】
まず、パンチP4及びダイD4によって最初の打抜部材W(W)が金属板MSから打ち抜かれると、打抜部材W(W)は、ダイD4又はスクイズリングEの内周面において保持される。最初の打抜部材W(W)には、カシメ部3の貫通孔3bに対応する貫通孔が形成されている。このとき、打抜部材W(W)はシリンダ142に到達しない。
【0063】
次に、パンチP4及びダイD4によって後続の打抜部材W(W)が金属板MSから打ち抜かれると、打抜部材W(W)は、先行して打ち抜かれた打抜部材W(W)に対してカシメ部3を介して相互に結合されながら、ダイD4及びスクイズリングEの内周面において保持される(図5(b)参照)。これらの後続の打抜部材W(W)には、カシメ部3のカシメ3aに対応する凹凸が形成されている。このときも、最下端に位置する打抜部材W(W)はシリンダ142に到達しない。
【0064】
このように、初期状態から、プレス加工装置100によって所定枚数の打抜部材Wが形成されるまでの所定期間(初期打抜期間)においては、センサSEを用いてダイD4及びスクイズリングE内における複数の打抜部材Wの積厚を測定することができない。そのため、積層体2の目標積厚Zを、金属板MSのおおよその板厚tで除算して得られる値が、一つの積層体2を得るための暫定的な打抜回数N(Nは自然数)として用いられる。なお、ここでいう「おおよその板厚t」は、例えば、金属板MSのうち任意の一点での板厚の測定値であってもよいし、金属板MSのうち任意の複数点での板厚の測定値を平均した値であってもよい。
【0065】
次に、N枚目の打抜部材Wが積層されるよりも前に、金属板MSのうちN+1枚目の打抜部材W(W)となる領域に対してカシメ部3の貫通孔3bに対応する貫通孔が形成されるように、コントローラCtrが切替装置123を制御して、カム部材123aを第1の位置に位置させる。換言すれば、N枚目の打抜部材WがパンチP4及びダイD4によって金属板MSから外形抜きされる前に、金属板MSのうちN枚目の打抜部材Wとなる領域よりも上流側に位置するN+1枚目の打抜部材W(W)となる領域に対して、パンチP2及びダイD2によって、カシメ部3の貫通孔3bに対応する貫通孔を予め形成しておく。その後、N枚の打抜部材Wが積層されると、ダイD4及びスクイズリングE内において、最初の積層体2が形成される(図5(b)参照)。以下では、最初の積層体2を「積層体2」と称し、同様に、N番目の積層体2を「積層体2」と称することがある。
【0066】
これに続いて、貫通孔3bに対応する貫通孔を含む打抜部材W(W)が打ち抜かれて、積層体2の上に積層される(図5(b)参照)。このとき、積層体2を構成する最上層の打抜部材W(W)と、積層体2を構成する最下層の打抜部材W(W)とがカシメ部3によって締結されず、両者が分離された状態となる(同参照)。
【0067】
次に、コントローラCtrが切替装置123を制御して、カム部材123aを第2の位置に位置させる。そして、積層体2を構成する最下層の打抜部材W(W)に後続の複数の打抜部材W(W)が積層される(図6(a)参照)。本明細書において示される例では、ダイD4及びスクイズリングE内において、先行する積層体2の上に、その後続の積層体2を構成する複数の打抜部材Wが所定枚数積層されると、先行する積層体2を構成する最下層の打抜部材W(W)がシリンダ142に到達する。これにより、先行する積層体2と、その上に積層されている複数の打抜部材Wとが、シリンダ142によって支持される。以降は、打抜部材Wが1枚打ち抜かれるたびに、打ち抜かれた打抜部材Wの板厚分だけ、シリンダ142が断続的に降下していく。そのため、センサSEによって測定される離隔距離は、図9に例示されるように、徐々に大きな値を示すようになる。
【0068】
パンチP4が略一定周期で上下動しているので、センサSEによって測定される離隔距離は、図9に示されるように、正弦波のように極小値及び極大値を取りながら略周期的に変動する。図9の極小値は、パンチP4が下死点付近に到達したときの値である。なお、パンチP4の下死点において、パンチP4又はシリンダ142にわずかな変位が生ずることがあるので、パンチP4の下死点において極小値をとらない場合がありうる。
【0069】
