(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124554
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡スチレン系樹脂粒子、および、スチレン系樹脂発泡成形体
(51)【国際特許分類】
C08J 9/224 20060101AFI20230830BHJP
【FI】
C08J9/224 CET
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028375
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100121636
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌靖
(72)【発明者】
【氏名】山谷 恵史
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA33K
4F074BA37
4F074BA38
4F074BA72
4F074BA95
4F074CA34
4F074CA38
4F074CA46
4F074CA49
4F074DA02
4F074DA32
4F074DA34
4F074DA59
(57)【要約】
【課題】発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させる際のブロッキングを抑制でき、予備発泡させた予備発泡スチレン系樹脂粒子を二次発泡させる際の予備発泡粒子同士の十分な熱融着一体化を発現でき、且つ、配管によって輸送する際の配管内での添加剤剥離を抑制できる、発泡性スチレン系樹脂粒子を提供する。
【解決手段】本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子は、発泡性スチレン系樹脂粒子本体の表面が粉体添加剤と液体添加剤によって被覆された発泡性スチレン系樹脂粒子であって、該粉体添加剤の平均粒子径が1μm~50μmの範囲内にある。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡性スチレン系樹脂粒子本体の表面が粉体添加剤と液体添加剤によって被覆された発泡性スチレン系樹脂粒子であって、
該粉体添加剤の平均粒子径が1μm~50μmの範囲内にある、
発泡性スチレン系樹脂粒子。
【請求項2】
前記粉体添加剤の重量が前記液体添加剤の重量に対して1.0倍~30.0倍である、請求項1に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
【請求項3】
前記発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対する前記粉体添加剤の割合が0.050重量部~1.500重量部である、請求項1または2に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
【請求項4】
前記発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対する前記液体添加剤の割合が0.005重量部~0.250重量部である、請求項1から3までのいずれかに記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
【請求項5】
前記粉体添加剤が、脂肪酸金属塩、固体の脂肪酸エステル、硬化油、炭酸塩、脂肪酸アマイド、およびアミン化合物から選ばれる少なくとも1種である、請求項1から4までのいずれかに記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
【請求項6】
前記液体添加剤が、ポリエーテル、多価アルコール、流動パラフィン、液体の脂肪酸エステル、および液体のポリシロキサンから選ばれる少なくとも1種である、請求項1から5までのいずれかに記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれかに記載の発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなる予備発泡スチレン系樹脂粒子であって、
該予備発泡の嵩発泡倍率が2倍~150倍である、
予備発泡スチレン系樹脂粒子。
【請求項8】
請求項1から6までのいずれかに記載の発泡性スチレン系樹脂粒子から成形される、スチレン系樹脂発泡成形体。
【請求項9】
請求項7に記載の予備発泡スチレン系樹脂粒子から成形される、スチレン系樹脂発泡成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡スチレン系樹脂粒子、および、スチレン系樹脂発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡成形体は、軽量かつ断熱性および機械的強度に優れることから、住宅および自動車等に用いられる断熱材、建築資材等に用いられる保温材、発泡スチロール土木工法に用いられる盛土材料、魚箱および食品容器等の輸送用梱包材、緩衝材等に幅広く使用されている。中でも、発泡性粒子(代表的には、発泡性スチレン系樹脂粒子あるいはそれを予備発泡させた予備発泡スチレン系樹脂粒子)を原料として製造される型内発泡成形体が、所望の形状を得やすい等の利点から多く使用されている。このような発泡成形体は、互いに融着した複数の発泡性粒子により構成されている。
【0003】
発泡性スチレン系樹脂粒子に要求される特性としては、例えば、発泡性スチレン系樹脂粒子を水蒸気などによって加熱して予備発泡させる際に、複数個の発泡性スチレン系樹脂粒子同士が予備発泡過程において合体して一つになる、いわゆる、ブロッキングを生じないことや、予備発泡させた予備発泡スチレン系樹脂粒子を二次発泡させる際に、予備発泡粒子同士が十分に熱融着一体化することが挙げられる。
【0004】
発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させる際に、上述したブロッキングが生じると、予備発泡させた予備発泡スチレン系樹脂粒子を発泡成形機の金型内に充填する際に、フィーダー内にて予備発泡スチレン系樹脂粒子が詰まってしまい、その結果、発泡成形機の金型内への予備発泡スチレン系樹脂粒子の充填不良が発生し、発泡成形品を良好に得ることができないという問題が生じる。また、予備発泡スチレン系樹脂粒子の二次発泡時に、予備発泡スチレン系樹脂粒子同士が十分に熱融着一体化しないと、得られる発泡成形品の機械的強度が不十分になるという問題が生じる。
【0005】
発泡性スチレン系樹脂粒子の予備発泡中における発泡性スチレン系樹脂粒子同士のブロッキングを防止することを目的として、発泡性スチレン系樹脂粒子の表面に、脂肪酸金属塩(例えば、ステアリン酸亜鉛)をブロッキング防止剤として付着させることが行われている。また、予備発泡スチレン系樹脂粒子の二次発泡時における予備発泡スチレン系樹脂粒子同士の熱融着性を向上させることを目的として、発泡性スチレン系樹脂粒子の表面を脂肪酸トリグリセライドで被覆すること、発泡性スチレン系樹脂粒子の表面に静電気によって埃などが付着するのを防止することを目的として、発泡性スチレン系樹脂粒子の表面を脂肪酸モノグリセライドで被覆することが行われている。これらの脂肪酸金属塩、脂肪酸トリグリセライド、脂肪酸モノグリセライドは、通常、常温で固体の粉体添加剤である。
【0006】
ここで、発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡させて発泡成形品を製造する過程において、発泡性スチレン系樹脂粒子は、一端部が予備発泡機に接続されてなる発泡性粒子流通管(配管)内を予備発泡機に向かって吸引する空気輸送によって発泡性粒子流通管を通じて予備発泡機内に供給されると共に、この予備発泡機で予備発泡されて得られた予備発泡スチレン系樹脂粒子も、一端部がサイロあるいは発泡成形機に接続されてなる予備発泡粒子流通管(配管)内をサイロあるいは発泡成形機に向かって吸引する空気輸送によって予備発泡粒子流通管を通じてサイロあるいは発泡成形機内に供給される。これら発泡性粒子流通管や予備発泡粒子流通管は、予備発泡機や発泡成形機の配置に応じて部分的あるいは全体的に湾曲させた状態で配設されている。
【0007】
そうすると、前述のような粉体添加剤を添加した発泡性スチレン系樹脂粒子を上記のような発泡性粒子流通管や予備発泡粒子流通管という配管によって輸送する際に、粉体添加剤がその粉体性のために配管内において剥離してしまい、配管内に剥離物が堆積してしまうという問題が生じる。
【0008】
