IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シャープ株式会社の特許一覧

特開2023-124550トナー、それを含む二成分現像剤およびそれを用いる画像形成装置
<>
  • 特開-トナー、それを含む二成分現像剤およびそれを用いる画像形成装置 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124550
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】トナー、それを含む二成分現像剤およびそれを用いる画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20230830BHJP
   G03G 9/113 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
G03G9/097 374
G03G9/097 375
G03G9/097 372
G03G9/097 371
G03G9/113
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028370
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【弁理士】
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】戸泉 潔
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA09
2H500AA10
2H500AA11
2H500AB03
2H500CA17
2H500CA36
2H500CB04
2H500CB12
2H500EA42D
2H500EA45D
2H500EA52D
2H500EA58D
2H500EA62D
(57)【要約】
【課題】トナー母粒子への埋まり込みを少なくしてトナーフィルミングの発生を抑制すると共に、高温高湿環境下におけるカブリを抑制し得るトナー、それを含む二成分現像剤およびそれを用いる画像形成装置を提供することを課題とする。
【解決手段】少なくともトナー母粒子と、該トナー母粒子の表面に外添された、シリカ粒子、シリカチタン酸ストロンチウム粒子および1.4μm以下の平均粒子径を有する円盤状の脂肪酸金属塩粒子とから構成されることを特徴とするトナーにより、上記の課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともトナー母粒子と、該トナー母粒子の表面に外添された、シリカ粒子、シリカチタン酸ストロンチウム粒子および1.4μm以下の平均粒子径を有する円盤状の脂肪酸金属塩粒子とから構成されることを特徴とするトナー。
【請求項2】
前記シリカ粒子が、7~16nmの平均一次粒子径を有する請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記シリカ粒子が、前記トナー母粒子の表面に対して94~117%の被覆率を有する請求項1または2に記載のトナー。
【請求項4】
前記シリカ粒子が、シリコーンオイルで表面処理されたシリカ粒子である請求項1~3のいずれか1つに記載のトナー。
【請求項5】
前記シリカチタン酸ストロンチウム粒子が、前記トナー母粒子に対して0.2~0.5質量%の割合で外添されてなる請求項1~4のいずれか1つに記載のトナー。
【請求項6】
前記脂肪酸金属塩粒子が、ステアリン酸亜鉛およびステアリン酸マグネシウムから選択される化合物の粒子である請求項1~5のいずれか1つに記載のトナー。
【請求項7】
前記脂肪酸金属塩粒子が、前記トナー母粒子に対して0.1~0.3質量%の割合で外添されてなる請求項1~6のいずれか1つに記載のトナー。
【請求項8】
濃度0.2質量%のポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル水溶液40mLに前記トナー2.0gを加えて1分間撹拌し、得られた水溶液に出力40μAの超音波を2分間照射し、その後3時間放置し、トナーと遊離した外添剤とを分離し、上澄み液を取り除いた後、沈殿物に純水を約50ml加えて5分間撹拌し、孔径1μmのメンブレンフィルタを用いて吸引ろ過し、メンブレンフィルタ上に残ったトナーを一晩、真空乾燥して外添剤除去処理後のトナーを得る外添付着強度試験に付したとき、
前記脂肪酸金属塩粒子が、外添付着強度試験によりトナー中の10質量%以下の割合でトナーに残留する付着強度を有する請求項1~7のいずれか1つに記載のトナー。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1つに記載のトナーとキャリアとを含むことを特徴とする二成分現像剤。
【請求項10】
電子写真感光体の表面に静電潜像を形成させ、該静電潜像に現像されたトナーを被転写材に転写して画像を形成する画像形成装置において、該トナーが請求項1~8のいずれか1つに記載のトナーであることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー、それを含む二成分現像剤およびそれを用いる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、OA機器の目覚しい発達に伴い、電子写真方式を利用したデジタル複写機、プリンタ、ファクシミリ装置などの画像形成装置(電子写真装置)が広く普及している。
そして、ローラ帯電による接触帯電方式の増加や画像形成装置のロングライフ化、小型化および高速化が進み、画像形成装置およびそれに用いられるトナーは、様々な機能が要求されている。
【0003】
例えば、特開2020-190724号公報(特許文献1)には、低温低湿環境(温度10℃、湿度15%RH)下での経時におけるかぶり画像の発生を防止し、優れた画像濃度を実現できるトナーを提供する技術として、数平均円相当径が5nm以上15nm以下であるSi含有粒子を表面に有するチタン酸ストロンチウム微粉体(微粒子)を外添剤として有するトナーが提案されている。そして、特許文献1には、トナー母体粒子(トナー母粒子)の構成成分の「クリーニング向上剤」として、0.01~1μmのステアリン酸亜鉛を使用してもよいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-190724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の先行技術において、ステアリン酸亜鉛は、トナーフィルミングの発生を抑制する効果があるが、トナー帯電量を著しく低下させるために、高温高湿環境(温度30℃、湿度80%RH)下でのカブリを発生させる(画質不良を引き起こす)という課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、トナー母粒子への埋まり込みを少なくしてトナーフィルミングの発生を抑制すると共に、高温高湿環境下におけるカブリを抑制し得るトナー、それを含む二成分現像剤およびそれを用いる画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、トナー母粒子(トナーコア)の外添剤に、シリカチタン酸ストロンチウム粒子と円盤状のステアリン酸亜鉛粒子とを併用することにより、トナー母粒子への埋まり込みを少なくしてトナーフィルミングの発生を抑制すると共に、トナー帯電量の上昇を抑制して画像濃度の低下を防止して、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして、本発明によれば、少なくともトナー母粒子と、該トナー母粒子の表面に外添された、シリカ粒子、シリカチタン酸ストロンチウム粒子および1.4μm以下の平均粒子径を有する円盤状の脂肪酸金属塩粒子とから構成されることを特徴とするトナーが提供される。
【0009】
また、本発明によれば、上記のトナーとキャリアとを含むことを特徴とする二成分現像剤が提供される。
【0010】
さらに、本発明によれば、電子写真感光体(以下「感光体」ともいう)の表面に静電潜像を形成させ、該静電潜像に現像されたトナーを被転写材に転写して画像を形成する画像形成装置において、該トナーが上記のトナーであることを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、トナー母粒子への埋まり込みを少なくしてトナーフィルミングの発生を抑制すると共に、高温高湿環境下におけるカブリを抑制し得るトナー、それを含む二成分現像剤およびそれを用いる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の画像形成装置の要部の構成を示す模式側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(1)トナー
本発明のトナーは、少なくともトナー母粒子と、該トナー母粒子の表面に外添された、シリカ粒子、シリカチタン酸ストロンチウム粒子および1.4μm以下の平均粒子径を有する円盤状の脂肪酸金属塩粒子とから構成されることを特徴とする。
以下、外添剤としてのシリカ粒子、シリカチタン酸ストロンチウム粒子および脂肪酸金属塩粒子について説明し、トナー母粒子およびトナーの製造方法について説明する。
【0014】
[シリカ粒子]
シリカ粒子は、トナー流動化剤として機能し、当該技術分野で常用される表面処理されたシリカ粒子を用いることができる。
表面処理されたシリカ粒子としては、ジメチルジクロロシラン(ジメチルシリル:DDS)、ヘキサメチルジシラザン(トリメチルシリル:HMDS)およびシリコーンオイル(ジメチルポリシロキサン)などにより表面処理されたシリカ粒子が挙げられ、DDSおよびシリコーンオイルで表面処理されたシリカ粒子が好ましく、高温高湿環境下におけるカブリの改善効果に優れることから、シリコーンオイルで表面処理されたシリカ粒子が特に好ましい。
【0015】
表面処理前のシリカ粒子(シリカ原体)は、乾式法(気相法)、湿式法、ゾルゲル法などの公知の方法により製造することができ、溶媒を用いない点で、気相法が好ましい。
気相法は、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化によりシリカ原体を生成する方法であり、例えば、四塩化ケイ素ガスの酸水素焔中における熱分解酸化反応(基礎反応:SiCl+2H+O→SiO+4HCl)により、乾式法(気相法)シリカまたはヒュームドシリカと称されるシリカ原体を製造する。
また、シリカ原体は、上記の製造工程において、塩化アルミニウム、塩化チタンなどの金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いて得られた、シリカと他の金属酸化物の複合体であってもよい。
【0016】