ここで、パンチP4の下死点において極小値をとらない場合についての一例を、図10を参照して説明する。まず、パンチP4の降下によりパンチP4が金属板MSから打抜部材Wを打ち抜き、パンチP4がシリンダ142に最接近して、最初の極小値Q1が出現する。その後、パンチP4が打抜部材Wを打ち抜いた衝撃によりシリンダ142が押し下げられ、シリンダ142が下方に弾性的に変位するので、離隔距離が大きくなる。その途中で、パンチP4が実際に下死点Q2に到達する。その後、シリンダ142がパンチP4からさらに離れると、弾性力により、シリンダ142は再びパンチP4に近接し、2回目の極小値Q3が出現する。この時点でパンチP4は上昇を開始しているので、その後は離隔距離が急激に大きくなっていく。
【0070】
ダイD4及びスクイズリングE内における複数の打抜部材Wは、パンチP4が下死点付近に到達したときにパンチP4とシリンダ142とで挟持される。このときにパンチP4及びシリンダ142によって複数の打抜部材Wに付与される荷重によって、複数の打抜部材Wのカシメ部3が互いにより強固に締結される。すなわち、センサSEによって測定された離隔距離のうち極小値が、センサSEによる測定時にダイD4及びスクイズリングE内に存在する全ての打抜部材Wの積厚(以下、当該積厚を「全積厚X」と称する。)を示すこととなる。換言すれば、ある時点における全積厚Xとその1つ前の時点における全積厚Xとの差分値δ(図9参照)が、1枚の打抜部材Wの板厚を示すこととなる。例えば、M(Mは2以上の自然数)枚目の打抜部材Wが打ち抜かれたときの全積厚Xと、M-1枚目の打抜部材Wが打ち抜かれたときの全積厚Xとの差分値δが、M枚目の打抜部材Wの板厚を示すこととなる。
【0071】
次に、2N枚目の打抜部材Wが積層されるよりも前に、金属板MSのうち2N+1枚目の打抜部材W(W)となる領域に対してカシメ部3の貫通孔3bに対応する貫通孔が形成されるように、コントローラCtrが切替装置123を制御して、カム部材123aを第1の位置に位置させる。換言すれば、2N枚目の打抜部材WがパンチP4及びダイD4によって金属板MSから外形抜きされる前に、金属板MSのうち2N枚目の打抜部材Wとなる領域よりも上流側に位置する2N+1枚目の打抜部材W(W)となる領域に対して、パンチP2及びダイD2によって、カシメ部3の貫通孔3bに対応する貫通孔を予め形成しておく。その後、2N枚の打抜部材W(W)が積層されると、ダイD4及びスクイズリングE内において、積層体2の上に積層体2が形成される(図6(b)参照)。コントローラCtrは、このときの全積厚X(すなわち、積層体2,2の合計値)を、基準値Xとして記憶する。
【0072】
これに続いて、貫通孔3bに対応する貫通孔を含む打抜部材W(W)が打ち抜かれて、積層体2の上に積層される(図7(a)参照)。このとき、積層体2を構成する最上層の打抜部材W(W)と、積層体2を構成する最下層の打抜部材W(W)とがカシメ部3によって締結されず、両者が分離された状態となる(同参照)。
【0073】
次に、コントローラCtrが切替装置123を制御して、カム部材123aを第2の位置に位置させる。そして、積層体2を構成する最下層の打抜部材W(W)に後続の複数の打抜部材W(W)が積層される(図7(a)参照)。
【0074】
ここで、ある時点における積層体2を構成する複数の打抜部材Wの積厚は、全積厚Xから基準値Xを減算することにより、算出されてもよい。以下では、積層体2を構成する複数の打抜部材Wのある時点における積厚を単に「積厚t」と称し、同様に、積層体2を構成する複数の打抜部材Wのある時点における積厚を単に「積厚t」と称することがある。一方、積層体2自体の積厚を「積厚T」と称することがある。
【0075】
積厚tは、例えば、現時点で積層体2を構成するM枚目の打抜部材Wが打ち抜かれた場合、現時点から過去においてそれぞれ得られた差分値δ,δ,・・・,δM-1,δを順次加算して得られる値であってもよい。すなわち、積厚tは、δ+δ+・・・+δM-1+δによって算出されてもよい。積厚tも同様に算出されてもよい。
【0076】
積厚tは、例えば、以下の3つのパラメータに基づいて算出される値であってもよい。
・ダイD4及びスクイズリングE内に積層体2及び積層体2が存在しているときの全積厚X(すなわち、積層体2,2の積厚T,Tの合計値であり、以下では「全積厚X」と称する。)