このような粉体添加剤の剥離の問題を解決するため、発泡性スチレン系樹脂粒子の表面に、常温で液体のメチルフェニルポリシロキサンとジメチルポリシロキサンを所定量塗布する技術が報告されている(特許文献1)。しかし、発泡性スチレン系樹脂粒子の表面に、特許文献1に記載のようにメチルフェニルポリシロキサンとジメチルポリシロキサンを所定量塗布した場合、粒子同士のブロッキング量が多く、改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させる際のブロッキングを抑制でき、予備発泡させた予備発泡スチレン系樹脂粒子を二次発泡させる際の予備発泡粒子同士の十分な熱融着一体化を発現でき、且つ、配管によって輸送する際の配管内での添加剤剥離を抑制できる、発泡性スチレン系樹脂粒子を提供することにある。また、そのような発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなる予備発泡スチレン系樹脂粒子を提供することにある。さらに、そのような、発泡性スチレン系樹脂粒子や予備発泡スチレン系樹脂粒子から成形されるスチレン系樹脂発泡成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。そして、発泡性スチレン系樹脂粒子本体の表面が添加剤で被覆された発泡性スチレン系樹脂粒子において、添加剤として、粉体添加剤と液体添加剤を併用するとともに、粉体添加剤の平均粒子径に着目した。その結果、粉体添加剤の平均粒子径を所定の狭い範囲内に調整することにより、本発明の効果が発現し得ることに想到した。また、粉体添加剤と液体添加剤との量比を所定の範囲内に調整することにより、本発明の効果がより発現し得ることに想到した。
【0012】
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子は、
発泡性スチレン系樹脂粒子本体の表面が粉体添加剤と液体添加剤によって被覆された発泡性スチレン系樹脂粒子であって、
該粉体添加剤の平均粒子径が1μm~50μmの範囲内にある。
【0013】
一つの実施形態においては、上記粉体添加剤の重量が上記液体添加剤の重量に対して1.0倍~30.0倍である。
【0014】
一つの実施形態においては、上記発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対する上記粉体添加剤の割合が0.050重量部~1.500重量部である。
【0015】
一つの実施形態においては、上記発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対する上記液体添加剤の割合が0.005重量部~0.250重量部である。
【0016】
一つの実施形態においては、上記粉体添加剤が、脂肪酸金属塩、固体の脂肪酸エステル、硬化油、炭酸塩、脂肪酸アマイド、およびアミン化合物から選ばれる少なくとも1種である。
【0017】
一つの実施形態においては、上記液体添加剤が、ポリエーテル、多価アルコール、流動パラフィン、液体の脂肪酸エステル、および液体のポリシロキサンから選ばれる少なくとも1種である。
【0018】
本発明の実施形態による予備発泡スチレン系樹脂粒子は、
上記発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなる予備発泡スチレン系樹脂粒子であって、
該予備発泡の嵩発泡倍率が2倍~150倍である。
【0019】
本発明の実施形態によるスチレン系樹脂発泡成形体は、上記発泡性スチレン系樹脂粒子から成形される。
【0020】
本発明の実施形態によるスチレン系樹脂発泡成形体は、上記予備発泡スチレン系樹脂粒子から成形される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させる際のブロッキングを抑制でき、予備発泡させた予備発泡スチレン系樹脂粒子を二次発泡させる際の予備発泡粒子同士の十分な熱融着一体化を発現でき、且つ、配管によって輸送する際の配管内での添加剤剥離を抑制できる、発泡性スチレン系樹脂粒子を提供することができる。また、そのような発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなる予備発泡スチレン系樹脂粒子を提供することができる。さらに、そのような、発泡性スチレン系樹脂粒子や予備発泡スチレン系樹脂粒子から成形されるスチレン系樹脂発泡成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】発泡性スチレン系樹脂粒子の吸引輸送装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0024】
本明細書において「(メタ)アクリル」とある場合は、アクリルおよび/またはメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とある場合は、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。本明細書における「重量」は、SI単位系における「質量」と同義であり、「質量」と読み替えてもよい。
【0025】
≪≪A.発泡性スチレン系樹脂粒子≫≫
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子は、発泡性スチレン系樹脂粒子本体の表面が粉体添加剤と液体添加剤によって被覆されたものである。
【0026】
粉体添加剤は、常温(代表的には23℃)で固体の添加剤である。本発明において、粉体添加剤は、発泡性スチレン系樹脂粒子本体に添加する粉体状の外添剤である。粉体添加剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0027】
液体添加剤は、常温(代表的には23℃)で液体の添加剤である。本発明において、液体添加剤は、発泡性スチレン系樹脂粒子本体に添加する液体状の外添剤である。液体添加剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0028】
粉体添加剤は、本発明の効果を発現させ得る点で、その平均粒子径が1μm~50μmの範囲内にあり、好ましくは3μm~45μmの範囲内にあり、より好ましくは5μm~40μmの範囲内にあり、さらに好ましくは7μm~35μmの範囲内にあり、特に好ましくは8μm~30μmの範囲内にある。粉体添加剤の平均粒子径を上記のような狭い範囲内に調整することにより、本発明の効果を発現し得る。粉体添加剤の平均粒子径が上記範囲内から外れると、本発明の効果を発現し難くなり、特に、発泡性スチレン系樹脂粒子を配管によって輸送する際に粉体添加剤が剥離してしまって配管内に剥離物が堆積してしまうおそれがある。なお、平均粒子径は、スライドガラス上に粉体添加剤0.001gと0.6%直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム溶液を1滴滴下して予備分散させてカバーガラスをかぶせ、その後、キーエンス社製のデジタルマイクロスコープVHX-6000を使用し、倍率1000倍で粉体添加剤をランダムに20粒粒子径を測定し、20粒の粒子径の平均を粉体添加剤の平均粒子径として測定した値とされる。
【0029】
ここで、上記平均粒子径の範囲の規定は、粉体添加剤が複数存在するときは、それぞれの粉体添加剤の平均粒子径がその範囲内に入っていることを意味する。
【0030】
本発明の効果を発現させ得る点で、粉体添加剤の重量は、液体添加剤の重量に対して、好ましくは1.0倍~30.0倍であり、より好ましくは1.5倍~30.0倍であり、さらに好ましくは1.5倍~25.0倍であり、特に好ましくは1.5倍~22.5倍である。液体添加剤の重量に対する粉体添加剤の重量の倍率が上記範囲内から外れて小さすぎると、発泡性スチレン系樹脂粒子のべたつきが強くなり、吸引輸送時に流通管の内面に衝突した際に発泡性スチレン系樹脂粒子の表皮層が容易に流通管内面に付着して流通管の閉塞を生じるおそれがある。液体添加剤の重量に対する粉体添加剤の重量の倍率が上記範囲内から外れて大きすぎると、発泡性スチレン系樹脂粒子を粒子流通管(配管)内に流通させた際に、粉体添加剤が剥離してしまい、配管内に剥離物が堆積してしまうおそれがある。
【0031】
発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対する粉体添加剤の割合は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは0.050重量部~1.500重量部であり、より好ましくは0.100重量部~1.500重量部であり、さらに好ましくは0.100重量部~1.000重量部であり、特に好ましくは0.150重量部~1.000重量部である。発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対する粉体添加剤の割合が上記範囲内から外れて少なすぎると、粉体添加剤の効果が得られず、発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡する際にブロッキングを起こすおそれや、予備発泡スチレン系樹脂粒子を成形する際に融着不良を起こすおそれがある。発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対する粉体添加剤の割合が上記範囲内から外れて多すぎると、発泡性スチレン系樹脂粒子やこれを予備発泡させて得られる予備発泡スチレン系樹脂粒子を粒子流通管(配管)内に流通させた際に、粉体添加剤が剥離してしまい、配管内に剥離物が堆積してしまうおそれがある。