シリコーンオイルで表面処理されたシリカ粒子は、例えば、有機ケイ素化合物で処理されたシリカ原体とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサなどの混合機を用いて直接混合する方法、ノルマルヘキサンなどの適当な溶媒で希釈しシリコーンオイルをシリカ原体に噴霧し熱処理する方法、適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解または分散させた後、シリカ原体を加えて混合し、溶剤を除去する方法などにより製造することができる。
上記の噴霧後の熱処理は、ヘリウム、窒素、アルゴンなどの安全上不活性ガス雰囲気で行うことが好ましく、コスト面などを考慮して窒素ガスが好ましい。熱処理温度は、200~400℃が好ましい。
【0017】
上記のシリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルといったストレートシリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、片末端反応性変性シリコーンオイル、異種官能基変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、親水性特殊変性シリコーンオイル、高級アルコキシ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸含有変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルなどの変性シリコーンオイルが挙げられ、これらの1種を単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0018】
上記の有機ケイ素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサンなどが挙げられ、これらの1種を単独で、または2種類以上を混合して用いることができる。
シリコーンオイル処理されたシリカ粒子は、例えば、特許第6849352号公報に記載の方法により製造することができ、基材となるシリカ粒子の平均一次粒子径およびシリコーンオイルの使用量を変化させることにより、所望の微粒子を得ることができる。
また、コーンオイル処理されたシリカ粒子のBET法による比表面積は、特に限定されないが、30~400m/g程度である。
【0019】
シリカ粒子は、上記のような公知の方法により製造することができるが、上市されているシリカ粒子、例えば、実施例に用いられているような日本アエロジル株式会社製の製品名:RY300、RY200およびRY200S(以上、シリコーンオイル処理)ならびにR976S(DDS処理)などを用いることができる。
【0020】
<シリカ粒子の平均一次粒子径>
シリカ粒子は、7~16nmの平均一次粒子径を有することが好ましい。平均一次粒子径がこの範囲であれば、トナーの流動性およびトナー表面被覆率を均一確保することができる。
シリカ粒子の平均一次粒子径が7nm未満では、トナー母粒子への埋まり込みが発生し、強く付着し過ぎて、スペーサー効果が保てなくなることがある。一方、シリカ粒子の平均一次粒子径が12nmを超えると、トナー母粒子に対する付着性が弱くなり、被覆効果が得られなることがある。また、シリカ粒子の平均一次粒子径が16nmを超えると、外添剤の被覆率を確保するために外添量が多くなり、好ましくない。
より好ましいシリカ粒子の平均一次粒子径は7~12nmである。
シリカ粒子の平均一次粒子径の測定方法については実施例に記載する。
【0021】
<シリカ粒子の被覆率>
シリカ粒子は、トナー母粒子に対して94~117%の被覆率を有することが好ましい。被覆率がこの範囲であれば、トナー帯電量の環境変動の抑制と定着性とを両立させることができる。
シリカ粒子の被覆率が90%未満では、キャリアを含む二成分現像剤にトナーを用いる場合、キャリアスペントし易くなることがある。一方、シリカ粒子の被覆率が117%を超えると、低温定着性が悪化することがある。
より好ましいシリカ粒子の被覆率は90~117%であり、さらに好ましくは90~105%である。
シリカ粒子の被覆率の測定方法については実施例に記載する。
【0022】
[シリカチタン酸ストロンチウム粒子]
シリカチタン酸ストロンチウム粒子は、シリカ粒子を表面に有する(シリカ粒子で修飾された)チタン酸ストロンチウム粒子であり、チタン酸ストロンチウムにシリカを添加したコアの表面をシラン化合物で疎水化処理した微粉体である。
【0023】
シリカチタン酸ストロンチウム粒子のチタン酸ストロンチウムSrTiOは、ペロブスカイト型チタン酸化合物であり、Srの一部がLa、Mg、Ca,SnおよびSiから選択される第3の金属成分Mで置換されたものであってもよい。
また、シリカチタン酸ストロンチウム粒子は、粒子状であることが好ましいが、球状、針状、非球形状などであってもよく、その構造は、単一粒子の構造、複数粒子が数個凝集した構造のいずれであってもよい。
【0024】
シリカチタン酸ストロンチウム粒子におけるシリカ粒子による修飾の程度は、微粉体中のシリカの含有割合、具体的にはTiに対するSiのモル比(Si/Ti)として表すことができ、特に限定されないが、0.03~10.0程度である。このモル比は、SEM-EDSのX線分析を用いて、炭素ピーク強度を基準としたTiのピーク強度に対するSiのピーク強度の比率から測定することができる。
より好ましいモル比(Si/Ti)は、0.03~1.0である。
モル比Si/Tiが0.03未満では、かぶり値が大きくなるおそれがある。一方、モル比Si/Tiが1.0を超えると、負帯電性が強くなり、低湿環境下での帯電上昇によりトナーとキャリアとの付着力が増加し、後から補給されたトナーが混ざり難くなり、十分帯電されずに現像されてしまい、その結果、トナー飛散が増加し、かぶり値が大きくなることがある。さらに好ましいモル比Si/Tiは、0.04~0.06である。
【0025】
シリカチタン酸ストロンチウム粒子は、30~100nmの平均一次粒子径を有することが好ましい。
シリカチタン酸ストロンチウム粒子の平均一次粒子径が30nm未満では、トナー母粒子への付着性が高くなり、フィルミングが発生し易くなることがある。一方、チタン酸ストロンチウム粒子の平均一次粒子径が100nmを超えると、ドラム表面を削ることによる擦傷性の凹型キズが発生し、それによりクリーニング性が悪化して、フィルミングが発生し易くなることがある。
好ましいシリカチタン酸ストロンチウム粒子の平均一次粒子径は30~70nmであり、より好ましくは30~50nmである。
シリカチタン酸ストロンチウム粒子の平均一次粒子径の測定方法については実施例に記載する。
【0026】
シリカチタン酸ストロンチウム粒子は、常温湿式法などの公知の方法により製造することができ、例えば、次の(1)~(5)に示す手順で製造することができる。
(1)硫酸法で得られたメタチタン酸を脱鉄漂白処理した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH9.0とし、脱硫処理し、その後、塩酸でpH5.8まで中和し、ろ過水洗を経て洗浄済みケーキを得る。
(2)得られたケーキに水を加えてスラリーとした後、塩酸を加えてpH1.4とし、解膠処理する。得られたメタチタン酸の溶液(溶液1)と、塩化ストロンチウム水溶液(溶液2)と、ケイ酸ナトリウム水溶液(溶液3)とを、(Sr+Si)/Tiのモル比が1.18~2.10の範囲内になる割合で混合する。
(3)得られた混合溶液を窒素ガス雰囲気下で90℃に加熱し、10N水酸化ナトリウム水溶液を添加しながら2時間撹拌し、その後、温度95℃で1時間撹拌して反応させる。
(4)反応を終えた混合溶液(スラリー)を50℃に冷却し、pH5.0になるまで塩酸を加えて1時間撹拌して生じた沈殿物を洗浄、ろ過により固液分離する。
(5)得られた固形物にシラン化合物による疎水化処理をし、その後、ろ過により固液分離し、得られた固形物を温度120℃、大気中で10時間乾燥させて、チタン酸ストロンチウム粒子を得る。
シラン化合物(シランカップリング剤)としては、ジメチルジクロロシラン(ジメチルシリル:DDS)、ヘキサメチルジシラザン(トリメチルシリル:HMDS)、オクチルシランおよびシリコーンオイル(ジメチルポリシロキサン)などが挙げられる。
【0027】
<チタン酸ストロンチウム粒子の外添割合>
チタン酸ストロンチウム粒子は、トナー母粒子に対して0.2~0.5質量%の割合で外添されてなることが好ましい。外添割合がこの範囲であれば、本発明の優れたカブリ改善効果を得ることができる。
チタン酸ストロンチウム粒子の割合が0.2質量%未満では、トナー帯電量の上昇を抑制できないことがある。一方、チタン酸ストロンチウム粒子の割合が0.5質量%を超えると、トナー帯電量の著しい低下が発生するばかりか、感光体表面を削ることによる擦傷性のキズが発生によることがある。
より好ましいチタン酸ストロンチウム粒子の割合は、0.2~0.4質量%である。
【0028】
[脂肪族金属塩粒子]
脂肪酸金属塩は、ドラムとクリーニングブレードのニップ部に存在させることが重要であるため、比較的弱く付着させ、脂肪酸金属塩の含有量を制御することで感光層表面とクリーニングブレードの間に脂肪酸金属塩が適正量供給される必要がある。
脂肪族金属塩粒子の脂肪族金属塩としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウムなどが挙げられ、これらの中でも、耐フィルミング対策の点で、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムが好ましく、ステアリン酸亜鉛が特に好ましい。
【0029】
<脂肪酸金属塩粒子の形状と平均粒子径>
脂肪酸金属塩粒子は、1.4μm以下の平均粒子径を有する円盤状の粒子である。
従来の棒状の脂肪酸金属塩では、トナー母粒子への埋まり込みが発生して、フィルミング防止や帯電量上昇の抑制という脂肪酸金属塩本来の効果が得られ難いものと考えられる。
一方、本発明の円盤状の脂肪酸金属塩では、トナー母粒子への埋まり込みが少なく、フィルミングを防止すると共に、帯電量の上昇を抑制して、画像濃度の低下を防止できるものと考えられる。
【0030】
脂肪酸金属塩粒子の平均粒子径が1.4μmを超えると、トナー母粒子への付着が悪く、トナー母粒子から離脱して、二成分現像剤のキャリア表面に移行し、トナー帯電量が低下して、カブリが生じることがある。脂肪酸金属塩粒子の平均粒子径が小さ過ぎると、トナー母粒子から脂肪酸金属塩粒子が離脱しないために感光体クリーニングに必要な機能が発揮することができないことがあり、また感光体表面とクリーニングブレードの接点に脂肪酸金属塩粒子が存在しないと滑性性能が発揮できないことがあり、その下限は、0.7μm程度である。
脂肪酸金属塩粒子の平均粒子径の測定方法については実施例に記載する。
【0031】
本発明において「円盤状」とは、脂肪酸金属塩粒子がその平均粒子径1に対して0.03~0.07程度の厚さを有することを意味する。したがって、本発明において用いられる脂肪酸金属塩粒子の厚さは、0.05~0.1μm程度であることが好ましい。
【0032】
脂肪酸金属塩粒子としては、上市されている粒子、例えば、実施例に用いられているような日信化学工業株式会社製の製品名:ステアリン酸亜鉛成型体、日油株式会社製の製品名:MZ-2を用いることができる。