・ダイD4及びスクイズリングE内に、積層体2と、積層体2を構成する複数の打抜部材Wとが存在しているときの、全積厚X(以下では「全積厚X」と称する。)
・プレス加工装置100から排出された積層体2が積厚測定装置200において測定された積厚(以下では「積厚Y」と称する。)
具体的には、全積厚Xから積厚Yを減算することで積厚Tが得られるので、全積厚Xから積厚Tを減算することで積厚tを得てもよい。以下同様に、積層体2,2,・・・,2N-1,2の完成前の積厚t,t,・・・,tN-1,tをそれぞれ算出してもよい。
【0077】
なお、積層体2の完成後に積層体2がプレス加工装置100から排出される形態の場合には、上記の3つのパラメータに加えて以下のパラメータに基づいて、積厚tが算出されてもよい。
・ダイD4及びスクイズリングE内に、積層体2及び積層体2が存在しているときの全積厚X(すなわち、積層体2,2の積厚T,Tの合計値であり、以下では「全積厚X」と称する。)
・ダイD4及びスクイズリングE内に、積層体2と、積層体2を構成する複数の打抜部材Wとが存在しているときの、全積厚X(以下では「全積厚X」と称する。)
具体的には、全積厚Xから積厚Yを減算することで積厚Tが得られ、全積厚Xから積厚Tを減算することで積厚Tが得られるので、全積厚Xから積厚Tを減算することで積厚tを得てもよい。
【0078】
積厚tが目標積厚Zに到達したか否かの判定は、次のようにして行われてもよい。例えば、積厚tが、目標積厚Zからおおよその板厚tが減算された値(T-t)よりも大きく、且つ、目標積厚Z以下(Z-t<T≦Z)を満たす大きさとなったときに、積厚tが目標積厚Zに到達したと判定されてもよい。
【0079】
あるいは、全積厚Xの所定期間における時間変化量αに基づいて、積厚tがいつ目標積厚Zに到達するかを予測してもよい。ここで、時間変化量αは、現時点を含めそれ以前に取得された複数の全積厚Xの近似線を意味する。当該近似線の種類には特に制限はないが、例えば、現時点を含めそれ以前の複数個の全積厚Xのデータを用いた移動平均線であってもよいし、一次近似線であってもよいし、多項式近似線であってもよい。時間変化量αが得られると、パンチP4の上下動の周期は略一定(すなわち極小値の時間間隔は略一定)であるので、現時点の後に時間変化量αが目標積厚Zを越えるまでの極小値の数を求めることができる。図9に示される例では、現時点G1の後に時間変化量αが目標積厚Zを越えるまでの極小値の数が3つである。そのため、金属板MSをパンチP4であと3回打ち抜くことにより、目標積厚Zに極めて近接した積厚の積層体2が得られる。時間変化量αは、離隔距離の極小値(全積厚X)がセンサSEによって取得されるごとに算出されてもよい。
【0080】
なお、図9において点G2で示されるように、センサSEで測定した離隔距離の極小値に、外乱の影響により大きな誤差が生ずる場合がある。このような場合には、点G2における極小値(全積厚X)を除外してもよい。具体的には、点G2の一つ前の極小値がセンサSEによって取得されたときの時間変化量αと、点G2における極小値との差分を算出し、当該差分が所定範囲内であれば点G2における極小値を除外せず、当該差分が所定範囲外であれば点G2における極小値を除外するようにしてもよい。点G2における極小値が除外された場合には、当該極小値に代えて、その時点での時間変化量αを全積厚Xとして採用してもよい。
【0081】
ここで、積厚tが目標積厚Zに到達する直前に、数枚後の打抜部材W(W)に対してカシメ部3の貫通孔3bに対応する貫通孔が形成されるように、コントローラCtrが切替装置123を制御して、カム部材123aを第1の位置に位置させる。本明細書の例では、第2の打抜ユニットが第4の打抜ユニットの上流側で且つ2工程前に存在しているので、積厚tが目標積厚Zに到達する予測枚数が2枚となった時点で、金属板MSの上流側の所定領域に、カシメ部3の貫通孔3bに対応する貫通孔が形成される。その後、2枚の打抜部材W(W)が積層されると、ダイD4及びスクイズリングE内において、積層体2の上に積層体2が形成される(図7(b)参照)。
【0082】