【0032】
粉体添加剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な粉体状の外添剤を採用し得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、このような粉体添加剤としては、好ましくは、脂肪酸金属塩、固体の脂肪酸エステル、硬化油、炭酸塩、脂肪酸アマイド、およびアミン化合物から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは、脂肪酸金属塩を必須に含み、且つ、固体の脂肪酸エステル、硬化油、炭酸塩、およびアミン化合物から選ばれる少なくとも1種を含む。
【0033】
脂肪酸金属塩としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な脂肪酸金属塩を採用し得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、このような脂肪酸金属塩としては、好ましくは、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウムが挙げられ、より好ましくは、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムである。なお、通常、市販されているステアリン酸金属塩を構成する脂肪酸は、主成分となるステアリン酸と、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸などとの混合物であり、本発明においても、ステアリン酸金属塩としてこのような市販品を使用することができる。
【0034】
粉体添加剤として脂肪酸金属塩を用いる場合、発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対する脂肪酸金属塩の割合は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは0.005重量部~1.000重量部であり、より好ましくは0.050重量部~1.000重量部であり、さらに好ましくは0.050重量部~0.800重量部であり、特に好ましくは0.080重量部~0.800重量部である。発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対する脂肪酸金属塩の割合が上記範囲内から外れて少なすぎると、発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡する際にブロッキングを起こすおそれがある。発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対する脂肪酸金属塩の割合が上記範囲内から外れて多すぎると、発泡性スチレン系樹脂粒子を粒子流通管(配管)内に流通させた際に、粉体添加剤が剥離してしまい、配管内に剥離物が堆積してしまうおそれがある。
【0035】
固体の脂肪酸エステルとしては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な固体の脂肪酸エステルを採用し得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、このような固体の脂肪酸エステルとしては、好ましくは、多価アルコール脂肪酸エステルであり、好ましくは、炭素数10~24の高級脂肪酸と、エチレングリコール、グリセリン、1,2,4-ブタントリオール、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、エリスリトール、ヘキサントリオール等の多価アルコールとのエステルが挙げられ、より好ましくは、炭素数10~24の高級脂肪酸とグリセリンとのエステル(グリセリン脂肪酸エステル)である。このようなグリセリン脂肪酸エステルとしては、モノグリセリンとの脂肪酸エステル、ジグリセリンとの脂肪酸エステル、トリグリセリンとの脂肪酸エステル、テトラグリセリンとの脂肪酸エステルが挙げられる。
【0036】
グリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ラウリン酸モノグリセリド、ラウリン酸ジグリセリド、ラウリン酸トリグリセリド、パルミチン酸モノグリセリド、パルミチン酸ジグリセリド、パルミチン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸テトラグリセリド、ベヘン酸モノグリセリド、ベヘン酸ジグリセリド、ベヘン酸トリグリセリド、12-ヒドロキシステアリン酸モノグリセリド、12-ヒドロキシステアリン酸ジグリセリド、12-ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、リノール酸トリグリセライ、ドリノール酸ジグリセライド、リノール酸モノグリセライド、ミリスチン酸グリセリル、パルミチン酸グリセリル、ベヘニン酸グリセリル、オレイン酸グリセリルが挙げられる。
【0037】
粉体添加剤として固体の脂肪酸エステルを用いる場合、発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対する固体の脂肪酸エステルの割合は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは0.005重量部~1.000重量部であり、より好ましくは0.050重量部~1.000重量部であり、さらに好ましくは0.050重量部~0.500重量部であり、特に好ましくは0.050重量部~0.150重量部である。発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対する固体の脂肪酸エステルの割合が上記範囲内から外れて少なすぎると、予備発泡スチレン系樹脂粒子を成形する際に融着不良を起こすおそれがある。発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対する固体の脂肪酸エステルの割合が上記範囲内から外れて多すぎると、発泡性スチレン系樹脂粒子を粒子流通管(配管)内に流通させた際に、粉体添加剤が剥離してしまい、配管内に剥離物が堆積してしまうおそれがある。
【0038】
硬化油としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な硬化油を採用し得る。粉体添加剤として硬化油を用いる場合、発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対する硬化油の割合は、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な割合を設定し得る。
【0039】
炭酸塩としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な炭酸塩を採用し得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、このような炭酸塩としては、好ましくは、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウムが挙げられ、より好ましくは、炭酸カルシウムが挙げられる。
【0040】
粉体添加剤として炭酸塩を用いる場合、発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対する炭酸カルシウムの割合は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは0.010重量部~0.100重量部であり、より好ましくは0.010重量部~0.090重量部であり、さらに好ましくは0.020重量部~0.090重量部であり、特に好ましくは0.020重量部~0.040重量部である。発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対する炭酸塩の割合が上記範囲内から外れて少なすぎると、発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡する際にブロッキングを起こすおそれがある。発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対する炭酸塩の割合が上記範囲内から外れて多すぎると、発泡性スチレン系樹脂粒子を粒子流通管(配管)内に流通させた際に、粉体添加剤が剥離してしまい、配管内に剥離物が堆積してしまうおそれがある。
【0041】