【0033】
<脂肪酸金属塩粒子の外添割合>
脂肪酸金属塩粒子は、トナー母粒子に対して0.1~0.3質量%の割合で外添されてなることが好ましい。
脂肪酸金属塩粒子の外添割合が0.1質量%未満では、画像形成部に十分な量の脂肪酸金属塩粒子を供給することができず、耐ストレスクラックへの効果が得られないことがある。一方、脂肪酸金属塩粒子の外添割合が0.3質量部を超えると、現像槽中での脂肪酸金属塩粒子の遊離量が多くなり、トナー帯電量の低下によりトナーが現像剤に混ざり込み難くなるため、現像性が悪化し、ガサツキなどの画像不良が発生し易くなる。
より好ましい脂肪酸金属塩粒子の外添割合は、0.1~0.2質量%である。
【0034】
<脂肪酸金属塩粒子の付着強度>
脂肪酸金属塩粒子は、濃度0.2質量%のポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル水溶液40mlにトナー2.0gを加えて1分間撹拌し、得られた水溶液に出力40μAの超音波を2分間照射し、その後3時間放置し、トナーと遊離した外添剤とを分離し、上澄み液を取り除いた後、沈殿物に純水を約50ml加えて5分間撹拌し、孔径1μmのメンブレンフィルタを用いて吸引ろ過し、メンブレンフィルタ上に残ったトナーを一晩、真空乾燥して外添剤除去処理後トナーを得る外添付着強度試験に付したとき、トナー中の10質量%以下の割合でトナーに残留する付着強度を有することが好ましい。
外添付着強度試験については、実施例において説明する。
【0035】
脂肪酸金属塩粒子がトナーに残留する割合が10質量%を超えると、感光体フィルミングが発生し易くなることがある。より好ましい脂肪酸金属塩粒子がトナーに残留する割合は、7質量%以下である。また、脂肪酸金属塩粒子がトナーに残留する割合が少な過ぎると、脂肪酸金属塩粒子の外添効果が得られないことがあることから、その下限は5質量%程度である。
【0036】
[他の外添剤]
本発明のトナー母粒子は、本発明の効果を阻害しない範囲で、トナーの搬送性および帯電性、クリーニング性などを向上させる外添剤が外添されていてもよい。そのような外添剤としては、例えば、酸化チタン粒子、アルミナ粒子、マグネタイトなどの無機微粒子が挙げられる。
【0037】
[トナー母粒子]
トナー母粒子は、少なくとも結着樹脂、着色剤および離型剤を含み、その他必要に応じて、帯電制御剤などを含む。
【0038】
<結着樹脂>
結着樹脂としては、当該技術分野で常用される樹脂を用いることができ、例えば、ポリエステル系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂のようなポリスチレン系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂およびエポキシ系樹脂が挙げられ、これらの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ポリスチレン系樹脂およびポリエステル系樹脂を好適に用いることができ、ポリエステル系樹脂が特に好ましい。
【0039】
ポリスチレン系樹脂としては、スチレン-アクリル系樹脂(スチレンアクリル共重合樹脂)が好ましく、樹脂原料として使用できるスチレンモノマーとしては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレンなどのスチレン誘導体が挙げられ、アクリルモノマーとしては、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2-クロルエチル、アクリル酸フェニル、メタアクリル酸、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸プロピル、メタアクリル酸n-ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸n-オクチル、メタアクリル酸2-エチルヘキシル、メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸ジメチルアミノエステルなどのアクリル酸誘導体およびメタクリル酸誘導体が挙げられる。
さらに、樹脂原料として、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸モノフエニルエステル、マレイン酸モノアリルエステル、ジビニルベンゼンなどのビニル系モノマーを使用してもよい。
【0040】
ポリエステル系樹脂は、通常、2価のアルコール成分および3価以上の多価アルコール成分から選ばれる1種以上と、2価のカルボン酸および3価以上の多価カルボン酸から選ばれる1種以上とを、公知の方法により縮重合反応もしくはエステル化、エステル交換反応させることにより得られる。
縮重合反応における条件は、モノマー成分の反応性により適宜設定すればよく、また重合体が好適な物性になった時点で反応を終了させればよい。例えば、反応温度は170~250℃程度、反応圧力は5mmHg~常圧程度である。
【0041】
2価のアルコール成分としては、例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)-ポリオキシエチレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンなどのビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのジオール類;ビスフェノールA;ビスフェノールAのプロピレン付加物;ビスフェノールAのエチレン付加物;水素添加ビスフェノールAなどが挙げられる。
【0042】
3価以上の多価アルコール成分としては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、スクロース(蔗糖)、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼンなどが挙げられる。
本発明のトナーにおいては、上記の2価のアルコール成分および3価以上の多価アルコール成分の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
2価のカルボン酸として、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、n-ドデセニルコハク酸、n-ドデシルコハク酸、n-オクチルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、イソオクチルコハク酸およびこれらの酸無水物もしくは低級アルキルエステルなどが挙げられる。
【0044】
3価以上の多価カルボン酸としては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパン、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸およびこれらの酸無水物もしくは低級アルキルエステルなどが挙げられる。
本発明のトナーにおいては、上記の2価のカルボン酸および3価以上の多価カルボン酸の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
ポリエステル系樹脂は、3,000~50,000の範囲の質量平均分子量を有するのが好ましい。重量平均分子量が3,000未満では、定着可能領域(非オフセット域)の高温側における剥離性が悪くなることがある。一方、重量平均分子量が50,000を超えると、低温定着性が悪くなることがある。
また、ポリエステル系樹脂は、5~30mgKOH/gの酸価を有するのが好ましい。酸価が5mgKOH/g未満では、ポリエステル系樹脂の帯電特性が低下し、また帯電制御剤がポリエステル系樹脂中に分散し難くなり、帯電立ち上がり性や連続使用時の帯電安定性に悪影響を及ぼすことがある。一方、酸価が30mgKOH/gを超えると、吸湿性が高くなり帯電性が不安定になることがある
【0046】
<着色剤>
着色剤としては、当該技術分野で常用される有機系および無機系の様々な種類および色の顔料および染料を用いることができ、例えば、黒色、白色、黄色、橙色、赤色、紫色、青色および緑色の着色剤が挙げられる。
【0047】
黒色の着色剤としては、例えば、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、非磁性フェライト、磁性フェライトおよびマグネタイトなどが挙げられる。
カーボンブラックは、その製造法などにより、チャンネルブラック、ローラーブラック、ディスクブラック、ガスファーネスブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック及びアセチレンブラックなどに分類され、これらの中から、得ようとするトナーの設計特性に応じて、適切なカーボンブラックを適宜選択することができる。
白色の着色剤としては、例えば、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛などが挙げられる。
【0048】
黄色の着色剤としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138などが挙げられる。
【0049】
橙色の着色剤としては、例えば、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43などが挙げられる。
【0050】
赤色の着色剤としては、例えば、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222などが挙げられる。
【0051】
紫色の着色剤としては、例えば、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキなどが挙げられる。
【0052】
青色の着色剤としては、例えば、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60などが挙げられる。
緑色の着色剤としては、例えば、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マイカライトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG、C.I.ピグメントグリーン7などが挙げられる。
【0053】
本発明においては、上記の着色剤の1種を単独でまたは2種を組み合わせて用いることができ、それらの組み合わせは異色であっても同色であってもよい。
また、2種以上の着色剤を複合粒子化して用いてもよい。
複合粒子は、例えば、2種以上の着色剤に適量の水、低級アルコールなどを添加し、ハイスピードミルなどの一般的な造粒機で造粒し、乾燥させることによって製造できる。
さらに、結着樹脂中に着色剤を均一に分散させるために、マスターバッチ化して用いてもよい。
複合粒子およびマスターバッチは、乾式混合の際にトナー組成物に混入される。
【0054】
トナー母粒子中の着色剤の配合量は、特に限定されないが、結着樹脂100質量部に対して1~10質量部であるのが好ましく、3~5質量部であるのが特に好ましい。