以上のように、積層体2は、センサSEによって取得された離隔距離に基づいて、積厚tが目標積厚Zに到達したと判定された時点で完成する。そのため、積層体2を構成する打抜部材Wの枚数は、打抜部材Wの実際の板厚に応じて変化する。したがって、N枚の打抜部材Wが積層されることによって構成された積層体2,2とは異なり、積層体2を構成する打抜部材Wの枚数は、N枚から増減することがあり得る。
【0083】
積層体2が完成すると、図7(b)に例示されるように、積層体2は、ダイD4及びスクイズリングEから排出され、シリンダ142によって支持された状態となる。この状態で、シリンダ142を所定の高さまで降下させることにより、ダイD4及びスクイズリングEによって保持されていない積層体2がプッシャ143によってコンベアCvに払い出され、積厚測定装置200に搬送される(図8(a)参照)。その後、シリンダ142が再び上昇して、ダイD4及びスクイズリングEによって保持されている積層体2,2が、シリンダ142によって再び支持される(図8(b)参照)。
【0084】
以降は、積層体2と同様に、4つめ以降の積層体2が形成される。すなわち、4つめ以降の積層体2も、センサSEによって取得された離隔距離に基づいて、積厚tが目標積厚Zに到達したと判定された時点で完成する。なお、積層体2,2は、センサSEによって取得された離隔距離に基づかずに、それぞれN枚の打抜部材Wが積層されて構成されているが、積層体2,2の積厚が目標積厚Zに到達していれば積層体2,2も製品として用いられてもよい。
【0085】
[作用]
以上の例によれば、センサSEによって取得される離隔距離は、パンチP4とシリンダ142とによって加圧された状態における複数の打抜部材Wの積厚となる。そのため、金属板MSに板厚偏差が存在していても、パンチP4及びシリンダ142からの加圧によって複数の打抜部材Wが密着しやすくなり、複数の打抜部材W同士の隙間が大きく低減された状態で、複数の打抜部材Wを積層しながらその積厚が取得されることとなる。したがって、プレス加工装置100内において積層されていく途中の積層体2の積厚を高精度に取得することが可能となる。
【0086】
以上の例によれば、センサSEがパンチP4内に設けられている。そのため、センサSEをプレス加工装置100に取り付けるために、プレス加工装置100を大きく変更する必要がない。したがって、既存のプレス加工装置100に対して、簡易且つ安価にセンサを取り付けることが可能となる。
【0087】
以上の例によれば、時間変化量αに基づいて、積厚tが目標積厚Zに到達する予測枚数を算出している。そのため、現在製造中の積層体2が完成する前に、次に製造される積層体2を構成する打抜部材Wへの貫通孔の形成タイミングをより正確に判断することが可能となる。
【0088】
以上の例によれば、センサSEで測定した離隔距離の極小値に、外乱の影響により大きな誤差が生じた場合に、当該極小値を除外している。そのため、時間変化量αがより高精度に得られる。したがって、次に製造される積層体2を構成する打抜部材Wへの貫通孔の形成タイミングをさらに正確に判断することが可能となる。
【0089】
以上の例によれば、時間変化量αは、センサSEによって取得された離隔距離の所定期間における移動平均線でありうる。この場合、当該離隔距離のデータに大きな変動があったり、誤差が含まれていても、それらの影響が低減される。そのため、時間変化量αとして移動平均値を用いることにより、金属板MSの打抜回数をより正確に算出することが可能となる。
【0090】
以上の例によれば、センサSEによる測定時にダイD4及びスクイズリングE内に存在する複数の打抜部材Wの積厚は、現時点から過去においてそれぞれ得られた差分値δを順次加算して得られる値でありうる。この場合、複数の打抜部材Wの積厚を極めて簡易な手法で算出することが可能となる。
【0091】
以上の例によれば、センサSEによって取得されたダイD4及びスクイズリングE内の2個の積層体2の離隔距離と、既に完成した一つの積層体2の積厚を積厚測定装置200によって測定した値とに基づいて、ダイD4及びスクイズリングE内の一つの積層体2の積厚を算出しうる。この場合、既に完成した一つの積層体2の積厚が、積厚測定装置200によってより正確に測定される。そのため、積厚測定装置200による測定値と、センサSEによって取得された離隔距離とを用いることで、プレス加工装置100内において積層されていく途中の積層体の積厚をより高精度に取得することが可能となる。
【0092】