アミン化合物としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切なアミン化合物を採用し得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、このようなアミン化合物としては、代表的には、ヒドロキシアルキルアミンを採用し得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、このようなヒドロキシアルキルアミンとしては、例えば、N-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシアルキル)アミン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)ドデシルアミン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)テトラデシルアミン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)ヘキサデシルアミン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)オクタデシルアミン、N-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシテトラデシル)アミン、N-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシヘキサデシル)アミン、N-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシオクタデシル)アミン、N-ヒドロキシプロピル-N-(2-ヒドロキシテトラデシル)アミン、N-ヒドロキシブチル-N-(2-ヒドロキシテトラデシル)アミン、N-ヒドロキシペンチル-N-(2-ヒドロキシテトラデシル)アミン、N-ヒドロキシペンチル-N-(2-ヒドロキシヘキサデシル)アミン、N-ヒドロキシペンチル-N-(2-ヒドロキシオクタデシル)アミンが挙げられ、好ましくは、N-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシアルキル)アミンである。
【0042】
ここで、N-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシアルキル)アミンは、2-ヒドロキシアルキル基の炭素数が種々のものが入手可能である。このようなN-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシアルキル)アミンとしては、代表的には、炭素数8~16の2-ヒドロキシアルキル基を有するN-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシアルキル)アミンを主成分とするものが挙げられ、例えば、炭素数14の2-ヒドロキシアルキル基を有するN-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシアルキル)アミンを主成分とするものが挙げられる。
【0043】
粉体添加剤としてヒドロキシアルキルアミンを用いる場合、発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対するヒドロキシアルキルアミンの割合は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは0.010重量部~1.500重量部であり、より好ましくは0.010重量部~1.000重量部であり、さらに好ましくは0.010重量部~0.500重量部であり、特に好ましくは0.050重量部~0.500重量部である。発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対するヒドロキシアルキルアミンの割合が上記範囲内から外れて少なすぎると、スチレン系樹脂発泡成形体が帯電し、スチレン系樹脂発泡成形体表面にホコリが付着しやすくなるおそれがある。発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対するヒドロキシアルキルアミンの割合が上記範囲内から外れて多すぎると、発泡性スチレン系樹脂粒子を粒子流通管(配管)内に流通させた際に、粉体添加剤が剥離してしまい、配管内に剥離物が堆積してしまうおそれがある。
【0044】
発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対する液体添加剤の割合は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは0.005重量部~0.500重量部であり、より好ましくは0.010重量部~0.500重量部であり、さらに好ましくは0.010重量部~0.200重量部であり、特に好ましくは0.020重量部~0.200重量部である。発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対する液体添加剤の割合が上記範囲内から外れて少なすぎると、液体添加剤の効果が得られず発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡する際にブロッキングや静電気が発生しやすくなり、また、予備発泡ポリスチレン系樹脂粒子を成形する際に融着不良を起こすおそれがある。発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対する液体添加剤の割合が上記範囲内から外れて多すぎると、予備発泡スチレン系樹脂粒子やスチレン系樹脂発泡成形体の表面がべたつくおそれがある。
【0045】
液体添加剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な液体状の外添剤を採用し得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、このような液体添加剤としては、好ましくは、ポリエーテル、多価アルコール、流動パラフィン、液体の脂肪酸エステル、および液体のポリシロキサンから選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは、ポリエーテルを必須に含み、且つ、多価アルコール、流動パラフィン、液体の脂肪酸エステル、および液体のポリシロキサンから選ばれる少なくとも1種を含む。
【0046】
ポリエーテルとしては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切なポリエーテルを採用し得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、このようなポリエーテルとしては、例えば、ポリエチレングリコールが挙げられる。
【0047】
液体添加剤としてポリエーテルを用いる場合、発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対するポリエーテルの割合は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは0.010重量部~0.200重量部であり、より好ましくは0.010重量部~0.150重量部であり、さらに好ましくは0.020重量部~0.150重量部であり、特に好ましくは0.040重量部~0.100重量部である。発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対するポリエーテルの割合が上記範囲内から外れて少なすぎると、予備発泡時に静電気が発生しやすくなるおそれがある。発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対するポリエーテルの割合が上記範囲内から外れて多すぎると、予備発泡スチレン系樹脂粒子やスチレン系樹脂発泡成形体の表面がべたつくおそれがある。
【0048】
多価アルコールとしては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な多価アルコールを採用し得る。液体添加剤として多価アルコールを用いる場合、発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対する多価アルコールの割合は、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な割合を設定し得る。
【0049】
流動パラフィンとしては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な流動パラフィンを採用し得る。液体添加剤として流動パラフィンを用いる場合、発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対する流動パラフィンの割合は、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な割合を設定し得る。
【0050】