着色剤の配合量が上記の範囲内であれば、トナーの各種物性を損なうことなしに、トナー母粒子への埋まり込みを少なくしてトナーフィルミングの発生を抑制すると共に、高温高湿環境下におけるカブリを抑制し得るトナーを提供することができる。
【0055】
<離型剤>
離型剤としては、当該技術分野で常用される離型剤を用いることができ、例えば、パラフィンワックスおよびマイクロクリスタリンワックスならびにそれらの誘導体などの石油系ワックス;フィッシャートロプシュワックス、ポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなど)、低分子量ポリプロピリンワックスおよびポリオレフィン系重合体ワックス(低分子量ポリエチレンワックスなど)ならびにそれらの誘導体などの炭化水素系合成ワックス;カルナバワックス、ライスワックスおよびキャンデリラワックスならびにそれらの誘導体、木蝋などの植物系ワックス;蜜蝋、鯨蝋などの動物系ワックス;脂肪酸アミドおよびフェノール脂肪酸エステルなどの油脂系合成ワックス;長鎖カルボン酸およびその誘導体;長鎖アルコールおよびその誘導体;シリコーン系重合体;高級脂肪酸などが挙げられる。
上記の誘導体には、酸化物、ビニル系モノマーとワックスとのブロック共重合物、ビニル系モノマーとワックスとのグラフト変性物などが含まれる。
本発明においては、上記の離型剤の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
トナー母粒子中の離型剤の配合量は、特に限定されないが、樹脂100質量部に対して0.5~10質量部であるのが好ましく、1.0~8.0質量部であるのが特に好ましい。
結着樹脂の配合量が上記の範囲内であれば、トナーの各種物性を損なうことなしに、トナー母粒子への埋まり込みを少なくしてトナーフィルミングの発生を抑制すると共に、高温高湿環境下におけるカブリを抑制し得るトナーを提供することができる。
【0057】
<帯電制御剤(荷電制御剤)>
本発明のトナー母粒子には、必要に応じて帯電制御剤が配合されてもよい。帯電制御剤としては、当該技術分野で常用される正電荷制御用および負電荷制御用の帯電制御剤が挙げられる。
正電荷制御用の電荷制御剤としては、例えば、ニグロシン染料及びその誘導体、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、アミジン塩などが挙げられる。
負電荷制御用の電荷制御剤としては、例えば、オイルブラック、スピロンブラックなどの油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸およびその誘導体の金属錯体および金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウムなど)、ホウ素化合物、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、樹脂酸石鹸が挙げられる。
【0058】
トナー母粒子中の電荷制御剤の配合量は、特に限定されないが、樹脂100質量部に対して0.1~3質量%であるのが好ましく、0.2~2質量部であるのが特に好ましい。
着色剤の配合量が上記の範囲内であれば、トナーの各種物性を損なうことなしに、トナー母粒子への埋まり込みを少なくしてトナーフィルミングの発生を抑制すると共に、高温高湿環境下におけるカブリを抑制し得るトナーを提供することができる。
【0059】
[トナーのガラス転移温度Tg]
本発明のトナーは、60℃以下のガラス転移温度Tgを有することが好ましい。
トナーのガラス転移温度Tgは、トナーの構成成分の種類や配合割合により調整することができ、そのガラス転移温度Tgが60℃を超えると、低温定着性と耐熱保存性の両立が難しくなることがあり、その下限は50℃程度である。
【0060】
<トナー母粒子の体積平均粒子径>
トナー母粒子の体積平均粒子径は、特に限定されず、目的に応じて適宜設定することができるが、トナー母粒子は、5~8μmの体積平均粒子径を有することが好ましい。
トナー母粒子の体積平均粒子径が上記の範囲内であれば、トナー母粒子への埋まり込みを少なくしてトナーフィルミングの発生を抑制すると共に、高温高湿環境下におけるカブリを抑制し得るトナーを提供することができる。
また、トナー母粒子の粒径(粒度)分布は、特に限定されず、目的に応じて適宜設定することができるが、トナー母粒子は、3μm以下の粒子が40個数%以下の粒径分布を有することが好ましい。
さらに、トナー母粒子の円形度は、特に限定されず、目的に応じて適宜設定することができるが、トナー母粒子は、0.92以上0.97以下の円形度を有することが好ましい。
【0061】
[トナーの製造方法]
本発明のトナーは、当該技術分野で常用される公知の装置を用いて、公知の方法により製造することができる。
その製造方法としては、例えば、結着樹脂、着色剤および離型剤、必要に応じて帯電制御剤を含む混合物を溶融混錬して溶融混錬物を得る混錬工程S1、得られた溶融混錬物を冷却固化し粗粉砕して粗粉砕物を得、得られた粗粉砕物を微粉砕して微粉砕物を得る粉砕工程S2,得られた微粉砕物を分級してトナー母粒子を得る分級工程S3、得られたトナー母粒子に外添剤を外添してトナーを得る外添工程S4を含む製造方法が挙げられる。
湿式法と比較して工程数が少なく、設備コストが掛からないなどの点で乾式法が好ましく、中でも粉砕法が特に好ましい。
各工程における条件は、対象とする材料および所望の物性により適宜設定すればよい。
【0062】
<混錬工程(溶融混錬)S1>
混練工程S1では、トナー原料を混合機で混合した後、混練機で混練して溶融混練物を得る。混練は、結着樹脂の軟化点以上、熱分解温度未満の温度に加熱して行われる。これにより、結着樹脂が溶融または軟化され、結着樹脂中に着色剤、離型剤および帯電制御剤などを分散させることができる。混練時の具体的な加熱温度は、例えば80~200℃であることが好ましく、100~150℃以下であることがより好ましい。
【0063】
混合には、当該技術分野で常用される公知の装置、例えば、ヘンシェルミキサ(商品名、三井鉱山株式会社(現 日本コークス工業株式会社)製)、スーパーミキサ(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)などのヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)などの混合装置を使用できる。
【0064】
溶融混練には、当該技術分野で常用される公知の装置、例えば、二軸押出機、三本ロール、ラボブラストミルなどの一般的な混練機を使用できる。このような混練機としては、例えば、TEM-100B(商品名、東芝機械株式会社製)、PCM-65/87、PCM-30(以上いずれも商品名、株式会社池貝製)などの1軸または2軸のエクストルーダ、ニーデックス(商品名、三井鉱山株式会社製)などのオープンロール方式の混練機を使用できる。また、複数の混練機を用いて混練工程を行っても構わない。
【0065】
<粉砕工程(冷却粉砕)S2>
粉砕工程S2では、混練工程S1で得られた溶融混練物を冷却固化し、その固化物を粗粉砕して粗粉砕物を得、得られた粗粉砕物を微粉砕して微粉砕物を得る。
冷却には、当該技術分野で常用される公知の装置、例えば、冷却ベルトを使用できる。
粗粉砕には、当該技術分野で常用される公知の装置、例えば、スクリーンを有するスピードミル、ハンマーミル、カッターミルを使用できる。
微粉砕には、当該技術分野で常用される公知の装置、例えば、超音速ジェット気流を利用して粉砕するジェット式粉砕機、高速で回転する回転子(ロータ)と固定子(ライナ)との間に形成される空間に固化物を導入して粉砕する衝撃式粉砕機を使用できる。
なお、以下の分級工程S3を行わず、粉砕工程S2で得られた所望の体積平均粒子径を有する微粉砕粒子群をトナー母粒子として回収してもよい。
【0066】
<分級工程S3>
分級工程S3では、粉砕工程S2で得られた微粉砕物を分級機を用いて分級して所望の体積平均粒子径を有するトナー母粒子を得る。
分級には、当該技術分野で常用される公知の装置、例えば、旋回式風力分級機(ロータリー式風力分級機)のような遠心力および風力により過粉砕トナー粒子を除去できる分級機を使用できる。
【0067】
<外添工程S4>
外添工程S4では、分級工程S3で得られたトナー母粒子と外添剤とを混合機を用いて混合してトナー母粒子表面に外添剤を付着させてトナー(外添トナー)を得る。
混合には、当該技術分野で常用される公知の装置、例えば、混練工程S1に記載の混合装置を使用できる。
混合では、トナー母粒子と本発明の必須成分の3種の外添剤、シリカ粒子、チタン酸ストロンチウム粒子および脂肪酸金属塩粒子を同時に混合してもよく、2種の外添剤と1種の外添剤とに分けて連続してトナー母粒子と混合してもよく、3種の外添剤毎に連続してトナー母粒子と混合してもよい。このように複数の外添剤の添加順序、処理時間(撹拌時間)などの条件は、対象とする材料および所望の物性により適宜設定すればよい。
【0068】
本発明のトナーの製造では、第1外添工程としてシリカ粒子を外添し、第2外添工程としてシリカチタン酸ストロンチウム粒子および脂肪酸金属塩粒子を同時に外添することが好ましい。これにより、シリカ粒子によって感光体にキズなどのダメージが発生することを抑制し、画像不良の発生を抑制することができる。
【0069】
(2)二成分現像剤
本発明の二成分現像剤は、本発明のトナーとキャリアとを含むことを特徴とする。
[キャリア]
キャリアとしては、当該技術分野で常用されるキャリアを用いることができ、例えば、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、マンガン、クロムなどからなる単独または複合フェライト粒子およびキャリア芯粒子の表面を公知の被覆物質で被覆した樹脂被覆キャリア、または樹脂に磁性を有する粒子を分散させた樹脂分散型キャリアなどが挙げられる。
【0070】
被覆物質としては、当該技術分野で常用される物質を用いることができ、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン、シリコーン樹脂、ポリエステル系樹脂、ジターシャーリーブチルサリチル酸の金属化合物、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ニグロシン、アミノアクリレート樹脂、塩基性染料、塩基性染料のレーキ物、シリカ微粉末、アルミナ微粉末などが挙げられる。
また、樹脂分散型キャリアに用いられる樹脂は特に限定されないが、例えば、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂およびフェノール樹脂などが挙げられる。
上記の被覆物質および樹脂分散型キャリアに用いられる樹脂は、それぞれ1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができ、トナー成分に応じて選択するのが好ましい。
【0071】