以上の例によれば、センサSEが放熱板151を介してパンチP4内に設けられている。そのため、センサSEの動作時にセンサSEにおいて生じた熱が、放熱板151を介して発散される。したがって、センサSEの温度変化に伴う温度ドリフトが低減される。その結果、プレス加工装置100内において積層されていく途中の積層体2の積厚をより高精度に取得することが可能となる。
【0093】
[変形例]
本明細書における開示はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特許請求の範囲及びその要旨を逸脱しない範囲において、以上の例に対して種々の省略、置換、変更などが行われてもよい。
【0094】
(1)固定子積層鉄心となる打抜部材と、回転子積層鉄心となる打抜部材とを同じ金属板MSから形成する、いわゆる「共取り加工」に対して、本開示を適用してもよい。共取り加工においては、回転子積層鉄心となる打抜部材が金属板MSから打ち抜かれた後に、当該打抜部材が打ち抜かれた領域を取り囲むように、固定子積層鉄心となる打抜部材が金属板MSから打ち抜かれる。
【0095】
(2)放熱板151に代えて、センサSEの熱を放散させるための他の放熱機構が採用されてもよい。例えば、センサSEの周囲において冷却媒体(例えば、空気、水など)を循環させる冷却機構が用いられてもよいし、センサSEに空気を吹き付ける送風機構が用いられてもよい。あるいは、センサSEは、放熱機構を介さずに、パンチP4内に設けられていてもよい。
【0096】
(3)図11に例示されるように、シリンダ142の上端部(先端部)には、シリンダ142の下端部(基端部)に向けて窪む凹部142aが設けられていてもよい。上方から見たときに、凹部142aは、シリンダ142の中央部分に位置していてもよい。凹部142a内には、センサSEが配置されていてもよい。この場合も、センサSEは、パンチP4の下端面とシリンダ142の上端面との離隔距離を測定することが可能である。
【0097】
(4)パンチP4の下死点付近におけるパンチP4の下端面とシリンダ142の上端面との離隔距離を測定することができれば、センサSEは、パンチP4又はシリンダ142の外側に位置していてもよい。例えば、センサSEは、パンチP4の外表面に設けられていてもよいし、シリンダ142の外表面に設けられていてもよい。
【0098】
(5)センサSEで測定した離隔距離の極小値に大きな誤差が生じた場合でも、当該極小値を除外せずに、時間変化量αが算出されてもよい。
【0099】
(6)複数の打抜部材W同士は、例えば接着剤によって互いに接合されていてもよい。この場合、所定部分に接着剤が付与された状態の金属板MSをパンチP4及びダイD4によって外形抜きし、外形抜きによって形成された打抜部材Wを、既に打ち抜かれた打抜部材Wに対して積層しながら接着してもよい。接着剤によって複数の打抜部材W同士を接合する場合、接着剤の流動状況によって打抜部材Wの間に配置される接着剤層の厚みにばらつきが生ずることがある。そのため、積層体2の積厚の管理が困難となる場合があったが、本開示の技術を適用することにより、接着剤によって複数の打抜部材Wが接合されてなる積層体2の積厚を高精度に取得することが可能となる。
【0100】
(7)センサSEは、パンチP4の凹部P4a内に配置されている場合には、パンチP4の下端面と、シリンダ142の上端面のうち中央部(中心付近)との離隔距離を測定するように構成されていてもよい。この場合、シリンダ142に存在する寸法公差によってシリンダ142が鉛直方向に関して傾くことがあったとしても、センサSEによって離隔距離をより正確に測定することが可能となる。センサSEは、シリンダ142の凹部142a内に配置されている場合には、パンチP4の下端面のうち中央部(中心付近)と、シリンダ142の上端面との離隔距離を測定するように構成されていてもよい。この場合、上型120に存在する寸法公差や、プレス機130の傾きによってパンチP4が鉛直方向に関して傾くことがあったとしても、センサSEによって離隔距離をより正確に測定することが可能となる。
【0101】