液体の脂肪酸エステルとしては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な液体の脂肪酸エステルを採用し得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、このような液体の脂肪酸エステルとしては、例えば、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、オレイン酸2-エチルヘキシルエステル、ネオペンチルグリコール、ポリオキシエチレンモノレート、ポリオキシエチレン脂肪酸ヤシ油脂肪酸グリセリル、ソルビタンモノレート、中鎖脂肪酸トリグリセリドが挙げられる。
【0051】
液体添加剤として液体の脂肪酸エステルを用いる場合、発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対する液体の脂肪酸エステルの割合は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは0.001重量部~1.000重量部であり、より好ましくは0.002重量部~1.000重量部であり、さらに好ましくは0.002重量部~0.100重量部であり、特に好ましくは0.005重量部~0.050重量部である。発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対する液体の脂肪酸エステルの割合が上記範囲内から外れて少なすぎると、予備発泡ポリスチレン系樹脂粒子を成形する際に融着不良を起こすおそれがある。発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対する液体の脂肪酸エステルの割合が上記範囲内から外れて多すぎると、予備発泡スチレン系樹脂粒子やスチレン系樹脂発泡成形体の表面がべたつくおそれがある。
【0052】
液体のポリシロキサンとしては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な液体のポリシロキサンを採用し得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、このような液体のポリシロキサンとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンである。
【0053】
液体添加剤として液体のポリシロキサンを用いる場合、発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対する液体のポリシロキサンの割合は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは0.005重量部~0.500重量部であり、より好ましくは0.005重量部~0.250重量部であり、さらに好ましくは0.010重量部~0.250重量部であり、特に好ましくは0.010重量部~0.100重量部である。発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対する液体のポリシロキサンの割合が上記範囲内から外れて少なすぎると、予備発泡する際にブロッキングを起こすおそれがある。発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対する液体のポリシロキサンの割合が上記範囲内から外れて多すぎると、予備発泡スチレン系樹脂粒子やスチレン系樹脂発泡成形体の表面がべたつくおそれがある。
【0054】
発泡性スチレン系樹脂粒子は、全体として粒子の形状を有する。発泡性スチレン系樹脂粒子の平均粒子径は、好ましくは0.1mm~2.0mmであり、より好ましくは0.1mm~1.7mmであり、さらに好ましくは0.2mm~1.7mmであり、特に好ましくは0.2mm~1.5mmである。なお、平均粒子径は、JIS Z 8815に準拠して測定され得る。具体的には、平均粒子径は、JIS Z 8815の篩分け試験による粒度分布から積算値50%の粒径として測定した値とされる。発泡性スチレン系樹脂粒子の具体的な形状としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な形状を採用することができる。このような形状としては、例えば、球状、略球状、楕円球状(卵状)、円柱状、略円柱状などが挙げられる。
【0055】
発泡性スチレン系樹脂粒子は、重量平均分子量が、好ましくは19万~49万である。
【0056】
≪A-1.発泡性スチレン系樹脂粒子本体≫
発泡性スチレン系樹脂粒子本体は、スチレン系樹脂と発泡剤を含む。
【0057】
<A-1-1.スチレン系樹脂>
スチレン系樹脂は、該スチレン系樹脂を構成する単量体成分としてスチレン系単量体を含む高分子化合物である。スチレン系単量体は、スチレンまたはスチレン誘導体を含む。スチレン誘導体としては、例えば、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i-プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレンなどが挙げられる。スチレン系単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。スチレン系単量体は、好ましくは、少なくともスチレンを含有する。スチレン系単量体の全量に対するスチレンの含有割合は、好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは70重量%以上であり、さらに好ましくは90重量%以上であり、特に好ましくは95重量%以上である。
【0058】
スチレン系樹脂は、該スチレン系樹脂を構成する単量体成分の主成分としてスチレン系単量体を含んでいればよく、スチレン系単量体と共重合成分との共重合体であってもよい。共重合成分の代表例としては、代表的には、ビニル単量体が挙げられる。本明細書において「主成分」とは、全成分中の該成分の含有割合が、好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは70重量%以上であり、さらに好ましくは90重量%以上であり、特に好ましくは95重量%以上である。
【0059】
ビニル単量体としては、例えば、多官能単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体、マレイン酸エステル単量体、フマル酸エステル単量体などが挙げられる。ビニル単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0060】
多官能単量体の具体例としては、例えば、o-ジビニルベンゼン、m-ジビニルベンゼン、p-ジビニルベンゼン等のジビニルベンゼン;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;などが挙げられる。多官能単量体を用いることにより、ポリスチレン系樹脂に分岐構造を付与することができる。ポリスチレン系樹脂を構成する全単量体成分中の多官能単量体の含有量は、好ましくは0重量%~0.1重量%であり、より好ましくは0.005重量%~0.05重量%である。
【0061】
(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘキシルなどが挙げられる。これら(メタ)アクリル酸エステル単量体の中でも、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸エチルが好ましく、アクリル酸ブチルがさらに好ましい。(メタ)アクリル酸エステル単量体を用いることにより、スチレン系樹脂のガラス転移温度(Tg)を低くすることができる。ポリスチレン系樹脂を構成する全単量体成分中のアクリル酸エステル単量体の含有量は、好ましくは0重量%~4.0重量%であり、より好ましくは0.1重量%~3.0重量%である。
【0062】
マレイン酸エステル単量体としては、例えば、マレイン酸ジメチルなどが挙げられる。
【0063】
フマル酸エステル単量体としては、例えば、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸エチルなどが挙げられる。
【0064】
1つの実施形態においては、スチレン系樹脂は、スチレン系樹脂とオレフィン系樹脂との複合樹脂であってもよい。複合樹脂におけるスチレン系樹脂とオレフィン系樹脂との含有比(スチレン系樹脂/オレフィン系樹脂:重量比)は、好ましくは50/50~90/10であり、より好ましくは60/40~85/15である。スチレン系樹脂の含有量が少なすぎると、発泡性および/または成形加工性が不十分になる場合がある。スチレン系樹脂の含有量が多すぎると、耐衝撃性および/または柔軟性が不十分になる場合がある。
【0065】