キャリアの形状は特に限定されないが、球形および扁平形状が好ましい。
また、キャリアの平均粒径は特に限定されないが、高画質化を考慮すると、好ましくは30~80μmであり、さらに好ましくは40~60μmである。
【0072】
キャリアの体積抵抗率は、キャリア粒子を断面積0.50cmの容器に入れてタッピングした後、容器内に詰められた粒子に1kg/cmの荷重を掛け、荷重と底面電極との間に1000V/cmの電界が生ずる電圧を印加したときの電流値から得られる値である。体積抵抗率が低いと、現像スリーブにバイアス電圧を印加した場合にキャリアが帯電し、感光体にキャリア粒子が付着し易くなる。またバイアス電圧のブレークダウンが起こり易くなる。好ましいキャリアの体積抵抗率は、1.0×10~1.0×1013(Ω・cm)である。
【0073】
キャリアの磁化強さ(最大磁化)は、好ましくは10~60emu/g、より好ましくは15~40emu/gである。一般的な現像ローラの磁束密度条件下では、10emu/g未満であると磁気的な束縛力が働かず、キャリア飛散の原因となるおそれがある。また、磁化強さが60emu/gを超えると、非接触現像ではキャリアの穂立ちが高くなり過ぎ、像担持体とトナーの非接触状態を保つことが困難になり、接触現像ではトナー像に掃き目が現れ易くなるおそれがある。
【0074】
二成分現像剤におけるトナーとキャリアとの配合割合は特に限定されず、トナーおよびキャリアの種類に応じて適宜選択できる。例えば、樹脂被覆キャリア(密度5~8g/cm)と混合する場合、トナーが全現像剤量の2~30質量%、好ましくは2~20質量%含まれるようにすればよい。また、トナーによるキャリアの被覆率は、40~80質量%であることが好ましい。
【0075】
(3)画像形成装置
本発明の画像形成装置は、感光体の表面に静電潜像を形成させ、該静電潜像に現像されたトナーを被転写材に転写して画像を形成する画像形成装置において、該トナーが本発明のトナーであることを特徴とする。
本発明のトナーは、トナーの各種物性を損なうことなしに、トナー母粒子への埋まり込みを少なくしてトナーフィルミングの発生を抑制すると共に、高温高湿環境下におけるカブリを抑制し得るトナーを提供することができる。
このような効果は、表面層にシリカを含むシリカ添加感光体において顕著に得られることから、感光体は、その表面層にシリカを含むシリカ添加感光体であることが好ましい。
【0076】
本発明の画像形成装置は、上記の構成要件を備えたものであれば特に限定されないが、例えば、感光体と、感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、露光によって形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、現像によって形成されたトナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、転写されたトナー像を記録媒体上に定着して画像を形成する定着手段と、感光体に残留するトナーを除去し回収するクリーニング手段と、感光体に残留する表面電荷を除電する除電手段を少なくとも備えた画像形成装置が挙げられる。
以下、図面に基づいて、画像形成装置の一例およびその動作について説明するが、本発明は、これらにより限定されるものではない。
【0077】
図1は、本発明の画像形成装置100の要部の構成を示す模式側面図である。
図1の画像形成装置(レーザプリンタ)100は、感光体1と、露光手段(半導体レーザ)31と、帯電手段(帯電器)32と、現像手段(現像器)33と、転写手段(転写帯電器)34と、搬送ベルト(図示せず)と、定着手段(定着器)35と、クリーニング手段(クリーナ)36とを含んで構成される。符号51は記録媒体(記録紙または転写紙)を示す。
【0078】
感光体1は、当該技術分野において画像形成装置の感光体として用いられるものであれば特に限定されず、例えば、基体上に、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とがこの順で積層された積層型感光層、または電荷発生物質および電荷輸送物質を含有する単層型感光層を少なくとも備えた感光体が挙げられる。
【0079】
感光体1は、画像形成装置100本体に回転自在に支持され、図示しない駆動手段によって回転軸線44回りに矢符41方向に回転駆動される。駆動手段は、例えば電動機と減速歯車とを含んで構成され、その駆動力を感光体1の芯体を構成する導電性支持体に伝えることによって、感光体1を所定の周速度で回転駆動させる。帯電手段(帯電器)32、露光手段31、現像手段(現像器)33、転写手段(転写帯電器)34およびクリーニング手段(クリーナ)36は、この順序で、感光体1の外周面に沿って、矢符41で示される感光体1の回転方向上流側から下流側に向って設けられる。
【0080】
帯電器32は、感光体1の外周面を均一に所定の電位に帯電させる帯電手段である。
帯電手段としては、例えば、帯電チャージャーによるコロナ帯電方式のような非接触帯電方式、および例えば、帯電ローラもしくは帯電ブラシによる接触帯電方式が挙げられる。
露光手段31は、半導体レーザを光源として備え、光源から出力されるレーザビーム光を、帯電器32と現像器33との間の感光体1の表面に照射することによって、帯電された感光体1の外周面に対して画像情報に応じた露光を施す。光は、主走査方向である感光体1の回転軸線44の延びる方向に繰返し走査され、これらが結像して感光体1の表面に静電潜像が順次形成される。すなわち、帯電器32により均一に帯電された感光体1の帯電量がレーザビームの照射および非照射によって差異が生じて静電潜像が形成される。
【0081】
現像器33は、露光によって感光体1の表面に形成される静電潜像を、現像剤(トナー)によって現像する現像手段であり、感光体1を臨んで設けられ、感光体1の外周面にトナーを供給する現像ローラ33aと、現像ローラ33aを感光体1の回転軸線44と平行な回転軸線まわりに回転可能に支持すると共にその内部空間にトナーを含む現像剤を収容するケーシング33bとを備える。
【0082】
転写帯電器34は、現像によって感光体1の外周面に形成される可視像であるトナー像を、図示しない搬送手段によって矢符42方向から感光体1と転写帯電器34との間に供給される記録媒体である転写紙51上に転写させる転写手段である。転写帯電器34は、例えば、帯電手段を備え、転写紙51にトナーと逆極性の電荷を与えることによってトナー像を転写紙51上に転写させる接触式の転写手段である。
【0083】
クリーナ36は、転写帯電器34による転写動作後に感光体1の外周面に残留するトナーを除去し回収する清掃手段であり、感光体1の外周面に残留するトナーを剥離させるクリーニングブレード36aと、クリーニングブレード36aによって剥離されたトナーを収容する回収用ケーシング36bとを備える。また、このクリーナ36は、図示しない除電ランプと共に設けられる。
【0084】
また、画像形成装置100には、感光体1と転写帯電器34との間を通過した転写紙51が搬送される下流側に、転写された画像を定着させる定着手段である定着器35が設けられる。定着器35は、図示しない加熱手段を有する加熱ローラ35aと、加熱ローラ35aに対向して設けられ、加熱ローラ35aに押圧されて当接部を形成する加圧ローラ35bとを備える。
符号37は、転写紙と感光体を分離する分離手段、符号38は、画像形成装置の前記の各手段を収容するハウジングを示す。
【0085】
この画像形成装置100による画像形成動作は、次のようにして行われる。
まず、感光体1が駆動手段によって矢符41方向に回転駆動されると、露光手段31による光の結像点よりも感光体1の回転方向上流側に設けられる帯電器32によって、感光体1の表面が正の所定電位に均一に帯電される。
【0086】
次いで、露光手段32から、感光体1の表面に対して画像情報に応じた光が照射される。感光体1は、この露光によって、光が照射された部分の表面電荷が除去され、光が照射された部分の表面電位と光が照射されなかった部分の表面電位とに差異が生じ、静電潜像が形成される。
露光手段33による光の結像点よりも感光体1の回転方向下流側に設けられる現像器33から、静電潜像の形成された感光体1の表面にトナーが供給されて静電潜像が現像され、トナー像が形成される。
【0087】
感光体1に対する露光と同期して、感光体1と転写帯電器34との間に、転写紙51が供給される。転写帯電器34によって、供給された転写紙51にトナーと逆極性の電荷が与えられ、感光体1の表面に形成されたトナー像が、転写紙51上に転写される。
トナー像の転写された転写紙51は、搬送手段によって定着器35に搬送され、定着器35の加熱ローラ35aと加圧ローラ35bとの当接部を通過する際に加熱および加圧され、トナー像が転写紙51に定着されて堅牢な画像となる。このようにして画像が形成された転写紙51は、搬送手段によって画像形成装置100の外部へ排紙される。
【0088】
一方、転写帯電器34によるトナー像の転写後も感光体1の表面上に残留するトナーは、クリーナ36によって感光体1の表面から剥離されて回収される。このようにしてトナーが除去された感光体1の表面の電荷は、除電ランプからの光によって除去され、感光体1の表面上の静電潜像が消失する。その後、感光体1はさらに回転駆動され、再度帯電から始まる一連の動作が繰返されて連続的に画像が形成される。
【0089】
上記の画像形成装置100は、モノクロの画像形成装置(プリンタ)であるが、例えば、カラー画像を形成できる中間転写方式のカラー画像形成装置であってもよい。具体的には、トナー像がそれぞれ形成される複数の感光体を所定方向(例えば水平方向Hまたは略水平方向H)に並設した構成、所謂タンデム式のフルカラー画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置100は、他のカラー画像形成装置、複写機、複合機またはファクシミリ装置であってもよい。
【実施例0090】
以下に、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
構成成分の外添剤および得られたトナーの物性を下記の方法により測定した。
【0091】
[脂肪酸金属塩粒子の付着強度]
下記の手順でトナーを外添付着強度試験に付して外添剤除去処理後のトナーを得る。
(1) 濃度0.2質量%のポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル水溶液(ローム&ハース社(現:ダウケミカル社)、製品名:トリトン(登録商標))40mlにトナー2.0gを加えて1分間撹拌する。
(2) 超音波式ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製、型式:US-300T)を用いて、得られた水溶液に出力40μAの超音波を2分間照射する。
(3) その後3時間放置し、トナーと遊離した外添剤とを分離する。
(4) 上澄み液を取り除いた後、沈殿物に純水を約50ml加えて5分間撹拌する。
(5) 孔径1μmのメンブレンフィルタ(アドバンテック社製)を用いて吸引ろ過する。