(8)金属板MSのプレス加工に伴い、金属板MSの表面に付与されているプレス加工用のオイル(スタンピングオイル)が、周囲にミスト状に拡がることがある。そこで、パンチP4の凹部P4a内にセンサSEが配置されている場合においても、シリンダ142の凹部142a内にセンサSEが配置されている場合においても、センサSEが透明部材(例えば、ガラス板など)によって覆われていてもよい。この場合、センサSEへのオイルの付着が透明部材によって抑制される。そのため、センサSEによって離隔距離をより正確に測定することが可能となる。
【0102】
透明部材の表面には、撥油性の被覆膜が形成されていてもよい。この場合、透明部材へのオイルの付着が被覆膜によって抑制される。そのため、センサSEによって離隔距離をより正確に測定することが可能となる。透明部材は、水平面に対して傾斜するように設けられていてもよい。この場合、透明部材に付着したオイルが透明部材の傾斜に沿って流下しやすくなるので、透明部材へのオイルの付着が被覆膜によって抑制される。そのため、センサSEによって離隔距離をより正確に測定することが可能となる。
【0103】
透明部材の表面に付着したオイルを除去するための除去部が、パンチP4またはシリンダ142の近傍に設けられていてもよい。除去部は、例えば、透明部材の表面に向けてガス(例えば、空気、不活性ガスなど)を吹き付けて、透明部材の表面のオイルを吹き飛ばすように構成されたガス供給部であってもよい。あるいは、除去部は、透明部材の表面を拭うように構成された拭き取り部(例えば、ワイパー機構)であってもよい。この場合、透明部材の表面に付着したオイルが除去部によって除去される。そのため、センサSEによって離隔距離をより正確に測定することが可能となる。
【0104】
[他の例]
例1.積層鉄心の製造方法の一例は、外形抜き用のダイ孔が設けられたダイに外形抜き用のパンチを挿入して、金属板をパンチによって所定形状に打ち抜きつつダイの下方に位置するシリンダに向けて押しつけることを繰り返すことにより、金属板から打ち抜かれた複数の打抜部材をダイ内において積層し、積層体を形成することと、打抜部材が金属板から打ち抜かれる過程においてパンチが下死点付近に到達したときの、パンチとシリンダとの離隔距離をセンサによって取得することと、センサによって取得された離隔距離に基づいて、ダイ内において積層されている複数の打抜部材の積厚を算出することとを含む。この場合、センサによって取得される離隔距離は、パンチとシリンダとによって加圧された状態における複数の打抜部材の積厚となる。そのため、金属板に板厚偏差が存在していても、パンチ及びシリンダからの加圧によって複数の打抜部材が密着しやすくなり、複数の打抜部材同士の隙間が大きく低減された状態で、複数の打抜部材を積層しながらその積厚が取得されることとなる。したがって、プレス加工装置内において積層されていく途中の積層体の積厚を高精度に取得することが可能となる。
【0105】
例2.例1の方法において、センサはパンチ内又はシリンダ内に設けられていてもよい。この場合、センサをプレス加工装置に取り付けるために、プレス加工装置を大きく変更する必要がない。そのため、既存のプレス加工装置に対して、簡易且つ安価にセンサを取り付けることが可能となる。
【0106】
例3.例1又は例2の方法は、センサによって取得された離隔距離の所定期間における時間変化量を算出することと、時間変化量に基づいて、ダイ内において積層されている複数の打抜部材の積厚が所定の目標積厚に到達するまでの、パンチ及びダイによる金属板の打抜回数を算出することとをさらに含んでいてもよい。ところで、ダイ内では、既に完成した積層体がダイから排出される前に、当該積層体の上にさらに複数の打抜部材が積層されていくことがある。この際、既に完成したダイ内の積層体に対して、次に製造される積層体を構成する打抜部材が結合してしまうことを防ぐため、次に製造される積層体を構成する最初の打抜部材に対して、カシメではなく貫通孔が形成される。カシメ又は貫通孔の形成工程は外形抜きの工程よりも上流側にあるので、次に製造される積層体を構成する打抜部材が打ち抜かれる前に、すなわち、現在製造中の積層体が完成する前に、貫通孔をどのタイミングで形成するのかを判断する必要がある。この点、例3によれば、時間変化量に基づいて、目標積厚に到達するまでの打抜回数が算出されるので、次に製造される積層体を構成する打抜部材への貫通孔の形成タイミングをより正確に判断することが可能となる。
【0107】