オレフィン系樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なオレフィン系樹脂を採用することができる。オレフィン系樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。具体例としては、例えば、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、これら重合体の架橋体等のポリエチレン系樹脂;プロピレン単独重合体、プロピレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-プロピレンランダム共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテンランダム共重合体等のポリプロピレン系樹脂;などが挙げられる。これらのオレフィン系樹脂の中でも、好ましくは、エチレン-酢酸ビニル共重合体、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、およびこれらの混合物である。なお、低密度は、好ましくは0.91g/cm3~0.94g/cm3であり、より好ましくは0.91g/cm3~0.93g/cm3である。高密度は、好ましくは0.95g/cm3~0.97g/cm3であり、より好ましくは0.95g/cm3~0.96g/cm3である。中密度は、低密度と高密度との間の密度である。
【0066】
<A-1-2.発泡剤>
発泡剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0067】
発泡剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な発泡剤を用いることができる。発泡剤は、好ましくは、沸点がスチレン系樹脂の軟化点以下であり、常圧でガス状または液状の有機化合物である。具体例としては、例えば、プロパン、n-ブタン、イソブタン、ペンタン(n-ペンタン、イソペンタンまたはネオペンタン)、n-ヘキサン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロペンタジエン等の脂環式炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル等の低沸点のエーテル化合物;トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン等のハロゲン含有炭化水素;などが挙げられる。発泡剤として、炭酸ガス、窒素、アンモニア等の無機ガスを用いてもよい。これらの中でも、発泡剤としては、脂肪族炭化水素が好ましい。オゾン層の破壊を防止することができ、かつ、空気と速く置換するので発泡成形体の経時変化を抑制することができるからである。発泡剤としては、より好ましくは、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、およびこれらの組み合わせである。
【0068】
発泡性スチレン系樹脂粒子本体中における発泡剤の含有量は、予備発泡スチレン系樹脂粒子およびスチレン系樹脂発泡成形体を形成するに十分な量である限り、目的に応じて適切に設定され得る。発泡剤の含有量は、ポリスチレン系樹脂100重量部に対して、好ましくは2重量部~16重量部であり、より好ましくは3重量部~8重量部である。
【0069】
<A-1-3.その他>
発泡性スチレン系樹脂粒子本体は、発泡剤とともに発泡助剤を含んでいてもよい。発泡助剤としては、例えば、アジピン酸ジイソブチル、トルエン、シクロヘキサン、エチルベンゼン、流動パラフィン、ヤシ油などが挙げられる。発泡助剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0070】
発泡性スチレン系樹脂粒子本体は、発泡剤とともに難燃剤や難燃助剤を含んでもよい。難燃剤としては、例えば、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ヘキサブロモシクロヘキサン、トリスジブロモプロピルホスフェート、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールF、テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA-ジグリシジルエーテル、2,2-ビス[4’(2’’,3’’-ジブロモアルコキシ)-3’,5’-ジブロモフェニル]-プロパンなどが挙げられる。難燃助剤としては、例えば、クメンヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン、3,4-ジメチル-3,4-ジフェニルヘキサンなどが挙げられる。
【0071】
発泡性スチレン系樹脂粒子本体は、添加剤をさらに含んでいてもよい。ここにいう添加剤は、本発明にいう外添剤としての粉体添加剤および液体添加剤とは異なる。添加剤としては、例えば、輻射伝熱抑制成分、スチレン系樹脂以外の樹脂、架橋剤、可塑剤、充填剤、滑剤、着色剤、帯電防止剤、展着剤、気泡調整剤、耐候剤、老化防止剤、防曇剤、香料などが挙げられる。添加剤の種類、数、組み合わせ、含有量等は、目的に応じて適切に設定され得る。添加剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0072】
≪A-2.発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法≫
発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法の一つの実施形態としては、発泡性スチレン系樹脂粒子本体を製造する工程(I)と、発泡性スチレン系樹脂粒子本体に粉体添加剤および液体添加剤を添加する工程(II)と、を含む。
【0073】
<発泡性スチレン系樹脂粒子本体を製造する工程(I)>
発泡性スチレン系樹脂粒子本体を製造する工程(I)は、代表的には、スチレン系単量体を重合させる工程と、重合と同時または重合後に発泡剤を含浸させる工程と、を含む。
【0074】
スチレン系単量体の重合方法としては、代表的には、懸濁重合法が挙げられる。懸濁重合法は、スチレン系単量体に重合開始剤を溶解して、懸濁剤を分散した水とともに、反応槽中で昇温し重合した後冷却して、発泡性スチレン系樹脂粒子本体を得る方法である。
【0075】
重合の途中および/または重合終了後に発泡剤を添加する方法は1段法と呼ばれる。発泡剤を添加せずに重合して得られた粒子をふるい分けして必要な粒径範囲の粒子のみを、反応槽の懸濁剤を分散した水中で昇温して、ここで発泡剤を添加して粒子に含浸させる方法は2段法(後含浸法)と呼ばれる。また、小粒子のスチレン系樹脂粒子(種粒子)を、懸濁剤を分散した水の入っている反応槽に投入し、昇温した後、重合開始剤を溶解した単量体を連続的に反応槽に供給して重合し、目的とする粒子径まで成長させる方法はシード重合法と呼ばれる。シード重合法において、発泡剤は重合の途中および/または重合終了後に添加される。1段法、2段法(後含浸法)、シード重合法のいずれの方法によっても、発泡性スチレン系樹脂粒子を製造することができる。また、いずれの方法によっても、真球状の発泡性スチレン系樹脂粒子本体が得られ得るという利点がある。
【0076】
スチレン系単量体の重合における重合開始剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なラジカル発生型重合開始剤を用いることができる。このような重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシベンゾート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,2-t-ブチルパーオキシブタン、t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルヘキサノエート、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサイハイドロテレフタレート等の有機過酸化物;アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物;などが挙げられる。これらの重合開始剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0077】
重合開始剤としては、分子量を調整し、残存単量体量を減少させるために、10時間の半減期を得るための分解温度が50~80℃の範囲にある重合開始剤と、10時間の半減期を得るための分解温度が80~120℃の範囲にある重合開始剤とを併用してもよい。重合開始剤は、種粒子に均一に吸収させる必要があることから、液状物として添加することが好ましい。重合開始剤を直接水性懸濁液中に添加すると、種粒子に均一に吸収されにくくなるので、重合開始剤は水性媒体に懸濁または乳化させた状態で添加するか、あるいは少量のスチレン系単量体に溶解し、無機系懸濁安定剤および/またはアニオン界面活性剤とを加え水性懸濁液として添加することが望ましい。
【0078】