(6) メンブレンフィルタ上に残ったトナーを一晩、真空乾燥して外添剤除去処理後トナーを得る。
【0092】
得られた外添剤除去処理後のトナーおよび外添剤除去処理前トナーについて、蛍光X線分析装置(株式会社リガク製、型式:ZSX Primus II)を用いて、トナー1gの外添剤中の元素(Zn、Mg)の強度を分析し、これらの強度の差から、外添付着強度試験により脂肪酸金属塩からなる外添剤がトナーから脱離した、トナー中の質量割合を求める。
【0093】
[脂肪酸金属塩粒子の平均粒子径]
動的光散乱法粒度分布測定装置(日機装株式会社製、型式:ナノトラックNanotrac waveシリーズ)を用いて、脂肪酸金属塩粒子の平均一次粒子径を2回測定し、その平均値を脂肪酸金属塩粒子の平均一次粒子径(μm)とする。
測定条件としては、測定時間を30秒とし、試料粒子屈折率を1.49とし、分散媒を水とし、分散媒屈折率を1.33とした。測定用試料の体積粒度分布を測定し、測定結果から累積体積分布における小粒子径側からの累積体積が50%になる粒子径を脂肪酸金属塩粒子の平均一次粒子径(μm)として算出する。
【0094】
[シリカチタン酸ストロンチウム粒子の平均一次粒子径]
走査型電子顕微鏡(SEM)(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、型式:S-4800)を用いて、チタン酸ストロンチウム粒子を撮影し、得られた画像から任意に微粒子100個の粒径(長径)を測定し、100個の粒径の平均値を算出し、これをチタン酸ストロンチウム粒子の平均一次粒子径(nm)とする。
【0095】
[シリカ粒子の平均一次粒子径]
動的光散乱法粒度分布測定装置(日機装株式会社製、型式:ナノトラックNanotrac waveシリーズ)を用いて、シリカ粒子の平均一次粒子径を2回測定し、その平均値をシリカ粒子の平均一次粒子径(μm)とする。
測定条件としては、測定時間を30秒とし、試料粒子屈折率を1.49とし、分散媒を水とし、分散媒屈折率を1.33とした。測定用試料の体積粒度分布を測定し、測定結果から累積体積分布における小粒子径側からの累積体積が50%になる粒子径をシリカ粒子の平均一次粒子径(μm)として算出する。
【0096】
[シリカ粒子の被覆率]
トナー母粒子の全表面が最密状態の外添剤で被覆されたときを100%として、外添剤のシリカ粒子がその平均一次粒子径の同一粒子径であると仮定して、その平均一次粒子径とトナー母粒子の表面積とから、シリカ粒子の被覆率CS(%)を算出する。
具体的には、以下のようにして求めた外添剤総投影面積をトナー総表面積で除した値を外添剤の被覆率とする。
まず、円の面積の公式により、外添剤の粒径から一粒当たりの投影面積を算出する。次いで、球の体積の公式により、外添剤の体積を求め、これに比重を乗じて外添剤の重量を求め、さらにトナー一粒当たりの外添剤個数を算出する。トナー重量から添加重量部数と一粒分の外添剤重量を使用して求める。外添剤個数から一粒子当たりの投影面積の総和を算出する。トナー総表面積は、球の表面積の公式により、トナー一粒子分の表面積から求める。
【0097】
[トナー母粒子の体積平均粒子径]
電解液(ベックマン・コールター株式会社製、商品名:ISOTON-II)50mLに、試料20mgおよびアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム1mLを加え、超音波分散器(アズワン株式会社製、型式:卓上型2周波超音波洗浄器VS-D100)を用いて周波数20kHzで3分間分散処理し、測定用試料とする。
得られた測定用試料について、粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製、型式:Multisizer3)を用い、アパーチャ径:100μm、測定粒子数:50000カウントの条件下で測定を行い、試料粒子の体積粒度分布から体積平均粒子径(μm)を求める。
【0098】
(シリカチタン酸ストロンチウム粒子の調製)
硫酸法で得られたメタチタン酸を脱硫漂白処理した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH9.0とし、脱硫処理を行い、その後、塩酸でpH5.8まで中和し、ろ過水洗を行って、洗浄済みケーキを得た。洗浄済みケーキに水を加え、スラリーとした後、塩酸を加えpH1.4とし、解膠処理を行った。得られたメタチタン酸を反応容器に投入し、塩化ストロンチウム溶液とケイ酸ナトリウムを加えた。次いで、撹拌しながら温度90℃に加温した後、10N水酸化ナトリウム水溶液を2時間かけて添加し、その後、温度95℃で1時間撹拌を続け反応を終了した。
反応終了後、得られたスラリーを温度50℃まで冷却し、pH5.0となるまで塩酸を加えて1時間撹拌を続けた。得られた沈殿をデカンテーション洗浄した後、濾過により固液分離を行った。
続いて、得られた固形分にシラン化合物による疎水化処理を行った後、濾過による固液分離を行い、固形分を温度120℃、大気中で10時間乾燥して、チタン酸ストロンチウムを主成分とする外添剤、個数平均一次粒子径40nmを有するシリカチタン酸ストロンチウム粒子100gを得た。
【0099】
(実施例1)
[前混合工程]
容量20Lの気流混合機(ヘンシェルミキサ、三井鉱山株式会社(現 日本コークス工業株式会社)製、型式:FM20C)に下記のトナー母粒子原料を導入し、回転数1500rpmで5分間、前混合し、混合物を得た。
結着樹脂:ポリエステル樹脂(ガラス転移点55℃、軟化温度105℃)100質量部
着色剤:カーボンブラック(三菱ケミカル株式会社製、製品名:MA-100) 5質量部
離型剤:炭化水素系合成ワックス(融点95℃、日本精蝋株式会社製、製品名:フィッシャー・トロプシュワックスFNP0090) 4質量部
【0100】
[溶融混錬工程]
得られた混合物を、二軸押出機(株式会社池貝製、型式:PCM-30)を用いて、シリンダ設定温度110℃、バレル回転数300rpm、原料供給速度20kg/時間の条件で溶融混練して溶融混錬物を得た。
【0101】
[冷却粉砕、分級工程]
得られた溶融混練物を冷却ベルトにて冷却固化させた後、φ1mmのスクリーンを有するスピードミル(ニュースピードミル、岡田精工株式会社製、型式:ND30)を用いて粗粉砕して粒子径1mmの粗砕品を得た。
得られた粗砕物を流動層式対向型ジェットミル(ジェット式粉砕機、ホソカワミクロン株式会社製、型式:カウンタージェットミルAFG)を用いて微粉砕し、さらに風力分級機(ホソカワミクロン株式会社製、型式:TSPセパレータ)を用いて分級することにより、体積平均粒子径6.0μmの未外添のトナー母粒子3000gを得た。
【0102】
[外添工程]
得られたトナー母粒子と、トナー母粒子の表面に対する117%の被覆率に相当する量、トナー母粒子に対して1.0質量%のシリカ粒子(平均一次粒子径7nm、ジメチルジクロロシラン処理、日本アエロジル株式会社製、商品名:R976)を、気流混合機(ヘンシェルミキサ、三井鉱山株式会社(現 日本コークス工業株式会社)製、型式:FM20C)に投入し、撹拌羽根先端部の最外周における周速度を40m/秒に設定し、1分間混合した(第一外添工程)。
次いで、トナー母粒子に対する0.2質量%に相当する量のシリカチタン酸ストロンチウム粒子およびトナー母粒子に対する0.15質量%に相当する量の脂肪酸金属塩粒子としての平均粒子径0.7μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子(日油株式会社製、製品名:ニッサンエレクトールMZ-2)を気流混合機に投入し、撹拌羽根先端部の最外周における周速度を40m/秒に設定し、1.5分間混合した(第二外添工程)。
得られた混合物を270メッシュの篩を用いて篩別して外添トナー約2000gを得た。
【0103】
[二成分現像剤の調製]
得られた外添トナーとコートキャリア(シャープ社製、名称:MX-5111FN用純正キャリア)をトナー濃度が7質量%となるように、V型混合機(株式会社徳寿工作所製、商品名:V-5)に投入し、20分間混合して二成分現像剤約400gを得た。
【0104】
(実施例2)
脂肪酸金属塩粒子としての平均粒子径0.7μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子の代わりに、平均粒子径1.4μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子(日油株式会社製、製品名:MZ-2)を用いること以外は、実施例1と同様にして、トナーおよび二成分現像剤を得た。
【0105】
上記の円盤状のステアリン酸亜鉛粒子は、市販スペックの平均粒子径が1.5μm以下で、平均粒子径1.4μmまでのものが市販されているが、製造ロットごとに平均粒子径が異なる。そこで、実施例および比較例においては、所望の平均粒子径を有する製造ロットの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子を選択して使用した。
また、比較例15では、平均粒子径1.4μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子(日油株式会社製、製品名:MZ-2)を、エルボージェット分級機(株式会社マツボー製、型式:EJ-L-3(LABO)型)を使用して微粉側の粒子を分級して得られた平均粒子径2.0μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子を用いた。
【0106】
(実施例3~6)
シリカチタン酸ストロンチウム粒子のトナー母粒子に対する0.2質量%の外添量を0.1質量%に変更し、脂肪酸金属塩粒子としての平均粒子径0.7μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子の代わりに、平均粒子径0.9μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子(日油株式会社製、製品名:MZ-2)を用いかつトナー母粒子に対する外添量0.15質量%をそれぞれ0.05質量%、0.10質量%、0.15質量%および0.20質量%とすること以外は、実施例1と同様にして、トナーおよび二成分現像剤を得た。
【0107】
(実施例7~10)
脂肪酸金属塩粒子としての平均粒子径0.7μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子の代わりに、平均粒子径0.9μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子(日油株式会社製、製品名:MZ-2)を用いかつトナー母粒子に対する外添量0.15質量%をそれぞれ0.05質量%、0.10質量%、0.15質量%および0.20質量%とすること以外は、実施例1と同様にして、トナーおよび二成分現像剤を得た。
【0108】
(実施例11~13)