例4.例3の方法において、時間変化量を算出することは、センサによって取得された離隔距離の過去の所定期間における時間変化量に基づいて、現在の離隔距離の予測値を算出することと、センサによって取得された現在の離隔距離と予測値との差分が所定の範囲外であるときに、センサによって取得された現在の離隔距離を除外して時間変化量を算出することとを含んでいてもよい。この場合、センサによる誤検知や、埃などの異物をセンサが検知するなどによって、センサによって取得された現在の離隔距離のデータに大きな誤差が存在していても、そのようなデータが除外される。そのため、次に製造される積層体を構成する打抜部材への貫通孔の形成タイミングをさらに正確に判断することが可能となる。
【0108】
例5.例3又は例4の方法において、時間変化量を算出することは、センサによって取得された離隔距離の所定期間における移動平均値を算出することを含んでいてもよい。この場合、センサによって取得された離隔距離の時系列データが平滑化される。そのため、当該離隔距離のデータに大きな変動があったり、誤差が含まれていても、それらの影響が低減される。したがって、時間変化量として移動平均値を用いることにより、金属板の打抜回数をより正確に算出することが可能となる。
【0109】
例6.例1~例5のいずれかの方法において、複数の打抜部材の積厚を算出することは、センサによって取得された離隔距離を順次加算することにより、ダイ内において積層されている複数の打抜部材の積厚を算出することを含んでいてもよい。この場合、複数の打抜部材の積厚を極めて簡易な手法で算出することが可能となる。
【0110】
例7.例1~例5のいずれかの方法は、ダイから排出された積層体の積厚を測定装置によって測定することをさらに含み、複数の打抜部材の積厚を算出することは、測定装置によって測定された積層体の積厚と、センサによって取得された離隔距離とに基づいて、ダイ内において積層されている複数の打抜部材の積厚を算出することを含んでいてもよい。この場合、完成した一つの積層体の積厚が、測定装置によってより正確に測定される。そのため、測定装置による測定値と、センサによって取得された離隔距離とを用いることで、プレス加工装置内において積層されていく途中の積層体の積厚をより高精度に取得することが可能となる。
【0111】
例8.積層鉄心の製造装置の一例は、金属板を所定形状に打ち抜くように構成された外形抜き用のダイ孔が設けられたダイと、ダイ孔に対して挿抜可能に構成された外形抜き用のパンチと、ダイの下方に配置されたシリンダと、パンチとシリンダとの離隔距離を取得するように構成されたセンサと、制御部とを備える。制御部は、ダイにパンチが挿入するようにパンチを制御して、金属板をパンチによって所定形状に打ち抜きつつシリンダに向けて押しつけることを繰り返すことにより、金属板から打ち抜かれた複数の打抜部材をダイ内において積層し、積層体を形成する処理と、打抜部材が金属板から打ち抜かれる過程においてパンチが下死点付近に到達したときの、パンチとシリンダとの離隔距離をセンサによって取得する処理と、センサによって取得された離隔距離に基づいて、ダイ内において積層されている複数の打抜部材の積厚を算出する処理とを実行するように構成されている。この場合、例1の方法と同様の作用効果が得られる。
【0112】
例9.例8の装置において、センサは、放熱機構を介してパンチ内又はシリンダ内に設けられていてもよい。この場合、センサの動作時にセンサにおいて生じた熱が、放熱機構を介して発散される。そのため、センサの温度変化に伴う温度ドリフトが低減される。したがって、プレス加工装置内において積層されていく途中の積層体の積厚をより高精度に取得することが可能となる。
【符号の説明】
【0113】
1…回転子積層鉄心、2…積層体、10…回転子積層鉄心の製造装置、100…プレス加工装置、142…シリンダ、151…放熱板(放熱機構)、200…積厚測定装置(測定装置)、Ctr…コントローラ(制御部)、D4…ダイ、MS…金属板、P4…パンチ、SE…センサ、W…打抜部材。
図1
図2
図3
図4
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図7
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図11