発泡性スチレン系樹脂粒子本体は、溶融押出法により製造してもよい。溶融押出法は、ポリスチレン系樹脂ペレットを樹脂供給装置に供給し、樹脂供給装置内で溶融されたポリスチレン系樹脂に発泡剤を圧入・混練し、発泡剤を含有した溶融樹脂を樹脂供給装置先端に付設されたダイの小孔から押し出し、その後冷却して、発泡性スチレン系樹脂粒子を得る方法である。ダイの小孔から冷却用液体中に直接押し出し、押し出した直後に押出物を回転刃で切断し、切断された粒子を冷却用液体中で冷却する方法はホットカット法と呼ばれる。ダイの小孔から一旦空気中にストランド状に押し出し、ストランドが発泡する前に冷却用水槽中に導き、ストランドを冷却用水槽中で冷却した後、切断し円柱状の粒子とする方法はストランドカット法(コールドカット法)と呼ばれる。ホットカット法、ストランドカット法(コールドカット法)のいずれの方法によっても、発泡性スチレン系樹脂粒子本体を製造することができる。ホットカット法によれば、ほぼ球状の発泡性スチレン系樹脂粒子本体が得られ得るという利点がある。
【0079】
<発泡性スチレン系樹脂粒子本体に粉体添加剤および液体添加剤を添加する工程(II)>
発泡性スチレン系樹脂粒子本体に粉体添加剤および液体添加剤を添加する工程(II)においては、代表的には、工程(I)で製造した発泡性スチレン系樹脂粒子本体と、粉体添加剤と、液体添加剤とを、レディゲミキサー、タンブラー、リボンブレンダー、ナウターミキサーなどの混合機や撹拌機を使用して、混合する。
【0080】
≪≪B.予備発泡スチレン系樹脂粒子≫≫
予備発泡スチレン系樹脂粒子は、発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなる。
【0081】
予備発泡スチレン系樹脂粒子は、表層の平均気泡径が0.01mm~0.15mmであり、好ましくは0.01mm~0.14mmであり、さらに好ましくは0.01mm~0.13mmであり、特に好ましくは0.01mm~0.12mmであり、最も好ましくは0.01mm~0.11mmである。予備発泡スチレン系樹脂粒子の表層の平均気泡径が上記範囲にあれば、発泡時や成形時のブロッキングをより防止でき、さらに、発泡時と成形時の帯電性をより抑制しつつより良好な融着性や表面性を発現し、静電気のより少ないスチレン系樹脂発泡成形体を成形することができる、予備発泡スチレン系樹脂粒子を提供し得る。
【0082】
すなわち、本発明の実施形態による予備発泡スチレン系樹脂粒子は、上記A項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなる。予備発泡は、発泡性スチレン系樹脂粒子を、水蒸気等を用いて所望の嵩発泡倍率(嵩密度)に発泡させることを含む。予備発泡スチレン系樹脂粒子の嵩発泡倍率は、好ましくは2倍~150倍であり、より好ましくは5倍~78倍であり、さらに好ましくは10倍~75倍である。嵩密度は、嵩発泡倍率の逆数である。嵩発泡倍率および嵩密度は、例えば以下のようにして求められる。予備発泡スチレン系樹脂粒子の嵩発泡倍率が上記範囲内にあることにより、発泡時や成形時のブロッキングをより防止でき、さらに、発泡時と成形時の帯電性をより抑制しつつより良好な融着性や表面性を発現し、静電気のより少ないスチレン系樹脂発泡成形体を成形することができる、予備発泡スチレン系樹脂粒子を提供し得る。
【0083】
発泡性スチレン系樹脂粒子を測定試料としてW(g)採取する。この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させ、メスシリンダー内に落下させた測定試料の体積V(cm3)をJIS K 6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定する。測定資料の重量および体積から、下記式に基づいて嵩発泡倍数および嵩密度を求めることができる。
嵩発泡倍数(倍=cm3/g)=測定試料の体積(V)/測定試料の重量(W)
嵩密度(g/cm3)=測定試料の重量(W)/測定試料の体積(V)
【0084】
1つの代表的な実施形態においては、予備発泡スチレン系樹脂粒子は、スチレン系樹脂発泡成形体の成形に用いることができる。別の実施形態においては、予備発泡スチレン系樹脂粒子は、そのままで緩衝剤、断熱材等として用いることができる。予備発泡スチレン系樹脂粒子をそのまま用いる場合、予備発泡スチレン系樹脂粒子は、好ましくは、多数の予備発泡スチレン系樹脂粒子を袋体に充填した充填体として用いられ得る。
【0085】
≪≪C.スチレン系樹脂発泡成形体≫≫
本発明の一つの実施形態によるスチレン系樹脂発泡成形体は、発泡性スチレン系樹脂粒子から成形されるスチレン系樹脂発泡成形体である。本発明の別の一つの実施形態によるスチレン系樹脂発泡成形体は、発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなる予備発泡スチレン系樹脂粒子から成形されるスチレン系樹脂発泡成形体である。
【0086】
スチレン系樹脂発泡成形体は、代表的には、予備発泡スチレン系樹脂粒子をさらに発泡させた発泡スチレン系樹脂粒子(以下、単に「発泡粒子」と称する場合がある)を含む。
【0087】
スチレン系樹脂発泡成形体は、代表的には、互いに融着した複数の発泡粒子により構成されている。
【0088】
スチレン系樹脂発泡成形体は、代表的には、目的に応じた所定の形状を有する型内に予備発泡スチレン系樹脂粒子を仕込み、型内発泡成形を行うことにより作製され得る。より詳細には、型内発泡成形は、(i)予備発泡スチレン系樹脂粒子を多数の小孔を有する閉鎖金型内に充填すること、(ii)熱媒体(例えば、加圧水蒸気等)で予備発泡スチレン系樹脂粒子を加熱発泡させて発泡粒子を得ること、(iii)当該加熱発泡により、発泡粒子間の空隙を埋めると共に、発泡粒子を相互に融着させることにより一体化させること、を含む。スチレン系樹脂発泡成形体の密度は、目的に応じて適切に設定され得る。スチレン系樹脂発泡成形体の密度は、例えば、金型内に充填する予備発泡スチレン系樹脂粒子の嵩発泡倍率を予め調整すること、あるいは、金型内への予備発泡スチレン系樹脂粒子の充填量を調整することにより調整することができる。
【0089】
加熱発泡の温度(実質的には、熱媒体の温度)は、好ましくは90℃~150℃であり、より好ましくは110℃~130℃である。加熱発泡時間は、好ましくは5秒~50秒であり、より好ましくは10秒~50秒である。加熱発泡の成形蒸気圧(熱媒体の吹き込みゲージ圧)は、好ましくは0.04MPa~0.1MPaであり、より好ましくは0.06MPa~0.08MPaである。加熱発泡がこのような条件であれば、発泡粒子を相互に良好に融着させることができる。
【0090】
必要に応じて、スチレン系樹脂発泡成形体の成形前に予備発泡スチレン系樹脂粒子を熟成させてもよい。予備発泡スチレン系樹脂粒子の熟成温度は、好ましくは20℃~60℃である。熟成温度が低すぎると、過度に長い熟成時間が必要とされる場合がある。熟成温度が高すぎると、予備発泡スチレン系樹脂粒子中の発泡剤が散逸して成形性が低下する場合がある。
【0091】
スチレン系樹脂発泡成形体における発泡粒子の嵩発泡倍率は、好ましくは2倍~150倍であり、より好ましくは5倍~78倍であり、さらに好ましくは10~75倍である。
【実施例0092】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法および評価方法は以下の通りである。
【0093】
<粉体添加剤の平均粒子径の測定>
粉体添加剤の平均粒子径は、次のようにして行った。スライドガラス上に粉体添加剤0.001gと0.6%直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム溶液を1滴滴下して予備分散させカバーガラスをかぶせた。その後、キーエンス社製のデジタルマイクロスコープVHX-6000を使用し、倍率1000倍で粉体添加剤をランダムに20粒粒子径を測定し、20粒の粒子径の平均を粉体添加剤の平均粒子径とした。また測定する平均粒子径は発泡スチレン系樹脂粒子に被膜するすべて粉体添加物の平均粒子径を種類ごとに測定した。
【0094】
<配管付着量の測定と評価>
エムエルエンジニアリング社製の吸引輸送装置ML-5500CBを使用し、発泡性スチレン系樹脂粒子の配管付着量を測定した。
図1はエムエルエンジニアリング社製の吸引輸送装置ML-5500CBを示す概略図である。
図1において、1はホッパー、2はその上部に設けられた吸引部である。ホッパー1には放出管11が、吸引部2には内径46mmの導入管21が設けられている。5は吸引部2から吸引エアにて吸引管3を通ってバグフィルター4を介して吸引するブロアである。6は放出管11の真下に設けられたタンクである。タンク6には内径46mmの吸引管61が設けられている。7は地面と垂直に配置された内径46mm、長さ1.4mの金属配管である。金属配管7の両端に内径50mm、長さ1mの樹脂ホース8が取り付けられ、樹脂ホース8の他方はそれぞれ導入管21と吸引管61に取り付けられる。この状態で、タンク6内に発泡性スチレン系樹脂粒子Aを10kg投入し、流速200g/秒で30秒間吸引した。15秒間吸引停止の間に、ホッパー1に充填された発泡性スチレン系樹脂粒子Aを8m落下させて、タンク6に受けた。この吸引循環を1時間繰り返した後、樹脂ホース8を取り外して重量を測定し、評価前後の重量差から樹脂ホース付着量を求めた。配管付着量の評価としては以下の通りとした。
配管付着量0.50g未満:◎