シリカチタン酸ストロンチウム粒子のトナー母粒子に対する0.2質量%の外添量を0.4質量%に変更し、脂肪酸金属塩粒子としての平均粒子径0.7μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子の代わりに、平均粒子径0.9μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子(日油株式会社製、製品名:MZ-2)を用いかつトナー母粒子に対する外添量0.15質量%をそれぞれ0.10質量%、0.15質量%および0.20質量%とすること以外は、実施例1と同様にして、トナーおよび二成分現像剤を得た。
【0109】
(実施例14~16)
シリカチタン酸ストロンチウム粒子のトナー母粒子に対する0.2質量%の外添量を0.5質量%に変更し、脂肪酸金属塩粒子としての平均粒子径0.7μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子の代わりに、平均粒子径0.9μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子(日油株式会社製、製品名:MZ-2)を用いかつトナー母粒子に対する外添量0.15質量%をそれぞれ0.10質量%、0.15質量%および0.20質量%とすること以外は、実施例1と同様にして、トナーおよび二成分現像剤を得た。
【0110】
(実施例17~19)
シリカチタン酸ストロンチウム粒子のトナー母粒子に対する0.2質量%の外添量を0.6質量%に変更し、脂肪酸金属塩粒子としての平均粒子径0.7μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子の代わりに、平均粒子径0.9μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子(日油株式会社製、製品名:MZ-2)を用いかつトナー母粒子に対する外添量0.15質量%をそれぞれ0.10質量%、0.15質量%および0.20質量%とすること以外は、実施例1と同様にして、トナーおよび二成分現像剤を得た。
【0111】
(実施例20~23)
平均一次粒子径7nm、ジメチルジクロロシラン処理のシリカ粒子に代わりに、シリカ粒子(平均一次粒子径7nm、シリコーンオイル処理、日本アエロジル株式会社製、商品名:RY300)を用い、脂肪酸金属塩粒子としての平均粒子径0.7μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子の代わりに、平均粒子径0.9μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子(日油株式会社製、製品名:MZ-2)を用いかつトナー母粒子に対する外添量0.15質量%をそれぞれ0.05質量%、0.10質量%、0.15質量%および0.20質量%とすること以外は、実施例1と同様にして、トナーおよび二成分現像剤を得た。
【0112】
(実施例24~26)
平均一次粒子径7nm、ジメチルジクロロシラン処理のシリカ粒子に代わりに、シリカ粒子(平均一次粒子径7nm、シリコーンオイル処理、日本アエロジル株式会社製、商品名:RY300)を用いかつトナー母粒子の表面に対する被覆率117%を82%に変更してそれに相当するトナー母粒子に対する外添量1.0質量%を0.7質量%に変更し、脂肪酸金属塩粒子としての平均粒子径0.7μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子の代わりに、平均粒子径0.9μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子(日油株式会社製、製品名:MZ-2)を用いかつトナー母粒子に対する外添量0.15質量%をそれぞれ0.10質量%、0.15質量%および0.20質量%とすること以外は、実施例1と同様にして、トナーおよび二成分現像剤を得た。
【0113】
(実施例27~29)
平均一次粒子径7nm、ジメチルジクロロシラン処理のシリカ粒子に代わりに、シリカ粒子(平均一次粒子径7nm、シリコーンオイル処理、日本アエロジル株式会社製、商品名:RY300)を用いかつトナー母粒子の表面に対する被覆率117%を94%に変更してそれに相当するトナー母粒子に対する外添量1.0質量%を0.8質量%に変更し、脂肪酸金属塩粒子としての平均粒子径0.7μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子の代わりに、平均粒子径0.9μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子(日油株式会社製、製品名:MZ-2)を用いかつトナー母粒子に対する外添量0.15質量%をそれぞれ0.10質量%、0.15質量%および0.20質量%とすること以外は、実施例1と同様にして、トナーおよび二成分現像剤を得た。
【0114】
(実施例30~32)
平均一次粒子径7nm、ジメチルジクロロシラン処理のシリカ粒子に代わりに、シリカ粒子(平均一次粒子径7nm、シリコーンオイル処理、日本アエロジル株式会社製、商品名:RY300)を用いかつトナー母粒子の表面に対する被覆率117%を105%に変更してそれに相当するトナー母粒子に対する外添量1.0質量%を0.9質量%に変更し、脂肪酸金属塩粒子としての平均粒子径0.7μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子の代わりに、平均粒子径0.9μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子(日油株式会社製、製品名:MZ-2)を用いかつトナー母粒子に対する外添量0.15質量%をそれぞれ0.10質量%、0.15質量%および0.20質量%とすること以外は、実施例1と同様にして、トナーおよび二成分現像剤を得た。
【0115】
(実施例33)
平均一次粒子径7nm、ジメチルジクロロシラン処理のシリカ粒子に代わりに、シリカ粒子(平均一次粒子径7nm、シリコーンオイル処理、日本アエロジル株式会社製、商品名:RY300)を用いかつトナー母粒子の表面に対する被覆率117%を130%に変更してそれに相当するトナー母粒子に対する外添量1.0質量%を1.1質量%に変更し、脂肪酸金属塩粒子としての平均粒子径0.7μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子の代わりに、平均粒子径0.9μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子(日油株式会社製、製品名:MZ-2)を用いること以外は、実施例1と同様にして、トナーおよび二成分現像剤を得た。
【0116】
(実施例34~36)
平均一次粒子径7nm、ジメチルジクロロシラン処理のシリカ粒子に代わりに、シリカ粒子(平均一次粒子径12nm、シリコーンオイル処理、日本アエロジル株式会社製、商品名:RY200)を用いかつトナー母粒子の表面に対する被覆率117%を89%に変更してそれに相当するトナー母粒子に対する外添量1.0質量%を1.3質量%に変更し、脂肪酸金属塩粒子としての平均粒子径0.7μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子の代わりに、平均粒子径0.9μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子(日油株式会社製、製品名:MZ-2)を用いかつトナー母粒子に対する外添量0.15質量%をそれぞれ0.10質量%、0.15質量%および0.20質量%とすること以外は、実施例1と同様にして、トナーおよび二成分現像剤を得た。
【0117】
(実施例37~39)
平均一次粒子径7nm、ジメチルジクロロシラン処理のシリカ粒子に代わりに、シリカ粒子(平均一次粒子径12nm、シリコーンオイル処理、日本アエロジル株式会社製、商品名:RY200)を用いかつトナー母粒子の表面に対する被覆率117%を96%に変更してそれに相当するトナー母粒子に対する外添量1.0質量%を1.4質量%に変更し、脂肪酸金属塩粒子としての平均粒子径0.7μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子の代わりに、平均粒子径0.9μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子(日油株式会社製、製品名:MZ-2)を用いかつトナー母粒子に対する外添量0.15質量%をそれぞれ0.10質量%、0.15質量%および0.20質量%とすること以外は、実施例1と同様にして、トナーおよび二成分現像剤を得た。
【0118】
(実施例40~42)
平均一次粒子径7nm、ジメチルジクロロシラン処理のシリカ粒子に代わりに、シリカ粒子(平均一次粒子径12nm、シリコーンオイル処理、日本アエロジル株式会社製、商品名:RY200)を用いかつトナー母粒子の表面に対する被覆率117%を102%に変更してそれに相当するトナー母粒子に対する外添量1.0質量%を1.6質量%に変更し、脂肪酸金属塩粒子としての平均粒子径0.7μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子の代わりに、平均粒子径0.9μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子(日油株式会社製、製品名:MZ-2)を用いかつトナー母粒子に対する外添量0.15質量%をそれぞれ0.10質量%、0.15質量%および0.20質量%とすること以外は、実施例1と同様にして、トナーおよび二成分現像剤を得た。
【0119】
(実施例43~45)
平均一次粒子径7nm、ジメチルジクロロシラン処理のシリカ粒子に代わりに、シリカ粒子(平均一次粒子径12nm、シリコーンオイル処理、日本アエロジル株式会社製、商品名:RY200)を用いかつトナー母粒子の表面に対する被覆率117%を123%に変更してそれに相当するトナー母粒子に対する外添量1.0質量%を1.8質量%に変更し、脂肪酸金属塩粒子としての平均粒子径0.7μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子の代わりに、平均粒子径0.9μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子vを用いかつトナー母粒子に対する外添量0.15質量%をそれぞれ0.10質量%、0.15質量%および0.20質量%とすること以外は、実施例1と同様にして、トナーおよび二成分現像剤を得た。
【0120】
(実施例46および47)
平均一次粒子径7nm、ジメチルジクロロシラン処理のシリカ粒子に代わりに、シリカ粒子(平均一次粒子径16nm、シリコーンオイル処理、日本アエロジル株式会社製、商品名:RY200S)を用いかつトナー母粒子の表面に対する被覆率117%をそれぞれ97%および102%に変更してそれに相当するトナー母粒子に対する外添量1.0質量%を1.9質量%および2.0質量%に変更し、脂肪酸金属塩粒子としての平均粒子径0.7μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子の代わりに、平均粒子径0.9μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子(日油株式会社製、製品名:MZ-2)を用いること以外は、実施例1と同様にして、トナーおよび二成分現像剤を得た。
【0121】
(実施例48および49)
平均一次粒子径7nm、ジメチルジクロロシラン処理のシリカ粒子に代わりに、シリカ粒子(平均一次粒子径7nm、シリコーンオイル処理、日本アエロジル株式会社製、商品名:RY300)を用い、脂肪酸金属塩粒子としての平均粒子径0.7μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子の代わりに、平均粒子径0.9μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子(日油株式会社製、製品名:MZ-2)を用い、第二外添工程の処理時間1.5分間をそれぞれ0.5分間および3分間に変更すること以外は、実施例1と同様にして、トナーおよび二成分現像剤を得た。
【0122】
(比較例1~3)
シリカチタン酸ストロンチウム粒子を外添せず、脂肪酸金属塩粒子としての平均粒子径0.7μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子の代わりに、平均粒子径1.0μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子(日油株式会社製、製品名:MZ-2)を用いかつトナー母粒子に対する外添量0.15質量%をそれぞれ0.05質量%、0.10質量%および0.15質量%とすること以外は、実施例1と同様にして、トナーおよび二成分現像剤を得た。
【0123】
(比較例4および5)
シリカチタン酸ストロンチウム粒子を外添せず、脂肪酸金属塩粒子としての平均粒子径0.7μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子の代わりに、平均粒子径0.9μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子(日油株式会社製、製品名:MZ-2)を用いかつトナー母粒子に対する外添量0.15質量%をそれぞれ0.20質量%および0.25質量%とすること以外は、実施例1と同様にして、トナーおよび二成分現像剤を得た。
【0124】
(比較例6~10)
シリカチタン酸ストロンチウム粒子を外添せず、脂肪酸金属塩粒子としての平均粒子径0.7μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子の代わりに、平均粒子径0.9μm、平均長さ2.0μmの棒状のステアリン酸亜鉛粒子(日信化学工業株式会社製、製品名:ステアリン酸亜鉛成型体)を用いかつトナー母粒子に対する外添量0.15質量%をそれぞれ0.05質量%、0.10質量%、0.15質量%、0.20質量%および0.25質量%とすること以外は、実施例1と同様にして、トナーおよび二成分現像剤を得た。
【0125】
(比較例11)
シリカチタン酸ストロンチウム粒子を外添せず、平均一次粒子径7nm、ジメチルジクロロシラン処理のシリカ粒子に代わりに、シリカ粒子(平均一次粒子径7nm、シリコーンオイル処理、日本アエロジル株式会社製、商品名:RY300)を用い、脂肪酸金属塩粒子としての平均粒子径0.7μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子の代わりに、平均粒子径0.9μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子(日油株式会社製、製品名:MZ-2))を用いること以外は、実施例1と同様にして、トナーおよび二成分現像剤を得た。
【0126】
(比較例12)
シリカチタン酸ストロンチウム粒子を外添せず、平均一次粒子径7nm、ジメチルジクロロシラン処理のシリカ粒子に代わりに、シリカ粒子(平均一次粒子径12nm、シリコーンオイル処理、日本アエロジル株式会社製、商品名:RY200)を用いかつトナー母粒子の表面に対する被覆率117%を102%に変更してそれに相当するトナー母粒子に対する外添量1.0質量%を1.6質量%に変更し、脂肪酸金属塩粒子としての平均粒子径0.7μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子の代わりに、平均粒子径0.9μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子(日油株式会社製、製品名:MZ-2)を用いること以外は、実施例1と同様にして、トナーおよび二成分現像剤を得た。
【0127】
(比較例13)
平均一次粒子径7nm、ジメチルジクロロシラン処理のシリカ粒子に代わりに、シリカ粒子(平均一次粒子径7nm、シリコーンオイル処理、日本アエロジル株式会社製、商品名:RY300)を用い、脂肪酸金属塩粒子を外添しないこと以外は、実施例1と同様にして、トナーおよび二成分現像剤を得た。
【0128】
(比較例14)
平均一次粒子径7nm、ジメチルジクロロシラン処理のシリカ粒子に代わりに、シリカ粒子(平均一次粒子径12nm、シリコーンオイル処理、日本アエロジル株式会社製、商品名:RY200)を用いかつトナー母粒子の表面に対する被覆率117%を102%に変更してそれに相当するトナー母粒子に対する外添量1.0質量%を1.6質量%に変更し、脂肪酸金属塩粒子を外添しないこと以外は、実施例1と同様にして、トナーおよび二成分現像剤を得た。
【0129】
(比較例15)
脂肪酸金属塩粒子としての平均粒子径0.7μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子の代わりに、平均粒子径2.0μmの円盤状のステアリン酸亜鉛粒子日油株式会社製、製品名:MZ-2)を用いること以外は、実施例1と同様にして、トナーおよび二成分現像剤を得た。
【0130】
[評価]
デジタル複写機(シャープ株式会社製、型式:MX-M6071)を改造した試験用複写機を用い、実施例1~49および比較例1~15で作製したトナーおよび二成分現像剤について、感光体フィルミング、定着性およびカブリ(初期、高印字直後および5000(5k)枚印字後)を評価した。
【0131】
[感光体フィルミング]
上記の試験用複写機の現像ユニットに二成分現像剤を充填し、ISO19752標準テストチャートを使用して5k枚印字テストを行い、その後、50%ハーフトーン画像を印字し、感光体および印字画像を目視観察して、次の基準により感光体フィルミングを評価した。
◎:優秀(感光体上にフィルミングがない)
○:良好(感光体上にフィルミングがあるが、印字画像は良好で印字に問題がない)
△:可 (印字部にフィルミングがあるが、印字への影響が軽微で実用に耐え得る)
×:不可(印字部に問題があり、印字への影響が大きく実用に耐えない)
【0132】
[定着性]
上記の試験用複写機の現像ユニットに二成分現像剤を充填し、標準定着温度(180℃)より-30℃に設定し、用紙(JIS A4サイズ、坪量70g/m)に対して10枚連続印字た。定着後の印字用紙を折り曲げ、トナー層の剥がれ幅が0.5mm以下を定着強度良好、0.5mm超を定着強度可と判定し、定着不良の有無と併せて、次の基準により定着性を評価した。
○:良好(定着不良がなく、定着強度良好)
△:可 (定着不良がなく、定着強度可)
×:不可(定着不良発生)
【0133】
[カブリ]
白度計(日本電色工業株式会社製、型式:ZE6000)を用いて、印刷後の非画像形成部の白色度(5K印字時のカブリ)を測定し、予め測定しておいた印刷前の用紙の白色度との差分から次の基準によりカブリを評価した。
初期カブリは、現像剤を交換しマシンセットアップ後のカブリ値を意味し、5kカブリは、ISO19752標準テストチャートを使用して5k枚印字テストを行った直後のカブリ値を意味し、高印字直後カブリは、5kカブリ実験後にA4用紙サイズの印字率25%の用紙を流して50枚目のカブリ値を指す、におけるカブリを意味する。
◎:優秀(白色度の差分が0.5以下)
〇:良好(白色度の差分が0.5超1.5以下)
△:可 (白色度の差分が1.5超2.0以下)
×:不可(白色度の差分が2.0)
【0134】
[総合評価]
上記の評価結果を下記の基準で総合評価した。
◎:優秀(フィルミング評価が◎であり、他の評価項目にも◎がある)
〇:良好(フィルミング評価が◎または○であり、他の評価項目はすべて○である)
△:実使用可 (評価項目に×はないが、△がある)
×:実使用不可(評価項目に一つでも×がある)
得られた評価結果を、トナーの外添剤の構成材料およびそれらの物性と共に表1~4に示す。
表1における「-」は、該当する外添剤が外添されていないことを意味する。
【0135】
【表1】
【0136】
【表2】
【0137】
【表3】
【0138】
【表4】
【0139】
表1~4から次のことがわかる。
(1)本発明のトナー(実施例1~49)は、円盤状の脂肪酸金属塩粒子が外添されていてもシリカチタン酸ストロンチウムが外添されていないトナー(比較例1~5、11および12)、シリカチタン酸ストロンチウムが外添されていても棒状の脂肪酸金属塩粒子が外添されたトナー(比較例6~10)、シリカチタン酸ストロンチウムが外添されていても脂肪酸金属塩粒子が外添されていないトナー(比較例13および14)、円盤状の脂肪酸金属塩粒子およびシリカチタン酸ストロンチウムが外添されていても、脂肪酸金属塩粒子の平均粒径が小さ過ぎるトナー(比較例15)と比較して、トナー母粒子への埋まり込みを少なくしてトナーフィルミングの発生を抑制すると共に、高温高湿環境下におけるカブリを抑制し得るトナーであること
【0140】
(2)本発明のトナー(実施例1~49)は、小シリカ表面処理剤の違いによりカブリ値が異なることがわかる。シリコーンオイルによる表面処理剤が更に良好な結果が得られた。ジメチルジクロロシラン処理の小シリカを添加されたトナー(実施例1~19)とシリコーンオイル処理小シリカを添加されたトナー(実施例20~49)を比較するとわかる。シリコーンオイル処理小シリカを添加することにより高印字などの耐刷テストでもトナー帯電量の変動が抑制されているためと考えられる
(3)本発明のトナー(実施例1~49)は、円盤状の脂肪酸金属塩粒子が外添されていても、シリカチタン酸ストロンチウムが外添されていても、トナー母粒子への埋まり込みを少なくしてトナーフィルミングの発生を抑制すると共に、高温高湿環境下におけるカブリを抑制し得るトナーであるが、その添加量に最適値があることが見てとれる
【符号の説明】
【0141】
1 電子写真感光体
31 露光手段(半導体レーザ)
32 帯電手段(帯電器)
33 現像手段(現像器)
33a 現像ローラ
33b ケーシング
34 転写手段(転写帯電器)
35 定着手段(定着器)
35a 加熱ローラ
35b 加圧ローラ
36 クリーニング手段(クリーナ)
36a クリーニングブレード
36b 回収用ケーシング
37 分離手段
38 ハウジング
41、42 矢符
44 回転軸線
51 記録媒体(記録紙または転写紙)
100 画像形成装置(レーザプリンタ)
図1