配管付着量0.50g以上0.75g未満:〇
配管付着量0.75g以上:×
【0095】
<予備発泡時のブロッキング発生率の測定と評価>
予備発泡スチレン系樹脂粒子の製造の際に、樹脂粒子同士が集塊した、いわゆるブロッキング粒子を目開き10mmの篩を用いて分離し、重量を測定して、投入した全量の重量で除して、ブロッキング発生率として求めた。ブロッキング発生率の評価は以下の通りとした。
ブロッキング発生率0.03%未満:◎
ブロッキング発生率0.03%以上0.05%未満:○
ブロッキング発生率0.05%以上:×
【0096】
<スチレン系樹脂発泡成形体の融着率の測定と評価>
幅300mm、長さ400mm、厚み30mmの平板形状のスチレン系樹脂発泡成形体の表面に、一対の長辺の中心同士を結ぶ直線に沿ってカッターナイフで深さ約2mmの切り込み線を入れた後、この切り込み線に沿って該スチレン系樹脂発泡成形体を手で二分割し、その破断面における発泡粒子について、100~150個の任意の範囲について粒子内で破断している粒子の数(a)と粒子同士の界面で破断している粒子の数(b)とを数え、式[(a)/((a)十(b))]×100に代入して得られた値を融着率(%)とした。融着率の評価は以下の通りとした。
融着率70%以上:〇
融着率70%未満:×
【0097】
<粉体添加剤一覧>
下記の粉体添加剤を用いた。
A1:ステアリン酸亜鉛を篩分けして平均粒子径9μmとしたもの。
A2:ステアリン酸亜鉛を篩分けして平均粒子径51μmとしたもの。
B1:12-ヒドロキシステアリン酸トリグリセライドを篩分けして平均粒子径22μmとしたもの。
B2:12-ヒドロキシステアリン酸トリグリセライドを篩分けして平均粒子径78μmとしたもの。
C1:脂肪酸トリグリセライドを篩分けして平均粒子径18μmとしたもの。
C2:脂肪酸トリグリセライドを篩分けして平均粒子径60μmとしたもの。
D1:ステアリン酸モノグリセライドを篩分けして平均粒子径17μmとしたもの。
D2:ステアリン酸モノグリセライドを篩分けして平均粒子径96μmとしたもの。
E1:炭酸カルシウムを篩分けして平均粒子径8μmとしたもの。
E2:炭酸カルシウムを篩分けして平均粒子径60μmとしたもの。
F1:ステアリン酸マグネシウムを篩分けして平均粒子径10μmとしたもの。
F2:ステアリン酸マグネシウムを篩分けして平均粒子径55μmとしたもの。
G1:N-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシアルキル)アミンを篩分けして平均粒子径27μmとしたもの。
G2:N-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシアルキル)アミンを篩分けして平均粒子径90μmとしたもの。
【0098】
<液体添加剤一覧>
H:ポリエチレングリコール
I:ジメチルポリシロキサン
J:モノオレイン酸ポリエチレングリコール
【0099】
[製造例1]
(スチレン系重合体種粒子の製造)
内容量100リットルの攪拌機付き重合容器に、水40000g、懸濁安定剤としてリン酸三カルシウム141g、およびアニオン界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.8gを供給し、攪拌しながら、スチレン40000g、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド101g、およびt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート20gを添加し、90℃に昇温して重合した。そして、この温度で6時間保持し、さらに、125℃に昇温してから2時間後に冷却し、スチレン系重合体粒子を得た。得られたスチレン系重合体粒子を篩分けし、粒子径0.5mm~0.71mmのスチレン系重合体種粒子(平均粒子径0.63mm)を得た。なお、撹拌の回転数については上記粒子径が得られるように調整した。
(発泡性スチレン系樹脂粒子本体の製造)
内容積100リットルの撹拌機付き重合容器に、上記で得られたスチレン系重合体種粒子10800g、蒸留水42000g、ピロリン酸マグネシウム169g、およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4gを供給し、撹拌しつつ72℃に加熱して、分散液を作製した。続いて、ベンゾイルパーオキサイド155gおよびt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート24gを、スチレン3950gおよびアクリル酸ブチル690gの単量体混合物に溶解させた溶液を、全て、上記分散液中に撹拌しつつ供給した。そして分散液中に上記溶液を供給し終えてから、72℃で60分間維持した。
次いで、87℃まで1時間で昇温させながら、スチレン12240gを一定供給し、次いで、87℃で1時間30分保持しながら、スチレン18310gにジビニルベンゼン11g溶解した単量体混合物を一定供給し、さらに30分保持した。
次いで、125℃まで昇温し、且つ30分保持することで、未反応の単量体を反応させた。次いで、100℃まで冷却し、重合容器内にシクロヘキサン460g、アジピン酸ジイソブチル391g、混合ブタン2852gを圧入して2時間に亘って保持した後、重合容器内を25℃に冷却して、発泡性スチレン系樹脂粒子本体を得た。
【0100】
[実施例1]
(発泡性スチレン系樹脂粒子の製造)
製造例1で得られた発泡性スチレン系樹脂粒子本体10kgを松坂貿易社製レディゲミキサーM20型(内容量20リットル)に投入した。次いで、表1に示すように、発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量%に対して、粉体添加剤A1を0.130重量%の量、粉体添加剤B1を0.050重量%の量、粉体添加剤C1を0.030重量%の量、粉体添加剤D1を0.050重量%の量を順次投入し、230rpmで5分間攪拌した。次いで、発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量%に対して、液体添加剤Hを0.070重量%の量、液体添加剤Iを0.020重量%の量を投入し、230rpmで5分間攪拌し、発泡性スチレン系樹脂粒子本体の表面が粉体添加剤および液体添加剤によって被覆された発泡性スチレン系樹脂粒子(1)を得た。
(予備発泡スチレン系樹脂粒子の製造)
得られた発泡性スチレン系樹脂粒子(1)を円筒型バッチ式予備発泡機に供給して、吹き込み圧0.07MPaの水蒸気により加熱し、予備発泡スチレン系樹脂粒子(1)を得た。得られた予備発泡スチレン系樹脂粒子(1)は、嵩密度0.017g/cm3(嵩発泡倍数60倍)であった。
(スチレン系樹脂発泡成形体の製造)
得られた予備発泡スチレン系樹脂粒子(1)を、室温雰囲気下、24時間に亘って放置した後、長さ400mm×幅300mm×高さ30mmの長方形状のキャビティを有する成形型内に充填し、成形スチーム圧0.06MPa(ゲージ圧力)、加熱26秒、水冷5秒、設定取出面圧0.03MPaの条件で成形を行った。得られたスチレン系樹脂発泡成形体(1)は、密度0.017g/cm3(発泡倍数60倍)であった。
(各種測定・評価)
このようにして得られた発泡性スチレン系樹脂粒子(1)、予備発泡スチレン系樹脂粒子(1)、および、スチレン系樹脂発泡成形体(1)について、各種測定・評価を行った。結果を表2に示した。
【0101】
[実施例2~8]
粉体添加剤および液体添加剤の種類および添加量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様に行い、発泡性スチレン系樹脂粒子(2)~(8)、予備発泡スチレン系樹脂粒子(2)~(8)、および、スチレン系樹脂発泡成形体(2)~(8)を得た。結果を表2に示した。
【0102】
[比較例1~4]
粉体添加剤および液体添加剤の種類および添加量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様に行い、発泡性スチレン系樹脂粒子(C1)~(C4)、予備発泡スチレン系樹脂粒子(C1)~(C4)、および、スチレン系樹脂発泡成形体(C1)~(C4)を得た。結果を表2に示した。
【0103】
【0104】
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡スチレン系樹脂粒子、およびスチレン系樹脂発泡成形体は、住宅および自動車等に用いる断熱材、建築資材等に用いる保温材、魚箱および食品容器等の輸送用梱包材、緩衝材等に好適に用いられる。発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡スチレン系樹脂粒子およびスチレン系樹脂発泡成形体は、より具体的には、クッション材、壁用断熱材、床用断熱材、屋根用断熱材、自動車用断熱材、温水タンク用保温材、配管用保温材、ソーラーシステム用保温材、給湯器用保温材、食品および工業製品等の容器、魚および農産物等の梱包材、盛土材、畳の芯材等に好適に用いられる。